JP2885829B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JP2885829B2 JP1157288A JP15728889A JP2885829B2 JP 2885829 B2 JP2885829 B2 JP 2885829B2 JP 1157288 A JP1157288 A JP 1157288A JP 15728889 A JP15728889 A JP 15728889A JP 2885829 B2 JP2885829 B2 JP 2885829B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、自動車、農業機械、建設機械及び鉄鋼機械
等に使用される転がり軸受に係り、特に、トランスミッ
ションやエンジン用として求められる長寿命な転がり軸
受に関する。
〔従来の技術〕
従来から、例えば自動用に求められる高面圧の状態で
使用される転がり疲れ寿命(以下、寿命、とも言う)が
長い転がり軸受については、接触面圧に起因する内部せ
ん断応力分布に合わせて、硬さカーブを設定する必要か
ら、焼入性の良好な低炭素肌焼鋼SCR420H,SCM420H,SAE8
620H,SAE4320H等を用い、これに浸炭熱処理又は浸炭窒
化処理を施すことにより、内外輪及び転動体の表面部硬
さがHRC58〜64であり、かつその芯部硬さがHRC30〜48に
なるようにして軸受全体の硬度を上げていた。
また、米国特許第4191599号では、高炭素合金鋼を浸
炭雰囲気下で加熱処理し、表面のMs点を芯部より低くし
て、焼入れにより熱応力型の変態をさせ、表面に圧縮の
残留応力を残した長寿命の転がり軸受が開示されてい
る。
さらに、米国特許第4023988号では、C:0.6〜1.5重量
%、Cr,Mn,Ni,Cu,Moから選ばれる熱間成形型の低合金鋼
を用い、炭化物を微細化した長寿命の転がり軸受が開示
されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記従来の肌焼鋼SCR420H等におい
て、浸炭硬化層を深くしようとすると、基地の炭素量
(ベースカーボン量)が低いために、浸炭処理を高温か
つ長時間行なわなければならず、これでは熱処理生産性
が低下する。一方、表面炭素濃度を高くすると、上記肌
焼鋼のCr含有量が高いために初析が生じやすく、転がり
疲れ寿命が低下する。そこで、SAE8620H及びSAE4320Hで
は、Cr含有量を減じて他の元素(Ni,Mo)を添加して焼
入性を確保しているが、これでは材料コストが増加す
る。また、この肌焼鋼の浸炭熱処理または浸炭窒化熱処
理時、時として、結晶粒が粗大となり、これが応力集中
源となるため、転がり疲れ寿命が低下する。
一方、これ以外の従来例でも、高価なMo,Ni,Cr等を含
有しているために、長寿命な転がり軸受を得るには高コ
ストとならざるを得なかった。そして、上記米国特許第
4023988号の従来例では、微細な炭化物を形成するため
には、例えば、spheroidzing anneal,rough forming,na
rdning austenitizingなどの複雑な熱処理を必要とし、
熱処理生産性の低下を避けることができなかった。
米国特許第4191599号では高価な元素であるMo,W,Crを
比較的多く含有し、コスト高になると共に、表面に残留
の圧縮応力を付与する機構のみでは異物混入潤滑下では
長寿命とすることができなかった。
すなわち、転がり疲れ寿命が低下する原因として、軸
受潤滑油中に混入した金属の切粉、削り屑、バリ、摩耗
粉等の異物により軸受表層部に生じた損傷(圧痕)を起
点として伝播するマイクロクラックによって発生するフ
レーキング(ハクリ)、がある。そして、軸受の基地中
に存在し、硬度が高く塑性変形能が小さいために応力集
中源となる非金属介在物があり、この非金属介在物によ
って応力集中緩和効果を十分達成し得ないことにっても
上記転がり疲れ寿命が低下する。
さらに、上記従来のいずれの転がり軸受でも、加工率
によっては鍛造等の軸受の前加工時割れを十分抑制でき
ない課題があった。
本発明はこのような各種の課題を解決するために、材
料コストが増加することなく熱処理生産性が良好で、か
つ、クリーンな潤滑下で軸受を使用する場合に加えて、
異物混入潤滑下で軸受を使用する場合においても、従来
の軸受に比べて長寿命であり、さらに、加工率の高い鍛
造等の前加工時割れが発生しない転がり軸受を提供する
こと、をその目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
請求項(1)記載の発明は、内輪、外輪及び転動体の
少なくとも一つが、少なくともC:0.4〜0.7重量%、Mn:
1.2〜1.7重量%、Al:200〜300ppm、N:100〜200ppm、S:8
0ppm以下を含有する中炭素マンガン鋼からなり、浸炭熱
処理もしくは浸炭窒化熱処理の一つが施された表層部を
有する転がり軸受において、 前記表層部における残留オーステナイト量が25〜45vo
l%である、ことを特徴とするものである。
また、請求項(2)記載の発明は、上記請求項(1)
記載の中炭素マンガン鋼に、さらに、Nb:0.03〜0.08重
量%およびV:0.1〜0.15重量%の少なくとも一種が含有
されてなる、ことを特徴とするものである。
さらに、請求項(3)記載の発明は、前記内輪、外輪
及び転動体の少なくとも一つにおいての少なくとも表層
部は平均結晶粒度番号が8以上の結晶粒である、ことを
特徴とするものである。
〔作用〕
本願発明者らは、転がり軸受鋼の長寿命化及び前加工
時の割れについて種々の検討を加えた結果、軸受表層部
における残留オーステナイト量と寿命との関係、結晶粒
度と寿命との関係、S含有量と前加工時の割れ発生率等
との関係について種々の新しい知見を得るに到り、この
知見に基づき特許請求の範囲に記載の如くの本発明に到
達したものである。
まず本発明において、C:0.4〜0.7wt%の中炭素マンガ
ン鋼を用いている理由について説明する。
本発明者らは、軸受表面層における残留オーステナイ
ト量を25〜45vol%にすることにより、異物混入潤滑下
の転がり軸受の長寿命化を達成できることを見い出し
た。しかしながら、軸受表層部における残留オーステナ
イト量を上記値の範囲とするためには表面炭素濃度を高
めることが必要であるが、SCR420H,SCM420HはCrの含有
量が多いため、軸受の転がり疲れ寿命に有害な初析を生
じやすい。一方で、Crの含有量を減少させると焼入性が
低下し、転がり軸受として必要な硬化層深さが得られな
くなってしまう。そこで本発明では、Cr含有量を0.35重
量%未満とし、かつCr含有量の低下による焼入性低下を
避けるためにMnを添加し、さらにはベースカーボン量が
多い中炭素マンガン鋼を用いることにより初析の発生を
抑え、軸受表層部における残留オーステナイト量を25〜
45vol%の範囲として、必要な硬化層深さを得るもので
ある。
ここで、第1図から第4図を参照して、本発明の特徴
である残留オーステナイトの作用について説明する。
異物混入潤滑下で軸受を使用する場合、異物との繰り
返し接触により内外輪及び転動体の各転動表面に第2図
に示すような圧痕が発生する。第2図に示す圧痕の断面
図から分るように、圧痕にはエッジ部分が生じ、このエ
ッジ部に最大応力Pmaxがかかる。このエッジ部分の曲率
rと圧痕の半径cとは以下説明するように残留オーステ
ナイトと密接な関係がある。通常残留オーステナイト
は、軟らかく、例えばHv300ぐらい(但し素材の炭素の
含有率によっても異なる)である。したがって、この残
留オーステナイトを所望の割合で表面層に存在せしめて
おくと、圧痕のエッジ部分における応力の集中を緩和す
ることができ、そのため圧痕生成後に圧痕部に発生する
マイクロクラックの伝播を遅らせることができる。表面
層における残留オーステナイトは、転動時に圧痕を通過
する相手部材(例えば転動体に対して軌道輪)の相対通
過回数の所定数を過ぎると、表面に加わる変形エネルギ
ーによりマルテンサイト変態し、硬化する。
第3図は、r/cの値と残留オーステナイトγとの関
係を示している。
Pmax/P0を小さくする(すなわち、応力集中を緩和す
る)ためには、Cを一定とするとrを大きくすることが
必要である。つまり、r/cの値は応力集中の緩和程度を
示すファクターであるので、この値が大きくなれば寿命
も延びることになる。しかしながら、第3図から分るよ
うに、残留オーステナイトγの割合を大きくしても、
r/cの値は所定の水準で飽和してしまい、一定以上大き
くならない。特に残留オーステナイトγが45vol%以
上になると、これが顕著であり、r/cは殆ど飽和してし
まう。従って、γをそれ以上大きくしてもかえって表
面硬さを下げてしまうだけであり、転がり疲れ寿命が低
下する。
次に、本発明の特許請求の範囲に示された各数値限定
の臨界的意義について説明する。
先ず、内外輪及び転動体の異物混入潤滑下使用の寿命
は、第1図のグラフに示される軸受寿命と残留オーステ
ナイトγ(vol%)との関係から明らかなように、フ
レーキングが生じるまでの経過時間で示される転がり疲
れ寿命L10は残留ステナイトγ量の変化に応じて変化
している。
すなわち、残留オーステナイトγが25vol%以上に
なると転がり疲れ寿命L10は向上するが、45vol%を越え
ると寿命は急激に低下する。したがって、内外輪、転動
体の表層部における残留オーステナイトは、少なくとも
20vol%から45vol%までの範囲になくてはならない。
特に、残留オーステナイトγが45vol%を越える
と、浸炭熱処理または浸炭窒化熱処理後の表面硬さが低
下するので好ましくない。
クリーンな潤滑下で従来の浸炭鋼軸受と同等以上の寿
命を得るためには、転動体についてHRCが63以上である
ことが望ましく、内外輪についてはHRCが58以上である
ことが好ましい。このためには、残留オーステナイトγ
が45vol%以下であることが必要である。
尚、第1図の実験条件は以下の通りである。軸受寿命
試験は、日本精工(株)製 玉軸受寿命試験機を用いタ
ービン油〔日本石油(株)製FBKオイルRO68〕に鋼粉
(硬さ、Hv300〜500,粒径80〜160μm〕を100ppmの混合
比で加えた潤滑剤を用い、軸受負荷荷重(ラジアル荷
重)600kgf,軸受回転数2000rpmで試験した。
次に、本発明に用いられる中炭素マンガン鋼の含有元
素の作用及びその含有量の限定理由と任意添加元素の望
ましい含有量について説明する。
AlはAl2O3などの酸化物系非金属介在物を形成する。
このAl2O3は、硬度が高く塑性変形能が小さいため、応
力集中源となり転がり疲れ寿命を低下させる原因とな
る。したがって、Alが含有量を低下することが、軸受寿
命向上のためには必要である。しかし他方で、浸炭熱処
理または浸炭窒化熱処理時の結晶粒粗大化防止のために
は、AlがAlNの形で結晶粒界に析出することが必要であ
る。
そこで、請求項(1),(2)記載の発明では、Al含
有量を200〜300ppmとした。Alが200ppm未満だと結晶粒
が粗大となり軸受の転がり疲れ寿命が低減し、かつ、Al
300ppmを越えると、Al2O3量が増加し寿命に悪影響を及
ぼす。
TiはTiNの形で非金属介在物として出現する。TiNは硬
度が高く塑性変形能が小さいため、応力集中源となり転
がり疲れ寿命に有害となる。そこで、Ti含有量の上限を
40ppmとするのが望ましい。
NはAlNを形成して結晶粒の粗大化を抑制する上で必
要である。しかし、N含有量が多いと、非金属介在物で
あるTiN量が多くなる。そこで、請求項(1),(2)
記載の発明では、N含有量を100〜200ppmとした。N含
有量が100ppmより少ないとAlNの析出量が不足し結晶粒
が粗大化してしまい、200ppmを越えるとTiN量が多くな
って転がり疲れ寿命が低下する。
SはMnSなどの硫化物系非金属介在物生成の原因とな
る。MnSは硬度が低く、塑性変形能が大きいことから鍛
造、圧延などの内輪、外輪及び転動体の少なくとも一つ
の前加工時割れ発生の起点として作用する。したがっ
て、鍛造等の前加工時に割れ発生を防止し、より強加工
を可能にするためS含有量を低下させる必要があり、上
限を80ppmとした。
Oは酸化物系非金属介在物発生元素として転がり疲労
寿命を低下させるため、その含有量の上限を9ppmとする
のが望ましい。
Siは脱酸剤であるが、0.15重量%未満であると脱酸効
果が十分でなく、1.2重量%を越えても脱酸効果に変化
がないため、含有量を上記範囲内とするのが望ましい。
MnはCr含有量減少による焼入性低下を補うために必要
であることから、その含有量を1.2〜1.7重量%とした。
1.2重量%未満であると焼入性を向上することができ
ず、また、1.7重量%を越えると、硬度が向上し鍛造
性、被削性等の機械加工性が低下するため、含有量を上
記範囲内とした。
Nb,Vは、それ自体で結晶粒界に析出してその粗大化を
抑制し、結晶粒を微細にして軸受の長寿命化を図るため
に有効な元素であり、加えてAlNの結晶粒粗大化防止作
用をさらに増強する上で効果的である。
すなわち、浸炭,浸炭窒化時間短縮のため高温熱処理
(950℃〜970℃)または長時間の熱処理を行うと、AlN
のみでは結晶粒の粗大化を十分防止できないことがあ
る。そこで、請求項(2)記載の発明では、請求項
(1)記載の中炭素マンガン鋼に、Nb:0.03〜0.08重量
%およびV:0.1〜0.15重量%の少なくとも一種を含有し
た。
Nb:0.03重量%未満、V:0.1重量%未満だと結晶粒の粗
大化を防止する上で効果が少なく、Nb:0.08重量%、V:
0.15重量%を越えても結晶粒の粗大化防止効果は向上せ
ずかえって高コストとなるためNbおよびVの含有量を上
記の範囲内に選定した。
本発明で用いる炭素鋼のベースカーボンの数値の臨界
的意義は、以下のとおりである。
ベースカーボンの割合が0.4重量%より低くなると浸
炭または浸炭窒化熱処理時間が長くなり、熱処理生産性
が低下してしまう。また、本発明に用いる中炭素マンガ
ン鋼は、Cr,Mo等の焼き入れ性を高める元素を含まない
鋼種であり、ベースカーボン量が0.4重量%以下となる
と、焼入れ性が不足し十分な硬化深さを得ることができ
ない。
逆に、ベースカーボン含有量が0.7重量%を越える
と、浸炭により侵入するカーボン量が少なくなりマトリ
ックスに侵入固溶する炭素の割合が低下し、不均一固溶
状態となり、転がり疲れ寿命が低下してしまう。
したがって、以下のことからベースカーボン量を0.4
〜0.7重量%の範囲に選定した。
第4図に示す如く、このような範囲にある炭素鋼を浸
炭熱処理または浸炭窒化熱処理して、固溶炭素又は固溶
炭素窒素量を0.8〜1.1重量%の範囲に調整することによ
り、その結果表層部における残留オーステナイト量を25
〜45vol%の範囲内にすることができる。また、ベース
カーボン量を上記範囲内の炭素鋼に浸炭熱処理または浸
炭窒化熱処理を行えば、Fe原子中にカーボン及び窒素原
子が均一に拡散し、固溶強化するので、最大せん断応力
位置でのマイクロクラックの発生を遅延することができ
てクリーンな潤滑下においても転がり疲労寿命が向上す
る。
また、請求項(3)に記載のように、浸炭熱処理また
は浸炭窒化熱処理後における少なくとも表層部の結晶粒
径を結晶粒度番号で8以上の微細なものとすることによ
り、より長寿命な転がり軸受を提供することができる。
〔実施例〕
次に本発明の実施例について説明する。
従来の炭素鋼であるSMN443において、Al,S,N含有量を
調整したものを溶解して供試材を作成した。各供試材の
組成を次の第1表に示す。
次の、上記第1表の各供試材の複数個に930℃×8hrの
加熱処理を行い、血漿粒の大きさを調べた。その結果を
次の第2表に示す。
(転がり寿命試験) 上記第1表の各々の供試材に浸炭熱処理または浸炭窒
化熱処理を施し、表層部の残留オーステナイト量を25〜
45vol%に調整した試験片を作成した。
この実施例における熱処理条件を次に説明する。浸炭
熱処理のうちダイレクト焼入れは、第5図に示すグラフ
のように、Rxガス+エンリッチガスの雰囲気で約8時
間、930±5℃で熱処理を行ない、その後油焼入れ、更
に、160℃2時間焼戻しをした。更に、浸炭窒化熱処理
については、第6図のグラフに示すように、Rxガス+エ
ンリッチガス+アンモニアガス5%の雰囲気で、約3〜
4時間、830〜870℃で浸炭窒化熱処理を行ない、その後
油焼入れした。
上記浸炭熱処理または浸炭窒化熱処理を行った各試験
片を用いて転がり軸受の内輪及び外輪のどちらにでも適
用できる円盤状試験片を作成し、この各々の円盤状試験
片について、『特殊鋼便覧(第1版)電気製鋼研究所
編,理工学社,1965年5月25日,第10頁〜21頁』記載の
試験機を用いて転がり疲れ寿命試験を行った。試験条件
は次の通りである。
Pmax=560kg・f/mm2 N=3000c.p.m 潤滑油 #68 タービン油 この転がり疲れ寿命の試験結果を第2表及び第7図に
示す。第7図は、前記各供試材の平均結晶粒度番号と転
動による応力繰り返し数(cycle)で示される軸受寿命L
10との関係を示したものである。第7図から分かるよう
に、平均結晶粒度番号が大きくなる程、すなわち結晶粒
が小さくなる程L10の値が大きくなって軸受の転がり疲
れ寿命が向上する。
供試材2はAl,Nの含有量が少なく、供試材4はAlの含
有量が少なく、さらに供試材5はNの含有量が少ないた
め、L10の値が小さくなる。これに対し、供試材1,3は、
Al,Nの含有量とも本発明範囲内であるため、L10の値が
良好である。
一方、供試材6,7では、AlNの結晶粒粗大化防止作用を
向上するNbまたはVが含有されているため、結晶粒がさ
らに微細化されてL10の値がさらに大きな値となる。
供試材8はAl,Nの含有量は上記供試材1に比較して不
足しているが、それ自体で結晶粒の粗大化を防止するNb
が含有されているために、結晶粒が小さくなってL10
値も良好である。
供試材9は、結晶粒は小さいがAlの含有量が本発明範
囲を越えているため、Al2O3量が増加してL10の値が小さ
くなって寿命が短くなる。
供試材10,11はAl,Nの他にNb,Vの含有量が多くL10の値
が大きくなり、Nb,V添加の割に結晶粒微細化効果の向上
の程度が小さくコスト高となる。
本発明において転がり疲れ寿命L10向上のためには、
浸炭熱処理または浸炭窒化熱処理後の少なくとも表層部
の結晶粒径が結晶粒度番号で8以上の微細なものとなる
ように温度,時間等を制御して浸炭熱処理,浸炭窒化熱
処理を行うことが望ましい。
(割れ発生試験) 次に上記第2表の供試材を用いてφ20×30mmの円柱試
料を作成し、据込率80%で冷間加工(鍛造)を行い、割
れ発生率を調べた。円柱試料を各供試材について10ケ作
成した。この結果を前記第2表及び第8図に示す。第8
図は、各供試材のS含有量と割れ発生率との関係を示す
グラフである。
第2表に示すように、供試材2,3,4,6は、Sの含有量
が多いため割れが発生する。特に、供試材3,6は結晶粒
が小さくL10の値が大きいが、Sの含有量が多いため割
れの発生を避けることができない。
第8図から供試材中のS含有量が少なくなる程割れ発
生率が低下していることが分り、S含有量80ppm以下で
割れ発生率が0%であることが分かる。したがって、S
含有量を80ppm以下とすれば、より強加工が可能とな
る。
尚、上記実施例の転がり寿命試験では、内輪及び外輪
のどちらにも適用できる円盤状試験片についての寿命を
示したが、同様の材料で転動体を形成し、これについて
上記転がり寿命試験を行っても同様の結果を得ることが
できる。
〔発明の効果〕
以上説明したように請求項(1)記載の発明よれば、
Mo,Ni,Cr等の高価な元素を含有せず、また、長時間且つ
複雑な熱処理も必要としないので、材料コストが増加す
ることなく熱処理生産性も良好な転がり軸受を提供する
ことができる。
そして、残留オーステナイトが表層部に所定量存在
し、異物混入潤滑下でも長寿命にでき、さらに浸炭熱処
理または浸炭窒化熱処理後における少なくとも表層部の
結晶粒の粗大化が防止され、さらに非金属介在物量も制
限されているために、従来の転がり軸受と比較してより
長寿命な転がり軸受となる。
さらに、S量も制限されているために、加工率の高い
鍛造等の前加工の際割れが発生しない転がり軸受を提供
できる。
また、請求項(2)記載の発明によれば、上記効果に
加えて結晶粒をさらに微細にできるため、その分より長
寿命な転がり軸受を提供できる。
さらに、請求項(3)記載の発明によれば、上記効果
に加えて、浸炭熱処理または浸炭窒化熱処理後の少なく
とも表層部は結晶粒度番号が8以上である微細な結晶粒
であるため、より長寿命な転がり軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、異物混入潤滑下における軸受の転がり疲れ寿
命と残留オーステナイト量との関係を表わすグラフであ
り、 第2図は、応力と共に示す圧痕の断面図であり、 第3図は、r/cの値とγ量との関係を示すグラフであ
り、r/cがγに対して飽和することを示しており、 第4図は、固溶炭素(C)又は固溶炭素窒素(C+N)
量と、残留オーステナイトγ量との関係を示すグラフ
であり、 第5図及び第6図は、それぞれダイレクト浸炭熱処理及
び浸炭窒化熱処理の温度と時間との関係を示すグラフで
あり、 第7図は平均粒度番号と軸受寿命L10との関係を示すグ
ラフであり、 第8図はS含有量と割れ発生率との関係を示すグラフで
ある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16C 33/62 F16C 33/62 (56)参考文献 特開 昭59−129752(JP,A) 特開 昭62−274052(JP,A) 特開 昭62−63651(JP,A) 特開 昭60−194047(JP,A) 電気製鋼研究会編「特殊鋼便覧」第1 版 1969年5月25日 理工学社,p.2 −78〜2−94 p.10−3〜10−26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内輪、外輪及び転動体の少なくとも一つ
    が、少なくともC:0.4〜0.7重量%、Mn:1.2〜1.7重量
    %、Al:200〜300ppm、N:100〜200ppm、S:80ppm以下を含
    有する中炭素マンガン鋼からなり、浸炭熱処理もしくは
    浸炭窒化熱処理の一つが施された表層部を有する転がり
    軸受において、 前記表層部における残留オーステナイト量が25〜45vol
    %である、ことを特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】前記中炭素マンガン鋼に、Nb:0.03〜0.08
    重量%およびV:0.1〜0.15重量%の少なくとも一種が含
    有されてなる、ことを特徴とする請求項(1)記載の転
    がり軸受。
  3. 【請求項3】前記内輪、外輪及び転動体の少なくとも一
    つにおいての少なくとも表層部は平均結晶粒度番号が8
    以上の結晶粒である、ことを特徴とする請求項(1)ま
    たは(2)記載の転がり軸受。
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