JP2514873B2 - 成形機の型締装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、射出成形機、ダイキ
ャストマシンなどの成形機に用いることができる直圧式
の型締装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】型締シリンダ内を移動する型締ピストン
の油圧抵抗を低減し、型開閉速度を高速化する目的で、
前後２つの油室を型締ピストンに穿設した通路により連
通するとともに、型締側となる後部油室に上記通路を開
閉するディスクバルブを、軸方向に可動自在に型締ラム
の後部周囲に嵌挿して設け、そのディスクバルブと型締
ラムとの嵌挿部分にバルブ作動用の油室を設けた成形機
の型締装置は、特公昭５６−２４６１４号公報や特開昭
６４−８７３１８号公報などにより既に知られている。

【０００３】前者は、型開閉ピストンと型開シリンダと
を、型締ラムと型締シリンダの後部にそれぞれ延設して
備え、その型開閉ピストンを介して上記ディスクバルブ
のバルブ開放油室と型開シリンダの油室とを連通する一
方、型開シリンダの後端から型開閉ピストンに挿入した
型閉用の早送りピストンの油室とバルブ閉鎖油室とを連
通している。

【０００４】後者は、ディスクバルブのバルブ開放油室
のみを備えており、その油室と型締シリンダの後端から
型締ラムに挿入した早送りピストンの型開油室とを連通
している。

【０００５】上記従来装置では、何れもディスクバルブ
の開放は型開シリンダまたは早送りピストンの型開側の
油室を経てバルブ開放油室に供給された圧油により行う
が、バルブ閉鎖に関しては、前者は早送りピストンの型
閉用油室を経てバルブ閉鎖油室に供給された圧油により
行い、後者は予めディスクバルブの閉鎖側と被閉鎖側と
の受圧面積に差をもたせ、その面積差と型締シリンダ内
の油圧力とにより行っている。

【０００６】このディスクバルブによる型締ピストンの
通路の閉鎖は、何れも早送りピストンによる高速型閉の
工程が完了したのち、型締シリンダの後部油室を昇圧し
て大きな型締力を発生する直前に行っている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような従来装置の
課題は、ディスクバルブによる型締ピストンの通路の閉
鎖を、高速型閉のために供給した油圧力の一部を用いて
行い、または型締シリンダの昇圧のための油圧力を用い
て行っている関係上、ディスクバルブを単独に閉鎖作動
させることができないことにある。

【０００８】合成樹脂の成形には、金型のキャビティに
充填した樹脂を圧縮するコンプレッション成形があり、
またランナーの離型を先行するために、型締方向に対し
反発するばね部材を組み込んだ金型を使用する成形もあ
る。

【０００９】上記従来装置によるコンプレッション成形
では、金型内の樹脂を圧縮するために、金型閉鎖直前に
ディスクバルブを閉作動して型締ピストンの通路を閉鎖
し、型締シリンダの後部油室に圧油を供給する必要があ
る。

【００１０】通常の射出成形では、少なくとも樹脂の射
出充填前にディスクバルブによる型締ピストンの閉鎖が
完了していればよいのであるが、コンプレッション成形
では、型締ラムの微速前進によって樹脂を圧縮すること
が望まれることから、その閉鎖のタイミングが難しく、
バルブ閉鎖が完全に行われる前に圧縮工程に移行するこ
とが多い。

【００１１】この結果、型締シリンダの後部油室の油圧
力による樹脂の圧縮が行われず、成形精度の高い成形品
が得られなくなる。

【００１２】また離型用のばね部材を組み込んだ金型を
用いた成形では、バルブ閉鎖が行われる前の金型閉鎖直
前の低圧・低速時に、金型側のばね圧により型閉が困難
となることがあり、型開き開始時には、ばね部材の反発
力によりキャビティ型の開きがスムーズに行われず、離
型時に成形品が損傷するなどの問題もある。

【００１３】この発明は、上記従来の型締装置の課題を
解決するために考えられたものであって、その目的は簡
単な手段によりディスクバルブの単独閉作動を可能とな
し、これにより通常の成形には勿論のこと、コンプレッ
ション成形などの特殊な成形にも容易に使用することが
できる成形機の型締装置を提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】上記目的によるこの発明
の特徴は、型締シリンダ内が型締ラム周囲の型締ピスト
ンにより前後２つの油室に区画され、それら油室を型締
ピストンに穿設した通路により連通するとともに、型締
側となる後部油室に上記通路を開閉するディスクバルブ
を、縮径により周囲を段部に形成した型締ラムの後端部
に軸方向に可動自在に嵌挿して設け、そのディスクバル
ブと型締ラムとの嵌合部分にバルブ開放油室とバルブ閉
鎖油室とを区画形成した成形機の型締装置において、上
記ディスクバルブのバルブ開放油室と、上記型締ラムの
後部内に設けた早送りピストンの型開油室とを連通する
一方、上記バルブ閉鎖油室を油圧制御装置と切換弁とを
設けた油圧路をもって駆動油圧回路に直結してなること
にある。

【００１５】

【作 用】上記構成では、切換弁の操作により油圧制御
装置を経てバルブ閉鎖油室に圧油が直接供給され、そこ
に供給された圧油によりディスクバルブは単独で型締ピ
ストンの通路を閉鎖する。

【００１６】また油圧制御装置によりバルブ閉鎖油室の
油圧力を制御し、型締シリンダの前部油室の油圧力との
関連おいて強力型開を行うことができる。

【００１７】

【実施例】図中１は型締シリンダで、内部は型締ラム２
の後部周囲に一体形成した型締ピストン３により前部油
室４と後部油室５とに区画されている。

【００１８】また上記２つの油室は型締ピストン３に穿
設した複数の通路６，６により相互に連通しており、そ
の通路６，６は後部油室内に設けたディスクバルブ７に
より型締時に閉鎖される。

【００１９】上記型締ラム２はシリンダをもって形成さ
れ、図面では省略したが、その先端に成形機の可動盤が
連結される。また型締ラム内には型締シリンダ１の後端
中央に固定した早送りピストン８が挿入してあり、その
ピストンにより内部は型閉油室９と型開油室１０とに仕
切られている。

【００２０】更に型締ラム２の後部油室５に位置する後
端部周囲は縮径により段部に形成され、その段部に上記
ディスクバルブ７が軸方向に可動自在に嵌挿してある。
また型締ラム２の後端部とディスクバルブ７との嵌合部
分は、該ディスクバルブ７の内周側に突出形成されて段
部上を前後に区画する環状の凸部１１と、段部後端に嵌
着してストッパー１２により固定したピストン１３とに
よりバルブ開放油室１４とバルブ閉鎖油室１５とに区画
形成されている。

【００２１】上記バルブ開放油室１４は油圧路１６によ
り早送りピストン８の型開油室１０と連通し、早送りピ
ストン８を経て型開油室１０に圧油が供給されたとき、
その圧油の一部によりディスクバルブ７を後退移動し
て、型締ピストン２の通路６，６を開放し、上記前部油
室４と後部油室５とを連通する。

【００２２】またバルブ閉鎖油室１５は型締ラム２に一
部を貫設した油圧路１７をもって、駆動油圧回路１８に
直結してある。この油圧路１７にはパイロットチェッキ
バルブ１９と圧力調整弁２０などによる油圧制御装置２
１及び電磁バルブなどによる切換弁２２が設けてある。

【００２３】なお、２３は開閉弁２４を設けて前部油室
４に設けた補助タンク、２５は駆動油圧回路中の主切換
弁、２６は後部油室５の油圧路２７にパイロットチェッ
キバルブ２８とともに配設した切換弁で、油圧路２７を
駆動油圧回路側と上記補助タンク側とに切換える。２９
は前部油室４の油圧路３０にチェッキバルブ３１ととも
に配設した切換弁、３２は油圧ポンプである。

【００２４】次に型締工程について説明する。図に示す
型開完了状態において、先ず上記切換弁２５を左側に切
換え、早送りピストン８から型締ラム内の型閉油室９に
圧油を供給する。

【００２５】これにより型締ラム２は高速で前進移動
し、その移動が所定の位置に達したとき、前進移動をス
ローダウンに切換えて型閉を完了する。この高速型閉工
程の完了の後に、上記切換弁２２，２６とを同時に右側
に切換えて油圧路１７，２７に圧油を導き、バルブ閉鎖
油室１５と後部油室５とに圧油を供給する。

【００２６】この圧油の供給により上記ディスクバルブ
７が前進移動して型締ピストン３の背面と密着し、通路
６，６を閉鎖して前部油室４と後部油室５とを完全に遮
断する。これにより後部油室５の油圧力が上昇して大き
な型締力を発生する。

【００２７】成形完了後の型開工程は、後部油室５の圧
抜きから始まる。主切換弁２５、切換弁２６，２２をそ
れぞれ図示の状態に切換え、更に切換弁２９を右側に切
換えて圧油を通路３０を経て前部油室４に供給すると、
パイロットチェッキバルブ２８がパイロット圧に導かれ
て開き、後部油室５と補助タンク２３とが油圧路２７に
より連通して、後部油室５の圧抜きが行われる一方、バ
ルブ閉鎖油室１５の圧力が一定圧力に保持される。

【００２８】供給された圧油により前部油室４が昇圧す
ると、金型の離型時に発生する負荷に見合う大きな型開
力が得られる。この強力型開を完了した時点で、切換弁
２２を図示の状態に切換てバルブ閉鎖油室１５の圧油を
タンクに逃がすと同時に、主切換弁２５を右側に切換え
て早送りピストン８から型締ラム内の型開油室１０に圧
油を供給する。

【００２９】上記圧油の一部は油圧路１６からバルブ開
放油室１４に流入してディスクバルブ７を後方に加圧
し、型締ピストン３の背面から離して通路６，６を開放
する。これにより前後の２つの油室４，５は通路６，６
により連通するので、型開油室１４の圧油による型締ラ
ム２の後退移動に対して、後部油室５の油圧抵抗は除か
れることから、その後退移動は高速で行われ、また高速
移動により生じがちな前部油室４の負圧は、補助タンク
２３からの油の供給により防止される。

【００３０】上記のように、ディスクバルブ７を単独作
動させることができこの型締装置では、コンプレッショ
ン成形やばね部材を組み込んだ金型を用いての成形に際
して、ディスクバルブ７による通路６，６の閉鎖を、金
型の型閉直前の位置にて、型締ラム２を一時的に停止し
て行うことができる。

【００３１】このためコンプレッション成形では、充分
な後部油室５の昇圧の下に型締ラム２を微速前進して金
型内の樹脂の圧縮を行うことができる。同様にばね部材
を組み込んだ金型に対しても、低圧・低速による閉鎖時
のばね圧の影響を克服でき、他に特別な手段を講じなく
とも低圧・低速の下に型閉をなすことができる。

【００３２】またバルブ閉鎖油室１５の圧抜きを行わな
い限り、ディスクバルブ７の開放は生じないから、閉鎖
状態を維持しながら後部油室５を降圧して行くと、型締
ラム２は型締ピストン３に油圧抵抗を受けながら後退移
動することになり、したがって油圧抵抗をばね圧にバラ
ンスさせて型開を行うことができる結果、ばね部材を組
み込んだ金型の場合であっても、型開をスムーズに行う
ことができる。

【００３３】

【発明の効果】この発明は上述のように、型締ピストン
に穿設した通路を開閉するディスクバルブのバルブ開放
油室と、型締ラムの後部内に設けた早送りピストンの型
開油室とを連通する一方、デスクバルブのバルブ閉鎖油
室を、油圧制御装置と切換弁とを設けた油圧路をもって
駆動油圧回路に直結し、ディスクバルブを単独にて開閉
できるようにしたことから、通常の成形において強力型
開能力がより向上すると共に、コンプレッション成形や
ばね部材を組み込んだ金型を用いての成形にも有効とな
る。

【００３４】また構成もバルブ閉鎖油室を単独の油圧路
により駆動油圧回路に接続するだけでよく、そこに供給
された圧油の制御も可能であるから、ディスクバルブの
単独作動が不可能な従来装置よりも高度な型開閉及び型
締性能を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係る成形機の型締装置の略示断面と
その油圧回路とを示す説明図である。

【符号の説明】

１ 型締シリンダ ２ 型締ラム ３ 型締ピストン ４ 前部油室 ５ 後部油室 ６ 通路 ７ ディスクバルブ ８ 早送りピストン ９ 型閉油室 １０ 型開油室 １４ バルブ開放油室 １５ バルブ閉鎖油室 １６ 油圧路 １７ 油圧路 １８ 駆動油圧回路 １９ パイロットチェッキバルブ ２０ 油圧調整弁 ２１ 油圧制御装置

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 型締シリンダ内が型締ラム周囲の型締ピ
   ストンにより前後２つの油室に区画され、それら油室を
   型締ピストンに穿設した通路により連通するとともに、
   型締側となる後部油室に上記通路を開閉するディスクバ
   ルブを、縮径により周囲を段部に形成した型締ラムの後
   端部に軸方向に可動自在に嵌挿して設け、そのディスク
   バルブと型締ラムとの嵌合部分にバルブ開放油室とバル
   ブ閉鎖油室とを区画形成した成形機の型締装置におい
   て、 上記ディスクバルブのバルブ開放油室と、上記型締ラム
   の後部内に設けた早送りピストンの型開油室とを連通す
   る一方、上記バルブ閉鎖油室を油圧制御装置と切換弁と
   を設けた油圧路をもって駆動油圧回路に直結してなるこ
   とを特徴とする成形機の型締装置。