JP2628568B2 - 介護用バス - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、老人や身体障害を持
つ人などの被介護者を楽に入浴させることができる介護
用のバスに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、介護施設等で上記のような被
介護者を入浴させる場合は、介護者は、まず、被介護者
を居室から車椅子等に載せて浴室まで運び、浴室で被介
護者を車椅子等から洗身用シャワーチェアーに移して被
介護者の体を洗う。

【０００３】そして、介護者は、被介護者を低座高台車
に載せてバスタブ横に設けられたスロープを登るか、も
しくは被介護者をリフト機に載せてリフト機により被介
護者の体を持ち上げるかして、被介護者をバスタブに入
れて入浴させる。

【０００４】しかし、介護者にとって、上記の一連の作
業は、被介護者を幾度も抱き上げたりしなければなら
ず、非常に労力を要するうえ、被介護者に対する細かな
配慮も要求されるので、肉体的にも精神的にも大きな負
担である。

【０００５】一方、被介護者にとっても、上記の一連の
作業は、介護者への気がねと、体を持ち上げられたりす
ることによる不安感を伴うものであった。

【０００６】また、在宅介護の場合は、通常リフト機や
スロープがないので、介護者は、簡易浴槽を被介護者の
居室に据え置き、この浴槽に被介護者を抱き上げて入
れ、その後浴槽に湯をはって被介護者を入浴させ、入浴
が終わったら浴槽の湯をバケツ等で流し捨てられる所ま
で運ばねばならないので、介護者及び被介護者の負担
は、施設での介護に比べて一層大きくなる。

【０００７】そこで、この発明は、上記の一連の作業を
軽減することができ、かつ在宅介護にも使用できる介護
用バスを得ることを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、この発明は、バスタブとこのバスタブを、ほぼ水
平状態から上面の前端縁が床面に近接する位置まで揺動
可能に支持する支持台と、この支持台に対するバスタブ
の揺動を任意の位置で固定する揺動固定手段と、この揺
動固定手段により上面の前端縁が床面に近接する位置で
固定されたバスタブに前後にスライド自在に取り付けら
れて出し入れ自在に収容されるチェアーとで、介護用の
バスを構成した。

【０００９】また、バスタブの前壁、底壁及び後壁を柔
軟な防水性のシート体で形成してもよい。

【００１０】さらに、チェアーをバスタブに対して着脱
自在な車椅子としてもよい。

【００１１】

【作用】この発明に係る介護用バスタブにおいては、揺
動固定手段によりバスタブを上面前端縁が床面に近接す
るまで傾いた位置で支持台に固定し、その後、バスタブ
からチェアーを前方にスライドさせて引き出して、チェ
アーに被介護者を座らせると、入浴前に被介護者をチェ
アーに座らせた状態で洗うことができる。

【００１２】そして、体を洗い終えたら、被介護者ごと
チェアーを後方へスライドさせてバスタブに収容し、被
介護者とチェアーを収容した状態で揺動固定手段を解除
してバスタブを水平状態となるまで支持台に対して揺動
させ、水平状態でバスタブの揺動を再び揺動固定手段に
より固定し、バスタブに湯をはると、被介護者を入浴さ
せることができる。

【００１３】また、バスタブの前壁、底壁及び後壁を柔
軟な防水性のシート体で形成した介護用バスにおいて
は、シート体を中間部分で折り曲げてバスタブの側壁同
志を重ね合わせるか近接させるようにすると、バスタブ
が小さく折り畳まれる。

【００１４】さらに、チェアーをバスタブに対して着脱
自在な車椅子とした介護用バスにおいては、バスタブ内
に被介護者ごと車椅子を収容できることより、浴室に支
持台を設置して車椅子で被介護者を移送できる。

【００１５】

【実施例】この発明に係る介護用バスの実施例を添付図
面に基づいて説明する。

【００１６】図１乃至図３に示される第１実施例では、
介護用バス１は、バスタブ２と、このバスタブ２の両側
をそれぞれ軸支する支持台３とを備えている。

【００１７】バスタブ２は、前壁及び後壁が底面の中央
部に向けてそれぞれ傾斜するように形成されている。バ
スタブ２の両外側面には、支持台３によって受けられる
突軸４がそれぞれ設けられており、これら突軸４は、バ
スタブ２の満水時の重心の両側に位置している。バスタ
ブ２は、ＦＲＰなどの軽量で耐久性のある材質で形成す
るのが望ましい。

【００１８】支持台３は、バスタブ２の両側で起立する
前脚５及び後脚６をそれぞれ備えており、これら前脚５
及び後脚６の下端に、車輪７をそれぞれ備えている。

【００１９】また、支持台３の前脚５と後脚６は、上端
部分が連結されて一体となっており、この連結部分に
は、バスタブ２の突軸４を受ける支持部８が設けられて
いる。

【００２０】後脚６の下端には、車輪７の転動を阻止す
る支持台ロック機構９が設けられており、この支持台ロ
ック機構９は、ロックペダル１０とアンロックペダル１
１により、支持台３の移動のロックとその解除を切り換
えれるようになっている。

【００２１】支持台３の後脚６とバスタブ２の外側壁上
端部の間には、バスタブ２を支持台３に対してゆっくり
回動させるダンパーシリンダ１２とダンパーロッド１３
が架設されており、バスタブ２を回動させる際の安全性
を高めている。

【００２２】このダンパーシリンダ１２は、ダンパーロ
ッド１３の摺動をロックするロックピンを備えている。
このロックピンは、バスタブ２の外後面上端部に設けら
れたハンドル１４に軸支されたロックレバー１５に連結
されている。ダンパーシリンダ１２及びダンパーロッド
１３は、ロックレバー１５によりロックピンが加圧作用
されることによって、バスタブ２を支持台３に対して任
意の角度で固定する。

【００２３】また、他の揺動固定手段として、突軸４の
位置を上記の重心からずらしてバスタブ２に偏心回動に
よる回転モーメントを与えると共に、ダンパーシリンダ
１２及びダンパーロッド１３の代わりにロック機能付き
ガススプリングを取り付けるようにしてもよい。

【００２４】図１及び図２に示すように、床面に対して
約４５°の角度で傾けて支持台３に固定したバスタブ２
には、チェアー１６が、前後にスライド可能で出し入れ
自在に取り付けられている。

【００２５】このチェアー１６は、下端部に、ローラー
１７が取り付けられており、座の両側部に、側方へ突出
するころ１８がそれぞれ設けられている。

【００２６】このローラー１７ところ１８は、傾いた状
態で固定されたバスタブ２の両内側面にそれぞれ形成さ
れた前後方向に水平に延びるガイド溝１９、１９に収容
されており、このガイド溝１９、１９内を転動してチェ
アー１６の前後のスライドをガイドしている。

【００２７】また、チェアー１６は、左右一対のアーム
レスト２０とフットレスト２１を備えている。

【００２８】アームレスト２０は、背凭れの下端部から
それぞれ前方へ突出し、この突出した状態から上方へ回
動させて撥ね上げられるようになっている。

【００２９】フットレスト２１は、チェアー１６の下端
部から前方へ水平に突出しており、この水平に突出した
状態から上方へ回動できるように、チェアー１６の下端
部に軸支されている。

【００３０】また、チェアー１６に、ヘッドレストや肢
体固定用のベルトや固定具等を設けてもよい。

【００３１】この介護用バス１は、以下のようにして使
用される。

【００３２】まず、ロックレバー１５を操作してバスタ
ブ２を上面前端縁が床面に近接するまで傾斜させた状態
で支持台３に固定し、介護用バス１を容器状の車椅子と
する。そして、バスタブ２のハンドル１４を把持して被
介護者の居室まで介護用バス１を転がしてゆく。

【００３３】次に、被介護者の近くでロックペダル１０
を踏んで支持台ロック機構９により支持台３の移動をロ
ックし、図２に示すように、チェアー１６をバスタブ２
から前方へ引き出し、フットレスト２１を上方へ撥ね上
げて、被介護者をチェアー１６に座らせる。

【００３４】そして、フットレスト２１を水平になるよ
う回動させてフットレスト２１の上面に被介護者の両足
を載せ、上方に撥ね上げられてあるアームレスト２０を
被介護者の両脇横に下ろし、被介護者の体が安定したの
を確認して、チェアー１６を後方にスライドさせて被介
護者とともにチェアー１６をバスタブ２内に収容する。

【００３５】その後、アンロックペダル１１を踏んで支
持台ロック機構９による支持台３のロックを解除し、被
介護者を収容した状態で支持台３を転がし、介護用バス
１を車椅子として被介護者を浴室まで運ぶ。

【００３６】そして、浴室で再びロックペダル１０を踏
んで支持台３の移動をロックした後、被介護者ごとチェ
アー１６を前方に引き出すと、介護者に体を洗ってもら
うことができ、洗身用シャワーチェアーが要らない。

【００３７】被介護者の全身を洗い流し終えれば、再び
被介護者ごとチェアー１６をバスタブ２に収容し、収容
した状態で介護用バス１を給湯口の付近まで移動させ、
ロックレバー１５を操作して、図３に示すように、バス
タブ２を揺動させると共に水平状態で台車３に固定す
る。

【００３８】そして、給湯口からバスタブ２に湯をはれ
ば、被介護者が仰臥入浴できることとなる。

【００３９】適当な時間の経過後、ロックレバー１５に
よるロックを解除し、バスタブ２を徐々に傾けて湯水を
足もとからバスタブ２外へ排出し、介護用バス１を図１
に示すような状態に戻し、被介護者ごとチェアー１６を
前方に引き出して、被介護者の濡れを拭き取る。

【００４０】そして、再び被介護者ごとチェアー１６を
バスタブに収容し、介護用バス１を居室まで転がして、
入浴作業が完了する。

【００４１】このように、一連の入浴作業が、被介護者
を抱き上げたり移したりすることなく、終始チェアー１
６に被介護者を座らせたままで行えるので、介護者の労
力や被介護者の不安感が解消されて、介護者と被介護者
の負担が軽減される。

【００４２】図４及び図５に示す第２実施例では、介護
用バス２２は、バスタブ２と、このバスタブ２を揺動自
在に支持する支持台３と、この支持台３に上面前端縁が
床面と近接した位置で固定されたバスタブ２に着脱自在
に収容される車椅子２３とからなる。

【００４３】バスタブ２は、上記と同様な手段により、
車輪付きの支持台３に任意の角度で固定され、両内側面
に、ガイドフレーム２４によるスライドガイド２５が設
けられている。

【００４４】車椅子２３は、座席２６と車椅子台車２７
に分離可能に構成されており、この座席２６の高さがガ
イドフレーム２４によるスライドガイド２５の高さと同
じになるよう形成されている。

【００４５】この車椅子２３に被介護者を座らせて、車
椅子２３の後端を、図４に示すように、傾けて固定した
バスタブ２の上面前端縁に近接させ、被介護者が座った
状態で、図５に示すように、座席２６をガイドフレーム
２４に沿って後方へスライドさせて、座席２６の両側部
をスライドガイド２５と嵌め込むと、被介護者を抱き上
げることなくバスタブ２に入れることができる。

【００４６】このように、この車椅子２３は、座席２６
を車椅子台車２７と分離できることより床面を転がる車
椅子台車２７の車輪がバスタブ２に入ることがないの
で、衛生上好ましいうえ、車椅子台車２７の後輪がバス
タブ２内で邪魔になることもない。

【００４７】また、入浴が終わったら、被介護者ごと座
席２６をガイドフレーム２４に沿って前方へスライドさ
せスライドガイド２５から抜き出して、バスタブ２上面
前端縁の前方の車椅子台車２７にそのまま移せば、被介
護者を抱き上げることなく車椅子２３に座らせることが
できる。

【００４８】図６に示される第３実施例では、介護用バ
ス２８は、バスタブ２と、このバスタブ２を揺動自在に
支持する支持台２９と、バスタブ２に着脱自在に収容さ
れる車椅子３０とからなる。

【００４９】バスタブ２は、両内側面に、ガイドバー３
１によりスライドガイドが形成されており、支持台２９
を介して床面に据え置かれる。

【００５０】車椅子３０は、座を支える台車フレーム３
２が、車輪に支持された下部フレーム３３と、座に固着
された上部フレーム３４とからなる。

【００５１】これら下部フレーム３３と上部フレーム３
４は、前端部同志が垂直な脚フレーム３５、３５により
一体に連結されており、台車フレーム３２は、下部フレ
ーム３３と上部フレーム３４の間に、バスタブ２の前壁
が挿入されるようになっている。

【００５２】このように、この介護用バス２８は、バス
タブ２の下に、車輪を備えた下部フレーム３３が潜り込
むので、衛生上好ましいうえ、第２実施例のように被介
護者ごと座席をスライドさせる必要もない。

【００５３】図７及び図８に示される第４実施例では、
介護用バス３５は、折り畳み可能なバスタブ３６と、こ
のバスタブ３６を揺動自在に支持する折り畳み可能な支
持台３７とを備えている。

【００５４】バスタブ３６は、両側壁となるサイドパネ
ル３８、３８と、これらサイドパネル３８、３８を連結
して槽を形成する柔軟な防水シート３９と、この防水シ
ート３９の上面に重なり槽の形を保持するバックパネル
４０、ボトムパネル４１及びフットパネル４２とからな
る。また、サイドパネル３８の内面には、ガイドフレー
ム２４によりスライドガイド２５が形成されている。

【００５５】そして、このバスタブ３６は、図８に示す
ように、バックパネル４０、ボトムポネル４１及びフッ
トパネル４２を外し、防水シート３９を折り曲げてサイ
ドパネル３８、３８を互いに重ね合わせることによっ
て、折り畳むことができる。

【００５６】また、このバスタブ３６と揺動自在に支持
する支持台３７は、前脚４３及び後脚４４と、これら前
脚４３及び後脚４４を連結すると共にバスタブ３６を軸
支する支持部４５とからなり、前脚４３及び後脚４４を
支持部４５で回動させて互いに寄り合わせることによっ
て、折り畳むことができる。

【００５７】また、支持台３７の後脚４４には、ダンパ
ーシリンダ１２及びダンパーロッド１３を介してハンド
ル１４及びロックレバー１５が取り付けられており、こ
のハンドル１４は、バスタブ３６の上面後端部に係合す
るようになっている。

【００５８】このバスタブ３６には、上記の車椅子２
３、３０が着脱自在に収容される。

【００５９】このように、この介護用バス３５は、バス
タブ３６と支持台３７とを分離すると共に、両者を折り
畳めば、収納や携帯に便利である。

【００６０】図９及び図１０に示される第５実施例で
は、介護用バス４６は、上記の要領で折り畳み可能なバ
スタブ４７と、このバスタブ４７を揺動自在に支持する
折り畳み可能な支持台４８とが一体となっている。

【００６１】バスタブ４７は、ガイドパネル３８、３８
が、一対のバープレートを中央部分で互いに軸支してな
るシザー４９により互いに連結されている。

【００６２】支持台４８は、車輪を備えた前脚５０及び
後脚５１の下端部が、連結杆５２により連結されてお
り、この連結杆５２が他のシザー５３により互いに連結
されている。

【００６３】また、バスタブ４７の両外側面のそれぞれ
には、平行案内ピン５４が突設されており、この平行案
内ピン５４は、支持台４８の前脚５０及び後脚５１の上
端部の支持部５５に形成された円弧状の長孔５６に挿入
されている。

【００６４】この長孔５６と平行案内ピン５４は、バス
タブ４７の支持台４８に対する揺動を許容すると共に、
支持台４８とバスタブ４７を畳み込み過程において平行
に保っており、支持台４８とバスタブ４７の畳み込みが
同時に行えるようになっている。

【００６５】この実施例においては、介護用バス４６
は、図１０に示すように、非使用時に全体が折り畳まれ
て小さくなるので、収納場所をとらず、部屋等のデッド
スペースをなくすことができる。

【００６６】

【効果】この発明に係る介護用バスは、以上のように構
成されていることより、被介護者を抱き上げて移したり
する必要がないので、在宅介護の場合であっても、入浴
作業における介護者と被介護者の負担を著しく軽減する
ことができる。

【００６７】また、この介護用バスは、バスタブが支持
台に任意の角度で固定できるので、屋外の日光浴の際に
椅子として使用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第１実施例の側面図

【図２】第１実施例のチェアーを引き出した状態の側面
図

【図３】第１実施例の入浴状態を示す側面図

【図４】第２実施例の斜視図

【図５】第２実施例の座席を収容した状態を示す斜視図

【図６】第３実施例の斜視図

【図７】第４実施例の斜視図

【図８】第４実施例の分解斜視図

【図９】第５実施例の後方からの斜視図

【図１０】第５実施例の折り畳んだ状態を示す斜視図

【符号の説明】

１、２２、２８、３０、３５、４６ 介護用バス ２、３６、４７ バスタブ ３、２９、３７、４８ 支持台 ４ 突軸 ５、４３、５０ 前脚 ６、４４、５１ 後脚 ７ 車輪 ８、４５、５５ 支持部 ９ 台車ロック機構 １０ ロックペダル １１ アンロックペダル １２ ダンパーシリンダ １３ ダンパーロッド １４ ハンドル １５ ロックレバー １６ チェアー １７ ローラー １８ ころ １９ ガイド溝 ２０ アームレスト ２１ フットレスト ２３、３０ 車椅子 ２４ ガイドフレーム ２５ スライドガイド ２６ 座席 ２７ 車椅子台車 ３１ ガイドバー ３２ 台車フレーム ３３ 下部フレーム ３４ 上部フレーム ３８ サイドパネル ３９ 防水シート ４０ バックパネル ４１ ボトムパネル ４２ フットパネル ４９、５３ シザー ５２ 連結杆 ５４ 平行案内ピン ５６ 長孔

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 バスタブと、このバスタブをほぼ水平状
   態から上面の前端縁が床面に近接する位置まで揺動可能
   に支持する支持台と、この支持台に対するバスタブの揺
   動を任意の位置で固定する揺動固定手段と、この揺動固
   定手段により上面の前端縁が床面に近接する位置で固定
   されたバスタブに前後にスライド自在に取り付けられて
   出し入れ自在に収容されるチェアーとからなる介護用バ
   ス。
2. 【請求項２】 上記バスタブの前壁、底壁及び後壁を柔
   軟な防水性のシート体で形成して、バスタブを折り畳み
   可能としたことを特徴とする請求項１に記載の介護用バ
   ス。
3. 【請求項３】 上記チェアーを、上記バスタブに対して
   着脱自在な車椅子としたことを特徴とする請求項１又は
   ２に記載の介護用バス。