JP3150504B2 - 低乳糖乳製品およびその製造方法 - Google Patents

低乳糖乳製品およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原料乳から乳糖を一定
量除去した低乳糖乳製品に関し、特に、低褐変性でかつ
風味豊かな低乳糖乳製品およびその製造方法に関する。
かかる低乳糖乳製品は風味が良好で高温長時間の熱処理
を施しても褐変が少ないことから常温長期保存可能な密
封容器入り牛乳や乳飲料若しくは製菓、製パン用原料と
して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】乳は栄養価が高く、良質なタンパク質お
よびカルシウムの供給源であることから、大量に飲用さ
れている。現在、販売されている牛乳には低温殺菌牛
乳、UHT殺菌牛乳およびLL牛乳等あるが、近年缶入
りレトルト殺菌牛乳の販売量が増加している。しかしな
がら、乳は乳糖を多量に含んでいるため、レトルト殺菌
等の高温長時間の熱処理ではアミノカルボニル反応によ
り、牛乳の着色(褐変化)という問題が生じる。
【0003】乳中の乳糖を除去した製品としては、例え
ば、ト−タルミルクプロテイン(ミルクプロテインコン
セントレ−ト)等の低乳糖粉乳(乳糖含量:0.5〜
5.5%)が製造され上市されている。しかし、これら
はUF膜処理により乳糖を除去し、乾燥したものであ
り、乳糖ばかりでなくその他の低分子成分たとえばミネ
ラル(カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等)や風味
成分(アルデヒド類、ケトン類、エステル類、ラクトン
類等)が除去されているため、乳独特の好ましい風味に
乏しい。このため、レトルト処理牛乳、乳飲料等の飲料
の原料としては不適当である。また、製菓、製パン等の
ミルクフレ−バ−が好まれる食品への利用が制限され
る。
【0004】アミノカルボニル反応を防止する方法とし
ては、還元剤の添加による反応生成物の中間体の還元、
低温殺菌、pH調整等が挙げられるが、いずれも最終製
品の品質低下を招く恐れがあり一般的でない。例えば、
ホワイトソースの褐変を防止する目的でLーシスティン
またはLーシスチンを添加する技術(特公昭64ー58
63号公報)が知られているが製品に硫黄臭が発生する
ことがあり、風味への影響が避けられなかった。また、
L−シスチン及び/又はL−システィンを生乳のレトル
ト処理における褐変防止対策として用いる方法(特開平
2−207742号公報)も知られているが、上記のよ
うな弊害が懸念される上、効果が不充分で、褐変防止策
としては不完全なものであった。
【0005】また、乳糖量を減じて缶入り牛乳をレトル
ト殺菌し褐変を防止する技術は従来知られておらず、乳
中の乳糖量をどの程度にすれば高温長時間殺菌を経ても
褐変化の問題を生じないか、又、乳糖除去処理中低分子
の風味成分がどの程度分離するか等、従来全く未知であ
った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の有する問題点に鑑み、膜分離により乳糖を除去する
方法において、還元剤等の添加物に依存することなく褐
変化を有効に防止できる程度まで乳糖含有量を低減さ
せ、かつ乳糖以外の低分子風味成分の喪失を防止するこ
とにより、密封容器入りレトルト殺菌牛乳等の高温長時
間殺菌される乳製品の褐変の防止及び風味等を向上させ
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明は、原料乳の乳糖を含む膜透過液から部分的または
ほぼ完全に乳糖を除去した乳糖除去透過液を膜濃縮液に
還流することにより得られ、脂肪を除く固形量基準で乳
糖含量が40重量%以下であり、非還元性糖質が添加さ
れていることを特徴とする低乳糖乳製品である。乳製品
中の乳糖含量を40重量%以下にすることにより、アミ
ノカルボニル反応を効果的に抑止できるので、高温長時
間殺菌を施しても褐変化がほとんど問題とならない。更
に、乳糖を一定量以上除去した膜透過液を膜濃縮液に還
流することにより、風味成分やミネラル等の低分子成分
を選択的に膜濃縮液側に還元することができるので、乳
固有の風味を維持することができる。
【0008】また、本発明は、上記の低乳糖乳製品にお
いて、非通気性容器に充填され加熱処理されたことを特
徴とする密封容器入り低乳糖乳製品である。褐変が有効
に抑制されるので、密封容器に充填封入し、レトルト殺
菌を施すことにより、常温で長期保存が可能となる。
【0009】また、本発明は、上記の低乳糖乳製品にお
いて、非還元性糖質が添加されている低乳糖乳製品であ
る。乳糖が除去されると乳特有の濃厚感のある風味が損
なわれることがあるが、除去された乳糖に代え、非還元
性糖質を加えることにより、褐変化を抑制したままで風
味等を改善することができ、更に栄養上、牛乳と同等の
成分組成とすることができる。
【0010】また、本発明は、上記の低乳糖乳製品にお
いて、L−シスチン及び/又はL−システィンが添加さ
れている密封容器入り低乳糖乳製品である。L−シスチ
ン及び/又はL−システィンの添加により、低乳糖乳に
おいては特にレトルト処理時における処理時間の多寡に
よらず褐変防止効果が発揮され、また、少量の添加でよ
いので、硫黄臭等の悪影響を抑制でき、加えて、このも
のの存在下でレトルト処理することにより低乳糖乳の風
味を改善することが可能となる。
【0011】また、本発明は、原料乳を膜処理し濃縮液
と透過液に分けることによって原料乳中の乳糖を透過液
に優先的に分配し、得られる透過液中の乳糖を部分的ま
たはほぼ完全に除去し、この乳糖除去透過液を前記濃縮
液に還流し、非還元性糖質を添加することを特徴とする
低乳糖乳製品の製造方法である。乳原料の膜処理と膜透
過液還流処理の両者を採用することにより、乳糖を選択
的に除去しかつその他の低分子成分は効率よく還元でき
るので、所望の乳糖量への調整が他の成分へ影響を及ぼ
す事無く容易に実現できる。
【0012】上記製造方法における作用は概略次の通り
である。脂肪、蛋白質等の高分子画分を透過させないよ
うな膜処理で一定量の乳糖を含む低分子成分を透過液画
分(低分子画分)に分離した後、低分子画分から選択的
に乳糖を部分的あるいはほぼ除去し、ミネラルや風味成
分を含む残りの低分子画分を濃縮液画分の高分子画分に
加えると、乳糖含量は濃縮液中に残存するものと透過液
中に残存するものの合算となり、それぞれの残存量を調
整することで、製品中の乳糖含量をアミノカルボニル反
応を抑制できる53重量%以下に調整することができ、
また、還流する透過液と共に風味成分、ミネラル等の低
分子成分が濃縮液側に還元されるので、乳特有の濃厚感
のある風味を実現することができる。
【0013】以下、本発明を詳述する。
【0014】先ず、本発明において、脂肪を成分量の換
算に含めていないのは、脂肪は本質的成分ではなく膜処
理後に別途必要により添加でき最終製品中の脂肪含量を
所望により調整できるからであり、乳が脂肪を含有しな
いことではない。
【0015】次に、本発明における褐変化の基準は、全
脂乳または脱脂乳(乳糖含量は通常固形量基準で55〜
60重量%程度である。)を同一の熱処理条件に付した
場合に呈する色調との相対評価であり、一指標としては
後述する実施例で述べるように色彩色差計におけるb値
を基準に評価できる。好ましくはb値で10以下、更に
好ましくは7以下が良い。
【0016】本発明で用いることのできる原料乳として
は、牛乳、山羊乳、羊乳等の乳類の全脂乳や脱脂乳若し
くはバタ−ミルク等またはこれらを一旦乾燥粉末化した
後、水または水溶性媒体に溶解した還元乳等を挙げるこ
とができる。但し、本発明の目的が基本的に、原料乳か
らの風味成分を保持したまま乳糖を所望量除去した製品
を提供することであることからすれば、上記原料に限ら
ず目的とする製品により各種の原料乳を用いることを妨
げるものではない。例えば、チ−ズ製造において副生さ
れるホエ−、乳糖製造時に発生する母液等も用いうる。
【0017】これらの原料乳は限外ろ過膜による膜処理
(以下単に膜処理という。)に付されるが、好ましい原
料乳の形態は脱脂乳または還元脱脂乳であり、脂肪量は
全固形量の1%以下程度がよい。膜処理に際して乳中に
多くの脂肪が含有されていると膜処理中に膜の閉や膜の
洗浄に困難を生じ、膜処理の効率の低下を招く場合があ
るからである。この観点から原料乳は膜処理の前に前処
理を施してもよい。例えば、原料乳を遠心分離処理する
か、ポアサイズ0.5μm以下の精密ろ過膜(MF膜)
処理等により脂肪等の高分子成分を事前に除去しておく
ことにより、以後の膜処理を効率化することができる。
最終製品に脂肪が必要な場合は上記の膜処理後に必要な
脂肪量を添加すればよい。
【0018】次に、原料乳は膜処理に付され、濃縮液と
透過液に分けることによって原料乳中の乳糖を透過液と
共に分離する。即ち、透過液には乳糖、ミネラル、風味
成分等の低分子画分が優先的に分離され、濃縮液には脂
肪、蛋白質等の高分子画分が優先的に分離される。膜処
理に用いることのできる膜としては、限外ろ過膜(UF
膜)が好適である。限外ろ過膜では低分子の移動量はそ
の濃度によらず採取される濾液の量によって決まるので
高濃度でもダイアフィルトレ−ションにより効率よく分
離できるからである。また、低分子成分の分離が拡散に
よらず膜阻害率の差により行われるので、分画分子量が
比較的大きい限外ろ過膜を用いて分離効率を高めること
ができる。限外ろ過膜の分画分子量は、ダイアフィルト
レ−ションの有無、水性溶媒の補給量、平均ろ過速度等
によって適宜選定すればよいが、処理効率の点で好まし
くは5000〜15000Da程度が良い。15000
Daを超えると乳清タンパク質等が透過液側に混入し易
く、また、5000Da未満では乳糖が透過しにくくな
る。さらには6000〜10000Da程度が好まし
い。
【0019】膜処理によって得られる濃縮液中の乳糖含
量は原料乳のそれより低下していれば褐変化が抑制され
るが、顕著な抑制効果を奏するためには濃縮液の段階で
好ましくは脂肪を除く固形量基準(以下単に固形量基準
という。)で25重量%程度以下にしておく。この段階
で25重量%を超えると、濃縮液に透過液(乳糖除去透
過液)を加えた低乳糖乳の乳糖含量が40重量%を超
え、最終製品の乳糖含量が調整し難くなるためである。
【0020】ここで、低乳糖乳の乳糖含量が40重量%
を超えると、3%蛋白質乳または乳製品の風味及び濃厚
感は優れたものとなるが、乳または乳製品の高温長時間
殺菌時に褐変化が生じ易く品質が劣化する傾向がある。
【0021】また、低乳糖乳の乳糖含量の下限は、該低
乳糖乳に後述する非還元性糖質を添加するかどうかで設
定される。非還元性糖質を添加しない態様においては、
低乳糖乳中に残存する乳糖量により風味が決定されるか
らで、乳糖量が少な過ぎれば褐変化は顕著に抑止できる
が、濃厚感ある乳特有の味覚が損なわれるので、好まし
い下限は固形量基準で14重量%である。14重量%を
下回れば3%蛋白質乳とした乳製品等においては濃厚感
が低下する傾向がある。従って、この場合の最終製品中
の乳糖含量は14〜40重量%(3%蛋白質乳または乳
製品においては乳糖濃度1〜2.6%程度に相当す
る。)が最適範囲であるが、濃縮液中の乳糖含量が14
重量%未満であっても、透過液から除去される乳糖の量
を制限し濃縮液と透過液を合わせたときに固形量基準で
14〜40重量%の範囲に入っていれば良く、また合わ
せた後に別途乳糖を添加し含量を調整することもでき
る。従って、濃縮液中の乳糖含量の下限は特に制限され
ない。尚、本発明でいう還流には、同一原料乳から分画
した乳糖除去透過液を濃縮液に供給することはもちろ
ん、別の原料から分画した場合も包含するものである。
【0022】低乳糖乳に非還元性糖質を添加する場合
は、該非還元性糖質が乳糖に代わるので、低乳糖乳中の
乳糖量が14重量%より少なくとも風味上の弊害は小さ
い。従って、この場合は下限に制限はなく、膜処理、透
過液処理上の技術的な限界から決定される。実用性を考
慮したかかる下限は10重量%程度が好ましい。以下、
上述2通り(非還元性糖質の添加の有無)の場合の乳糖
量の下限を一括して、”Min”重量%で表わす。従っ
て、低乳糖乳中の好ましい乳糖量はMin〜40重量%と
なる。
【0023】尚、低乳糖乳の風味は乳糖量のみで決定さ
れるわけではなく、例えば、乳糖含量が固形量基準で上
記Min〜40重量%の範囲にあれば風味が良いというも
のではなく、膜透過液の還流による風味成分の還元を乳
糖含量調整の過程で実施することにより初めて良好な製
品が得られるのである。
【0024】非還元性糖質を添加する場合であっても、
特別な目的がある場合を除き、濃縮液中の乳糖含量を必
要以上に低減させる必要はなく、逆に低減しようとすれ
ば乳糖の分離を促進するために補給する水性媒体の量が
増加する結果、透過液が希釈され透過液量が増加するた
め、透過液からの乳糖の除去に際して膜透過液の大幅な
濃縮処理等が必要となり、乳糖の除去ばかりでなく、膜
濃縮液に還元すべき風味成分、ミネラル等の回収が困難
となる場合がある。従って、濃縮液中の乳糖含量は、過
度に除去するのは避け、後に加える透過液中にある程度
乳糖を残して最終的に固形量基準でMin〜40重量%と
するのがよく、これによって風味成分の効果的な保持が
可能となる。尚、乳中には乳糖の他にもグルコース等の
単糖類、二糖類等が含有されているが、微々たる量であ
り、褐変化への関与もそれほど大きくないので乳糖のみ
を糖類の指標として差し支えない。
【0025】但し、最終製品中の乳糖含量は、固形量基
準でMin〜40重量%の範囲が最良の範囲であって、こ
れ以外の範囲を排除するものではない。乳糖含量が原料
乳のそれより低減されており、かつ、膜透過液が還元さ
れている限り、褐変化の抑制および風味の保持に関して
改良効果を奏するものであり、目的とする製品特性によ
って適宜乳糖含量を調整することは任意である。本発明
の効果は固形量基準で乳糖含量53重量%以下、好まし
くは50重量%以下となる処理であれば奏することがで
きる。
【0026】膜処理条件としては、例えば、原料乳膜処
理温度30〜40℃、原料乳供給量5〜20 l/m2h
r 、平均透過流束0.5〜2.5 l/m2hr 程度であ
る。ダイアフィルトレ−ションで補給する水性媒体の量
は原料乳単位重量当たり0.25〜2倍量程度である。
濃縮液中の乳糖含量を少なくするには補給水性媒体量を
増加すればよい。原料乳のpHは特に調整の必要はなく
6.60〜6.80程度でよい。
【0027】次に、得られた透過液から、乳糖を部分的
またはほぼ除去する。除去量は濃縮液中の乳糖含量を考
慮し、最終製品の乳糖含量が最適には固形量基準でMin
〜40重量%となるように設定する。透過液中の乳糖は
完全に除去する必要はないので、乳糖を他の低分子成分
から分離する手段としては、膜処理透過液を濃縮し、微
細化(粒度1〜数10ミクロン程度)した乳糖をシ−デ
ィングして冷却し、乳糖を析出させ上澄みを回収する方
法が、処理工程の簡便さ等から好ましいが、これに限定
されるものではなく、例えば、エチルアルコールによる
乳糖析出等によっても実施できる。
【0028】シ−ディングによる方法では透過液中の乳
糖含量を、回収する上澄み量、シ−ディング量、析出時
間、温度等により調整することができる。シ−ディング
に当たっては透過液を乳糖濃度40〜60%程度まで濃
縮するとよい。濃縮手段は特に限定されない。例えば、
ロ−タリ−エバポレ−タ−を用いて湯浴上で水分を蒸発
させたり、多重効用缶、凍結濃縮等により行うことがで
きる。濃縮処理中には水分だけではなく他の風味成分等
の低分子成分も揮散するので、膜処理でダイアフィルト
レ−ションの補給水を多量に用いて乳糖含量を必要以上
に低減させた場合は、透過液の濃縮処理中に風味成分も
喪失する可能性がある。この場合は、透過液の濃縮を緩
和な条件(例えば、RO膜処理で予備濃縮)で行うとよ
いが、いずれにしても、前述したように過度に膜処理で
乳糖を分離しない方がよい。 本発明の方法により膜処
理と膜透過液還流処理の両者によって乳糖含量を調整
し、低乳糖乳の乳糖含量を最良範囲である固形量基準で
Min〜40重量%にする手段には何通りかある。次に非
還元性糖質を添加しない場合の態様の例を示すが、該糖
質を添加する場合も同様に考えることができる。 膜濃縮液の乳糖含量を低乳糖乳の乳糖含量に換算して
14〜40重量%とし、膜透過液中の乳糖をほぼ除去
し、低乳糖乳の乳糖含量を14〜40重量%とする。 膜濃縮液の乳糖含量を低乳糖乳の乳糖含量に換算して
40重量%以下とし、膜透過液中の乳糖を部分的に除去
し、合わせて低乳糖乳の乳糖含量を14〜40重量%と
する。 膜濃縮液の乳糖含量を低乳糖乳の乳糖含量に換算して
40重量%以下とし、膜透過液中の乳糖をほぼ除去し、
別途乳糖を添加し、合わせて低乳糖乳の乳糖含量を14
〜40重量%とする。
【0029】上記〜はいずれも本発明の効果を奏す
るが、乳糖除去の効率、風味成分の保持等の観点から
、 、 の順で好ましい。
【0030】このようにして得られた低乳糖乳はレトル
ト殺菌等の高温長時間の熱処理によっても著しい褐変化
を生ずることなく良好な色調を維持する。尚、褐変化の
程度は、色彩色差計により色彩色差(L,a,b)を測
定し、褐変の度合いを示すと考えられるb値により評価
することができる。官能検査の結果、褐変が有意に抑制
されていると評価できるb値は概ね7以下であった。
【0031】代表的な低乳糖乳の組成としては、非還元
性糖質等を添加しない場合は、固形量基準で蛋白質50
〜77重量%、乳糖14〜40重量%、灰分7.4〜
8.5重量%であるが、目的とする製品に応じて調整す
ることができ、また、脂肪は適宜所望により別途添加し
てもよい。尚、製品中の固形物量は、用途、目的に従
い、水等で適宜調整すればよく、牛乳の場合では固形分
8.0〜13.0%程度である。
【0032】次に、上述のようにして得られた低乳糖乳
には、加熱処理前に、必要により各種添加剤等を添加す
ることができる。最も有効な添加物は、非還元性糖質で
ある。非還元性糖質は、低乳糖乳の風味を改善し乳特有
の濃厚感ある風味を付与するという目的だけでなく、栄
養上、牛乳の成分と同等にする目的もある。非還元性糖
質を添加する態様においては、低乳糖乳中に乳糖が含ま
れていなくともよいので、そうでない場合の乳糖量の下
限である固形量基準で14重量%以上という制限は受け
ない。非還元性糖質は糖質源として機能するが、加熱処
理によって褐変を起し難い。用いることができる非還元
性糖質としては、エリスリトール、キシリトール、ソル
ビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチト
ール、ラクチトール等の糖アルコールが代表的である。
この他、還元性の小さいパラチノース等、特定の二糖類
や少糖類も用いることが可能である。好ましい非還元性
糖質としては、ラクチトール、パラチノース等である。
これらの代替糖質はいずれも乳糖に比べて甘味度が高い
ので、除去した乳糖量と同等かそれ以下の添加量で足り
るが、通常、低乳糖乳を基準として1〜5%程度の添加
でよい。非還元性糖質の添加は、上記範囲より少なくて
は添加する意義がなく、その範囲を超えて添加すれば甘
味が強くなって牛乳等と同等の甘味にはならない。ま
た、L−シスチン及び/又はL−システィンを低乳糖乳
に添加することにより、少量残存している乳糖による褐
変化を防止できる。本発明においては、乳糖の残存量が
生乳に比べて有意に少ないことから、添加量を低減でき
るので、硫黄臭等による風味上の弊害を顕在化させるこ
とがない。更には、低乳糖乳におけるL−シスチン及び
/又はL−システィンの添加は、生乳などにおける添加
に比べて、レトルト処理時の加熱時間の多寡の影響を受
けずに褐変化抑制効果を発揮する。即ち、L−シスチン
及び/又はL−システィンを加えることにより、レトル
ト処理時間が何等かの理由により仮に伸びたとしても、
褐変化が生乳に比較して緩和されるため製品にその影響
が現れ難いという許容性がでてくる。L−シスチン及び
/又はL−システィンの添加量は、通常、製品重量に対
して0.01〜0.1%程度の添加でよい。添加量が少
なければ、添加による効果が顕著でなく、多過ぎれば硫
黄臭により風味が悪くなり、またpHの低下によって乳
蛋白質が凝固して保存中に沈澱する。
【0033】これらの添加物と低乳糖乳を混合する手段
には特別なものは必要ではなく、添加後に一定温度(7
0〜80℃程度)に加温し、TKホモミキサー等で均質
化すればよいが、均質後に混合しても、充分均一に混合
できるのであれば問題ない。添加物としては、この他、
バター等の油脂を初め、ビタミン類、ミネラル類、高甘
味度甘味料、呈味成分、色素、香料、賦形剤、増量剤、
乳化剤等を、目的と用途に応じて添加し、製品化を図る
ことができる。但し、香料は本製品の風味が優れている
ため特段添加の必要性はない。
【0034】このようにして得られた低乳糖乳製品は、
そのまま非通気性の密封容器に充填しレトルト処理に付
すことができるが、この他、常法により、顆粒状や粉末
状とすることができる。また、密封容器に充填すること
なく、滅菌処理し、無菌充填により容器に充填すること
ができる。次に、レトルト処理品について説明する。
【0035】非通気性の密封容器とは、缶容器、瓶容
器、または複合紙容器等の気密性があり耐熱性を有する
ものである。レトルト処理条件は、温度115〜130
℃の範囲で実施するとよい。
【0036】処理時間は、処理温度、容器の大きさ等に
より相違するので、実験的に求める必要があるが、例え
ば微生物の殺菌効果をF値で表わし管理することができ
る。ここで、通常のレトルト温度は、F値の基準として
食品衛生法に定められている120℃、4分からもわか
るように、120℃前後が一般的であるが、本発明にお
いては、より高温における処理でも褐変化を抑止するこ
とができるだけでなく、F値を一定とすると比較的高温
での処理の方が褐変防止効果が高い。例えば、125〜
130℃での処理では、115〜120℃での処理に比
べて色彩色差計におけるb値が1/2程度に抑えられ
る。130℃を超える温度における処理ではその過程に
おいて、すでに必要とするF値に達してしまい工程管理
が難しくなる。また115℃未満の温度における処理で
は微生物を死滅させるために殺菌時間が長時間におよび
品質上好ましくない。このようにして製造された低乳糖
乳製品(特に低乳糖乳飲料)は、常温下で長期保存して
も褐変を起さず、かつ風味の良好な優れた製品となる。
【0037】本発明の低乳糖乳または低乳糖粉乳によれ
ば、褐変化を低減し風味及びコクのある加熱処理乳製品
を提供できる他、さらに、この低乳糖乳または粉乳を副
原料として用い、褐変を低減または褐変を調節した乳製
品食品を提供できる。また、乳糖不耐症の人のための良
質な栄養源として自然な風味を有する乳、乳製品の提供
も可能となる。
【0038】尚、風味成分の検証は例えば、ガスクロマ
トグラフィー等により行うことが可能である。
【0039】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0040】参考例1 3リットルの脱脂乳(水分91.55%、蛋白質3.1
%、脂肪0.05%、乳糖4.6%、灰分0.72%:
蛋白質93g、乳糖138g、灰分22g)を分画分子
量6000Daの膜(旭化成工業社製、AIP−101
0、膜面積0.2m2 )を用いて供給量10リットル/
2hr 、平均透過流束2リットル/m2hr で限外ろ過
(UF)処理(40℃)し、UF透過液7.5リットル
(水分98.3%、蛋白質0%、脂肪0%、乳糖1.5
%、灰分0.2%:蛋白質0g、乳糖111g、灰分1
7g)を得た。ダイヤフィルトレ−ションに用いる水の
量は6リットルとした。また、UF濃縮液は1.5リッ
トル採取された(水分91.6%、蛋白質6.2%、脂
肪0.1%、乳糖1.8%、灰分0.3%:蛋白質93
g、乳糖27g、灰分5.0g)。
【0041】UF透過液7.5リットルは、ロ−タリ−
エバポレ−タ−を用い、50℃の湯浴中で300mlまで
濃縮した。乾燥したα−乳糖を乳鉢で粉砕(平均粒径3
0μm程度)し、その300mgを22℃とした濃縮透過
液中に加え、さらに冷却撹拌した。乳糖析出後、乳糖を
ろ過して上澄み液140ml(水分90.4%、蛋白質
0%、脂肪6.4%、乳糖6.4%、灰分3.2%:蛋
白質0g、乳糖9g、灰分4.5g)を膜処理濃縮液に
加え、更に1.36リットルの水を加え、風味良好な低
乳糖乳3リットル(水分95.35%、蛋白質3.10
%、脂肪0.05%、乳糖1.18%、灰分0.32
%:蛋白質93g、乳糖36g、灰分9.5g)を得
た。また、得られた低乳糖乳をスプレ−ドライヤ−で乾
燥し、低乳糖粉乳80gを得た。対照として、UF膜処
理した上記濃縮液に単に同量程度の乳糖を加えたサンプ
ルも同時に調製した。出来た低乳糖粉乳の一般組成を表
1に示した。一般組成はほぼ同一としたが、灰分は低乳
糖乳の方が多く含まれており、これは乳糖除去透過液の
還流によって灰分とともに風味成分が還元されたことを
示している。サンプルと対照サンプルについて官能検査
(8名)を実施したところ、対照サンプルに比べて風味
が良いという結果が得られた(表2)。尚、糖質は乳糖
と見なせるからその様に表示してある。
【0042】
【表1】 表1 低乳糖乳の一般組成(単位:g/100g) ────────────────────────────────── 水分 脂肪 蛋白質 灰分 乳糖 ────────────────────────────────── 低乳糖粉乳 3.7 1.5 66.0 9.6 19.2 対照 3.2 1.6 67.0 6.0 22.2 ──────────────────────────────────
【0043】
【表2】 また、調製した低乳糖粉乳を用いて、3%蛋白質溶液
(牛乳の蛋白質濃度)を調製し、オ−トクレ−ブによる
殺菌処理(118℃、20分)を行い、色彩色差計(ミ
ノルタ社製、CR−100)により色彩色差(L,a,
b)を測定した。比較の対照は市販の脱脂乳を還元した
ものを用いた。褐変の度合いを示すと考えられるb値は
低乳糖粉乳で明らかに低い値を示し、褐変が低減してい
ることが示された(表3)。
【0044】
【表3】 表3 褐変化(色彩色差b値) ─────────────────────────────── b値 ─────────────────────────────── 還元低乳糖乳(低乳糖乳を蛋白質濃度3%に還元) 6.4 還元脱脂乳(脱脂粉乳を蛋白質濃度3%に還元) 14.1 ───────────────────────────────参考例 2 それぞれ3リットルの脱脂乳を実施例1と同様に処理
し、表4に示したサンプルA,B,Cについてはダイア
フィルトレーションなしの膜処理のみ、他のサンプルD
〜Jはダイアフィルトレーションに用いる水の量をそれ
ぞれ0.75,1.50,2.25,3.00,3.7
5,4.50,6.00リットルで調整した。UF透過
液はA〜Jでそれぞれ0.50,1.00,1.50,
2.25,3.00,3.75,4.50,5.25,
6.00,7.50リットル採取し、ロータリーエバポ
レーターを用い、50℃の湯浴中で300mlまで濃縮
した。乾燥したαー乳糖を乳鉢で粉砕し、濃縮した透過
液が22℃になった時点で300mgを加え、さらに冷
却攪拌した。乳糖析出後、乳糖をろ過して上澄み液を膜
処理濃縮液に加え、風味良好な低乳糖乳を得た。各サン
プルの乳糖含量等の変化を表4に示す。
【0045】
【表4】 表4 低乳糖乳の成分変化 ────────────────────────────────── サンプル A B C D E F G H I J ────────────────────────────────── 濃縮液量 2.5 2.0 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 乳糖 115.0 92.0 69.2 56.2 34.5 27.6 23.2 20.1 17.2 13.8 蛋白 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 灰分 17.0 13.4 11.4 9.0 7.3 5.3 3.8 3.4 2.7 2.5 透過液量 0.50 1.00 1.50 2.25 3.00 3.75 4.50 5.25 6.00 7.50 乳糖 20.0 40.0 62.0 81.0 99.0 109.0 113.0 116.0 120.0 120.0 蛋白 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 灰分 4.0 7.3 11.2 13.5 16.5 17.6 18.3 18.9 19.3 19.8 上澄液量 280.0 243.0 205.0 146.0 148.0 148.0 122.0 118.0 108.0 100.0 乳糖 9.8 21.9 32.6 14.9 12.7 9.6 4.3 3.2 1.5 0.6 蛋白 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 灰分 1.3 3.8 4.0 4.3 4.4 4.5 4.5 4.5 4.6 4.6 低乳糖乳 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 乳糖 124.8 113.8 101.8 70.1 47.2 37.2 27.5 23.3 18.7 14.4 蛋白 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 93.0 灰分 18.3 17.2 15.4 13.3 11.7 9.8 8.3 7.9 7.3 7.1 ────────────────────────────────── * 単位: 濃縮液量(l) 、透過液(l) 、上澄液(ml)、低乳
糖乳(l) 、乳糖・蛋白・灰分(g) 次に、得られた低乳糖乳をスプレードライヤーで乾燥
し、種々の乳糖含量の低乳糖乳を得た。得られた低乳糖
粉乳の一般組成を表5 に示した。また、調製した低乳糖
粉乳10種類を用いて、3%蛋白質溶液(牛乳の蛋白質
溶液濃度)を調製し、オートクレーブにより殺菌処理
(118℃、20分)を行い、色彩色差計により色彩色
差(L,a,b)の測定および官能検査を行った。オー
トクレーブによる殺菌処理後の、褐色の度合を示すと考
えられるb値は乳糖含量の低下に伴い明らかに低い値を
示し、いずれのサンプルも乳糖除去透過液を還流したた
め風味は良好であった。特にサンプルD〜Gは色調、風
味、濃厚感のいずれも良好であったが、サンプルA,
B,Cでは乳糖含量が固形量基準で40重量%を超えて
いたため風味や濃厚感は良好であったが、他のサンプル
よりb値が高く脱脂乳との差が小さかった。また、サン
プルH,I,Jは乳糖含量が固形量基準で14重量%未
満であったため褐変化は見られなかったが、濃厚感が無
くフラットになったが、風味は良好であった(表6)。
但し、サンプルH,I,Jは乳糖含量を固形量基準で1
4〜40重量%の範囲になるように乳糖含量の高い上澄
み液または乳糖を添加することにより、濃厚感を改善で
きた(表6中、H、I、Jの「濃厚感」のカッコ中の評
価はこれを示す。)。
【0046】
【表5】 表5 低乳糖粉乳の組成(単位:%) ────────────────────────────── 水分 脂肪 蛋白質 灰分 乳糖 ────────────────────────────── 原料脱脂粉乳 4.5 0.6 32.0 8.6 54.3 サンプルA 3.6 0.6 37.2 8.5 50.1 〃 B 3.6 0.7 40.4 8.5 46.8 〃 C 3.0 1.0 44.5 8.4 43.1 〃 D 2.1 0.8 50.9 8.3 37.9 〃 E 3.2 1.0 57.3 8.2 30.3 〃 F 3.7 1.1 65.3 7.8 22.1 〃 G 3.9 1.3 73.1 7.4 14.3 〃 H 3.7 1.2 76.3 7.4 11.4 〃 I 4.1 1.5 80.5 7.2 6.7 〃 J 3.9 1.4 82.5 7.2 5.0 ─────────────────────────────── 比較例1 実施例1または2の要領で脱脂乳を膜処理し濃縮液を
得、乳糖を除去した透過液を添加せず、乳糖含量だけを
調整した対照群をサンプルK,L,Mとし、実施例2と
同様に評価し表6に示した。表6にある通り、対照群は
いずれも風味が悪かった。尚、実施例2と同じ乳糖含量
であるにも係わらず比較例ではb値が若干大きいのは乳
糖除去透過液の還流がないため、Ca、Mg等の塩類の
影響が考えられる。
【0047】
【表6】 表6 殺菌後の色彩色差および風味(3%蛋白質溶液) ────────────────────────────── サンプル 殺菌後 官能評価 (乳糖含量) L a b 色調 風味 濃厚感 ────────────────────────────── 脱脂乳(4.6%) 78.4 -0.6 13.0 x ◎ ◎ 透過液添加 サンプルA(4.0%) 78.7 0.1 9.4 △ ◎ ◎ 〃 B(3.5%) 79.0 0.0 8.6 △ ◎ ◎ 〃 C(2.9%) 79.5 0.0 7.7 △ ○ ○ 〃 D(2.6%) 80.3 0.0 6.4 ○ ○ ○ 〃 E(2.2%) 80.7 0.0 5.3 ○ ○ ○ 〃 F(1.6%) 81.4 0.2 4.3 ○ ○ ○ 〃 G(1.0%) 81.8 0.1 3.0 ○ ○ ○ 〃 H(0.4%) 82.5 0.2 1.1 ○ ○ △(○) 〃 I(0.2%) 83.6 0.3 -0.1 ○ ○ x(○) 〃 J(0.1%) 81.5 0.6 0.4 ○ ○ x(○) 透過液無添加 サンプルK(4.0%) 79.3 0.6 10.5 △ x ◎ 〃 L(2.2%) 82.1 0.8 6.1 ○ x ○ 〃 M(1.0%) 83.5 1.1 3.0 ○ x ○ ────────────────────────────── 官能評価(風味)◎ー風味良好 ○ーかなり良好 △ーや
や不良 xー風味悪い 官能評価(濃厚感)◎ー濃厚感良好 ○ーかなり良好 △
ーややフラット xーフラット実施例1 3リットルの脱脂乳を分画分子量6000Daの膜(旭
化成工業社製、AIP−1010、膜面積0.2m2
を用いて供給量10リットル/m2hr 、平均透過流束2
リットル/m2hr で限外ろ過(UF)処理(40℃)
し、UF透過液5.4リットル(水分97.5%、蛋白
質0%、脂肪0%、乳糖2.1%、灰分0.4%:蛋白
質0g、乳糖113g、灰分22g)を得た。ダイヤフ
ィルトレ−ションに用いた水の量は3リットルとした。
また、UF濃縮液は5倍濃縮を行い0.6リットル採取
された(水分77.0%、蛋白質18.1%、脂肪0.
5%、乳糖2.6%、灰分0.5%:蛋白質108g、
乳糖15.6g、灰分3.0g)。
【0048】UF透過液5.4リットルは、ロ−タリ−
エバポレ−タ−を用い、50℃の湯浴中で300mlまで
濃縮した。乾燥したα−乳糖を乳鉢で粉砕(平均粒径3
0μm程度)し、その300mgを22℃とした濃縮透過
液中に加え、さらに冷却撹拌した。乳糖析出後、乳糖を
ろ過して上澄み液140ml(水分70.0%、蛋白質
0%、脂肪0%、乳糖14.2%、灰分15.8%:蛋
白質0g、乳糖19.9g、灰分22.1g)を膜処理
濃縮液に加え、約5倍濃縮(全固形の24.4%)の風
味良好な低乳糖乳0.74リットル(水分75.35
%、蛋白質14.65%、脂肪0.41%、乳糖4.8
0%、灰分3.40%:蛋白質108g、乳糖35.5
g、灰分25.2g)を得た。
【0049】得られた低乳糖乳20重量%、ラクチトー
ル5重量%、バター4重量%、乳化剤(モノグリセライ
ド)0.2重量%、L−シスチン0.05重量%、残り
水を混合したものを75℃に加温後、TKホモミキサー
で10分間混合溶解した。この溶液をホモジナイザーに
て均質化(均質圧力:50−150−200kg/cm2
し、95℃に加温した後に容量100mlのバイアル瓶に
約90ml充填後、115℃で20分、30分、40分間
それぞれレトルト処理を行った。得られた製品の成分組
成は、水分87.74%、蛋白質3.02%、脂肪3.
66%、乳糖0.97%、その他糖質3.93%、灰分
0.68%であった。
【0050】対照として、牛乳97重量%に、乳化剤
0.2重量%、L−シスチン0.05重量%を混合した
ものを75℃に加温後、TKホモミキサーで10分間混
合溶解し、この溶液をホモジナイザーにて均質化(均質
圧力:50−150−200kg/cm2)し、95℃に加温
した後に容量100mlのバイアル瓶に約90ml充填後、
115℃で20分、30分、40分間それぞれレトルト
処理を行った。得られた製品の成分組成は、水分87.
98%、蛋白質3.16%、脂肪3.53%、乳糖4.
06%、その他糖質0.59%、灰分0.68%であっ
た。
【0051】それぞれの製品について、色彩色差計によ
りb値を測定し、褐変状態を調べた結果を表7に示す。
表から明らかなように、低乳糖乳製品は20分間の加熱
時間においても褐変が顕著に少なく、更に加熱時間の延
長による褐変化の度合も対照品より顕著に抑制されてい
た。
【0052】
【表7】 表7 褐変化(色彩色差b値) ───────────────── 115℃ 対照品 低乳糖乳製品 ───────────────── 20分間 7.5 4.9 30分間 8.6 5.4 40分間 9.7 5.9 ───────────────── 増加△ 2.2 1.0 ───────────────── また、115℃で20分間処理した対照品と低乳糖乳製
品を、牛乳嗜好度の高い分析型パネラー30名により官
能検査を実施したところ、対照品に比べて低乳糖乳製品
は有意に色が白くかつ風味はかわらないという結果を得
た。
【0053】
【表8】 表8 官能検査結果(絶対評価) ────────────────────────────── 評価項目 対照品 低乳糖乳製品 5%有意差 ────────────────────────────── 色の好ましさ −2.17 0.40 あり 香の好ましさ −1.47 −1.10 なし 甘味の強さ −0.47 −0.10 なし コク味の有無 −0.17 0.07 なし フレッシュ感の有無 −1.20 −1.10 なし 後味の好ましさ −1.00 −1.40 なし ──────────────────────────────実施例2 実施例1 と同様にして製造した低乳糖乳飲料を、115
℃、120℃、125℃、130℃の各温度帯でそれぞ
れ最終F値が10になるように加熱時間を設定し、レト
ルト処理を行った。即ち、115℃で30分、120℃
で10分、125℃で3分、130℃で1分であった。
その結果、表9に示す様に、同一F値(同一殺菌効果に
おいては)では低温長時間処理よりも高温短時間処理に
おいて特に、褐変が抑えられる傾向があった。
【0054】
【表9】 実施例3 実施例1 のラクチトールに代えてパラチノースを4重量
%加えた以外は実施例1と同様にして低乳糖乳を処理し
たところ、実施例1と同様に色、風味ともに良好であっ
た。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、乳製品中の乳糖含
量を40重量%以下にすることにより、アミノカルボニ
ル反応を効果的に抑止できるので、高温長時間殺菌を施
しても褐変化がほとんど問題とならない。更に、乳糖を
一定量以上除去した膜透過液を膜濃縮液に還流すること
により、風味成分やミネラル等の低分子成分を選択的に
膜濃縮液側に還元することができるので、乳固有の風味
を維持することができる。
【0056】また、このものは褐変が有効に抑制される
ので、非通気性の密封容器に充填封入し、レトルト殺菌
を施すことにより、常温長期保存が可能となる。
【0057】また、乳糖が除去されると乳特有の濃厚感
のある味覚が損なわれることがあるが、除去された乳糖
に代え、非還元性糖質を加えることにより、褐変化を抑
制したままで風味等を改善することができ、更に栄養
上、牛乳と同等の成分組成とすることができる。
【0058】また、L−シスチン及び/又はL−システ
ィンの添加により、低乳糖乳においては特にレトルト処
理時における処理時間の多寡によらず褐変防止効果が発
揮され、また、少量の添加でよいので、硫黄臭等の悪影
響を抑制でき、加えて、このものの存在下でレトルト処
理することにより低乳糖乳の風味を改善することが可能
となる。
【0059】また、乳原料の膜処理と膜透過液還流処理
の両者を採用した本発明の製造方法により、乳糖を選択
的に除去しかつその他の低分子成分は効率よく還元でき
るので、所望の乳糖量への調整が他の成分へ影響を及ぼ
す事無く容易に実現できる。
【0060】このように低褐変性であって乳糖含量を低
減したことから、乳糖不耐症の人への良質な栄養源とし
て利用ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石川 秀敏 北海道札幌市西区八軒1条東2丁目2− 33−606 (72)発明者 黒澤 誠治 北海道札幌市北区太平7条6丁目2−29 (72)発明者 松野 一郎 埼玉県入間市東藤沢7丁目43−3 B 202 (56)参考文献 特開 昭62−186742(JP,A) 特公 昭45−39017(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/00 - 9/156

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料乳の乳糖を含む膜透過液から部分的
    またはほぼ完全に乳糖を除去した乳糖除去透過液を膜濃
    縮液に還流することにより得られ、脂肪を除く固形量基
    準で乳糖含量が40重量%以下であり、非還元性糖質が
    添加されていることを特徴とする低乳糖乳製品。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の低乳糖乳製品において、
    非通気性容器に充填され加熱処理されたことを特徴とす
    る密封容器入り低乳糖乳製品。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の低乳糖乳製品に
    おいて、L−シスチン及び/又はL−システィンが添加
    されている密封容器入り低乳糖乳製品。
  4. 【請求項4】 原料乳を膜処理し濃縮液と透過液に分け
    ることによって原料乳中の乳糖を透過液に優先的に分配
    し、得られる透過液中の乳糖を部分的またはほぼ完全に
    除去し、この乳糖除去透過液を前記濃縮液に還流し、非
    還元性糖質を添加することを特徴とする低乳糖乳製品の
    製造方法。
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