JP2961768B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

Info

Publication number
JP2961768B2
JP2961768B2 JP29428889A JP29428889A JP2961768B2 JP 2961768 B2 JP2961768 B2 JP 2961768B2 JP 29428889 A JP29428889 A JP 29428889A JP 29428889 A JP29428889 A JP 29428889A JP 2961768 B2 JP2961768 B2 JP 2961768B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
temperature
tempering
bearing
life
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP29428889A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH03153842A (ja
Inventor
宣晶 三田村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP29428889A priority Critical patent/JP2961768B2/ja
Priority to US07/572,480 priority patent/US5085733A/en
Priority to GB9018510A priority patent/GB2235698B/en
Publication of JPH03153842A publication Critical patent/JPH03153842A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2961768B2 publication Critical patent/JP2961768B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)
  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、自動車、農業機械、建設機械及び鉄鋼機
械等に使用される転がり軸受に係わり、特に、トランス
ミッション,エンジン用として求められる長寿命な転が
り軸受に関する。
〔従来の技術〕
軌道輪及び転動体を有する転がり軸受は、高面圧下で
繰り返しせん断応力を受けるという厳しい使われかたを
するために、そのせん断応力に耐えて転がり疲労寿命
(以下、寿命、という)を確保する必要がある。
そこで、従来は、軸受材料として高炭素クロム鋼軸受
鋼II種(SUJ−2)を用いて転がり軸受を構成し、これ
に焼入れ、焼戻しをしてロックウェル硬さHRC58〜64に
することにより寿命の向上を図っていた。
また、転がり軸受を肌焼鋼を用いて形成することによ
り転がり軸受の寿命を向上する従来例も存在する。この
従来例では、接触面圧に起因する内部せん断応力分布に
合わせて硬さカーブを設定する必要から、焼入れ性の良
好な低炭素肌焼鋼Scr420H,SCM420H,SAE8620H,SAE4320H
等を用い、これに浸炭熱処理を施すことにより、軌道輪
及び転動体表面の硬さがHRC58〜64であり、かつその芯
部深さがHRC30〜48になるようにして必要とされる寿命
を確保していた。
このような従来の軸受用材料としては、例えば特開昭
49−114516号に記載のものが存在する。この従来例で
は、C;0.36〜0.50重量%、Cr;0.5〜1.5重量%等を含有
する転動接触体用炭素浸炭鋼が開示され、この浸炭鋼に
よれば、浸炭時間の短縮、浸炭表面の残留オーステナイ
ト量の低減により靭性,硬度,疲労強度が向上する旨が
記載されている。
ところで、転がり軸受を使用する機械の高負荷化,高
速化が進行すると軸受の使用条件が過酷になり、転がり
軸受が準高温〜高温下で使用されるようになると、次の
ような問題が生じて来た。
その第1は、転がり軸受が使用温度の上昇によって軸
受の硬さが低下することにより、塑性変形が生じ寿命が
低下する。その第2は、前記従来例のように残留オース
テナイトを減少させるといってもたとえわずかながらに
も残留オーステナイトが軸受表面に存在すると、準高温
〜高温下ではこの残留オーステナイトがマルテンサイト
に変態し、この結果、寸法変化が生じ所謂寸法安定性を
害する。特に、近年、軸受の寸法安定性が厳しく要求さ
れており、例えば、ジェットエンジン等に使用される転
がり軸受等では僅かな寸法狂いが重大の事故に帰するお
それもある。従って、準高温〜高温下で使用される転が
り軸受については厳しい寸法安定性が必要となる。
そこで、従来は、準高温〜高温下で使用される転がり
軸受の寸法安定性を優先して解決するために、高炭素ク
ロム鋼軸受(SUJ−2)及び肌焼鋼,浸炭鋼に高温テン
パーを施し、残留オーステナイトを予めマルテンサイト
化することにより寸法安定性に優れた高温テンパー品が
提供されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、このような高温テンパー品では、寸法安定性
を向上できる反面、高温テンパーによって硬さが低下し
て塑性変形等により寿命が低下する。
ところで、従来から鋼中の非金属介在物、特に、酸化
物系介在物は、鋼材の機械的性質を悪化させることが知
られている。しかし、前記従来の高Cr軸受鋼、低炭素合
金鋼、又、肌焼鋼等では酸化物系介在物を減少させるた
めの配慮がなく、故に寿命が低下すると言う課題もある
ことを本発明者は確認した。
そこで、この出願に係わる発明は、このような課題を
解決するために、高温焼戻しを行っても硬さの低下がな
く、かつ酸化物系介在物の発生も極めて少ないことによ
り、たとえ準高温〜高温条件下の使用であっても長寿命
な転がり軸受を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
このような目的を達成するため、請求項1記載の発明
は、軌道輪及び転動体からなる転がり軸受において、当
該軌道輪及び転動体の少なくとも一つが、C;0.3〜0.6重
量%、Cr;0.5重量%以上且つ1.8重量%未満、Si;0.3〜
1.5重量%、Mn;0.3〜1.7重量%、Mo;3.0重量%以下、O;
9ppm以下、残部Fe及び不可避の不純物の合金鋼からな
り、浸炭窒化熱処理、次いで焼入れ,240〜550℃の高温
焼戻しがなされて微細炭化物が形成された完成品表層部
を有し、且つ平均残留オーステナイト量を3体積%以下
としてなる転がり軸受としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の転がり軸受に
おいて、完成品表層部に存在する炭化物を0.5〜1.0μm
としている。
また請求項3記載の発明は、請求項1記載の転がり軸
受において、完成品表層部の炭素含有量が0.7〜0.9重量
%としている。
さらに請求項4記載の発明は、請求項1記載の転がり
軸受において、残留オーステナイト量を0体積%にした
ものである。
〔作用〕
この出願に係わる発明は、表面熱処理として従来の浸
炭に変えて浸炭窒化をすることにより、高温焼戻しを行
った際でも硬さの低下のおそれがなく、そして鋼中の酸
素量を極力低減して、酸化物系介在物の発生を避けるこ
とにより長寿命の転がり軸受を提供することができる。
また、高温焼戻しの後の平均残留オーステナイト量を
3体積%以下としたことにより高温寸法安定性に優れ
る。
さらに、前記高温焼戻しを240〜550℃で行うことによ
り、残留オーステナイトがマルテンサイト化し、この点
でも寸法安定性に優れ且つ長寿命な転がり軸受とするこ
とができる。
本発明において、浸炭窒化熱処理を採用した理由は、
Nが焼戻し軟化抵抗性を向上するという特性を利用した
ものである。従来の軸受鋼,肌焼鋼等の場合、高温テン
パー,例えば250℃で焼戻しを行うと表面硬さはHRC60を
下回りが転がり軸受として必要な表面硬さを保持するこ
とができなくなる。これに対し、表面硬化熱処理として
浸炭ではなく浸炭窒化を施すと、Nの焼戻し軟化抵抗性
の向上作用により高温焼戻しの際でも十分な硬さを保持
できる。従って、寸法安定性を向上するための高温焼戻
しを施しても十分な寿命を確保することが可能となる。
次に本発明における各含有元素の作用及び含有量の臨
界的意義について説明する。
C;0.3〜0.6重量% Cは焼入れ、焼戻し後の硬さを向上するために、必要
な元素である。尚、浸炭窒化することにより軸受表面の
炭素濃度は上がるため、この数値は芯部におけるCの含
有量となる。
Cの含有量が0.6重量%を越えると表層部〜芯部まで
残留オーステナイト量が多くなり準高温〜高温環境下寸
法安定性が阻害される。また、素材の段階で巨大な炭化
物が発生するため、機械加工性及び靭性が低下し破壊強
度も低下する。
一方、含有量が0.3重量%未満であると浸炭窒化処理
時間が長くなり、熱処理生産性が低下する。又、浸炭窒
化温度を上げ処理時間の短縮しようとするとNH3ガスの
分解速度が大きくなるため、窒素(N)が入り難くなり
あまり温度を上げることができない(820〜880℃)。そ
のため軸受の負荷時、せん断応力が働く深さのところま
で必要な硬さを得るためのC%を得るためにも長時間必
要となりコスト的に不利となる。
その他、軸受の寿命を向上する際に有害な酸化物系介
在物を生成する酸素量は、炭素含有量が少なくなるに従
って多くなり、この点から寿命を向上するに際して不利
となる。従って、本発明では、中炭素鋼(C重量%:0.3
〜0.6)にすることにより低酸素の高清浄度鋼を得るこ
とができた。炭素含有量は0.35〜0.45重量%であること
が好ましい。
Cr;0.5〜2.5重量% Crは焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性の向上に有効な元
素である。また、微細な炭化物を均一に形成する析出硬
化により、たとえ高温焼戻しを行っても十分な表面硬さ
を得られ、また基地の強靭性を向上することができる。
そして、硬くて微細のCr炭化物により耐摩耗性を向上す
る働きもある。またさらにCrは炭化物形成元素でもある
ため、浸炭窒化層のC濃度を高める結果、浸炭阻害性の
あるSiを多く含有しても材料の浸炭窒化性を高めること
ができる。
これらの作用,効果を発揮させ、必要な表面粗さHRC6
0以上(特に、61〜70)を確保するためにCr含有量の下
限を0.5重量%とした。
一方、含有量が2.5重量%を越えると均一な微細な炭
化物が形成できにくくなり、素材の段階で巨大な炭化物
が生じてしまい、この炭化物の回りで応力集中が生じる
ことを原因として軸受寿命を低下するおそれがある。ま
た、必要以上のCr含有量の増加はコスト的にも不利であ
るし、巨大炭化物を微細化しようとすると高温での焼入
れが必要となり熱処理生産性が低下する。よって、Crが
含有量の上限を2.5重量%とすると好適であるが、本発
明では、その上限を1.8重量%未満とした。
Si;0.3〜1.5重量% Siは鋼の溶鋼時において脱酸剤として作用すると共
に、固溶強化及び焼戻し軟化抵抗性を向上して軸受の寿
命を延長するのに有効な元素である。しかし、その含有
量が多くなると機械的強度の低下、被削性の低下、浸炭
窒化性の低下につながるためSiの含有量を0.3〜1.5重量
%の範囲とした。
Mn;0.3〜1.7重量% 鋼の溶鋼時に脱酸,脱硫剤として作用すると共に、焼
入れ性の向上に大きな役割を有し、しかも廉価であるこ
とから含有される。
しかしその含有量が多くなると軸受の寿命の向上が見
られず、逆に非金属介在物が多く生じるために寿命が低
下し、その他鍛造性,被削性等の機械加工性が低下す
る。よって、Mnの含有量を前記範囲内に限定したもので
ある。
O;9ppm以下 Oは酸化物系非金属介在物(特に、Al2O3)の発生元
素として寿命を低下させるために、その含有量を極力低
下する必要があり、そこで、その含有量の上限を9ppmと
した。
尚、Alは、Al2O3等の酸化物系非金属介在物を生成
し、その点において寿命に対し有害である。しかし、Al
自体は結晶粒の粗大化を防止する作用を有するため、20
0〜300ppm以下含有するのが有効である。
Mo;3.0重量%以下 Moは前記Crと同様に焼戻し軟化抵抗性の向上に有効な
元素であると共に、表層部に炭化物を形成する上で必要
な元素である。また、焼入れ性の向上,焼入れ後の硬さ
の向上にも有効である。なお、このMoは含有量が「0」
であってもよい。
しかしながら、Mo含有量が3.0重量%を越えると前記M
oの作用,効果の向上はそれほど上がらず、逆に素材の
段階で巨大な炭化物が形成されて寿命を低下させるおそ
れがあり、コスト的にも不利であるからMo含有量の上限
を3.0重量%とした。特に、0.1〜3.0重量%であること
が好ましい。
本発明では、前記各種元素の他に不可避の不純物が含
有されることがある。このような不純物元素としては、
例えば、Ti,S,P,がある。
TiはTiNの形で非金属介在物として出現する。このTiN
は硬度が硬く、塑性変形能が小さいため、応力集中源と
なり寿命を低下させる。よって、Tiの含有量をできるだ
け少なくすることが必要であり、好ましくは、その含有
量を40ppm以下にすることが望まれる。
Pは耐衝撃性を低下させる元素である。よってその含
有量を低下することが良く、20ppm以下とすることが望
まれる。
SはMnS等の硫化物系非金属介在物生成の原因とな
る。MnSは硬度が低く、塑性変形能が大きいことから、
圧延、鍛造等の前加工時割れ発生の起点として作用す
る。よって、鍛造等の前加工時に割れ発生を防止し、よ
り強加工を可能にするためにS含有量を極力低下するこ
とが良い。80ppm以下にすることが望まれる。
本発明において、軌道輪(内輪,外輪等)及び転動体
の少なくとも一つの表層部には浸炭窒化、焼入れ、薬戻
しの処理によって微細な炭化物が生ずる。
この炭化物は硬く耐摩耗性に優れ、その結果、使用温
度が準高温〜高温時の軸受の必要な硬さを確保すること
ができるため、軸受の寿命を向上する。しかも、その大
きさは微細であるため(0.5〜1.0μm)負荷荷重に基づ
く応力集中を来たすこともなく転がり軸受の寿命を向上
することができる。
微細な炭化物の軸受表層部における存在及び焼戻し軟
化抵抗性の向上により表面高さがHRC60以上の高硬度の
転がり軸受を得ることができる。
本発明の合金鋼に浸炭窒化を行い、これに焼入れ,高
温焼戻しを施すことにより表層部に前記微細な炭化物を
析出できると共に、残留オーステナイトを極力低減する
ことが可能となる。残留オーステナイトは準高温〜高温
化でマルテンサイトに変態し、この時寸法変化が生ずる
ため、高温焼戻しにより芯部から表層部にかけての平均
残留オーステナイト量を3体積%以下にすることが良
い。
この時の焼戻し温度は、焼戻し温度が低いと残留オー
ステナイトを全てマルテンサイト化することが困難であ
るとの観点から、240〜550℃程度であることが良い。
このような本発明により、準高温〜高温(約120〜550
℃)下の使用であっても長寿命な転がり軸受を提供する
ことができる。
〔実施例〕
次に本発明の実施例について説明する。
次の第1表に示す塑性の供試材A〜Hを溶製後、次い
で第2表の条件に従って浸炭,浸炭窒化熱処理、焼入
れ,焼戻しを行なった。
第1表中の数値は各元素の含有量(重量%)を示し
た。また、酸素の含有量はppmで示した(*1)。そし
て、C含有量は素材の段階の値で、浸炭したものは浸炭
後0.8〜1.0重量%、浸炭窒化したもとは浸炭窒化後0.7
〜0.9重量%となる。
この第2表に示す熱処理において、浸炭窒化はRXガス
+エンリッチガス(1.5vol%)+アンモニアガス(3〜
5vol%)の雰囲気で約3時間、820〜850℃浸炭窒化処理
を行い、その後この状態から60℃までの油焼入れをし、
更に、第2表に示してある温度で2時間,1回の焼戻しを
行った。
一方、浸炭処理の場合は、930℃で3時間Rxガス+エ
ンリッチガス雰囲気中で浸炭後830℃に温度を下げ、そ
の温度で830℃,30分保持し、その後油焼入れを行った。
又、浸炭,浸炭窒化をしないで焼入れのみの場合は、
Rxガス雰囲気中830℃保持し油焼入れをした。
この第1,2表において、供試材A,Bは本発明の合金鋼の
実施例に係わるものであり、供試材Cは焼戻し温度が低
い中炭素鋼の比較例、供試材Dの浸炭窒化ではなく浸炭
を行う中炭素鋼の比較例、供試材Eは浸炭窒化を行わな
い高炭素の軸受鋼II種の比較例、供試材Fは、さらに焼
戻し温度が高温でない高炭素の軸受鋼II種の比較例、供
試材Gは浸炭窒化に変えて浸炭を行う低炭素鋼であり、
酸素量が本発明の上限を越える12ppmの比較例、供試材
Hは浸炭を行い、且つ焼戻し温度も高温でない低炭素鋼
であり、酸素量が本発明の上限を越える13ppmの比較例
である。
このようにして得られた各供試材の各々について、表
面硬さ(HRC)を測定すると共に、平均残留オーステナ
イト量を求めた。浸炭窒化,浸炭処理した供試材では、
残留オーステナイト量は表層部から芯部に渡って所定の
勾配を持っているため、残留オーステナイト量としては
表層部〜芯部の平均値を採用した。第2表に各供試材に
ついて表面硬さ及び残留オーステナイト量の測定結果を
示す。
供試材Aは、高温焼戻しにより平均残留オーステナイ
ト量は0vol%である。そして、高温焼戻しにも拘わら
ず、浸炭窒化処理をしているために、表面硬さは十分な
値(HRCが60以上)を確保している。
供試材Bも供試材Aと同様の特性を有している。特
に、供試材BはさらにMoが含有されているために、表面
硬さがより大きくなる。
供試材Cは、焼戻し温度が低いため、残留オーステナ
イトがそのまま芯部〜表層部にかけて存在する。
供試材Dは、焼戻し温度が供試材Aと同様であるの
で、残留オーステナイト量は0であるが、浸炭窒化の代
わりに浸炭を行っているために、焼戻し軟化抵抗性が十
分でない。よって、表面硬さが供試材A等と比較して低
下する。
供試材Eは従来の軸受鋼II種(SUJ−2)である。こ
の供試材Eにおいて、残留オーステナイトをマルテイサ
イト化するために高温焼戻しを行うと、軟化が生じ軸受
寿命を向上する上で必要な表面硬さHRCが60以上を確保
することができなくなる。
供試材Fも従来の軸受鋼II種(SUJ−2)である。高
温焼戻しの軟化を避けると表面硬さはHRC60以上となる
が、残留オーステナイトがそのまま残り、寸法安定性を
害する。
供試材Gは従来の肌焼鋼SCr420である。この供試材G
は浸炭を行っているために、高温焼戻しの際の軟化を防
止することができず、必要な表面硬さを確保することが
できない。
供試材Hは供試材Gと同じく従来の肌焼鋼SCr420であ
る。高温焼戻しの軟化を避けると表面硬さはHRC60以上
となるが、残留オーステナイトがそのまま残り、寸法安
定性を害する。そして、供試材G,Hは共に酸素含有量が
本発明の上限を越えるため、酸素含有量が9ppm以下の供
試材A,Bに比較して寿命が低下することになる。
第1図に中炭素鋼(ベースC量=0.4重量%)と低炭
素鋼(ベースC量=0.2重量%)の浸炭窒化時間とC%
の深さ勾配の特性図を示す。尚、この第1図において、
浸炭窒化に際し、ガス雰囲気は第2表で説明したものと
同様とし、温度は850℃とした。
第1図から分かるように、本発明のように中炭素鋼の
方が低炭素鋼と比較して、せん断応力が働く深さの所ま
で必要なC%を得るのに時間的にかなり有利であり、そ
の結果コスト的にも有利であることが実証される。従っ
て、供試材G,Hのように低炭素鋼では熱処理生産性が低
下することになる。
第2図に高温下の寸法安定性の試験結果を示す。試験
は、各供試材を170℃の高温槽に500時間放置した後、常
温(20℃)に対する膨張率を測定することにより行った
(残留オーステナイトは高温下マルテンサイト化するこ
とにより膨張する。) 第2図から分かるように、焼戻し温度が通常の値(16
0℃)である供試材C,F,Hは、残留オーステナイト量が0v
ol%にすることが出来ないので、膨張率が大きく寸法安
定性に問題があることが分かる。特に、鋼炭素鋼であ
り、焼戻し温度が高温でもない供試材Fは最も残留オー
ステナイト量が大きい。よって、焼戻し温度が高温(26
0℃)である本発明の合金鋼の実施例である供試材A,Bを
はじめとして供試材D,E,Gの寸法安定性は他の供試材よ
りも向上する。
第3図は供試材C,D,E,F,Hの焼戻し温度と表面硬さの
関係の特性を図示する。一般に焼戻し温度が高くなると
表面硬さの値は低下するが、供試材Cのように浸炭窒化
を行うと、Nの焼戻し軟化抵抗性の向上作用により表面
硬さの低下の度合いが、浸炭窒化に変えて浸炭を行った
供試材D,Hよりも少なくなる。供試材Dでは浸炭窒化に
変えて浸炭をすること以外は供試材Aと同様の条件であ
ることから、浸炭窒化により焼戻し軟化抵抗性が向上す
ることが実証される。供試剤E,Fは高温焼戻しにより軟
化する。
次に前記供試材A,B,D,E,Gを用いて、軸受外径62mm,軸
受内径30mm,幅16mmの単列深溝球軸受(6206)を各々製
造した。そして、日本精工株式会社製球軸受寿命試験機
を用いで寿命(L10)を測定した。
測定のための条件は、潤滑油=タービン油(日本石油
株式会社製FBKオイルRO68)、軸受負荷荷重=1400kgf
(ラジアル荷重)、軸受回転数=2000rpm、試験温度=1
50℃である。寿命は、フレーキングに至るまでの回転の
繰り返し数(サイクル)をもって表現した。
第4図は、供試材Aの場合の寿命を1とした場合の寿
命の比較の特性図である。表面硬さが硬い程寿命を向上
することができる。供試材A,Bでは膜戻し軟化抵抗性に
優れているため、高温焼戻し後の表面硬さの低下を防ぐ
ことができる結果、良好な軸受寿命を確保することが可
能となる。
また、供試材Gでは、酸素含有量が12ppmの如くであ
り、本発明の上限値を越えるため寿命低くなっているの
が分かる。これに対して酸素含有量が9ppm以下の供試材
A,Bでは寿命が良好な値になっているのが実証される。
本実施例では、軸受寿命を測定する際、内輪,外輪,
転動体の全てについて前記供試材を用いて作成したが、
少なくともその一つについて本発明のように形成するこ
とにより軸受寿命の向上を達成することが可能となる。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、高温焼戻しを
行っても硬さの低下がなく、かつ酸化物系介在物の発生
も極めて少ないことにより、たとえ準高温〜高温条件下
の使用であっても長寿命な転がり軸受を提供することが
できる。ここで、前記合金鋼にMoが含有されているた
め、焼戻し軟化抵抗性がより向上し、この結果、軸受寿
命がより向上した転がり軸受を提供することができる。
また、高温焼戻しの後の平均残留オーステナイト量を3
体積%以下としたため高温寸法安定性にも優れる。さら
に、高温焼戻しが240〜550℃で行われるため、この点で
も寸法安定性と寿命に優れる効果がある。
また、完成品表層部の炭化物を0.1〜1.0μmにする
と、表層部の炭化物が微細であるため、負荷荷重に基づ
く応力集中を来すこともなく転がり軸受の寿命を向上さ
せることができる。さらに、残留オーステナイト量を0
体積%にすると、前記寸法安定性が向上する効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、供試材表面からの距離と含有Cの重量%の関
係を示す特性図、第2図は平均残留オーステナイト量と
膨張率との関係からなる寸法変化の状態を示す特性図、
第3図は焼戻し温度と表面硬さとの関係を示す特性図、
第4図は表面硬さと軸受寿命との関係を示す特性図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/40 C23C 8/32 F16C 33/32,33/62

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軌道輪及び転動体からなる転がり軸受にお
    いて、当該軌道輪及び転動体の少なくとも一つが、C;0.
    3〜0.6重量%、Cr;0.5重量%以上且つ1.8重量%未満、S
    i;0.3〜1.5重量%、Mn;0.3〜1.7重量%、Mo;3.0重量%
    以下、O;9ppm以下、残部Fe及び不可避の不純物の合金鋼
    からなり、浸炭窒化熱処理、次いで焼入れ,240〜550℃
    の高温焼戻しがなされて微細炭化物が形成された完成品
    表層部を有し、且つ平均残留オーステナイト量を3体積
    %以下としたことを特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】完成品表層部に存在する炭化物が0.5〜1.0
    μmであることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸
    受。
  3. 【請求項3】完成品表層部の炭素含有量が0.7〜0.9重量
    %であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸
    受。
  4. 【請求項4】残留オーステナイト量が0体積%であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
JP29428889A 1989-08-24 1989-11-13 転がり軸受 Expired - Fee Related JP2961768B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29428889A JP2961768B2 (ja) 1989-11-13 1989-11-13 転がり軸受
US07/572,480 US5085733A (en) 1989-08-24 1990-08-23 Rolling steel bearing
GB9018510A GB2235698B (en) 1989-08-24 1990-08-23 Rolling contact parts steel and rolling bearing made thereof

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29428889A JP2961768B2 (ja) 1989-11-13 1989-11-13 転がり軸受

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH03153842A JPH03153842A (ja) 1991-07-01
JP2961768B2 true JP2961768B2 (ja) 1999-10-12

Family

ID=17805761

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29428889A Expired - Fee Related JP2961768B2 (ja) 1989-08-24 1989-11-13 転がり軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2961768B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006183845A (ja) * 2004-12-28 2006-07-13 Nsk Ltd 転がり軸受

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05239550A (ja) * 1992-02-27 1993-09-17 Ntn Corp ころがり部品
JP2000045049A (ja) * 1998-07-28 2000-02-15 Nippon Seiko Kk 転がり軸受
JP2002060847A (ja) * 2000-08-22 2002-02-28 Ntn Corp 耐熱浸炭転がり軸受部品およびその製造方法
JP2005127403A (ja) * 2003-10-23 2005-05-19 Nsk Ltd ピニオンシャフト
JP2006118575A (ja) * 2004-10-20 2006-05-11 Nsk Ltd 風車用転がり軸受
US7435308B2 (en) * 2005-05-27 2008-10-14 Nsk Ltd. Rolling bearing
JP4802273B2 (ja) * 2009-10-06 2011-10-26 Ntn株式会社 軸受
JP7378201B2 (ja) * 2018-05-22 2023-11-13 Ntn株式会社 軸受部品の製造方法
JP2019203159A (ja) * 2018-05-22 2019-11-28 Ntn株式会社 軸受部品の製造方法
JP2019203160A (ja) * 2018-05-22 2019-11-28 Ntn株式会社 軸受部品の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006183845A (ja) * 2004-12-28 2006-07-13 Nsk Ltd 転がり軸受

Also Published As

Publication number Publication date
JPH03153842A (ja) 1991-07-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2870831B2 (ja) 転がり軸受
US5085733A (en) Rolling steel bearing
JP3413975B2 (ja) 耐摩耗性に優れた転がり軸受
US10358706B2 (en) Carbonitrided bearing part
US4930909A (en) Rolling bearing
US6325867B1 (en) Rolling bearing and heat treatment method therefor
JP3385742B2 (ja) 転がり軸受及びその製造方法
JPH0578814A (ja) 転がり軸受
WO2001068933A2 (en) High performance carburizing stainless steel for high temperature use
US20050045248A1 (en) Contact pressure-resistant member and method of making the same
JP6520347B2 (ja) 高周波焼入れ部品の素形材、高周波焼入れ部品、及びそれらの製造方法
US20120222778A1 (en) Rolling/sliding part and production method thereof
JP2961768B2 (ja) 転がり軸受
JP6055397B2 (ja) 耐摩耗性に優れた軸受部品、およびその製造方法
JP2002180203A (ja) 針状ころ軸受構成部品およびその製造方法
JPH0827542A (ja) 転がり軸受
JPH07110988B2 (ja) 転がり軸受
JP2000204445A (ja) 高温用転がり軸受部品
JP2624337B2 (ja) 転がり軸受
JPH05118336A (ja) 転がり軸受
JP3084421B2 (ja) 浸炭処理鋼による転がり軸受
JP3458970B2 (ja) 軸受鋼および軸受部材
JPH04160135A (ja) 浸炭用鋼
JP2017150066A (ja) 転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品、並びにそれらの製造方法
JPH1060586A (ja) 浸炭窒化軸受用鋼

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070806

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080806

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080806

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 10

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090806

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees