JP7328611B1 - めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

鋼板表面に、めっき層を有するめっき鋼板であって、前記めっき層が、Sn、Bi、Inの合計量ΣAが0.75%未満であり、Ca、Y、La、Ce合計量ΣBが0.03~0.60%であり、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCが0~1.00%であり、Sn≦Siおよび20.0≦Mg/Siを満たし、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Al2.15Zn1.85CaのX線回折ピークと、CaZn2のX線回折ピークと、η’-MgZn2のX線回折ピークとが、所定の関係を満足する。

Description

本発明はめっき鋼板に関する。
本願は、2021年10月26日に、日本に出願された特願2021-174676号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
めっき鋼板は、様々な建材分野で使用される。建築物の寿命は、めっき層の減耗速度に依存することから、建築材料として高耐食性めっき鋼板を使用することがよい。例えば、特許文献1~3に記載されるめっき鋼板は、高い耐食性を示す鋼板として知られている。
日本国内にはさまざまな環境が存在しており、火山性ガスが発生する地域や工業地帯などでは、大気中のSOxガスが雨水に溶け込んで酸性雨となり、めっき鋼板の寿命を大きく損なうことがある。一般的にガルバリウム鋼板(登録商標)で知られるAl系のめっき鋼板は、酸性環境での耐食性が比較的良好であるが、アルカリ性環境での耐食性が低い。従って、Al系めっき鋼板は、牛舎・豚舎などの堆肥舎から発生するアンモニアガス雰囲気のようなアルカリ性環境での耐食性や犠牲防食性が小さいため、その使用範囲は限定的である。
よって、特許文献1~3に示すようなZn系めっき鋼板の方が適用範囲は広いが、Zn系めっき鋼板はAl系めっき鋼板よりも酸性環境での耐食性が低い傾向にあり、酸性環境での耐食性向上が求められている。すなわち、めっき鋼板には、酸側~アルカリ側、全ての領域で高い耐食性を示すめっき鋼板が求められている。
日本国特開平10-226865号公報 国際公開第2000/71773号 国際公開第2018/139619号
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、酸~アルカリ環境下で高い耐食性を示すめっき鋼板を提供することを課題とする。
[1] 鋼板表面に、めっき層を有するめっき鋼板であって、
前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
Al:15.0%超、30.0%以下、
Mg:5.0%超、15.0%以下、
Sn:0~0.70%、
Bi:0~0.35%、
In:0~0.35%、
Ca:0.03~0.60%、
Y :0~0.30%、
La:0~0.30%、
Ce:0~0.30%、
Si:0.01~0.75%、
Cr:0~0.25%、
Ti:0~0.25%、
Ni:0~1.00%、
Co:0~0.25%、
V :0~0.25%、
Nb:0~0.25%、
Cu:0~0.25%、
Mn:0~0.25%、
Fe:0~5.0%、
Sr:0~0.5%、
Sb:0~0.5%、
Pb:0~0.5%、
B :0~0.5%、
Li:0~0.5%、
Zr:0~0.5%、
Mo:0~0.5%、
W :0~0.5%、
Ag:0~0.5%、
P :0~0.5%、
残部がZnおよび不純物からなり、
Sn、BiおよびInの合計量ΣAが0%以上、0.75%未満であり、
Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣBが0.03~0.60%であり、
Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCが0~1.00%であり、
Sn≦Siおよび20.0≦Mg/Siを満たし、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Al2.15Zn1.85CaのX線回折ピークから求められるI~Iと、CaZnのX線回折ピークから求められるIと、η’-MgZnのX線回折ピークから求められるIおよびIと、を下記式(1)~(6)で定義した場合に、下記式(A)および(B)を満足する、めっき鋼板。
Figure 0007328611000001
ただし、前記式(1)~(6)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ前記式(1)~(6)中に示される回折角度2θである。
[2] 前記めっき層の平均化学組成が、20.0≦Mg/Si≦38.0および3.00≦Al/Mg≦4.00を満足し、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgAlSiのX線回折ピークから求められるI~Iを下記式(7)~(8)で定義した場合に、下記式(C)を満足する、[1]に記載のめっき鋼板。
Figure 0007328611000002
ただし、前記式(7)~(9)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ前記式(1)~(6)中に示される回折角度2θである。
[3] 前記めっき層の平均化学組成が、0.01≦Snを満たし、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgSnのX線回折ピークから求められるI10を下記式(10)で定義した場合に、下記式(D)を満足する、[1]または[2]に記載のめっき鋼板。
Figure 0007328611000003
ただし、前記式(10)において、Imax(23.10~23.80°)は回折角度2θで23.10~23.80°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(23.10°)は回折角度2θで23.10°におけるX線回折強度であり、I(23.80°)は回折角度2θで23.80°におけるX線回折強度である。
[4] Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、金属酸化物のX線回折ピークから求められるI11~I13を下記式(11)~(13)で定義した場合に、下記式(E)を満足する、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
Figure 0007328611000004
ただし、前記式(11)~(13)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ前記式(11)~(13)中に示される回折角度2θである。
[5] 前記めっき層中に、Zn相、Al相、Al-Zn相、η’-MgZn相およびMgZn相が含有される、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
本発明によれば、酸~アルカリ環境下で高い耐食性を示すめっき鋼板を提供することができる。
式(1)を説明するための模式図。
めっき層中に金属相単相としてZn相およびAl相が存在すると、めっき層には両性金属の性質が現れやすい。また、めっき層中に含まれる相の存在形態を変更することでめっき層の耐食性が変化する。更に、AlおよびZnは、原子半径の大きさが近いことから、めっき層中で互いに溶けあいやすい。従って、ZnおよびAlを含むめっき層には、Zn相およびAl相の他に、Al-Zn相(Al:15mass-25mass%、好ましくは約20mass%Alを含む)が形成されやすい。しかし、Zn相およびAl-Zn相は、耐食性が低い相であり、特に酸性環境およびアルカリ性環境にて耐食性が極めて低くなるため、これらの相の含有量を少なくする必要がある。また、Mgを含有する相は、一般的に、アルカリ性環境での耐食性が高いが、酸性環境での耐食性はあまり高くない。
酸性環境での耐食性向上のためには、Al-Zn相を無くす、Zn相量を減らす、あるいは、その他の添加元素を含有させることによってAlおよびZnを含む金属間化合物を形成する、といったことが有効であることが本発明者らにより見出された。特に、金属間化合物に関しては、通常、Al-Zn相において、ZnとAlはそれぞれ微細な単相を形成して二相分離した状態であるため、ZnとAlとの金属間化合物を生み出す元素として、めっき層中にCa元素を含有させることが有効であることを本発明者らは見出した。めっき層中にCaを含有させることにより、Ca-Al-Zn化合物が形成されるようになり、微細なZn相およびAl相を含むAl-Zn相が減少する。Ca-Al-Zn化合物はAlよりも自然電位が貴な化合物であり、Al相よりも腐食速度が小さくなるため、耐食性を向上させることができる。
他方、めっき層中のZn相の量を減少させることによって酸性環境下の耐食性を向上させると、アルカリ性環境下での耐食性が低下する。この対策として、Al相を減少させることが考えられる。Al相を減少させることでアルカリ性環境下での耐食性が向上するため、Zn相の減少に伴うアルカリ性環境下での耐食性劣化を防ぐことができる。
アルカリ性環境下における耐食性を確実に向上させるためには、Al-Zn相を無くす、あるいは、Mgを含有するMgZn相を増加させることが考えられる。MgZn相はアルカリ性環境下での耐食性が良好である。そして、アルカリ性環境下での耐食性を更に向上させるために、MgZn相よりもさらにアルカリ耐食性の優れる化合物をめっき層中に導入することが好ましい。
そのような化合物として、MgZn相とは結晶構造が異なるη’-MgZn相が挙げられる。η’-MgZn相は、特にアルカリ性環境下での耐食性が高く、また、MgZn相からη’-MgZn相に相変態させても元素量の増減が起こらないため、酸性環境下での耐食性を損なうことなくアルカリ性環境下の耐食性を向上させることができる。このように、MgZn相およびη’-MgZn相を含有させることで、酸性環境下およびアルカリ性環境下の両方において耐食性が向上しためっき層を形成することが可能になる。以下、本発明の実施形態に係るめっき鋼板について説明する。
本発明の実施形態に係るめっき鋼板(以下、本実施形態に係るめっき鋼板)は、鋼板表面に、めっき層を有するめっき鋼板であって、めっき層の平均化学組成が、質量%で、Al:15.0%超、30.0%以下、Mg:5.0%超、15.0%以下、Sn:0~0.70%、Bi:0~0.35%、In:0~0.35%、Ca:0.03~0.60%、Y:0~0.30%、La:0~0.30%、Ce:0~0.30%、Si:0.01~0.75%、Cr:0~0.25%、Ti:0~0.25%、Ni:0~1.00%、Co:0~0.25%、V:0~0.25%、Nb:0~0.25%、Cu:0~0.25%、Mn:0~0.25%、Fe:0~5.0%、Sr:0~0.5%、Sb:0~0.5%、Pb:0~0.5%、B:0~0.5%、Li:0~0.5%、Zr:0~0.5%、Mo:0~0.5%、W:0~0.5%、Ag:0~0.5%、P:0~0.5%、残部がZnおよび不純物からなり、Sn、BiおよびInの合計量ΣAが0%以上、0.75%未満であり、Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣBが0.03~0.60%であり、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCが0~1.00%であり、Sn≦Siおよび20.0≦Mg/Siを満たし、Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Al2.15Zn1.85CaのX線回折ピークから求められるI~Iと、CaZnのX線回折ピークから求められるIと、η’-MgZnのX線回折ピークから求められるIおよびIと、を下記式(1)~(6)で定義した場合に、下記式(A)および(B)を満足する、めっき鋼板である。
Figure 0007328611000005
ただし、前記式(1)~(6)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ前記式(1)~(6)中に示される回折角度2θである。
なお、以下の説明において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
また、「耐食性」とは、めっき鋼板の腐食し難い性質を示す。Zn系めっき層は、鋼材に対して犠牲防食作用がある。Zn系めっき層を有するめっき鋼板の腐食過程では、鋼板が腐食する前にめっき層が腐食し白錆化して、白錆化しためっき層が消滅した後、鋼板が腐食し赤錆が生じる。
めっきの対象となる鋼板について説明する。
鋼板の形状は、主に板材であるがそのサイズに特に制限は無い。板材にめっき層を形成しためっき鋼板としては、通常の溶融亜鉛めっき工程で製造されるめっき鋼板であって、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)やバッチ式どぶ漬け亜鉛めっき工程など、溶融金属に浸漬して凝固させる工程で製造されるめっき鋼板がこれに当てはまる。このような方法により製造されためっき鋼板を加工(溶接を含む)、組み合わせをすれば、様々な製品に加工でき、耐食性に優れた鋼構造部材を製造することが可能である。
鋼板の原板材質には、特に制限は無い。例えば、JIS G 3193:2019に示す熱間圧延鋼板、JIS G 3141:2021に示す冷延鋼板は、めっきの原板として最も一般的である。さらに例えば、一般鋼(SS材(一般構造用圧延鋼材))、各種金属が薄くめっきされたプレめっき鋼(JIS G 3302:2019)、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼(JIS G 3135:2018)、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の耐食性強化元素含有鋼JIS G 3114:2016等)などの各種の鋼板が適用可能である。また、鋼板は、鋼材の製鋼方法(高炉材、電炉材)、鋼板の製造方法(熱間圧延方法、酸洗方法、冷間圧延方法等)等の条件についても、特に制限されるものでは無い。更に、めっきが困難な鋼板材料を適用する場合においては、鋼板表面に、厚さ30μm以下の、Zn、Ni、Sn、Feまたはこれらの元素を組み合わせた合金系等のめっき層が事前にプレめっきされたプレめっき鋼板を使用してもよい。このようなプレめっき鋼板を使用すると、めっき浴に浸漬した際に、プレめっき層中の金属元素がめっき浴の金属元素に置き換わり、不めっき(めっき金属が酸化被膜などによってはじいてしまう箇所)が解消する。
次に、めっき層について説明する。本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg合金層を含む。ZnにAl、Mgなどの合金元素が加わると耐食性が改善するため、薄膜、例えば、通常のZnめっき層の半分程度で同等の耐食性を有する。そのため、本実施形態でも、薄膜のめっき層により、通常のZnめっき層と同等以上の耐食性は確保されている。また、めっき層には、Al-Fe合金層を含んでもよい。
Zn-Al-Mg系合金層は、Zn-Al-Mg系合金よりなる。Zn-Al-Mg系合金とは、Zn、Al及びMgを含む三元系合金を意味する。
Al-Fe合金層は、鋼板とZn-Al-Mg合金層との間にある界面合金層である。
つまり、本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg合金層の単層構造であってもよく、Zn-Al-Mg合金層とAl-Fe合金層とを含む積層構造であってもよい。また、めっき基材として、融点の高い金属(600℃超)を超える金属で被覆されたプレめっき材を使用した場合には、元のめっき厚さに依存して、1μm未満の厚さで、その金属層を含む層がFe面上、もしくはAl-Fe金属間化合物の置換体として何らかの形で痕跡が残る場合がある。めっき浴温近傍で溶解する金属などはその痕跡はほとんど残らない。積層構造の場合、Zn-Al-Mg合金層は、めっき層の表面を構成する層とすることがよい。ただし、めっき層の最表面には、めっき層構成元素の酸化被膜が1μm未満程度形成している場合がある。通常、めっき層に含有される元素はめっき層表面で酸素と結合することから、XPS(X線分光分析)などの表面分析でZn-O、Mg-O、Al-O、Si-O、Ca-Oなどの結合が確認される薄膜の酸化被膜が存在している。比較的酸化しやすい元素程、めっき表面に存在する傾向にある。
めっき層がZn-Al-Mg合金層とAl-Fe合金層とを含む積層構造である場合には、Al-Fe合金層によって、鋼材とZn-Al-Mg系合金層が結合される。界面合金層の厚みは、めっき鋼板の製造時のめっき浴温や、めっき浴浸漬時間によって制御することが可能である。ゼンジマー法を中心とした溶融めっき鋼板の製造方法では、Zn-Al-Mg合金層がめっき層の主体となり、Al-Fe合金層の厚みは十分に小さいことから、めっき層の耐食性に与える影響は小さく、また界面付近に形成するため、腐食初期やめっき層の外観における耐食性について与える影響はほとんど無い。
2段めっきやプレめっきなどの置換めっきを形成した際には、プレめっき層の厚みによって、プレめっき層中に含まれていた元素がAl-Fe合金層に含有される場合がある。Fe面上にめっき後にも、プレめっき層として残存し、その上に、界面合金層ができる場合もある。また、めっき元素の拡散が活発に行われ、Fe側へめっき成分が拡散するとプレめっき層下でAl-Fe合金層が形成する場合もある、反応性によって部分的に発生する場合もあり、厳密にはその位置は定義できないがこれらの層による性能変化は厚みが薄いため大きくない。
なお、めっき層全体の厚みは、めっき条件に左右されるため、特に限定されるものではない。また、めっき層全体の厚みは、例えば、通常の溶融めっき法ではめっき浴の粘性および比重に依存する。さらに鋼板(めっき原板)の引抜速度およびワイピングの強弱によって、めっき量は目付調整される。通常の溶融めっき法で形成されるめっき層の厚みの最大値は、連続溶融めっきで100μm以下、バッチ式のめっきで200μm以下であることが多い。
Al-Fe合金層は、鋼板表面(具体的には、鋼板とZn-Al-Mg合金層との間)に形成されており、組織としてAlFe相が主相の層である。Al-Fe合金層は、地鉄(鋼板)およびめっき浴の相互の原子拡散によって形成する。めっき層の形成方法として溶融めっき法を用いた場合、Al元素を含有するめっき層では、Al-Fe合金層が形成され易い。後述する製造方法では、めっき浴中に一定濃度以上のAlが含有されることから、AlFe相が最も多く形成する。しかし、界面合金層でAlと結合するとめっき浴内で固相が発生する。めっき浴のような液体とは異なり、この金属間化合物内のAl、Fe原子拡散には時間がかかるため、界面合金層付近でAl、Fe成分濃度の律速段階が起こる。したがってAl-Fe合金層には複数の原子配合比の異なる金属間化合物が形成し、一般的に界面に近い程、Fe濃度が高い。ただし拡散具合によっては、Al-Fe層内部に一時的にAl成分、Fe成分が低い層が存在する場合もある。そのため、Al-Fe合金層は、部分的には、AlFe相、AlFe相、などもAlFe相の他に少量含まれる場合もある。また、めっき浴中にZnも一定濃度含まれることから、Al-Fe合金層には、Znも少量含有される。また、Al-Fe合金層には、界面に集積しやすいSiも少量含有される。
めっき層中にSiを含有する場合、Siは、特にAl-Fe合金層中に取り込まれ易いため、Al-Fe合金層がAl-Fe-Si金属間化合物相となることがある。Al-Fe-Si金属間化合物相において同定される金属間化合物相としては、AlFeSi相があり、異性体として、α、β、q1,q2-AlFeSi相等が存在する。そのため、Al-Fe合金層は、これらAlFeSi相等が検出されることがある。これらAlFeSi相等を含む層をAl-Fe-Si合金層と称する。
すなわち、本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg合金層からなっていてもよく、Zn-Al-Mg合金層とAl-Fe合金層とからなっていてもよく、Zn-Al-Mg合金層とAl-Fe-Si合金層とからなっていてもよい。なお、Al-Fe合金層には、Alと原子半径の近いZnなどが置換体として一部取り込まれることが必然的に起こり、Feと原子半径の近い遷移金属Ni、Cr、Coなどもこれらの金属間化合物に置換体として取り込まれることは避けられないが、主たる構造はAl-Fe合金層として扱うことができる。
次に、めっき層の平均化学組成について説明する。めっき層全体の平均化学組成は、めっき層がZn-Al-Mg合金層の単層構造の場合は、Zn-Al-Mg合金層の平均化学組成である。また、めっき層がAl-Fe合金層及びZn-Al-Mg合金層の積層構造の場合は、Al-Fe合金層及びZn-Al-Mg合金層の合計の平均化学組成である。また、めっき層がAl-Fe-Si合金層及びZn-Al-Mg合金層の積層構造の場合は、Al-Fe-Si合金層及びZn-Al-Mg合金層の合計の平均化学組成である。
通常、溶融めっき法において、Zn-Al-Mg合金層の化学組成は、めっき層の形成反応がめっき浴内で完了することがほとんどであるため、ほぼめっき浴と同等になる。また、溶融めっき法において、Al-Fe合金層は、めっき浴浸漬直後、瞬時に形成され、成長する。そして、Al-Fe合金層は、めっき浴内、もしくは、めっき浴からの引き上げ後、その後のめっき凝固反応で550℃前後に達するまで形成・成長反応が完了しており、その厚みも、Zn-Al-Mg合金層に対して十分に小さいことが多い。したがって、めっき後、加熱合金化処理等、特別な熱処理をしない限りは、めっき層全体の平均化学組成は、Zn-Al-Mg合金層の化学組成と実質的に等しく、Al-Fe合金層の成分を無視することができる。Al-Fe-Si合金層もAl-Fe合金層と同様に、Al-Fe-Si合金層の成分を無視することができる。
最初に本実施形態に係るめっき層に含まれる元素について説明する。
Al:15.0%超、30.0%以下
Alは、Znと同様に、めっき層の主体を構成する元素である。Zn-Al-Mg系めっきでは、めっき層中で主にAl相を形成する。Al含有量が15.0%以下であると、酸性環境での耐食性が十分でない。そのため、Al含有量は15.0%超とする。好ましくは、18.0%以上である。さらに好ましくは20%以上である。一方、Al含有量が30.0%を超えると、アルカリ性環境での耐食性が十分でない。そのため、Al含有量は30.0%以下とする。好ましくは、25.0%以下である。なお、めっき層中のAl含有量が高くなると相対的にZn含有量が減少して犠牲防食性が低下するため、めっき鋼板として犠牲防食性を確保するためには、Al含有量は15.0%超、30.0%以下とするべきである。ただし、この組成範囲では、耐食性が低いAl-Zn相(約20mass%のAlを含む相)が形成する。そのため、本実施形態では、後述する製造方法を採用することでAl-Zn相を少なくする。これにより、耐食性が向上し、酸性環境、アルカリ性環境での耐食性が確保しやすくなる。
Mg:5.0%超、15.0%以下
Mgは、Znと同様に、めっき層の主体を構成する元素である。Mgが不足するとアルカリ性環境での耐食性が低くなる傾向にあることから、Mg含有量を5.0%超とする。好ましくは、7.0%以上である。一方、Mg含有量が15.0%超では酸性環境での耐食性が悪化する。そのため、Mg含有量は15.0%以下とする。好ましくは13.0%以下であり、より好ましくは10.0%以下である。
元素群A
Sn:0~0.70%
Bi:0~0.35%
In:0~0.35%
Sn、BiおよびInの合計量ΣA:0%以上、0.75%未満
元素群A(Sn、Bi、In)の各元素は、任意に含有できる元素であるので、それぞれの含有量を0%以上とする。また、Snは、酸性環境およびアルカリ性環境でのめっき層の耐食性を大幅に向上させるMgSnの形成に必要な元素である。MgSnの形成に最低限必要なSn含有量は0.01%であるから、Sn含有量は0.01%以上としてもよい。
更に、Snと同様の効果を示す元素として、BiおよびInがあり、これらは、アルカリ性環境での耐食性を向上させる金属間化合物を形成させる。そのような金属間化合物として、BiMg、InMgなどが該当する。Sn、Bi、Inは互いに相互置換体を形成するので、Snは0.70%以下、Bi、Inはそれぞれ0.35%以下の範囲で含有してもよい。元素群Aの元素は、アルカリ性環境での耐食性に効果があるが、これらの含有量が上限を超えると、酸性環境での耐食性が極端に悪化する。
また、元素群Aの元素の合計量が過剰になっても酸性環境での耐食性が悪化するので、Sn、BiおよびInの合計量ΣAは0%以上、0.75%未満とする。合計量ΣAは、好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.05%以下であり、より一層好ましくは0.10%以上である。また、合計量ΣAは、好ましくは0.60%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
なお、Sn、BiおよびInの合計量ΣAとは、Sn、BiおよびInの含有量の合計のことである。
元素群B
Ca:0.03~0.60%
Y :0~0.30%
La:0~0.30%
Ce:0~0.30%
Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣB:0.03~0.60%
Caは、めっき層中の主要元素ではないが、Al2.15Zn1.85Caを形成するために必要な元素である。また、Caは、CaZnを形成するためにも必要な元素である。このため、これらの金属間化合物を形成するのに最低限必要なCa含有量は0.03%以上であるため、Ca含有量は0.03%以上とする。これらの金属間化合物の含有によって酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が改善する。Ca含有量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.10%以上であり、より一層好ましくは0.20%以上である。一方、Ca含有量が0.60%超であると、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が劣化する。そのため、Ca含有量は0.60%以下とする。好ましくは0.50%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Caと同様の役割を果たす元素として、Y、La、Ceがある。これらの元素は、任意添加元素であるため、それぞれの含有量は0%以上とする。これらの元素は、Caと置換する傾向がある。ただし、Caが含まれない場合に、Y、La、Ceを含有させても、十分な性能が発揮されない。Caを上記含有量で含有した上で、Y、La、Ceがそれぞれ0.30%以下の範囲で含有されることにより、互いに相互置換体を形成して、アルカリ性環境での耐食性を向上させる。しかし、Y、La、Ceがそれぞれ0.30%を超えると、アルカリ性環境での耐食性が極端に悪化する。そのため、Y、La、Ceの含有量は、それぞれ0.30%以下とする。
また、元素群Bの元素の合計量が過剰になってもアルカリ性環境での耐食性が悪化するので、Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣBは0.03~0.60%とする。合計量ΣBは、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.10%以上であり、より一層好ましくは0.20%以上である。また、合計量ΣBは、好ましくは0.50%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
なお、Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣBとは、Ca、Y、LaおよびCeの含有量の合計のことである。
Si:0.01~0.75%
Siは、めっき層中で、金属間化合物を形成させるために必要な元素である。本実施形態におけるめっき組成は、融点が高いため、溶融めっきをする際には500℃近傍の操業温度となる。この操業温度では、鋼板をめっき浴に浸漬した際に、AlおよびZnがFeと活発な相互拡散現象を起こして金属間化合物を形成するが、Siがこの過剰な反応を抑制する。Si含有量が0.01%以上であれば、Feの拡散反応が大幅に抑制されて、めっき層に含有される金属間化合物の形成が制御されやすい。しかし、Si含有量が0.01%未満では、めっき層内にFeが過剰に拡散することでめっき層の成分が不均一になって、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が極端に悪化する。そのため、Si含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.10%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。Si含有量が過剰になっても、Siがめっき層の構成元素と結合することで酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が悪化することから、Si含有量は0.75%以下とする。好ましくは0.50%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
なお、Siは、Caと極めて結合しやすい元素であり、例えばCaAlSi、AlCaSi、CaAlSi、CaAlSi等、様々なAl-Ca-Si化合物を形成しやすい。本実施形態においては酸性環境およびアルカリ性環境で耐食性を確保するために、フリーのCaを作り出した方がよいが、Si含有量が高いとこれらの金属間化合物が形成しやすくなる。
元素群C
Cr:0~0.25%
Ti:0~0.25%
Ni:0~1.00%
Co:0~0.25%
V :0~0.25%
Nb:0~0.25%
Cu:0~0.25%
Mn:0~0.25%
Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣC:0~1.00%
元素群Cの元素は、めっき層における任意添加元素であるため、それぞれの含有量は0%以上とする。これらの金属はめっき層中でAl、Znなどと置換し、電位が貴に移動する傾向があり、上記含有量範囲の含有で酸性環境での耐食性が改善する傾向にある。これらの元素の過剰な含有は、これらの元素を含む金属間化合物を形成するため、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性を悪化させる。従って、Cr、Ti、Co、V、Nb、Cu、Mnの含有量はそれぞれ0.25%以下とする。また、Niの含有量は1.00%以下とする。更に、元素群Cの合計量が過剰であると、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性を悪化させるため、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCは1.00%以下とする。合計量ΣCは、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
なお、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCとは、Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの含有量の合計のことである。
Fe:0~5.0%
本実施形態に係るめっき鋼板は溶融めっき鋼板であるため、製造時に鋼板(めっき原板)よりFeがめっき層に拡散する場合がある。めっき層中にFeが最大5.0%まで含有することがあるが、この元素の含有による耐食性変化は確認されていない。よって、Fe含有量は0~5.0%とする。
元素群D
Sr:0~0.5%
Sb:0~0.5%
Pb:0~0.5%
B :0~0.5%
Li:0~0.5%
Zr:0~0.5%
Mo:0~0.5%
W :0~0.5%
Ag:0~0.5%
P :0~0.5%
元素群Dの元素は、めっき層に含有させてもよい任意添加元素であるため、それぞれの含有量は0%以上とする。これらの元素は、先に説明した元素群Cの元素と同様の効果があり、元素群Cよりも比較的含有させやすい元素である。よって、元素群Dの各元素の含有量はそれぞれ、0~0.5%とする。Sr、Sb、Pb、B、Li、Zr、Mo、W、AgおよびPの合計量ΣDは0~0.5%としてもよい。
なお、Sr、Sb、Pb、B、Li、Zr、Mo、W、AgおよびPの合計量ΣDとは、Sr、Sb、Pb、B、Li、Zr、Mo、W、AgおよびPの含有量の合計のことである。
残部:Znおよび不純物
Znは、50.00%超の割合で含有することが好ましい。本実施形態に係るめっき鋼板は、汎用性の高いZn系めっき鋼板であり、犠牲防食性を確保する目的で一定量以上のZnを含有させることで、鋼板に適切な犠牲防食性を付与する。例えば、1.6mm以上の切断端面が開放されるような環境でも、Zn量が50.0%を超えていれば、切断端面部に十分な犠牲防食性作用が現れ、高い耐食性を維持できる。特に、Zn含有量が50.00%以下の場合は、アルカリ性環境における耐食性が極端に悪化することから、Zn含有量は50.00%超とすることが好ましい。Zn含有量は、好ましくは55.00%以上であり、より好ましくは60.00%以上であり、より一層好ましくは65.00%以上である。
不純物は、原材料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分、および/または本実施形態に係るめっき鋼板に悪影響を与えない範囲で許容される成分を指す。例えば、めっき層には、鋼板(地鉄)とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。
Sn≦Si
Si含有量は、Sn含有量以上にする必要がある。Si含有量がSn含有量未満になると、鋼板からめっき層中に過剰なFeが拡散し、目的とする金属間化合物形成が困難になる。その結果、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が悪化する。
なお、「Sn≦Si」におけるSn、Siは、それぞれめっき層中のSn、Siの質量%での含有量を表す。
20.0≦Mg/Si
さらにSi含有量については、20.0≦Mg/Siを満たす必要がある。Mg含有量に対してSi含有量が高い場合、めっき層中にMgSiが多量に形成するようになり、酸性環境での耐食性を十分に発揮することができなくなる。また、Mg含有量に対してSi含有量が高いと、Al-Ca-Si化合物の形成が促進されて、金属間化合物(Al2.15Zn1.85Ca)が形成されなくなる。ただし、Mg/Siが38.0を超えると、後述するように、めっき層中にMgAlSiが形成されなくなる。そのため、めっき層中にMgAlSiを形成させる場合は、Mg/Siを38.0以下とすることが好ましい。
なお、「Mg/Si」におけるMg、Siは、それぞれめっき層中のMg、Siの質量%での含有量を表す。
3.00≦Al/Mg≦4.00
Al含有量およびMg含有量については、3.00≦Al/Mg≦4.00を満たすようにしてもよい。3.00≦Al/Mg≦4.00を満たすことで、めっき層中にMgAlSiを形成できるようになる。なお、「Al/Mg」におけるAl、Mgは、それぞれめっき層中のAl、Mgの質量%での含有量を表す。
めっき層の平均化学組成の同定方法について説明する。まず、地鉄(鋼板)の腐食を抑制するインヒビターを含有した酸でめっき層を剥離溶解した酸液を得る。次に、得られた酸液をICP発光分光分析法またはICP-MS法で測定することでめっき層の平均化学組成を得ることができる。酸種は、めっき層を溶解できる酸であれば、特に制限はない。剥離前後の面積と重量を測定しておけば、めっき付着量(g/m)も同時に得ることができる。
次に、めっき層に含有される金属間化合物について説明する。
本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg系合金めっきにより形成されることから、主たる相としてめっき層中にZn相、Al相、Al-Zn相、η’-MgZn相およびMgZn相が含有される。各相の含有量によって耐食性は変化するが、金属間化合物の含有などめっき組織を制御することで、pH3.5未満の酸性環境での耐食性と、pH11.5超のアルカリ性環境での耐食性との差が小さくなり、耐食性を確保することができる。なお、主たる相を除く相としてはZn、Al、Mg元素以外に添加された元素による上記記載の金属間化合物でAl-Ca-Si化合物やMg-Sn化合物などである。
Zn相(η相:Zn-Al状態図内)
Zn相は、めっき層中に存在し、三元共晶組織(Zn/Al/MgZn三元共晶組織)中に主に存在している。Zn相は、約20mass%未満のAlを含むZn相が含まれる。めっき層中のZn相は、pH5.0~11.5の環境下での耐食性を確保することが可能であり、この範囲での腐食量は少ないが、それ以外の範囲での腐食速度は大きい。
Al相(α相:Zn-Al状態図内)
Al相は、めっき層中にAl初晶として塊状に存在するほか、三元共晶組織中にも一定量含有される。めっき層中のAl相は、pH3.5~10.5の環境下での耐食性を確保することが可能であり、この範囲での腐食量は少ないが、pH3.5~10.5から外れる範囲での腐食速度が大きい。
Al相中には、約90mass%のAlを含み残部にZnが含まれる。このためAlとしての性質が強く表れ、後述するAl-Zn相とはAl含有量が異なる。
Al-Zn相(Zn-Al状態図内でAl、Znからなる構成物でα相、η相以外の相)およびη’-MgZn
Al-Zn相は、約20mass%の以上のAlを含むZn相であって、Al相、Zn相両方の性質が表れる。Al-Zn相は、本実施形態に係るめっき層を作製した場合、自ずと生成する。ここでいうAl-Zn相とは、前記の、Al相、Zn相の両方とも異なるが、AlおよびZnの2元素によって構成される相である。
Al-Zn相は、めっき層の凝固中に、Al相からZn相が分離したことによって生成した相であり、主に、室温に至るまでの過程でAl相の固溶限の低下が要因で形成する。結晶サイズで確認すると数nm~約3μmの細かい結晶粒が集合した組織である。Al-Zn相は、Zn相、Al相としての両方の性能を示すのは、その内部に細かい結晶粒単位でZn相、Al相の集合体を有するためで、何ら特別な性質を有しているわけではない。一方で、微細相は結晶粒界や、電位の異なる相の隣接はカップリング反応が促進されるため、この相の耐食性は、めっき層中のAl相(α)、Zn相(η)よりも耐食性が劣る傾向にある。
Al-Zn相は、酸性環境・アルカリ性環境での耐食性を極めて悪化させる。ただし、適切な熱処理(η’-MgZn相の形成のための熱処理)によって、Al-Zn相を減少させることができ、酸性環境・アルカリ性環境での耐食性の悪化の懸念がなくなる。熱処理によって、Al-Zn相が減少してη’-MgZnが生成することで、pH3.5~10.5の範囲における耐食性が向上する。
MgZn
MgZn相はめっき層中に存在し、MgZn相として塊状に存在するほか、Al相と共にAl-MgZn共晶線上で凝固した際に形成したデンドライト状組織や、三元共晶組織(Zn/Al/MgZn)中にも一定量含有される。めっき層中のMgZn相はpH5.0~pH11.5の範囲における耐食性を向上させることが可能であり、この範囲での腐食量を少なくすることができる。しかし、それ以外のpH範囲での腐食速度はほとんど変化させることができない。めっき層に含まれる相の中で最も多く存在する相がMgZn相であるため、相構成の割合を変化させることによって耐食性を確保できるpH範囲は3.5~11.5であり、この範囲外での耐食性確保は困難である。
本発明者らが、pH3.5~11.5の範囲外での耐食性の確保を目的にめっき層の改良を図った結果、特定の金属間化合物の形成により、pH3.5~11.5の範囲外での耐食性が確保できることが判明した。めっき層への特定の金属間化合物の含有を判断するためには、X線回折法を使用することが好ましい。この検出方法は、SEM観察、TEM観察などに比べてめっき層の平均情報が得られ、測定箇所(視野)の選択性が少なく定量化に優れている。また測定条件を規定すれば、特定の金属間化合物が存在する場合、同じ角度(2θ)で回折ピーク強度が決まった割合で得られるため、簡単にめっき層の内部構造を推測することが可能である。
X線回折像を得る条件は下記の通りとする。
X線源として、CuをターゲットとするX線回折法が、めっき層における構成相の平均的な情報を得られるため、最も都合がよい。測定条件の一例として、Cu-Kα線を使用し、X線出力を電圧40kV、電流150mAとする。X線回折装置としては特に制限はないが、例えば、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR IIIを用いることができる。
金属間化合物:Al2.15Zn1.85Ca
Al2.15Zn1.85Caは、データベース番号(ICDD-JCPDS粉末回折データベース)01-078-9051で示される物質である。Ca-Al-Zn系の金属間化合物は、例えば、(Z,Kristallogr.224(2009)397-406)で広く紹介されるが、AlCaと相似する構造(一部Zn置換体)を形成する。これらの同構造の物質として例えば、AlCa、Ca0.5Zn3.5、AlCaZn、Al2.5CaZn1.5、Al2.06CaZn1.62、AlCaZn、Al1.75CaZn2.25など、Al位置に一部がZn(0~2.25)に置換した物質も相似構造を示すことになるため、同種の性質をもつことが予測される。ただし、これらの物質は、原子半径が異なる置換体であるため、必ずしも回折ピークが同じ位置で得られるとは限らない。一方で、本実施形態では、特定の角度でAl2.15Zn1.85Caとして回折ピークが得られるものであるので、この物質が含有されるものとして扱う。
本実施形態のめっき組成で、Al2.15Zn1.85Caを検出するのに都合の良い角度は、3つの角度がある。すなわち、回折角度2θで、22.89°(101面)、31.67°(103面)、43.94°(200面)である。これらの回折角度に現れる回折ピークは、めっき層の主要な結晶構造と回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわちこれらの回折角度で回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属間化合物が確実に含有されているといえる。
ただし、本発明者らが検討しためっき層においては、必ずしもJCPDSデータの金属間化合物の製造状況と同じではなく異なるために、僅かに回折ピークのシフトが見られ、22.89°(101面)に対応するものは22.90°、31.67°(103面)に対応するものは31.62°、43.94°(200面)に対応するものは44.04°になる。
金属間化合物:CaZn
この金属間化合物は、(ICDD-JCPDS粉末回折データベース)01-072-5741で示される物質である。置換体としてはCa(Al1.7Zn0.3)(JCPDSカード01-077-6005)が想定されるが、この置換体は、CaAl構造を主とした異なる物質であり、CaZnとは回折ピーク位置が異なるので、本実施形態では対象としない。
本実施形態のめっき組成範囲で、CaZnに検出するのに都合の良い角度は、1つの角度のみであり、回折角度2θで、33.35°(121面)(最強線)である。この回折角度における回折ピークは、めっき層中の主要な結晶構造と回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわちこの回折角度で回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属間化合物が確実に含有されているといえる。ただし、本発明者らが検討しためっき層においては必ずしもJCPDSデータの金属間化合物の製造状況と同じではなく異なるために、僅かに回折ピークのシフトが見られるが、対象とする回折ピークは33.35°でよい。
これらAl2.15Zn1.85CaおよびCaZnの金属間化合物は、本実施形態におけるめっき組成のめっき層を形成するとともに、特別な熱処理を行うことによって形成する金属間化合物である。上記金属間化合物は、本来Zn相として析出するZnをAlCaの一部に置換させる、またAl-Ca-Siとして別の金属間化合物に取り込まれやすいCaを、Al、Znと結合させることにより形成される。
また、これらの金属間化合物の性質を個別に調査した結果、pH3.0(酸性環境)における耐食性が向上することが判明した。これらの金属間化合物は酸に対して安定であるため、酸性環境下での耐食性が向上すると推測される。
一方、これらの金属間化合物の含有により、めっき層中のZn相の量が減少することから、アルカリ性環境の耐食性はpH10.0以上でやや低下する傾向にある。
pH3.5~11.5の範囲外での耐食性を確保するためには、めっき層表面に対して、Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kVおよび150mAである条件でX線回折を行うことによって得られる、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Al2.15Zn1.85CaのX線回折ピークから求められるI~Iと、CaZnのX線回折ピークから求められるIとをそれぞれ下記式(1)~(4)で定義した場合に、下記式(A)を満足する必要がある。
Figure 0007328611000006
ただし、上記式(1)~(4)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ上記式(1)~(4)中に示される回折角度2θである。
すなわち、上記式(1)におけるImax(22.54~23.30°)は回折角度2θで22.54°~23.30°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(22.54°)、I(23.30°)はそれぞれ、回折角度2θで22.54°、23.30°におけるX線回折強度である。
上記式(2)におけるImax(31.00~32.00°)は回折角度2θで31.00°~32.00°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(31.00°)、I(32.00°)はそれぞれ、回折角度2θで31.00°、32.00°におけるX線回折強度である。
式(3)におけるImax(43.80~44.30°)は回折角度2θで43.80~44.30°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(43.80°)、I(44.30°)はそれぞれ、回折角度2θで43.80°、44.30°におけるX線回折強度である。
式(4)におけるImax(33.00~33.80°)は回折角度2θで33.00~33.80°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(33.00°)、I(33.80°)はそれぞれ、回折角度2θで33.00°、33.80°におけるX線回折強度である。
式(1)は、Al2.15Zn1.85Caの回折ピークの強度に関する式であって、22.89°におけるバックグラウンド強度に対する、2θ=22.89°(101面)に相当する回折ピークの回折強度比である。以下、式(1)の分母および分子について説明する。
式(1)の分母(Imax(22.54~23.30°))は、金属間化合物Al2.15Zn1.85Caの2θ=22.90°(101面)の回折ピークに相当する強度であって、バックグラウンド強度を含む回折ピークの最大回折強度である。X線回折の測定誤差により、(101)面の回折角度2θが22.90°から外れる場合があるため、22.54~23.30°の間の最大値を取得することにしている。
式(1)の分子は、回折角度2θで22.90°におけるバックグラウンド強度を、22.54°および23.30°における回折強度から計算によって求めたものである。すなわち、図1に示すように、22.54°における回折線と23.30°における回折線とを結ぶ直線を引く。この直線が回折ピークのベースラインになる。次に、I(23.30°)-I(22.54°)を求める。また、回折角度2θで22.54°と23.30°との差分(0.76°)に対する、回折角度2θで22.54°と22.90°との差分(0.36°)の比(0.36/0.76=0.474)を求める。そして、回折角度2θで22.89°におけるバックグラウンド強度を、上記式(1)の分母に記載した数式により計算する。
以上のようにして式(1)を設定することで、測定条件の違いによって、測定誤差やバックグラウンドの変動が生じたとしても、金属間化合物Al2.15Zn1.85Caの2θ=22.90°(101)の回折ピークの強度を精度よく測定可能になる。
式(1)について説明したが、式(2)~(4)および以下に説明する式(5)~(13)についても、式(1)と同様の考え方に基づき設定している。
上記式(A)に示したように、I、I、IおよびIの合計が4.05以上であることにより、酸性環境での耐食性が向上する。より好ましくは4.10以上となることが良い。一方、酸性環境での耐食性向上に伴い、アルカリ性環境での耐食性が劣位になる傾向にあるため、I~Iの合計は4.15以下とすることが好ましい。
上記式(A)に関して、めっき層のSi含有量に対してCa含有量が高いと、Al2.15Zn1.85CaおよびCaZnが形成しやすくなるから、Ca/Si比を0.40~0.70としてもよい。また、上記式(A)を満足するには、めっき層の化学組成が本発明範囲を満たすとともに、製造方法において適切な熱処理が行われる必要がある。
金属間化合物:η’-MgZn
η’-MgZnは、(ICDD-JCPDS粉末回折データベース)01-073-2566で示される物質である。この金属間化合物は、例えば、(ACTA,METALLURGICA VOL,18 AUGUST 1970 881-890)で広く紹介されるが、主相であるMgZnとは結晶構造が異なる物質である。本実施形態に係るめっき層の組成範囲で、この金属間化合物に検出するのに都合の良い回折角度2θは2つあり、回折角度2θで26.20°(100面)および49.22°(-221面)である。これらの回折角度における回折ピークは、めっき層の主要の結晶構造の回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわち、これらの回折角度において回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属間化合物が確実に含有されているといえる。ただし、本発明者らが検討しためっき層においては必ずしもJCPDSデータの金属間化合物の製造状況が同じではなく異なるから、僅かに回折ピークのシフトが見られ、26.20°(100面)に対応するものは26.15°であり、49.22°(-221面)はそのまま49.22°でよい。
pH3.5~11.5の範囲外での耐食性を確保するためには、めっき層表面に対して、Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kVおよび150mAである条件でX線回折を行うことによって得られる、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、η’-MgZnのX線回折ピークから求められるIおよびIを下記式(5)、(6)で定義した場合に、下記式(B)を満足する必要がある。
Figure 0007328611000007
ただし、上記式(5)、(6)において、Imax(k°~m°)は回折角度2θでk°~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ上記式(5)、(6)中に示される回折角度2θである。
すなわち、上記式(5)におけるImax(26.00°~26.40°)は回折角度2θで26.00°~26.40°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(26.00°)、I(26.40°)はそれぞれ、回折角度2θで26.00°、26.40°におけるX線回折強度である。
また、上記式(6)におけるImax(49.00°~49.60°)は回折角度2θで49.00°~46.60°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(49.00°)、I(49.60°)はそれぞれ、回折角度2θで49.00°、49.60°におけるX線回折強度である。
上記式(B)に示したように、IおよびIの合計が2.05以上であることにより、pH3.0での酸性環境下およびpH11.8でのアルカリ性環境下での耐食性が向上する。η’-MgZnは通常のMgZnよりも耐食性が高い。IおよびIの合計も大きい数値の方が好ましいが、好ましくは2.30以下がよい。
上記式(B)に関して、めっき層のSi含有量に対しCa含有量が高いと、η’-MgZnが形成しやすくなり、Ca/Si比は0.40~0.70が好ましい。また、式(B)を満足するには、めっき層の化学組成が本発明範囲を満たすとともに、製造方法において適切な熱処理が行われる必要がある。
η’-MgZnは、Al2.15Zn1.85CaおよびAlCaと同時に形成する傾向にあり、η’-MgZnの複雑で特別な結晶構造が周囲の金属間化合物の形成に影響を与えていると考えられる。これらの金属間化合物が同時に形成することにより、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が共に改善する。
金属間化合物:MgAlSi
更に、めっき層が特定の成分組成となり、特定の製造条件を満たす場合は、めっき層中に金属間化合物MgAlSiが形成される。すなわち、めっき層の平均化学組成が、20.0≦Mg/Si≦38.0、及び、3.00≦Al/Mg≦4.00を満たすとともに、η’-MgZnが形成しやすい温度領域で、十分な時間保持がなされた場合に、MgAlSiが形成される。
この金属間化合物MgAlSiは、(ICDD-JCPDS粉末回折データベース)01-074-9054で示される物質である。本実施形態に係るめっき層の組成範囲で、この金属間化合物に検出するのに都合の良い回折角度は3つあり、回折角度2θで、24.66°(011面)、46.35°(302面)、49.15°(213面)である。これらの回折角度における回折ピークは、めっき層の主要の結晶構造と回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわち、これらの回折角度において回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属間化合物が確実に含有されているといえる。ただし、本発明者らが検討しためっき層においては必ずしもJCPDSデータの金属間化合物の製造状況と同じではなく異なるから、僅かに回折ピークのシフトが見られ、24.66°(011面)は24.66°のままでよく、46.35°(302面)に対応するものは46.28°であり、49.15°(213面)は49.15°のままでよい。
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgAlSiのX線回折ピークから求められるI~Iを下記式(7)~(8)で定義した場合に、下記式(C)を満足することが好ましい。
Figure 0007328611000008
ただし、上記式(7)~(9)において、Imax(k°~m°)は回折角度2θでk°~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ上記式(7)~(9)中に示される回折角度2θである。
すなわち、式(7)におけるImax(24.30°~24.90°)は回折角度2θで24.30°~24.90°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(24.30°)、I(24.90°)はそれぞれ、回折角度2θで24.30°、24.90°におけるX線回折強度である。
上記式(8)におけるImax(46.10°~46.40°)は回折角度2θで46.10°~46.40°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(46.10°)、I(46.40°)はそれぞれ、回折角度2θで46.10°、46.40°におけるX線回折強度である。
上記式(9)におけるImax(49.00°~49.60°)は回折角度2θで49.00°~49.60°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(49.00°)、I(49.60°)はそれぞれ、回折角度2θで49.00°、49.60°におけるX線回折強度である。
上記式(C)に示したように、I、IおよびIの合計が3.05以上であることにより、pH11.5超のアルカリ性環境での耐食性がより向上する。
、IおよびIの合計は3.10以下としてもよい。
金属間化合物:MgSn
更に、めっき層の平均化学組成が0.01≦Snを満たし、η’-MgZnの形成しやすい温度領域で、十分な時間保持がなされたときには、MgSnがめっき層中に生成する。
この金属間化合物MgSnは、(ICDD-JCPDS粉末回折データベース)01-072-8010で示される物質である。通常、Zn-Al-Mg系めっき鋼板にSnが含有された場合は、例えば、MgSn(00-031-0812、もしくは01-080-4461)が形成するが、MgSnは、これらの金属間化合物とは完全に結晶構造が異なっている。
本実施形態に係るめっき層の組成範囲で、この金属間化合物に検出するのに都合の良い回折角度は1つであり、回折角度2θで、23.29°(300面)のみである。この回折角度における回折ピークは、めっき層の主要な結晶構造と回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわちこれらの回折角度において回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属間化合物が確実に含有されているといえる。ただし、本発明者らが検討しためっき層においては必ずしもJCPDSデータの金属間化合物の製造状況と同じではなく異なるから、僅かに回折ピークのシフトが見られ、23.29°(300面)に対応するものは23.40°である。
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgSnのX線回折ピークから求められるI10を下記式(10)で定義した場合に、下記式(D)を満足することが好ましい。
Figure 0007328611000009
ただし、上記式(10)において、Imax(23.10°~23.30°)は回折角度2θで23.10°~23.30°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(23.10°)は回折角度2θで23.10°におけるX線回折強度であり、I(23.30°)は回折角度2θで23.30°におけるX線回折強度である。
上記式(D)に示したように、I10が1.04以上であることにより、pH11.5超のアルカリ性環境での耐食性が向上する。MgSnは、MgSnよりもSnとMgの結合数が小さいことから、MgSnよりも自然電位がやや貴であり、アルカリ性環境での耐食性が安定している。
10は1.10以下としてもよい。
金属酸化物
また、大気環境中でη’-MgZnを形成させるべく、高温領域で長時間保持すると、めっき層の表面に酸化被膜が形成する場合がある。これらは窒素雰囲気中の加熱で形成の有無が変わる。
ただし、この酸化被膜における化合物を十分に特定できていないが、X線回折で何らかの回折ピークが回折角度2θで0~20°の範囲で現れるため、金属酸化物起因の酸化被膜であると想定される。回折角度2θで10.45°、12.83°、17.36°の回折ピークは、めっき層の主要な結晶構造と回折ピークが重ならないことから、定量化と含有量の見極めに都合が良い。すなわちこれらの回折角度において回折強度が一定量を超える回折ピークが得られれば、目的とする金属酸化物が確実に含有されているといえる。
Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、酸化物のX線回折ピークから求められるI11~I13を下記式(11)~(13)で定義した場合に、下記式(E)を満足することが好ましい。
Figure 0007328611000010
ただし、上記式(11)~(13)において、Imax(k°~m°)は回折角度2θでk°~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ上記式(11)~(13)中に示される回折角度2θである。
すなわち、上記式(11)におけるImax(10.30°~10.70°)は回折角度2θで10.30°~10.70°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(10.30°)、I(10.70°)はそれぞれ、回折角度2θで10.30°、10.70°におけるX線回折強度である。
上記式(12)におけるImax(12.30°~13.30°)は回折角度2θで12.30°~13.30°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(12.30°)、I(13.30°)はそれぞれ、回折角度2θで12.30°、13.30°におけるX線回折強度である。
上記式(13)におけるImax(17.10°~17.50°)は回折角度2θで17.10°~17.50°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(17.10°)、I(17.50°)はそれぞれ、回折角度2θで17.10°、17.50°におけるX線回折強度である。
上記式(E)に示したように、I11、I12およびI13の合計が3.04以上であることにより、pH11.5超のアルカリ性環境側の耐食性が向上する。
11、I12およびI13の合計は3.10以下としてもよい。
次に、本実施形態に係るめっき鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係るめっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成されためっき層とを備える。通常、Zn-Al-Mg系めっきは、金属の堆積と凝固反応によってめっき層を形成させる。最もめっき層を形成するのに容易な手段は、溶融めっき法により鋼板表面にめっき層を形成させることであり、ゼンジマー法やフラックス法などによって形成することが可能である。
以下、本実施形態に係るめっき鋼板を溶融めっき法により製造する場合について説明する。本実施形態に係るめっき鋼板は、浸漬式のめっき法(バッチ式)、連続式のめっき法の何れでも製造可能である。
めっきの対象となる鋼板の大きさ、形状、表面形態などは特に制約はない。通常の鋼板、ステンレス鋼等でも鋼板であれば、適用可能である。一般構造用鋼の鋼帯が最も好ましい。事前に、ショットブラストなどによる表面仕上げを行ってもよく、表面にNi、Fe、Znめっきなどの3g/m以下の金属膜または合金膜を付着させた上で、めっきをしても問題はない。また、めっき原板、150g/m以下の亜鉛めっき板(溶融Znめっき鋼板、もしくは電気めっき鋼板)を使用することも可能である。また、事前処理として、脱脂、酸洗にて鋼板を十分に洗浄することが好ましい。
等の還元性ガスにより鋼板表面を十分に加熱・還元した後、所定成分に調合されためっき浴に、鋼板を浸漬させる。
めっき層の成分は、溶融めっき法の場合、建浴するめっき浴の成分によって制御することが可能である。めっき浴の建浴は、純金属を所定量混合することで、例えば不活性雰囲気下の溶解法によって行う。
所定濃度に維持されためっき浴に、表面が還元された鋼板を浸漬することにより、めっき浴とほぼ同等成分のめっき層が形成される。浸漬時間の長時間化や、凝固完了までに長時間かかる場合は、界面合金層の形成が活発になるため、めっき層中のFe含有量が高くなる場合がある。めっき浴の浴温が500℃未満では、鋼板とめっき層との反応が急速に遅くなるため、めっき層中に含有されるFe含有量は通常、5.0%未満に収まる。
めっき層の形成のため、500~650℃のめっき浴に、還元された鋼板を数秒間浸漬することが好ましい。還元された鋼板の表面では、Feがめっき浴に拡散し、めっき浴中の成分と反応して、界面合金層(主にAl-Fe合金層)がめっき層と鋼板との界面に形成される。界面合金層によって、界面合金層の下方の鋼板と上方のめっき層とが金属化学的に結合される。
めっき浴に鋼板を所定時間浸漬後、鋼板をめっき浴から引き上げ、表面に付着した金属が溶融状態にあるときにNワイピングを行うことにより、めっき層を所定の厚みに調整する。めっき層の厚みは、3~80μmに調整することが好ましい。めっき層の付着量に換算すると、10~500g/m(片面)となる。また、めっき層の厚みは、5~70μmに調整してもよい。付着量に換算すると、20~400g/m(片面)となる。
めっき層の付着量の調製後に、付着した溶融金属を凝固させる。めっき凝固時の冷却手段は、窒素、空気または水素・ヘリウム混合ガスの吹付によって行ってもよく、ミスト冷却でもよく、水没でもよい。めっき凝固時の冷却手段は、ミスト冷却が好ましく、窒素中に水を含ませたミスト冷却がより好ましい。冷却速度は、水の含有割合によって調整するとよい。めっき表面に酸化被膜などを形成させたい場合は、大気環境下の冷却で製造すればよい。一方、酸化被膜の形成などを避けるためには、酸素濃度を20ppm未満まで下げた例えばN置換炉内での冷却でNガスにより冷却を実施することが好ましい。
本実施形態に係るめっき層を製造する際の好ましい条件としては、めっき凝固時の冷却において、500~480℃の平均冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましい。Al-Ca-Si、MgSiなどの金属間化合物は、500~480℃で形成しやすいので、この温度領域を急冷却することで、これらの化合物を析出させにくくする。具体的には、温度が30℃程度(室温程度)の冷媒(例えば水)に没入させるなど極めて冷却速度の速い手段で冷却することが、酸性環境およびアルカリ性環境での耐食性が高くなる傾向にある。
次いで、エイジング処理を行う。本実施形態において重要な、Al2.15Zn1.85Ca、CaZn、η’-MgZn、MgAlSiおよびMgSnの金属間化合物の形成は、低温での長時間保持によるエイジング処理によって行う。エイジング処理における温度は、下限および上限を厳しく制限する必要がある。
エイジング処理の温度範囲は、80~140℃、より好ましくは90~110℃とする。温度が80℃未満だと、温度が低すぎて所望の金属間化合物が形成せず、またAl-Zn相(約20mass%Al)が残存して耐食性が悪化する。温度が140℃を超えると、所望の金属間化合物以外の相の形成が盛んになり、特にAl-Zn相(約20mass%Al)が安定するため、さらに耐食性が悪くなる。また、η’-MgZn相よりもMgZn相が安定化してしまい、η’-MgZn相が形成されなくなる。
また、エイジング処理の保持時間は、72~750時間とする。72時間以上のエイジングにより、金属間化合物を形成させることができる。また、750時間以下のエイジングにより、めっき層の過度な酸化と耐食性劣化を防ぐことができる。より好ましくは、保持時間を250時間以上、500時間以下とする。
また、エイジング処理の雰囲気は、特に制限されない。大気中でもよく、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気中でもよい。
なお、エイジング処理によって、めっき層中にη’-MgZn相の他にMgZn11相が形成する場合があるが、MgZn11相形成による耐食性悪化は確認されていない。MgZn11相は、η’-MgZnへの結晶構造により副産物的に形成するものと想定される。
エイジング処理を実施した場合、Mg、Al、Siの含有量が所望の関係を満たせば、MgAlSiがさらに形成される。また、めっき層に所望量のSn等が含有される場合は、MgSnが形成されやすくなる。さらに大気環境下でエイジング処理を行った場合は、金属酸化物が表面に形成する。
以上をもって、本実施形態にて定義されるめっき鋼板のめっき層は完成する。
エイジング処理後は、各種化成処理、塗装処理を行ってもよい。めっき表面の凹凸状の模様を利用してCr、Ni、Auなどのめっき層を付与し、更に塗装して意匠を付与することも可能である。また、さらに防食性を高めるため、溶接部、加工部などにおいては、補修用タッチアップペイント、溶射処理などを実施してもよい。
本実施形態に係るめっき鋼板には、めっき層上に被膜を形成してもよい。被膜は、1層または2層以上を形成することができる。めっき層直上の被膜の種類としては、例えば、クロメート被膜、りん酸塩被膜、クロメートフリー被膜が挙げられる。これら被膜を形成する、クロメート処理、りん酸塩処理、クロメートフリー処理は既知の方法で行うことができる。
クロメート処理には、電解によってクロメート被膜を形成する電解クロメート処理、素材との反応を利用して被膜を形成させ、その後余分な処理液を洗い流す反応型クロメート処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して被膜を形成させる塗布型クロメート処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
なお、めっき層の表面に被膜を有する場合には、湿式研磨などで、機械的除去によってめっき層に入熱が加わらないように完全に除去した後、上述のX線回折を実行する。
電解クロメート処理としては、クロム酸、シリカゾル、樹脂(りん酸、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、酢酸ビニルアクリルエマルション、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、ジイソプロパノールアミン変性エポキシ樹脂等)、および硬質シリカを使用する電解クロメート処理を例示することができる。
りん酸塩処理としては、例えば、りん酸亜鉛処理、りん酸亜鉛カルシウム処理、りん酸マンガン処理を例示することができる。
クロメートフリー処理は、特に、環境に負荷なく好適である。クロメートフリー処理には、電解によってクロメートフリー被膜を形成する電解型クロメートフリー処理、素材との反応を利用して被膜を形成させ、その後、余分な処理液を洗い流す反応型クロメートフリー処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して被膜を形成させる塗布型クロメートフリー処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
さらに、めっき層直上の被膜の上に、有機樹脂被膜を1層もしくは2層以上有してもよい。有機樹脂としては、特定の種類に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はこれらの樹脂の変性体等を挙げられる。ここで変性体とは、これらの樹脂の構造中に含まれる反応性官能基に、その官能基と反応し得る官能基を構造中に含む他の化合物(モノマーや架橋剤など)を反応させた樹脂のことを指す。
このような有機樹脂としては、1種又は2種以上の有機樹脂(変性していないもの)を混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂の存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種又は2種以上混合して用いてもよい。また有機樹脂被膜中には任意の着色顔料や防錆顔料を含んでもよい。水に溶解又は分散することで水系化したものも使用することができる。
なお、本実施形態において、酸性環境下、アルカリ性環境下での耐食性は、以下のようにして測定し、評価する。
酸性環境における耐食性の測定方法
純水を希硫酸(0.4体積%)の滴下によってpH3.0に調整して、1リットルの酸溶液(常温23℃)を作製する。
試験片を酸溶液に1秒間浸漬し、引き上げ後、水平置きで温度:50℃、湿度:10%未満の大気開放型の乾燥炉に24時間放置する。
これを1サイクルとして60サイクル繰り返す。
60サイクル後、30重量%クロム酸(VI)(常温23℃)に試験片を浸漬して、めっき層表面に形成した腐食生成物を除去して、試験前後の腐食減量を測定し、酸性環境における耐食性の優劣を判定(6段階評価)する。評価がD~S+であれば、酸性環境における耐食性に優れると判断することができる。
60サイクル後の腐食減量が5g/m未満のものを酸性環境側の耐食性「S+」
60サイクル後の腐食減量が5g/m以上、10g/m未満のものを酸性環境の耐食性「S」
60サイクル後の腐食減量が10g/m以上、15g/m未満のものを酸性環境の耐食性「A+」
60サイクル後の腐食減量が15g/m以上、20g/m未満のものを酸性環境の耐食性「A」
60サイクル後の腐食減量が20g/m以上、30g/m未満のものを酸性環境の耐食性「B」
60サイクル後の腐食減量が30g/m以上、40g/m未満のものを酸性環境の耐食性「C」
60サイクル後の腐食減量が40g/m以上、50g/m未満のものを酸性環境の耐食性「D」
60サイクル後の腐食減量が50g/m以上のものを酸性環境の耐食性「E」
アルカリ性環境における耐食性の測定方法
純水をアンモニア水(3体積%)の滴下によってpH11.8に調整して1リットルのアルカリ溶液(常温23℃)を作製する。
試験片をアルカリ溶液に1秒間浸漬し、引き上げ後、水平置きで温度:50℃、湿度:10%未満の大気開放型の乾燥炉に24時間放置する。
これを1サイクルとして60サイクル繰り返す。
60サイクル後、30重量%クロム酸(VI)(常温23℃)に試験片を浸漬して、めっき層表面に形成した腐食生成物を除去して、試験前後の腐食減量を測定し、アルカリ性環境における耐食性の優劣を判定する。評価がD~S+であれば、アルカリ性環境における耐食性に優れると判断することができる。
60サイクル後の腐食減量が5g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「S+」
60サイクル後の腐食減量が5g/m以上、10g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「S」
60サイクル後の腐食減量が10g/m以上、15g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「A+」
60サイクル後の腐食減量が15g/m以上、20g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「A」
60サイクル後の腐食減量が20g/m以上、30g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「B+」
60サイクル後の腐食減量が30g/m以上、35g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「B」
60サイクル後の腐食減量が35g/m以上、40g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「C」
60サイクル後の腐食減量が40g/m以上、50g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「D」
60サイクル後の腐食減量が50g/m以上のものをアルカリ性環境の耐食性「E」
次に、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表2A-1~表6B-2に示すめっき鋼板を製造し、性能を評価した。
各種めっき浴は、純金属を調合することで建浴した。めっき合金の成分は建浴後、Fe粉を添加して、試験中にFe濃度が上昇しないようにした。
なお、表中において「0」と記載した値については、ICPにおいて0.005%検出限界値未満であったことを示す。
めっき鋼板の鋼板は、180×100サイズの鋼板(1.6mm)を使用した。なお、JIS G 3141:2021に示す冷延鋼板を使用した。めっき層の形成には、バッチ式溶融めっきシミュレーター(自社製)を使用した。めっき鋼板の一部にK熱電対を取り付け、N95vol%-H5vol%混合気体の雰囲気において800℃に加熱・保持した焼鈍を行うことで鋼板表面を十分に還元した。その後、浴温500~650℃のめっき浴に3秒間浸漬し、その後、引き揚げ、Nガスワイピングでめっき層の厚みが25~30μmに調整した。
ガスワイピング後の熱処理は、下記の3パターンの冷却を行った。なお、表1A-1~表1B-2では「めっき製法」と記載している。
A:Nガスワイピング後、500℃より水没(冷却速度100℃/秒以上:2秒以内に水温(30℃程度)に達する。)して冷却
B:Nガスワイピング後、500~480℃の平均冷却速度が40℃/秒となるようにNガスを吹き付けた後、480~50℃の平均冷却速度が10~20℃/秒となるようNガスを吹き付けて冷却
C:Nガスワイピング後、500~50℃の平均冷却速度が10~20℃/秒となるようNガスを吹き付けて冷却
その後、表1A-1~表1B-2に示すように、各サンプルに熱処理(エイジング処理)を実施した。表1A-1~表1B-2において、「雰囲気」はエイジング処理時の雰囲気を示し、「再加熱温度」はエイジング処理時の加熱温度を示し、「時間」はエイジング処理時の保持時間を示す。
得られためっき鋼板を20mm角に切断し、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置(型番RINT-TTR III)を用いて、めっき層表面のX線回折パターンを解析した。具体的には、Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kVおよび150mAであり、銅ターゲット、ゴニオメーターTTR(水平ゴニオメータ)、Kβフィルターのスリット幅0.05mm、長手制限スリット幅2mm、受光スリット幅8mm、受光スリット2開放、とし、測定条件としてスキャンスピード5deg./min、ステップ幅0.01deg、スキャン軸2θ(5~90°)として測定を実施し、各角度でのX線回折強度を得た。
酸性環境下およびアルカリ性環境下での耐食性は、以下のようにして測定し、評価した。結果を表7A-1~表7B-2に示す。
酸性環境における耐食性の測定方法
純水を希硫酸(0.4体積%)の滴下によってpH3.0に調整して、1リットルの酸溶液(常温23℃)を作製した。次いで、試験片を酸溶液に1秒間浸漬し、引き上げ後、水平置きで温度:50℃、湿度:10%未満の大気開放型の乾燥炉に24時間放置した。これを1サイクルとして60サイクル繰り返した。60サイクル後、30重量%クロム酸(VI)(常温23℃)に試験片を浸漬して、めっき層表面に形成した腐食生成物を除去して、試験前後の腐食減量を測定し、酸性環境における耐食性の優劣を判定(6段階評価)した。
評価がD~S+であった場合、酸性環境における耐食性に優れるとして合格と判定した。一方、評価がEであった場合、酸性環境における耐食性に劣るとして不合格と判定した。
60サイクル後の腐食減量が5g/m未満のものを酸性環境側の耐食性「S+」
60サイクル後の腐食減量が5g/m以上、10g/m未満のものを酸性環境側の耐食性「S」
60サイクル後の腐食減量が10g/m以上、15g/m未満のものを酸性環境の耐食性「A+」
60サイクル後の腐食減量が15g/m以上、20g/m未満のものを酸性環境の耐食性「A」
60サイクル後の腐食減量が20g/m以上、30g/m未満のものを酸性環境の耐食性「B」
60サイクル後の腐食減量が30g/m以上、40g/m未満のものを酸性環境の耐食性「C」
60サイクル後の腐食減量が40g/m以上、50g/m未満のものを酸性環境の耐食性「D」
60サイクル後の腐食減量が50g/m以上のものを酸性環境の耐食性「E」
アルカリ性環境における耐食性の測定方法
純水をアンモニア水(3体積%)の滴下によってpH11.8に調整して1リットルのアルカリ溶液(常温23℃)を作製した。次いで、試験片をアルカリ溶液に1秒間浸漬し、引き上げ後、水平置きで温度:50℃、湿度:10%未満の大気開放型の乾燥炉に24時間放置した。これを1サイクルとして60サイクル繰り返した。60サイクル後、30重量%クロム酸(VI)(常温23℃)に試験片を浸漬して、めっき層表面に形成した腐食生成物を除去して、試験前後の腐食減量を測定し、耐食性の優劣を判定した。
60サイクル後の腐食減量が5g/m未満のものをアルカリ性環境側の耐食性「S+」
60サイクル後の腐食減量が5g/m以上、10g/m未満のものをアルカリ性環境側の耐食性「S」
60サイクル後の腐食減量が10g/m以上、15g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「A+」
60サイクル後の腐食減量が15g/m以上、20g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「A」
60サイクル後の腐食減量が20g/m以上、30g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「B+」
60サイクル後の腐食減量が30g/m以上、35g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「B」
60サイクル後の腐食減量が35g/m以上、40g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「C」
60サイクル後の腐食減量が40g/m以上、50g/m未満のものをアルカリ性環境の耐食性「D」
60サイクル後の腐食減量が50g/m以上のものをアルカリ性環境の耐食性「E」
下記の試験例は、めっき層の化学組成が本発明の範囲内であり、製造条件が好ましい範囲であったため、酸性環境およびアルカリ性環境の両方において耐食性が優れていた。なお、これらの試験例のめっき層中には、主体相としてZn相、Al相、Al-Zn相、η’-MgZn相およびMgZn相が含有されていた。
No.2~16、18~28、30~33、35、37、42、43、45、48~50、52~56、58、60、63、65、67、69、71、75、76、78、79、81、82、84、85、87、88、90、91、93、94、96、97、99、100、102、103、105、109~114、117、118、120~124、128~132。
一方、以下の試験例は、めっき層の化学組成が本発明の範囲外であり、また、式(A)および式(B)を満足しなかったため、酸性環境およびアルカリ性環境の両方において評価がEとなり、耐食性が劣位になった。
No.1、17、29、34、36、38~41、44、46、47、51、57、59、61、62、64、66、68、70、72~74、77、80、83、86、89、92、95、98、101、104、106、136、137。
また、以下の試験例は、めっき層の化学組成が本発明の範囲であるものの、製造条件が好ましい範囲から外れたため、式(A)および式(B)を満足せず、酸性環境およびアルカリ性環境の両方において評価がEとなり、耐食性が劣位になった。
No.107、108、115、116、119、125~127、133~135、138。
Figure 0007328611000011
Figure 0007328611000012
Figure 0007328611000013
Figure 0007328611000014
Figure 0007328611000015
Figure 0007328611000016
Figure 0007328611000017
Figure 0007328611000018
Figure 0007328611000019
Figure 0007328611000020
Figure 0007328611000021
Figure 0007328611000022
Figure 0007328611000023
Figure 0007328611000024
Figure 0007328611000025
Figure 0007328611000026
Figure 0007328611000027
Figure 0007328611000028
Figure 0007328611000029
Figure 0007328611000030
Figure 0007328611000031
Figure 0007328611000032
Figure 0007328611000033
Figure 0007328611000034
Figure 0007328611000035
Figure 0007328611000036
Figure 0007328611000037
Figure 0007328611000038

Claims (7)

  1. 鋼板表面に、めっき層を有するめっき鋼板であって、
    前記めっき層の平均化学組成が、質量%で、
    Al:15.0%超、30.0%以下、
    Mg:5.0%超、15.0%以下、
    Sn:0~0.70%、
    Bi:0~0.35%、
    In:0~0.35%、
    Ca:0.03~0.60%、
    Y :0~0.30%、
    La:0~0.30%、
    Ce:0~0.30%、
    Si:0.01~0.75%、
    Cr:0~0.25%、
    Ti:0~0.25%、
    Ni:0~1.00%、
    Co:0~0.25%、
    V :0~0.25%、
    Nb:0~0.25%、
    Cu:0~0.25%、
    Mn:0~0.25%、
    Fe:0~5.0%、
    Sr:0~0.5%、
    Sb:0~0.5%、
    Pb:0~0.5%、
    B :0~0.5%、
    Li:0~0.5%、
    Zr:0~0.5%、
    Mo:0~0.5%、
    W :0~0.5%、
    Ag:0~0.5%、
    P :0~0.5%、
    残部がZnおよび不純物からなり、
    Sn、BiおよびInの合計量ΣAが0%以上、0.75%未満であり、
    Ca、Y、LaおよびCeの合計量ΣBが0.03~0.60%であり、
    Cr、Ti、Ni、Co、V、Nb、CuおよびMnの合計量ΣCが0~1.00%であり、
    Sn≦Siおよび20.0≦Mg/Siを満たし、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Al2.15Zn1.85CaのX線回折ピークから求められるI~Iと、CaZnのX線回折ピークから求められるIと、η’-MgZnのX線回折ピークから求められるIおよびIと、を下記式(1)~(6)で定義した場合に、下記式(A)および(B)を満足する、めっき鋼板。
    Figure 0007328611000039
    ただし、前記式(1)~(6)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ式(1)~(6)中に示される回折角度2θである。
  2. 前記めっき層の平均化学組成が、20.0≦Mg/Si≦38.0および3.00≦Al/Mg≦4.00を満足し、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgAlSiのX線回折ピークから求められるI~Iを下記式(7)~(8)で定義した場合に、下記式(C)を満足する、請求項1に記載のめっき鋼板。
    Figure 0007328611000040
    ただし、前記式(7)~(9)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ式(7)~(9)中に示される回折角度2θである。
  3. 前記めっき層の平均化学組成が、0.01≦Snを満たし、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgSnのX線回折ピークから求められるI10を下記式(10)で定義した場合に、下記式(D)を満足する、請求項1に記載のめっき鋼板。
    Figure 0007328611000041
    ただし、前記式(10)において、Imax(23.10~23.80°)は回折角度2θで23.10~23.80°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(23.10°)は回折角度2θで23.10°におけるX線回折強度であり、I(23.80°)は回折角度2θで23.80°におけるX線回折強度である。
  4. 前記めっき層の平均化学組成が、0.01≦Snを満たし、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgSnのX線回折ピークから求められるI10を下記式(10)で定義した場合に、下記式(D)を満足する、請求項2に記載のめっき鋼板。
    Figure 0007328611000042
    ただし、前記式(10)において、Imax(23.10~23.80°)は回折角度2θで23.10~23.80°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(23.10°)は回折角度2θで23.10°におけるX線回折強度であり、I(23.80°)は回折角度2θで23.80°におけるX線回折強度である。
  5. Cu-Kα線を使用し、X線出力が40kV及び150mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、金属酸化物のX線回折ピークから求められるI11~I13を下記式(11)~(13)で定義した場合に、下記式(E)を満足する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
    Figure 0007328611000043
    ただし、前記式(11)~(13)において、Imax(k~m°)は回折角度2θでk~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度2θでn°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ前記式(11)~(13)中に示される回折角度2θである。
  6. 前記めっき層中に、Zn相、Al相、Al-Zn相、η’-MgZn相およびMgZn相が含有される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のめっき鋼板。
  7. 前記めっき層中に、Zn相、Al相、Al-Zn相、η’-MgZn相およびMgZn相が含有される、請求項5に記載のめっき鋼板。
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