I.定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
本明細書で使用される場合、「細菌」とは、内膜(すなわち、細胞膜)、周辺質、及び外膜を含む、細菌細胞を指す。外膜は内膜とは異なり、例えば、リポ多糖(LPS)及びポリンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、細菌は、グラム陰性菌である。例示的な細菌種としては、Escherichia種(例えば、E.coli)、Salmonella種(例えば、S.typhimurium及びS.enterica)、ならびに当該技術分野において既知である他のものが挙げられる。
「結合ポリペプチド」という用語は、標的分子に特異的に結合するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、結合ポリペプチドは、抗体である。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、例えば、抗体模倣物、細胞表面受容体、サイトカイン、または成長因子である。「標的分子」という用語は、結合ポリペプチドの特異的な結合標的を指す。標的分子は典型的には、小分子、ポリペプチド、またはポリペプチド断片である。結合ポリペプチドが抗体である場合、標的分子は、例えば、抗原であり得る。
結合ポリペプチド(例えば、抗体)の標的分子への結合に関して、「特異的結合」または「特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定の標的分子上のエピトープ「に対して特異的」であるは、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して、ある分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば、過剰量の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、標識された標的のプローブへの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害された場合に、示される。本明細書で使用される場合、「特異的結合」または「に特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に対して特異的」であるという用語は、例えば、10−4M以下、あるいは10−5M以下、あるいは10−6M以下、あるいは10−7M以下、あるいは10−8M以下、あるいは10−9M以下、あるいは10−10M以下、あるいは10−11M以下、あるいは10−12M以下の標的に対するKD、または10−4M〜10−6Mもしくは10−6M〜10−10Mもしくは10−7M〜10−9Mの範囲内のKDを有する分子によって呈され得る。当業者によって理解されるように、親和性及びKD値は、逆の関係にある。抗原に対する高い親和性は、低いKD値によって測定される。一実施形態において、「特異的結合」という用語は、ある分子が、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに、いかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドのエピトープにも実質的に結合することなく結合する、結合を指す。
本明細書で使用される場合、「ライブラリ」とは、複数の結合ポリペプチド(例えば、抗体または抗体断片)配列、またはこれらの配列をコードする核酸を指す。例示的なライブラリは、約2個の結合ポリペプチド〜約1014個の結合ポリペプチド(例えば、約2〜約10個、約2〜約20個、約2〜約30個、約2〜約40個、約2〜約50個、約2〜約60個、約2〜約70個、約2〜約70個、約2〜約80個、約2〜約100個、約2〜約1014個、約2〜約1013個、約2〜約1012個、約2〜約1011個、約2〜約1010個、約2〜約109個、約2〜約108個、約20〜約108個、約30〜約108個、約40〜約108個、約50〜約108個、約60〜約108個、約70〜約108個、約80〜約108個、約90〜約108個、約100〜約108個、約200〜約108個の結合、約400〜約108個、約600〜約108個、約800〜約108個、約103〜約108個、約104〜約108個、約105〜約108個、約106〜約108個、または約107〜約108個の結合ポリペプチド)のサイズを有し得る。
開始または基準結合ポリペプチド(例えば、参照抗体)の「バリアント」または「変異体」は、(1)開始または基準ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、かつ(2)自然または人工(人造)変異原性のいずれかを通して、開始または基準ポリペプチドから導出される、変異原性結合ポリペプチドである。そのようなバリアントは、例えば、本明細書において「アミノ酸残基変化」と呼ばれる、対象となる結合ポリペプチドのアミノ酸配列中の残基からの欠失、それへの挿入、及び/またはその置換を含む。したがって、バリアントHVRは、開始または基準ポリペプチド配列(源抗体または抗原結合断片のものなど)に関してバリアント配列を含むHVRを指す。この文脈において、アミノ酸残基変化とは、開始または基準ポリペプチド配列(参照抗体またはその断片のものなど)中の対応する位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す。最終バリアントまたは変異体構築物に到達するために、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが作製され得るが、但し、最終構築物が所望される機能的特徴(例えば、親和性、安定性、及び/または発現)を持つことを条件とする。
「野生型」もしくは「基準」配列、または「野生型」もしくは「基準」タンパク質/ポリペプチドの配列(HVR、FR、または参照抗体の可変ドメインなど)は、バリアントポリペプチドが変異の導入を通して導出される基準配列であってもよい。一般に、所与のタンパク質の「野生型」配列は、自然において最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然において最も一般的に見出される、その遺伝子の配列である。変異は、自然プロセスまたは人為的手段のいずれかを通して、「野生型」遺伝子(及びしたがってそれがコードするタンパク質)に導入され得る。そのようなプロセスの産生物は、本来の「野生型」タンパク質または遺伝子の「バリアント」または「変異体」形態である。
「変異」とは、野生型配列などの基準ヌクレオチド配列と比較した、ヌクレオチド(複数可)の欠失、挿入、または置換である。
「膜不透過性」という用語は、分子(例えば、ポリペプチド)が生体膜(例えば、細菌の内膜及び/または外膜)またはチャネルポア(例えば、ポリン)を渡って拡散することができないことを指す。対照的に、「膜透過性」分子は、生体膜を渡って拡散することができる。いくつかの条件下において、例えば、本発明の方法を通して、例えば、外膜の完全性が持続的または一過的に損なわれる場合、通常膜不透過性である分子(例えば、ポリペプチド)が細菌の周辺質内へと拡散することができることを理解されたい。
本明細書で使用される場合、「透過性」は、生体膜を渡る分子の拡散の速度を指す。生体膜は、所与の分子が膜を渡って実質的に拡散することができる場合、その分子に対して「透過性」である。生体膜は、所与の分子が膜を渡って実質的に拡散することができない場合、その分子に対して「不透過性」である。分子の電荷、極性、及びサイズは、ある生体膜がその分子に対して透過性であるか不透過性であるかどうかに影響を与え得る。典型的には、疎水性分子及び無電荷の極性小分子は生体膜を渡って透過性であるが、ほとんど水溶性の(親水性)分子は不透過性である。細菌の外膜は典型的には、約600ダルトン超の分子量を有する親水性分子の拡散に対して不透過性である(例えば、Decad et al.J.Bacteriology 128(1):325−336,1976を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「主要外膜リポタンパク質Lpp」(当該技術分野において、「Lpp」、「Braunリポタンパク質」、及び「ムレインリポタンパク質」とも呼ばれる)とは、別段示されない限り、E.coliまたはS.typhimurium(lkyDとしても知られる)を含む、任意の細菌源に由来する任意の天然Lppを指す。この用語は、「全長」未処理のLpp、及び細胞内の処理から生じる任意のLppの形態を包含する。Lppはペプチドグリカンと相互作用し、細胞外被の構造及び機能的完全性の維持に寄与する。例示的なE.coli(株K12)Lppのアミノ酸配列は、例えば、UniProtKB受入番号P69776に見出すことができる。
「周辺質」は、2つの選択的透過性障壁(例えば、生体膜)が隣接した空間である。Escherichia coliを含む多くの種の細菌において、周辺質は、内膜及び外膜が隣接した空間である。
本明細書で使用される場合、「透過化剤」は、例えば、典型的には膜不透過性である分子(例えば、ポリペプチド)に対する細菌外膜の透過性を増加させることができる化学物質を指す。例示的な透過化剤としては、例えば、二価カチオンキレート剤を含むキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、エデト酸もしくは2−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル−(カルボキシメチル)アミノ]酢酸とも呼ばれる)、2−[2−[2−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]フェノキシ]エトキシ]−N−(カルボキシメチル)アニリノ]酢酸(BAPTA)、及び2−[2−[2−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エトキシ]エトキシ]エチル−(カルボキシメチル)アミノ]酢酸(EGTA))、NaCl(Chen et al.Nat.Biotech.19:537−542,2001)、スクロース、抗生物質(例えば、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン及びゲンタマイシン)、ポリミキシンB、脱アシル化ポリミキシン、オクタペプチン、ならびにベンジルペニシリン)、洗剤、リゾチーム、トリス、トリス−EDTA、アスコルベート、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、プロタミン、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、血清及び/もしくは補体、Ca2+、またはこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、Hancock,Ann.Rev.Microbiol.38:237−264,1984を参照されたい。いくつかの実施形態において、透過化剤は、EDTAである。
本明細書で使用される場合、「透過化する」とは、生体膜を渡る分子の拡散の速度、例えば、細菌外膜を渡る、典型的には膜不透過性である分子(例えば、ポリペプチド)の拡散の速度を増加させることを意味する。
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸を含有するペプチドまたはタンパク質を指し、ペプチド、オリゴマー、及びタンパク質などを含む。ポリペプチドは、自然、修飾、合成アミノ酸を含有してもよい。ポリペプチドはまた、翻訳後処理などによって自然に、またはアミド化アシル化及び架橋などによって化学的に修飾されてもよい。
本明細書で使用される場合、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの「複数」の物質は一般に、2つ以上の型または種類のその物質の収集物を指す。2つ以上の物質が、特定のアミノ酸位置に見出されるバリアントアミノ酸などの特定の特徴に関して互いに異なる場合、2つ以上の型または種類の物質が存在することになる。例えば、バリアントフレームワーク領域(FR)の配列を除く、または特定の非溶媒曝露アミノ酸位置のバリアントアミノ酸を除く配列中に、実質的に同一、好ましくは同一である2つ以上の本発明のポリペプチドが存在する場合、複数の本発明のポリペプチドが存在することになる。別の例では、バリアントFRをコードする配列を除く、または特定の非溶媒曝露アミノ酸位置のバリアントアミノ酸をコードする配列を除く配列中に、実質的に同一、好ましくは同一である2つ以上の本発明のポリヌクレオチドが存在する場合、複数の本発明のポリヌクレオチドが存在することになる。
本明細書で使用される場合、「再封着」は、細菌外膜の膜透過性障壁を実質的に回復することを指す。いくつかの実施形態において、再封着は、その前の細菌外膜の透過化を逆転させる。
本明細書で使用される場合、「転写制御遺伝子」は、例えば、全般的(例えば、多数の遺伝子の転写に影響を与える)または個別的(例えば、1つまたはいくつかの遺伝子の転写に影響を与える)に、結合ポリペプチド(例えば、抗体)をコードする遺伝子の転写または発現の他の態様(例えば、翻訳、輸送、もしくは安定性)に影響を与えるあらゆる遺伝子を指す。例示的、非限定的な転写制御遺伝子としては、転写開始因子(例えば、シグマ因子)、抗シグマ因子、RNAポリメラーゼサブユニット、及び転写因子が挙げられる。いくつかの実施形態において、シグマ因子は、RpoD(σ70)、RpoE(σ24)、RpoH(σ32)、RpoS(σ38)、RpoN(σ54)、RpoF(σ28)、及びFecI(σ19)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、シグマ因子は、RpoD(σ70)である。
「転写制御遺伝子に影響を与える変異」とは、転写制御遺伝子の機能、発現レベル、安定性、または活性に影響を与えるあらゆる変異を指す。変異は、例えば、転写制御遺伝子自体中に位置する。他の実施形態において、変異は、制御核酸配列、例えば、転写制御遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー中に存在し得る。変異は、当該技術分野において既知の任意の種類のもの、例えば、点変異、挿入変異、欠失変異、及びフレームシフト変異などであってもよい。
「発現構築物」とは、細菌において、遺伝子の発現を与えることができる任意の核酸要素(例えば、結合ポリペプチド(例えば、抗体)または転写制御遺伝子)を指す。発現構築物とは、細菌へと形質転換された合成プラスミド、内在性細菌ゲノムへと統合された合成核酸配列、または任意の他の好適な核酸要素を指し得る。いくつかの実施形態において、及び発現構築物は、合成プラスミドである。
本明細書で使用される場合、結合ポリペプチドの発現及び/または安定性に関して「改善された」及び「増加した」という用語は、結合ポリペプチドの基準発現レベル及び/または結合ポリペプチドの基準安定性と比較した、増加または増強を指す。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、野生型結合ポリペプチドの発現レベルであってもよい。他の実施形態において、基準発現レベルは、バリアント結合ポリペプチドの発現レベルであってもよい。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、野生型細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルであってもよい。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、変異体細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルであってもよい。いくつかの実施形態において、基準安定性は、野生型結合ポリペプチドの安定性であってもよい。他の実施形態において、基準安定性は、バリアント結合ポリペプチドの安定性であってもよい。
「合成プラスミド」とは、遺伝子発現の目的で使用することができる、任意の天然に存在しないプラスミド(例えば、線状プラスミドまたは環状プラスミド)、例えば、結合ポリペプチドをコードする遺伝子または転写制御遺伝子の発現を指す。合成プラスミドとしては、例えば、対象となる遺伝子に操作可能に連結されたプロモーター、抗生物質耐性マーカー、複数のクローニングサイト、複製(複数可)起点、または当該技術分野において既知である任意の他の要素を挙げることができる。
本明細書の目的での「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは、アミノ酸配列変化を含んでもよい。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
「親和性」とは、ある分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別段示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野において既知である一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的説明及び例示的な実施形態が、以下に記載される。
「親和性成熟」抗体は、1つ以上のHVR及び/またはフレームワーク領域内に1つ以上の変化を有するものであり、これらの変化が、それらの変化(複数可)を持たない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたは更にはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術分野において既知である手順によって産生される。例えば、Marks et al.Bio/Technology 10:779−783,1992は、VH及びVLのドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載する。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異原性は、Barbas et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3809−3813,1994、Schier et al.Gene 169:147−155,1995、Yelton et al.J.Immunol.155:1994−2004,1995、Jackson et al.J.Immunol.154(7):3310−3319,1995、及びHawkins et al.J.Mol.Biol.226:889−896,1992によって記載される。
本明細書において、「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望される抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
参照抗体と「同一のエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて、参照抗体がその抗原に結合するのを50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体がその抗原に結合するのを50%以上遮断する参照抗体を指す。例示的な競合アッセイは、本明細書に提供される。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2、Zapata et al.Protein Eng.8(10):1057−1062,1995を参照されたい);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して表記される1つの残留「Fc」断片とが産生される。Fab断片は、重(H)鎖のVHドメインとともに軽(L)鎖全体、ならびに1つの重鎖(CH1)の第1の定常領域ドメインからなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2断片がもたらされ、これは概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片に対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片フラグメントは、抗体のヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に、追加のいくつかの残基を有することによって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保有するFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は本来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた、既知である。
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書において別段明記されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも称されるEU付番方式に従う。
「Fv」は、1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変領域ドメインが緊密な非共有結合で結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗体に、抗原結合のためのアミノ酸残基を寄与し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHのみを含むFvの半分)ですら、親和性が全結合部位よりも低い場合があるとはいえ、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
「sFv」または「scFv」とも省略される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に結合されたVH及びVL抗体ドメインを含む、抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、このリンカーにより、sFvが抗原結合に所望される構造を形成することが可能となる。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315,1994を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメインの対合が達成され、二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5〜10個の残基)を用いてsFv断片(前述の段落を参照されたい)を構築することによって調製される、小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993により詳細に記載されている。
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。ある特定の遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
抗体の「クラス」は、その重鎖が持つ定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの主要なクラスの抗体:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列のバリアントFc領域)に起因し得る生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプとともに変化する。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」または「ADCC」とは、ある特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合された分泌型Igが、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、後続して細胞毒により標的細胞を殺滅させることを可能にする、細胞毒性の一形態を指す。抗体は細胞毒性細胞を「備え」ており、そのような殺滅に絶対的に必要とされる。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457−492,1991の464頁の表3にまとめられている。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるものなどのインビトロADCCアッセイが実行され得る。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652−656,1998に開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価され得る。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これらの受容体のアレルバリアント及びあるいはスプライシング形態を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられる。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似したアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン内に免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン内に免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234,1997の概説を参照されたい)。FcRは、例えば、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457−492,1991、Capel et al.Immunomethods4:25−34,1994、及びde Haas et al.J.Lab.Clin.Med.126:330−41,1995に概説される。今後特定されるものを含む他のFcRが、本明細書の「FcR」という用語によって包含される。この用語はまた、母体IgGの胎児への転移を担う胎児性受容体であるFcRnも含む(例えば、Guyer et al.J.Immunol.117:587,1976、及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994を参照されたい)。
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然源から、例えば血液から単離することができる。
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」とは、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、補体系の第1成分(C1q)が(適切なサブクラスの)抗体と結合することにより開始され、該抗体はそれらの同族抗原に結合する。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996に記載されるCDCアッセイが実行されてもよい。
「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原の部分である。ポリペプチド抗原について、エピトープは一般に、約4〜15個のアミノ酸残基のペプチド部分である。
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すために、本明細書において互換的に使用される。
本明細書で使用される場合、「半抗体」という用語は、1つの免疫グロブリン軽鎖を伴う1つの免疫グロブリン重鎖を指す。当業者は、半抗体がその断片を包含し得ること、また例えば、ラクダ科に起源を持つ単一の可変ドメインからなる抗原結合ドメインも有し得ることを容易に理解するであろう。
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を持つもの、及び/またはヒト抗体を作製するための技術のうちのいずれかを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ(本明細書において「亜型」とも呼ばれる)からである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD,vols.1−3,1991にあるようなサブグループである。一実施形態において、VLについて、サブグループは、Kabatら(上記)にあるようなサブグループカッパIIIまたはカッパIVである。一実施形態において、VHについて、サブグループは、Kabatら(上記)にあるようなサブグループIIIである。
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望される抗体特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。更なる詳細については、Jones et al.Nature 321:522−525,1986、Riechmann et al.Nature 332:323−329,1988、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596,1992を参照されたい。
「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むが、これに限定されない、1つ以上の異種性分子(複数可)に複合体化される抗体である。
本明細書に開示される様々な抗体を記載するために使用される場合、「単離された」という用語は、抗体が発現された細胞または細胞培養物から特定され、分離及び/または回収されている抗体を意味する。その自然環境の混入構成成分は、典型的に、ポリペプチドの診断的または治療的使用に干渉する物質であり、これらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の溶質を挙げることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)の方法によって決定される、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.J.Chromatogr.B848:79−87,2007を参照されたい。好ましい実施形態において、抗体は、(1)スピニングカップ配列決定装置の使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して、非還元もしくは還元条件下でSDS−PAGEによって均質性まで精製されるであろう。単離された抗体は、組み換え細胞内でインサイチュの抗体を含むが、これは、ポリペプチドの自然環境のうちの少なくとも1つの構成成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の個体群から得られる抗体を指し、すなわち、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、可能性のあるバリアント抗体(そのようなバリアントは一般に少量で存在する)を除いて、その個体群を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/または同一のエピトープに結合する。典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の個体群から得られる抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージ提示法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する遺伝子導入動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を特に網羅し、ここで、このVHVL単位は、ポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物分子上の2つの異なるエピトープまたは異なる生物分子上の各エピトープに結合することができる)。そのような多重特異性抗体としては、全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片(Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディなど)、共有結合または非共有結合で連結されている抗体断片などが挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」とは、同一または異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「二特異性」または「二重特異性」とは、同一または異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体はアミノ酸配列が同一である2つの抗原結合腕を有し、各Fab腕は2つの抗原を認識することができる。二特異性は、抗体が、単一のFabまたはIgG分子として2つの異なる抗原と高い親和性で相互作用することを可能にする。一実施形態に従うと、IgG1形態の多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pMまたは0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合する。「単一特異性」とは、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
「ネイキッド抗体」とは、異種性部分(例えば、細胞毒性部分)または放射標識に複合体化されていない抗体を指す。ネイキッド抗体が、薬学的組成物中に存在してもよい。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが、抗体間で配列が大幅に異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、かつ特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を画定する。しかしながら、可変性は、110個のアミノ酸の全長の可変ドメインに渡って均等に分布してはいない。代わりに、V領域は、それぞれが9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域によって分離された15〜30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる、比較的可変性がない伸展からなる。本明細書で使用される場合、「超可変領域」または「HVR」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、例えば、VLでは大体約残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)、ならびにVHでは大体約残基26〜35(H1)、49〜65(H2)及び95〜102(H3)(一実施形態において、H1は大体約残基31〜35)、Kabatら(上記))からのアミノ酸残基、ならびに/または「超可変ループ」(例えば、VLでは残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、ならびにVHでは26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3)、Chothia et al.J.Mol.Biol.196:901−917,1987からの残基を含む。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がベータシート構造を取る4つのFRを含み、これが3つの超可変領域によって結合され、それによってベータシート構造を結合するループ、及び場合によってはその一部を形成するループが形成される。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接してともに保持されており、他方の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら(上記)を参照されたい)。したがって、HVR配列及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列、FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4で出現する。定常ドメインは、抗体の抗原に対する結合には直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
「Kabatにおける可変ドメイン残基の付番」または「Kabatにおけるアミノ酸位置の付番」という用語、及びそれらの変化形は、Kabatら(上記)における抗体のコンパイル物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番方式を指す。この付番方式を使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。所与の抗体について、残基のKabat付番は、抗体の配列と「標準の」Kabatによって付番された配列との相同領域での整列によって決定され得る。
Kabat付番方式は一般に、可変ドメイン内の残基(軽鎖の約残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)について言及するときに使用される(例えば、Kabatら(上記))。「EU付番方式」または「EUインデックス」は一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基について言及するときに使用される(例えば、Kabatら(上記)で報告されるEUインデックス)。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基の付番を指す。別段本明細書において述べられない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号への言及は、Kabat付番方式による残基付番を意味する。別段本明細書において述べられない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号への言及は、EU付番方式による残基付番を意味する(例えば、米国特許仮出願第60/640,323号、EU付番の図を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、別段示されない限り、「インターロイキン−13(IL−13)」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源からの任意の天然IL−13を指す。IL−13は、2型Tヘルパー(Th2)細胞を含む多くの細胞型によって分泌されるサイトカインである。この用語は、「全長」未処理のIL−13、及び細胞内の処理から生じる任意のIL−13の形態を包含する。例示的なヒトIL−13のアミノ酸配列は、例えば、UniProtKB受入番号P35225に見出すことができる。IL−13は、IL−13受容体サブユニットアルファ1(IL13RA1)またはIL−13受容体サブユニットアルファ2(IL13RA2)と複合体を形成したIL−4受容体アルファ(IL4Rα)を含み得る、IL−13受容体に結合する。例えば、IL−13は、IL−4受容体アルファとIL−13受容体サブユニットアルファ1との複合体に結合し得る。
「抗IL−13抗体」、「IL−13に結合する抗体」、及び「IL−13に特異的に結合する抗体」という用語は、抗体が診断的及び/または治療的薬剤としてIL−13を標的とする上で有用であるような十分な親和性で、IL−13に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗IL−13抗体の無関係の非IL−13タンパク質への結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定される、この抗体のIL−13への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、IL−13に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10−8M以下、例えば、10−8M〜10−13M、例えば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗IL−13抗体は、異なる種に由来するIL−13間で保存されるIL−13のエピトープに結合する。例示的な抗IL−13抗体としては、レブリキズマブ、228B/C−1、228A−4、227−26、及び227−43が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、これによりそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,674,459号、同第8,067,199号、同第8,088,618号、同第8,318,160号、及び同第8,734,797号を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「血管内皮成長因子」または「VEGF」という用語は、それらの天然に存在するアレル形態及び加工形態とともに、Leung et al.Science 246:1306,1989、及びHouck et al.Mol.Endocrin.5:1806,1991によって記載される、165個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、ならびに関係する121、189、及び206個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子を指す。「VEGF」という用語はまた、マウス、ラットまたは霊長類などの非ヒト種に由来するVEGFも指す。特定の種に由来するVEGFは、ヒトVEGFではhVEGF、及びマウスVEGFではmVEGFなどの用語によって示されることがある。「VEGF」という用語はまた、165個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含む、ポリペプチドの切断型形態を指すためにも使用される。任意のそのような形態のVEGFへの言及は、本出願において、例えば、「VEGF109」、「VEGF(8〜109)」、「VEGF(1〜109)」または「VEGF165」によって特定することができる。「切断型」天然VEGFのアミノ酸位置は、天然VEGF配列に示されるように付番される。例えば、切断型天然VEGFでのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然VEGFでも位置17(メチオニン)である。切断型天然VEGFは、KDR及びFlt−1受容体に対して、天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「VEGFバリアント」という用語は、天然VEGF配列中に1つ以上のアミノ酸変異を含むVEGFポリペプチドを指す。任意で、この1つ以上のアミノ酸変異は、アミノ酸置換(複数可)を含む。本明細書に記載されるVEGFバリアントを簡潔に表記する目的で、番号は、(Leungら(上記)及びHouckら(上記)に提供される)推定上の天然VEGFのアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基の位置を指すことに留意されたい。別段明記されない限り、本明細書で使用される場合、「VEGF」という用語は、VEGF−Aを示す。
「抗VEGF抗体」、「VEGFに結合する抗体」、及び「VEGFに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体が診断的及び/または治療的薬剤としてVEGFを標的とする上で有用であるような十分な親和性で、VEGFに結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗VEGF抗体の無関係の非VEGFタンパク質への結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定して、この抗体のVEGFへの結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、VEGFに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10−8M以下、例えば、10−8M〜10−13M、例えば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗VEGF抗体は、異なる種に由来するVEGF間で保存されるVEGFのエピトープに結合する。
抗VEGF抗体の非限定的な例としては、例えば、非限定的に、「rhuMAb VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BVまたはBev)」が挙げられ、これは、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599(1997)に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。ベバシズマブは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFのその受容体への結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する抗原結合性の相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域のほとんどを含む、ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%がヒトIgG1に由来し、配列の約7%がマウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、約149,000ダルトンの分子質量を有し、グリコシル化されている。他の例示的な抗VEGF抗体としては、例えば、米国特許第6,884,879号及びWO2005/044853に記載される抗体が挙げられる。更なる一例としては、ヒト化、親和性成熟抗ヒトVEGF Fab断片である、抗VEGF抗体ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)抗体またはrhuFab V2)が挙げられる。ラニビズマブは、E.coli発現ベクターにおける標準的な組み換え技法及び細菌発酵によって産生される。ラニビズマブはグリコシル化されておらず、約48,000ダルトンの分子質量を有する。WO1998/45331及びUS2003/0190317を参照されたい。
本明細書で使用される場合、「投与する」とは、ある投薬量の化合物(例えば、本発明の抗体もしくは本発明の抗体をコードする核酸)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、本発明の抗体を含む薬学的組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に利用される組成物は、例えば、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に(percutaneously)、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に(intraprostatically)、硝子体内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜的に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、吸入によって、注射によって、埋め込みによって、注入によって、持続注入によって、標的細胞を直接浸す局所灌流によって、カテーテルによって、洗浄によって、クレーム中で、または脂質組成物中で投与することができる。本明細書に記載される方法において利用される組成物はまた、全身的または局所的にも投与することができる。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、ならびに治療される病態、疾患、または障害の重症度)によって異なり得る。
「血管形成」とは、既存の血管から新たな血管が形成されるプロセスを指す。血管形成は、中胚葉細胞前駆体からの新規の内皮細胞の形成である脈管形成とは異なる。病理学的血管形成に関連付けられる障害を、本発明の組成物及び方法によって治療することができる。これらの障害は、非腫瘍性障害及び増殖性障害の両方を含む。細胞増殖性障害としては、以下に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。非腫瘍性障害としては、眼球病態(非限定的な眼球病態としては、例えば、増殖性糖尿病網膜症を含む網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態を含む)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)、コーツ病、ノリエ病骨粗鬆症・偽神経膠腫症候群(OPPG)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症が挙げられる)、所望されないもしくは異常な肥大化、関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、乾癬、乾癬プラーク、サルコイドーシス、アテローム動脈硬化症、アテローム性プラーク、血管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺傷害/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性肺滲出、脳浮腫(例えば、急性脳卒中/閉鎖性頭部外傷/外傷に関連付けられるもの)、滑膜炎症、リウマチ性関節炎におけるパンヌス形式、骨化性筋炎、肥大(hypertropic)骨形成、変形性関節症(OA)、難治性腹水、多嚢胞性卵巣病、子宮内膜症、細胞外液疾患(3rd spacing of fluid disease)(膵炎、コンパートメント症候群、熱傷、腸疾患)、子宮筋腫、早期分娩、IBD(クローン病及び潰瘍性大腸炎)などの慢性炎症、腎同種移植片拒否、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、所望されないもしくは異常な組織腫瘤成長(非癌性)、血友病性関節、肥厚性瘢痕、発毛阻害、オスラー・ランデュ症候群、化膿性肉芽腫後水晶体線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、妊娠高血圧腎症、腹水症、心膜液貯留(心膜炎に関連付けられるものなど)、ならびに胸水貯留が挙げられるが、これらに限定されない。
「抗血管形成剤」または「血管形成阻害剤」とは、直接的または間接的のいずれかで、血管形成、脈管形成、または望ましくない血管透過性を阻害する、少分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはそれらの複合体もしくは融合タンパク質を指す。抗血管形成剤は、血管形成因子またはその受容体に結合し、その血管形成活性を遮断する薬剤を含むであることを理解されたい。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義される血管形成剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF−Aに対する抗体またはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体もしくはFlt−1受容体)に対する抗体、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩)などの抗PDGFR阻害剤である。抗血管形成剤はまた、天然の血管形成阻害剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども含む。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991)、Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管形成療法を列挙する表3)、Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999)、Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、既知の抗血管形成因子を列挙する表2)、及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば、表1は、臨床治験において使用される抗血管形成剤を列挙する)を参照されたい。
「喘息」とは、気道炎症、応答性亢進及び閉塞症を伴い得る慢性肺疾患を指す。生理学的には、気道応答性亢進は、メタコリンまたはヒスタミンによる気管支誘発後の気管支気流の低下によって実証される。アレルゲンによる気管支誘発は、素早い初期相免疫グロブリンE(IgE)媒介性の気管支気流の低下、その後、多くの患者において、4〜8時間の気管支気流の低下とともに遅延相IgE媒介性反応を誘導する。初期応答は、ヒスタミン、PGD2、ロイコトリエン、トリプターゼ及び血小板活性化因子(PAF)などの炎症性物質の急性的放出によって引き起こされる一方で、遅延応答は、新規の合成炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFα、IL−4、IL−13)ならびにケモカイン(例えば、MCP−1及びMIP−1α)(Busse et al.Allergy:Principles and Practice,Ed.Middleston,1173,1998)によって引き起こされる。慢性喘息患者において、持続的な肺症状は、Th2細胞の応答の高まりによって媒介される。Th2サイトカイン、特に、齧歯類の喘息モデル(Akbari et al.Nature Med.,9:582,2003)において示される、気道内のNK表現型(NKT)を有するTh2細胞によって産生されるIL−13及びIL−4は、この疾患において重要な役割を果たすと考えられる(Larche et al.J.Allergy Clin.Immunol.111:450,2003)。喘息気道の肉眼所見は、肺の高度膨脹、平滑筋肥大、網状板肥厚、粘膜浮腫、上皮細胞脱落、繊毛細胞破壊、及び粘液腺分泌過多を提示する。顕微鏡的には、喘息は、気管支組織、気管支分泌物、及び粘液中の好酸球、好中球、リンパ球、及び形質細胞の数の増加の存在を特徴とする。最初に、活性化されたCD4+Tリンパ球による、血流から気道への白血球の動員が存在する。活性化されたTリンパ球はまた、好酸球、マスト細胞、及びリンパ球からの炎症性メディエーターの放出も指向する。加えて、Th2細胞は、IL−4、IL−5、IL−9、及びIL−13を産生する。IL−13と併せて、IL−4は、IgM抗体からIgE抗体への切り換えをシグナルする。
「癌」及び「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的病態を指すか、または記載する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(消化管癌及び消化管間質腫瘍を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌(kidney cancer)または腎癌(renal cancer)、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭頸部癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節型黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、及びメグス症候群に関連する異常な血管増殖が挙げられるが、これらに限定されない。
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連付けられる障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、癌である。
「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」という用語は、本明細書において言及される場合、相互排他的ではない。
本明細書で使用される場合、「腫瘍」は、悪性または良性に関わらず、全ての腫瘍性の細胞成長及び増殖、ならびに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。
「障害」とは、例えば、治療的抗体による治療により利益を得るであろうあらゆる病態である。いくつかの実施形態において、障害は、IL−13媒介性障害またはIgE媒介性障害であり得る。他の実施形態において、障害は、異常なもしくは病理学的な血管形成(例えば、過剰な、不適切な、もしくは制御されない血管形成)または血管透過性を伴い得る。障害は、慢性または急性であり得る。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミンを含む、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドレゼシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソ尿素類;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガIl(例えば、Nicolaou et al.Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)を参照されたい)などの抗生物質;経口アルファ−4インテグリン阻害剤であるCDP323;ダイネミシンAを含む、ダイネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D−99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝物;コンブレタスタチン;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhome−Poulene Rorer,Antony,France);クロランブシル(chloranbucil);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチンなどの白金製剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合の微小管形成を防止するビンカ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸などのレチノイド;クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)もしくはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、及び上皮成長因子受容体(EGF−R)などの、異常な細胞増殖に関連付けられるシグナル経路における遺伝子の発現を阻害するもの(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(商標)));ならびに細胞増殖を低減するVEGF−A;THERATOPE(登録商標)ワクチンなどのワクチン、及び遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、Bayer);SU−11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム(proteosome)阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI−779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl−2阻害剤;ピキサントロン;EGFR阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))などのセリン−チロシンキナーゼ阻害剤;ロナファーニブ(SCH6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびにシクロホスファミドと、ドキソルビシンと、ビンクリスチンと、プレドニゾロンとの併用療法の略称である、CHOP、ならびに5−FU及びロイコボリンと、上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体とを組み合わせた、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))による治療レジメンの略称である、FOLFOXなどの、上記のうちの2つ以上の組み合わせ;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
本明細書に定義される化学療法剤は、癌の成長を促進し得るホルモンの効果を制御、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療薬」を含む。それらは、それら自体がホルモンであってもよく、それらには、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4−ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)(SERM3など)を含む、混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン;フルベストラント(FASLODEX(登録商標))などのアゴニスト特性を有しない純粋な抗エストロゲン、及びEM800(そのような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断し得る、DNA結合を阻害し得る、ERターンオーバーを増加させ得る、かつ/またはERレベルを抑制し得る);ホルメスタン及びエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイド性アロマターゼ阻害剤、ならびにアナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))及びアミノグルテチミドなどの非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤、ならびに他のアロマターゼ阻害剤としては、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、及び4(5)−イミダゾールが挙げられる;リュープロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、及びトリプテレリン(tripterelin)を含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プロゲスチン(酢酸メゲストロール及び酢酸メドロキシプロゲステロンなど)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロール及びプレマリンなど)、ならびにアンドロゲン/レチノイド(フルオキシメステロン、全トランス型レチノイン酸及びフェンレチニドなど)を含む、性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御剤(ERD);フルタミド、ニルタミド及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「細胞毒性剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは防止する、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞毒性剤としては、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/またはバリアントを含む)などの毒素;ならびに本明細書に開示される様々な抗腫瘍剤または抗癌剤が挙げられるが、これらに限定されない。
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」とは、必要な投薬量及び期間で、所望される治療的または予防的結果を達成するために有効な量を指す。
本明細書で使用される場合、「成長阻害剤」とは、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期の細胞のパーセンテージを著しく低減するものであってもよい。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行を(S期以外の場所で)遮断する薬剤(G1停止及びM期停止を誘導する薬剤など)が挙げられる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤(ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなど)が挙げられる。G1を停止する薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、及びAra−CなどのDNAアルキル化剤はまた、S期停止にも波及する。更なる情報は、Mendelsohn et al.eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”by Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば、13頁に見出される。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、ともにイチイの木に由来する抗癌薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)のの半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体に由来する微小管の組み立てを促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定させ、これにより、細胞内の有糸***の阻害をもたらす。
本明細書で使用される場合、「IL−13媒介性障害」という用語は、IL−13によって媒介されるか、またはそれに関連する任意の障害または病態を指す。いくつかの実施形態において、IL−13媒介性障害は、体内の局所的及び/または全身的なIL−13のレベルまたは活性のために非定型症状が現れ得る、過剰なIL−13レベルまたは活性に関連付けられる。IL−13媒介性障害としては、例えば、アレルギー、喘息(アレルギー性喘息、アトピー性喘息、重症喘息、及び非アレルギー性(内因性)喘息を含む)、自己免疫性疾患(例えば、乾癬、リウマチ性関節炎、若年性関節リウマチ、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、または他の炎症性疾患が挙げられる。例えば、IL−13媒介性障害としては、アレルギー性鼻炎(例えば、季節性アレルギー性鼻炎)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、蕁麻疹、食物アレルギー、食物過敏症、腹腔疾患、免疫媒介性皮膚疾患(例えば、水疱性皮膚症、多形紅斑、接触性皮膚炎を含む)、線維症、肝線維症、心内膜心筋線維症、慢性気管支炎、気管支拡張症、特発性間質性肺炎、杯細胞化生、肺炎症障害、炎症性及び線維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む)、グルテン過敏性腸症、ウィップル病、肺の免疫疾患(例えば、好酸球性肺炎(例えば、慢性好酸球性肺炎)、特発性肺線維症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び過敏性肺炎を含む)、チャーグ・ストラウス症候群(結節性動脈周囲炎に加えてアトピー)、好酸球性筋肉痛症候群、好酸球増加症候群、浮腫反応(例えば、偶発性血管浮腫(angiodema)、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性腸炎及び好酸球性大腸炎を含む)、鼻マイクロポリープ症及びポリープ症、RSV感染症、ブドウ膜炎、強皮症、骨粗鬆症、及び(IL−13の異常な発現に関連付けられる癌及び腫瘍を含む)悪性腫瘍(例えば、ホジキンリンパ腫を含む)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「IgE媒介性障害」という用語は、IgEによって媒介されるか、またはそれに関連する任意の障害または病態を指す。例示的なIgE媒介性障害としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、またはアトピー性皮膚炎が挙げられる。
「単離された核酸」とは、その自然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその自然な染色***置とは異なる染色***置に存在する。
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物における、操作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な制御配列は、プロモーター、任意でオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが既知である。
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、互換的に使用され、一般に生体試料中のポリヌクレオチドまたはアミノ酸産物もしくはタンパク質の量を指す。「発現」とは一般に、遺伝子によってコードされた情報が細胞内に存在し作動する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本発明に従うと、遺伝子の「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳、または更にタンパク質の翻訳後修飾を指し得る。転写されたポリヌクレオチドの断片、翻訳されたタンパク質、または翻訳後修飾されたタンパク質はまた、それらが、代替的なスプライシングにより生成された転写物もしくは劣化した転写物に起源を持つか、または例えばタンパク質分解によるタンパク質の翻訳後処理に起源を持つかどうかに関わらず、発現されたとも見なさるべきである。「発現される遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドへと転写され、その後、タンパク質へと翻訳されるものと、またRNAへと転写されるがタンパク質へと翻訳されないもの(例えば、転移RNA及びリボソームRNA)とを含む。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞(そのような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、一次形質転換された細胞、及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸含有量において親細胞と完全に同一ではなくてもよいが、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、「操作可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結されており、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合に、その配列に操作可能に連結されており、あるいはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に操作可能に連結されている。一般に、「操作可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が近接していること、及び分泌リーダーの場合、近接しており、かつ読み取り相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、近接していなくてもよい。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、従来の慣例に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
本明細書において特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列し、必要に応じて間隙を導入して、最大の配列同一性パーセントを得た後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的での整列は、当該技術分野の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長に渡る最大の整列を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的で、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.によって作製され、そのソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)においてユーザ文書とともに出願されており、これは、米国著作権登録第TXU510087号の下、登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaを通して公的に利用可能である。ALIGN−2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用する場合にはコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定されており、変化しない。
ALIGN−2がアミノ酸配列比較に用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される。
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN−2によって、そのプログラムのA及びBの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解されるであろう。別段具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用して得られる。
本明細書に記載されるアミノ酸配列は、別段明記されない限り、隣接アミノ酸配列である。
「添付文書」という用語は、適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌についての情報及び/またはそのような治療薬製品の使用に関する警告を含有する、治療薬製品の商業的パッケージに習慣的に含まれる説明書を指すために使用される。
「薬学的組成物」という用語は、調製物中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるのを許容するような形態であり、かつその製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほどに有毒である追加の構成成分を含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本出願において使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、かつより活性な親形態へと酵素的に活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al.“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意で置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意で置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、より活性な細胞毒性を含まない薬物へと変換されてもよい。本発明において使用するためのプロドラッグ形態へと誘導体化され得る細胞毒性薬の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「低減または阻害する」とは、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、及び最も好ましくは75%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な低下を引き起こす能力を意味する。低減または阻害するは、治療されている障害の症状、転移の存在またはサイズ、原発腫瘍のサイズを指し得る。
「患者」、「対象」、または「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物としては、家畜動物(ウシ及びヒツジなど)、競技用動物、愛玩動物(ネコ、イヌ及びウマなど)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。
「治療有効量」という用語は、対象における疾患または障害を治療するための抗体または抗体断片の量を指す。IL−13媒介性障害の場合、治療有効量の抗体または抗体断片(例えば、抗IL−13抗体)は、疾患を寛解もしくは治療することができるか、またはその疾患に関連する症状を予防、低減、寛解、もしくは治療することができる。病理学的血管形成に関連する障害の場合、治療有効量の抗体または抗体断片(例えば、抗VEGF抗体)は、疾患を寛解もしくは治療することができるか、またはその疾患に関連する症状を予防、低減、寛解、もしくは治療することができる。増殖性疾患(例えば、固形腫瘍)の場合、治療有効量の抗体または抗体断片は、癌細胞の数の低減;原発腫瘍サイズの低減;末梢器官への癌細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;ならびに/またはその障害に関連する症状のうちの1つ以上のある程度の軽減を行うことができる。抗体または抗体断片が既存の癌細胞の成長の防止及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。癌療法について、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、無疾患生存期間(DFS)、無進行生存期間(PFS)、応答率(RR)、応答期間、及び/または生活の質を評価することによって測定され得る。
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変化形)とは、治療されている個体の自然経過を変更する試みの中での臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中のいずれかで実行することができる。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患のいずれかの直接的または間接的病理学的帰結の減少、転移の予防、疾患進行の速度の低下、病状の寛解または緩和、及び緩解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させるために使用される。
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。ベクターの別の種類は、ファージベクターである。ベクターの別の種類は、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムへとライゲーションされ得るウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自己複製することができる(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター、及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムへと統合され得、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが操作可能に連結された遺伝子の発現を指向することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」(または単純に「組み換えベクター」もしくは「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターはしばしば、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、互換的に使用され得る。
II.方法及び組成物
一態様において、本発明は一部には、結合ポリペプチドを含む細菌を特定する新規な方法、例えば、標識された抗原に結合する抗体を発現する細菌をスクリーニングする方法に基づく。本発明の方法は、例えば、例えば、改善された発現、安定性、及び/または親和性を有する抗体のスクリーニングに有用である。別の態様において、本発明は一部には、IL−13またはVEGFに結合する新規な抗体に基づく。本発明の抗IL−13抗体は、IL−13媒介性障害の診断及び/または治療に有用である。本明細書に記載される抗VEGF抗体は、例えば、病理学的血管形成に関連付けられる障害(例えば、癌)の診断及び/もしくは治療、ならびに/または血管透過性の阻害に有用である。
A.本発明の例示的な方法
本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含む細菌を特定する方法を提供する。本発明はまた、結合ポリペプチドの改善された発現を有する細菌を特定する方法も提供する。本発明はまた、改善された発現及び/または安定性を有する結合ポリペプチドを特定する方法も提供する。
例えば、いくつかの例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含む細菌を特定するための方法であって、以下のステップ、つまり、(a)約1kDa超(例えば、約1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、またはそれ以上)の分子量を有する分子に対して透過性である外膜を有する細菌を提供するステップであって、細菌が、候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、細菌は、ステップ(c)の後に生存可能のままである。いくつかの実施形態において、標的分子は、共有結合された標識を使用して標識される。他の実施形態において、標的分子は、非共有結合された標識を使用して標識される。
別の例では、いくつかの例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドの改善された発現を有する細菌を特定するための方法であって、以下のステップ、つまり、(a)約1kDa超(例えば、約1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、またはそれ以上)の分子量を有する分子に対して透過性である外膜を有する細菌を提供するステップであって、細菌が、結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドの改善された発現を有するものとして特定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、細菌は、ステップ(c)の後に生存可能のままである。いくつかの実施形態において、標的分子は、共有結合された標識を使用して標識される。他の実施形態において、標的分子は、非共有結合された標識を使用して標識される。
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの例では、本方法は、少なくとも1回、本方法のステップを繰り返すことを更に含む。例えば、本方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上、本方法のステップを繰り返すことを更に含み得る。いくつかの実施形態において、本方法の少なくとも1つのステップが繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、順次に少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップは、2回繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップは、3回繰り返される。いくつかの例では、以下のステップ、つまり、(a)約1kDa超(例えば、約1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、またはそれ以上)の分子量を有する分子に対して透過性である外膜を有する細菌を提供するステップであって、細菌が、候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとが繰り返される。いくつかの例では、本方法は、本方法のステップを繰り返す前に、成長培地中で細菌をインキュベートすることを更に含む。細菌成長培地の例としては、CRAP、SOC、Luria Broth(LB)、または当該技術分野において既知である任意の他の細菌培養培地が挙げられる。
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの例では、標的分子は、約500kDa未満(例えば、約約500kDa、約480kDa、約460kDa、約440kDa、約420kDa、約440kDa、約420kDa、約400kDa、約380kDa、約360kDa、約340kDa、約320kDa、約300kDa、約280kDa、約260kDa、約250kDa、約220kDa、約200kDa、約180kDa、約160kDa、約150kDa、約130kDa、約120kDa、約110kDa、約100kDa、約80kDa、約60kDa、約40kDa、または約20kDa未満)の分子量を有する。例示的な標的分子は、約1kDa〜約500kDa、約1kDa〜約400kDa、約1kDa〜約300kDa、約1kDa〜約250kDa、約1kDa〜約230kDa、約1kDa〜約220kDa、約1kDa〜約200kDa、約1kDa〜約180kDa、約1kDa〜約160kDa、約1kDa〜約140kDa、約1kDa〜約120kDa、約1kDa〜約100kDa、約1kDa〜約80kDa、約1kDa〜約60kDa、約1kDa〜約40kDa、約1kDa〜約20kDa、約1kDa〜約10kDa、約8kDa〜約500kDa、約8kDa〜約400kDa、約8kDa〜約300kDa、約8kDa〜約250kDa、約8kDa〜約220kDa、約8kDa〜約200kDa、約8kDa〜約180kDa、約8kDa〜約160kDa、約8kDa〜約140kDa、約8kDa〜約120kDa、約8kDa〜約100kDa、約8kDa〜約80kDa、約8kDa〜約60kDa、約8kDa〜約40kDa、または約8kDa〜約20kDaの範囲内の分子量を有する。
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの例では、標的分子は、約10kDa以上の分子量を有する。例えば、いくつかの実施形態において、標的分子は、約10kDa〜約700kDa、約10kDa〜約600kDa、約10kDa〜約500kDa、約10kDa〜約480kDa、約10kDa〜約470kDa、約10kDa〜約460kDa、約10kDa〜約450kDa、約10kDa〜約440kDa、約10kDa〜約430kDa、約10kDa〜約420kDa、約10kDa〜約410kDa、約10kDa〜約400kDa、約10kDa〜約390kDa、約10kDa〜約380kDa、約10kDa〜約370kDa、約10kDa〜約360kDa、約10kDa〜約350kDa、約10kDa〜約340kDa、約10kDa〜約330kDa、約10kDa〜約320kDa、約10kDa〜約310kDa、約10kDa〜約300kDa、約10kDa〜約290kDa、約10kDa〜約280kDa、約10kDa〜約270kDa、約10kDa〜約260kDa、約10kDa〜約250kDa、約10kDa〜約240kDa、約10kDa〜約230kDa、約10kDa〜約220kDa、約10kDa〜約210kDa、約10kDa〜約200kDa、約10kDa〜約190kDa、約10kDa〜約180kDa、約10kDa〜約170kDa、約10kDa〜約160kDa、約10kDa〜約150kDa、約10kDa〜約140kDa、約10kDa〜約130kDa、約10kDa〜約120kDa、約10kDa〜約110kDa、約10kDa〜約100kDa、約10kDa〜約90kDa、約10kDa〜約80kDa、約10kDa〜約70kDa、約10kDa〜約60kDa、約10kDa〜約50kDa、約10kDa〜約40kDa、約10kDa〜約30kDa、約10kDa〜約20kDa、または約10kDa〜約15kDaの範囲内の分子量を有する。
いくつかの例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含む細菌を特定するための方法であって、以下のステップ、つまり、(a)外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異を含む細菌を提供するステップであって、細菌が、候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとをが繰り返される。いくつかの実施形態において、細菌は、ステップ(c)の後に生存可能のままである。いくつかの例では、本方法は、ステップ(b)の前に、細菌を、細菌の外膜を透過化する条件に供することを更に含む。いくつかの例では、本方法は、細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させた後、細菌の外膜を再封着することを更に含む。
他の例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドの改善された発現を有する細菌を特定するための方法であって、以下のステップ、つまり、(a)外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異を含む細菌を提供するステップであって、細菌が、結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドの改善された発現を有するものとして特定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、細菌は、ステップ(c)の後に生存可能のままである。いくつかの例では、本方法は、ステップ(b)の前に、細菌を、細菌の外膜を透過化する条件に供することを更に含む。いくつかの例では、本方法は、細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させた後、細菌の外膜を再封着することを更に含む。
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの例では、本方法は、少なくとも1回、本方法のステップを繰り返すことを更に含む。例えば、本方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上、本方法のステップを繰り返すことを更に含み得る。いくつかの実施形態において、本方法の少なくとも1つのステップが繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、順次に少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップは、2回繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップは、3回繰り返される。いくつかの例では、以下のステップ、つまり、(a)外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異を含む細菌を提供するステップであって、細菌が、候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現し、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(c)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとをが繰り返される。いくつかの例では、本方法は、本方法のステップを繰り返す前に、成長培地中で細菌をインキュベートすることを更に含む。
他の例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含む細菌を特定するための方法であって、(a)候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現する細菌を提供するステップであって、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を、細菌の外膜を透過化する条件に供するステップと、(c)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(d)ステップ(c)の後に、細菌の外膜を再封着するステップと、(e)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの例では、細菌は、本方法のステップ(e)の後に生存可能のままである。
更に他の例では、本発明は、標的分子に特異的に結合する結合ポリペプチドの改善された発現を有する細菌を特定するための方法であって、(a)結合ポリペプチドをコードする核酸を発現する細菌を提供するステップであって、結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を、細菌の外膜を透過化する条件に供するステップと、(c)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(d)ステップ(c)の後に、細菌の外膜を再封着するステップと、(e)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドの改善された発現を有するものとして特定するステップとを含む、方法を提供する。いくつかの例では、細菌は、本方法のステップ(e)の後に生存可能のままである。
いくつかの例では、本方法は、少なくとも1回、本方法のステップを繰り返すことを更に含む。例えば、本方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上、本方法のステップを繰り返すことを更に含み得る。いくつかの実施形態において、本方法の少なくとも1つのステップが繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップの全てが、順次に少なくとも1回、繰り返されてもよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上繰り返される)。いくつかの例では、本方法のステップは、2回繰り返される。いくつかの例では、本方法のステップは、3回繰り返される。いくつかの例では、以下のステップ、つまり、(a)候補結合ポリペプチドをコードする核酸を発現する細菌を提供するステップであって、候補結合ポリペプチドが、細菌の周辺質内に存在する、ステップと、(b)細菌を、細菌の外膜を透過化する条件に供するステップと、(c)細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップと、(d)ステップ(c)の後に、細菌の外膜を再封着するステップと、(e)周辺質内の標識された標的分子の存在によって、細菌を、結合ポリペプチドを含むものとして特定するステップとが繰り返される。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、細菌は、少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、100倍、またはそれ以上だけ、結合ポリペプチドの改善された発現を有し得る。いくつかの例では、細菌は、1〜10倍の改善された発現、1〜7倍の改善された発現、1〜6倍の改善された発現、1〜5倍の改善された発現、1〜4倍の改善された発現、1〜3倍の改善された発現、2〜10倍の改善された発現、2〜8倍の改善された発現、または2〜6倍の改善された発現を有し得る。いくつかの実施形態において、改善は、野生型細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。他の実施形態において、改善は、変異体細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、細菌は、本方法のステップが実行された後に、生存可能のままである。いくつかの例では、細菌は、本方法のステップが実行された後に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20回、またはそれ以上、細胞***を受け得る。いくつかの例では、生存率は、生存率染色、例えば、SYTOX(登録商標)Green、ヨウ化プロピジウム、または当該技術分野において既知である他の生存率染色を使用して測定される。いくつかの例では、生存率は、Life TechnologiesのLIVE/DEAD(登録商標)細胞生存率アッセイなどの生/死染色キットを使用して測定される。いくつかの例では、生存率は、細菌を細菌培地プレート上にプレーティングすることによって測定される。いくつかの例では、細菌培地プレート上にプレーティングした後、生存可能細胞は、コロニーを生じさせるであろう。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、細菌は、外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異を含み得る。外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にし得る変異(場合によっては、「周辺質漏出性」または「lky変異体」とも呼ばれることがある)は、例えば、Hancock,Ann.Rev.Microbiol.38:237−264,1984に記載され、これらには、外膜内のリポ多糖(LPS)組成に影響を与え得る、E.coli及びS.typhimuriumのディープラフ型(ヘプトース欠損)変異体(例えば、rfaD、rfaE、rfaH、及びrfaRd)、env変異体(例えば、envA、envB、envM−T)、ならびにE.coliにおけるコリシン耐性変異体(例えば、tolC及びtolA,B)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、変異は、外膜タンパク質及び/またはリポ多糖(LPS)組成に影響を与えるタンパク質をコードする遺伝子中にある。いくつかの例では、変異は、外膜タンパク質、例えば、主要外膜リポタンパク質Lpp(Lpp)、ポリン、またはTolCをコードする遺伝子中にある。いくつかの例では、外膜タンパク質は、Lppである。Lppをコードする遺伝子中の任意の好適な変異を、使用することができる。例示的なlpp変異としては、lpp−1;lpp−21;lpp−3;lpp5508;lpp−6;lpp::Tn5KAN−2;lppD70E、G、もしくはS;lppK75SもしくはT;lppK78R;lppR77DもしくはL;lppS22D;lppY76C、D、E、G、N、P、もしくはS;lppY76F、H、I、もしくはL;Δlpp、Δlpp−254、及びΔlpp−752::kan、または本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなlpp変異は、例えば、CGSC(The Coli Genetic Stock Center)などの貯蔵所から取得することができる。他の例では、Lppをコードする遺伝子中の変異は、標準的な遺伝学アプローチを使用して作製することができる。いくつかの実施形態において、変異は、LPS組成に影響を与えるタンパク質、例えば、Envタンパク質(例えば、EnvA、EnvB、及びEnvM)、RfaD、RfaE、RfaH、RfaRd、TolA、TolB、ならびにTolDをコードする遺伝子中にある。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、本方法は、細菌を、外膜を透過化する条件に供することを含み得る。いくつかの例では、外膜を透過化する条件は、細菌を透過化剤で処理することを含む。いくつかの例では、透過化剤は、キレート剤(二価カチオンキレート剤(例えば、EDTA、BAPTA、及びEGTA)を含む)、NaCl、スクロース、抗生物質(例えば、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン及びゲンタマイシン)、ポリミキシンB、脱アシル化ポリミキシン、オクタペプチン、及びベンジルペニシリン)、洗剤、リゾチーム、トリス、トリス−EDTA、アスコルベート、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、プロタミン、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、血清及び/もしくは補体、Ca2+、またはこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、透過化剤は、キレート剤を含む。いくつかの例では、キレート剤は、二価カチオンキレート剤(例えば、EDTA、BAPTA、及びEGTAを含む)である。いくつかの実施形態において、二価カチオンキレート剤は、EDTAである。いくつかの例では、キレート剤、例えば、EDTAの濃度は、約1μM〜約15mMの間、例えば、約1μM、10μM、100μM、500μM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、または15mMである。いくつかの例では、EDTAの濃度は、5mMである。いくつかの例では、透過化剤は、緩衝剤、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)を更に含む。いくつかの例では、透過化剤は、ウシ血清アルブミンを更に含む。いくつかの例では、BSAは、1重量体積%〜約10重量体積%の間、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%で存在する。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、本方法は、細菌の外膜を再封着することを含み得る。外膜は、完全に再封着されてもよいが、完全に再封着される必要はない。本発明の方法にとって、細胞生存率を可能にするレベルまでの部分的な再封着が十分である。いくつかの例では、基準または野生型細菌外膜(例えば、E.coli 62A7細胞の外膜)と比較して、膜透過性障壁が50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%以内まで回復される場合、外膜は再封着される。いくつかの例では、細菌の外膜を実質的に再封着することは、細菌を、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Na+、及びK+などの塩、例えば、SO4 2−、F−、Cl2 −、SO3 2−、及びPO4 3−などのアニオンを有する前述のカチオンの塩と接触させることを含む。いくつかの例では、細菌の外膜を実質的に再封着することは、細菌を、MgCl2と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、MgCl2の濃度は、約1mM〜約50mMの間、例えば、約1mM、2mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mMである。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させるステップは、細菌を核酸色素と接触させることを更に含み得る。いくつかの例では、核酸色素は、Hoechst 33342(Hoechst染色とも呼ばれる)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、SYTO(登録商標)9、SYTO(登録商標)11、SYTO(登録商標)12、SYTO(登録商標)13、SYTO(登録商標)14、SYTO(登録商標)15、SYTO(登録商標)16、SYTO(登録商標)17、SYTO(登録商標)41、SYTO(登録商標)43、SYTO(登録商標)42、SYTO(登録商標)44、SYTO(登録商標)40、SYTO(登録商標)45、SYTO(登録商標)59、SYTO(登録商標)60、SYTO(登録商標)61、SYTO(登録商標)62、及びSYTO(登録商標)63、SYTO(登録商標)64からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも約60%(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上)の効率で細菌細胞を染色する核酸色素が使用される。いくつかの実施形態において、少なくとも約85%の効率で細菌細胞を染色する核酸色素が使用される。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、検出可能に標識された標的分子は、蛍光標識(フルオロフォアとも呼ばれる)を含み得る。いくつかの実施形態において、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))検出と適合する任意の蛍光標識が使用され得る。例えば、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))による選別を可能にする量子収率を有する任意の蛍光標識が使用され得る。いくつかの例では、蛍光標識は、蛍光色素または蛍光ポリペプチドを含む。様々な蛍光標識が、様々な販売業者、例えば、Life Technologiesから市販されている。蛍光標識は、その励起及び発光プロファイルに基づいて選択され得る。
使用することができる蛍光色素の非限定的な例としては、ALEXA(登録商標)色素(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)514、ALEXA FLUOR(登録商標)532、ALEXA FLUOR(登録商標)555、ALEXA FLUOR(登録商標)546、ALEXA FLUOR(登録商標)568、ALEXA FLUOR(登録商標)594、ALEXA FLUOR(登録商標)610、ALEXA FLUOR(登録商標)633、ALEXA FLUOR(登録商標)647、ALEXA FLUOR(登録商標)660、ALEXA FLUOR(登録商標)680、ALEXA FLUOR(登録商標)700、ALEXA FLUOR(登録商標)750、及びALEXA FLUOR(登録商標)790)、DYLIGHT(登録商標)色素(例えば、DYLIGHT(登録商標)350、DYLIGHT(登録商標)405、DYLIGHT(登録商標)488、DYLIGHT(登録商標)550、DYLIGHT(登録商標)594、DYLIGHT(登録商標)633、DYLIGHT(登録商標)650、DYLIGHT(登録商標)680、DYLIGHT(登録商標)755、及びDYLIGHT(登録商標)800)、シアニン色素(例えば、CY(登録商標)2、CY(登録商標)3、及びCY(登録商標)5)、BODIPY、TEXAS RED(登録商標)、フルオレセイン及びその誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、FITC)、ならびにローダミン及びその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン、TRITC)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、蛍光色素は、ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)647、及びDYLIGHT(登録商標)649からなる群から選択される
使用することができる例示的な蛍光ポリペプチドとしては、青色/UV蛍光タンパク質(TagBFP、mTagBFP2、Azurite、EBFP2、mKalama1、Sirius、Sapphire、及びT−Sapphireを含む)、シアン色蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、SCFP3A、mTurquoise、mTurquoise2、モノマーMidoriishi−Cyan、TagCFP、及びmTFP1)、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、EGFP、Emerald、Superfolder GFP、モノマーAzami Green、TagGFP2、mUKG、mWasabi、Clover、及びmNeonGreen)、黄色蛍光タンパク質(例えば、EYFP、Citrine、Venus、SYFP2、及びTagYFP)、橙色蛍光タンパク質(例えば、モノマーKusabira−Orange、mKOk、mKO2、mOrange、及びmOrange2)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、RFP、TagRFP、TagRFP−T、mApple、mRuby、及びmRuby2)、遠赤色蛍光タンパク質(例えば、mPlum、HcRed−Tandem、mKate2、mNeptune、NirFP)、光活性化可能蛍光タンパク質(例えば、PA−GFP、PAmCherry1、及びPATagRFP)、ならびに光変換可能蛍光タンパク質(例えば、Kaede、KikGR1、PS−CFP2、mEos2、mEos3.2、及びpSmOrange)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、細菌は、約4℃〜約25℃(例えば、約4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、12℃、14℃、16℃、18℃、20℃、22℃、24℃、または25℃)の温度で、検出可能に標識された標的分子と接触させられる。いくつかの実施形態において、温度は、約4℃である。
前述の方法のうちのいずれも、細菌を洗浄緩衝液中に再懸濁させることを伴う、少なくとも1回の洗浄ステップ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回の洗浄ステップ)を更に含み得る。いくつかの例では、少なくとも1回の洗浄ステップは、細菌を検出可能に標識された標的分子と接触させた後に実行される。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、緩衝剤、例えば、PBSを含む。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、リン酸緩衝食塩水を含む。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、MgCl2を更に含む。いくつかの例では、洗浄緩衝液は、1mM〜50mMのMgCl2(例えば、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、30mM、40mM、または50mMのMgCl2を含む。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、選択ステップは、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))を更に含み得る。いくつかの例では、フローサイトメトリーは、単細胞を選別すること、及び検出可能に標識された標的分子のシグナルに基づいて選別することを含む。いくつかの例では、フローサイトメトリーは、核酸色素のシグナルに基づいて選別することを含む。いくつかの例では、フローサイトメトリーは、順次に、(i)核酸色素のシグナルに基づいて選別することと、(ii)単細胞を選別することと、(iii)検出可能に標識された標的分子のシグナルに基づいて選別することとを含む。いくつかの実施形態において、細胞は、約1×105〜約1×1012個の細胞/mlの間、例えば、約1×105個の細胞/ml、約1×106個の細胞/ml、約1×107個の細胞/ml、約1×108個の細胞/ml、約1×109個の細胞/ml、約1×1010個の細胞/ml、約1×1011個の細胞/ml、または約1×1012個の細胞/mlの濃度である。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、細菌は、内膜、周辺質、及び外膜を含む細菌であり得る。いくつかの実施形態において、細菌は、グラム陰性菌である。例えば、いくつかの例では、細菌は、E.coliである。E.coliの任意の好適な株または遺伝的背景を使用することができる。一般的に使用されるE.coliの株及び遺伝的背景は、当該技術分野において周知である例示的なE.coli株としては、K−12及びその亜株(例えば、Clifton野生型、W3110、及びDH5αEなど)、ならびにE.coli B及びその亜株(例えば、BL21及びBL21(DE3)など)などの実験室株が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、E.coliは、株62A7に由来する。いくつかの実施形態において、E.coliは、株33D3に由来する。いくつかの実施形態において、E.coliは、株66C4に由来する。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、細菌の周辺質内で可溶性形態で発現され得る。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、細菌の周辺質内で融合タンパク質として発現され得る。いくつかの例では、結合ポリペプチドは、内膜の外面に局所化するタンパク質またはその断片を有する融合タンパク質として発現される。追加のポリペプチド配列、例えば、リンカーポリペプチドが、融合タンパク質に添加され得ることが理解される。そのような融合タンパク質を使用して、結合ポリペプチドを内膜の外面にアンカーすることができる。いくつかの実施形態において、内膜リポタンパク質のリーダーペプチド及び最初の6個のアミノ酸(例えば、NlpA)が、融合タンパク質中に含まれてもよい。そのような融合タンパク質は、内膜の外面への結合ポリペプチドのN末端アンカーとしての役割を果たし得る。いくつかの例では、融合タンパク質は、Aas、AcrE(EnvC)、AmiC、AmiD、ArtM、AraH、ArtQ、BtuC、CheY、CysT、CysW、DppB、DppC、DsbB、DsbD、ExbD、ExbB、FecC、FecD、FecR、FepD、FhuB、GlnP、HisM、HisQ、LacY、リポタンパク質、LivH、LivM、LivA、LivE、MalF、MalG、MalC、MalD、MglC、ModB、NikB、NikC、NosY、OppB、ファージによってコードされたcelB、PhnM、PotB、PotC、PotH、PotI、ProW、PstA、PstC、K.pneumoniaeのプルラナーゼ、RbsC、SecY、TatC、TraB TolC、TonB、UgpA、またはUgpEから選択される内膜タンパク質もしくはその断片を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置2にシグナル配列及びアスパラギン酸を含む、任意のリポタンパク質またはその断片(野生型タンパク質で存在するか、変異原性(例えば、部位指向変異原性によって添加されるかのいずれかである)が、融合タンパク質中に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、任意の細胞質タンパク質の一回膜貫通ループが、膜アンカーとして使用されてもよい。融合タンパク質は、N末端融合またはC末端融合であってもよい。
いくつかの例では、細菌は、結合ポリペプチドに特異的に結合し得るドメインまたはその断片を含む内膜の外面に局所化する、融合タンパク質を発現する。例えば、結合ポリペプチドが抗体である場合、抗体結合ドメインまたはその断片が、上述の内膜タンパク質またはその断片を有する融合タンパク質中に含まれてもよい。いくつかの例では、抗体結合ドメインは、Aspergillus flavusのアレルゲンAsp fl1、Asp fl2、もしくはAsp fl3;S.aureus(spa)のFc−ガンマRI、Fc−ガンマRII、Fc−ガンマRII−a、Fc−ガンマRII−b、Fc−ガンマRII−c、FC−ガンマRIII、Fc−ガンマRIII−a、Fc−ガンマRIII−b、FcRn、MRPタンパク質;Streptococcus agalactiaeのタンパク質B;Streptococcus菌種G群(spg)のタンパク質G;Streptococcus pyogenesのタンパク質H;S.aureusのタンパク質sbiに由来し得る。いくつかの例では、ドメインは、S.aureusのタンパク質A(例えば、IgGのFc領域に結合するZZドメインに由来し得る。他の結合ポリペプチドについて、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン及び/または結合ポリペプチドに結合するエピトープタグが、融合タンパク質中に含まれてもよい。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、ステップ(a)は、複数の細菌を提供することを含んでもよく、細菌は、それぞれが候補結合ポリペプチドをコードする核酸のライブラリを含む。いくつかの例では、核酸のライブラリは、1つ以上の特定の位置のバリアントの配列を除いて、配列が実質的に同一、好ましくは同一であるポリペプチドをコードする2つ以上の核酸を含んでもよい。例えば、いくつかの例では、ライブラリは、基準結合ポリペプチドと比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、またはそれ以上)のアミノ酸残基変化を有する候補結合ポリペプチドバリアントをコードする複数の核酸を含む。
例えば、前述の方法のうちのいずれかにおいて、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、またはそれ以上)のアミノ酸残基変化を含む。アミノ酸残基変化は、抗体の任意の位置、例えば、VH及び/またはVL及び/または定常ドメインであってもよい。例えば、いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VH及び/またはVLのHVR及び/またはFR中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのHVR(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/もしくはHVR−H3)中、ならびに/またはFR(例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、及び/もしくはFR−H4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのHVR(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/またはHVR−H3)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのFR(例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、及び/またはFR−H4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。他の例では、候補抗体バリアントは、VLのHVR(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/もしくはHVR−L3)ならびに/またはFR(例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、及び/もしくはFR−L4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VLのHVR(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/またはHVR−L3)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VLのFR(例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、及び/もしくはFR−L4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。アミノ酸残基変化は、表面に曝露された残基または埋もれた残基中のものであってもよい。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VHまたはVLのFR中にアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ/または(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。例えば、いくつかの例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VHまたはVLのFR中にアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。いくつかの例では、天然に存在する抗体におけるアミノ酸残基変化は、体細胞超変異によるものである。
アミノ酸残基は、当該技術分野において既知である任意の方法を使用して、埋もれる(例えば、溶媒接触不可能)または表面に曝露される(例えば、溶媒接触可能)と予想及び/または決定され得る。例えば、アミノ酸残基は、当該技術分野において既知であるいくつかのアルゴリズムのうちのいずれかを使用して、埋もれると予想され得る。好ましくは、溶媒接触可能な位置は、抗体の三次元モデルの座標を使用して、好ましくはInsighfH Program(Accelrys,San Diego,CA)などのコンピュータプログラムを使用して、決定される。埋もれた位置はまた、当該技術分野において既知であるアルゴリズム(例えば、を使用して、予想することもできる(例えば、Lee et al.J.Mol.Biol.55:379,1971及びConnolly,J.Appl.Cryst.16:548,1983)。埋もれた位置の予想は、タンパク質モデル化にとって好適なソフトウェア、及び抗体から得られる三次元構造情報を使用して、実行することができる。これらの目的で利用することができるソフトウェアとしては、SYBYL Biopolymer Moduleソフトウェア(Tripos Associates)が挙げられる。一般に、アルゴリズム(プログラム)がユーザ入力サイズパラメータを必要とする場合、計算において使用されるプローブの「サイズ」は、半径約1.4オングストローム以下に設定される。加えて、埋もれた及び/または表面に曝露された領域、ならびにパーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用する面積法の決定は、Pacios,Comput.Chem.18(4):377−386,1994及びJ.Mol.Model.1:46−53,1995によって記載されている。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、ライブラリは、約2個の結合ポリペプチド〜約1014個以上の結合ポリペプチド(例えば、約2個、約5個、約10個、約15個、約20個、約40個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約200個、約500個、約103個、約104個、約105個、約106個、約107個、約108個、約109個、約1010個、約1011個、約1012個、約1013個、または約1014個の結合ポリペプチド)を含み得る。いくつかの例では、ライブラリは、約108個の結合ポリペプチドを含み得る。
前述の方法のうちのいずれも、周辺質内の標識された標的分子の量に基づいて、候補結合ポリペプチドを、増加した発現レベルを有するものとして特定するステップを含み得る。いくつかの例では、増加した発現レベルは、ウェスタンブロット、IHC、質量分析、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、または当該技術分野において既知である他の方法によって決定される。いくつかの例では、候補結合ポリペプチドは、基準または野生型結合ポリペプチドと比較して、1〜20倍の発現の増加、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍の発現の増加を有する。例えば、候補結合ポリペプチドは、1〜10倍の発現の増加、1〜7倍の発現の増加、1〜6倍の発現の増加、1〜5倍の発現の増加、1〜4倍の発現の増加、1〜3倍の発現の増加、2〜10倍の発現の増加、2〜8倍の発現の増加、または2〜6倍の発現の増加を有し得る。いくつかの実施形態において、候補結合ポリペプチドは、細菌(例えば、E.coli)細胞及び哺乳動物細胞の両方において増加した発現を有する。いくつかの実施形態において、増加は、野生型結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。他の実施形態において、増加は、バリアント結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。
前述の方法のうちのいずれかは、周辺質内の標識された標的分子の量に基づいて、候補結合ポリペプチドを、増加した安定性を有するものとして特定するステップを含み得る。いくつかの例では、増加した安定性は、示差走査蛍光定量、円二色性、分光測定、または当該技術分野において既知である他の方法によって決定される。いくつかの例では、候補結合ポリペプチドは、基準または野生型結合ポリペプチドと比較して、1℃〜20℃の間、例えば、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、または20℃の、増加した融解温度(Tm)を有する。いくつかの例では、候補結合ポリペプチドは、1℃〜10℃の間、1℃〜9℃の間、1℃〜8℃の間、1℃〜7℃の間、1℃〜6℃の間、1℃〜5℃の間、1℃〜4℃の間、1℃〜3℃の間、1℃〜2℃の間、2℃〜10℃の間、2℃〜9℃の間、2℃〜8℃の間、2℃〜7℃の間、2℃〜6℃の間、2℃〜5℃の間、2℃〜4℃の間、または2℃〜3℃の、増加したTmを有する。いくつかの実施形態において、候補結合ポリペプチドは、細菌(例えば、E.coli)細胞及び哺乳動物細胞の両方において増加した安定性を有する。いくつかの実施形態において、候補結合ポリペプチドは、増加した安定性及び増加した発現の両方を有する。いくつかの実施形態において、増加は、野生型結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。他の実施形態において、増加は、バリアント結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。
前述の方法のうちのいずれも、周辺質内の標識された標的分子の量に基づいて、候補結合ポリペプチドを、標的分子に対する増加した結合親和性を有するものとして特定するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、候補結合ポリペプチドは、基準結合ポリペプチドと比較して、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20倍の、標的分子に対する結合親和性の増加を有し得る。例えば、本方法は、参照抗体と比較して増加した親和性を有する抗体をスクリーニングすることを含み得る。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、抗体であってもよい。いくつかの例では、上記の方法のうちのいずれかの抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの例では、抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。他の例では、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、インタクトなIgG4抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。別の実施形態において、抗体は、半抗体、例えば、ノブ・イントゥ・ホール半抗体である。ノブ・イントゥ・ホール技術の説明については、例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい。前述の方法のうちのいずれかにおいて、抗体は、治療的抗体(例えば、中和抗体)であってもよい。
前述の方法のうちのいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、抗体模倣物、例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、またはモノボディであってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、周辺質に局所化する細菌タンパク質であってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、哺乳動物タンパク質であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、結合ポリペプチドは、細胞表面受容体、サイトカイン、または成長因子であってもよい。
前述の方法のうちのいずれも、選択ステップの後に、核酸を単離することを更に含み得る。いくつかの例では、本方法は、核酸の配列を決定することを更に含む。
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの態様において、細菌は、結合ポリペプチドの発現に影響を与える遺伝子、例えば、転写制御遺伝子に影響を与える変異を含み得る。いくつかの例では、ステップ(a)は、複数の細菌を提供することを含み、複数の細菌は、それぞれが転写制御遺伝子の変異体をコードする核酸のライブラリを含む。いくつかの例では、転写制御遺伝子は、転写開始因子、抗シグマ因子、RNAポリメラーゼサブユニット、または転写因子から選択される。いくつかの例では、転写開始因子は、シグマ因子である。いくつかの例では、シグマ因子は、RpoD(σ70)、RpoE(σ24)、RpoH(σ32)、RpoS(σ38)、RpoN(σ54)、RpoF(σ28)、及びFecI(σ19)からなる群から選択される。具体的な例では、シグマ因子は、RpoD(σ70)である。いくつかの例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、合成プラスミド上に存在する。他の例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、内在性細菌ゲノム中に存在する。いくつかの例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、エラープローンPCR変異原性、化学変異原性、転位変異原性、または標的化変異原性によるものである。具体的な例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、エラープローンPCR変異原性によるものである。
前述の方法のうちのいずれかを使用して、結合ポリペプチドの改善された発現を有する細菌を特定することができる。いくつかの例では、細菌は、少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、100倍、またはそれ以上だけ、結合ポリペプチドの改善された発現を有し得る。いくつかの例では、細菌は、1〜10倍の改善された発現、1〜7倍の改善された発現、1〜6倍の改善された発現、1〜5倍の改善された発現、1〜4倍の改善された発現、1〜3倍の改善された発現、2〜10倍の改善された発現、2〜8倍の改善された発現、または2〜6倍の改善された発現を有し得る。いくつかの実施形態において、改善は、野生型細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。他の実施形態において、改善は、変異体細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。
B.ライブラリ
本発明は、結合ポリペプチドをコードする複数の核酸を含むライブラリを提供する。例えば、いくつかの例では、ライブラリは、基準結合ポリペプチドと比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、またはそれ以上)のアミノ酸残基変化を有する候補結合ポリペプチドバリアントをコードする複数の核酸を含む。
候補結合ポリペプチドは、候補抗体バリアントであってもよい。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。他の例では、候補抗体バリアントは、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、インタクトなIgG4抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。別の実施形態において、候補抗体バリアントは、半抗体、例えば、ノブ・イントゥ・ホール半抗体である。前述の方法のうちのいずれかにおいて、候補抗体バリアントは、治療的抗体(例えば、中和抗体)であってもよい。
他の例では、候補結合ポリペプチドは、抗体模倣物、例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、またはモノボディであってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、周辺質に局所化する細菌タンパク質であってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、哺乳動物タンパク質であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、結合ポリペプチドは、細胞表面受容体、サイトカイン、または成長因子であってもよい。
いくつかの例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、1つ以上のアミノ酸残基変化(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、またはそれ以上)を含む。アミノ酸残基変化は、抗体の任意の位置、例えば、VH及び/またはVL及び/または定常ドメインであってもよい。例えば、いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VH及び/またはVLのHVR及び/またはFR中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのHVR(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/もしくはHVR−H3)中、ならびに/またはFR(例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、及び/もしくはFR−H4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのHVR(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/またはHVR−H3)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VHのFR(例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、及び/またはFR−H4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。他の例では、候補抗体バリアントは、VLのHVR(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/もしくはHVR−L3)ならびに/またはFR(例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、及び/もしくはFR−L4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VLのHVR(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/またはHVR−L3)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。いくつかの例では、候補抗体バリアントは、VLのFR(例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、及び/もしくはFR−L4)中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含む。アミノ酸残基変化は、表面に曝露された残基または埋もれた残基中のものであってもよい。
いくつかの例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VH及び/またはVLのFR中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ/または(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。いくつかの例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VH及び/またはVLのFR中に1つ以上のアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。いくつかの例では、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、1つのアミノ酸残基変化を含む。
例えば、いくつかの例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VHのFR(例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、またはFR−H4)中にアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。他の例では、ライブラリは、候補抗体バリアントをコードする複数の核酸を含んでもよく、各候補抗体バリアントは、参照抗体と比較して、VLのFR(例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、またはFR−L4)中にアミノ酸残基変化を含み、アミノ酸残基変化は、(a)参照抗体と同一の亜型を有する天然に存在する抗体において特定され、かつ(b)埋もれると予想されるアミノ酸残基中にある。いくつかの例では、天然に存在する抗体におけるアミノ酸残基変化は、体細胞超変異によるものである。
参照抗体と同一の亜型に属するVH及び/またはVLを有する天然に存在する抗体は、抗体データベース、例えば、Kabatデータベース、IMGT(登録商標)(国際免疫遺伝学情報システム)、Protein Data Bank(PDB)、V BASE、または当該技術分野において既知である他のものに容易に見出すことができる。
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、ライブラリは、約2個の結合ポリペプチド〜約1014個以上の結合ポリペプチド(例えば、約2〜約10個、約2〜約20個、約2〜約30個、約2〜約40個、約2〜約50個、約2〜約60個、約2〜約70個、約2〜約70個、約2〜約80個、約2〜約100個、約2〜約1014個、約2〜約1013個、約2〜約1012個、約2〜約1011個、約2〜約1010個、約2〜約109個、約2〜約108個、約20〜約108個、約30〜約108個、約40〜約108個、約50〜約108個、約60〜約108個、約70〜約108個、約80〜約108個、約90〜約108個、約100〜約108個、約200〜約108個の結合、約400〜約108個、約600〜約108個、約800〜約108個、約103〜約108個、約104〜約108個、約105〜約108個約106〜約108個、または約107〜約108個の結合ポリペプチド)を含み得る。いくつかの例では、ライブラリは、約108個の結合ポリペプチドを含み得る。
C.例示的な抗IL−13抗体
本発明は、IL−13に結合する単離された抗体を提供する。いくつかの例では、抗IL−13抗体は、(a)AYSVN(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)MIWGDGKIVYNSALKS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)DGYYPYAMDN(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号7〜9のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する、そ(れら)の1つ以上のバリアントとの組み合わせから選択される、少なくとも1つ、2つ、または3つのHVRを含み得る。
いくつかの例では、抗IL−13抗体は、1つ、2つ、3つ、または4つの以下の重鎖フレームワーク領域、つまり、(a)QVTLRQSGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLS(配列番号18)、QVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGLSLS(配列番号19)、QVTLRQSGPALVKPTQTLTLTCTVSGLSLS(配列番号20)、またはQVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLS(配列番号21)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WIRQPPGKALEWLA(配列番号22)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RLTISKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCAG(配列番号23)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGSLVTVSS(配列番号24)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを更に含み得る。
いくつかの例では、抗IL−13抗体は、(a)RASKSVDSYGNSFMH(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(b)LASNLES(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(c)QQNNEDPRT(配列番号12)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号10〜12のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する、そ(れら)の1つ以上のバリアントとの組み合わせから選択される、少なくとも1つ、2つ、または3つのHVRを更に含み得る。
いくつかの例では、抗IL−13抗体は、1つ、2つ、3つ、または4つの以下の軽鎖フレームワーク領域、つまり、(a)DIVLTQSPDSLSVSLGERATINC(配列番号13)またはDIVMTQSPDSLSVSLGERATINC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGGGTKVEIK(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを更に含み得る。
いくつかの例では、抗IL−13抗体は、(a)配列番号2〜5のうちのいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性)、またはその配列を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号1もしくは配列番号6と少なくとも90%の配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性)、またはその配列を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変(VL)ドメイン、あるいは(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの例では、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号6のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの例では、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
本発明の更なる一態様において、上記の実施形態のうちのいずれかに従う抗IL−13抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一実施形態において、抗IL−13抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。別の実施形態において、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、インタクトなIgG4抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。別の実施形態において、抗体は、半抗体、例えば、ノブ・イントゥ・ホール半抗体である。ノブ・イントゥ・ホール技術の説明については、例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい。
更なる一態様において、上記の実施形態のうちのいずれかに従う抗IL−13抗体は、以下の節1〜7に記載される特徴のうちのいずれかを、単独または組み合わせで組み込むことができる。
1.抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、≦1pM、または≦0.1pMの解離定数(KD)(例えば、10−6M以下、例えば、10−6M〜10−9M以下、例えば、10−9M〜10−13M以下)を有する。
一実施形態において、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態において、RIAは、対象となる抗体のFabバージョン及びその抗原によって実行される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識された抗原と平衡化し、その後、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.J.Mol.Biol.293:865−881,1999を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、後続して室温(約23℃)でPBS中2重量体積%のウシ血清アルブミンによって2〜5時間遮断する。非吸着プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[125I]−抗原を、対象となるFabの段階希釈(例えば、Presta et al.Cancer Res.57:4593−4599,1997における抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一貫)と混合する。その後、対象となるFabを一晩インキュベートするが、しかしながら、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。その後、この溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、1ウェル当たり150μlのシンチラント(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)で10分間計数する。20%以下の最大結合をもたらす各Fabの濃度を、競合的結合アッセイで使用するために選択する。
別の実施形態に従うと、KDは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイを、約10応答単位(RU)の固定化された抗原CM5チップで、25℃で実行する。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給者の説明書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)まで希釈してから、5μL/分の流量で注入して、約10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定について、Fabの2倍段階希釈(0.78nM〜500nM)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に0.05%ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)界面活性剤を含むもの(PBST)に、25℃で、約25μl/分の流速で注入する。会合速度(kオン)及び解離速度(kオフ)を、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることによって計算する。平衡解離定数(KD)を、kオフ/kオンの比率として計算する。例えば、Chen et al.(J.Mol.Biol.293:865−881,1999を参照されたい)。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M−1s−1を超える場合、オン速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)の増加または低下を測定する蛍光消光技術を使用することによって決定することができる。
2.抗体断片
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York),pp.269−315(1994)を参照されたく、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号もまた参照されたい。エピトープ残基に結合し、増加したインビボ半減期を有するサルベージ受容体を含むFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134,2003、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134,2003にも記載される。
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
抗体断片は、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質消化及び組み換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製することができる。
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855,1984)に記載される。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類(サルなど)に由来する可変領域)と、ヒト定常領域とを含む。更なる一例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、それらの抗原結合断片を含む。
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減しながら、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含むであろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換される。
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:1619−1633,2008に概説され、例えば、Riechmann et al.Nature 332:323−329,1988、Queen et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033,1989、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.Methods 36:25−34,2005(特異性決定領域(SDR)移植を記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498,1991(「リサーフェシング」を記載)、Dall’Acqua et al.Methods 36:43−60,2005(「FRシャッフリング」を記載)、ならびにOsbourn et al.Methods 36:61−68,2005及びKlimka et al.Br.J.Cancer,83:252−260,2000(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記載)に更に記載される。
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296,1993を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285,1992、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623,1993を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異型)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro et al.Front.Biosci.13:1619−1633,2008を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.J.Biol.Chem.272:10678−10684,1997及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611−22618,1996を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijk et al.Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74,2001及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459,2008に記載される。
ヒト抗体は、抗原投与に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されている遺伝子導入動物に免疫原を投与することによって、調製することができる。そのような動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに統合されるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。そのような遺伝子導入マウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。遺伝子導入動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117−1125,2005を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術を記載する、米国特許第5,770,429号、K−M MOUSE(登録商標)技術を記載する、米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する、米国特許出願公開第US2007/0061900号もまた、参照されたい。そのような動物によって生成されたインタクトな抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に修飾されてもよい。
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.133:3001,1984、Brodeur et al.Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.J.Immunol.147:86,1991を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562,2006にも記載される。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268,2006(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers et al.Histology and Histopathology 20(3):927−937,2005及びVollmers et al.Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(3):185−91,2005にも記載される。
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージ提示ライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても、生成することができる。その後、そのような可変ドメイン配列は、所望されるヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術が、以下に記載される。
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリを、所望される活性(複数可)を有する抗体についてスクリーニングすることによって、単離することができる。例えば、ファージ提示ライブラリを生成し、そのようなライブラリを、所望される結合特性を持つ抗体についてスクリーニングするための様々な方法が、当該技術分野において既知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCafferty et al.Nature 348:552−554,1990、Clackson et al.Nature 352:624−628,1991、Marks et al.J.Mol.Biol.222:581−597,1992、Marks et al.in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.J.Mol.Biol.338(2):299−310,2004、Lee et al.J.Mol.Biol.340(5):1073−1093,2004、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472,2004、及びLee et al.J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132,2004に更に記載される。
ある特定のファージ提示法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに組み換えられ、その後、これは、Winter et al.Ann.Rev.Immunol.,12:433−455,1994に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして提示する。免疫化源に由来するライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.EMBO J.12:725−734,1993に記載されるように、ナイーブレパートリーが(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化もなく幅広い非自己抗原及びまた自己抗原に対する抗体の単一源を提供することができる。最後に、Hoogenboom et al.J.Mol.Biol.,227:381−388,1992によって記載されるように、ナイーブライブラリはまた、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度可変HVR3領域をコードし、かつインビトロでの再配列を達成することによって合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
6.多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein et al.Nature 305:537,1983、WO93/08829、及びTraunecker et al.EMBO J.10:3655,1991を参照されたい)、ならびに「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、静電ステアリング効果を操作して、抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.Science,229:81,1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して、二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.J.Immunol.,148(5):1547−1553,1992を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して、二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993)、一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368,1994)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60,1991に記載される三重特異性抗体を調製することによっても作製することができる。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
本明細書の抗体または断片はまた、IL−13またはVEGF、及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
7.抗体バリアント
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、その抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。最終構築物に到達するために、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが作製され得るが、但し、最終構築物が所望される特徴、例えば、抗原結合、発現、及び/または安定性を持つことを条件とする。
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換型変異原性の対象となる部位としては、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換が「好ましい置換」という表題の下、表1に示される。より実質的な変化が「例示的な置換」という表題の下、表1に示され、これはアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される通りである。アミノ酸置換が対象となる抗体に導入され、産物が所望される活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を必要とするだろう。
置換バリアントの一種は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究ために選択される結果として生じるバリアント(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有するであろう。例示的な置換型バリアントは、親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージ提示に基づく親和性成熟技術を使用して、簡便に生成することができる。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基は変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)に対してスクリーニングされる。
変化(例えば、置換)がHVR中で行われて、例えば、抗体親和性を改善することができる。そのような変化が、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされた残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196,2008を参照されたい)及び/または抗原に接触する残基中で行われてもよく、結果として生じるバリアントVHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそれからの再選択による親和性成熟については、例えば、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異原性)のうちのいずれかによって、多様性が、成熟について選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリが作製される。その後、所望される親和性を有するあらゆる抗体バリアントを特定するために、ライブラリがスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6個の残基)がランダム化される、HVR指向アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニン走査変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に特定することができる。特に、HVR−H3及びHVR−L3がしばしば標的とされる。
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のHVR中で生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的変化(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてもよい。そのような変化は、例えば、HVR中の抗原に接触する残基の外部であってもよい。上記に提供されるバリアントVH配列及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、変更されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
変異原性のための標的とされ得る抗体の残基または領域を特定するための有用な方法は、Cunningham et al.Science 244:1081−1085,1989に記載される、「アラニンスキャニング変異原性」と呼ばれるものである。この方法において、残基または標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を特定し、それ(ら)を中性または負電荷のアミノ酸(例えば、Alaまたはポリアラニン)によって置換して、抗体と抗原との相互作用が影響されるかどうかを決定する。更なる置換が、最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされても、排除されてもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望される特性を含有するかどうかを決定することができる。
アミノ酸配列挿入としては、1残基長から、100以上の残基長の範囲を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのため)またはポリペプチドに対する抗体のN末端またはC末端への融合が挙げられる。
b)グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または低下させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって、簡便に達成することができる。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合された炭水化物が変更され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26−32,1997を参照されたい。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖類構造の「幹」においてGlcNAcに結合されたフコースを挙げることができる。いくつかの実施形態において、ある特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるMALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合された全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内の位置約297(Fc領域残基のEu付番)に位置するアスパラギン残基を指すが、しかしながら、Asn297はまた、抗体内のわずかな配列変化のため、位置297から約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、位置294と位置300との間にも位置し得る。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号及び同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する公報の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239−1249,2004、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545,1986、US2003/0157108、及びWO2004/056312A1、特に実施例11)、ならびにアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004、Kanda et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680−688,2006、及びWO2003/085107)が挙げられる。
例えば、抗体のFc領域に結合された二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される、二分オリゴ糖を有する抗体バリアントが、更に提供される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載される。Fc領域に結合されたオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた、提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載される。
c)Fc領域バリアント
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
ある特定の実施形態において、本発明は、いくつかではあるが全てではないエフェクター機能を持つことにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFc(RIIIのみを発現する一方で、単球はFc(RI、Fc(RII及びFc(RIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch et al.Annu.Rev.Immunol.9:457−492,1991の464頁の表3にまとめられている。対象となる分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059−7063,1986及びHellstrom et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499−1502,1985を参照されたい、米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al.J.Exp.Med.166:1351−1361,1987を参照されたい)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ方法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652−656,1998に開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価され得る。C1q結合アッセイもまた実行して、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認することができる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実行してもよい(例えば、Gazzano−Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163,1996、Cragg et al.Blood 101:1045−1052,2003、及びCragg et al.Blood 103:2738−2743,2004を参照されたい)。当該技術分野において既知である方法を使用して、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定を実行することもできる(例えば、Petkova et al.Intl.Immunol.18(12):1759−1769,2006を参照されたい)。
低減されたエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上で置換を有するFc変異体(例えば、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む)が挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
FcRへの改善または減少された結合を有する特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591−6604,2001を参照されたい)。
ある特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/または334(残基のEU付番)での置換を有するFc領域を含む。
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184,2000に記載される、変更された(すなわち、改善または減少のいずれかがされた)C1q結合及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす変化が、Fc領域内で行われる。
増加した半減期を有し、かつ母体IgGの胎児への転移を担う(Guyer et al.J.Immunol.117:587,1976及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994)胎児性Fc受容体(FcRn)に対する改善された結合を有する抗体が、US2005/0014934に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域をそこに含む。そのようなFcバリアントは、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものを含む。
Fc領域バリアントの他の例に関する、Duncan et al.Nature 322:738−40,1988、米国特許第5,648,260号及び同第5,624,821号、ならびにWO94/29351もまた、参照されたい。
d)システイン操作された抗体バリアント
ある特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「チオMAb」を作製することが望ましくあり得る。ある特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の接触可能部位において生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基がそれにより抗体の接触可能部位に配置され、それらを使用して、薬物部分またはリンカー−薬物部分などの他の部分に抗体を複合体化して、本明細書に更に記載される免疫複合体を作製することができる。ある特定の実施形態において、以下の残基のうちのいずれか1つ以上が、システインで置換され得る。軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成することができる。
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野において既知であり、かつ容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合されたポリマーの数は変化し得、2つ以上のポリマーが結合される場合、それらは同一の分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の具体的な特性または機能、抗体の誘導体が定義される条件下で療法において使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮に基づいて決定され得る。
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600−11605,2005)。放射線は、任意の波長のものであってもよく、通常の細胞には害がないが、非タンパク質性部分を、抗体−非タンパク質性部分に近位の細胞を殺滅する温度まで加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
D.組み換え方法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態において、本明細書に記載される抗IL−13抗体をコードする単離された核酸が提供される。別の実施形態において、本明細書に記載される抗VEGF抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。更なる一実施形態において、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる一実施形態において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、293細胞、またはリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗IL−13抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上記に提供される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、その抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意で、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
抗IL−13抗体または抗VEGF抗体の組み換え産生について、例えば、上述の抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞中での更なるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクターに挿入される。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現のための好適な宿主細胞は、本明細書に記載される原核生物細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌内で産生され得る。細菌内での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coliにおける抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254もまた参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株を含む。Gerngross Nat.Biotech.22:1409−1414,2004及びLi et al.Nat.Biotech.24:210−215,2006を参照されたい。
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも導出される。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(遺伝子導入植物中で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)を参照されたい。
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.J.Gen Virol.36:59,1977に記載される、293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather Biol.Reprod.23:243−251,1980に記載される、TM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス***腫瘍(MMT060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68,1982に記載される、TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR−チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980)を含む、CHO細胞、ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki et al.Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268,2003を参照されたい。
E.アッセイ
本明細書に記載される抗体(例えば、抗IL−13抗体または抗VEGF抗体)のいずれも、当該技術分野において既知である様々なアッセイによって、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性について特定され、スクリーニングされ、または特徴付けられ得る。
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様において、本明細書に記載される抗体(例えば、抗IL−13抗体または抗VEGF抗体)のいずれも、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、その抗原結合活性について試験される。
別の態様において、競合アッセイを使用して、本発明の抗IL−13抗体とIL−13への結合について競合する抗体を特定することができる。別の態様において、競合アッセイを使用して、本明細書に記載される抗VEGF抗体とVEGFへの結合について競合する抗体を特定することができる。ある特定の実施形態において、そのような競合抗体は、本発明の抗IL−13抗体が結合するものと同一のエピトープ(例えば、線状または立体構造のエピトープ)に結合する。ある特定の実施形態において、そのような競合抗体は、本明細書に記載される抗VEGF抗体が結合するものと同一のエピトープ(例えば、線状または立体構造のエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための例示的な方法の詳細は、Morris“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology Vol.66(Humana Press,Totowa,NJ),1996に提供される。
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたIL−13が、IL−13に結合する第1の標識された抗体と、第1の抗体とIL−13への結合について競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中で、インキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたIL−13が、第1の標識された抗体は含むが第2の未標識抗体は含まない溶液中でインキュベートされる。IL−13への第1の抗体の結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化されたIL−13に会合した標識の量が測定される。固定化されたIL−13に会合した標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体が第1の抗体とIL−13への結合について競合していることを示す。Harlow et al.Antibodies:A Laboratory Manual Ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY),1988を参照されたい。
別の例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたVEGFが、VEGFに結合する第1の標識された抗体と、第1の抗体とVEGFへの結合について競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中で、インキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたVEGFが、第1の標識された抗体は含むが第2の未標識抗体は含まない溶液中でインキュベートされる。VEGFへの第1の抗体の結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化されたVEGFに会合した標識の量が測定される。固定化されたVEGFに会合した標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体が第1の抗体とVEGFへの結合について競合していることを示す。
2.活性アッセイ
一態様において、生物学的活性を有するその抗IL−13抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えば、インビボ、インビトロ(例えば、細菌の周辺質内に提示される)、またはエキソビボのいずれかでの、IL−13(例えば、血流中のIL−13)またはそのペプチド断片への結合を含み得る。他の実施形態において、生物学的活性は、IL−13の遮断もしくは中和、またはリガンド、例えば、受容体(例えば、インターロイキン−13受容体)へのIL−13の結合の防止を含み得る。インビボ及び/またはインビトロでそのような生物学的活性を有する抗体もまた、提供される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、そのような生物学的活性について試験される。
別の態様において、生物学的活性を有するその抗VEGF抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えば、インビボ、インビトロ(例えば、細菌の周辺質内に提示される)、またはエキソビボのいずれかでの、VEGF(例えば、血流中のVEGF)またはそのペプチド断片への結合を含み得る。他の実施形態において、生物学的活性は、VEGFの遮断もしくは中和、またはリガンド、例えば、受容体(例えば、Tie2、KDR、及び/またはFlt−1)へのVEGFの結合の防止を含み得る。インビボ及び/またはインビトロでそのような生物学的活性を有する抗体もまた、提供される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、そのような生物学的活性について試験される。
F.免疫複合体
本発明はまた、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位元素などの1つ以上の細胞毒性剤に複合体化された、本明細書に記載される抗体(例えば、抗IL−13抗体または抗VEGF抗体)のいずれかを含む、免疫複合体も提供する。
一実施形態において、免疫複合体は、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許EP0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296、Hinman et al.Cancer Res.53:3336−3342,1993、及びLode et al.Cancer Res.58:2925−2928,1998を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.Current Med.Chem.13:477−523,2006、Jeffrey et al.Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358−362,2006、Torgov et al.Bioconj.Chem.16:717−721,2005、Nagy et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829−834,2000、Dubowchik et al.Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529−1532,2002、King et al.J.Med.Chem.45:4336−4343,2002、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない、抗体が1つ以上の薬物に複合体化される、抗体−薬物複合体(ADC)である。
別の実施形態において、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシンタンパク質、ファイトラカアメリカナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセンを含むが、これらに限定されない、酵素活性毒素またはその断片に複合体化される、本明細書に記載される抗体を含む。
別の実施形態において、免疫複合体は、放射性原子に複合体化されて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。様々な放射性同位元素が、放射性複合体の産生のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素が挙げられる。放射性複合体が検出に使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、テクネチウム−99m(tc99m)もしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)撮像(磁気共鳴撮像mriとしても知られる)のためのスピン標識(ここでもヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンもしくは鉄など)を含み得る。
抗体と細胞毒性剤との複合体は、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、サクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.Science 238:1098,1987に記載されるように調製することができる。炭素−14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレンアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体に複合体化するための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内での細胞毒性薬の放出を促進する「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(例えば、Chari et al.Cancer Res.52:127−131,1992、米国特許第5,208,020号を参照されたい)が使用され得る。
本明細書のイムヌオ複合体(immunuoconjugate)またはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されているSVSB(サクシニミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これらに限定されない、架橋剤試薬で調製される複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
G.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗IL−13抗体のうちのいずれも、生体試料中のIL−13の存在を検出するのに有用である。本明細書で使用される場合、「検出すること」という用語は、定量的または定性的検出を包含する。ある特定の実施形態において、生体試料は、2型Tヘルパー(Th2)細胞、マスト細胞、B細胞、単球、マクロファージ、及び非造血細胞(平滑筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、もしくは線維芽細胞を含む)などの細胞または組織を含む。
一実施形態において、診断または検出の方法において使用するための抗IL−13抗体が提供される。更なる一態様において、生体試料中のIL−13の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、生体試料と本明細書に記載される抗IL−13抗体とを、抗IL−13抗体とIL−13との結合を許容する条件下で接触させること、及び抗IL−13抗体とIL−13との間に複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロまたはインビボの方法であり得る。一実施形態において、例えば、IL−13が患者の選択のためのバイオマーカーである場合に、抗IL−13抗体による療法に適した対象を選択するために、抗IL−13抗体が使用される。
本発明の抗IL−13を使用して診断され得る例示的な障害は、IL−13媒介性障害またはIgE媒介性障害を含む。いくつかの例では、IL−13媒介性障害は、例えば、アレルギー、喘息(例えば、アレルギー性喘息、アトピー喘息、重症喘息、及び非アレルギー性(内因性)喘息)、自己免疫性疾患(例えば、乾癬、リウマチ性関節炎、若年性関節リウマチ、ならびに炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、炎症性疾患、アレルギー性鼻炎(季節性アレルギー性鼻炎を含む)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、蕁麻疹、食物アレルギー、食物過敏症、腹腔疾患、免疫媒介性皮膚疾患(例えば、水疱性皮膚症、多形紅斑、接触性皮膚炎)、強皮症、線維症、肝線維症、心内膜心筋線維症、慢性気管支炎、気管支拡張症、特発性間質性肺炎、杯細胞化生、肺炎症障害、炎症性及び線維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD))、グルテン過敏性腸症、ウィップル病、肺の免疫疾患(例えば、好酸球性肺炎(慢性好酸球性肺炎を含む)、特発性肺線維症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び過敏性肺炎)、チャーグ・ストラウス症候群(結節性動脈周囲炎に加えてアトピー)、好酸球性筋肉痛症候群、好酸球増加症候群、浮腫反応(例えば、偶発性血管浮腫、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球胃腸炎、好酸球性腸炎及び好酸球大腸炎)、鼻マイクロポリープ症及びポリープ症、RSV感染症、ブドウ膜炎、骨粗鬆症、ならびにIL−13の異常な発現に関連付けられる癌及び腫瘍を含む悪性腫瘍(例えば、ホジキンリンパ腫)である。いくつかの実施形態において、障害は、アレルギー性喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、蕁麻疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染症、ブドウ膜炎、強皮症、または骨粗鬆症である。いくつかの例では、IgE媒介性障害は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、またはアトピー性皮膚炎である。
ある特定の実施形態において、本発明は、VEGFに関連する障害(例えば、VEGFの増加した発現)を診断する方法を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、試験細胞を本明細書に記載される抗VEGF抗体と接触させることと、VEGFへの抗VEGF抗体の結合を検出することによって、試験細胞によるVEGFの発現のレベルを(定量的または定性的のいずれかで)決定することと、試験細胞によるVEGFの発現のレベルを、対照細胞(例えば、試験細胞と同一の組織を起源とする正常な細胞、またはそのような正常な細胞に匹敵するレベルでVEGFを発現する細胞)によるVEGFの発現のレベルと比較することとを含み、対照細胞と比較して、試験細胞によるより高いレベルのVEGFの発現は、VEGFの増加した発現に関連する障害の存在を示す。ある特定の実施形態において、試験細胞は、VEGFの増加した発現に関連する障害を有することが疑われる個体から得られる。ある特定の実施形態において、この障害は、腫瘍、癌、及び/または細胞増殖性障害である。
本明細書に記載される抗VEGF抗体を使用して診断することができる例示的な障害としては、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)、消化管癌、消化管間質腫瘍、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌(kidney cancer)または腎癌(renal cancer)、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭頸部癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節型黒色腫、B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症に関連する異常な血管増殖、脳腫瘍に関連する浮腫、及びメグス症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
別の態様において、本発明は、生体試料中のVEGFの存在を検出する方法を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、生体試料と抗VEGF抗体とを、抗VEGF抗体とVEGFとの結合を許容する条件下で接触させること、及び抗VEGF抗体とVEGFとの間に複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。
抗VEGF抗体を使用して、いくつかの周知の検出アッセイ方法のうちのいずれか1つでVEGFを検出することができる。例えば、所望される源から試料を得、試料を抗VEGF抗体と混合して抗体が混合物中に存在する任意のVEGFと抗体/VEGF複合体を形成することを可能にし、混合物中に存在するあらゆる抗体/VEGF複合体を検出することによって、生体試料を、VEGFについてアッセイすることができる。特定の試料に好適な、当該技術分野において既知である方法によって、生体試料をアッセイのために調製することができる。試料を抗体と混合する方法及び抗体/VEGF複合体を検出する方法は、使用されるアッセイの種類に従って選択される。
標識された抗IL−13または抗VEGF抗体が、本明細書に記載される。標識としては、直接的に検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識など)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を通して非間接的に検出される酵素またはリガンドなどの部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な標識としては、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、フルオロフォア(希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体など)、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼなど)とカップリングした複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、ならびに安定フリーラジカルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
H.医薬製剤
本明細書に記載される抗体(例えば、抗IL−13または抗VEGF抗体)のいずれかの医薬製剤は、所望される程度の純度を有するそのような抗体を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980を参照されたい)と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに無毒であり、それらには、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む);EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法が、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水溶性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、ヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
本明細書の組成物はまた、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものも含有し得る。例えば、追加の治療剤(例えば、本明細書上記に引用されるものなどの、化学療法剤、細胞毒性剤、成長阻害剤、及び/または抗ホルモン剤)を更に提供することが望ましくあり得る。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量で、組み合わせで好適に存在する。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示される。
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
インビボ投与に使用される製剤は一般に、無菌のものである。無菌性は、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成することができる。
I.治療方法及び組成物
本明細書に記載される抗体(例えば、抗IL−13または抗VEGF抗体)のうちのいずれも、治療方法に使用することができる。
一態様において、医薬品として使用するための抗IL−13抗体が提供される。更なる態様において、IL−13媒介性障害の治療に使用するための抗IL−13抗体が提供される。ある特定の実施形態において、治療方法において使用するための抗IL−13抗体が提供される。ある特定の実施形態において、本発明は、IL−13媒介性障害を有する個体を治療する方法であって、有効量の抗IL−13抗体を個体に投与することを含む、方法において使用するための抗IL−13抗体を提供する。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記の実施形態のうちのいずれかに従う「個体」は、好ましくはヒトである。
更なる一態様において、本発明は、医薬品の製造または調製における抗IL−13抗体の使用を提供する。一実施形態において、医薬品は、IL−13媒介性障害の治療のためのものである。更なる一実施形態において、医薬品は、IL−13媒介性障害を治療する方法であって、IL−13媒介性障害を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、方法において使用するためのものである。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記の実施形態のうちのいずれかに従う「個体」は、好ましくはヒトであり得る。
更なる一態様において、本発明は、例えば、アレルギー、喘息(例えば、アレルギー性喘息、アトピー喘息、重症喘息、及び非アレルギー性(内因性)喘息)、自己免疫性疾患(例えば、乾癬、リウマチ性関節炎、若年性関節リウマチ、ならびに炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、炎症性疾患、アレルギー性鼻炎(季節性アレルギー性鼻炎を含む)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、蕁麻疹、食物アレルギー、食物過敏症、腹腔疾患、免疫媒介性皮膚疾患(例えば、水疱性皮膚症、多形紅斑、接触性皮膚炎)、強皮症、線維症、肝線維症、心内膜心筋線維症、慢性気管支炎、気管支拡張症、特発性間質性肺炎、杯細胞化生、肺炎症障害、炎症性及び線維性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD))、グルテン過敏性腸症、ウィップル病、肺の免疫疾患(例えば、好酸球性肺炎(慢性好酸球性肺炎を含む)、特発性肺線維症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び過敏性肺炎)、チャーグ・ストラウス症候群(結節性動脈周囲炎に加えてアトピー)、好酸球性筋肉痛症候群、好酸球増加症候群、浮腫反応(例えば、偶発性血管浮腫、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球胃腸炎、好酸球性腸炎及び好酸球大腸炎)、鼻マイクロポリープ症及びポリープ症、RSV感染症、ブドウ膜炎、骨粗鬆症、ならびにIL−13の異常な発現に関連付けられる癌及び腫瘍を含む悪性腫瘍(例えば、ホジキンリンパ腫)を含む、IL−13媒介性障害を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、障害は、アレルギー性喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、蕁麻疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染症、ブドウ膜炎、強皮症、または骨粗鬆症である。いくつかの実施形態において、本方法は、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記の実施形態のうちのいずれかに従う「個体」は、好ましくはヒトであり得る。
いくつかの例では、本発明は、喘息症状を患う患者を治療する方法であって、ある量の、喘息症状の低減に有効な本発明の抗IL−13抗体のうちのいずれかを投与することを含む、方法を提供する。
いくつかの例では、本発明は、患者におけるIgE抗体産生を阻害するための方法であって、患者に、IgE抗体産生を阻害する有効量の、本発明の抗IL−13抗体のうちのいずれかを投与することを含む、方法を提供する。いくつかの例では、IgE抗体産生の阻害は、気管支喘息の予防、アレルギー性鼻炎の予防、アレルギー性皮膚炎の予防、気管支喘息の治療、アレルギー性鼻炎の治療、蕁麻疹の治療、アナフィラキシーの予防、またはアトピー性皮膚炎の治療が意図される。
他の例では、本発明は、患者におけるIgE媒介性障害を治療する方法であって、患者に有効量の本発明の抗IL−13抗体を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの例では、IgE媒介性障害は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、またはアトピー性皮膚炎である。
更なる一態様において、本発明は、例えば、上記の治療方法のうちのいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗IL−13抗体のうちのいずれかを含む医薬製剤を提供する。一実施形態において、医薬製剤は、本明細書に提供される抗IL−13抗体のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態において、医薬製剤は、本明細書に提供される抗IL−13抗体のうちのいずれかと、例えば、以下に記載される少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
本発明の抗IL−13抗体は、療法において、単独、または他の薬剤との組み合わせでのいずれかで、使用することができる。例えば、本発明の抗IL−13抗体は、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増加させる役割を果たす、他のモノクローナル抗体もしくはキメラ抗体と組み合わせて、またはリンホカイン成長因子もしくは造血成長因子(例えば、IL−2、IL−3、IL−5、IL−7、IFNなど)とともに有利に利用することができる。本発明の抗体は、単独、または他の種類の治療(免疫療法、気管支拡張剤、抗IgE分子、抗ヒスタミン剤、もしくは抗ロイコトリエン剤など)との組み合わせで投与され得る。
上述のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同一または別個の製剤中に含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤(複数可)の投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。一実施形態において、抗IL−13抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本発明の抗体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
一態様において、医薬品として使用するための抗VEGF抗体が、本明細書に記載される。更なる態様において、病理学的血管形成に関連する障害の治療に使用するための抗VEGF抗体が、本明細書に記載される。ある特定の実施形態において、治療方法において使用するための抗VEGF抗体が、本明細書に記載される。ある特定の実施形態において、病理学的血管形成に関連する障害を有する個体を治療する方法であって、個体に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む、方法において使用するための抗VEGF抗体が、本明細書に記載される。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記の実施形態のうちのいずれかに従う「個体」は、好ましくはヒトである。
更なる一態様において、医薬品の製造または調製における抗VEGF抗体の使用が、本明細書に記載される。一実施形態において、医薬品は、病理学的血管形成に関連する障害の治療のためのものである。更なる一実施形態において、医薬品は、病理学的血管形成に関連する障害を治療する方法であって、病理学的血管形成に関連する障害を有する個体に、有効量の医薬品を投与することを含む、方法において使用するためのものである。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。上記の実施形態のうちのいずれかに従う「個体」は、好ましくはヒトであり得る。
更なる一態様において、本発明は、例えば、上記の治療方法のうちのいずれかにおいて使用するための、本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかを含む医薬製剤を提供する。一実施形態において、医薬製剤は、本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態において、医薬製剤は、本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかと、例えば、以下に記載される少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
別の態様において、本発明は、例えば、病理学的血管形成に関連する障害を有する対象において、血管形成を低減または阻害する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される抗VEGF抗体を投与し、それにより、対象における血管形成を低減または阻害することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、病理学的血管形成に関連する障害は、非腫瘍性である。ある特定の実施形態において、病理学的血管形成に関連する障害は、癌である。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の薬剤を個体に投与することを更に含む。
別の態様において、本発明は、腫瘍、癌、または細胞増殖性障害を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載される抗VEGF抗体を投与することを含む、方法を提供する。そのような一実施形態において、本方法は、例えば、以下に記載される有効量の少なくとも1つの追加の薬剤を個体に投与することを更に含む。
本明細書に記載される抗VEGF抗体は、療法において、単独、または他の薬剤との組み合わせでのいずれかで、使用することができる。例えば、抗VEGF抗体は、少なくとも1つの追加の薬剤と同時投与されてもよい。ある特定の実施形態において、追加の薬剤は、化学療法剤、細胞毒性剤、抗血管形成剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞毒性放射線療法、コルチコステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤、成長阻害剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、または他の薬剤(上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(商標))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、VEGF以外の標的に結合する抗体、または別の生理活性もしくは有機化学薬剤など)である。
上述のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の薬剤が同一または別個の組成物中に含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の薬剤(複数可)の投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。一実施形態において、抗VEGF抗体の投与及び追加の薬剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本明細書に記載される抗VEGF抗体はまた、放射線療法と組み合わせても使用することができる。
本明細書に記載される抗IL−13抗体または抗VEGF抗体(及び任意の追加の治療剤)は、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、硝子体内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜的に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、吸入によって、注射によって、埋め込みによって、注入によって、持続注入によって、標的細胞を直接浸す局所灌流によって、カテーテルによって、洗浄によって、クレーム中で、または脂質組成物中でを含む、任意の好適な手段によって投与することができる。本明細書に記載される方法において利用される組成物はまた、全身的または局所的にも投与することができる。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、ならびに治療される病態、疾患、または障害の重症度)によって異なり得る。
抗体は、良好な医療慣例と一貫する様式で、製剤化され、投薬され、投与されるだろう。これの文脈において考慮する因子としては、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に既知である他の因子が挙げられる。抗体は、問題の障害を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤とともに製剤化される必要はないが、任意で、そのように製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療の種類、及び上記に考察される他の因子に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同一の投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の約1〜99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
疾患の防止または治療について、本発明の抗体の適切な投薬量(単独、または1つ以上の他の追加の治療剤との組み合わせで使用される場合)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。抗体は好適に、1回で、または一連の治療に渡って患者に投与される。疾患の種類及び重症度によって、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、例えば、1回以上の別個の投与であろうと、持続注入によるものであろうと、患者への投与のための初回候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日投薬量は、上記に言及される因子によって、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得る。病態に応じた数日間以上に渡る反復投与について、治療は一般に、疾患症状の所望される抑制が生じるまで持続されるだろう。抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲内であるだろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgもしくは10mg/kg(またはこれらの任意の組み合わせ)の1回以上の用量が、患者に投与されてもよい。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎(例えば、患者が約2〜約20回、または例えば、約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。例えば、用量は、1ヶ月に1回(例えば、皮下注射によって)投与されてもよい。より高い初回負荷用量、その後、1回以上のより低い用量が、投与されてもよい。しかしながら、他の投薬量レジメンが有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
上記の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗IL−13抗体もしくは抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて、本発明の免疫複合体を使用して実行され得ることが理解される。
いくつかの実施形態において、本方法は、追加の療法を更に含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態において、追加の療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、制嘔吐剤などの、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤)の投与である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、追加の療法は、ガンマ照射である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、上述の治療剤のうちの1つ以上の別個の投与であり得る。
J.製造品
本発明の別の態様において、上述の障害の治療、予防及び/または診断に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と、容器上のまたは容器に付随する標識または添付文書とを含む。好適な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、IV溶液袋などが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、それ自体での、または病態の治療、予防及び/もしくは診断に有効である別の組成物と組み合わされた組成物を保持し、無菌接触口を有してもよい(例えば、容器は、静脈注射溶液袋または皮下注射針によって穿孔可能な栓を有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。標識または添付文書は、組成物が、選択した病態を治療するために使用されることを示す。更に、製造品は、(a)本発明の抗体を含む組成物をその中に収容した第1の容器と、(b)更なる細胞毒性剤または他の治療剤を含む組成物をその中に収容した第2の容器とを含み得る。本発明のこの実施形態の製造品は、組成物を使用して特定の病態を治療することができることを示す添付文書を更に含み得る。あるいは、または加えて、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の(または第3の)容器を更に含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含み得る。
上記の製造品のうちのいずれも、抗IL−13抗体または抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて、本発明の免疫複合体を含み得ることが理解される。
K.操作された細菌
本発明は、操作された細菌を提供する。本発明の細菌は、例えば、本発明の方法(例えば、節Aまたは実施例に上述の方法)のうちのいずれかにおいて使用することができる。
一例では、本発明は、(i)外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異と、(ii)結合ポリペプチドをコードする発現構築物とを含む細菌を提供する。
いくつかの例では、外膜を渡る膜不透過性分子の周辺質内への拡散を可能にする変異は、外膜タンパク質及び/またはリポ多糖(LPS)組成に影響を与えるタンパク質をコードする遺伝子中にある。いくつかの例では、変異は、外膜タンパク質、例えば、主要外膜リポタンパク質Lpp(Lpp)、ポリン、またはTolCをコードする遺伝子中にある。いくつかの例では、外膜タンパク質は、Lppである。いくつかの実施形態において、変異は、LPS組成に影響を与えるタンパク質、例えば、Envタンパク質(例えば、EnvA、EnvB、及びEnvM)、RfaD、RfaE、RfaH、RfaRd、TolA、TolB、ならびにTolDをコードする遺伝子中にある。
いくつかの例では、結合ポリペプチドは、抗体であり得る。いくつかの例では、上記の方法のうちのいずれかの抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの例では、抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。他の例では、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG1抗体、インタクトなIgG4抗体、または本明細書に定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。別の実施形態において、抗体は、半抗体、例えば、ノブ・イントゥ・ホール半抗体である。ノブ・イントゥ・ホール技術の説明については、例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい。前述の方法のうちのいずれかにおいて、抗体は、治療的抗体(例えば、中和抗体)であってもよい。
他の例では、結合ポリペプチドは、抗体模倣物、例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、フィノマー、Kunitzドメインペプチド、またはモノボディであってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、周辺質に局所化する細菌タンパク質であってもよい。他の実施形態において、結合ポリペプチドは、哺乳動物タンパク質であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、結合ポリペプチドは、細胞表面受容体、サイトカイン、または成長因子であってもよい。
例えば、本発明は、(i)主要外膜リポタンパク質Lpp(Lpp)をコードする遺伝子中の機能欠失型変異と、(ii)抗体をコードする発現構築物とを含む細菌を提供する。いくつかの例では、抗体は、全長抗体である。いくつかの例では、抗体は、IgG抗体である。いくつかの例では、抗体は、半抗体である。いくつかの例では、抗体は、抗体断片である。いくつかの例では、抗体断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される。
上述の細菌のうちのいずれも、Lppをコードする遺伝子中に任意の好適な変異(例えば、機能欠失型変異)を含み得る。例示的なlpp変異としては、lpp−1;lpp−21;lpp−3;lpp5508;lpp−6;lpp::Tn5KAN−2;lppD70E、G、もしくはS;lppK75SもしくはT;lppK78R;lppR77DもしくはL;lppS22D;lppY76C、D、E、G、N、P、もしくはS;lppY76F、H、I、もしくはL;Δlpp、Δlpp−254、及びΔlpp−752::kan、または本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなlpp変異は、例えば、CGSC(The Coli Genetic Stock Center)などの貯蔵所から取得することができる。他の例では、Lppをコードする遺伝子中の変異は、標準的な遺伝学アプローチを使用して作製することができる。いくつかの例では、Lppをコードする遺伝子中の機能欠失型変異は、点変異、挿入変異、または欠失変異から選択される。いくつかの例では、機能欠失型変異は、欠失変異である。
上述の細菌のうちのいずれも、内膜、周辺質、及び外膜を含み得る。いくつかの例では、細菌は、グラム陰性菌である。例えば、いくつかの例では、細菌は、E.coliである。E.coliの任意の好適な株または遺伝的背景を使用することができる。一般的に使用されるE.coliの株及び遺伝的背景は、当該技術分野において周知である例示的なE.coli株としては、K−12及びその亜株(例えば、Clifton野生型、W3110、及びDH5αEなど)、ならびにE.coli B及びその亜株(例えば、BL21及びBL21(DE3)など)などの実験室株が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、E.coliは、株62A7に由来する。いくつかの実施形態において、E.coliは、株33D3に由来する。いくつかの実施形態において、E.coliは、株66C4に由来する。
いくつかの例では、前述の細菌のうちのいずれも、転写制御遺伝子に影響を与える変異を含み得る。いくつかの例では、転写制御遺伝子は、転写開始因子、抗シグマ因子、RNAポリメラーゼサブユニット、または転写因子から選択される。いくつかの例では、転写開始因子は、シグマ因子である。いくつかの例では、シグマ因子は、RpoD(σ70)、RpoE(σ24)、RpoH(σ32)、RpoS(σ38)、RpoN(σ54)、RpoF(σ28)、及びFecI(σ19)からなる群から選択される。具体的な例では、シグマ因子は、RpoD(σ70)である。いくつかの例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、合成プラスミド上に存在する。他の例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、内在性細菌ゲノム中に存在する。いくつかの例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、エラープローンPCR変異原性、化学変異原性、転位変異原性、または標的化変異原性によるものである。いくつかの例では、転写制御遺伝子に影響を与える変異は、エラープローンPCR変異原性によるものである。
いくつかの例では、本発明は、前述の細菌のうちのいずれかの複数を提供する。いくつかの実施形態において、複数の細菌は、本発明のライブラリ、例えば、本明細書の上記節Bまたは実施例に記載される任意のライブラリを含み得る。いくつかの例では、複数の細菌は、それぞれが転写制御遺伝子の変異体(例えば、シグマ因子、例えば、RpoD(σ70))をコードする核酸のライブラリを含み得る。
前述の細菌のうちのいずれも、少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、100倍、またはそれ以上だけ、結合ポリペプチド(例えば、抗体)の改善された発現を有し得る。いくつかの例では、細菌は、1〜10倍の改善された発現、1〜7倍の改善された発現、1〜6倍の改善された発現、1〜5倍の改善された発現、1〜4倍の改善された発現、1〜3倍の改善された発現、2〜10倍の改善された発現、2〜8倍の改善された発現、または2〜6倍の改善された発現を有し得る。いくつかの実施形態において、改善は、野生型細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。他の実施形態において、改善は、変異体細菌内の結合ポリペプチドの発現レベルと比較したものである。
III.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上記に提供される概要を仮定して、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
実施例1:全長ポリペプチドと適合する生細胞細菌抗体提示系の開発
全長結合ポリペプチド及びリガンド、例えば、全長抗体及び抗原と適合する、生細胞細菌抗体提示の方法を開発した。以前の細菌提示系の限界を克服するために、細菌細胞の生存率を実質的に損なうことなく、細菌外膜を超えて、リガンド(例えば、抗体によって結合される抗原)を周辺質内へと送達するための新規な方法を開発した。
主要外膜タンパク質(ムレインリポタンパク質、Lpp)の欠失は、外膜を半透過性にする。EDTAを利用して、外膜を更に透過化した(Leive et al.J.Biol.Chem.243:6384−6391,1968、Hancock,Annu.Rev.Microbiol.38:237−264,1984)。Δlpp遺伝的背景を使用して、細胞膜周辺腔から培地へとタンパク質を漏出させて、精製を促進した(Kanamori et al.Gene 66:295−300,1988)。しかしながら、この遺伝的背景はまた、原理上、外膜透過性障壁によって通常除外されるリガンドが周辺質内へと拡散することを可能にするためにも使用することができ得る。
この系の機能性を実証するために、抗IL−13 IgG(Spiess et al.J.Biol.Chem.288:26583−26593,2013)をΔlpp背景で発現させ、蛍光顕微鏡を使用して、EDTAで処理した細胞が、外因的に添加された、蛍光標識されたIL−13サイトカインに結合し得るかどうかを決定した。抗体を発現する細胞のみが抗原を保持し(図1A)、これは、抗体を細胞中に効率的に保持するために膜繋留が必要とされないことを示した。IL−13抗原は、約15kDaの分子量を有する一方で、抗Fc F(ab’)2での染色は、少なくとも100kDaのサイズを有する抗原が、透過化された細胞の周辺質内に効率的に進入し、それらの中に保持され得ることを示す。他の実験において、細胞を全長抗体で染色することに成功し、これは、少なくとも150kDaのサイズを有する分子が、透過化された細胞の周辺質内に効率的に進入し、それらの中に保持され得ることを示した。しかしながら、細胞を透過化するためのEDTAの使用は、細胞生存率の低下をもたらした。生存率低下を克服するために、抗原及びEDTAでの染色後にMgCl2を添加し、これにより、生存率がEDTA処理前に見られるレベルまで回復した(図1B)。
次に、他の抗体形式を試験して、それらが、抗原に結合するために、周辺質内に効率的に保持され得るかどうかを決定した。全長抗体と同様に、生存率に影響を与えることなく、Fab形式及び半抗体形式の両方を発現させ、抗原で染色することができた(図1B)。空ベクター対照(pBR322)細胞は、フローサイトメトリーによって、背景シグナルに寄与する自己蛍光を示した一方で、全ての試験された抗体形式は、効率的な選別を可能にする、この背景を超える抗原特異的シグナルを示した(図1C)。ノブ・イントゥ・ホールFc技術を有する半抗体は、全長二重特異性抗体を生成するために使用することができるため、対象となる(Spiess et al.Nat.Biotechnol.31:753−758,2013)。全ての以下の提示実験について、半抗体構築物を利用した。
以下に記載されるように、この技術(本明細書において、広義かつ非限定的な意味で細菌抗体提示または「BAD」と呼ばれることがある)は、全長抗原を生細胞へと送達し、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))選択(図1D)を使用して急速な1巡毎の進行を可能にすることによって、現在の細菌提示の限界を克服する。BADは、抗体とともにだけでなく、任意の好適な結合ポリペプチドとともにも使用され得ることが理解される。第1のステップにおいて、非結合剤のプールからの結合抗体の富化を、BADを使用して試験した。抗IL−13抗体を発現する細胞を、抗VEGF抗体を発現する細胞プールへとスパイキングした。混合物中の各抗体の比率を追跡するために、カルベニシリン耐性のみを与えるプラスミドを使用して、抗VEGFを発現させた一方で、抗IL−13を発現させるために使用されるプラスミドは、カルベニシリン耐性及びテトラサイクリン耐性の両方を与える。1:105及び1:106の比率の混合培養物の段階希釈を、カルベニシリンまたはテトラサイクリン含有プレート上にスポットプレーティングすることによって、スパイキングの正確性を最初に決定し、これにより、抗IL−13抗体が、予測通りの頻度でプール内に表れることが確認された(図2A)。その後の選別実験のより正確な定量化のため、より大きな体積をプレーティングし、コロニー計数を行って、各試料における抗IL−13対抗VEGFの比率を計算した。1:106の比率の抗IL−13:抗VEGFで開始し、抗IL−13陽性細胞の選別によって2巡のBADを実行し、235,000倍の富化を達成した(図2B)。抗原/抗体対が富化され得ることを確実にするために、逆の実験を実行し、2巡のFACS(商標)の後、結合抗VEGF抗体の19,500倍の富化をもたらした(図2B)。この富化は、第2巡のFACS(商標)の後、個体群における大きなVEGF陽性偏移に対応した(図2C)。これらの実験は、結合クローンが、BADシステムによって急速かつ高度に富化され得ることを確認した。
次に、BADシステムを、最良の発現または同一の抗体の折り畳みバリアントのために富化するその能力について試験した。システムの解像度を試験するために、抗VEGF.2抗体に基づく半抗体とともに、異なる発現レベルを有する3つのバリアントを使用した。バリアントは、異なる組み合わせの軽鎖(L4M、S24R、F71Y)変異及び重鎖(E6Q、M34I)変異を含んだ。非還元可溶性試料をウェスタンブロットによって抗ヒトFc抗体で検出し、発現レベルを抗VEGF.2半抗体野生型(WT)に対して正規化した(図3A)。抗VEGF.2野生型は、最低の機能発現を有した一方で、L4M.E6Q.M34I、F71Y.E6Q.M34I、及びS24R.E6Q.M34Iはそれぞれ、3.7倍、5.6倍、及び7.2倍の発現レベルの増加を有した。発現及びFACS(商標)偏移の一致を確実にするために、BADを使用して、抗VEGF.2野生型、及び蛍光標識されたVEGFで染色したバリアントの、個々のFACS(商標)偏移を決定した(図3B)。FACS(商標)平均蛍光強度は、発現レベルと同一の順序の順位であり、L4M.E6Q.M34I、F71Y.E6Q.M34I、及びS24R.E6Q.M34Iは、野生型抗VEGF.2と比較して、1.25+/−0.2倍、1.37+/−0.2倍、及び1.4+/−0.3倍の増加を有した。したがって、これらの抗体は、BADが最良発現抗体を選択し得るかどうかを試験するための良好な候補であった。
抗VEGF.2野生型を2つのバリアントと組み合わせるBADスクリーニングを実行した。2巡のFACS(商標)を実行し、各巡において上位1%のVEGF結合クローンを選別した。4つの組み合わせ抗VEGF.2抗体のFACS(商標)偏移を、2巡の選別に渡って監視した(図3C)。試料のうちのいくつかにおいて細胞の二峰性分布が観察され、これは、部分的な細胞透過処理及びE.coliの背景自己蛍光に起因した。プールされたバリアントのVEGF結合シグナルは、2巡の選別後、最良発現バリアントS24R.E6Q.M34Iの上に重なり、これは、より良好に発現する抗体が富化されていることを示唆した。入力物の配列決定は、選別の開始時点で4つ全ての抗VEGF.2抗体が存在した一方で、1巡目の後に抗VEGF.2野生型及びL4M.E6Q.M34Iが部分的に枯渇したことを示す(図3D)。2巡目の後、抗VEGF.2野生型及びL4M.E6Q.M34Iは検出されず、F71Y.E6Q.M34I及びS24R.E6Q.M34Iのみが富化された。これらのデータは、小さな発現差にも関わらず、BADが最良発現抗体の富化に成功し得ることを実証する。
上述の方法は、多くの用途において有用である。抗体操作に関して、それは、Fc操作、抗体発見、または親和性成のために、より大きなライブラリとともに使用することができる。抗体を超えて、BADシステムは、それが細胞宿主環境における真の読み取りを提供するため、タンパク質排出、折り畳み、またはE.coli周辺質内での局所化を研究するための一般的なハイスループットツールとして、適用可能であり得る。このシステムの主要な強みは、天然タンパク質形式の使用を可能にし、融合パートナー、レポータータンパク質、または膜繋留を不要にする、非繋留的アプローチである。更に、生細胞設定アプローチは、以前の提示技術に対する有意な改善である、所望される宿主特徴についての例外的に急速なスクリーニングを可能にする。
材料
プラスミド構築及び発現
標準的な分子生物学技術によって、既に記載されるように、抗体をE.coli発現ベクター中(Simmons et al.J.Immunol.Methods 263:133−147,2002、Carter et al.Biotechnology(N.Y.)10:13−167,1992)または哺乳動物発現ベクター中(Eaton et al.Biochemistry 25:8343−8347,1986)へとクローニングした。既に記載されるように、50mLのE.coli細胞培養物(Spiess et al.J.Biol.Chem.288:26583−26593,2013)またはCHO細胞(Wong et al.Biotechnol.Bioeng.106:751−763,2010)もしくはHEK293T(Bos et al.J.Biotechnol.180:10−16,2014)細胞の30mLの一過性トランスフェクション培養物を使用して、抗体発現を実行した。
抗体精製
Fabタンパク質をE.coliから精製するために、以前に記載されているように(Spiess et al.Nat.Biotechnol.31:753−758,2013)、染色体lpp遺伝子欠失を有する株64B4においてタンパク質を発現させた(Reilly et al.Antibody Engineering,Springer Berlin Heidelberg,pp.331−344,2010)。500mLのCRAP培養物を30℃で24時間成長させた後、pH8.0のEDTAを10mMの最終濃度まで添加した。インキュベーションを、30℃、200rpmで1時間続けてから、MgCl2を20mMの最終濃度まで添加した。遠心分離(20分、4,500rcf、4℃)によって細胞デブリを除去し、その後、400μgのデオキシリボヌクレアーゼI(Sigma−Aldrich,USA)を添加してから、GF/Fフィルター(Whatman,England)及び0.2μのPESフィルター(Thermo Fischer Scientific,USA)を通して上清を濾過した。1.5mLのタンパク質G SEPHAROSE(登録商標)スラリー(GE Healthcare,USA)を50mLの溶解物に添加し、室温で一晩インキュベートした。PBSで洗浄するとによって未結合タンパク質を除去し、4mlの50mMリン酸(pH3)でFabタンパク質を溶出させ、20×PBSで中和し、AMICON(登録商標)Ultra−4(10,000MWのカットオフ)(Merck Millipore,Ireland)で濃縮した。
MABSELECT SURE(商標)(GE Healthcare,USA)によって、製造業者のプロトコルに従って、ヒトIgG1を哺乳動物培養物上清から精製した。ヒトFabを哺乳動物培養物上清から精製するために、FLAGタグを重鎖のC末端に付加し、抗FLAG樹脂で、製造業者のプロトコル(Sigma−Aldrich,USA)に従って、Fabを精製した。280nmでの吸光度を決定し、タンパク質特異的消衰係数を使用することによって、タンパク質収率を定量化した。
抗原
ヒトVEGF8−109の発現及び精製は、既に記載されている(Muller et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:7192−7197k 1997)。Unizymeでタグ付けしたヒトIL−1333−146をE.coliにおいて発現させ、変性条件下、Ni−NTAクロマトグラフィー(Qiagen,Germany)によって精製し、再び折り畳んだ。タンパク質を、ALEXA FLUOR(登録商標)488またはALEXA FLUOR(登録商標)647サクシニミジルエステル(Invitrogen,USA)で、製造業者のプロトコルに従って蛍光標識した。DYLIGHT(登録商標)649で標識したヤギ抗ヒトIgG Fc F(ab’)2−断片を、Jackson Immuno Research,USAから得た。
細菌抗体提示及びフローサイトメトリー
細菌提示のため、株62A7のLpp欠失(Δlpp)中で抗体を発現させた。62A7は、株33D3のカナマイシン耐性を治療することによって、親株33D3から導出した(Simmons et al.J.Immunol.Methods 263:133−147,2002)。スパイキング実験または個々のフレームワークバリアントでの実験のため、細胞をそれぞれのプラスミドで個々に形質転換し、30℃で一晩培養物として成長させ、記載される比率で、または体積によって等しく組み合わせ、1:100の希釈で使用して、50mLのCRAP培養物を播種した。30℃で24時間後、1ODアリコートを回収し、遠心分離(4分間、6500rcf)によってペレット化した。細胞を、2%のBSA及び5mMのEDTAを有する100μLのPBS(pH7.4)中に再懸濁させ、4℃で30分間インキュベートした。初回インキュベーション後、1:100の最終希釈までSYTO(登録商標)41または9核酸染色(Molecular Probes,USA)を添加し、ALEXA488またはALEXA647で標識した抗原を、1〜2μMの最終濃度まで添加した。インキュベーションを、4℃、暗所で1時間続け、その時点で、MgCl2を10〜20mMの最終濃度まで添加した。1mLの体積のPBS(pH7.4)+20mMのMgCl2で3回洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。染色した細胞を、分析用には1×107個の細胞/mlの最終濃度まで、及びBD FACSARIA(商標)II Flow Cytometerを使用する選別用には1×106個の細胞/mlの最終濃度まで、SOC培地(New England Biolabs,USA)中で再懸濁させた。FACS(商標)ゲーティング戦略は、SYTO(登録商標)色素陽性である細胞を含んだ。二重体識別ゲートを使用して二重体を除去し、最後に抗原陽性細胞を選別した。細胞をSOC培地中へと選別し、30℃で一晩回収し、発現培養物を再播種するために使用したか、またはグリセロールストックとして凍結した。
顕微鏡検査
蛍光顕微鏡検査のための細胞の発現及び染色を、上述の細菌提示プロトコルと同様に実行した。20mMのMgCl2を有するPBS洗浄ステップの後、20mMのMgCl2を有する100μLのPBS中に細胞を再懸濁させ、37℃で1%のゼラチンと混合して、スライドを調製した。Zeiss Axio Imager A1を使用して、蛍光顕微鏡検査検査を実行した。
免疫ブロット
抗体が、カナマイシン耐性を治療した33D3の誘導体株内に発現されたことを除いては、既に記載されているように(Spiess et al.Nat.Biotechnol.31:753−758,2013)、免疫ブロッティングを実行した。
示差走査蛍光定量によるタンパク質安定性測定
Biorad CFX96 Real−Time System(Bio−Rad,USA)中で、1:500の最終希釈のSYPRO(登録商標)Orange色素ストック(Molecular Probes,USA)で、タンパク質安定性を決定した。PBS中25μLの試料の蛍光を、20〜100℃(0.2℃の増分、1ステップ当たり10秒間保持)まで記録した。
周辺質抽出物
Biacore分析用の周辺質抽出物を生成するために、細菌抗体提示株からの40mLのE.coli発現ブロスを、5,000rpmで5分間の遠心分離によってペレット化した。1.5mLの、50mMの低温トリス(pH8.0)、1mMのEDTA、及び500mMのスクロース中にペレットを再懸濁させ、氷上で撹拌しながら30分間インキュベートした。試料を9000rpmで10分間遠心分離した後、上清を周辺質抽出物として収集した。
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴を使用して、BIACORE(商標)3000またはT200機器(GE Healthcare)上で、それぞれ抗IL−13抗体及び抗VEGF抗体の結合動態を測定した。全ての動態実験は、30μL/分の流量、25℃、ならびに10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、及び0.005%のTween−20の泳動緩衝液で実行した。抗IL−13について、Human Fab Capture Kit(GE Healthcare)からのFab結合剤を、アミン系カップリングを介してCM5センサーチップ上に固定化して、E.coli周辺質抽出物から抗IL−13半抗体を捕捉した。1.56〜50nMの範囲内の2倍濃度系のサイトカインを使用して、抗体に対するヒトIL−13結合を測定した。120秒間の注入時間、その後、1000秒間の解離時間、及びグリシン(pH2.1)での周期間の表面の再生を使用して、IL−13の結合のセンサーグラムを記録した。抗VEGFについて、ヒトVEGFを、アミン系カップリングを介してCM5センサーチップ上に固定化した。6.17〜500nMの範囲の3倍の濃度系の抗VEGF Fabを使用して、VEGFに対する結合を分析した。120秒間の注入時間、その後、300秒間の解離時間、及び20mMのHClでの周期間の表面の再生を使用して、単一周期動態センサーグラムを記録した。抗体への抗原結合について観察された全てのセンサーグラムを、1:1のラングミュア結合モデルを使用して分析して、動態及び結合定数を計算した。
実施例2:細菌抗体提示を使用する細胞選別の最適化
選別プロセス中の細胞生存率を最大化して、1巡毎のBADを使用する選別の速度及び効率を促進するために、抗体の発現後の異なる野生型E.coli株の生存率を比較した。E.coli発現株は、抗体の発現後に異なる生存率を有し、例えば、野生型64B4細胞は、62A7細胞を含む他の野生型株と比較して、約1倍の細胞生存率の低下を有した(図8)。更に、Lpp(62A7Δlpp)が欠失した62A7細胞は、64B4Δlpp細胞よりも大きな生存率を有した(図8)。62A7Δlpp細胞は、抗体が発現し、標識された抗原とともにインキュベートした後のFACS(商標)選別後に生存可能のままであり、複数巡の標識及び選別を受けることができた。したがって、株背景の選択は、BAD中の細胞選別プロセスを最適化するために使用することができる1つの因子である。Δlpp欠失を使用する方法において、本方法は、抗体を発現することができるいかなる野生型遺伝的背景とも適合する。
フローサイトメトリー選別条件もまた、選別後に回収される細胞の量を増加させるように最適化した。様々な核酸色素を、フローサイトメトリー中のE.coli細胞の検出を改善するそれらの能力について試験した。6つの青色核酸色素(SYTO(登録商標)色素40〜45)のパネルを、未染色の対照と比較した、抗VEGF抗体を発現する細胞の染色効率について試験した(図9)。核酸色素のそれぞれを使用して、色素陽性細胞を検出した。試験された染色のうち、SYTO(登録商標)41が、最高の染色効率(処理された細胞の約90%)を示した。この核酸色素を、フローサイトメトリー中に選択戦略の一部として使用すると、選別によって回収される細胞の量が増加した。SYTO(登録商標)9は、SYTO(登録商標)41に匹敵する効率で染色する色素の非限定的な例である。発現レベル及び/または安定性において差を有する抗体の富化を促進するために、選別中の抗原陽性細胞の喪失は最小化されるべきである。互いに固着してはいるが、フローサイトメトリーによって単細胞として検出される2つの細胞である細胞二重体の存在は、原理上、選別後に抗原陽性細胞の富化を損なう可能性がある。このシナリオにおいて、抗原陽性細胞は、抗原陰性である細胞に固着することにより、富化を低減し得る。我々の選別条件下で、細胞二重体が生じるかどうかを試験するために、抗VEGF抗体、抗VEGF.V48Lを発現する細胞をVEGF−ALEXA FLUOR(登録商標)488で標識した一方で、抗VEGF.A97Tを発現する細胞をVEGF−ALEXA FLUOR(登録商標)647で標識した。その後、これらの細胞を等しく組み合わせ、フローサイトメトリーに供した。1×108個の細胞/mlの選別濃度で、両方の抗原について陽性である細胞によって示される、細胞二重体が存在した(図10)。二重体を減少させるために、1×106個の細胞/mLのより低い細胞濃度を使用し、これは、フローサイトメトリー分析によって検出される二重体を排除するのに十分であった。
62A7Δlpp株の使用と、1×106個の細胞/mlの選別細胞濃度の選別と、核酸染色のシグナルに基づく選別を含むことでE.coli細胞の位置決定を促進するフローサイトメトリーと、標準的な二重体識別ゲートと、抗原陽性細胞の選択とを組み合わせる選別戦略を、試験した(図11)。この選別戦略が成功することを確認するために、それぞれVEGF−ALEXA FLUOR(登録商標)488またはVEGF−ALEXA FLUOR(登録商標)647で標識し、等しく組み合わせた、(以下の実施例4に記載される)抗VEGF.V48Lまたは抗VEGF.A97Tを発現する62A7Δlpp E.coli細胞を使用して、単一巡のBADを実行した。別個に標識された抗原に対する単一抗原陽性結合、二重陽性結合、または二重陰性結合に基づいて、細胞を選別した(図12A)。両方の抗VEGFバリアントの等しい組み合わせを、入力クローンの配列決定から検出した。1巡の選別後、単一抗原について陽性であるものとして選別された約93〜95%の細胞が予想される抗VEGFバリアントを発現し、これは、この選別戦略の正確性を確認した(図12B)。細胞の二重陰性個体群は、両方の抗VEGF抗体の等しい個体群が見出されたため、いずれの抗体を選択するバイアスも有さなかった(図12B)。これらの結果は、本実施例に記載される選別条件が、1巡のBAD後、クローンの富化に好適であることを示す。細胞は生存可能であり、選別後の回収及びプレーティングが可能であり、これは、1巡のBAD中の容易な配列分析、及び巡から巡へと進行する能力を可能にした。加えて、二重体は、この分析に使用されるFACS(商標)AriaII機器に固有の選択の限界に匹敵する選別の高い成功率のため、本方法の選別能力と干渉しなかった。
実施例3:本発明の方法を使用する、改善された発現及び安定性を有する抗IL−13抗体の生成
実施例1に記載される方法を利用して、治療的抗IL−13抗体の増加した機能的発現及び安定性のために選択した。抗体配列中の選択位置の飽和変異原性を含む、E.coliにおける抗体収率を増加させるためのいくつかのアプローチが採られている。しかしながら、このアプローチは主に、抗体の天然レパートリーに見出されないアミノ酸変化をもたらすため、治療上対象となる抗体に免疫原性配列を導入するリスクが残る。
本アプローチは、体細胞超変異中に生じる自然のフレームワーク多様性を利用する。天然に存在する抗体のKabatデータベース(Kabatら(上記))を検査し、抗IL−13抗体と同一の、カッパ4軽鎖亜型及びVH2重鎖亜型のフレームワーク領域内の、生殖系列からのアミノ酸変化を特定した(図6)。理論によって拘束されることを望むものではないが、フレームワーク残基は、超可変領域内の残基よりも親和性に影響を与える可能性が低いであろう。加えて、フレームワーク領域内の埋もれた残基は、抗体折り畳み及び安定性の改善に寄与するが、表面に曝露された残基と比較して、免疫原性に対する潜在性を低下させるであろう。
抗IL−13可変ドメインのサブグループに基づく主鎖抗体骨格のリボン図を、図13に示す。体細胞超変異は、フレームワーク領域及び超可変領域の両方に変化を導入し得る。Kabatデータベースからのデータを照合して、可変カッパ4(VK4、黄色)亜型及び重鎖2(VH2、灰色)亜型のフレームワーク内の体細胞超変異によって生じる全てのアミノ酸変化をまとめ、その後、抗IL−13相同性モデルに基づいて、選択されたバリアントを非溶媒曝露残基(圏)へと限定した。PyMOLを使用して、非溶媒曝露残基を特定するためのモデルを可視化した。抗IL−13半抗体の単一フレームワークバリアント(軽鎖内に5個及び重鎖内に28個)を作製し、組み合わせて、BADによってスクリーニングした。
抗IL−13半抗体フレームワークバリアントのライブラリによるBADスクリーニングを実行した。FACS(商標)データを2巡に渡って監視すると、抗IL−13フレームワークバリアントは、抗IL−13野生型と比較して、IL−13抗原に対する結合の増加を示した(図4A)。標識された抗原のシグナルに基づいて、上位1%のIL−13陽性細胞を選別し、選別出力物を配列決定した。抗IL−13野生型は2巡目までに枯渇し(図4B)、軽鎖M4Lバリアントは大部分が富化した(配列決定されたクローンのうちの82%)。加えて、重鎖バリアントE6Q(配列決定されたクローンのうちの14%)もまた富化した一方で、重鎖バリアントS25Y、F27L、L29I及びL45Pならびに軽鎖バリアントS12Aはそれぞれ、配列決定されたクローンのうちの2%未満において観察された。
2巡目の後に特定された抗IL−13フレームワークバリアントが、機能的発現を増加させることを確認するために、抗ヒトFcウェスタンブロットを使用して、E.coliにおけるそれらの発現レベルを比較した。軽鎖バリアントM4Lが、最高の発現の増加を示し、抗IL−13野生型よりも約2倍良好であり(図4C)、これはBADによる最良の富化と相関した。重鎖フレームワークバリアントE6Q及びF27Lもまた、抗IL−13野生型よりも高い発現レベルを有した(図4C)一方で、残りのバリアントは、抗IL−13野生型と類似した発現を有した。ウェスタンブロットデータは、FACS(商標)平均蛍光強度によって測定される、IL−13抗原に結合する個々のフレームワークバリアントについて見られる順位と相関した。K
Dをゆうに超える抗原濃度を使用して、親和性差の寄与を最小化し、発現レベルが抗IL−13フレームワークバリアントの特定を駆り立てることを確実にした。結合動態データを収集し、抗IL−13フレームワークバリアントM4L、E6Q、F27L及び抗IL−13野生型が、同等の親和性を有することを確認した(表2)。
以前の報告において、E.coliにおいて抗体発現を増加させる変異は、真核宿主系には適用されなかった(Demarest et al.Protein Eng.Des.Sel.19:325−336,2006、Schaefer et al.Protein Eng.Des.Sel.25:485−506,2012)。スクリーニング戦略が、哺乳動物細胞内でのより高い分泌レベルと相関するバリアントを特定したかどうかを決定し、発現宿主間のバリアント選択の翻訳可能性を可能にするために、E.coliにおける発現増加を提供した抗IL−13半抗体のHEK293T細胞発現収率を検査した。増加は真核細胞内でよりもわずかに小さかったものの、2つの宿主間の発現増加におけるほとんど直線状の相関が観察された(図4C)。したがって、本明細書に記載されるスクリーニング戦略は、E.coli細胞及び哺乳動物細胞の両方において改善された発現を示すバリアントを特定するために使用することができる。
発現の改善が、立体構造の安定性の増加と相関するかどうかを試験するために、示差走査蛍光定量(DSF)を実行した。M4L、E6Q、またはF27L変異を有するE.coliにおいて産生された抗IL−13Fabの融解温度(Tm)を、野生型と比較した(図4D)。M4Lバリアントは、野生型抗IL−13(69.4±0.4℃のTm)と比較して、熱安定性を約5℃だけ増加させた(75.1±0.3℃のTm)。しかしながら、E6Q及びF27L変異は、熱力学的安定性における有意な増加はもたらさなかった。M4Lバリアントの熱安定性の増加が、宿主非依存性であることを検証するために、抗IL−13バリアントをCHO細胞内でIgGとして産生させた。類似した5℃の熱安定性の増加が、真核宿主において見られた。
BADスクリーニングによって特定される抗IL−13バリアントの組み合わせは相加的であり、機能的発現を更に増加させ得る。したがって、M4Lと、E6Qと、F27Lとの組み合わせの、E.coli細胞及び哺乳動物細胞における発現レベルを検査した(図4C)。二重の組み合わせM4L.E6Qは、両方の宿主において発現レベルの相加的な増加を示す。これらの2つのバリアントが、BADスクリーニングにおいて高度に富化された唯一のバリアントであり、これは、我々の技術の選択能力を更に支持した。加えて、M4L変異を含有するバリアントの組み合わせのみが、熱安定性における5℃の増加を示した(図4D)。したがって、抗IL−13治療的抗体の生物物理学的特性を更に改善するために、機能的発現及び熱安定性を増加させる1組のコアフレームワークバリアントを特定した。分子のインビトロ特性は改善された一方で、そのようなバリアントの臨床的関連性は試験されていない。
実施例4:本発明の方法を使用する、改善された発現及び安定性を有する抗VEGF抗体の生成
実施例1及び3に記載される戦略が一般に適用可能であることを更に確認するために、BAD法を使用して、異なる生殖系列からの抗体(抗VEGF.3抗体)の発現及び安定性を改善した。抗VEGF.3は、カッパ1軽鎖及びVH3重鎖亜型を有する。実施例2に記載される抗IL−13についてのアプローチと同様に、これらの亜型を有する天然に存在する抗体をKabatデータベースから照合し、体細胞超変異からの可変性を有するフレームワーク位置を特定した(図7)。VEGF結合にとって重要であることが知られている位置、及び溶媒曝露されている位置は分析では除外して、それぞれ親和性または免疫原性に対する影響を低下させた。
実施例1及び3に記載される方法を使用して、特定された抗VEGF.3フレームワークバリアント(47の軽鎖バリアント、36の重鎖バリアント、及び抗VEGF.3野生型を組み合わせる)でBADスクリーニングを実行した。上位0.5%のVEGF陽性細胞を3巡かけて選別した。抗VEGF.3野生型は1巡目までに枯渇し、フレームワークバリアントは、進行中の巡について、抗VEGF.3野生型と比較してVEGF抗原に対する結合の増加を示した(図5A)。
3巡目の後、クローンを富化し(図5A)、BADにおいて選択されたバリアントの発現及び熱安定性をE.coli細胞及びHEK293T細胞において試験した。抗VEGF.3重鎖バリアントE6Q、V48L、及びV48I(それぞれ、配列決定されたクローンのうちの85%、7%、及び3%)は、E.coliにおいて3〜4.5倍だけ発現を改善した(図5B)。改善された発現が、安定性の増加と相関するかどうかを決定するために、DSFを実行した。全てのバリアントが、抗VEGF.3野生型と比較して、約3℃だけ改善された熱安定性を示した(図5C)。E6及びV48の側鎖(図5D)は、可変重鎖VEGF−Fabのベータ−バレルのコア内に配置される(Fuhら(上記))。E6Q、V48L、及びV48Iバリアントは、折り畳みを改善し、優れた安定性を提供したため、特定の理論に拘束されるものではないが、それは、ベータ−シート界面の詰め込みがわずかに不足しており、電荷またはより大きな側鎖の除去が詰め込みを改善し得ることを示唆した。V37I重鎖バリアント(3巡目に配列されたクローンのうちの1%)は、より少ない程度(E.coliにおいて2.3倍)まで発現を改善し、熱安定性を2℃だけ増加させた(図5C)。E6及びV48とは対照的に、V37は、軽鎖との界面に見出され(図5D)、これは、抗体安定性及び折り畳みのために、鎖間接触だけでなく、鎖内接触も重要性であることを示す。
次に、フレームワークバリアントを組み合わせて、相加的効果の潜在性を試験した。全ての二重バリアントは相加的効果を有し、E.coliにおける機能的発現の改善は最大5.6倍(図5B)であった一方で、3つのバリアントの組み合わせは、抗VEGF抗体の発現は更には改善しなかった。重要なことに、抗VEGF野生型に対する類似した親和性は、全ての単一、二重及び三重バリアントについて観察された(表3)。
驚くべきことに、全てのバリアントの組み合わせについて、タンパク質安定性に対する相加的効果が観察され、バリアントを3つ全ての位置で組み合わせることによって、野生型Fabは最大7.6℃まで更に順次に安定した(図5C)。この印象的な熱安定性の増加は、治療的抗体の開発中、いかに本発明の方法を使用して、改善された熱安定性を有するバリアントを特定することができるかを強調する。
これらのバリアント及び組み合わせが哺乳動物系において発現されたとき、発現収率のうちのいくつかは、E.coliにおいて観察された結果と相関した(図5B)。V37Iを除く全ての単一バリアントが、ほぼ2〜3倍、HEK293T細胞における発現を改善した。E6QバリアントとV48Iバリアントを組み合わせることによって発現の更なる増加が観察され、これはV37Iバリアントによって更に改善された。最良の発現は、このE6Q.V37I.V48Iバリアントについて見られ、これは、HEK293T及びE.coliにおいて、それぞれ抗体収率のほぼ4〜6倍の増加を提供した。
まとめると、実施例2及び3に記載される試験は、抗体の発現収率及び立体構造の安定性は、フレームワーク領域内のいくつかの変更によって、抗原親和性を変更することなく有意に最適化され得ることを実証した。これらのフレームワークバリアントはE.coli細胞内で最初に特定されたものの、多くの場合、発現増加は、哺乳動物細胞に翻訳される。
実施例5:全般的転写装置操作及び細菌抗体提示を使用する、細菌内での組み換えタンパク質発現の改善
改善された結合及び/または発現を有するバリアント結合ポリペプチドを特定することに加えて、本発明の方法を使用して、組み換えタンパク質(例えば、抗体、半抗体、及び抗体断片)の改善された発現のために細菌を操作することもできる。この実施例において、全般的転写装置操作(gTME)をBADと併せて使用して、抗体の改善された発現を与える変異体シグマ因子タンパク質を発現する細菌をスクリーニングした。
gTMEアプローチは、ハイスループット様式でスクリーニングされ得る複雑な表現型を作製するために、全般的トランスクリプトームを制御するタンパク質をコードする遺伝子の(例えば、エラープローンPCRを介した)変異原性に関与する。この実施例では、シグマ因子をエラープローンPCR変異原性に供したが、しかしながら、原理上、全般的なレベルで転写に影響を与える任意の遺伝子(例えば、RNAポリメラーゼサブユニット(例えば、RpoA)、及び転写因子など)を使用することができる。シグマ因子は、RNAポリメラーゼに結合し、転写の開始に関与する。シグマ因子における変異は多数の遺伝子に影響を与え、複雑な表現型を作製し得る。表4は、E.coliシグマ因子の一覧を示す。RpoDは、成長の対数期に発現されるE.coliにおける主要シグマ因子であり、それは、約2,000個のプロモーターの発現を制御すると考えられる。図14は、シグマ因子RpoD(σ
70)の構造の図を示す。領域1(図14の領域1.1及び1.2)は、主要シグマ因子(RpoD及びRpoS)内のみに存在し、それは、RNAポリメラーゼがシグマ因子に結合して、シグマ因子がDNAプロモーター領域のみに結合することを確実にすることに関与する。領域1と領域2との間は、熱安定性において役割を果たすスペーシング領域である。領域2は、プロモーターの−10要素(TATAAT)に結合する。領域3は、開始部位でATPに架橋されるRNAポリメラーゼの結合部位の近位にある。領域3は、ヘリックス・ターン・ヘリックスDNA結合領域を含有する。最後に、領域4は、プロモーターの−35要素(TTGACA)に結合する。領域4はまた、抗シグマ因子にも結合する。シグマ因子の変異原性は、いくつかの例示的、非限定的方法で、転写に影響を与えることが予想される。発現の増加は、DNAまたはRNAポリメラーゼにより緊密に結合する変異体シグマ因子、または抗シグマ因子に結合する変異体シグマ因子から生じ、したがって、天然シグマ因子の阻害を防止し得る。発現の低下は、RNAポリメラーゼまたはDNAに結合し得る変異体シグマ因子から生じ、転写を防止し得る。
エラープローンPCR変異原性によって、変異体RpoDタンパク質をコードするプラスミドのライブラリを生成した(図15A及び15B)。プライマーF_rpoD_AatII5’−TATGACGTCGATTAATGCCAAAAGCGGCAGA−3’(配列番号25)及びR_rpoD_ScaI5’−TATAGTACTGATTAATCGTCCAGGAAGCTAC−3’(配列番号26)を使用して、rpoD遺伝子及び天然プロモーターを増幅させ、標準的な方法を使用して、AatII及びScaI部位で、pACYC177プラスミド(p15A起源の複製及びカナマイシン耐性マーカー(kan)を持つ)とともにライゲーションした。50μg/mlのカナマイシンを補ったLB寒天プレート上で、形質転換体を成長させた。プライマーF_rpoD_check5’−ctattctcagaatgacttggttg−3’(配列番号27)及びR_rpoD_check5’−gatgcttttctgtgactggtg−3’(配列番号28)を使用してプラスミドを配列決定することによって、正しい構築物を確認した。GENEMORPH(登録商標)II EZ Clone Kit(Agilent,Santa Clara,CA)を製造業者のプロトコルに従って使用して、断片変異原性を実行した。プラスミドライブラリをNEB(登録商標)Turbo細胞内で増殖させ、50μg/mlのカナマイシンを補ったLB寒天プレート上で選択した。配列決定を通してライブラリの多様性を決定し、誤差率は1〜4個の変異/kbであることが見出された。ライブラリの推定サイズは、約106であった。
次に、BADスクリーニングのために、Lpp遺伝子(Δlpp)の欠失を含有する細菌のライブラリを生成した(図16A及び16B)。66C4株(Δlpp、ΔfhuA、Δptr3、lacIQ、lacL8、ΔompT(nmpc−fepE)、ΔdegP、ilvG2096(IlvG+;ValR))を、blaベータラクタマーゼ抗生物質耐性遺伝子及びテトラサイクリンリプレッサー(tetR)遺伝子とともに、抗IL−13抗体のHC及びLCをコードするMD169プラスミドで形質転換した。成功した形質転換体を、20μg/mlのテトラサイクリンを補ったLB寒天上で成長するそれらの能力について選択した。次に、結果として生じた形質転換体(66C4MD169)を、特有の変異体rpoD及びカナマイシン抗生物質耐性遺伝子を発現する、上述の変異体rpoDプラスミドのライブラリで形質転換した。成功した形質転換体を、20μg/mlのテトラサイクリン及び50μg/mlのカナマイシンを補ったLB寒天上で成長するそれらの能力について選択した。ライブラリの試料を、配列決定によって多様性についてスクリーニングした。これは、約106の多様性を有する、rpoD変異体及び抗IL−13抗体の両方を発現する66C4ライブラリプールをもたらした。
次に、BADを使用して、66C4ライブラリプールをスクリーニングした(図17A及び17B)。ライブラリを、225rpmで、30℃のCRAP培地中で24時間成長させた。本質的には実施例1及び2に記載されるように、1OD単位を回収し、EDTAで透過処理し、蛍光標識された抗原(ALEXA FLUOR(登録商標)647で標識したヒトIL−13、「ALEXA(登録商標)647−huIL−13」)及びDNA染色(SYTO(登録商標)9)を使用して染色し、MgCl2で再封着した。FACSARIA(登録商標)フローサイトメトリーデバイスを使用して、細胞を選別した。簡潔に述べると、細胞を見出すために、まずSYTO(登録商標)9を使用して細胞をゲーティングした。次に、細胞を細胞複合性に基づいてゲーティングした。最後に、ALEXA(登録商標)647−huIL−13シグナルに基づく上位1〜3%の細胞をフローサイトメトリーによって単離し、成長させ、手順を繰り返した。66C4ライブラリプールを合計4巡のBADを使用する選別に供した。
結果は、空ベクターまたは野生型rpoDで形質転換した細胞と比較して、IL−13結合に基づいて、各巡のBADが蛍光強度の増加をもたらしたことを実証し(図18)、これは、収容される個体群プールが高発現クローンの数を増加させたことを示した。対照的に、不良に発現するクローンをBAD手順によって選別して取り除いた。4巡目の後、細胞をプレーティングし、96個のコロニーをランダムに選択し、配列決定した。この配列決定から、rpoDの3つの異なる変異体を特定した(図19)。野生型rpoDのアミノ酸配列を、配列番号29に示す。rpoD変異体1のアミノ酸配列を、配列番号30に示す。rpoD変異体2のアミノ酸配列を、配列番号31に示す。rpoD変異体3のアミノ酸配列を、配列番号32に示す。変異体1及び2は点変異に沿った切断を含んだ(変異体1はP504S及びE515Kを含んだ一方で、変異体2はY571Fを含んだ)一方で、変異体3は5個の点変異(M51L、Y143H、V229I、K236N、及びD492V)を含んだ。理論によって拘束されることを望むものではないが、切断型変異体は、抗シグマ因子により効率的に結合し得、組み換え抗体の改善された発現をもたらすと考えられる。個々に分析したrpoD変異体は蛍光の増加を示し、これは抗体発現の増加を示した(図20)。最高平均蛍光強度を有する変異体(変異体2)はまた、配列決定されたクローンの中でも最も豊富であった(図20)。1ODの細胞からの非還元可溶性試料を使用する3つのrpoD変異体の抗体発現を、標準的な方法を使用して、ウェスタンブロットによって全長抗IL−13の発現についても評価した(図21A及び21B)。まず、変異体を本来の宿主株66C4内で評価し(図21A)、これは、変異体2が最高レベルの発現を示したという点において、フローサイトメトリー分析と類似した結果を示した。抗IL−13発現プラスミドMD169及び3つの変異体を、異なる宿主株、67A6(ΔfhuA、ΔphoA、ilvG2096(IlvG+;Valr)、ΔmanA、Δprc、spr43H1、lacIQ、ΔompT、ΔmenE742、degP210A)内へと個々に形質転換して、シグマ因子変異体の転移可能性を評価した。変異体は全て、天然RpoDタンパク質配列を発現する67A6と比較して、抗体発現を増加させることが見出され(図21B)、これは、変異体が他の宿主E.coli株に転移され、全長抗IL−13抗体の発現レベルの増加を与え得ることを実証した。
結論として、本発明の方法を使用して、抗体及び半抗体を含む組み換えポリペプチドの改善された発現を有する細胞(例えば、細菌)を設計することができる。複数巡の選別に渡って細胞が生存可能のままであるという事実は、特に、複数の部位で変異を有する細菌のより高速な特定を含む、ハイスループットスクリーニングアプローチの文脈において、いくつかの利点を有する。本方法は、化学変異原性、標的化変異原性、またはトランスポゾンに基づく変異原性を含む、プラスミド由来DNAまたはゲノムDNAのいずれかのいくつかの変異原性アプローチと適合する。
他の実施形態
前述の発明は、明確な理解のために例証及び実施例によって多少詳細に説明されているものの、これらの説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。