JP3542234B2 - 金属材料の酸化チタン被覆方法 - Google Patents

金属材料の酸化チタン被覆方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3542234B2
JP3542234B2 JP17121796A JP17121796A JP3542234B2 JP 3542234 B2 JP3542234 B2 JP 3542234B2 JP 17121796 A JP17121796 A JP 17121796A JP 17121796 A JP17121796 A JP 17121796A JP 3542234 B2 JP3542234 B2 JP 3542234B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal material
film
titanium oxide
colloid
titanium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP17121796A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1018082A (ja
Inventor
和彦 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nihon Parkerizing Co Ltd
Original Assignee
Nihon Parkerizing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nihon Parkerizing Co Ltd filed Critical Nihon Parkerizing Co Ltd
Priority to JP17121796A priority Critical patent/JP3542234B2/ja
Publication of JPH1018082A publication Critical patent/JPH1018082A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3542234B2 publication Critical patent/JP3542234B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の酸化チタン被覆方法に関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、ステンレススチール、アルミニウム、銅、および鉄、などの金属材料の表面上に、アノード電解処理により光触媒機能を有する酸化チタン皮膜を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタンは、固体材料の表面に高い光触媒効果を付与させることが可能である。このため、金属、ガラス、セラミックなどの素材の表面に光触媒効果を有する酸化チタン皮膜を形成させることにより、付着汚れの分解、大気および水質の浄化、防錆、並びに細菌および藻類の繁殖防止、などの各種用途に有用な金属材料が得られることが知られている。
【0003】
このため、より良好な酸化チタン皮膜を素材表面に形成することを目的とする各種の酸化チタン被覆方法が、これまでに提案されてきた。
【0004】
各種材料表面を酸化チタンにより被覆する方法のうち、チタンのアルコキシドを加水分解し、その生成物を塗布する方法として知られているゾル−ゲル法が最も一般的である。またこれに類する方法としては、例えば特開平4−83537号公報に示されているように、チタンアルコキシドにアミド、グリコールを添加し、その生成物を塗料として利用する方法や、特開昭7−100378号公報に示されているように、チタンアルコキシドにアルコールアミン類を添加し、その生成物を塗布する方法が知られている。
【0005】
また、この他には特開平6−293519号公報に記載されているように、水熱処理により結晶化させた酸化チタン微粒子を分散剤を使用して分散させ、この分散液を塗布する方法や、結晶性酸化チタン粒子に、水ガラス、コロイダルシリカ、弗素系樹脂などのバインダーを混和し、この混和液を塗布する方法が知られている。
【0006】
しかし、上記のゾル−ゲル法を用いた場合、塗料の粘度や塗布条件によって形成される皮膜の厚さが変化し易いこと、および皮膜の性能を高めるために皮膜の厚さを厚くすると、乾燥の際に、皮膜の収縮が大きいため皮膜が基体表面から剥離したり、或は密着性が低下すること、などのために、1μm以上の厚さを有する皮膜を形成することが困難であり、このため得られる皮膜の光触媒性能にも限界がある。
【0007】
また、結晶成長させた酸化チタン粒子をバインダーと混合し、この混合液を塗布する方法では、得られる皮膜中の酸化チタン含有率が低いため、光触媒能が充分に発揮されないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金属材料表面を光触媒性を有する酸化チタンセラミックにより金属材料表面を被覆する場合に、従来のゾル−ゲル法などでは困難とされていた1μm以上の厚さを有し、かつ金属材料表面に対する密着性の良い酸化チタン被覆層を形成することにより、皮膜の光触媒性をさらに改善し得る金属材料の酸化チタン被覆方法を提供しようとするものである。また同時に、本発明はアノード電解法を用いることにより、皮膜の厚さの制御が容易で、複雑な形状を有する物品に対しても、均一な厚さの皮膜を形成することを可能とする、金属材料の酸化チタン被覆方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の技術的課題を解決するための手段について鋭意検討した結果、皮膜成分である酸化チタンを、チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを含み、かつ低い電気電導度を有するコロイド溶液中に、ステンレス鋼等の金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電することによって、陽極体金属材料表面に、前記チタン化合物を含み、緻密で密着性の良い皮膜を形成し、さらにこの皮膜を乾燥し、250℃以上で焼成することにより、1μm以上の厚さを有し、かつ、良好な密着性と光触媒性および透明性を有する二酸化チタン皮膜が得られることを新たに見出した。
【0010】
また、さらに本発明者は、チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを含み、さらにアナターゼ型およびルチル型の酸化チタンから選ばれる少なくとも1種の粒子を含み、且つ2mS/cm未満の電気電導度を有するコロイド溶液中に、金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電すると、得られた酸化チタン含有皮膜がより優れた光触媒性を示し、この場合、200℃未満の温度における乾燥でも十分な効果が得られることを見出した。
【0011】
即ち、本発明に係る金属材料の酸化チタン被覆方法(1)は、チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを、0.3〜200g/リットルの合計濃度で含み、且つ2mS/cm未満の電気電導度を有するコロイド溶液中に、金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電して、前記金属材料の表面上に、前記チタン化合物を含有する皮膜を形成し、この皮膜を乾燥または焼成することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の金属材料の酸化チタン被覆方法(2)は、チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを0.5〜100g/リットルの合計濃度で含み、さらに、アナターゼ型およびルチル型酸化チタンから選ばれた少なくとも1種の粒子を0.3〜200g/リットルの合計濃度で含み、且つ2mS/cm未満の電気電導度を有するコロイド溶液中に、金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電して、前記金属材料の表面上に、前記チタン化合物および酸化チタンを含有する皮膜を形成し、この皮膜を乾燥または焼成することを特徴とするものである。本発明でいうチタン酸とは、オルトチタン酸およびメタチタン酸も包含するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明方法に使用することができる金属材料は、例えばステンレススチール、銅、チタン、鉄、アルミニウム、亜鉛めっき鋼、およびすずめっき鋼を含む材料などである。これらの中でもステンレススチール、銅、および亜鉛めっき鋼材料などのように耐食性の高い金属材料を用いることがより好ましい。
【0014】
本発明の酸化チタン被覆方法は、電解液として特定の組成を有するコロイド溶液を使用し、この液中に浸漬された被処理金属材料を陽極体として、このコロイド溶液に通電してアノード電解が行われる。陰極体としてはステンレススチール、カーボン、白金めっきチタン等を使用することができるが、これらの中でも、性能、および経済性を考慮すればステンレススチール、アルミニウム、またはチタンを用いることがより好ましい。
【0015】
本発明方法(1)において、電解液中には、チタン酸、およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンが含まれることが必要である。これらの化合物のコロイド粒子は負の電荷を有していることが必要であるが、その電荷の量には特に限定がない。チタン酸およびペルオキソチタン酸のコロイド粒子が負の電荷を有していることはゼータ電位(界面動電位)計などによって確認することができる。
【0016】
これらチタン化合物のコロイド陰イオンの1次粒子径は、10nm未満であることが、得られる皮膜の密着性の点から好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。本発明方法(1),(2)に用いられるコロイド溶液中に、コロイド陰イオンの1次粒子が凝集して形成された2次粒子が多量に含まれることは好ましくないが、2次粒子の含有量が少量である限り、その粒径が100nmより大きな数値となっていても、得られる皮膜の密着性に及ぼす影響は小さい。
【0017】
コロイド陰イオンを形成するチタン酸(水和酸化チタン)は、例えば、塩化チタン、硫酸チタンなどの酸性チタン塩水溶液を好ましくは60〜80℃で加熱処理し、水酸化アルカリなどで中和して生じた沈澱を濾過、洗浄し、水または希酸中に再分散したり、透析やイオン交換によって脱イオン処理することにより得られる。
【0018】
一方コロイド陰イオンを形成するペルオキソチタン酸も前記と同様に塩化チタン、硫酸チタンなどの酸性チタン塩水溶液を原料とし、水酸化アルカリで中和して濾過し、得られたチタン酸を過酸化水素水に溶解する方法などによって得ることができる。
【0019】
チタン酸、およびペルオキソチタン酸の中では、ペルオキソチタン酸がより安定なコロイド陰イオンを形成するため、これを用いてより緻密で密着性の良い酸化チタン皮膜を得る事ができる。
【0020】
本発明方法(1)において、電着液中におけるコロイド陰イオンの合計濃度は、0.3〜200g/リットルであることが必要であり、好ましい濃度の範囲は3〜60g/リットルである。また、この濃度が0.3g/リットル未満では皮膜の形成が困難になり、またそれが200g/リットルを超えると、得られるコロイド溶液の粘性が増加して持ち出し損失が多くなり、不経済なため好ましくない。
【0021】
また、本発明方法(1)および(2)において、コロイド溶液(電解液)の電気電導度は2mS/cm未満であることが必要であり、好ましい電気電導度は0.6mS/cm未満であり、最も好ましい電気電導度の範囲は0.003〜0.3mS/cmである。電気電導度が2mS/cmを超えると、陽極金属材料表面からの金属イオンの溶出量が多くなり、得られる酸化チタン皮膜の密着性が低下したり皮膜の光触媒性を低下させるため好ましくない。
【0022】
本発明方法(1)および(2)において、コロイド溶液(電解液)中に、チタン化合物コロイド成分以外にCl- などの夾雑イオンを多く含むことは得られる皮膜の性質を低下させることになるため好ましくない。
【0023】
本発明方法(1)および(2)において、コロイド溶液(電解液)のpH値は、液中のイオン濃度が低いため、通常は4〜10の弱酸〜弱アルカリ性の範囲内にあるが、特にこの範囲に限定されるものではない。電気電導度が0.1mS/cm未満の場合には、コロイド溶液のpH値はより中性に近い値になる。
【0024】
本発明方法(1)および(2)において、電解電圧は、3〜250Vであることが好ましく、8〜80Vがより好ましい。電解電圧が3V未満では成膜速度が遅く、皮膜の密着性も低下することがあるため好ましくない。
【0025】
本発明方法(1)および(2)において、好適な通電時間は電圧により変動するが数秒〜180秒であることが好ましく、3〜60秒がより好ましい。コロイド溶液の温度は25〜45℃であることが好ましい。
【0026】
本発明方法(1)および(2)において、通電が終了した後、金属材料上に形成された皮膜を、水洗したのち乾燥、焼成することが好ましいが、コロイド溶液(電解液)の電気電導度が低い場合、(例えば0.6mS/cm以下)、水洗を省略して直ちに乾燥・焼成してもよい。乾燥を120℃未満で行ったのち、250〜500℃で焼成することがより好ましい。
【0027】
次に、本発明方法(2)においては、コロイド溶液(電解液)がチタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを含み、さらに酸化チタン粒子を含むことが必要である。この酸化チタン粒子は、アナターゼまたはルチル型の結晶性粒子であることが必要で、このうちアナターゼ型が好ましく、次いでルチル型が好ましい。酸化チタン粒子の粒子径は0.01〜0.5μmであることが好ましい。酸化チタン粒子の粒子径が0.01μm未満では、得られる皮膜を低温で乾燥した場合、その光触媒性が不十分となることがあるため好ましくなく、またそれが0.5μmを超えると粒子がコロイド溶液(電解液)中で沈降しやすくなることがあるため好ましくない。
【0028】
アナターゼまたはルチル型酸化チタン粒子は、前述と同様に、塩化チタン、硫酸チタンなどの酸性チタン塩水溶液を原料とし、これを60〜90℃程度に数十分程度保持して酸化チタン結晶粒子を成長させ、これをミクロフィルター等で濾別して水洗し、水中に再分散させることによって得られる。
【0029】
また、酸化チタン粒子は負電荷を有することが、その分散安定性を高くするために好ましく、この目的のために、酸化チタン粒子含有コロイド溶液中に、ノニオン、アニオン、または両性界面活性剤や、縮合りん酸塩などの分散剤を少量添加することは許容される。
【0030】
本発明方法(2)においては、コロイド溶液中のチタン酸コロイド陰イオン及び/又はペルオキソチタン酸コロイド陰イオンの合計濃度が0.5〜100g/リットルであり、かつアナターゼ及び/又はルチル型酸化チタン粒子の合計濃度が0.3〜200g/リットルであることが必要である。チタン酸コロイド陰イオン及び/又はペルオキソチタン酸コロイド陰イオンの合計濃度が0.5g/リットル未満では得られる皮膜の密着性が低下するため好ましくなく、またそれが100g/リットル以上では得られるコロイド溶液の粘性が増加し、持ち出し損失量が多くなるため好ましくない。また、酸化チタン粒子の合計濃度が0.3g/リットル未満では、その添加効果が不十分であり、またそれが200g/リットルを超えると持ち出し損失量が大きくなり不経済なため好ましくない。
【0031】
本発明方法(2)において、コロイド溶液(電解液)の電気電導度は本発明方法(1)と同様に2mS/cm未満であることが必要であり、その好ましい範囲も本発明方法(1)のそれと同様である。
【0032】
本発明方法(2)における電解条件、コロイド溶液温度も本発明方法(1)と同様であるが、乾燥後の焼成は必ずしも必要でなく、200℃未満の温度における乾燥により実用的に十分な密着性および光触媒性を有する皮膜を得ることが可能である。
【0033】
本発明方法(1)および(2)において、乾燥、または焼成後の皮膜は主として二酸化チタンからなり、特にアナターゼ型二酸化チタンを主成分とするが、電解、焼成条件によっては、アナターゼ型酸化チタンの他、ルチル型酸化チタン、無定型酸化チタンも含まれることがある。
【0034】
【作用】
本発明方法(1)および(2)は、金属表面に酸化チタン皮膜層を形成するため、電解液として、チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを含むコロイド溶液を使用している。前記の方法等により作製されたこれらのコロイドは、粒子が負電荷を帯びる性質を持ち、この負電荷によってコロイド陰イオンとなった粒子がクーロン力によって相互に反発し、コロイド粒子が凝集沈降することなく電解液中に分散して安定な状態を保っている。
【0035】
金属材料をこのコロイド溶液中に浸漬し、この金属材料を陽極として分極させ、コロイド溶液に通電すると金属表面近傍の負荷電コロイド粒子が金属表面に電荷を奪われて析出がはじまる。また、電解液中のコロイド陰イオンも電気泳動により陽極表面に到達し、電荷を奪われて析出する。また、この際金属表面から溶出する微量の金属イオンも、コロイド陰イオンの電荷を中和してゲル化析出を促進する作用を示す。金属表面に析出した粒子は、当初ゆるやかな網目状結合組織を形成し、この段階ではまだ完全には負電荷を失っていないため、電場の効果で電気浸透が起き、しだいに内部の水が皮膜外部に追い出され、粒子間の結合がより強固になり、それとともに皮膜の組織も緻密で高密度なものとなる。
【0036】
このように金属材料表面に生成した皮膜は、1μm以上の厚さを有しているにもかかわらず、その含水率が低いため、乾燥、焼成の際の体積収縮が少なく、金属材料表面との密着性に優れ、皮膜組織欠陥が少なく、光触媒効果も優れている。このような良質の酸化チタン皮膜は、ゾル−ゲル法をはじめとする従来方法では未だ得る事ができなかったものである。
【0037】
酸化チタン、チタン酸、およびペルオキソチタン酸の中ではペルオキソチタン酸がより安定なコロイド陰イオンを形成するため、より緻密で密着性の良い皮膜を得ることができる。析出したペルオキソチタン酸は、加熱乾燥、または200〜600℃で焼成することにより2酸化チタンとなる。
【0038】
本発明方法(2)においては、チタン酸コロイド陰イオンおよびペルオキソチタン酸コロイド陰イオンのうちの少なくとも1種と、これよりも粒子径が大で、光触媒活性の高いアナターゼまたはルチル酸酸化チタン粒子を混合分散したコロイド溶液(電解液)を使用している。このため、電解液中の酸化チタン粒子にチタン酸やペルオキソチタン酸のコロイド陰イオンが吸着してこれに負電荷を付与し、分散を安定化させる。
【0039】
また、本発明方法(2)において、前記コロイド溶液を電解液として使用し、被処理金属材料を陽極としてアノード電解することにより、コロイド陰イオンおよびコロイド陰イオンの吸着した酸化チタン粒子は、ともに被処理金属表面に泳動して共析し、複合皮膜を形成する。こうして形成された皮膜は、優れた密着性と良好な光触媒性を兼ね備えており、高温の焼成を施さなくとも優れた酸化チタン光触媒皮膜として実用可能である。
【0040】
また、本発明方法(1)および(2)において、コロイド溶液(電解液)の電気電導度も重要なファクターであり、電気電導度が高過ぎる場合、電解時に過剰の電流が流れるため、陽極を構成する金属材料表面から金属イオンが多量に溶出して皮膜中に入り込み、皮膜の特性を劣化させたり、陽極表面からの酸素ガスの発生により、皮膜にピンホールが生じたりする。このため電気電導度は2mS/cm未満でなければならない。また、コロイド溶液の電気電導度が低い方が電解電圧を高くできるため、それによってより密度の高い酸化チタン皮膜を形成することができる。
【0041】
また、本発明方法(1)および(2)によれば、用いられた電解電圧、および電解時間に応じて析出量が決まるため、均一な厚さの皮膜を正確に得ることも可能となる。
【0042】
【実施例】
本発明の金属材料の酸化チタン被覆方法を、下記実施例により具体的に説明する。
【0043】
実施例1〜8および比較例1〜4
金属材料板の作製
(前処理)
100mm×50mmの大きさの、ステンレススチール(SUS304)板、鋼板(SPCC)、銅板、チタン板、アルミニウム板(5052)、又は亜鉛めっき鋼板を使用し、その電解処理前に、アルカリ性水系脱脂剤(FC−W1120:日本パーカライジング(株)製)の20g/リットル濃度の水溶液で60℃×3分間脱脂を施し、水洗した。
【0044】
(電解液)
実施例および比較例の各々に使用された電解液の組成および電解条件を表1に示す。実施例および比較例に使用されたチタン酸コロイド陰イオン、ペルオキソチタン酸コロイド陰イオンは下記方法により調製して電解液に添加した。また、酸化チタン粒子は、日本アエロジル社製、二酸化チタンP−25(アナターゼ:70%、ルチル型30%の混合物:平均粒子径0.02μm)を使用した。
【0045】
コロイド陰イオンの調製
チタン酸コロイド陰イオン:
チタン酸(水和酸化チタン)コロイド陰イオンは、硫酸チタン水溶液(30%)を水で希釈し、70℃の温度で10分間加熱処理し、10%水酸化ナトリウムで中和して、生じた沈澱を濾紙で濾過し、洗浄したものを水に再分散して20%溶液として調製された。この液を水で希釈し、サブミクロン粒子分析装置((株)日科機製)でコロイドの平均粒子径を測定したところ、その1次粒子径は0.01μmであった。
【0046】
ペルオキソチタン酸コロイド陰イオン:
ペルオキソチタン酸コロイド陰イオンは、硫酸チタン水溶液(30%)を水で希釈し、10%水酸化ナトリウムで中和して生じた沈澱を濾過、洗浄し、得られたチタン酸を過酸化水素水に溶解して20%溶液として調製された。この液を水で希釈し、サブミクロン粒子分析装置((株)日科機製)でコロイドの平均粒子径を測定したところ、その1次粒子径は0.01μm未満であった。
【0047】
(電解処理)
前処理した金属材料板を30℃に保持した電解液中に浸漬し、これを陽極体とし、ステンレススチール板を陰極体として、極間距離10cmでコロイド溶液に通電して電解処理を行った。下記の条件で電解処理し、脱イオン水によりすゝぎ洗いしたのち120℃で5分間乾燥した。実施例1〜5、比較例2〜4においては、乾燥後にさらに400℃で5分間焼成を行った。
【0048】
(電解条件)
実施例1、実施例3、および比較例1:電流密度 2.0A/dm2
実施例2、実施例5、および比較例2:電流密度 1.2A/dm2
実施例4、実施例7、および比較例3:電流密度 3.5A/dm2
実施例6、実施例8、および比較例4:電流密度 7A/dm2
【0049】
皮膜の評価
作製された酸化チタン被覆金属材料板の皮膜の厚さを測定し、また皮膜の密着性および光触媒性について試験し、下記のように評価した。
皮膜密着性:
JIS K 5400碁盤目試験法によりカッターナイフで皮膜に1mm角の碁盤目のカットをいれたのち、その上にセロハン粘着テープ((株)ニチバン製)を貼付け、引き剥がして剥離面積を測定し、その測定値から下記の基準により判定した。
Figure 0003542234
【0050】
光触媒性:
金属材料板上の皮膜の表面に、試験油としてトリステアリン酸を塗布し、UVライト(15W)で紫外線を72時間照射し、塗布油の分解量(g/m2 )を紫外線照射前後の重量差から算出した。
皮膜の厚さおよび性能試験結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003542234
【0052】
【表2】
Figure 0003542234
【0053】
表1および表2から明らかなように、本発明の方法による実施例1〜8においては、十分な厚さを有する酸化チタン皮膜が得られ、その密着性および光触媒性はともに優れていた。
これに対し、本発明範囲外の処理条件による比較例1〜4において、比較例1,2では十分な厚さの皮膜が得られないため、その光触媒性は不十分であり、また比較3,4では、皮膜の密着性が不十分であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の方法により、密着性および光触媒性が良好で、十分な厚さを有する酸化チタン皮膜を金属材料上に形成することができる。
光触媒性に優れている酸化チタン皮膜は、汚れの付着防止、抗菌、防錆、並びに大気および水質浄化等の用途に利用し得るものであることから、本発明方法の産業上の利用価値はきわめて高いものである。

Claims (2)

  1. チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを、0.3〜200g/リットルの合計濃度で含み、且つ2mS/cm未満の電気電導度を有するコロイド溶液に、金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電して前記金属材料の表面上に、前記チタン化合物含有皮膜を形成し、この皮膜を乾燥または焼成することを特徴とする金属材料の酸化チタン被覆方法。
  2. チタン酸およびペルオキソチタン酸から選ばれた少なくとも1種のコロイド陰イオンを0.5〜100g/リットルの合計濃度で含み、さらに、アナターゼおよびルチル型酸化チタンから選ばれた少なくとも1種の粒子を0.3〜200g/リットルの合計濃度で含み、且つ2mS/cm未満の電気電導度を有するコロイド溶液中に、金属材料を浸漬し、この金属材料を陽極体として前記コロイド溶液に通電して、前記金属材料の表面上に、前記チタン化合物及び酸化チタンを含有する皮膜を形成し、この皮膜を乾燥又は焼成することを特徴とする金属材料の酸化チタン被覆方法。
JP17121796A 1996-07-01 1996-07-01 金属材料の酸化チタン被覆方法 Expired - Fee Related JP3542234B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17121796A JP3542234B2 (ja) 1996-07-01 1996-07-01 金属材料の酸化チタン被覆方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17121796A JP3542234B2 (ja) 1996-07-01 1996-07-01 金属材料の酸化チタン被覆方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1018082A JPH1018082A (ja) 1998-01-20
JP3542234B2 true JP3542234B2 (ja) 2004-07-14

Family

ID=15919219

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP17121796A Expired - Fee Related JP3542234B2 (ja) 1996-07-01 1996-07-01 金属材料の酸化チタン被覆方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3542234B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10237352A (ja) * 1997-02-24 1998-09-08 Tao:Kk 多機能コーティング剤
JP3080162B2 (ja) * 1998-01-27 2000-08-21 日本パーカライジング株式会社 酸化チタンゾルおよびその製造方法
US7820300B2 (en) * 2001-10-02 2010-10-26 Henkel Ag & Co. Kgaa Article of manufacture and process for anodically coating an aluminum substrate with ceramic oxides prior to organic or inorganic coating
US7569132B2 (en) 2001-10-02 2009-08-04 Henkel Kgaa Process for anodically coating an aluminum substrate with ceramic oxides prior to polytetrafluoroethylene or silicone coating
US7452454B2 (en) 2001-10-02 2008-11-18 Henkel Kgaa Anodized coating over aluminum and aluminum alloy coated substrates
JP4852696B2 (ja) * 2005-04-18 2012-01-11 国立大学法人東京工業大学 酸化チタン薄膜、酸化チタン薄膜を含む光触媒材料、その製造方法、光触媒水浄化装置、および光触媒反応を利用した水浄化方法
CN100417749C (zh) * 2005-09-27 2008-09-10 清华大学 一种氧化钛纳米材料薄膜的制备方法
US20090223811A1 (en) * 2006-05-12 2009-09-10 Tanah Process Ltd. Process for producing conductive substance with ion adsorbed thereon, method of regulating ion concentration, and ion supply source
KR101054351B1 (ko) * 2008-09-03 2011-08-04 주식회사 씨플러스 오폐수 처리장치
US9701177B2 (en) 2009-04-02 2017-07-11 Henkel Ag & Co. Kgaa Ceramic coated automotive heat exchanger components

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1018082A (ja) 1998-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhitomirsky Cathodic electrodeposition of ceramic and organoceramic materials. Fundamental aspects
KR100485955B1 (ko) 이산화티탄세라믹도료및그제조방법
JP5693819B2 (ja) 腐食防止剤のナノレザーバーを含む腐食防止顔料
JP3542234B2 (ja) 金属材料の酸化チタン被覆方法
KR100609393B1 (ko) 광촉매성 코팅제 조성물
CN106987875A (zh) 一种超疏水‑超疏油材料的制备方法
CN101469439A (zh) 镁合金表面高耐蚀性微弧氧化复合膜的制备方法
DE102011053509A1 (de) Verfahren zur Beschichtung von Oberflächen und Verwendung der nach diesem Verfahren beschichteten Gegenstände
Saji Electrophoretic‐deposited superhydrophobic coatings
CN104388923A (zh) 一种石墨烯改性氧化钛金属防腐蚀涂层的制备方法
WO2001023483A1 (en) Photocatalytic coating composition and product having thin photocatalytic film
JP3573574B2 (ja) 酸化チタン被覆金属材料の製造方法
Tang et al. Electrocoagulation coupled with conductive ceramic membrane filtration for wastewater treatment: Toward membrane modification, characterization, and application
JP3238349B2 (ja) 親水性、光触媒性および透光性に優れた酸化チタンセラミック塗料およびその製造方法
JP3251167B2 (ja) 酸化チタン系セラミック塗料およびその製造方法
Grosso et al. Electrophoretic deposition of luminescent materials
WO2012124717A1 (ja) 砥粒固着金属線及びその製造方法
JP2005171029A (ja) 塗料組成物、光触媒機能を有する膜の形成方法、及び光触媒部材
Peiró et al. Electrochemically assisted deposition of titanium dioxide on aluminium cathodes
CN102677124A (zh) 一种具有能量存储功能光催化薄膜的制备方法
CN102219395A (zh) 用层层自组装法制备超亲水氧化锌/氧化钛薄膜的方法
JP2008506627A (ja) ルチル構造を有する酸化チタン
CN109183131B (zh) 一种SiO2基复合超疏水金属表面的制备方法
JP3385243B2 (ja) 酸化チタンゾルの製造方法
Farrokhi-Rad Effect of Tris and acetic acid on the stability of titania nanoparticles in different alcohols and their electrophoretic deposition process

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040302

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040330

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090409

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090409

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100409

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110409

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120409

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130409

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140409

Year of fee payment: 10

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees