JP2515012Y2 - エンジンのシリンダヘッド構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、シリンダヘッド上部に吸・排気弁作動用の
カムシャフトを配置したいわゆるオーバヘッドカム式
（略してOHC）エンジンにおけるシリンダヘッド構造に
関する。

（従来技術） OHCエンジンは、カムシャフトがシリンダヘッド上部
に配置され、通常、そのフロント側の端部に主軸との調
時のためのタイミングプーリが設けられる。また、シリ
ンダヘッドの上部はヘッドカバーで覆われ、ヘッドカバ
ーのフロント側に突出するカムシャフトおよび駆動輪を
覆うようにベルトカバー等が取り付けられている。

ところで、エンジン全長の短縮化あるいはシリンダヘ
ッドの軽量・コンパクト化を図るためには、タイミング
プーリを椀状に形成して、ベルト伝導面が取付ボス部よ
り内側にオーバーハングする状態でカムシャフトの突出
端に取り付けるようにし、シリンダヘッドのフロント部
を、カム軸受部がシリンダヘッドのフロント側端壁から
突出してタイミングプーリ内に入り込むような形に、換
言すると、ベルトカバー取付用のシール面を形成するシ
リンダヘッドのフロント側端壁がカム軸受部より後退し
た形に形成することが一つの有力な手段となり得る。と
くに、例えば特開昭59-194037号公報記載のＶ型エンジ
ンのように、左右バンクに所定量のオフセットがある場
合に、フロント側にずれた方のバンクに上記のようなシ
リンダヘッド構造およびプーリ取付構造を用いれば、左
右バンクのオフセット分を吸収する形で左右のタイミン
グプーリを面一に配設することが可能となり、エンジン
全長の短縮化が図れるし、また、軽量でコンパクトなシ
リンダヘッド構造が得られる。

しかしながら、実際は、カム軸受部をフロント側側端
壁からあまり突出させると、カム軸受部の剛性が低くな
って、タイミングベルトの張力によるカムシャフトの振
れが大きくなってしまい、また、ヘッドカバーやベルト
カバーのシール部のシール性が確保しにくいという問題
があるので、カム軸受部を極端に突出形成することはで
きなかった。

（考案の目的） 本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであって、
カム軸受部の剛性およびカバーシール面のシール性を確
保しながら、カム軸受部をシリンダヘッドフロント側端
壁から突出させることのできるエンジンのシリンダヘッ
ド構造を得ることを目的としている。

（考案の構成） 本考案は、シリンダヘッドフロント部に独特なリブを
設けることによって、カム軸受部の剛性とシール面のシ
ール性を同時に確保することができるよう構成したもの
であって、その構成はつぎのとおりである。すなわち、
本考案に係るエンジンのシリンダヘッド構造は、シリン
ダヘッドのフロント側端壁からカム軸受部を突出形成さ
せたエンジンのシリンダヘッド構造において、前記突出
形成させたカム軸受部の下半円部を、該下半円部の上面
がシリンダヘッド上面と面一となるようにしてシリンダ
ヘッド頂部に一体形成し、シリンダヘッドを平面視した
時に前記カム軸受部の下半円部の側部とシリンダヘッド
のフロント側端壁との間に介在しその間を一体的に連結
するリブを、前記シリンダヘッド上面および前記カム軸
受部の下半円部上面と面一となるように形成したことを
特徴とする。

シリンダヘッド上部に吸気用および排気用の２本のカ
ムシャフトを配置した所謂ダブルオーバヘッドカム式エ
ンジンの場合、前記吸気用および排気用の２本のカムシ
ャフトの各々を支承するカム軸受部の下半円部をシリン
ダヘッドのフロント側端壁からそれぞれ突出形成させ、
それら突出形成させたカム軸受部の下半円部に対し、そ
れら下半円部とフロント側端壁とで囲まれた空間に前記
リブを配置することができる。そして、その場合に、前
記突出形成させた両カム軸受部の下半円部とフロント側
端壁とで囲まれた空間に配置した両カム軸受部の下半円
部に対するリブは相互に連結するのがよい。

また、軽量化のため、前記リブはカム軸受部の下半円
部高さに対し薄肉に形成するのがよい。

また、エンジン全長を短縮化するため前記突出形成さ
せたカム軸受部の下半円部はベアリングキャップ共々カ
ムシャフト端部のタイミングプーリ内に入り込む配置と
するのがよい。

（作用） 突出形成された軸受部をカムシャフトのフロント側端
部に設けられる椀状のタイミングプーリ内に入り込ま
せ、軸受部より後退した位置のフロント側端壁をシール
面としてベルトカバーを取り付けることができるので、
これらタイミングプーリおよびベルトカバーのフロント
側への出張り量を低減しエンジン全長を短縮化すること
が可能となる。リブは、軸受部およびフロント側端壁を
補強し、ベルト張力に対する剛性およびベルトカバーシ
ール面のシール性を高める。また、シリンダヘッド上面
と面一とされたリブの上面は、一部、ヘッドカバーシー
ル面を兼ねることができ、ヘッドカバー取付部のシンプ
ル化およびシール性向上が可能となる。シリンダヘッド
フロント部は、むしろ軸受部に対しフロント側端壁が後
退した形で、その間にはリブが設けられているだけであ
り、また、そのリブによってヘッドカバーシール面の一
部をシンプルに構成するものであるから、シリンダヘッ
ドの軽量・コンパクト化を促進する。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図乃至第３図はＶ型エンジンに適用した本考案の
一実施例を示すものである。

このうち、第１図は、Ｖ型エンジンにおける左バンク
側のシリンダヘッドのフロント部を示す平面図であり、
第２図は同シリンダヘッドのフロント側側面図、また、
第３図は第１図のIII-III断面で見たエンジンの上部断
面図である。

このエンジンはDOHC（ダブルオーバーヘッドカム式）
エンジンで、第１図から明らかなように、シリンダヘッ
ド１の頂部には、仮想線で示した吸気用および排気用の
２本のカムシャフト2,3を支承するカム軸受部の下半円
部4a,4b…,5a,5b…が設けられ、それぞれにベアリング
キャップ取付用の一対のボルト穴６が形成されている。

シリンダヘッド１のフロント側端部では、フロント側
端壁７に対し、第２図に示すように吸気側および排気側
のカム軸受部の下半円部4a,5aが突出形成された形でシ
リンダヘッド１頂部に一体形成され、それらカム軸受部
の下半円部4a,5aの上面がシリンダヘッド上面８と面一
とされている。そして、これら両カム軸受部の下半円部
4a,5aの両側でシリンダヘッド１のフロント側端壁７と
の間に、シリンダヘッド１を平面視した時にカム軸受部
の下半円部4a,5aの側部とシリンダヘッド１のフロント
側端壁との間に介在しその間を一体的に連結するリブ9
a,9b,10a,10bが、シリンダヘッド上面８およびカム軸受
部の下半円部4a,5a上面と面一となるように形成されて
いる。そして、内側すなわち突出形成された両カム軸受
部の下半円部4a,5aとシリンダヘッド１のフロント側端
壁とで囲まれた空間側の２つのリブ9b,10bは、シリンダ
ヘッド１中央で相互に連結され、また、外側の２つのリ
ブ9a,10aはフロント側端壁７外縁のシール面11a,11bま
で延びている。第２図に示すように、各リブ9a,9b,10a,
10bはカム軸受部の下半円部4a,5a高さに対して十分薄肉
に形成されている。

また、第２図及び第３図に示すように、フロント側に
突出する各カム軸受部の下半円部4a,5aの底部とシリン
ダヘッド１のフロント側端壁７の間にも補強用のリブ9
c,10cが設けられている。

第３図に示すように、シリンダヘッド１上部にはヘッ
ドカバー12が取り付けられる。また、フロント側端部に
はタイミングプーリ13を覆うようにベルトカバー14が取
り付けられ、ベルトカバー14にはさらに左右サービスホ
ールを覆うカバー15が装着される。

ヘッドカバー12のシール16は、フロント側カム軸受部
の下半円部4a,5aの位置では第３図に示すようにベアリ
ングキャップ17の外周シール面18に当接し、その他の位
置ではシリンダヘッド上面に直接当接するが、ベアリン
グキャップ17の外周シール面18近傍においては、シリン
ダヘッド上面８と面一に形成されたリブ9a,9b,10a,10b
の上面がヘッドカバー12のシール16に対するシール面と
して兼用される。

また、ベルトカバー14のシール19は、シリンダヘッド
１とは前述のフロント側端壁７外縁のシール面で当接
し、その上方位置では、第３図に示すようにヘッドカバ
ー12に設けられた鍔状のシール壁20に当接する。

フロント側端のカム軸受部の下半円部4a,5aは、上記
のようにシリンダ上面８から延びるリブ9a,9b,10a,10b
によって剛性が高められ、さらに底部に延びるリブ9c,1
0cで補強されているので、シリンダヘッド１のフロント
側端壁７から突出形成されているにもかかわらず、ベル
ト張力に対し十分な剛性を有している。また、シリンダ
ヘッド上面８と面一のリブ9a,9b,10a,10bは、シリンダ
ヘッド上面８とベアリングキャップ17の外周シール面18
との境界部で上記のようにヘッドカバー12のシール16に
対するシール面としても兼用されるので、カム軸受部の
下半円部4a,5aをこのように突出形成したにもかかわら
ず、ヘッドカバー12取付用のシール面が確保され、また
そのシール性も改善される。さらにまた、これらのリブ
9a〜9c,10a〜10cの補強効果によってベルトカバー14に
対するシール面11a,11bの剛性も高まりシール性が向上
する。

シリンダヘッド１は上記のような構造であるので軽量
且つコンパクトである。また、タイミングプーリ13が第
３図に示すように椀状に形成され、その中にカム軸受部
の下半円部4a,5a,ベアリングキャップ17およびヘッドカ
バー12のフロント側端部が入り込むような形で配設され
るので、タイミングプーリ13のフロント側への出張り量
は少ない。左バンク側は、気筒列が右バンク側に対しフ
ロント側に所定量オフセットしているが、左バンク側の
シリンダヘッドは上記のように構成され、タイミングプ
ーリ13の出張り量が小さいので、右バンク側のタイミン
グプーリ（図示せず）をそれに合わせて面一に配設する
ことでエンジン全長の短縮化が実現できる。

なお、上記実施例ではＶ型エンジンの左バンク側シリ
ンダヘッドに適用したものを説明したが、本考案はその
他いろいろなエンジンのシリンダヘッドに対して適用す
ることができる。

（考案の効果） 本考案は以上のように構成されているので、カム軸受
部の下半円部をシリンダヘッドフロント側端壁から突出
形成しながら該カム軸受部の剛性を確保することができ
る。しかも、カム軸受部の下半円部を補強するためのリ
ブを兼用してヘッドカバーのシール面を確保することが
できる。したがって、十分な剛性とシール性を確保しな
がらエンジン全長を短縮化し、また、シリンダヘッドを
軽量且つコンパクトなものとすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本考案の一実施例に係るものであっ
て、第１図はそのシリンダヘッドの平面図、第２図は同
側面図、第３図は第１図のIII-III方向に見たエンジン
の上部断面図である。 1:シリンダヘッド、4a,4b,5a,5b:カム軸受部の下半円
部、7:フロント側端壁、8:シリンダヘッド上面、9a,9b,
9c,10a,10b,10c:リブ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 日野 由紀子 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 実開 昭55−73503（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−55103（ＪＰ，Ｕ)

Claims (5)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドのフロント側端壁からカム
   軸受部を突出形成させたエンジンのシリンダヘッド構造
   において、前記突出形成させたカム軸受部の下半円部
   を、該下半円部の上面がシリンダヘッド上面と面一とな
   るようにしてシリンダヘッド頂部に一体形成し、シリン
   ダヘッドを平面視した時に前記カム軸受部の下半円部の
   側部とシリンダヘッドのフロント側端壁との間に介在し
   その間を一体的に連結するリブを、前記シリンダヘッド
   上面および前記カム軸受部の下半円部上面と面一となる
   ように形成したことを特徴とするエンジンのシリンダヘ
   ッド構造。
2. 【請求項２】当該エンジンはシリンダヘッド上部に吸気
   用および排気用の２本のカムシャフトを配置したダブル
   オーバヘッドカム式エンジンであり、前記吸気用および
   排気用の２本のカムシャフトの各々を支承するカム軸受
   部の下半円部をシリンダヘッドのフロント側端壁からそ
   れぞれ突出形成させ、それら突出形成させたカム軸受部
   の下半円部に対し、それら下半円部とフロント側端壁と
   で囲まれた空間に前記リブを配置した請求項１記載のエ
   ンジンのシリンダヘッド構造。
3. 【請求項３】前記突出形成させた両カム軸受部の下半円
   部とフロント側端壁とで囲まれた空間に配置した両カム
   軸受部の下半円部に対するリブを相互に連結してなる請
   求項２記載のエンジンのシリンダヘッド構造。
4. 【請求項４】前記リブをカム軸受部の下半円部高さに対
   し薄肉に形成した請求項1,2または３記載のエンジンの
   シリンダヘッド構造。
5. 【請求項５】前記突出形成させたカム軸受部の下半円部
   をベアリングキャップ共々カムシャフト端部のタイミン
   グプーリ内に入り込む配置とした請求項1,2または３記
   載のエンジンのシリンダヘッド構造。