JP2021004403A - めっき鋼材、およびめっき鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのことから、このような部材については、後めっき処理(いわゆる、どぶ漬けめっき処理)が施される。
一方、2段めっき法の短所は、1段目のめっき処理に形成しためっき層が何らかの形で、2段目のめっき処理時のめっき層形成反応に関与することである。それにより、めっき層の成分バランス、組織の作り込みの判断が、単純な1段めっきとは異なる。そして、総合的に優れためっき層の構造を確認する必要があると共に、その作り込むための製造方法を明らかにしなければならない。
(1)鋼材と、
前記鋼材の表面上に配され、Fe濃度が3質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される表層めっき層と、前記鋼材と前記表層めっき層との間に配され、Fe濃度が3質量%以上30質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される、層厚が3μm以上の中間めっき層と、を含むめっき層と、 を有し、
前記表層めっき層及び前記中間めっき層の合計の層厚が、8μm以上300μm未満であり、
前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
Zn:65.00%超、
Al:6.5%超〜22.5%未満、
Mg:3.0%超〜12%未満、
Sn:0%〜4.00%未満、
Bi:0%〜0.30%未満、
In:0%〜0.30%未満、
Ca:0.05%〜1.00%未満、
Y :0%〜0.30%未満、
La:0%〜0.30%未満、
Ce:0%〜0.30%未満、
Si:0%〜1.00%未満、
Cr:0%〜0.25%未満、
Ti:0%〜0.25%未満、
Ni:0%〜0.25%未満、
Co:0%〜0.25%未満、
V :0%〜0.25%未満、
Nb:0%〜0.25%未満、
Cu:0%〜0.25%未満、
Mn:0%〜0.25%未満、
Fe:0%〜15.0%未満、
Sr:0%〜0.50%未満、
Sb:0%〜0.50%未満、
B :0%〜0.50%未満、及び
不純物からなり、
前記中間めっき層のMg濃度が、質量%で3.0%超である、めっき鋼材。
(2)Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記表層めっき層の表面のX線回折像において、
強度和I(Zn)=I(36.30°強度(cps))+I(38.99°強度(cps))+I(43.23°強度(cps))+I(54.34°強度(cps))+I(70.06°強度(cps))、
強度和I(Al)=I(38.47°強度(cps))+I(44.74°強度(cps))+I(65.14°強度(cps))、
強度和I(MgZn2)=I(19.67°強度(cps))+I(20.79°強度(cps))+I(22.26°強度(cps))+I(40.47°強度(cps))+I(41.31°強度(cps))+I(45.378°強度(cps))、
強度和Io=I(Zn)+I(Al)+I(MgZn2)
としたとき、下記式1〜下記式3を満たす(1)に記載のめっき鋼材。
式1:I(Zn)/Io≦0.70、
式2:0.05≦I(Al)/Io≦0.30
式3:0.25≦I(MgZn2)/Io≦0.70
(3)前記表層めっき層のSn濃度が、質量%で、0.03〜2.00%未満であり、
Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記表層めっき層の表面のX線回折像において、強度I(Mg−Sn金属間化合物)=I(22.8°強度(cps))が、1000cps以上、又は回折ピークのない11°〜12°における平均強度をバックグラウンド強度(cps)とした際に、対し500cps以上高い、(1)又は(2)に記載のめっき鋼材。
(4)前記めっき層は、前記鋼材と前記中間めっき層との間に配され、Fe濃度が30質量%以上85質量%未満)で、層厚1μm以上のAl−Fe合金層から構成される界面合金層を有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のめっき鋼材。
(5)請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のめっき鋼材の製造方法であって、
質量%で、
Zn:65.0%超、
Al:12.0%超〜25.0%、
Mg:5.0%超〜8.0%未満、
Sn:0〜5.00%未満、
Bi:0%〜1.0%未満、
In:0%〜0.50%未満、
Ca:0.10%〜3.00%未満、
Y :0%〜0.50%未満、
La:0%〜0.50%未満、
Ce:0%〜0.50%未満、
Si:0%〜1.00%未満、
Cr:0%〜0.25%未満、
Ti:0%〜0.25%未満、
Ni:0%〜0.25%未満、
Co:0%〜0.25%未満、
V :0%〜0.25%未満、
Nb:0%〜0.25%未満、
Cu:0%〜0.25%未満、
Mn:0%〜0.25%未満、
Fe:0%〜5.0%未満、
Sr:0%〜0.50%未満、
Sb:0%〜0.50%未満、
B :0%〜0.50%未満、及び
不純物からなる化学組成を有し、かつ浴温度が浴融点+20℃(ただし、少なくとも420℃超)〜520℃の溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴に、層厚30μm以上のめっき層を有するめっき鋼基材であって、Znめっき鋼基材、Zn−Al合金めっき鋼基材、及びZn−Al−Mg合金めっき鋼基材から選択されるめっき鋼基材を、20秒以上240秒未満浸漬した後、引き上げる工程と、
前記めっき鋼基材を前記溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴から引き上げた直後から380℃まで、60秒以内で冷却する工程と、
を有するめっき鋼材の製造方法。
(6)前記めっき鋼基材のめっき層が、Fe濃度が3質量%以上80質量%未満で、層厚10μm以上のZn−Fe合金層から構成される界面合金層を有する、(5)に記載のめっき鋼材の製造方法。
なお、本明細書において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「〜」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
化学組成の元素の含有量は、元素濃度(例えば、Zn濃度、Mg濃度等)と表記することがある。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「X%又はX+元素記号(例えば19%Al、又は19Al)」との表記は、対象となる元素濃度がX%(例えばAl濃度が19%)であることを示す。なお、「X%又はX+元素記号」と共に表記されているZn濃度は、残部濃度である。例えば、「Zn−10Al−5.1Mg−0.1Ca」又は「Zn−10%Al−5.1%Mg−0.1%Ca」と表記されている場合、Al濃度=10%、Mg濃度=5.1%、Ca濃度=0.1%、Zn濃度=残部を意味する。
「層の断面」とは、層を厚さ方向に沿って切断した断面を示す。
「層の表面」とは、層の厚さ方向に対向する面であって、鋼板外側を向いている面を示す。
めっき層は、鋼材の表面上に配され、Fe濃度が3質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される表層めっき層と、鋼材と表層めっき層との間に配され、Fe濃度が3質量%以上30質量%未満で、Al−Fe金属間化合物相を含むZn−Al−Mg合金層から構成される、層厚が3μm以上の中間めっき層と、を含む。
そして、表層めっき層及び中間めっき層の合計の層厚は、8μm以上300μm未満であり、表層めっき層及び中間めっき層を合わせた平均化学組成、並びに、表層めっき層の平均化学組成は、後述する所定の平均化学組成とし、中間めっき層のMg濃度が、質量%で3%超としている。
従来、2段めっき法による後めっき鋼材(つまり、めっき層として表層めっき層及び中間めっき層を有するめっき鋼材)としては、めっき層の厚みを増大させた溶融Zn後めっき鋼材、2段目のめっき処理により、Zn−Al−Mg系めっき層(例えば、Zn−5%Al−1%Mgのめっき層)を形成した後めっき鋼材が使用されてきた。
なお、発明者らは、過酷な耐食性環境(海岸地域、融雪塩等を散布する地域等)に対する、後めっき鋼材の最低限の耐久するレベルとして、層厚25μm以内で6000時間、層厚50μm以内で11000時間、層厚100μm以内で21000時間以上(すなわち、めっき厚み×200時間+1000時間)のSSTにおいて赤錆発生無を合格達成基準に基づいて検討した。
1段目のめっき層の厚みが十分でないと、2段めっき処理後に、不めっきを生じる。または、2段めっき法により、めっき層全体、又は、中間めっき層が十分な厚みで形成できない。ζ相が、中間めっき層へ変化するため、1段目のめっき層には、あらかじめ、ζ相が形成していた方が好ましい。
そのため、めっき層の化学成分又は組織が適合しても、下記合格条件に至らない後めっき鋼材になる。ただし、めっき層全体の厚さが厚すぎると、2段目のめっき処理の成分が変化しやすくなり、所定のめっき成分内に収まらない場合や、2段目のめっき処理後の外観が極端に悪くなりやすくなるため、下記合格条件に至らない後めっき鋼材になる。
つまり、2段めっき法によるめっき層全体の組成(表層めっき層及び中間めっき層を合わせた平均化学組成)を、従来の2段めっき法によるめっき層全体の組成に比べ、Al濃度およびMg濃度が比較的高い成分系にした方が、過酷な耐食性環境に対する耐食性が高まる。
一方、図3に、従来のめっき鋼材のめっき層の断面の一例を示すSEMの反射電子像(倍率2000倍)を示す。
また、図3中、表層めっき層において、白色を呈する領域がZn相、灰色を呈する領域がAl相及びMgZn2相の少なくとも一方が存在する領域である。
一方、図3に示す比較めっき鋼材は、めっき鋼基材としてJIS H 8641:2007で規格化されたHDZ45(溶融Znめっき鋼板)に、めっき浴(組成:Zn−5%Al−1%Mg)による2段目のめっき処理を施しためっき鋼材(以下「比較2段めっき鋼材」とも称する)である。この比較2段めっき鋼材は、市場で最も高耐食性とされるめっき鋼材である。
開発2段めっき鋼材は、1段目のめっき層(溶融Znめっき層)の痕跡を残す中間めっき層にも、Mg濃度が高く、MgZn2相が相当量含まれる。その結果、開発2段めっき鋼材のめっき層全体としては、比較2段めっき鋼材に比べ、Zn相の割合が低く、Al相およびMgZn2相(特にMgZn2相)の割合が多い。
さらに、開発2段めっき鋼材は、中間めっき層と地鉄(鋼材)との間に、Al−Fe合金層で構成された界面合金層が形成されている。この中間めっき層には、比較2段めっき鋼材にないMgが高濃度に含有されている。
Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、表層めっき層の表面のX線回折像において、
強度和I(Zn)=I(36.30°強度(cps))+I(38.99°強度(cps))+I(43.23°強度(cps))+I(54.34°強度(cps))+I(70.06°強度(cps))、
強度和I(Al)=I(38.47°強度(cps))+I(44.74°強度(cps))+I(65.14°強度(cps))、
強度和I(MgZn2)=I(19.67°強度(cps))+I(20.79°強度(cps))+I(22.26°強度(cps))+I(40.47°強度(cps))+I(41.31°強度(cps))+I(45.378°強度(cps))、
強度和Io=I(Zn)+I(Al)+I(MgZn2)
としたとき、下記式1〜下記式3を満たす。
式1:I(Zn)/Io≦0.70
式2:0.05≦I(Al)/Io≦0.30
式3:0.25≦I(MgZn2)/Io≦0.70
表層めっき層のSn濃度は、質量%、0.03〜2.00%未満であり、
Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、表層めっき層表面のX線回折像において、強度I(Mg−Sn金属間化合物)=I(22.8°強度(cps))は、1000cps以上、又は11°〜12°におけるバックグラウンド強度(cps)に対し500cps以上高い。
めっき層は、鋼材と前記中間めっき層との間に配され、Fe濃度が30質量%以上85質量%未満)で、層厚1μm以上のAl−Fe合金層から構成される界面合金層を有する。
めっきの対象となる鋼材(以下、「めっき原材」とも称することがある)について説明する。
鋼材の形状には、特に制限はない、鋼材は、鋼板の他、鋼管、土木建築材(柵渠、コルゲートパイプ、排水溝蓋、飛砂防止板、ボルト、金網、ガードレール、止水壁等)、家電・自動車部品材(小型ボルト、複雑形状の筐体、パンチングメタル)、など、成形加工された鋼材が挙げられる。成形加工は、例えば、プレス加工、ロールフォーミング、曲げ加工などの種々の塑性加工手法が利用できる。
鋼材は、鋼材の製造方法、鋼板の製造方法(熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等)等の条件についても、特に制限されるものではない。
プレめっき鋼材としては、Niプレめっき鋼材が代表例として挙げられる。
すなわち、めっき原材が鋼材であれば、どぶ漬けめっきは可能であり、表面状態、形状には規定がない。
次に、めっき層について説明する。
めっき層は、Fe濃度が3質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される表層めっき層と、鋼材と表層めっき層との間に配され、Fe濃度が3質量%以上30質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される中間めっき層と、を含む。
めっき層は、表層めっき層と中間めっき層に加え、Al−Fe合金層から構成される界面合金層を有してもよい。界面合金層(Al−Fe合金層)は、鋼材と中間めっき層との間に有する。
溶融めっき法における、Al−Fe合金層から構成される界面合金層の形成はめっき浴内で反応が完了しているため、Al−Fe合金層形成によるめっき層全体のAl成分、Zn成分の減少は通常、僅かである。
Znは、めっき層の主体を構成する元素である。本発明においては、2段めっき手法を採用するため、1段目のめっき層との親和性を有するのに必要な元素である。Zn濃度が少なすぎると、第2元素である、Al濃度が高くなって、Feとの反応性の制御、ならびに、1段めっきとの濡れ性の確保や、本発明の主体である中間めっき層の形成が制御できなくなる。
よって、Zn濃度は、65.00%超とする。Zn濃度は68.00%以上が好ましく、71.00%以上がより好ましい。
なお、Zn濃度の上限は、Znを除く元素及び不純物以外の残部となる濃度である。
Alは、めっき層中で中間めっき層を形成するために必須の元素である。
Al濃度が少なすぎると、地鉄からのFe成分の供給が少なくなり、中間めっき層を形成しなくなる。
Al濃度が多すぎると上記のように、Feとの反応性が活発となり、中間めっき層の制御ができなくなる。また過剰なAlは、同時にAl相、Al−Fe相の形成量を増やし、中間めっき層に必須のMgZn2相を減らすことになる。その結果、耐食性バランスが崩れて、期待される耐食性を発揮することができなくなる。
よって、Al濃度は、6.5%超〜22.5%未満とする。
Al濃度の下限は、10.0%以上が好ましく、15.0%以上がより好ましい。
Al濃度の上限は、21.0%以下が好ましく、20.0%以下がより好ましい。
Mgは、中間めっき層を構成するMgZn2相を形成するのに必須の元素である。特に多量の元素が含有されることで、中間めっき層中にMgZn2相を多量に形成することができ、従来耐久できなかった腐食環境下での耐食性を得ることができる。
Mg濃度が少なすぎると、中間めっき層中のMg成分が不足して、従来材の2段めっきと似た構造になる。このような場合、過酷な腐食環境では耐食性が得られない。
Mg濃度が多すぎると、Mgは1段目のめっき層との濡れ性が悪くなり、2段めっきを形成すること自体が困難となる。また過剰なMgはMgZn2相の形成を促し、同時にAl相の形成量を減らすことになる。その結果、耐食性バランスが崩れて、期待される耐食性を発揮することができなくなる。
よって、Mg濃度は、3.0%超〜7.2%未満とする。
Mg濃度の下限は、3.5%以上が好ましく、4.0%以上がより好ましい。
Mg濃度の上限は、7.0%以下が好ましく、6.3%以下がより好ましい。
Sn、BiおよびInは、それ自体が耐食性を向上させる元素ではない。むしろ、耐食性の低く、溶けやすいMg2Sn相、Mg3In相等の形成を促し、耐食性が劣化するする元素である。
Sn、BiおよびInの各濃度が多すぎると、これらの形成が活発化して、耐食性が悪化する。
よって、Sn濃度は0〜4.00%未満とし、BiおよびInの各濃度は0%〜0.30%未満とする。
つまり、Sn、BiおよびInは、適量含有が好ましい。一方、Mg2Sn相、Mg3In相等等の金属間化合物相は、硬いため、めっき多量に形成するとめっき層の密着性等に悪影響を及ぼす。
よって、Sn濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
BiおよびInの各濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.10%以上が好ましい。
Sn濃度の上限は、3.00%以下が好ましく、1.00%以下がより好ましい。
BiおよびInの各濃度の上限は、0.25%以下が好ましい。
Caは、めっき浴の濡れ性を確保するのに必要な元素である。
Ca濃度が少なすぎると、すなわち、本発明のめっき層を形成するためのめっき浴のように、高濃度のMgを含有するめっき浴では、Mgの酸化被膜が多量に形成してしまい、2段めっき浴浸漬時の1段めっき浴との濡れ性確保をすることができなくなり、めっき層を形成すること自体が困難となる。
Ca濃度が多すぎるとめっき層中に硬い金属間化合物を多量に形成して、めっき層が脆くなり、鋼材との密着性確保することが困難となる。
よって、Ca濃度は、0.05%〜1.00%未満とする。
Ca濃度の下限は、0.10%以上が好ましい。
Ca濃度の上限は、0.50%以下が好ましい。
Y、LaおよびCeは、Caと同じ働きをする元素である。
Y、LaおよびCeの各濃度が多すぎると、これらも金属間化合物を形成する。
よって、Y、LaおよびCeの各濃度は0%〜0.30%未満とする。
Y、LaおよびCeの各濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.05%以上がより好ましい。
Y、LaおよびCeの各濃度の上限は、0.25%以下が好ましい。
Siは、めっき層の耐食性を向上させる元素である。めっき層中に耐食性の高い、Mg−Si系化合物、Ca−Si系化合物を形成する。
Si濃度が多すぎると、めっき層のめっき密着性が悪化し、さらには、Feのめっき浴中への拡散を抑制するため、中間めっき層も形成しづらくなる。
よって、Si濃度は0%〜1.00%未満とする。
Si濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.10%以上がさらに好ましい。
Si濃度の上限は、0.50%以下が好ましく、0.40%以下がより好ましい。
Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnは、めっき浴に添加することが可能な元素である。これら元素がめっき浴中に含有されると、めっき層を構成する相に置換状態で、存在するか、又は微細な金属間化合物を形成し、これらの作用によって、わずかながら耐食性に変化をもたらすことができる元素である。
Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの各濃度が多すぎると、金属間化合物の形成が多くなり、めっき層本来の構造及び耐食性を発揮できなくなる。
よって、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの各濃度は0%〜0.25%未満とする。
Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの各濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましい。
溶融めっき法によって、めっき層を形成する場合、表層めっき層(Zn−Al−Mg合金層)、中間めっき層(Al−Fe金属間合物を含むZn−Al−Mg合金層)および界面合金層(Al−Fe合金層)に一定のFe濃度が含有される。
Fe濃度が15.0%未満までは、2段めっき法によるめっき層に含まれても性能に悪影響がないことが確認されている。Feの多くは、Al−Fe合金層に含まれていることが多いため、この層の厚みが大きいと一般的にFe濃度は大きくなる。
Sr、SbおよびBも、上記の元素と同じく、添加可能な元素で、同じ作用をもたらすが、Zn、およびAlとの親和性が高いため、前記元素より、多量の濃度を含有させることができる元素である。
Sr、SbおよびBの各濃度が多すぎると効果が飽和するだけでなく、ドロスが増加し作業性が低下する。
よって、Sr、SbおよびBの各濃度は0%〜0.50%未満とする。
Sr、SbおよびBの各濃度の下限は、0%超えが好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましい。
Sr、SbおよびBの各濃度の上限は、0.40%以下が好ましく、0.30%以下がより好ましい。
不純物は、原材料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分を指す。例えば、めっき層には、鋼材(地鉄)とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。
表層めっき層は、Fe濃度が3質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される。
Zn:70.00%超、
Al:3.0%超〜25.0%未満、
Mg:5.0%超〜12.0%未満、
Sn:0%〜5.00%未満、
Bi:0%〜0.30%未満、
In:0%〜0.30%未満、
Ca:0.05%〜1.00%未満、
Y :0%〜0.30%未満、
La:0%〜0.30%未満、
Ce:0%〜0.30%未満、
Si:0%〜1.00%未満、
Cr:0%〜0.25%未満、
Ti:0%〜0.25%未満、
Ni:0%〜0.25%未満、
Co:0%〜0.25%未満、
V :0%〜0.25%未満、
Nb:0%〜0.25%未満、
Cu:0%〜0.25%未満、
Mn:0%〜0.25%未満、
Fe:0%〜3.0%未満、
Sr:0%〜0.50%未満、
Sb:0%〜0.50%未満、
B :0%〜0.50%未満、及び
不純物からなる平均化学組成とする。
表層めっき層は、Zn相、Al相およびMgZn2相を有することがよい。そして、耐食性向上の観点から、Zn相の割合を低くし、Al相およびMgZn2相の割合を高めることが好ましい。
通常、XRDで、Znの回折ピークであれば、例えば、JCPDSカード:PDF#00−004−0831が代表される。表層めっき層(Zn−Al−Mg合金層)において、Zn相を同定するのに最適な回折ピークは、36.30°、38.99°、43.23°54.34°および70.06°である。
また、XRDで、Alの回折ピークであれば、例えば、JCPDSカード:PDF#00−004−0787が代表される。表層めっき層(Zn−Al−Mgめっき層)において、Al相を同定するのに最適な回折ピークは、38.47°、44.74°、および65.14°である。
また、XRDで、MgZn2の回折ピークであれば、例えば、JCPDSカード:PDF#00−034−0457、が代表される。表層めっき層(Zn−Al−Mgめっき層)において、MgZn2相を同定するのに最適な回折ピークは、19.67°、20.79°、22.26°、41.31°、および45.378°である。
強度和I(Zn)=I(36.30°強度(cps))+I(38.99°強度(cps))+I(43.23°強度(cps))+I(54.34°強度(cps))+I(70.06°強度(cps))、
強度和I(Al)=I(38.47°強度(cps))+I(44.74°強度(cps))+I(65.14°強度(cps))、
強度和I(MgZn2)=I(19.67°強度(cps))+I(20.79°強度(cps))+I(22.26°強度(cps))+I(40.47°強度(cps))+I(41.31°強度(cps))+I(45.378°強度(cps))、
強度和Io=I(Zn)+I(Al)+I(MgZn2)
としたとき、下記式1〜下記式3を満たすことが好ましい。
一方、式2〜式3を満たすと、従来の2段めっき法によるめっき層に比べ、Al相およびMgZn2相の割合が多く、例えば、Al相およびMgZn2相が体積分率30%以上で有することを示している。
そして、下記式1〜下記式3を満たすことにより、さらなる高い耐食性が発揮される。なお、耐食性向上の観点から、下記式1−2〜式3−2を満たすことがより好ましい。
式2:0.05≦I(Al)/Io≦0.30
式3:0.25≦I(MgZn2)/Io≦0.70
式2−2:0.10≦I(Al)/Io≦0.25
式3−2:0.30≦I(MgZn2)/Io≦0.50
表層めっき層にSnを含むと、Mgとの間で、MgZn2相に比べ、Mg−Sn金属間化合物相を形成する。そのため、表層めっき層にMg−Sn金属間化合物相が存在すると、さらなる高い耐食性が発揮される。
そして、高い耐食性を発揮するには、Mg−Sn金属間化合物相を形成するには、表層めっき層のSn濃度は、0.03〜2.00%未満が好ましい。
(1)Mg2Sn相
(2)Mg9Sn5相
(3)Snの一部にBi、In、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、Cu、及びMnの少なくとも1種が置換した置換Mg2Sn相およびMg9Sn5相(Mg2Sn相およびMg9Sn5相の置換体の相)
(4)Mgの一部にCa、Y、La及びCeの少なくとも1種が置換した置換Mg2Sn相およびMg9Sn5相(Mg2Sn相およびMg9Sn5の置換体の相)
(5)Mgの一部にCa,Y,La及びCeの少なくとも1種が置換し、かつSnの一部にBi、In、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、Cu、及びMnの少なくとも1種が置換した置換Mg2Sn相およびMg9Sn5相(Mg2Sn相およびMg9Sn5の置換体の相)
なお、これらMg2Sn相およびMg9Sn5の置換体の相を「Mg2Snの置換体の相と総称する場合がある。
通常、XRDでMg2Snの回折ピークであれば、例えば、JCPDSカード:PDF#00−007−0274、#00−006−0190、#00−002−1087で代表される。しかし、表層めっき層(Zn−Al−Mg合金層)において、Mg−Sn金属間化合物相を同定するのに最適な回折ピークは、Zn相、MgZn2相、Al相と回折ピークが重複しない22.8°である。Mg−Sn金属間化合物相を同定するのに用いる回折ピークは、22.8°の他、23.3°、及び24.2°が他のめっき層の構成相と重なりあわず、Zn−Al−Mg合金を同定するのに都合のよい回折ピークである。
強度I(Mg−Sn金属間化合物)が1000cps以上又は11〜12°におけるバックグラウンド強度(cps)に対し500cps強度であれば、表層めっき層に分散する程度のMg−Sn金属間化合物が入っていることの指標になり、強度が高いほど多量に含有されていることを示す。
ただし、強度I(Mg−Sn金属間化合物)が5000cpsを超えるような強度であると、耐食性が悪化することから好ましくない。
次に、中間めっき層について説明する。
中間めっき層は、Fe濃度が3質量%以上30質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される。
Mg濃度の下限は、3.2%、3.5%、4.0%であってもよい。
Mg濃度の上限は、10.0%、8.0%、6.0%であってもよい。
中間めっき層は、Feを3質量%以上30質量%未満で含有する。そして、中間めっき層中のFeは、Alとの反応により、例えば、Al−Fe金属間化合物相として含む。
Al−Fe金属間化合物相は、Al5Feが主体の相である。Al−Fe金属間化合物相は、Al5Fe以外にも、AlFe、Al3Fe、Al5Fe2などが含まれる場合もある。
Al−Fe金属間化合物相は、めっき層にSiが含有する場合、Al−Fe−Si金属間化合物相となることがある。同定されるAl−Fe−Si金属間化合物相としては、AlFeSi相があり、異性体として、α、β、q1,q2−AlFeSi相等が存在する。
AlとFeの配合比は、上記以外も考えられるが、AlFe比率変化による耐食性変化はほとんどなく、Al:Fe=1:1〜5:2の範囲で、これらの相割合での性能変化は小さく、めっき層全体の耐食性に影響を与えるほどではない。すなわち、Al−Fe金属間化合物は、FeよりもAlとの結合作用にあって、Feに対して一定の犠牲防食性を有し(従って、Al−Fe金属間化合物相が消滅するまで地鉄は腐食しない)、金属間化合物であるため、いかなる環境でも絶縁性が高く腐食しにくい物質であり(一方で、Feが腐食するとやや黄色の酸化物(Fe3O4)が形成することがある、ただし周囲に多量のMg成分があれば、この黄色錆は殆ど目立たない)、めっき層の丈夫な骨組み(柱)として作用を有する。
これらの相は、基本的には、表層めっき層と同様の性質を有しており、腐食することで白錆を生み出す。また微量の金属間化合物相を除き、Al−Fe金属間化合物相よりも、必ず卑な電気化学的関係にあるため、腐食時にAl−Fe金属間化合物相より腐食が先行する。
めっき層の中間めっき層は、これらの化合物相から構成されるが、中間めっき層は、如何なる腐食環境においても耐食性が安定している。Zn、Al、Mgのみから構成される金属層は、一般的な腐食環境、大気環境下などでは、高い耐食性を示すが、水中、海水中等では、比較的早く腐食してしまう。これは、地鉄との電位差が大きいため、過度の犠牲防食性が働くことと推定している。
これには、Mgの濃度が大きくかかわっており、めっき浴、及び中間めっき層内でのこの元素の割合を高めることで、Zn,Al、Feのみから構成された場合は、Al−Fe金属間化合物相間の腐食も早く、Al−Fe金属間化合物相の腐食も早い。さらに赤錆が目立つようになってしまう。
界面合金層は、Fe濃度が30質量%以上85質量%未満のAl−Fe合金層から構成される。
なお、Al−Fe−Si合金層も表層めっき層(Zn−Al−Mg合金層)及び中間めっき層の合計の厚さに対し、厚みは小さいため、めっき層全体における耐食性において与える影響は小さい。
Al−Fe金属間化合物の構成は、中間めっき層とほぼ同じようなものだが、中間めっき層は、針状、柱状、枝状等の形態を呈するのに対し、界面合金層は層状に形成する違いがある。すなわち、界面合金層において、Al−Fe金属間化合物は、めっき層の厚み方向に平行に成長しやすく、さらに全面に広がってから、めっき表面へ成長する。
次に、めっき層の層厚について説明する。
めっき層表層めっき層及び中間めっき層の合計の層厚が8μm未満であると、高い耐食性が発揮され難くなる。
どぶ漬け2段めっきの製法から判断して、通常、少なくとも5μm以上はめっき層厚を得ることが多い。一方、ネジ山部など凹凸形状によって極端に薄くなる部位があり、この部分で、薄いもので8μm程度である。遠心分離などのタレ切りを実施すれば、特殊部位では3〜5μmともなりうるが、耐食性劣化の部位となるため、少なくとも8μm以上あった方が好ましい。
そのため、表層めっき層及び中間めっき層の合計の層厚は、8μm以上とする。表層めっき層及び中間めっき層の合計の層厚は、10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。
一方、表層めっき層の層厚が厚すぎると、めっき外観が劣化するとなることがある。そのため、表層めっき層の層厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
一方、中間めっき層の合計の層厚が厚すぎると、亀裂が入りやすくなり、何らかの衝撃で剥離しやすい構造になる。そのため、中間めっき層の層厚は、175μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
中間めっき層は、めっき層、及び地鉄の原子拡散によって生じる層である。通常、平板のめっき鋼材であれば、めっき層の全厚の1/5〜2/3範囲が適切な厚みで形成されることが多い。すなわち、2μm〜200μmの範囲で形成する。部材形状によって、部分的には、形成量が変化することがあり、下限値が全厚の1/50〜1/5となる場合も存在する。
そのため、界面合金層(Al−Fe合金層)が形成されている場合、界面合金層の層厚は、1μm以上が好ましい。
次に、めっき層の特性に関する各種測定方法について説明する。
めっき層の平均化学組成は、次の方法により測定する。
まず、地鉄(鋼材)の腐食を抑制するインヒビターを含有した酸でめっき層を剥離溶解した酸液を得る。次に、得られた酸液をICP分析で測定することで、めっき層の化学組成を得ることができる。酸種は、めっき層を溶解できる酸であれば、特に制限はない。
めっき層の構成層(つまり、表層めっき層、中間めっき層、および界面合金層)の各平均化学組成は、例えば、GDS(高周波グロー放電分光分析)を利用する。具体的には、例えば、次の通り測定する。
まず、GDS(高周波グロー放電分光分析)で各元素の定量分析の検量線を得る。その後、対象とする層の深さ方向の化学成分を測定する。例えば、作製しためっき鋼材のサンプルから30mm角を数枚採取し、GDS用サンプルとする。めっき層の表面に対してアルゴンイオンスパッタを実施し、深さ方向の元素強度プロットを得る。
一方、各元素純金属板等の標準試料を作製し、あらかじめ元素強度プロットを得る。
そして、GDSによる元素強度プロットを、標準試料による元素強度プロットから濃度換算することで、各元素濃度を算出する。
この操作を、10回以上実施し、各々の場所における成分の平均値を採用する。
測定装置としては、例えば、堀場製作所製のマーカス型高周波グロー放電発行分析装置(GD−Profiler2)を利用する。
測定条件は、例えば、放電面積4mmφ、RF出力35W、アルゴン圧600Paとする。
測定間隔は、例えば、初期60秒を0.02秒間隔、以降を0.5秒間隔とする。
X線回折(XRD)の強度は、線源には、Cu、Co等用いることが可能だが、最終的にはCu線源に合わせた回折角度に計算、変更する必要がある。X線出力は、40kV、150mAとする。測定範囲は、5°〜90°、ステップは、0.01°程度が好ましい。特定の回折角度での強度(cps)を得るためには、前後±0.05°の平均値を得る。すなわち23.3°の強度は、22.25°〜22.35°の平均値を得る。なお強度の平均値算出前にピークを明瞭化するためのバックグランド除去等の措置は講じないことでそれぞれの強度指標を得る必要がある。
なお、最表層の酸化層の影響を除去するために、表面から深さ1μmまで切削後の表層めっき層の表面に対して、X線回折(XRD)の強度測定を実施する。
測定装置としては、例えば、リガク社製X線回折装置(RINT1500)、RINT1000広角ゴニオメーターを使用する。
測定条件は、例えば、X線出力40kV−150mA、スキャンスピード2°/min、ステップ0.01°、スキャン範囲5〜90°、入射スリット1°、受光スリット1°、0.15mmとする。
めっき層の各層の層厚は、次の通り測定する。
めっき層の各層の平均化学組成を測定するときに、GDS分析点におけるFe元素強度(つまり、Fe濃度)により設定された領域幅を、各層(表層めっき層、中間めっき層、界面合金層)の層厚として求める。
そして、このGDSを10個所で実施した各領域幅の平均値を、各層(表層めっき層、中間めっき層、界面合金層)の層厚とする。
次に、本発明のめっき鋼材の製造方法の一例について説明する。
浴温度が浴融点+20℃(ただし、少なくとも420℃超)〜520℃の溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴に、層厚30μm以上のめっき層を有するめっき鋼基材を、20秒以上240秒未満浸漬した後、引き上げる工程と、
めっき鋼基材を溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴から引き上げた直後から380℃まで、60秒以内で冷却する工程を有するめっき鋼材の製造方法が例示できる。
これらの中でも、めっき鋼基材としては、Znめっき鋼基材が好適である。Znめっき鋼基材としては、JIS H 8641:2007で規格化されたHDZ(HDZ45、55等)などが代表的なめっき鋼基材として例示できる。
1)どぶ漬け亜鉛めっき鋼板(JIS H 8641:2007で規格化されたHDZ45相当する、200mm×150mm×4.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板)
2)どぶ漬け亜鉛めっき六角ボルト(JIS H 8641:2007で規格化されたHDZ35相当する、長さ100mm、直径M16で、めっき層の層厚はネジ山部で100μm相当の六角ボルト半ネジ)。
−各種の測定−
得られためっき鋼板から試料を切り出した。そして、既述の方法にしたがって、下記事項を測定した。
・めっき層の平均化学組成および層厚(表中「厚さ」と表記)
・中間めっき層の平均化学組成(Mg濃度)および層厚(表中「厚さ」と表記)
・界面合金層の層厚(表中「厚さ」と表記)
・表層めっき層の表面のX線回折像における和強度比(I(Zn)/Io、I(Al)/Io、I(MgZn2)/Io)
・表層めっき層の表面のX線回折像における、強度I(Mg−Sn金属間化合物)(表中、I(Mg2Sn)と表記)、および強度I(Mg−Sn金属間化合物)と11°〜12°におけるバックグラウンド強度との差分(表中「BG差分」と表記)
なお、表中、強度I(Mg−Sn金属間化合物)(表中、I(Mg2Sn)と表記)の欄において、
「〇」は、強度I(Mg−Sn金属間化合物)が1000cps以上であること、
「−」は、意図的にSnが添加されておらず、めっき層中にMg−Sn金属化合物の回折ピーク位置で明瞭な回折ピークが得られないこと
「×」は、 BG差分が100未満で判定であることを示す。
また、実施例相当の鋼板の、表層めっき層のFe濃度は3質量%未満であり、中間めっき層のFe濃度は3質量%以上30質量%未満であり、界面合金層のFe濃度は30質量%以上85質量%未満であることが確認した。
耐食性の評価方法は、塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015に規格される耐食性試験)を実施した。サンプル数N=10個で実施して、全てのサンプルが、めっき鋼材のめっき層表面の赤錆抑制時間として(めっき層の厚み×200時間+1000時間)を超えたものをS評価とした。サンプル数N(=10個)のうち、6サンプル以上が上記基準を満たした場合(つまりめっき層表面の赤錆発生が4サンプル以内であった場合)は、A評価とした。赤錆発生したサンプルが5サンプル以上であった場合、B評価とした。
なお、めっき鋼材がボルトの場合、ネジ山部の耐食性を立掛けて評価し、その他の部位は塗装して、ネジ山部のみの赤錆発生時間を評価した。
ハンマ試験は、JIS H0401:2013に規定された方式の試験で実施した。 サンプルは50mm角の厚さ4.5mmのサンプルをめっき鋼板から採取して、これを利用した。
打撃は、4mm間隔で平行に5点行い、その打痕間の剥離、及び浮き上がりを調べた。 ただし、角または端から10mm以内は試験対象外とし、また同一箇所を2回以上叩かない。
ハンマ試験を行った結果、打痕間に連続した浮きあがり、または剥離がない場合は、合格とする。
なお、めっき鋼材がボルトの場合、同評価の代わりに目視による評価方法を実施した。具体的には、ルーペを使用した目視により、ネジ山部の不めっき箇所を確認し、明瞭な不めっき箇所0.3mmφ以上の不めっき部分が存在しないことを合格条件とした。
本発明のめっき鋼材に該当する実施例は、ハンマ試験も合格しており、めっき層の密着性も高いことがわかる。
Claims (6)
- 鋼材と、
前記鋼材の表面上に配され、Fe濃度が3質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される表層めっき層と、前記鋼材と前記表層めっき層との間に配され、Fe濃度が3質量%以上30質量%未満のZn−Al−Mg合金層から構成される、層厚が3μm以上の中間めっき層と、を含むめっき層と、を有し、
前記表層めっき層及び前記中間めっき層の合計の層厚が、8μm以上300μm未満であり、
前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
Zn:65.00%超、
Al:6.5%超〜22.5%未満、
Mg:3.0%超〜12%未満、
Sn:0%〜4.00%未満、
Bi:0%〜0.30%未満、
In:0%〜0.30%未満、
Ca:0.05%〜1.00%未満、
Y :0%〜0.30%未満、
La:0%〜0.30%未満、
Ce:0%〜0.30%未満、
Si:0%〜1.00%未満、
Cr:0%〜0.25%未満、
Ti:0%〜0.25%未満、
Ni:0%〜0.25%未満、
Co:0%〜0.25%未満、
V :0%〜0.25%未満、
Nb:0%〜0.25%未満、
Cu:0%〜0.25%未満、
Mn:0%〜0.25%未満、
Fe:0%〜15.0%未満、
Sr:0%〜0.50%未満、
Sb:0%〜0.50%未満、
B :0%〜0.50%未満、及び
不純物からなり、
前記中間めっき層のMg濃度が、質量%で3.0%超である、めっき鋼材。 - Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記表層めっき層の表面のX線回折像において、
強度和I(Zn)=I(36.30°強度(cps))+I(38.99°強度(cps))+I(43.23°強度(cps))+I(54.34°強度(cps))+I(70.06°強度(cps))、
強度和I(Al)=I(38.47°強度(cps))+I(44.74°強度(cps))+I(65.14°強度(cps))、
強度和I(MgZn2)=I(19.67°強度(cps))+I(20.79°強度(cps))+I(22.26°強度(cps))+I(40.47°強度(cps))+I(41.31°強度(cps))+I(45.378°強度(cps))、
強度和Io=I(Zn)+I(Al)+I(MgZn2)
としたとき、下記式1〜下記式3を満たす請求項1に記載のめっき鋼材。
式1:I(Zn)/Io≦0.70、
式2:0.05≦I(Al)/Io≦0.30
式3:0.25≦I(MgZn2)/Io≦0.70 - 前記表層めっき層のSn濃度が、質量%で、0.03〜2.00%未満であり、
Cu−Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記表層めっき層の表面のX線回折像において、強度I(Mg−Sn金属間化合物)=I(22.8°強度(cps))が、1000cps以上、又は回折ピークのない11°〜12°における平均強度をバックグラウンド強度(cps)とした際に、対し500cps以上高い、
請求項1又は請求項2に記載のめっき鋼材。 - 前記めっき層は、前記鋼材と前記中間めっき層との間に配され、Fe濃度が30質量%以上85質量%未満)で、層厚1μm以上のAl−Fe合金層から構成される界面合金層を有する、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のめっき鋼材。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のめっき鋼材の製造方法であって、
質量%で、
Zn:65.0%超、
Al:12.0%超〜25.0%、
Mg:5.0%超〜8.0%未満、
Sn:0〜5.00%未満、
Bi:0%〜1.0%未満、
In:0%〜0.50%未満、
Ca:0.10%〜3.00%未満、
Y :0%〜0.50%未満、
La:0%〜0.50%未満、
Ce:0%〜0.50%未満、
Si:0%〜1.00%未満、
Cr:0%〜0.25%未満、
Ti:0%〜0.25%未満、
Ni:0%〜0.25%未満、
Co:0%〜0.25%未満、
V :0%〜0.25%未満、
Nb:0%〜0.25%未満、
Cu:0%〜0.25%未満、
Mn:0%〜0.25%未満、
Fe:0%〜5.0%未満、
Sr:0%〜0.50%未満、
Sb:0%〜0.50%未満、
B :0%〜0.50%未満、及び
不純物からなる化学組成を有し、かつ浴温度が浴融点+20℃(ただし、少なくとも420℃超)〜520℃の溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴に、層厚30μm以上のめっき層を有するめっき鋼基材であって、Znめっき鋼基材、Zn−Al合金めっき鋼基材、及びZn−Al−Mg合金めっき鋼基材から選択されるめっき鋼基材を、20秒以上240秒未満浸漬した後、引き上げる工程と、
前記めっき鋼基材を前記溶融Zn−Al−Mg合金めっき浴から引き上げた直後から380℃まで、60秒以内で冷却する工程と、
を有するめっき鋼材の製造方法。 - 前記めっき鋼基材のめっき層が、Fe濃度が3質量%以上80質量%未満で、層厚10μm以上のZn−Fe合金層から構成される界面合金層を有する、
請求項5に記載のめっき鋼材の製造方法。
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