本発明は、本明細書において、DLL4発現および/または活性、例えば、発現および/または活性の上昇、または、有害な発現および/または活性と関連する病的状態の、例えば、処置または予防に有用な抗DLL4抗体を提供する。ある実施態様では、本発明の抗体は、腫瘍、癌、および/または細胞増殖性障害を処置するために使用される。ある実施態様では、本発明の抗体は、血管形成に関連する病的状態を処置するために使用される。
別局面では、本発明の抗DLL4抗体は、DLL4の検出および/または単離、例えば、各種組織および細胞型におけるDLL4の検出用の試薬として有用性を見出す。
本発明はさらに、抗DLL4抗体、および、抗DLL4抗体をコードするポリヌクレオチドの作製法を提供する。
一般的技術
本明細書に記載されるか、または参照される技術および処置は、広く十分に理解されていて、当業者によって通例法にしたがって一般的に採用されるもので、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd.edtion(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F.M. Ausubel, et al.eds.(2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH (M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987))に記載される、広く利用される方法である。
定義
「単離」抗体とは、特定され、その天然の環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然環境の汚染成分とは、該抗体の診断的または治療的使用を妨げると考えられる物質であって、酵素、ホルモン、およびその他の、タンパク様または非タンパク様溶質を含んでもよい。好ましい実施態様では、抗体は、(1)Lowry法で定量した場合、抗体重量の95%を超えるレベルまで精製され、そして最も好ましくは重量の99%を超えるレベルまで精製されるか、(2)スピンカップ分離器によってN−末端、または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を獲得するのに十分な程度にまで精製されるか、または(3)Coomassie(商標)ブルー、または好ましくは銀染色使用の還元的、または非還元的状態におけるSDS−PAGEによって均一とされるまで精製される。単離抗体は、組み換え細胞内のインシトゥー状態の抗体を含む。なぜなら、抗体の天然環境の少なくとも一成分は存在しないからである。同様に、単離抗体は、組み換え細胞周囲の媒体における抗体を含む。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも一つの精製ステップによって調製される。
「単離」核酸分子とは、特定されて、該抗体核酸の天然供給源において通常関連する、少なくとも一つの汚染性核酸分子から分離される核酸分子である。単離核酸分子は、それが天然で見出される形状または背景とは異なる。したがって、単離核酸は、それが天然細胞において存在するときの核酸分子とは区別される。しかしながら、単離核酸分子は、通常抗体を発現する、細胞内に含まれる核酸分子、例えば、天然細胞のものとは異なる染色***置に存在する核酸分子を含む。
「Kabatと同様の、可変ドメインの番号付け」、または「Kabatと同様の、アミノ酸位置の番号付け」という用語、およびその変異種は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)による抗体編集において、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのために使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の直線的アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮、または挿入に対応して、より少ない、または余分なアミノ酸を含んでもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に、単一のアミノ酸挿入(Kabatによれば52a)、および、重鎖FR残基82の後に、複数の挿入残基(Kabatによれば82a、82b、および82c)を含んでもよい。残基に関するKabat番号付けは、任意の抗体について、該抗体配列の、整列によるKabatの「標準的」番号付け配列との相同領域において決定されてもよい。
本明細書で用いる、「事実上同様の」、または「事実上同じ」という語句は、二つの数値(一般的には、一方は本発明の抗体に関連し、他方は、参照/比較抗体に関連する)の間の近似が十分に高度であって、当業者であれば、この二つの数値間の差は、前記数値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の背景において、ほとんど、または、全く生物学的および/または統計学的に有意ではないと見なすと考えられる程度のものであることを示す。前記二つの数値間の差は、参照/比較抗体の数値の関数として、好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
「結合親和性」とは、一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位、および、その結合パートナー(例えば、抗原)の間の、非共有的相互作用の加算合計強度を指す。別様に指示しない限り、本明細書で用いる「結合親和性」とは、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー同士の間における1:1相互作用を反映する、内在的結合親和性を指す。そのパートナーYに対する、分子Xの親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表される。親和性は、当該分野で既知の一般的方法、例えば、本明細書に記載される方法によって測定することが可能である。低親和性抗体は、一般に、抗原への結合が遅く、速やかに解離する傾向を持つが、一方、高親和性抗体は、一般に、抗原に対しより速やかに結合し、より長く結合状態に留まる傾向を持つ。結合親和性を測定するには、種々の方法が知られるが、その内のいずれのものも、本発明の目的のために使用が可能である。特異的例示実施態様が下記に記載される。
一実施態様では、本発明による“Kd”または「Kd値」は、下記のアッセイによって記載されるように、対象抗体のFab形と、その抗原によって実行される、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。アッセイは、一連の規定濃度の未標識抗原の存在下に、最小濃度の(125I)標識抗原とFabを平衡させ、次いで、抗Fab抗体塗布プレートによって結合抗原を捕捉することによって、Fabの、溶液結合親和性を測定する(Chen,et al.,(1999)J.Mol Biol 293:865−881)。このアッセイのための条件を定めるため、マイクロタイタープレート(Dynex)に、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)に溶解した、捕捉性の抗Fab抗体(Cappel Labs)5μg/mlを塗布し、一晩置き、次いで、PBSに溶解した2%(w/v)ウシ血清アルブミン、室温(約23℃)、2〜5時間によってブロックした。非吸着性プレート(Nunc #269620)では、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、対象Fabの連続希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,(1997)Cancer Res.57:4593−4599における抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致して)。次に、この対象Fabを一晩インキュベートする。一方、インキュベーションは、平衡の達成を確保するために、さらに長期間(例えば、65時間)続けてもよい。その後、この混合物を、捕捉プレートに移し、室温でインキュベートする(例えば、1時間)。次に、溶液を除き、プレートを、PBSに溶解した0.1%Tween(登録商標)20で8回洗浄する。プレートを乾燥後、150μl/ウェルのシンチレーション試薬(MicroScint(商標)−20;Packard)を加え、プレートを、TopCountガンマカウンター(Packard)において10分間カウントする。最大結合の20%以下を示す各Fabの濃度を、競合結合アッセイに用いるために選ぶ。別の実施態様では、BIAcorc(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用い表面プラズモン共鳴によって、KdまたはKd値を、25℃で、固定抗原CM5チップについて〜10反応単位(RU)として測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストラン・バイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示にしたがって、N−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を、10mMの酢酸ナトリウムpH4.8で希釈し5μg/ml(〜0.2μM)とし、次いで、5μl/分の流速で注入し、約10反応単位(RU)の結合タンパクを実現する。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して、無反応基をブロックする。反応速度測定のために、Fabの2倍連続希釈(0.78nMから500nM)を、PBS溶液として、約25μl/分の流速で、0.05%Tween(登録商標)20(PBST)と共に、25℃で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時適合させることによって、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIAcore Evaluation Software、3.2バージョン)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konとして計算する。例えば、Chen,Y.,et al.,(1999)J.Mol Biol 293:865−881を参照されたい。上の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M−1S−1を超えた場合、オン速度は、蛍光消光法を用いて定量することが可能である。この方法は、漸増濃度の抗原の存在下に、20nMの抗抗原抗体(Fab形)のPBS液(pH7.2)の、分光光度計、例えばフロー停止器装備分光光度計(Aviv Instruments)、または、攪拌赤色キュベット付き8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、25℃における蛍光発射強度(励起=295nm;発射=340nm、16nm帯域幅)の増減を測定する。
本発明による「オン速度」または「会合速度」、または「会合速度」または“kon”は、さらに、固定抗原CM5チップ、〜10反応単位(RU)について、25℃でBIAcore(商標)−2000、またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いて、上記と同じ表面プラズモン共鳴法によって定量することが可能である。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストラン・バイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示にしたがって、N−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を、10mMの酢酸ナトリウムpH4.8で希釈し5μg/ml(〜0.2μM)とし、次いで、5ul/分の流速で注入し、約10反応単位(RU)の結合タンパクを実現する。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して、無反応基をブロックする。反応速度測定のために、Fabの2倍連続希釈(0.78nMから500nM)を、PBS溶液として、約25μl/分の流速で、0.05%Tween(登録商標)20(PBST)と共に、25℃で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時適合させることによって、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIAcore Evaluation Software、3.2バージョン)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konとして計算する。例えば、Chen,Y.,et al.,(1999)J.Mol Biol 293:865−881を参照されたい。しかしながら、上の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M−1S−1を超えた場合、オン速度は、蛍光消光法を用いて定量することが好ましい。この方法は、漸増濃度の抗原の存在下に、20nMの抗抗原抗体(Fab形)のPBS液(pH7.2)の、分光光度計、例えばフロー停止器装備分光光度計(Aviv Instruments)、または、攪拌赤色キュベット付き8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定した、25℃における蛍光発射強度(励起=295nm;発射=340nm、16nm帯域幅)の増減を測定する。
本明細書で用いる「ベクター」という用語は、それが連結される別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一型は、「プラスミド」である。これは、さらに別のDNAセグメントを連結させることが可能な、環状の、2本鎖DNAループを指す。もう一型のベクターは、ファージベクターである。もう一型のベクターは、ウィルスベクターである。このベクターでは、添加DNAセグメントは、ウィルスゲノムの中に連結される。あるベクターは、導入された宿主細胞において自律複製することが可能である(例えば、細菌性複製起源を持つ細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入と同時に宿主細胞のゲノムの中に組み込まれ、そのため、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、それらが動作可能的に連結される遺伝子の発現を指令することが可能である。このようなベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または、単純に「組み換えベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA法に有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形を取る。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、時に、相互交換的に使用される。なぜなら、プラスミドは、もっとも普通に使用されるベクター形だからである。
本明細書で相互交換的に使用される、「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さの、ヌクレオチドポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオシキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはその類縁体、または、DNAまたはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によって、ポリマーの中に組み込むことが可能な任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびその類縁体を含んでもよい。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合、該ポリマーの重合の前または後に付与してもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、合成後、例えば、ラベルとの結合などによってさらに修飾されてもよい。他の種類の修飾としては、例えば、「キャップ」、一つ以上の天然ヌクレオチドの、類縁体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルフォスフォネート、フォスフォトリエステル、フォスフォアミデート、カルバミン酸塩など)による修飾、および、荷電結合(例えば、フォスフォロチオエート、フォスフォロジチオエートなど)による修飾、側基、例えば、タンパク(例えば、ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなど)を含むもの、介在因子(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を有するもの、キレート剤を含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属など)、アルキル化剤を含むもの、修飾結合を含むもの(アルファアノマー核酸など)が、未修飾形ポリヌクレオチドと並んで、挙げられる。さらに、糖類に通常存在するヒドロキシル基のいずれのものも、例えば、フォスフォン酸基、リン酸基によって置換されてもよいし、標準的保護基によって保護されてもよいし、または、追加のヌクレオチドとのさらに新たな結合のために活性化されてもよいし、または、固相、または半固相支持体に結合されてもよい。5′および3′末端OHは、リン酸化されるか、または、アミン、または、1から20個の炭素原子を有する、有機キャップ基によって置換されてもよい。他のヒドロキシル基も、誘導体形成して標準的保護基とされてもよい。ポリヌクレオチドはさらに、当該分野で一般的に知られる、リボースまたはデオキシリボース糖の類縁体、例えば、2′−O−メチル−、2′−O−アリル、2′−フルオロ−、または2′−アジド−リボース、炭素環糖類縁体、アルファーアノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状類縁体、および、メチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシド類縁体を含むことが可能である。一つ以上のフォスフォジエステル結合が、別の結合基によって置換されてもよい。そのような別様結合基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、リン酸塩が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR′、CO、またはCH2(「フォルムアセタール」)によって置換される実施態様が挙げられる。なお、前式において、RまたはR′は、独立に、H、または、任意にエーテル(−O−)結合、アリール、アルケニル、シクロアルケニル、またはアラルジルを含む、置換または未置換アルキル(1−20C)である。ポリヌクレオチドにおける、必ずしも全ての結合が同じである必要はない。上の記述は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で参照する全てのポリヌクレオチドに適用される。
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」は、一般に、ただし必ずしもそうとは限らないが、長さが約200ヌクレオチド長の、一般に短い、一般に一本鎖の、一般に合成ポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに排除的ではない。ポリヌクレオチドに関する上の記述は、等しく、完全に、オリゴヌクレオチドにも適用が可能である。
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、候補配列と、特定のペプチドまたはポリペプチド配列とを整列させ、要すれば、最大の配列同一性パーセントを達成するようギャップを導入した後、かつ、保存的置換を配列同一性の一部と考慮しないで得られた、特定ペプチドまたはポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である、候補配列のアミノ酸残基のパーセントと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを求めるための整列は、従来技術の能力の範囲内の種々の方法で、例えば、一般に入手が可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMgAlign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて実現することが可能である。当業者であれば、比較される配列同士の全長に亘って最大整列を実現するのに必要な、いずれかのアルゴリスムを含め、整列を測定するための適切なパラメータを決定することが可能である。しかしながら、本発明の目的のためには、アミノ酸配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が著作権を有し、ソースコードは、ユーザー文書と共に、U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559に寄託され、米国著作権登録番号第TXU510087号の下に登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genetech,Inc.,South San Francisco,Californiaによって一般に市販されている。ALIGN−2プログラムはUNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のために作られている。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定されており、変動しない。
アミノ酸配列比較のためにALIGN−2が用いられる場合、任意のアミノ酸配列Bとの、に関する、または、に対する、任意のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(これは、別に、任意のアミノ酸配列Bと、に関し、または、に対し、あるアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む、任意のアミノ酸配列Aと表現することも可能である)は、下記のように計算される:
100掛ける・分数X/Y
上式において、Xは、AおよびBのプログラム整列において、配列整列プログラムALIGN−2によって同一マッチと評価されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが理解されよう。
別様に指示しない限り、本明細書で用いるアミノ酸配列同一性%値は、全て、ALIGN−2コンピュータプログラムを用いて、先の段落で記述したようにして得られたものである。
本明細書で用いる“DLL4”(相互交換的に「デルタ様4」とも呼ばれる)という用語は、特記または文脈から別様に指示されない限り、任意の天然の、または変異(天然であると、合成であるとを問わず)DLL4ペプチドを指す。「天然配列」という用語は、天然の短縮形または分泌形(例えば、細胞外ドメイン配列)、天然の変異形(例えば、選択的スプライス形)、および天然の対立遺伝子変異形を特異的に包含する。「野生型DLL4」という用語は、一般に、天然DLL4タンパクのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。「野生型DLL4配列」という用語は、一般に、天然のDLL4に見られるアミノ酸配列を指す。
本明細書で用いる「Notch受容体」(相互交換的に“Notch”とも呼ばれる)という用語は、特記または文脈から別様に指示されない限り、任意の、天然または変異(天然であると、合成であるとを問わず)Notch受容体ポリペプチドを指す。ヒトは、四つのNotch受容体(Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4)を有する。「天然配列」という用語は、天然の短縮形または分泌形(例えば、細胞外ドメイン配列)、天然の変異形(例えば、選択的スプライス形)、および天然の対立遺伝子変異形を特異的に包含する。「野生型Notch受容体」という用語は、一般に、天然Notch受容体タンパクのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。「野生型Notch受容体配列」という用語は、一般に、天然のNotch受容体に見られるアミノ酸配列を指す。
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、もっとも広い意味で相互交換的に用いられ、モノクローナル抗体(例えば、完全長または完全なモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異的抗体(例えば、所望の生物活性を示す限りにおいて、二重特異的抗体)を含み、さらに、(本明細書においてさらに詳細に記述されるように)いくつかの抗体断片を含んでもよい。抗体は、ヒトのもの、ヒト化、および/または親和性熟成されたものであってもよい。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分の配列が、抗体間で大きく異なり、それが、各特定の抗体において、その特定の抗原に対する結合および特異性に使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均一には分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方に見られる、相補性決定領域(CDR)、または超可変領域(HVR)と呼ばれる、三つのセグメントに集中する。可変ドメインの比較的高度に保存される領域を、骨組構造(FR)と呼ぶ。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、三つのCDRによって接続される、大部分βシート構造を採用する、四つのFR領域を含む。CDRは、このβシート構造を接続し、ある場合には、その一部となるループを形成する。各鎖のCDRは、FR領域によって近接して一緒に保持され、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照)。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合には直接には関与しないが、各種エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与を示す。
抗体をパパイン消化することによって、それぞれが単一抗原結合部位を有する“Fab”断片と呼ばれる、二つの、同じ抗原結合断片、および、残余の“Fc”断片が得られる。後者の名前は、それが容易に結晶化することができる、その能力を反映する。ペプシン処理によって、二つの抗原結合部位を有し、かつ、依然として抗原に架橋結合することが可能な、F(ab′)2断片が得られる。
“Fv”とは、完全な抗原認識および結合部位を含む、抗体の最小断片である。2本鎖Fv分子では、この領域は、緊密な、非共有的連結で結ばれた、1本の重鎖および1本の軽鎖の可変ドメインのダイマーから成る。単一鎖Fv分子では、1本の重鎖および1本の軽鎖可変ドメインが、屈曲性ペプチドリンカーによって共有的に連結され、そのため、軽鎖および重鎖は、2本鎖Fv分子のものと同様の「ダイマー」構造として連結することが可能である。各可変ドメインの、三つのCDRが相互作用を持ち、このVH−VLダイマーの表面に抗原結合部位を定めるのは、この形態においてである。以上まとめると、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一可変ドメイン(または、抗原に対して特異的な、僅か三つのCDRしか含まない、Fvの半分)であっても、全体結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し、結合する能力を持つ。
Fab断片はさらに、軽鎖の定常ドメイン、および重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を持つ。Fab′断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において数個の残基を余分に持つことによって、Fab断片とは異なる。この残基は、抗体のヒンジ領域の1個以上のシステインを含む。定常ドメインのシステイン残基(単数または複数)が、遊離チオール基を担持するFab′を、本明細書ではFab′−SHと表示する。F(ab′)2抗体断片は、もともと、その間にヒンジ・システインを有する、Fab′断片ペアとして生産された。抗体断片の、他の化学的結合も知られている。
任意の脊椎動物種から得られた抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、はっきりと異なる二つのタイプの内の一方に割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンには、大きく五つのクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMで、これらの内のいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分割することが可能である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する、重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンの、サブユニット構造および三次元形態も周知である。
「抗体断片」は、完全な抗体の一部しか含まないが、その一部は、それが完全な抗体に存在する場合、その部分と通常関連する機能の内の少なくとも一つ、好ましくは大部分または全てを保持することが好ましい。抗体断片の例としては、Fab、Fab′、F(ab′)2、およびFv断片;ダイアボディー;線状抗体;単一鎖抗体分子;および、抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原結合能を保持する。別の実施態様では、抗体断片、例えば、Fc領域を含む断片は、それが完全な抗体に存在する場合Fc領域と通常関連する生物機能、例えば、FcRn結合、抗体半減期修飾、ADCC機能、および補体結合の内の少なくとも一つを保持する。一実施態様では、抗体断片は、完全な抗体と事実上同様のインビボ半減期を有する、一価抗体である。例えば、そのような抗体断片は、該断片にインビボ安定性を付与することが可能なFc配列と連結する、抗原結合アームを含んでもよい。
本明細書で用いる「超可変領域」、“HVR,”または“HV”という用語は、配列において超可変的で、および/または、構造的に定められたループを形成する、抗体の可変ドメインを指す。一般に、抗体は、六つの超可変領域:VHに三つ(H1、H2、H3)、およびVLに三つ(L1、L2、L3)を含む。いくつかの超可変領域区画が用いられており、本明細書にも包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、もっとも広く用いられている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。Chothiaは、代わりに、構造的ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM超可変領域は、KabatのCDRと、Chothiaの構造ループの間の妥協の産物であり、Oxford Molecular AbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用される。「接触」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域それぞれの残基を下記に掲げる。
超可変領域は、下記のように「延長型超可変領域」を含んでもよい:VLでは、24−36または24−34(L1)、46−56または50−56(L2)、および89−97(L3)、および、VHでは、26−35(H1)、50−65または49−65(H2)、および93−102、94−102、または95−102(H3)。可変ドメインの残基は、これらの定義のそれぞれについて、上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
「骨組構造」または“FR”残基は、本明細書で定義される超可変領域以外の、可変ドメイン残基である。
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」という用語は、事実上均一な抗体集団から得られる抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一であるか、および/または、同じエピトープ(単数または複数)に結合する抗体を指す。ただし、モノクローナル抗体の生産時に生じる可能性のある変異種は除く。このような変異種は、一般に、少量ながら存在するものである。このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体であり、複数のポリペプチド配列の中から、単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって獲得される。例えば、選択プロセスは、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールから、一意のクローンの選択を含んでもよい。選ばれた標的結合配列は、例えば、標的に対する親和性をさらに上げるために、標的結合配列をヒト化するため、多重特異的抗体を創出するためなどのために変えられてもよいこと、および、この標的結合配列を変えられた抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることを理解しなければならない。通常、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含む、ポリクローナル抗体調製品と違って、モノクローナル抗体調製品の、各モノクローナル抗体は、ある抗原の、ある単一決定基のみを指向する。その特異性の外に、モノクローナル抗体調製品は、通常、他の免疫グロブリンによって汚染されないという利点を有する。「モノクローナル」という修飾語は、抗体が、事実上均一な抗体集団から得られたものであることを示すものであって、その抗体が、何かの特定の方法によって生産されることを要求するものと考えてはならない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は、種々の技術、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495(1975);Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,:Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas 563−681,(Elsevier,N.Y.,1981)を参照)、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);および、Lee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)、および、ヒトの免疫グロブリン配列をコードする、ヒト免疫グロブリン座位または遺伝子の一部、または全てを有する動物において、ヒト、またはヒト様抗体を生産するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号パンフレット;国際公開第1996/34096号パンフレット;国際公開第1996/33735号パンフレット;国際公開第1991/10741号パンフレット;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993);米国特許第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,591,669号明細書(全て、GenPharm);同第5,545,807号明細書;国際公開第1997/17852号パンフレット;米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;および同第5,661,016号号明細書;Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992);Longberg et al.,Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology,14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);および、Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)によって作製されてもよい。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、最小の、非ヒト免疫グロブリン由来配列を含む、キメラ抗体である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、非ヒト動物種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または、非ヒト霊長類の超可変領域によって置換されるヒト免疫グロブリンである。ある場合、ヒト免疫グロブリンの骨組構造領域(FR)の残基は、対応する、非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体、またはドナー抗体にも認められない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、通常は、二つの可変ドメインの事実上全てを含み、該可変ドメインにおいて、超可変ループの全て、または事実上全ては、非ヒト免疫グロブリンに対応し、FRの全て、または事実上全ては、ヒトの免疫グロブリン配列である。さらに、ヒト化抗体は、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を任意に含む。これ以上の詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);および、Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。さらに、下記の総説、およびその中に引用される文献を参照されたい:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1988);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)。
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、ある特定動物種由来の抗体、またはある特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一、または相同の重鎖および/または軽鎖の一部を有するが、一方、鎖(単数または複数)の残余部分は、それらが所望の生物活性を呈する限り、別の動物種由来の抗体、または、別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、および、そのような抗体の断片と同一か、または相同である(米国特許第4,816,567号明細書、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。本明細書で用いるヒト化抗体は、キメラ抗体のサブセットである。
「単一鎖Fv」または“scFv”抗体断片は、単一ポリペプチド鎖として存在する、抗体のVHおよびVLドメインを含む。一般に、scFvポリペプチドはさらに、該scFvポリペプチドが、抗原結合のために所望の構造を形成することが可能となるように、VHおよびVLドメインの間にポリペプチドリンカーを含む。scFvに関する総説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
「抗原」とは、ある抗体が選択的に結合することが可能な、指定の抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、またはその他の、天然または合成化合物であってもよい。標的抗原はポリペプチドであることが好ましい。
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を有する、小型の抗体断片であって、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続する重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体断片を指す。同じ鎖の二つのドメインの対合を不可能とするほど短いリンカーを用いると、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合することを強制され、二つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディーについては、例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により詳細に記載される。
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体、および/または、本明細書に開示されるヒト抗体の作製技術の内のいずれかを用いて作製される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体に関するこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に排除する。
「親和性熟成」抗体とは、その、一つ以上のCDRに、一つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更(単数または複数)を持たない親抗体と比べて、抗原に対する該抗体の親和性に向上がもたらされる抗体である。好ましい親和性熟成抗体は、標的抗原に対し、ナノモル、場合によってはピコモルの親和性を有する。親和性熟成抗体は、当該分野で既知の手順によって生産される。Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)は、VHおよびVLドメインシャフリングによる親和性熟成を記載する。CDRおよび/または骨組構造残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schier et al.Gene 169:147−155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−9(1995);および、Hawkins et al,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)に記載される。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然のFc領域配列、または、Fc領域アミノ酸配列変異種)による生物活性を指し、抗体アイソタイプに応じて変動する。抗体エフェクター機能の例としては:C1q結合および補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在細胞傷害作用(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調整;およびB細胞活性化が挙げられる。
「抗体依存性細胞介在細胞傷害作用」または「ADCC」とは、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌IgGは、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原担持標的細胞に対して特異的に結合し、次いで、該標的細胞を細胞毒素によって殺すことを可能とする、細胞傷害性の一形態である。抗体は、これらの細胞傷害性細胞を「武装」させるので、この殺作用には必須である。ADCCを仲介する一次細胞、NK細胞は、FcγRIIIしか発現しないが、一方、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)の464ページの表3にまとめられる。対象分子のADCC活性を評価するためには、インビトロADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号明細書または同第5,821,337号明細書、または米国特許第6,737,056号明細書に記載されるアッセイを実行してもよい。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、抹消血単球(PBMC)、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:652−656(1998)に開示されるものと同様の、動物モデルにおいて評価してもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが好ましい。ADCCを仲介するヒト白血球の例としては、抹消血単球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が挙げられるが、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然の供給源、例えば、血液から単離されてもよい。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。好ましいFcRは、ヒトFcRの天然配列である。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)で、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスで、これらの受容体の、対立遺伝子変異種、および選択的スプライス形を含む受容体である。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制受容体」)を含む。これらは、主に、その細胞原形質ドメインにおいて異なるだけの、近似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞原形質ドメインに、免疫受容体のチロシン主体活性化モチーフ(ITAM)を含む。抑制受容体FcγRIIBは、その細胞原形質ドメインに、免疫受容体のチロシン主体抑制モチーフ(ITIM)を含む(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)による総説を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994);および、de Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において総説されている。将来特定されるものも含めて、他のFcRも、本明細書の、この用語“FcR”によって包含される。本用語はさらに新生児受容体のFcRであって、母親のIgGの胎児への輸送を担当し(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))、免疫グロブリンのホメオスターシスを調節する受容体を含む。国際公開第00/42072号パンフレット(Presta)は、FcRへの結合が向上、または低減させられた抗体変異種を記載する。この特許公報の内容を、特に指定して引用により本明細書に含める。さらに、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。
FcRへの結合を測定する方法は既知である(例えば、Ghetie 1997,Hinton 2004)。インビボにおけるヒトFcRnに対する結合、ヒトFcRnに対する高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスにおいて、または、トランスフェクションしたヒト細胞系統において、または、Fc変異ポリペプチドを投与した霊長類において、定量することが可能である。
「補体依存性細胞傷害性」、または“CDC”とは、補体の存在下における標的細胞の分解を指す。古典的な補体経路の活性化は、補体システムの第1成分(C1q)の、その認識抗原に結合した(適切なサブクラスの)抗体に対する結合によって起動される。補体の活性化を評価するためには、CDCアッセイ、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるものと同様のアッセイを実行してもよい。
Fc領域のアミノ酸配列を変えられ、C1q結合能が上昇、または下降させられたポリペプチド変異種が、米国特許第6,194,551B1号明細書、および国際公開第99/51642号パンフレットに記載される。これらの特許公開公報の内容を、特に指定して引用により本明細書に含める。さらに、Idusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)を参照されたい。
「Fc領域含有ポリペプチド」という用語は、Fc領域を含む、抗体または免疫アドヘジン(下記の定義参照)などのポリペプチドを指す。Fc領域のC−末端リジン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、該ポリペプチドの精製時、または、該ポリペプチドをコードする核酸の組み換え加工によって除去してもよい。したがって、Fc領域を有するポリペプチドを含有する、本発明による組成物は、K447含有ポリペプチド、全K447除去ポリペプチド、または、K447含有、およびK447非含有ポリペプチドの混合物を含むことが可能である。
「阻止性」抗体、または「拮抗」抗体とは、それが結合する抗原の生物活性を抑制するか、または低減する抗体である。好ましい阻止性抗体または拮抗抗体は、抗原の生物活性を、事実上または完全に抑制する。
本明細書で用いる「作用抗体」とは、対象ポリペプチドの機能活性の少なくとも一つを模倣する抗体である。
本発明の目的のための「ヒトアクセプター骨組構造」とは、ヒトの免疫グロブリン骨組構造、またはヒトの共通骨組構造から導かれる、VLまたはVH骨組構造のアミノ酸配列を含む骨組構造である。ヒト免疫グロブリン骨組構造、またはヒト共通骨組構造「から導かれる」ヒトアクセプター骨組構造は、それと同じアミノ酸配列を含んでもよいし、あるいは、それに先行するアミノ酸配列変化を含んでもよい。先行アミノ酸変化が存在する場合、先行アミノ酸変化は、好ましくは5個以下、好ましくは4個以下、または3個以下である。先行アミノ酸変化がVHに存在する場合、その変化は、位置71H、73H、および78Hの内の三つ、二つ、または一つだけにあることが好ましい:例えば、これらの位置におけるアミノ酸残基は、71A、73T、および/または78Aであってもよい。一実施態様では、ヒトのVLアクセプター骨組構造は、配列において、ヒトのVL免疫グロブリン骨組配列、またはヒトの共通骨組構造配列と同じである。
「ヒトの共通骨組構造」とは、ヒトの免疫グロブリンVLまたはVH骨組構造配列の選択において、もっとも普通に出現するアミノ酸残基を代表する骨組構造である。一般に、ヒトの免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行われる。一般に、配列のサブグループは、Kabatらの言うサブグループである。一実施態様では、VLに関しては、サブグループは、Kabatらの言うように、サブグループカッパIである。一実施態様では、VHに関しては、サブグループは、Kabatらの言うように、サブグループIIIである。
「VHサブグループIII共通骨組構造」は、Kabatらの重鎖可変領域サブグループIIIのアミノ酸配列から得られる共通配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIII共通骨組構造アミノ酸配列は、下記の配列:
「VLサブグループI共通骨組構造」は、Kabatらの軽鎖可変領域カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られる共通配列を含む。一実施態様では、VHサブグループI共通骨組構造アミノ酸配列は、下記の配列:
「障害」または「疾患」とは、本発明の物質/分子、または方法による処置を施した場合、それによって利益を受けると予想される全ての状態である。これは、慢性および急性の障害または疾患であって、哺乳動物を、問題の障害に対して罹りやすくさせる病的状態を含む。本発明において処置される障害の非限定的例として、悪性および良性腫瘍;上皮癌、芽細胞腫、および肉腫を含む。
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施態様では、細胞増殖性障害は癌である。
本明細書で用いる「腫瘍」とは、悪性であると良性であるとを問わず、全ての、新生の細胞成長および増殖、および、全ての前癌および癌様細胞および組織を指す。「癌」、「癌様」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」は、本明細書において言及される場合、相互に排除的ではない。
「癌」および「癌様」という用語は、通常、無統制な細胞成長/増殖によって特徴づけられる、哺乳動物における生理的状態を指すか、または記述する。癌の例として、例えば、ただしこれらに限定されないが、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このような癌のより詳細な例として、例えば、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌、すい臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、胃癌、メラノーマ、および、種々の頭部および頸部癌が挙げられる。無統制な血管形成は、本発明の組成物および方法によって処置することが可能な多くの障害を招く。それらの障害は、非新形成、および新形成病態の両方を含む。新形成物としては、例えば、前述のものが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。非新形成障害としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、不快な、または異常な過形成、関節炎、慢性関節リューマチ(RA)、乾癬、乾癬プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、アテローム硬化プラーク、糖尿病性、およびその他の増殖性網膜症で、例えば、未熟児網膜症などの網膜症、水晶体後線維増殖、血管新生緑内障、加齢性黄班変性、糖尿病性黄班浮腫、角膜血管新形成、移植角膜組織血管新形成、移植角膜組織の免疫拒絶反応、網膜/脈絡膜血管新形成、隅角血管新形成(ルベオーシス)、眼内血管新生病、血管再狭窄、動静脈変形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺過形成(グレーブズ病を含む)、角膜およびその他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺傷害/ARDS、敗血症、一次肺高血圧、悪性肺滲出、脳浮腫(例えば、急性発作/閉塞性頭部傷害/外傷と関連する)、滑膜炎症、RAにおけるパンヌス形成、骨化性筋炎、過栄養骨形成、骨関節炎(OA)、難治性腹水、多のう胞卵巣疾患、子宮内膜炎、流体疾患(すい臓炎、仕切り症候群、火傷、腸疾患)の第3間隔、子宮類線維腫、早産、IBD(クローン病および潰瘍性結腸炎)などの慢性炎症、腎臓異種移植拒絶反応、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、不快な、または異常な組織塊の成長(非癌)、出血性関節、肥大瘢痕、毛髪成長抑制、オスラー−ウェーバー症候群、膿形成肉芽腫、水晶体後線維増殖、強皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心内膜液滲出(心膜炎に関連するものなど)、および胸水滲出が挙げられる。
本明細書で用いる「処置」とは、処置される個体または細胞の天然のコースを変えようとする試みとしての臨床的介入を指し、予防のためか、または臨床病理の進行時のいずれかに実行することが可能である。処置の望ましい作用としては、病気の発生または再発の阻止、症状の緩和、いずれのものであれ、病気の直接または間接の病理的結果の低減、転移の阻止、病気の進行速度の低下、病状の寛解または緩和、および、治癒または予後の改善が挙げられる。ある実施態様では、本発明の抗体は、疾病または障害の発達を遅らせるために使用される。
「個体」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。哺乳動物としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、農場動物(例えば、ウシ)、スポーツ動物、ペット(例えば、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類、マウス、およびラットが挙げられる。
処置のための「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の動物、例えば、ヒト、家畜、および農場動物、および動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなど)を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
「有効量」とは、所望の治療または予防結果を実現するために必要な、投与回数および期間において有効な量を指す。
本発明の物質/分子、作用剤または拮抗剤の「治療的有効量」は、要因、例えば、個体の病状、年齢、性別、および体重、および、物質/分子、作用剤または拮抗剤の、該個体において所望の反応を誘起する能力に応じて変動してよい。さらに、治療的有効量とは、その量においては、治療的有効作用の方が、該物質/分子、作用剤または拮抗剤の、何らかの毒作用または有害作用よりも優勢となる量である。「予防的有効量」とは、所望の予防結果を実現するために必要な、投与回数および期間において有効な量を指す。通常、ただし常にそうであるとは限らないが、予防用量は、病気の前、または初期段階で使用されるので、予防的有効量は、治療的有効量よりも少ない。
本明細書で用いる「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を抑制または阻止するか、および/または、細胞の破壊を誘起する物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位元素)、化学療法剤、例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の仲介性薬剤、酵素およびその断片(例えば、核酸分解酵素)、抗生物質、および毒素(例えば、細菌、真菌、植物、または動物起源の小型分子毒素または酵素的に活性の毒素で、その断片および/または変異種を含む毒素)、および、後述の、各種抗腫瘍剤または抗癌剤を含むことが意図される。他の細胞傷害剤は後述される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊をもたらす。
「化学療法剤」とは、癌の処置に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ、およびCYTOXAN(登録商標)シクロスフォスファミド;スルフォン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ;エチレンイミンおよびメチルアメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンフォスフォルアミド、トリエチレンチオフォスフォルアミド、およびトリメチロロメラミンなど;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類縁体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類縁体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィル酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成類縁体KW−2189およびCB1−TM1を含む);エルカセロビン;パンクラティスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロールナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムヌスチン;抗生物質、例えば、エネジン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特に、カリケアミシンガンマ1I,およびカリケアミシンオメガI1(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)を参照));ダイネミシン、例えば、ダイネミシンAなど;エスペラミシン;および、ネオカルジノスタチン発色団、および関連発色タンパク・エネジン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロロマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗体謝剤、例えば、メトトレキセート、および5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類縁体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類縁体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類縁体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎物質、例えば、アミノグルテチミド、ミトーテン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドフォスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシン、およびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)ポリサッカリド複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2′,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara−C”);チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)パクリタキセルの、クレモフォル非含有、アルブミン加工ナノ粒子処方(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類縁体、例えば、シスプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBRAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチン酸;カペシタビン(XELODA(登録商標));前記の内のいずれかの、製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体;および、前記の二つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP、すなわち、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニソロンの併用治療の短縮形、およびFOLFOX、すなわち、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))と、5−FUおよびロイコボビンとの組み合わせによる処置処方の短縮形が挙げられる。
さらにこの定義に含まれるものは、癌の増殖を促進することが可能なホルモンの作用を調整、低減、阻止、または抑制するように作用する抗ホルモン剤であり、体系的、または全身処置の形を取ることが多い。抗ホルモン剤は、それ自身がホルモンであってもよい。例としては、抗エストロゲン、および、選択的エストロゲン受容体修飾剤(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェンなど;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方調整剤(ERD);卵巣を抑制または機能停止するように働く薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作用剤、例えば、LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標)酢酸ルプロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン、およびトリプテレリン;その他の抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、およびビカルタミド;および、副腎におけるエストロゲン生産を調整する酵素アロマターゼを抑制する、アロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが挙げられる。さらに、この化学療法剤の定義は、ビスフォスフォネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)、またはOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エピドロネート、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、またはACTONEL(登録商標)リセドロネート;および、トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の遺伝子、例えば、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、および、上皮増殖因子受容体(EGF−R)の遺伝子の発現を抑制するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチン、および遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブジトシレート(ErbB−2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小型分子阻害剤、GW572016とも呼ばれる);および、前記の内のいずれかの製薬学的に受容可能な塩、酸、または誘導体を含む。
本明細書で用いる「増殖阻害剤」とは、インビトロ、またはインビボのいずれかにおいて細胞(例えば、DLL4を発現する細胞)の増殖を抑制する化合物または組成物を指す。したがって、この増殖阻害剤は、S期の細胞(例えば、DLL4を発現する細胞)のパーセントを著明に減らすものであってもよい。増殖阻害剤の例としては、細胞周期の進行を阻止する(S期以外の時点において)薬剤、例えば、G1停止およびM−期停止を誘発する薬剤が挙げられる。古典的M期阻止剤としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1停止させ、さらに進んでS期停止をもたらす薬剤は、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニソン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、およびara−Cである。さらに詳細な情報は、The Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter 1,表題“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”,Murakami et al.(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特に13ページに見出すことができる。タキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、いずれも、樹木いちいから得られる抗癌剤である。ヨーロッパいちいから得られるドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Phone−Poulenc Porer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成類縁体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定化し、これは、細胞***の抑制をもたらす。
「ドキソルビシン」は、アントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リクソ−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンである。
「抗腫瘍組成物」という用語は、少なくとも一つの活性治療剤、例えば、「抗癌剤」を含む、癌の処置に有用な組成物を指す。治療剤(抗癌剤、本明細書では、別に「抗腫瘍剤」とも呼ばれる)の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、放射線療法に使用される薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、トキシン、および、他の癌処置薬、例えば、抗VEGF中和性抗体、VEGF拮抗剤、抗HER−2、抗CD20、表皮増殖因子受容体(EGFR)拮抗剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤、エルロチニブ、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、ErbB2、ErbB3、ErbB4、またはVEGF受容体(単数または複数)の内の一つ以上に結合する、拮抗剤(例えば、中和性抗体)、血小板由来増殖因子(PDGF)および/または幹細胞因子(SCF)に対する受容体チロシンキナーゼの阻害剤(例えば、イマチニブメシレート(Gleevec(登録商標)Novartis))、TRAIL/Apo2L、および、その他の、生物活性および有機化学薬剤などが挙げられる。
本出願で用いられる「プロドラッグ」という用語は、製薬学的活性物質の前駆体または誘導体であって、親薬剤と比べて、腫瘍細胞に対しより細胞傷害性が低く、酵素的に活性化または変換されて、より活性的な親形態になるものを指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast (1986)、および Stella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247−267,Humana Press (1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、リン酸塩含有プロドラッグ、チオフォスフェート含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、ベータ−ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されるフェノキシアセタミド含有プロドラッグ、または任意に置換されるフェニルアセタミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン、および、より活性の高い細胞傷害性遊離薬剤に変換することが可能な、他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本発明において使用するためにプロドラッグ形に誘導体形成することが可能な細胞傷害剤の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、前述の化学療法剤が挙げられる。
「抗血管形成剤」または「血管形成阻害剤」とは、血管形成、脈管形成、または不要な血管透過性を直接・間接に抑制する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(例えば、抑制性RNA(RNAiまたはsiRNA))、ポリペプチド、単離タンパク、組み換えタンパク、抗体、その複合体または融合タンパクを指す。例えば、抗血管形成剤は、上に定義した血管形成剤に対する抗体または他の拮抗剤、例えば、VEGFに対する抗体、VEGF受容体、可溶性VEGF受容体断片に対する抗体、または、VEGF受容体シグナル伝達を阻止する小型分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SU11248(スニチニブマレート)、AMG706、または、例えば、国際公開第2004/113304号パンフレットに記載されるもの)である。抗血管形成剤はさらに、天然の血管形成阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなどを含む。例えば、Klagsbrun and D′Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、表3は、悪性メラノーマにおける抗血管形成治療を掲げる);Ferrara & Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、表2は、抗血管形成因子を列挙する);および、Sato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば、表1は、臨床治験で使用された抗血管形成剤を列挙する)を参照されたい。
本発明の組成物、およびその作製法
本発明は、抗DLL4抗体を含む製薬組成物を含む組成物、および抗DLL4抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本明細書で用いる組成物は、DLL4に結合する、一つ以上の抗体、および/または、DLL4に結合する、一つ以上の抗体をコードする配列を含む、一つ以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物はさらに、適切な担体、例えば、製薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、当該分野で周知のバッファーを含む賦形剤を含んでもよい。
本発明はさらに、単離抗体およびポリヌクレオチドの実施態様を包含する。本発明はさらに、事実上純粋な抗体、およびポリヌクレオチドの実施態様を包含する。
本発明の抗DLL4抗体はモノクローナルであることが好ましい。さらに、本発明の範囲に含まれるものは、本明細書に提供される抗DLL4抗体のFab、Fab′、Fab′−SH、およびF(ab′)2断片である。これらの抗体断片は、酵素消化などの従来手段によって創出してもよいし、あるいは、組み換え技術によって生成してもよい。この抗体断片は、キメラであっても、またはヒト化されていてもよい。これらの断片は、下記に記載される診断および治療目的のために有用である。
モノクローナル抗体は、事実上均一な抗体の集団から獲得される。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量において天然に出現する可能性のある突然変異を除いては、同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別々の抗体の混合物ではないという、その抗体の特徴を示す。
本発明の抗DLL4モノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature,256:495(1975)によって記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することが可能であるが、あるいは、組み換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製してもよい。
ハイブリドーマ法では、マウス、またはその他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターを免疫化して、免疫化のために使用されたタンパクに対して特異的に結合する抗体を生産する、または生産することが可能なリンパ球を誘起する。DLL4に対する抗体は、一般に、DLL4およびアジュバントを複数回皮下(sc)、または腹腔内(ip)に注入することによって誘起する。DLL4は、当該分野で周知の方法によって調製してもよく、そのあるものは、下記に本明細書において記述される。一実施態様では、免疫グロブリン重鎖のFc部分に融合したDLL4の細胞外ドメイン(ECD)を含む、DLL4誘導体によって動物を免疫化する。好ましい実施態様では、DLL4−IgG1融合タンパクで動物を免疫化する。動物は、通常、DLL4と、モノフォスフォリル脂質A(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.,Hamilton,MT)との、免疫原性融合体または誘導体に対して免疫化され、溶液は、複数箇所の皮内に注入される。2週間後、動物をブーストする。7から14日後、動物は採血され、血清について抗DLL4力価を定量した。力価がプラトーに達するまで動物をブーストした。
それとは別に、リンパ球は、インビトロで免疫化してもよい。次に、リンパ球を、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
このように調製したハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の、親の骨髄腫細胞の増殖または生存を抑制する、一つ以上の物質を含む、適切な培養培地に撒き、育成する。例えば、もしも、親の骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマ用の培養培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質は、HGPRT欠乏細胞の増殖を阻止する。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選ばれた抗体生産細胞による抗体の安定な高レベル生産を支持し、HAT培地のような培地に対して感受性を持つものである。これらの中でも、好ましい骨髄腫細胞系統は、マウスの骨髄腫細胞系統、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手が可能な、MOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍から得られたもの、および、米国基準菌株保存機関、Rockville,Maryland,USAから入手が可能なSp−2またはX63−Ag8−653細胞である。ヒトのモノクローナル抗体の生産用として、ヒトの骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統が従来から記載されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
ハイブリドーマ細胞が成育する培養培地は、DLL4に向けたモノクローナル抗体の生産に関して定量される。ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法、または、インビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または固相酵素免疫測定法(ELISA)によって定量することが好ましい。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のScatchard分析によって定量することが可能である。
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞が特定された後、このクローンを、限界希釈処置によってサブクローンし、標準的方法によって育成してもよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D−MEM、またはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物において、腹水腫瘍としてインビボで育成してもよい。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、通例の免疫グロブリン精製処置、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーによって、培養培地、腹水液、または血清から適切に分離される。
本発明の抗DLL4抗体は、併合ライブラリーを用い、所望の一つの活性、または複数の活性を有する合成抗体クローンを求めてスクリーニングすることによって作製することも可能である。原理的には、ファージコートタンパクに融合した抗体可変領域(Fv)の各種断片を提示するファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることによって、合成抗体クローンが選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによって選別にかけられる。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現するクローンは、抗原に吸着され、したがって、ライブラリー中の非結合クローンから分離される。次に、この結合クローンは、抗原から溶出され、さらに、抗原吸着/溶出から成る数サイクルを重ねることによって濃縮させることが可能である。本発明の抗DLL4抗体は、どれも、適切な抗原スクリーニング処置を設計し、対象ファージクローンを選別し、次いで、該対象ファージクローンのFv配列、および、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3に記載される、適切な定常領域(Fc)を用いて、完全長の、抗DLL4抗体クローンを構築することによって獲得することが可能である。
抗体の抗原結合ドメインは、約110アミノ酸から成る、二つの可変(V)領域、一方は、軽鎖(VL)由来のもの、もう一方は重鎖(VH)由来のものから形成される。これらは、共に、三つの超可変ループ、すなわち、相補性決定領域(CDR)を提示する。可変ドメインは、ファージにおいて、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されるように、VHおよびVLが、短い、屈曲性のペプチドで共有的に連結される、単一鎖Fv(scFv)断片として、あるいは、それぞれが定常ドメインに融合され、非共有的に相互作用を持つ、Fab断片として機能的に提示することが可能である。本明細書で用いる場合、scFvをコードするファージクローン、およびFabをコードするファージクローンは、まとめて「Fvファージクローン」、または「Fvクローン」と呼ぶ。
VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローンし、ファージライブラリーにおいてランダムに再結合させ、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されるように、抗原結合クローンについて探索することが可能である。免疫化された供給源から得られたライブラリーは、ハイブリドーマの構築を要することなく、免疫原に対し高い親和性を持つ抗体を提供する。それとは別に、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)によって記載されるように、天然のレパトーリーをクローン化して、全く免疫化無しで得られる、広範な非自己および自己抗原に対する、単一供給源のヒト抗体を得ることが可能である。最後に、天然のライブラリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されるように、幹細胞由来の、未再編成V−遺伝子セグメントを合成的にクローンし、超可変のCDR3領域をコードするランダム配列を含むPCRプライマーを用い、インビトロで再編成を実行することによって合成的に作製することが可能である。
繊維状ファージを用い、マイナーコートタンパクpIIIに融合させることによって抗体断片を提示する。この抗体断片は、例えば、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されるように、VHおよびVLが、屈曲性ポリペプチドスペーサによって同じポリペプチド鎖に接続される、単一鎖Fv断片として提示することが可能であり、あるいは、例えば、Hoogeboom et al.,Nucl.Acids Res.,19:4133−4137(1991)に記載されるように、一方の鎖はpIIIに融合され、他方鎖は、細菌宿主細胞の細胞周辺腔に分泌され、そこで、Fab−コートタンパク構造の集合体が、野生型コートタンパクのあるものを押しのけることによってファージ表面に提示されるFab断片として提示することが可能である。
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒトまたは動物から採取される免疫細胞から得られる。抗DLL4クローンに偏向したライブラリーが所望ならば、被検体をDLL4で免疫化し、抗体反応を発生させ、脾臓細胞、および/または、循環性B細胞、他の抹消血リンパ球(PBL)を回収して、ライブラリー構築に備える。好ましい実施態様では、抗DLL4クローンに偏向した、ヒトの抗体遺伝子断片ライブラリーは、機能的なヒトの免疫グロブリン遺伝子アレイを担持する(かつ、機能的な内因性抗体生産システムを欠如する)トランスジェニックマウスにおいて、抗DLL4抗体反応を発生させ、そうすることによって、DLL4免疫化が、DLL4に対するヒト抗体を生産するB細胞を生じるようにさせることによって得られる。ヒト抗体を生産するトランスジェニックマウスの生成は後述される。
抗DLL4反応細胞集団をさらに濃縮するには、DLL4特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離するための、適切なスクリーニング処理、例えば、DLL4アフィニティークロマトグラフィーによる細胞分離、または、細胞を、フルオロクロム標識DLL4に吸着させ、次いで、蛍光表示細胞分取法(FACS)を用いることによって実現することが可能である。
それとは別に、免疫化されないドナーからの脾臓細胞、および/またはB細胞、または他のPBLを用いることによって、可能な抗体ライブラリーの、より優れた代表物が得られ、かつ、DLL4が抗原性ではない動物種(ヒト、または非ヒト)による抗体ライブラリーの構築が可能となる。インビトロで抗体遺伝子構築体を組み込んだライブラリーのためには、幹細胞を被検体から採取すると、未再編成抗体遺伝子セグメントをコードする核酸が得られる。対象免疫細胞は、様々の動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ類、luprine、イヌ類、ネコ類、ブタ類、ウシ類、ウマ類、および鳥類などから得ることが可能である。
抗体の可変領域遺伝子セグメント(VHおよびVLセグメントを含む)をコードする核酸は、対象細胞から回収され、増幅される。再編成済みVHおよびVL遺伝子ライブラリーの場合は、Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:3833−3837(1989)に記載されるように、リンパ球からゲノムDNAまたはmRNAを単離し、次いで、再編成済みVHおよびVL遺伝子の5′および3′末端に適合するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行することによって種々のV遺伝子レパートリーを発現させることによって、所望DNAを得ることが可能である。Orlandiら(1989)およびWard et al.,Nature,341:544−546(1989)に記載されるように、成熟V−ドメインをコードするエキソンの5′末端に逆行プライマー、およびJ−セグメント内部に基づく順行プライマーを用いて、cDNAおよびゲノムDNAからV遺伝子を増幅することが可能である。しかしながら、cDNAから増幅する場合には、Jones et al.,Biotechnol.,9:88−89(1991)に記載されるように、逆行プライマーはさらに、リーダーエキソンに基づいてもよく、順行プライマーは、Sastry et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:5728−5732(1989)に記載されるように、定常領域内部に基づいてもよい。相補性を最大にするためには、Orlandi et al.(1989)またはSastry et al.(1989)に記載されるように、プライマーの中に縮重を組み込んでもよい。ライブラリーの多様性は最大化することが好ましいが、そのためには、例えば、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)の方法に記載されるように、あるいは、Orum et al.,Nucleic Acids Res.,21:4491−4498(1993)の方法に記載されるように、免疫細胞核酸サンプル中に存在する、利用可能な全てのVHおよびVL再編成体を増幅するために、各V−遺伝子ファミリーを標的としたPCRプライマーを使用する。増幅DNAを発現ベクターにクローンするために、Orlandi et al.(1989)によって記載されるように、一端のタグとして、PCRプライマーの内部に、希少な制限部位を導入することも可能であるし、あるいは、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)に記載されるように、標識プライマーによってさらにPCR増幅することによって導入することも可能である。
合成的に再編成されたV遺伝子レパートリーを、インビトロでV遺伝子セグメントから得ることが可能である。ヒトのVH−遺伝子セグメントの多くは、クローニングされ、配列決定され(Tomlinson et al.,J.Mol.Biol.,227:776−798(1992)に報告される)、かつマップされる(Matsuda et al.,Nature Genet.,3:88−94(1993)に報告される)。これらのクローニングされたセグメント(H1およびH2ループの、全ての大きな立体配座を含む)を用いて、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されるように、種々の配列および長さを持つH3ループをコードするPCRプライマーを用いて、多様なVH遺伝子レパートリーを生成することが可能である。さらに、VHレパートリーは、Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457−4461(1992)に記載されるように、全ての配列多様性を、単一長の長いH3ループに基づいて作製することが可能である。ヒトのVκおよびVλセグメントは、クローニングされ、配列決定されており(Williams and Winter,Eur.J.Immunol.,23:1456−1461(1993)に報告される)、それらを用いて合成の軽鎖レパートリーを作製することが可能である。ある範囲のVHおよびVLフォールド、およびL3およびH3長に基づく、合成V遺伝子レパートリーは、相当の構造的多様性の抗体をコードする。V−遺伝子コードDNAの増幅後、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)の方法にしたがって、生殖系列V−遺伝子セグメントをインビトロで再編成することが可能である。
抗体断片のレパートリーは、VHおよびVL遺伝子レパートリーをいくつかのやり方で組み合わせることによって構築することが可能である。各レパートリーは、異なるベクターにおいて創出することが可能であり、これらのベクターは、例えば、Hogrefe et al.,Gene,128:119−126(1993)に記載されるようにインビトロで組み合わせることも可能であるし、あるいは、例えば、組み合わせ感染によって、例えば、Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265−2266(1993)に記載されるloxPシステムを用いて、インビボで組み合わせることも可能である。このインビボ組み合わせ法は、大腸菌の形質転換効率によって課せられるライブラリーサイズの制限を克服するために、Fab断片の二鎖性を利用する。天然のVHおよびVLレパートリーを別々に、一方はファージミドに、他方はファージベクターにクローニングする。次に、ファージミド含有細菌をファージ感染して、各細胞が異なる組み合わせを持ち、かつ、ライブラリーサイズは、存在する細胞の数(約1012クローン)によってのみ制限されるようにして、二つのライブラリーを組み合わせる。両ベクターとも、インビボ再編シグナルを含むので、VHおよびVL遺伝子は、単一レプリコンに再結合され、ファージ粒子に共同パックされる。これらの巨大ライブラリーによって、高親和性(約10−8MのKd−1)の多様な抗体が多数得られる。
それとは別に、レパートリーは、例えば、Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978−7982(1991)に記載されるように、同じベクターに順次クローニングされてもよいし、あるいは、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)に記載されるように、PCRによって一種に組立てしてから、クローニングしてもよい。PCR組立ては、屈曲性ペプチドスペーサをコードするDNAによってVHおよびVL DNAを連結して、単一鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するために使用することが可能である。さらに別の技術では、Embleton et al.,Nucl.Acids Res.,20:3831−3837(1992)に記載されるように、「細胞内PCR組立て」を用いて、PCRによってリンパ球内でVHおよびVL遺伝子を結合し、次いで、連結遺伝子のレパートリーをクローニングする。
天然ライブラリー(天然か、または合成)によって生産される抗体は、中等の親和性(約106から107M−1のKd−1)を持つことが可能であるが、上記Winter et al.(1994)に記載されるように、二次ライブラリーを構築し、その中から再選択することによって親和性熟成をインビトロで模倣することが可能である。例えば、Howkins et al.,J.Mol.Biol.,226:889−896(1992)の方法、または、Gram et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:3576−3580(1992)の方法にあるように、間違え易いポリメラーゼ(Leung et al.,Technique,1:11−15(1989)に報告される)を用いることによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することが可能である。さらに、選ばれた個別のFvクローンにおいて、対象CDRにまたがる、ランダム配列を有すプライマーによるPCRを用いることによって、一つ以上のCDRにランダムに突然変異を発生させ、比較的高度な親和性を持つクローンを求めてスクリーニングすることによって、親和性熟成を実行することが可能である。国際公開第9607754号パンフレット(1996年3月14日公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定域に突然変異を導入し、軽鎖遺伝子ライブラリーを創製する方法を記載する。もう一つの効果的な方法は、Marks et al.,Biotechnol.,10:779−783(1992)に記載されるように、ファージディスプレイによって選ばれたVHまたはVLドメインを、免疫化されないドナーから得られた天然のVドメイン変異種のレパートリーと再結合させ、数ラウンドの鎖シャッフリングを行って、より高い親和性を求めてスクリーニングすることである。この技術によって、10−9M範囲の親和性を持つ抗体および抗体断片の生産が可能となる。
DLL4核酸およびアミノ酸配列は、当該分野において既知である。DLL4をコードする核酸配列は、DLL4の所望領域のアミノ酸配列を用いて設計することが可能である。それとは別に、GenBankのアクセス番号NM_019074のcDNA配列(または、その断片)がある。DLL4は、膜貫通タンパクである。細胞外領域は、8個のEGF様反復列の外、全てのNotchリガンドの間で保存され、受容体結合に必要なDSLドメインを含む。さらに、この予想タンパクは、膜貫通領域、および、触媒モチーフを全く欠く細胞質内尾部を含む。ヒトのDLL4タンパクは、685個のアミノ酸のタンパクであり、下記の領域:シグナルペプチド(アミノ酸1−25);MNNL(アミノ酸26−92);DSL(アミノ酸155−217);EGF様(アミノ酸221−251);EGF様(アミノ酸252−282);EGF様(アミノ酸284−322);EGF様(アミノ酸324−360);EGF様(アミノ酸366−400);EGF様(アミノ酸402−438);EGF様(アミノ酸440−476);EGF様(アミノ酸480−518);膜貫通(アミノ酸529−551);細胞原形質ドメイン(アミノ酸552−685)を含む。ヒトDLL4のアクセス番号は、NM_019074であり、マウスDLL4のアクセス番号は、NM_019454である。
DLL4をコードするDNAは、当該分野で既知の種々の方法によって調製することが可能である。そのような方法としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、Engels et al.,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,28:716−734(1989)に記載される方法の内のいずれかによる化学合成、例えば、トリエステル、亜リン酸塩、フォスフォロアミダイト、およびH−フォスフォン酸法が挙げられる。一実施態様では、発現宿主細胞によって好まれるコドンが、DLL4コードDNAの設計に用いられる。それとは別に、DLL4をコードするDNAは、ゲノムまたはcDNAライブラリーから単離することが可能である。
DLL4をコードするDNA分子を構築した後、このDNA分子は、プラスミドなどの発現ベクターにおいて発現調節配列に作動可能に連結される。その際、この調節配列は、ベクターによって形質転換される宿主細胞によって認識される。一般に、プラスミド配列は、宿主細胞と適合性を持つ動物種から得られた複製および調節配列を含む。ベクターは、通常、複製部位の外に、形質転換細胞において表現型選択の実行を可能とするタンパクをコードする配列を有す。原核および真核宿主細胞における発現にとって好適なベクターは、当該分野で既知であり、いくつかは、本明細書においても記載される。真核生物、例えば、酵母、または、多細胞生物、例えば、哺乳動物から得られた細胞を使用してもよい。
DLL4をコードするDNAは、分泌リーダー配列に、任意に作動可能に連結され、宿主細胞によって、発現産物が、培地に分泌されることを可能とする。分泌リーダー配列の例としては、例えば、stII、エコチン、lamB、ヘルペスGD、lpp、アルカリフォスファターゼ、インベルターゼ、およびアルファ因子が挙げられる。さらに、本発明で使用するのに好適なのは、プロテインAの36アミノ酸リーダー配列である(Abrahmsen et al.,EMBO J.,4:3901(1985))。
好ましくは、本発明の、前述の発現またはクローニングベクターによって、宿主細胞をトランスフェクション、または形質転換し、通例のもので、プロモーターを誘起するように適切に修飾された栄養培地で培養し、形質転換細胞を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅する。
トランスフェクションとは、何らかのコード配列が実際に発現されるかどうかとは無関係に、宿主細胞によって発現ベクターが取り込まれることを指す。例えば、CaPO4沈殿、および電気穿孔などの、数多くのトランスフェクション法が当業者には知られる。トランスフェクションが上手くいったかどうかは、一般に、宿主細胞の内部において、このベクターの動作を示す何かの兆候が起こった時点で認識される。トランスフェクションのための方法は、当該分野で周知であり、いくつかは本明細書にも後述される。
形質転換は、DNAを、該DNAが、染色体外要素として、または染色体組み込み体として複製可能となるように、生物体に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、その細胞に適切な標準技術を用いて形質転換は実行される。形質転換のための方法は、当該分野で周知であり、いくつかは本明細書において後述される。
DLL4を生産するために使用される原核宿主細胞は、上にSambrookらの中に概説されるようにして培養することが可能である。
DLL4を生産するために使用される哺乳動物宿主細胞は、当該分野で周知であり、その内のいくつかは本明細書にも記述される、種々の培地において培養することが可能である。
本開示に言及される宿主細胞は、インビトロ培養細胞の外、宿主動物の体内の細胞も包含する。
DLL4の精製は、当該分野で認知済みの方法、その内のいくつかは本明細書にも記述される、によって実現してもよい。
精製DLL4は、基質、例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、各種アクリルコポリマー、ヒドロキシルメタクリレートゲル、ポリアクリルおよびポリメタクリルコポリマー、ナイロン、中性およびイオン性担体など、ファージディスプレイクローンのアフィニティークロマトグラフィー分離に使用するのに好適な基質に付着させることが可能である。基質に対するDLL4タンパクの付着は、Methods in Enzymology,vol.44(1976)に記載される方法で実現することが可能である。ポリサッカリド基質、例えば、アガロース、デキストラン、またはセルロースに対してタンパクリガンドを付着させるために一般に用いられる技術は、ハロゲン化シアノゲンによって担体を活性化し、次いで、このペプチドリガンドの一次脂肪族または芳香族アミンを、活性化基質に結合させることを含む。
それとは別に、DLL4を、吸着プレートのウェルに塗布すること、吸着プレートに固定した宿主細胞において発現させること、または、細胞分取に使用すること、ストレプトアビジン塗布ビーズによって捕捉されるようにビオチンに結合すること、または、ファージディスプレイライブラリーの選別のために使用される、他の任意の周知の方法において使用することが可能である。
ファージライブラリーを、該ファージ粒子の少なくとも一部が吸着体と結合するのに好適な条件下で、固定DLL4と接触させる。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は、生理的条件を模倣するように選ばれる。固相に結合したファージは、洗浄され、例えば、Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,88:7978−7982(1991)に記載されるように酸で溶出されるか、あるいは、例えば、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)によって記載されるようにアルカリによって溶出されるか、あるいは、Clackson et al.,Nature,353:624−628(1991)の抗原競合法と同様の手順によって、DLL4抗原競合体によって溶出される。ファージは、1回の選択ラウンドで20〜1,000倍濃縮することが可能である。さらに、この濃縮ファージは、細菌培養において育成し、さらに数回の選択ラウンドを経過させることが可能である。
選択の効率は、多くの要因、例えば、洗浄時の解離反応速度、単一ファージにおける複数の抗体断片が同時に抗原に嵌合することが可能かどうか、などの要因に依存する。速やかな解離反応速度(および、弱い結合親和性)を有する抗体は、短時間の洗浄、多価ファージディスプレイ、および、固相に対し高密度の抗原コーティングを使用することによって保持することが可能である。高密度は、多価相互作用によってファージを安定化させるばかりでなく、一旦解離したファージの再結合を促進する。解離反応速度の低い(および、結合親和性の高い)抗体の選択は、Bass et al.,Proteins,8:309−314(1990)、および国際公開第92/09690号パンフレットに記載されるように、長時間の洗浄、および一価のファージディスプレイを用いることによって、かつ、Marks et al.,Biotechnol.,10:779−783(1992)に記載されるように、低密度の抗原コーティングを用いることによって促進することが可能である。
DLL4に対し、異なる親和性を持つファージ抗体、場合によっては、親和性が僅かしか違わないファージ抗体を区別することも可能である。しかしながら、ある選ばれた抗体のランダムな突然変異誘発(例えば、前述のアフィニティー熟成技術のあるもので行われるもののような)は、たくさんの突然変異種を生じさせるが、その多くは抗原に結合し、ごく僅かのものは比較的高い親和性で結合すると考えられる。DLL4を制限した場合、希少な高親和性ファージは、競合の結果排除される可能性がある。全ての高親和性突然変異を保持するために、ファージを、過剰なビオチニル化DLL4と、ビオチニル化DLL4がDLL4に対する標的モル親和定数よりも低いモル濃度となる条件下でインキュベートすることが可能である。次に、高親和性結合性ファージを、ストレプトアビジン塗布常磁性ビーズによって捕捉することが可能である。このような「平衡捕捉」は、抗体を、その結合親和性にしたがって捕捉することを可能とし、その感度は、比較的低い親和性を持つ、きわめて過剰なファージの中から、親和性が僅かに2倍しか高くない突然変異クローンの単離を可能とする。さらに、解離反応速度に基づいて識別するように、固相に結合したファージの洗浄に使用される条件を操作することも可能である。
抗DLL4クローンは、活性選択してもよい。一実施態様では、本発明は、Notch受容体(例えば、Notch1、Notch2、Notch3、および/またはNotch4)と、DLL4の間の結合は阻止するが、Notch受容体と第2タンパクの間の結合は阻止しない抗DLL4抗体を提供する。このような抗DLL4抗体に対応するFvクローンは、(1)前述のようにしてファージライブラリーから抗DLL4クローンを単離し、ファージクローンのこの単離集団を、該集団を適切な細菌宿主において育成することによって、任意に増幅すること;(2)それに対して、それぞれ、阻止活性および非阻止活性が望まれるDLL4および第2タンパクを選択すること;(3)抗DLL4ファージクローンを、固定DLL4に吸着させること;(4)過剰な第2タンパクを用いて、第2タンパクの結合決定基と重複、または、それと共有されるDLL4−結合決定基を認識する、不要のクローンがあればそれらを全て溶出すること;および、(5)工程(4)の後でも依然として吸着したままのクローンを溶出すること、によって選択することが可能である。所望の阻止性/非阻止性を有するクローンは、本明細書に記載される選択手順を1回以上繰り返すことによってさらに任意に濃縮することが可能である。
ハイブリドーマ由来モノクローナル抗体をコードするDNA、または、本発明のファージディスプレイFvクローンは、従来の手順を用いて(例えば、ハイブリドーマまたはファージDNA鋳型から、対象領域をコードする重鎖および軽鎖を特異的に増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いることによって)、簡単に単離され、かつ、配列決定される。一旦単離されたならば、このDNAは、発現ベクターの中に設置し、次に、宿主細胞、例えば、大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または、他の条件下では免疫グロブリンを生産しない骨髄腫細胞中にトランスフェクションし、該組み換え宿主細胞において、所望のモノクローナル抗体の合成を実現することが可能である。抗体コードDNAの、細菌における組み換え発現に関する総説としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs,130:151(1992)が挙げられる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖および/または軽鎖定常領域をコードする、既知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は、上記Kabatらから得ることが可能である)と結合させて、完全または部分長の重鎖および/または軽鎖をコードするクローンを形成することが可能である。この目的のために、任意のアイソタイプの定常領域、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEの定常領域を使用すること、および、その定常領域は、ヒトまたは任意の動物種から獲得することが可能であることが理解されよう。一動物種(例えば、ヒト)の可変ドメインDNA由来のFvクローンで、別の動物種の定常領域DNAに融合させて、「ハイブリッド」の完全長重鎖および/または軽鎖のコード配列(単数または複数)を形成したものは、本明細書で用いる「キメラ」および「ハイブリッド」抗体の定義の中に含められる。好ましい実施態様では、ヒト可変領域DNA由来のFvクローンは、ヒトの定常領域DNAに融合されて、全体ヒトの、完全または部分長重鎖および/または軽鎖のコード配列(単数または複数)を形成する。
本発明のハイブリドーマから得られた、抗DLL4抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の、マウスの相同配列の代わりに、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによってさらに修飾することが可能である(例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)の方法に見られるように)。ハイブリドーマ由来抗体またはその断片、あるいは、Fvクローン由来抗体またはその断片をコードするDNAは、該免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て、または一部を共有的に結合することによってさらに修飾することが可能である。このようにして、本発明のFvクローン、またはハイブリドーマ由来抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
抗体断片
本発明は、抗体断片を含有する。ある状況では、抗体全体よりも、抗体断片を使用する方が有利なことがある。断片の比較的小さいサイズのために、速やかな***が可能となり、固形腫瘍への接近が改善される可能性がある。
抗体断片の生産のために種々の技術が開発されている。従来、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化によって得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992);およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)。しかしながら、今では、これらの断片は、組み換え宿主細胞によって直接生産することが可能である。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は、全て、大腸菌において発現させ、分泌させることが可能であり、したがって、これらの断片を、容易に大量に生産することが可能である。それとは別に、Fab′−SH断片を、直接大腸菌から回収し、化学的に結合させて、F(ab′)2断片を形成することが可能である(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の方法によれば、F(ab′)2断片は組み換え宿主細胞培養から直接単離される。救済受容体結合性エピトープ残基を含み、インビボ半減期を延長させたFabおよびF(ab′)2断片が、米国特許第5,869,046号明細書に記載される。抗体断片生産のための、他の技術も、当業者には明白であろう。別の実施態様では、選択抗体は、単一鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号パンフレット;米国特許第5,571,894号明細書および同第5,587,458号明細書を参照されたい。FvおよびsFvは、定常領域を欠くが、結合部位は元のままの、唯一の分子である。したがって、これらは、インビボ使用の際、非特異的結合の抑制に好適である。sFv融合タンパクは、sFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにエフェクタータンパクを付着させた融合体を生成するように構築してもよい。Antibody Engineering,ed.Borrebaeck上記を参照されたい。さらに、抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるように「線状抗体」であってもよい。このような線状抗体断片は、単一特異的であっても、二重特異的であってもよい。
ヒト化抗体
本発明はヒト化抗体を含有する。非ヒト抗体をヒト化するために種々の方法が当該分野において知られる。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から得られた一つ以上のアミノ酸残基を、その中に導入させて有することが可能である。これらの、非ヒトアミノ酸残基は、よく、「輸入」残基と呼ばれるが、これらは、通常、「輸入」可変領域から取られる。ヒト化は、事実上、Winterおよびその共同研究者らの方法にしたがって(Jones et al.(1986)Nature 321:522−525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536)、ヒト抗体の対応配列の代わりに、超可変領域配列を置換することによって行われる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であって、元のヒトの可変ドメインが、事実上より少なくなるように、非ヒト動物種由来の対応配列によって置換される抗体である。実際には、ヒト化抗体は、通常、いくつかの超可変領域残基、および、場合によってはいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
ヒト化抗体作製のために使用される、軽鎖および重鎖の、ヒト可変ドメインの選択は、抗原性の抑制のためにきわめて重要である。いわゆる「最善適合」法によれば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリーに対してスクリーニングされる。次に、げっ歯類配列に対してもっとも近似するヒト配列が、ヒト化抗体のヒトの骨組構造として受容される(Sims et al.(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901)。もう一つの方法は、軽鎖または重鎖のある特定サブグループの、全てのヒト抗体の共通配列から得られた特定骨組構造を使用する。この同じ骨組構造は、いくつかの異なるヒト化抗体に使用することが可能である(Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623)。
さらに、抗体は、抗原に対する高い親和性、および、他の有利な生物学的特性を保有しつつヒト化されることが重要である。この目標を達成するために、一方法によれば、ヒト化抗体は、親配列、および、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いた、種々の概念的ヒト化産物の分析過程によって調製される。免疫グロブリンの三次元モデルは、普通に利用可能であり、当業者には親しいものである。選択された、免疫グロブリン候補配列の、予想される三次元立体配座構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが市販されている。これらの表示を検査することによって、免疫グロブリン候補配列の機能における、これら残基の予想される役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンの、その抗原に対する結合能に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、レシピエントおよび輸入配列からFR残基を選択し、所望の抗体特性、例えば、標的抗原(単数または複数)に対する親和性の増加が実現されるように、それらを組み合わせることが可能となる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響において、直接に、そしてもっとも実質的に関与する。
ヒト抗体
本発明の、ヒトの抗DLL4抗体は、前述のように、既知の、ヒト定常ドメイン配列(単数または複数)と、ヒト由来ファージディスプレイライブラーから選ばれた、Fvクローン可変ドメイン配列(単数または複数)を組み合わせることによって構築することが可能である。それとは別に、本発明の、ヒトの、抗DLL4モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することも可能である。ヒトモノクローナル抗体生産のための、ヒトの骨髄腫細胞およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系が、例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)によって記載される。
現在では、内因性免疫グルブリン生産を全く見ることなく、免疫化によって、ヒト抗体の完全レパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生産することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異マウスにおいて、抗体の重鎖連結域(JH)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体生産の完全抑制をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異マウスにヒトの生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを転送すると、抗原チャレンジによって、ヒト抗体の生産がもたらされる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照されたい。
さらに、遺伝子シャッフリングを用いて、非ヒトの、例えば、げっ歯類の抗体から、ヒトの抗体を得ることが可能である。この場合、ヒト抗体は、最初の非ヒト抗体と同様の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によれば、前述のようなファージディスプレイ技術によって得られた、非ヒト抗体断片の重鎖または軽鎖可変領域のいずれかが、ヒトのVドメイン遺伝子のレパートリーによって置換され、それによって、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvまたはFabキメラの集団が創出される。抗原によって選択することによって、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvまたはFabで、そこにおいては、一次ファージディスプレイクローンにおいて対応する非ヒト鎖の除去と同時に破壊された抗原結合部位を、ヒト鎖が回復する、すなわち、エピトープが、ヒト鎖のパートナーを支配する(インプリントする)キメラ抗体断片が単離される。残余の非ヒト鎖を置換するためにこのプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開の、国際公開第93/06213号パンフレットを参照)。従来の、CDR移植による非ヒト抗体のヒト化と違って、この技術は、非ヒト起源のFRまたはCDRを全く含まない、完全なヒトの抗体を提供する。
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有する、モノクローナルの、好ましくは、ヒトの、またはヒト化抗体である。本発明の場合、結合特異性の一つは、DLL4に対するものであり、他方は、他の任意の抗原に対する。例示の二重特異性抗体は、DLL4タンパクの二つの異なるエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体はさらに、DLL4を発現する細胞に対し、細胞傷害性薬剤を局在化するために使用してもよい。これらの抗体は、DLL4結合性アーム、および、細胞傷害剤(例えば、サポニン、抗インターフェロンα、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート、または放射性同位元素ハプテン)に結合するアームを持つ。二重特異性抗体は、完全長抗体として、または、抗体断片(例えば、F(ab′)2二重特異性抗体)として調製することが可能である。
二重特異性抗体の作製法は当該分野において既知である。従来、二重特異性抗体の組み換え生産は、異なる特異性を持つ、二つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアの同時発現に基づいていた(Milstein and Cuello,Nature,305:537(1983))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クワドローマ)は、10種の異なる抗体分子から成る混合物を生産する可能性があり、この内、適正な二重特異的構造を持つものはただ一つである。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって実行される、適正分子の精製は、面倒で、かつ、生産収率は低い。同様の手順が、1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号パンフレット、およびTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655(1991)に開示される。
別の、より好ましい方法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する、抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、少なくともヒンジの一部、CH2、およびCH3領域を含む、免疫グロブリン定常ドメイン配列と行われることが好ましい。融合部の少なくとも一部において、軽鎖結合に必要な部位を含む、重鎖の第1定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合部、および、要すれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時にトランスフェクションする。これによって、構築に使用される三つのポリペプチド鎖の不等比率が最適収率を与える実施態様において、三つのポリペプチド断片の相互比の調整に大きな融通性が得られる。しかしながら、少なくとも二つのポリペプチド鎖の、同等比の発現が高い収率をもたらすか、あるいは、その比は、特に重要性を持たない場合には、二つのポリペプチド鎖、または三つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を一つの発現ベクターに挿入することも可能である。
本法の一つの好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、一アームに第1結合特異性、および、他方アームに、ハイブリッド免疫グロブリンの重鎖−軽鎖ペア(第2の結合特異性を与える)を有する、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖から構成される。この非対称構造は、所望の二重特異性化合物を、不要な免疫グロブリン鎖結合から容易に分離させることが見出された。なぜなら、免疫グロブリン軽鎖は、この二重特異性抗体の片方だけにしか存在しないので、分離がし易くなるからである。この方法は、国際公開第94/04690号パンフレットに記載される。二重特異性抗体の生成に関するさらに詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
もう一つの方法によれば、一対の抗体分子の界面を、組み換え細胞培養体から回収される、ヘテロダイマーのパーセントが最大となるように加工することが可能である。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメンの、少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面の、一つ以上の小型アミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)によって置換される。大型側鎖(単数または複数)と同じ、又は近似の大きさを持つ相補的「腔」が、大型アミノ酸側鎖を、小型側鎖(例えば、アラニン、またはトレオニン)で置換することによって、第2抗体分子の界面に創出される。これによって、ホモダイマーなどの、他の、不要な最終産物を上回って、ヘテロダイマーの収率を上げるための機構が得られる。
二重特異性抗体は、架橋結合される、または「ヘテロ接合される」抗体を含む。例えば、このヘテロ接合体における抗体の一方は、アビジンに結合させ、他方はビオチンに結合させることが可能である。このような抗体が、例えば、有害細胞に対して免疫系細胞を標的させるために(米国特許第4,676,980号)、および、HIV感染の処置のために(国際公開第91/00360号パンフレット、国際公開第92/00373号パンフレット、および欧州特許第03089号明細書)提案されている。ヘテロ接合抗体は、都合のよいものであれば、いずれの架橋結合法を用いて作製してもよい。好適な架橋結合剤は周知であり、いくつかの架橋結合法とともに、米国特許第4,676,980号明細書に記載される。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術も文献に記載される。例えば、二重特異性抗体は、化学的結合を用いて調製することが可能である。Brennan et al.,Science,229:81(1985)は、完全な抗体を、タンパク分解酵素によって切断して、F(ab′)2断片を生成する手順を記載する。これらの断片は、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を阻止するために、ジチオール複合体形成剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下に還元する。次に、得られたFab′をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次に、Fab′−TNB誘導体の一方を、メルカプトエチルアミンによって還元してFab′−チオールに再変換し、等モル量の、他方のFab′−TNB誘導体と混ぜ合わせて、二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定のための薬剤として使用することが可能である。
最近の進歩によって、大腸菌からのFab′−SH断片の回収が容易になったが、これらの断片を化学的に結合して二重特異性抗体を形成することが可能である。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab′)2分子の生産を記載する。各Fab′断片は大腸菌から分離して分泌され、インビトロで管理された化学結合に供され二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞、および正常なヒトT細胞に結合が可能であるだけでなく、ヒトの乳癌目標物に対する、ヒトの細胞傷害性リンパ球の分解活性を誘導することが可能である。
組み換え細胞培養体から二重特異性抗体断片を直接作製し、単離するために種々の技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて生産されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。FosおよびJunタンパク由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合によって結合させて、二つの異なる抗体から成るFab′部分とする。この抗体ホモダイマーを、ヒンジ領域において還元して、モノマーを形成し、次いで、再度酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はさらに、抗体ホモダイマーの生産のために利用することが可能である。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片作製の、別の機構を提供する。この断片は、軽鎖可変ドメイン(VL)に、リンカーによって接続される重鎖可変ドメイン(VH)を含み、その際、リンカーが短すぎるために、同じ鎖における二つのドメインの間の対向は不可能とされる。したがって、一断片のVHおよびVLドメインは、別断片の相補的VLおよびVHドメインと対向することを強制されるので、二つの抗原結合部位が形成される。単一鎖Fv(sFv)ダイマーを用いて二重特異性断片を作製する、もう一つの戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
2価を超える抗体も考慮の対象とされる。例えば、三重特異性抗体を調製することは可能である。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
多価抗体
多価抗体は、該抗体が結合する抗原を過剰発現する抗体によって、二価抗体よりも速やかに取り込まれる(および/または異化される)と考えられる。本発明の抗体は、3個以上(例えば、4価抗体)の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラスとは別に)であることが可能であり、このような抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸を組み換え的に発現することによって簡単に生産することが可能である。多価抗体は、ダイマー化ドメイン、および3個以上の抗原結合部位を含むことが可能である。好ましいダイマー化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(または、から成る)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域、および、Fe領域に対してアミノ末端側を持つ3個以上の結合部位を含む。本発明において好ましい多価抗体は、3から約8個、好ましくは4個の抗原結合部位を含む(または、から成る)。この多価抗体は、二つ以上の可変ドメインを含む、少なくとも一つのポリペプチド鎖(および、好ましくは二つのポリペプチド鎖)を含む。例えば、ポリペプチド鎖(単数または複数)は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fcを含んでもよい。前式において、VD1は第1可変ドメインであり、VD2は第2可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の一ポリペプチド鎖であり、X1およびX2は、アミノ酸またはポリペプチドであり、nは0または1である。例えば、このポリペプチド鎖(単数または複数)は、VH−CH1−屈曲性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖;または、VH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含んでもよい。本発明の多価抗体は、さらに、少なくとも二つの(好ましくは、四つの)軽鎖可変ドメインポリペプチドを含む。本発明の多価抗体は、例えば、約2から約8個の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。本発明の考察の対象とされる軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメイン、および、任意にさらにCLドメインを含む。
抗体変異種
ある実施態様では、本明細書に記載される抗体の、アミノ酸配列修飾体(単数または複数)も考察の対象とされる。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、該抗体核酸の中に適切なヌクレオチド変化を導入することによって調製される。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内部の残基の欠失、および/または該残基への挿入、および/または、該残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを行って、最終構築体に、該最終構築体が所望の特性を有する限り、到達してもよい。アミノ酸変更は、配列決定が行われた時点で、被検抗体アミノ酸配列の中に導入されてもよい。
突然変異誘発のための好ましい位置である、抗体のある残基または領域を特定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085によって記載されるもので「アラニン走査突然変異誘発法」と呼ばれる。この方法で、一残基、または一群の標的残基が特定され(例えば、arg,asp,his,lys,およびgluなどの荷電残基)、該アミノ酸の抗原との相互作用に影響を及ぼすために、中性、または負に荷電したアミノ酸(もっとも好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)によって置換される。次に、その置換部位に、または、該部位のために、さらにそれ以外の変異種を導入することによって、置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置を微細に調節する。こうすると、アミノ酸配列変動を導入するための位置はあらかじめ指定されるが、突然変異の性質自体をあらかじめ指定する必要はない。例えば、ある任意の部位における突然変異の性能を分析するには、その標的コドンまたは領域においてala走査またはランダム突然変異誘発を行ない、発現された免疫グロブリンを、所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列の挿入は、長さが1残基から、百以上の残基を含むポリペプチドの範囲までの、アミノ−および/またはカルボキシ−末端融合ばかりでなく、単一または複数アミノ酸の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N−末端メチオニル残基を有する抗体、または、細胞傷害性ポリペプチドに融合される抗体が挙げられる。抗体分子の、他の挿入性変異体としては、抗体のN−またはC−末端の、酵素(例えば、ADEPT)、または、抗体の血清半減期を延長させるポリペプチドへの融合が挙げられる。
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N−結合、またはO−結合である。N−結合とは、炭水化物成分の、アスパラギン残基の側鎖に対する付着を指す。トリペプチド配列、すなわち、Xがプロリン以外の任意のアミノ酸である、アスパラギン−X−セリン、および、アスパラギン−X−トレオニンは、アスパラギン側鎖に対する、炭水化物成分の酵素的付着のための認識配列である。したがって、ポリペプチドにおいてこれらトリペプチド配列のいずれかが存在すると、それは、可能なグリコシル化部位を創出する。O−結合グリコシル化は、糖類の内の一つ、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの、ヒドロキシアミノ酸、もっとも一般的にはセリンまたはトレオニンに対する付着を指す。ただし、5−ヒドロキシプロリン、または5−ヒドロキシリシンを使用してもよい。
抗体に対するグリコシル化部位の添加は、アミノ酸配列を、それが、前述のトリペプチド配列(N−結合グリコシル化部位のために)の内の一つ以上を含むように変えることによって好都合に実現される。変更はさらに、元の抗体の配列に、一つ以上のセリンまたはトレオニン残基を付加、または置換代入する(O−結合グリコシル化部位のために)ことによって実現してもよい。
抗体がFc領域を含む場合、それに付着される炭水化物は変えられてもよい。例えば、抗体のFc領域に付着されるフコースを欠く、成熟炭水化物構造を有する抗体が、米国特許出願US2003/0157108号明細書(Presta,L.)に記載される。さらに、米国特許第2004/0093621号明細書(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd.)を参照されたい。抗体のFc領域に付着される2分性N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体が、国際公開第2003/011878号パンフレット、Jean−Mairet et al.および米国特許第6,602,684号明細書、Umana et al.に参照される。抗体のFc領域に付着されるオリゴッサカリド中に少なくとも一つのガラクトース残基を有する抗体が、国際公開第1997/30087号パンフレット、Patel et al.に報告される。さらに、そのFc領域に変更炭水化物を付着させた抗体に関しては、国際公開第1998/58964号パンフレット(Raju,S.)および国際公開1999/22764号パンフレット(Raju,S.)を参照されたい。さらに、グリコシル化を修飾させた抗原結合分子については、米国特許第2005/0123546号明細書(Umana et al.)を参照されたい。
本発明において好ましいグリコシル化変異種は、Fc領域に付着する炭水化物構造がフコースを欠くFc領域を含む。このような変異種では、ADCC機能が改善される。Fc領域はさらに、その中に、ADCCをさらに改善する、一つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、および/または334(残基のEu番号付けによる)における置換を含む。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体に関する公刊物の例としては、米国特許第2003/0157108号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;国際公開第2001/29246号パンフレット;米国特許第2003/0115614号明細書;米国特許第2002/0164328号明細書;米国特許第2004/0093621号明細書;米国特許第2004/0132140号明細書;米国特許第2004/0110704号明細書;米国特許第2004/0110282号明細書;米国特許第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号パンフレット;国際公開第2005/053742号パンフレット;Okazaki et al.,J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル抗体を生産する細胞系統の例としては、タンパクのフコシル化を欠くLec13 CHO細胞が挙げられる(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号明細書、Presta,L;および国際公開第2004/056312A1号パンフレット、Adams et al.,の特に実施例11)、およびノックアウト細胞系統、例えば、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞(Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004))。
もう一つのタイプの変異種は、アミノ酸置換変異種である。これらの変異種では、抗体分子の少なくとも一つのアミノ酸残基が、異なる残基によって置換される。置換による突然変異誘発にとってもっとも興味深い部位として、超可変領域が挙げられるが、FR変化も考慮の対象とされる。保存的置換が、「好ましい置換」という表題の下に表1に示される。もしもこのような置換が、生物学的活性に変化をもたらすならば、表1に「例示置換」と表示され、アミノ酸クラスに関連してさらに後述される、より実質的な変化を導入して、その産物をスクリーニングしてもよい。
抗体の生物学的特性の実質的修飾は、(a)置換区域のポリペプチドのバックボーン構造、例えば、シートまたは螺旋立体構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または、(c)側鎖の体積、に対するその作用において著明に異なる置換を選択することによって実現される。天然残基は、共通の側鎖特性に基づいて下記のようにグループ分けされる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性、親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖の方向性に影響を及ぼす残基:gly、pro、および、
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの内の1クラスの1メンバーを、別のクラスと交換することを必要とする。
一タイプの置換変異種は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の、一つ以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる開発のために選ばれる変異種(単数または複数)は、その作製の元になった親抗体に比べて、生物学的特性が改善される。このような置換変異種を生成するための好適な方法は、ファージディスプレイによるアフィニティー熟成を含む。簡単に言うと、超可変部位(例えば、6−7部位)を突然変異誘発して、各部位において可能な全てのアミノ酸置換を生成する。このようにして生成された抗体を、繊維状ファージ粒子から、各粒子内部にパックされるM13の遺伝子III産物に対する融合体として提示させる。次に、このファージディスプレイされる変異種を、本明細書に開示されるように、その生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を特定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行って、抗原結合に著明に貢献する超可変領域残基を特定することが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、抗体および抗原間の接触点を特定するために、抗原・抗体複合体の結晶構造を分析することは有益であろうと考えられる。このような接触残基および隣接残基は、本発明において改良を加えた技術による置換のための候補となる。一旦このような変異種が生成されたならば、この一連の変異種に対し、本明細書に記載されるようにスクリーニングを実施し、一つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を示す抗体を将来の開発のために選んでもよい。
抗体のアミノ酸変異種をコードする核酸分子は、当該分野で既知の様々な方法によって調製される。そのような方法として、例えば、ただしこれらに限定されないが、天然供給源からの単離(天然の、アミノ酸配列変異種の場合)、または、オリゴヌクレオチド介在性(または、部位指向性)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、および、抗体の、以前に調製した変異種、または非変異種のカセット突然変異誘発が挙げられる。
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域に一つ以上のアミノ酸置換を導入して、Fc領域変異種を生成することが好ましい場合がある。このFc領域変異種は、ヒンジシステインの位置も含む、一つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトのFc領域配列(例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含んでもよい。本明細書の記載および従来技術の教示に一致して、ある実施態様では、本発明の方法に使用される抗体は、野生型抗体に比べ、例えば、Fc領域に一つ以上の変化を含んでもよいことが考えられる。にも拘らず、これらの抗体は、その野生型対応物に比べ、治療的有用性のために要求される、事実上同じ特徴を保持することが考えられる。例えば、国際公開第99/51642号パンフレットに記載されるように、例えば、Fc領域においてある変化を実行し、それが、Clq結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)に変化(すなわち、上昇または低下)をもたらすことが考えられる。Fc領域変異種の、他の例については、さらに、Duncan & Winter Nature 322:738−40(1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;および国際公開第94/29351号パンフレットを参照されたい。国際公開第00/42072号パンフレット(Presta)および国際公開第2004/056312号パンフレット(Lowman)は、FcRに対する結合が向上または低減した抗体変異種を記載する。これら特許公開の内容を、引用により特に指定して本明細書に含める。さらに、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。半減期が延び、母親IgGの、胎児への転送を担当する、新生児Fc受容体(FcRn)(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))に対する結合が上昇した抗体が、米国特許第2005/0014934A1号明細書(Hinton et al.)に記載される。これらの抗体は、Fc領域の、FcRnに対する結合を上昇させる一つ以上の置換をその中に持つFc領域を含む。Fc領域のアミノ酸配列を変化させ、C1q結合能を上昇または低下させたポリペプチド変異種が、米国特許第6,194,551B1号明細書、国際公開99/51642号パンフレットに記載される。これら特許公開の内容を、引用により特に指定して本明細書に含める。さらに、Idusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)を参照されたい。
抗体誘導体
本発明の抗体は、当該分野で既知で、簡単に入手が可能な、新たな非タンパク成分を含むようにさらに修飾することが可能である。抗体の誘導体形成に好適な成分は、水に可溶なポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー、またはランダムコポリマー)、および、デキストラン、またはポリ(n−ビニールピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、酸化プロリプロピレン/酸化エチレンコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニールアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水におけるその安定性のために製造において有利である場合がある。このポリマーは、どのような分子量を有していてもよく、分枝しても、分枝してなくともよい。抗体に付着されるポリマーの数は変動してよいが、一つを超えるポリマーが付着される場合、それらは、同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体形成のために使用されるポリマーの数および/または種類は、例えば、改善される抗体の特性または機能、その抗体誘導体が、定められた条件下で治療に使用されるのかどうかなどの配慮点に基づいて決定することが可能である。
所望の特性を有する抗体に関するスクリーニング
本発明の抗体は、当該分野で既知の種々のアッセイを用いて、その物理的/化学的特性および生物学的機能に関して解明することが可能である。ある実施態様では、抗体は、DLL4に対する結合;および/または、Notch受容体活性化の低減または阻止;および/または、Notch受容体下流の分子シグナル伝達の低減または阻止;および/または、DLL4に対するNotch受容体結合の遮断または阻止;および/または、内皮細胞増殖の増進;および/または、内皮細胞分化の抑制;および/または動脈分化の抑制;および/または、腫瘍血管還流の抑制;および/または、腫瘍、細胞増殖性障害、または癌の処置および/または予防;および/または、DLL4発現および/または活性と関連する障害の処置または予防;および/または、Notch受容体発現および/または活性と関連する障害の処置また予防、の内の任意の一つ以上について特徴が解明される。
精製抗体はさらに、一連のアッセイ、例えば、ただしこれらに限定されないが、N−末端配列決定、アミノ酸分析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー、およびパパイン消化などによって特徴を解明することが可能である。
本発明のある実施態様では、本発明において生産される抗体は、その生物活性に関して分析される。ある実施態様では、本発明の抗体は、その抗原結合活性について試験される。当該分野で既知で、本発明において使用することが可能な抗原結合アッセイとしては、例えば、ただし限定されないが、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(固相酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイなどの技術を用いる、任意の直接的、または競合的結合アッセイが挙げられる。例示の抗原結合アッセイが、下記の実施例において示される。
さらに別の実施態様では、本発明は、DLL4に対する結合に関して、26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82抗体と競合する、抗DLL4モノクローナル抗体を提供する。このような競合抗体としては、抗体26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82によって認識されるDLL4エピトープと同じ、または重複するDLL4エピトープを認識する抗体が挙げられる。このような競合抗体は、標識された26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82抗体と競合して、固定されたDLL4に結合する抗DLL4ハイブリドーマの上清をスクリーニングすることによって獲得することが可能である。無関係抗体を含む(または、抗体無しの)コントロール結合混合物において検出される結合標識抗体の量に比べて、競合抗体を含むハイブリドーマ上清は、対象競合結合混合物において検出される結合標識抗体の量を低下させる。本明細書に記載される競合結合アッセイは、いずれも、前記手順に使用するのに好適である。
別の局面では、本発明は、26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82抗体の一つ以上の(例えば、2、3、4、5、および/または6個の)HVRを含む、抗DLL4モノクローナル抗体を提供する。26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82抗体の、一つ以上のHVRを含む、抗DLL4モノクローナル抗体は、26.6、26.14、26.20、26.34、および/または26.82抗体の一つ以上のHVR(単数または複数)を、鋳型抗体配列、例えば、マウス親抗体の対応配列にもっとも近似する、ヒトの抗体配列に、あるいは、親抗体の軽鎖または重鎖の特定サブグループの全てのヒト抗体の共通配列に移植し、かつ、このようにして得られた、付属の定常領域配列(単数または複数)を持つか、または持たない、キメラ軽鎖および/または重鎖可変領域配列(単数または複数)を、本明細書に記載されるように、組み換え宿主細胞において発現させることによって構築することが可能である。
本明細書に記載される独特の特性を有する、本発明の抗DLL4抗体は、好都合な、いずれかの方法によって、所望の特性について抗DLL4ハイブリドーマクローンをスクリーニングすることによって獲得することが可能である。例えば、もしも、DLL4に対するNotch受容体の結合を阻止するか、または阻止しない抗DLL4モノクローナル抗体を望むのであれば、候補抗体を、競合結合アッセイにおいて、例えば、プレートウェルにDLL4を塗布し、対象とするNotch受容体を過剰に含む抗体液を、該塗布プレートに重層し、結合抗体を酵素的に、例えば、競合結合ELISAであって、結合抗体を、HRP−結合抗Ig抗体か、または、ビオチニル化抗Ig抗体に接触させ、プレートを、例えば、ストレプトアビジン−HRPおよび/または過酸化水素で現像してHRP発色反応を起こさせ、ELISAプレートリーダーによる490nmにおける分光光度計測によってそのHRP発色反応を検出する、ELISAを用いて試験することが可能である。
一実施態様では、本発明は、エフェクター機能の全ては持たないが、その若干を所有する変更抗体を考慮の対象とする。このような抗体は、あるエフェクター機能(例えば、補体、およびADCC)は不要であるか、有害であるが、インビボにおける抗体半減期が重要な、多くの応用において望ましい候補となる。ある実施態様では、生産される免疫グロブリンのFc活性が、所望の特性だけが保持されることを確かめるために測定される。CDCおよび/またはADCC活性の低下/消失を確かめるために、インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実行することが可能である。例えば、抗体が、FcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合活性は保持することを確かめるために、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行することが可能である。ADCCを仲介する一次細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464ページの表3にまとめられる。対象分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの一例が、米国特許第5,500,362号明細書または同第5,821,337号明細書に記載される。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、抹消血単球(PBMC)、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.A 95:652−656(1998)に開示されるものと同様の動物モデルにおいて評価してもよい。さらに、抗体が、C1qに結合できないこと、したがって、CDC活性を欠くことを確かめるために、C1q結合アッセイを実行してもよい。補体活性を評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイを実行してもよい。さらに、FcRn結合、およびインビボクリアランス/半減期定量を、当該分野で既知の方法、例えば、実施例セクションに記載される方法を用いて実行することも可能である。
ベクター、宿主細胞、および組み換え法
本発明の抗体を組み換え生産するためには、該抗体をコードする核酸を単離し、複製可能なベクターに挿入し、さらにクローニング(DNAの増幅)、または発現させる。抗体をコードするDNAは、通例手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に対して特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、簡単に単離され、配列決定される。多くのベクターが市販されている。ベクターの選択は、一部は、使用される宿主細胞に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核性であるか、真核性(一般に、哺乳動物起源)である。この目的のためには、任意のアイソタイプの定常領域、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE定常領域などの使用が可能であること、および、このような定常領域は、ヒトまたは、任意の動物種から入手が可能であることが理解されよう。
a.原核宿主細胞による抗体の生成
i.ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的組み換え技術を用いて獲得することが可能である。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体生産細胞から単離し、配列決定してもよい。それとは別に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機、またはPCR技術を用いて合成することも可能である。一旦獲得されたならば、ポリペプチドをコードする配列は、原核細胞宿主において、複製し、異種ポリヌクレオチドを発現することが可能な組み換えベクターに挿入される。市販され、当該分野で既知の多くのベクターが、本発明の目的のために使用が可能である。適切なベクターの選択は、主に、そのベクターに挿入される核酸のサイズ、および、そのベクターによって形質転換される特定宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、またはその両方)、および、それが存在する特定宿主細胞との適合性に応じて、種々の成分を含む。ベクターの成分としては、一般に、例えば、ただしこれらに限定されないが:複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入体、および転写終結配列が挙げられる。
一般に、宿主細胞と適合する動物種から得られた、レプリコンおよび調節配列を含むプラスミドが、これらの宿主と組み合わされて使用される。このベクターは、通常、複製部位のほか、形質転換細胞において表現型選択を与えることが可能なマーキング配列を有す。例えば、大腸菌は、通常、大腸菌種から得られたプラスミドであるpBR322によって形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含むので、形質転換細胞を特定するための簡単な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または、他の微生物プラスミド、またはバクテリオファージはさらに、内因性タンパクの発現のために該微生物によって使用されるプロモーターを含んでもよく、あるいは、含むように修飾されてもよい。特定抗体の発現のために使用されるpBR322の例が、Carterらの、米国特許第5,648,237号明細書に詳述される。
さらに、宿主微生物と適合するレプリコンおよび調節配列を含むファージベクターも、これらの宿主と関連する形質転換ベクターとして使用することが可能である。例えば、λGEM(商標)−11などのバクテリオファージは、大腸菌LE392などの、感受性宿主細胞の形質転換に使用することが可能な組み換えベクターの作製に利用することが可能である。
本発明の発現ベクターは、それぞれ、各ポリペプチド成分をコードする、二つ以上のプロモーター−シストロンペアを含んでもよい。プロモーターとは、シストロンに対して上流(5′)に位置し、シストロンの発現を変調する、翻訳されない、調整配列である。原核細胞プロモーターは、通常、二つのクラス、誘導性および構成的に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養分の有無、または温度変化に応じて、その調節下のシストロンの転写レベルの上昇を起動するプロモーターである。
種々の可能な宿主細胞によって認識される、たくさんのプロモーターがあり、それらはよく知られる。選択されるプロモーターは、制限酵素消化によって元のDNAからプロモーターを取り除き、該単離プロモーター配列を、本発明のベクターの中に挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することが可能である。標的遺伝子の直接的増幅および/または発現のために、天然のプロモーター配列、および多数の異種プロモーターの両方の使用が可能である。ある実施態様では、異種プロモーターが利用される。それは、一般に、天然標的ポリペプチドプロモーターと比べて、異種プロモーターの方が、標的遺伝子の発現において、より大きな転写、およびより高い収率を可能とするからである。
原核性宿主において使用するのに好適なプロモーターとしては、Pho Aプロモーター、β−ガラクタマーゼ、およびラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、およびハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能的な、他のプロモーター(例えば、他の、既知の細菌またはファージプロモーター)も同様に好適である。それらのヌクレオチド配列は公表されているので、当業者であれば、それらを、任意の必要制限部位を供給するように、リンカーまたはアダプターを用いて、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに作動可能に連結することが可能である(Siebenlist et al.(1980) Cell 20:269)。
本発明の一局面では、組み換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの、膜を横断する転置を指令する、分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの一成分であってもよいし、あるいは、ベクターの中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明のために選ばれるシグナル配列は、宿主細胞によって認識、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに付属のシグナル配列を認識し、処理しない原核宿主細胞の場合は、そのシグナル配列は、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPから成る群から選ばれる、原核性シグナル配列によって置換される。本発明の一実施態様では、発現システムの両シストロンに使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列、およびその変異種である。
別局面では、本発明による免疫グロブリンの生産は、宿主細胞の細胞原形質で起こることも可能であり、したがって、各シストロンの内部に分泌シグナル配列の存在を要しない。この場合、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、細胞原形質内部で発現され、フォールド形成し、組立てされて機能的免疫グロブリンを形成する。ある宿主株(例えば、大腸菌trxB−株)は、ジスルフィド結合の形成に有利な細胞原形質条件を提供し、そのため、発現されたタンパクサブユニットの適切なフォールド形成および組立てが可能となる。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)。
本発明の抗体の発現に好適な原核宿主細胞としては、古細菌、および真正細菌、例えば、グラム陰性、またはグラム陽性生物が挙げられる。有用な細菌の例としては、例えば、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Psudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施態様では、グラム陰性細胞が使用される。一実施態様では、E.coli(大腸菌)細胞が、本発明のために宿主として使用される。大腸菌株の例としては、W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.;American Society for Microbiology,1987),pp.1190−1219;ATCC(登録商標)寄託番号27,325)、および、その誘導体、例えば、遺伝型W3110ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kanR(米国特許第5,639,635号明細書)を有する33D3株などが挙げられる。その他の株、およびその誘導体、例えば、E.coli294(ATCC31,446)、E.coliB、E.coliλ1776(ATCC31,537)、およびE.coliRV308(ATCC31,608)も適切である。これらの例は、限定的なものではなく、例示のためである。定められた遺伝型を有する、前述の細菌の内のいずれかについて、その誘導体を構築する方法は、当該分野で既知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309−314(1990)に記載される。一般に、細菌細胞におけるレプリコンの複製性能を考慮に入れながら、適切な細菌を選ぶことが必要である。例えば、レプリコンを供給するのに、周知のプラスミド、例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410が使用される場合、E.coli、Serratia、またはSalmonellaを好適に使用することが可能である。通常、宿主細胞は、最低量のタンパク分解酵素を分泌する必要があり、細胞培養体にはさらに新たにプロテアーゼ阻害剤を取り込ませることが好ましい。
ii 抗体生産
宿主細胞は、前述の発現ベクターによって形質転換させられ、プロモーターを誘導するように適宜改変された、通例の栄養培地において培養され、形質転換株が選択され、または、所望の配列をコードする遺伝子が増幅される。
形質転換とは、原核宿主の中に、DNAを、該DNAが、染色体外要素として、または、染色体内組み込み体として複製可能となるように導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、その細胞に適切な標準技術を用いて実行される。一般に、しっかりした細胞壁障壁を含む細菌細胞に対しては、塩化カルシウムによるカルシウム処理が用いられる。形質転換のためのもう一つの方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される、さらにもう一つの技術は、電気穿孔である。
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核細胞は、当該分野で既知で、選ばれた宿主細胞の培養に好適な培地において育成される。好適な培地の例としては、例えば、必要栄養添加物を加えたルリアブロス(LB)が挙げられる。ある実施態様では、培地はさらに、発現ベクターを含む原核細胞の増殖を選択的に可能とするために、発現ベクターの構築に基づいて選ばれる選択剤を含む。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために、培地にアンピシリンが加えられる。
さらに、炭素、窒素、および無機リン酸供給源の外に、任意の必要添加物が、単独で、または、別の添加物との混合物として、または、窒素複合供給源などの媒体として、適切な濃度で含まれてもよい。培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール、およびジチオスレイトールから成る群から選ばれる一つ以上の還元剤を任意に含んでもよい。
原核宿主細胞は、適切な温度で培養される。大腸菌増殖のためには、例えば、好ましい温度は、約20℃から約39℃の範囲、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、さらに好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に、宿主生物に依存して、約5から約9の範囲内の任意のpHであってもよい。大腸菌の場合、pHは、好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
本発明の発現ベクターにおいて誘導性プロモーターが使用される場合、タンパク発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本発明の一局面では、ポリペプチドの転写調節のために、PhoAプロモーターが使用される。したがって、形質転換される宿主細胞は、誘導のために、リン酸塩制限培地において培養される。リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地であることが好ましい(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133−147を参照)。当該分野で知られるように、用いられるベクター構築体にしたがって、外にも、種々の誘導因子を使用してよい。
一実施態様では、本発明の発現ポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、ペリプラズムから回収される。タンパク回収は、微生物を、一般には、浸透圧ショック、超音波処理、または溶菌などの手段によって破壊することを含む。一旦細胞が破壊されたならば、細胞破片または全体細胞は、遠心またはろ過によって除去してもよい。タンパクはさらに、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーニよって精製してもよい。それとは別に、タンパクは、培地に移し、その中で単離することも可能である。細胞を、培養物から取り出し、培養上清をろ過し、濃縮して、生産されたタンパクをさらに精製してもよい。さらに、この発現ポリペプチドを、周知の方法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、およびウェスタンブロットアッセイを用いて単離し、特定することも可能である。
本発明の一局面では、抗体生産は、発酵プロセスによって大量に実行される。組み換えタンパクの生産のためには、種々の大規模流加発酵手順が利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットル容量、好ましくは約1,000から100,000リットル容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を拡散させるために攪拌インペラーを用いる。小規模発酵とは、一般に、容積が約100リットル未満の発酵槽における発酵を指し、約1リットルから約100リットルの範囲にあることが可能である。
発酵プロセスでは、タンパク発現の誘導は、通常、細胞が、適切な条件下で所望の密度、例えば、OD550が約180−220となるまで育成された後、すなわち、細胞が初期の静止期に達した段階で、起動される。当該分野で既知のように、かつ、前述のように、使用されるベクター構築体に応じて、各種の誘起因子の使用が可能である。細胞は、誘導前に、より短い期間育成してもよい。細胞は、通常、約12−50時間誘導されるが、それよりも長いか、または短い誘導時間を使用してもよい。
本発明のポリペプチドの生産収率および品質を上げるために、様々の発酵条件を改変することが可能である。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切な組立ておよびフォールド形成を向上させるために、シャペロンタンパク、例えば、Dsbタンパク(DsbA、DsbB、DscC、DsbD、および/またはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を有する、ペプチジルプロリル・シス、トランス−イソメラーゼ)を過剰発現する添加ベクターを用いて、宿主原核細胞を共時形質転換することが可能である。このシャペロンタンパクは、細菌宿主細胞において生産される異種タンパクの適切なフォールド形成および可溶性を促進することが示されている。Chen et al.(1999)J Biol Chem 274:19601−19605;Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号明細書;Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号明細書;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199−210。
発現される異種タンパク(特に、タンパク分解に感受性を持つもの)の分解を最小にするために、タンパク分解酵素を欠乏する、いくつかの宿主株を本発明のために使用することが可能である。例えば、既知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、およびそれらの組み合わせをコードする遺伝子において遺伝子突然変異(単数または複数)を実現するように、宿主細胞株を修飾してもよい。いくつかの大腸菌のプロテアーゼ欠損株が市販されており、例えば、Joly et al.(1998)上記;Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号明細書;Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号明細書;Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63−72(1996)に記載される。
一実施態様では、タンパク分解酵素を欠き、かつ、一つ以上のシャペロンタンパクを過剰発現するプラスミドによって形質転換される大腸菌株が、本発明の発現システムにおける宿主細胞として使用される。
iii.抗体精製
当該分野で既知の標準的タンパク精製法の使用が可能である。下記の手順は、適切な精製手順を示す例示的なものである:免疫アフィニティーまたはイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、DEAEなどの、シリカまたは陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および、例えば、Sephadex G−75使用のゲルろ過。
一局面では、固相の上に固定されたプロテインAが、本発明の、完全長抗体産物の免疫アフィニティー精製のために使用される。プロテインAは、Staphylococcus aureasから得られた、41kDの細胞壁タンパクであり、抗体のFc領域に対して高い親和性をもって結合する。Lindmark et al.(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13。プロテインAが固定される固相は、ガラスまたはシリカ表面を含むカラムであることが好ましく、より好ましくは孔調節ガラスカラム、またはケイ酸カラムである。ある応用では、カラムは、汚染物質の、非特異的結合を防止する試みとして、グリセロールなどの試薬によってコートされる。
精製の第1段階として、前述のようにして細胞培養体から得た調製品を、プロテインAが固定された固相に与え、対象抗体をプロテインAに特異的に結合させる。次に、この固相を洗浄し、固相に非特異的に結合した汚染物質を除去する。最後に、対象抗体を、溶出によって固相から取り除く。
b.真核宿主細胞を用いて抗体を生成する
一般に、ベクター成分としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記:シグナル配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列、の内の一つ以上が挙げられる。
(i)シグナル配列成分
真核宿主細胞に使用されるベクターはさらに、対象成熟タンパクまたはポリペプチドのN−末端に特異的切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドを含んでもよい。選ぶことが好ましい異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物シグナル配列のほか、ウィルスの分泌リーダー、例えば、herpes simplex gDシグナルも利用可能である。
この前駆領域のDNAは、抗体をコードするDNAに対し読み枠を一致させて連結される。
(ii)複製起点
一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターには不要である。例えば、SV40起点は、通常、ただ、それが早期プロモーターを含むために使用される。
(iii)選択遺伝子成分
発現およびクローニングベクターは、選択可能マーカーとも呼ばれる、選択遺伝子を含んでもよい。典型的選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク、(b)栄養欠乏を補償するタンパク、関連して、または(c)複合培地からは得られない必須栄養素を供給するタンパク、をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止させる薬剤を利用する。異種遺伝子によって思い通りに形質転換された細胞は、薬剤耐性を付与するタンパクを生産し、選択処方を生き延びる。このような優勢選択の例は、薬剤のネオマイシン、マイコフェノール酸、およびハイグロマイシンを用いる。
哺乳動物細胞のために好適な選択可能マーカーの、もう一つの例は、抗体核酸を取り込むことが可能な細胞の特定を可能とするもの、例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、全ての形質転換体を、DHFRの競合的拮抗剤である、メトトレキセート(Mtx)を含む培地において培養することによって特定される。野生型DHFRを用いる場合、適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠く、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系列(例えば、ATCC CRL−9096)である。
それとは別に、抗体、野生型DHFRタンパク、および、もう一つの選択可能マーカー、例えば、アミノグリコシド3′−フォスフォトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列によって形質転換されるか、または同時形質転換される宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主細胞)は、選択可能マーカーのための選択剤、例えば、カナマイシン、またはG418を含む培地において細胞増殖することによって選択することが可能である。米国特許第4,965,199号明細書を参照されたい。
(iv)プロモーター成分
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、抗体ポリペプチド核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含む。真核細胞のためのプロモーターは既知である。ほぼ全ての真核細胞は、転写が起動される部位から約25から30塩基上流にATに富んだ領域を配置させる。多くの遺伝子の転写開始点から70から80塩基上流に見出されるもう一つの配列は、CNCAAT領域であり、この式において、Nは任意のヌクレオチドであってもよい(配列番号60)。多くの真核細胞遺伝子の3′末端には、AATAAA配列がある。これは、コード配列の3′末端(配列番号61)に対するポリA付加のシグナルとなると考えられる。これらの配列は全て、真核細胞発現ベクターの中に適切に挿入される。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターによる抗体ポリペプチドの転写は、そのプロモーターが宿主細胞システムと適合する限り、例えば、ウィルスのゲノム、例えば、ポリオーマウィルス、鶏痘ウィルス、アデノウィルス(例えば、アデノウィルス2)、牛パピローマウィルス、鳥類肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス、およびシミアンウィルス40(SV40)のゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター、または免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって調節される。
SV40ウィルスの早期および後期プロモーターは、好都合にも、さらにSV40ウィルスの複製起点を含む、SV40制限断片として得られる。ヒトのサイトメガロウィルスの初期プロモーターは、好都合にも、HindIII E制限断片として得られる。ベクターとして牛パピローマウィルスを用いる、哺乳動物宿主におけるDNA発現システムが、米国特許第4,419,446号明細書に開示される。このシステムの改変版が、米国特許第4,601,978号明細書に記載される。それとは別に、ラウス肉腫ウィルスの長い末端反復列も、プローモーターとして使用することが可能である。
(v)エンハンサー要素成分
比較的高度な真核細胞による、本発明の抗体ポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増大することがよくある。現在では、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトタンパク、およびインスリン)について多くのエンハンサーが知られる。しかしながら、通常、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製起点の後期側(bp100−270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウィルスの初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウィルスエンハンサーが挙げられる。さらに、真核細胞プロモーター活性化のための促進要素について、Yaniv,Nature 297:17−18(1982)を参照されたい。エンハンサーはスプライスされて、抗体ポリペプチドコード配列に対して、5′または3′側の位置においてベクター中に挿入されてもよいが、プロモーターから5′側の部位に配置されることが好ましい。
(vi)転写終結成分
真核宿主細胞において使用される発現ベクターは、通常、転写を終結させ、mRNAを安定化するのに必要な配列をさらに含む。このような配列は、一般に、真核細胞またはウィルスのDNAまたはcDNAの5′、および時には3′の未翻訳領域から得られる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの未翻訳部分中のポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分は、牛成長ホルモンのポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号パンフレット、およびそこに開示される発現ベクターを参照されたい。
(vii)宿主細胞の選択および形質転換
本発明のベクターにおいてDNAをクローニングし、発現するのに好適な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含む、本明細書に記載される、比較的高度な真核細胞が挙げられる。培養において脊椎動物細胞を継代することは(組織培養)は、通例手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞の例として、SV40で形質転換した、サル腎臓CV1系統(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓系統(293細胞、または、縣濁培養による育成のためにサブクローンされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));新生児ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカ緑猿腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトのヘパトーム系統(Hep G2)がある。
宿主細胞は、抗体生産のために、前述の発現またはクローニングベクターによって形質転換され、プロモーターを誘導するために適宜に改変された通例の栄養培地において培養され、形質転換体が選択され、所望の配列をコードする遺伝子が増幅される。
(viii)宿主細胞を培養する
本発明の抗体を生産するために使用される宿主細胞は、種々の培地において培養してよい。市販の培地、例えば、Ham′s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma))、およびDulbeccoの改変Eagle培地((DMEM)、Sigma)は、宿主細胞を培養するのに好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;または同第5,122,469号明細書;国際公開第90/03430号パンフレット;同第87/00195号パンフレット;または米国再発行特許第Re.30,985号明細書に記載される培地の内のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用してもよい。これらの培地は、いずれも、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または表皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、バッファー(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬剤)、微量要素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、および、グルコース、または当量エネルギー供給源を、適宜、補給されてもよい。さらに、その他、当業者には知られると考えられる、必要添加物は、いずれのものでも適切な濃度において含めてよい。培養条件、例えば、温度、pHなどは、発現のために選択された宿主について以前に使用されているものであり、当業者にとっては明白であろう。
(ix)抗体の精製
組み換え技術を用いる場合、抗体は、細胞内に生産することが可能であるし、あるいは、培地中に直接分泌させることも可能である。抗体が細胞内で生産される場合、第1工程として、宿主細胞または分解断片のものである粒状破片を、例えば、遠心またはろ過によって除去する。抗体が培地に分泌される場合は、一般的には先ず、その発現システムから得られた上清を、市販のタンパク濃縮フィルター、例えば、Amicon、またはMillipore Pellicon(登録商標)限外ろ過ユニットを用いて濃縮する。前記工程のいずれかに、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を含めてもよく、かつ、外来汚染菌の増殖を防止するため抗生物質を含めてもよい。
細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することが可能であるが、アフィニティークロマトグラフィーが、好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてプロテインAが好適であるかどうかは、抗体中に存在する免疫グロブリンFcドメインの種類およびアイソタイプに依存する。ヒトのγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するにはプロテインAを用いることが可能である(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。マウスの全アイソタイプ、およびヒトのγ3に対してはプロテインGが薦められる(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティーリガンドが付着される基質は、多くの場合、アガロースであるが、他の基質も利用可能である。機械的に安定な基質、例えば、孔調節ガラス、またはポリ(スチレンジビニール)ベンゼンの場合、アガロースにおいて実現可能なものよりも、より速い流速、およびより短い処理時間が可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Philipsburg,NJ)が、精製のために有用である。タンパク精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)によるクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)によるクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などの技術も、回収される抗体に応じて利用が可能である。
いずれかの予備精製工程(単数または複数)の後、対象抗体および汚染物質を含む混合物に対し、約2.5−4.5のpHの溶出バッファーを用い、好ましくは低い塩濃度において(例えば、約0−0.25Mの塩)、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施してもよい。
免疫複合体
本発明はさらに、細胞傷害剤、例えば、化学療法剤、薬剤、成長阻害剤、トキシン(例えば、細菌、真菌、植物、または動物起源の、酵素的に活性なトキシン、またはその断片)、または放射性同位元素に結合させた(すなわち、放射性複合体)、本明細書に記載される、いずれかの抗DLL4抗体を含む免疫複合体(「抗体−薬剤複合体」または“ADC”と相互交換的に使用される)を提供する。
癌の処置において、細胞傷害性または細胞増殖抑制性薬剤、すなわち、腫瘍細胞を殺すか、増殖抑制する薬剤の局所的送達のために抗体−薬剤複合体を用いることは(Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvaz and Springer(1997)Adv.Drg Del.Rev.26:151−172;米国特許第4,975,278号明細書)、腫瘍に対する薬剤成分の標的指向性送達、および該腫瘍における細胞内蓄積を可能とする。一方、これらの薬剤が、結合されずに全身投与された場合、排除することを求める腫瘍細胞の外に、正常細胞にたいしても受け容れがたいほどのレベルの毒性をもたらす可能性がある(Baldwin et al.,(1986)Lancet pp.(Mar.15,1986):603−05;Thorpe,(1985)“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”in Monoclonal Antibodies ′84:Biological And Clinical Applications,A.Pinchera et al.(ed.s),pp.475−506)。このようにして、毒性を最小にしながら最大の効力が求められる。この戦略では、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が有用であると報告されている(Rowland et al.,(1986)Cancer Immunol.Immunother.,21:183−87)。この方法に使用される薬剤としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、およびビンデシンが挙げられる(Rowland et al.,(1986)上記)。抗体−トキシン複合体において使用されるトキシンとしては、細菌トキシン、例えば、ジフテリアトキシン、植物トキシン、例えば、リシン、小型分子トキシン、例えば、ゲルダナマイシン(Mandler et al(2000)Jour.of the Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler et al(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler et al(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(欧州特許第1391213号明細書;Liu et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)、およびカリケアミシン(Lode et al(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993)Cancer Res.53:3336−3342)が挙げられる。これらのトキシンは、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ抑制を含む機構によって、その細胞毒性および細胞増殖抑制作用を実行すると考えられる。ある細胞毒性薬剤は、大きな抗体、またはタンパク受容体リガンドに結合されると、不活性になるか、より活性が低くなる傾向がある。
ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチューキセタン、Biogen/Idec)は、抗体−放射性同位元素複合体であって、正常および悪性Bリンパ球の表面に見られるCD20抗原に対して向けられる、マウスIgG1カッパモノクローナル抗体、および、111Inまたは90Y放射性同位元素が、チオウレアリンカー−キレート剤によって結合されて構成される複合体である(Wiseman et al(2000)Eur.Jour.Nucl.Med.27(7):767−77;Wiseman et al(2002)Blood 99(12):4336−42;Witzig et al(2002)J.Clin.Oncol.20(10):2453−63;Witzig et al(2002)J.Clin.Oncol.20(15):3262−69)。ZEVALINは、B細胞非ホジキン型リンパ腫(NHL)に対しては活性を有するが、投与は、多くの患者において重篤な、長期の血球欠乏症をもたらす。MYLOTARG(商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン、Wyeth Pharmaceuticals)は、カリケアマイシンに連結させたヒトCD33抗体から構成される抗体薬剤複合体であるが、急性骨髄性白血病の注射処置として2000年に承認された(Drugs of the Future(2000)25(7):686;米国特許第4970198号明細書;同第5079233号明細書;同第5585089号明細書;同第5606040号明細書;同第5693762号明細書;同第5739116号明細書;同第5767285号明細書;同第5773001号明細書)。カンツズマブメルタンシン(Immunogen,Inc.)は、ジスルフィドリンカーSPPを介してマイタンシノイド薬剤成分DM1に連結させたhuC242抗体から構成される、抗体薬剤複合体であるが、これは、現在、CanAgを発現する癌、例えば、結腸、すい臓、胃癌などの処置用としてII相治験に進んでいる。MLN−2704(Millenium Pharm.,BZL Biologics,Immunogen Inc.)は、マイタンシノイド薬剤成分DM1に連結させた、抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体であるが、これは、前立腺腫瘍処置の可能な薬剤として現在開発中である。ドラスタチンの合成類縁体である、アウリスタチンペプチド、アウリスタチンE(AE)およびモノメチルアウリスタチン(MMAE)は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌上のLewis Yに対して特異的)およびcAC10(血清学的悪性腫瘍上のCD30に対して特異的)に対して結合され(Doronina et al(2003)Nature Biotechnology21(7):778−784)、現在治療剤として開発中である。
免疫複合体の生成において有用な化学療法剤が本明細書に(例えば、上記)記載される。酵素的に活性なトキシン、および、使用が可能な、その断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合性活性断片、エキソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク、ジアンチンタンパク、Phytolaca americanaタンパク(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号パンフレットを参照されたい。放射性複合抗体の生産のために、各種の放射性核種の利用が可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。抗体および細胞傷害剤の複合体は、種々の二官能性タンパク結合剤、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル(例えば、ジメチルアジピミデートHCl)の二官能性誘導体、活性エステル(例えば、ジスクシニミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシン免疫トキシンは、Vitetta et al.,Science,238:1098(1987)に記載されるように調製することが可能である。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体に放射性核種を結合するための、例示のキレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレットを参照されたい。
抗体、および、一つ以上の小分子トキシン、例えば、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコテセン、およびCC1065、および、トキシン活性を有する、これらのトキシンの誘導体から成る複合体も、本発明の考慮の対象とされる。
i.マイタンシンおよびマイタンシノイド
ある実施態様では、免疫複合体は、一つ以上のマイタンシノイド分子に結合させた、本発明の抗体(完全長、または断片)を含む。
マイタンシノイドは、チューブリンの重合を抑制することによって活動する細胞***阻害剤である。マイタンシンは、最初、東アフリカ産潅木Maytenus scrrataから単離された(米国特許第3,896,111号明細書)。次いで、ある種の微生物も、マイタンシノイド、例えば、マイタンシノール、およびC−3マイタンシノールエステルを生産することが発見された(米国特許第4,151,042号明細書)。合成マイタンシノール、およびその誘導体および類縁体が、例えば、米国特許第4,137,230号明細書;同第4,248,870号明細書;同第4,256,746号明細書;同第4,260,608号明細書;同第4,265,814号明細書;同第4,294,757号明細書;同第4,307,016号明細書;同第4,308,268号明細書;同第4,308,269号明細書;同第4,309,428号明細書;同第4,313,946号明細書;同第4,315,929号明細書;同第4,317,821号明細書;同第4,322,348号明細書;同第4,331,598号明細書;同第4,361,650号明細書;同第4,364,866号明細書;同第4,424,219号明細書;同第4,450,254号明細書;同第4,362,663号明細書;および同第4,371,533号明細書に開示される。
マイタンシノイド薬剤成分は、抗体薬剤複合体において魅力的な薬剤である。その理由は、これらの成分は、(i)発酵、または化学的修飾、または、発酵産物の誘導体形成によって比較的入手し易いこと、(ii)抗体に対し非ジスルフィドリンカーを介して結合するのに好適な官能基による誘導体形成に受容的であること、(iii)血漿において安定であること、および(iv)各種腫瘍細胞系統に対して有効である、からである。
マイタンシノイドを含む免疫複合体、その製法、およびその治療的使用は、例えば、米国特許第5,208,020号明細書、同第5,416,064号明細書、および欧州特許第0 425 235B1明細書に開示される。なお、この開示を、引用により本明細書に含めることを明言する。Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)は、ヒトの結腸直腸癌に対して向けられたモノクローナル抗体C242に結合された、DM1と表示されるマイタンシノイドを含む免疫複合体を記載する。この複合体は、培養された結腸癌細胞に対し高度の細胞傷害性を持つことが見出され、かつ、インビボの腫瘍増殖アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。Chari et al.Cancer Research 52:127−131(1992)は、免疫複合体であって、マイタンシノイドが、ジスルフィドリンカーを介して、ヒト結腸癌細胞系統上の抗原に結合するマウス抗体A7に連結されるか、または、HER−2/neu癌遺伝子に結合する、別のマウスモノクローナル抗体TA.1に連結される免疫複合体を記載する。TA.1−マイタンシノイド複合体の細胞傷害性を、細胞当たり3×105HER−2表面抗原を発現する、ヒト乳癌細胞系統SK−BR−3についてインビトロで試験した。この薬剤複合体は、遊離マイタンシノイド薬剤と同程度の細胞傷害性を実現したが、これは、抗体分子当たりのマイタンシノイド分子の数を増すことによってさらに上昇が可能であることが予想された。A7−マイタンシノイド複合体は、マウスの全身に投与したが、低い細胞傷害性を示した。
抗体−マイタンシノイド複合体は、抗体を、マイタンシノイド分子に対し、抗体またはマイタンシノイド分子の生物活性を著明に下げることなく、化学的に連結することによって調製される。例えば、米国特許第5,208,020号明細書(この開示を、引用により本明細書に含めることを明言する)を参照されたい。抗体1分子当たり、マイタンシノイド平均3−4分子の結合が、抗体の機能または可溶性に対し否定的影響を及ぼすことなく、標的細胞に対する細胞傷害性の強化において効力を示した。ただし、抗体当たり1分子のトキシンであっても、抗体単独の使用よりも、細胞傷害性を強化することが予想されると考えられる。マイタンシノイドは、当該分野において周知であり、既知の技術によって合成するか、または、天然資源から単離することが可能である。適切なマイタンシノイドは、例えば、米国特許第5,208,020号明細書、および、その他の、本明細書に引用される、特許および非特許公刊物において開示される。好ましいマイタンシノイドは、マイタンシノール、および、芳香環において、または、マイタンシノール分子の他の位置において修飾されるマイタンシノール類縁体、例えば、各種マイタンシノールエステルである。
抗体−マイタンシノイド複合体を作製するために、従来技術においてたくさんの結合基があり、例えば、米国特許第5,208,020号明細書、または欧州特許第0 425 235 B1号明細書、Chari et al.,Cancer Research 52:127−131(1992)、および、2004年10月8日出願の米国特許出願第10/960,602号明細書に開示されるものが挙げられる。なお、この開示を引用により本明細書に含めることを明言する。リンカー成分SMCCを含む抗体−マイタンシノイドは、2004年10月8日出願の米国特許出願第10/960,602号明細書に開示されるように調製してもよい。この結合基としては、例えば、上に引用した特許に開示されるように、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸感受基、光感受基、ペプチダーゼ感受基、またはエステラーゼ感受基が挙げられるが、ジスルフィド基およびチオエーテル基が好ましい。さらに別の結合基が、本明細書において記述され、例示される。
抗体およびマイタンシノイドの複合体は、種々の二官能性タンパク結合剤、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル(例えば、ジメチルアジピミデートHCl)の二官能性誘導体、活性エステル(例えば、ジスクシニミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製してよい。特に好ましい結合剤としては、例えば、ジスルフィド結合を実現するために、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al.,Biochem.J.173:723−737(1978))、および、N−スクシニミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)が挙げられる。
リンカーは、結合の種類に応じて、マイタンシノイド分子の様々な位置に付着させてよい。例えば、通例の結合技術を用いて、ヒドロキシル基と反応させることによってエステル結合を形成してもよい。反応は、ヒドロキシル基を持つC−3位置、ヒドロキシメチルによって修飾されるC−14位置、ヒドロキシル基によって修飾されるC−15位置、およびヒドロキシル基を持つC−20位置において行われてもよい。好ましい実施態様では、結合は、マイタンシノールまたはマイタンシノール類縁体のC−3位置に形成される。
ii.アウリスタチンおよびドラスタチン
ある実施態様では、免疫複合体は、ドラスタチン、またはドラスタチンペプチド類縁体および誘導体、アウリスタチンに結合された、本発明の抗体を含む(米国特許第5635483号明細書;同第5780588号明細書)。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、および核***および細胞***に干渉(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)し、抗癌活性(米国特許第5663149号明細書)、および抗真菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有することが示されている。ドラスタチンまたはアウロスタチン薬剤成分は、このペプチド様薬剤成分のN(アミノ)末端、またはC(カルボキシ)末端を介して抗体に付着させてもよい(国際公開第02/088172号パンフレット)。
例示のアウリスタチン実施態様は、2004年11月5日出願の米国特許出願第10/983,340号明細書、“Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”に開示される、N−末端結合モノメチルアウリスタン薬剤成分DEおよびDFを含む。なお、この開示の全体を、引用に本明細書に含めることを明言する。
通常、ペプチド系薬剤成分は、二つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって調製することが可能である。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知の、液相合成法(例えば、E.Shroeder and K.Lubke,“The Peptides,”volume 1,pp76−136,1965,Academic Pressを参照)にしたがって調製することが可能である。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、下記:米国特許第5635483号明細書;同第5780588号明細書;Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettit et al(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.R.,et al.,Synthesis,1996,719−725;およびPettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.15:859−863の方法にしたがって調製してよい。さらに、Doroina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778−784;“Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands,”2004年11月5日出願米国特許出願10/983,340号明細書を参照されたい。なお、この開示の全体を引用により本明細書に含める(リンカーに結合される、モノメチルバリン化合物、例えば、MMAEおよびMMAFを調製するリンカーおよび方法を開示)。
iii.カリケアミシン
別の実施態様では、免疫複合体は、一つ以上のカリケアミシン分子に結合される、本発明の抗体を含む。抗生物質のカリケアミシンファミリーは、ピコモル以下の濃度で2本鎖DNAの断点を生成することが可能である。カリケアマイシンファミリー複合体の調製については、米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、同第5,877,296号明細書(全てAmerican Cyanamid Companyに付与されたもの)を参照されたい。使用してもよい、カリケアミシンの構造的類縁体としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N−アセチル−γ1 I、PSAG、およびθI 1(Hinman et al.,Cancer Research 53:3336−3342(1993),Lode et al.,Cancer Research 58:2925−2928(1998)、および、American Cyanamidに付与された前述の米国特許)が挙げられる。抗体を結合することが可能な、もう一つの抗腫瘍剤は、アンチフォレートであるQFAである。カリケアマイシンおよびQFAは、共に、細胞内活動部位を持つが、直ぐには原形質膜を横断しない。したがって、抗体仲介性内部進入によって、これらの薬剤の細胞内取り込みが起こるとその細胞傷害作用が大きく促進される。
iv.その他の細胞傷害剤
本発明の抗体に対して結合することが可能な、他の抗腫瘍剤としては、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシルで、いずれも、米国特許第5,053,394号明細書、同第5,770,710号明細書に記載される、まとめてLL−E33288複合体と呼ばれる薬剤ファミリーの外、エスペラミシン(米国特許第5,877,296号明細書)が挙げられる。
酵素的に活性なトキシン、および、使用が可能な、その断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合性活性断片、エキソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク、ジアンチンタンパク、Phytolaca americanaタンパク(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号パンフレットを参照されたい。
本発明はさらに、抗体と、核分解性活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼなどのDNAエンドヌクレアーゼ、DNアーゼ)との間に形成される免疫複合体を考慮の対象とする。
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は、放射活性の高い原子を含んでもよい。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、および、Luの放射性同位元素が挙げられる。複合体が検出のために使用される場合、該複合体は、シンチグラフィー実験用の放射性原子、例えば、tc99m、またはI123を含んでもよいし、または、核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、mriとも呼ばれる)用のスピンラベル、例えば、ここでもヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、または鉄を含んでもよい。
放射性、または他のラベルは、既知の方法で複合体の中に組み込んでよい。例えば、ペプチドは生合成してもよいし、あるいは、水素の代わりにフッ素−19を含む、適切なアミノ酸前駆体を用いる化学的アミノ酸合成によって合成してもよい。tc99mまたはI123、Re186、Re188、およびIn111などのラベルは、システイン残基を介してペプチドに付着させることが可能である。イットリウム−90は、リジン残基を介して付着させることが可能である。ヨウ素−123を組み込むには、IODOGEN法(Fraker et al(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)を用いることが可能である。“Monoclonal Antibodies in Immunolscintigraphy”(Chatal,CRC Press 1989)には他の方法が詳細に記載される。
抗体および細胞傷害剤の複合体は、種々の二官能性タンパク結合剤、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル(例えば、ジメチルアジピミデートHCl)の二官能性誘導体、活性エステル(例えば、ジスクシニミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作製してよい。例えば、リシン免疫トキシンは、Vietta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することが可能である。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体に放射性核種を結合するための、例示のキレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレットを参照されたい。リンカーは、細胞における細胞傷害剤の放出を促進する「切断性リンカー」であってもよい。例えば、酸感受性リンカー、光感受性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー、または、ジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Research 52:127−131(1992);米国特許第5,208,020号明細書)を使用してもよい。
本発明の化合物は、明瞭に、例えば、ただしこれらに限定されないが、架橋リンカー試薬:BMPS,EMCS,GMBS,HBVS,LC−SMCC,MBS,MPBH,SBAP,SIA,SIAB,SMCC,SMPB,SMPH,sulfo−EMCS,sulfo−GMBS,sulfo−KMUS,sulfo−MBS,sulfo−SIAB,sulfo−SMCC,およびsulfo−SMPB、およびSVSB(スクシニミジル−(4−ビニールスルフォン)ベンゾエート)によって調製されるADCを考慮の対象とする。これらの架橋剤は、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.A.)。Applications Handbook and Catalog,ページ467−498、2003−2004を参照されたい。
v.抗体薬剤複合体の調製
本発明の抗体薬剤複合体(ADC)では、抗体(Ab)は、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤成分(D)に、例えば、1抗体当たり約1から約20の薬剤成分に結合される。式IのADCは、当業者に既知の、有機化学反応、条件、および試薬を用い、いくつかのルート:(1)抗体の求核基を、共有結合を介して二価リンカー試薬と反応させてAb−Lを形成し、次いで、薬剤成分Dを反応させること;および、(2)薬剤成分の求核基を、共有結合を介して二価リンカー試薬と反応させてD−Lを形成し、次いで、抗体の求核基と反応させることによって調製してもよい。ADCを調製するための、さらに別の方法が本明細書に記載される。
Ab−(L−D)p I
リンカーは、一つ以上のリンカー成分から構成されていてもよい。例示のリンカー成分としては、6−マレイミドカプロイル(“MC”),マレイミドプロパノイル(“MP”)、バリン−シトルリン(“val−cit”)、アラニン−フェニルアラニン(“ala−phe”)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(“PAB”)、N−スクシニミジル−4−(2−ピリジルジチオ)カルボキシレート(“SPP”)、N−スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(“SMCC”)、およびN−スクシニミジル(4−イオド−アセチル)アミノベンゾエート(“SIAB”)が挙げられる。さらに別のリンカー成分が当該分野で既知であり、いくつかは本明細書に記載される。さらに、“Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands,”2004年11月5日出願米国特許出願第10/983,340号明細書を参照されたい。なお、この内容全体を参考として本明細書に援用する。
ある実施態様では、リンカーは、アミノ酸残基を含む。例示のアミノ酸リンカー成分としては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、またはペンタペプチドが挙げられる。例示のジペプチドとしては:バリン−シトルリン(vcまたはval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe)が挙げられる。例示のトリペプチドとしては:グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)、およびグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)が挙げられる。アミノ酸リンカー成分を構成するアミノ酸残基は、天然のものの外、非重要アミノ酸、および非天然のアミノ酸類縁体、例えば、シトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は、ある特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C、およびD、またはプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断に対し選択性を持つように、かつ、その感受性が最適となるように設計することが可能である。
抗体上の求核基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが:(i)N−末端アミノ基、(ii)側鎖アミノ基、例えば、リジン、(iii)側鎖チオール基、例えば、システイン、および(iv)抗体がグリコシル化される場所における、糖ヒドロキシルまたはアミノ基が挙げられる。アミン、チオール、およびヒドロキシル基は、求核性であり、リンカー成分上の求電子基と反応して共有結合を形成することが可能であり、リンカー試薬としては:(i)活性エステル、例えば、NHSエステル、HOBtエステル、ハロフォルメート、およびハロゲン化酸;(ii)ハロゲン化アルキルおよびベンジル、例えば、ハロアセタミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基が挙げられる。ある種の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわち、システイン架橋を有する。抗体は、DTT(ジチオスレイトール)などの還元剤によって処理することによって結合のために反応性を持たせてもよい。したがって、各システイン架橋は、理論的には、二つの反応性チオール求核基を形成することになる。リジンを、2−イミノチオラン(Trautの試薬)と反応させることによって、さらに別の求核基を抗体の中に導入することが可能であり、これによってアミノ酸はチオールに変換される。反応性チオール基は、1、2、3、4個以上のシステイン残基を導入することによって(例えば、一つ以上の非天然の、システインアミノ酸残基を含む突然変異アミノ酸を調製することによって)、抗体(またはその断片)の中に導入してもよい。
本発明の抗体薬剤複合体はさらに、抗体を修飾して、リンカー試薬または薬剤の求核置換基と反応することが可能な、求電子成分を導入することによって生産することも可能である。グリコシル化抗体の糖類は、例えば、過ヨウ素酸酸化試薬によって酸化してアルデヒドまたはケトン基を形成し、これを、リンカー試薬または薬剤成分のアミノ基と反応させてもよい。得られたイミンSchiff塩基性基が安定な結合を形成してもよいし、あるいは、例えば、水素化ホウ素試薬によって還元して安定なアミン結合を形成させてもよい。一実施態様では、グリコシル化抗体の炭水化物成分を、ガラクトースオキシダーゼ、または、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応させて、該タンパク中にカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基を生成させ、これを、薬剤上の適切な基と反応させてもよい(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施態様では、N−末端セリンまたはトレオニン残基を含むタンパクは、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応させて、第1アミノ酸の代わりにアルデヒドを生産させることも可能である(Geoghegan & Stroh,(1992)Bioconjugate Chem.3:138−146;米国特許第5362852号明細書)。このようなアルデヒドは、薬剤成分またはリンカーの求核基と反応させることが可能である。
同様に、薬剤成分上の求核基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが:アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジド基が挙げられる。これらは、リンカー成分上の求電子基と反応して共有結合を形成することが可能であり、かつ、リンカー試薬としては:(i)活性エステル、例えば、NHSエステル、HOBtエステル、ハロフォルメート、およびハロゲン化酸;(ii)ハロゲン化アルキルおよびベンジル、例えば、ハロアセタミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基が挙げられる。
それとは別に、抗体および細胞傷害剤を含む融合タンパクは、例えば、組み換え技術またはペプチド合成によって作製してもよい。DNAの長さは、複合体の二つの部分をコードするそれぞれの領域を、互いに隣接させるか、または、複合体の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域に隔てられて含んでもよい。
さらに別の実施態様では、抗体を、腫瘍の先行標的照準に利用するために「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)に結合する。この場合、この抗体−受容体複合体は、患者に投与され、次いで、***剤を用いて未結合の複合体が循環から除去され、次に、細胞傷害剤(例えば、放射性核種)に結合された「リガンド」(例えば、アビジジン)が投与される。
製薬処方
本発明の抗体を含む製薬処方は、所望の純度を有する抗体を、任意の、生理的に受容可能な担体、賦形剤、または安定化剤と、水溶液、凍結乾燥処方、またはその他の乾燥処方の形を取るように混ぜ合わせることによって(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th edition(2000))保存用に調製される。受容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、用いる用量および濃度においてレシピエントに対して無毒であり、バッファー、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、およびその他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメソニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼソニウムクロリド;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(10残基未満)ポリペプチド;タンパク、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニールピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、またはデキストランなど;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn−タンパク複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
本発明の処方はさらに、処置される特定の適応症に必要な、一つより多い活性化合物で、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を持つ活性化合物を含んでもよい。このような分子は、意図される目的に対して有効な量において適切に組み合わされて存在する。
これらの活性成分はさらに、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合によって調製される微小カプセルに、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−微小カプセルに、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、微粒子乳剤、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、または、マクロ粒子乳剤に捕捉されてもよい。このような技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th edition(2000)に開示される。
インビボ投与に使用される処方は無菌でなければならない。これは、無菌ろ過膜によるろ過によって簡単に実現される。
持続放出調剤を調製してもよい。持続放出調剤の適切な例としては、本発明の免疫グロブリンを含む、成形品、例えば、フィルム、または微小カプセルの形状を取る、疎水性固相ポリマーの半透性基質を含む。持続放出基質の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニールアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレンビニールアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびリュープロリドアセテートから構成される注入可能な微小球)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシルブチル酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニールおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日以上に亘る分子の放出を可能とするが、ある種のヒドロゲルはより短い期間タンパクを放出する。カプセル封入された免疫グロブリンは、生体内に長期間留まると、37℃で湿気に暴露されるために分解または凝集する場合があり、このために、生物活性が消失したり、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機序に応じて、安定化のために合理的戦略を工夫することができる。例えば、凝集機序が、チオ−ジスルフィド交換による、分子間S−S結合形成であることが見出されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性液から凍結乾燥すること、水分含量を調節すること、および、特異的ポリマー基質組成物を開発することによって実現される場合がある。
使用
本発明の抗体は、例えば、試験管内(インビトロ)、体外(エクスビボ)、および体内(インビボ)治療法において使用してよい。
一局面では、本発明は、DLL4の発現および/または活性の上昇と関連する、腫瘍、癌、および/または細胞増殖性障害を処置または予防するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量の抗DLL4抗体を投与することを含む方法を提供する。
一局面では、本発明は、腫瘍または癌の増殖を緩和、抑制、阻止、または予防するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量の抗DLL4抗体を投与することを含む方法を提供する。
一局面では、本発明は、腫瘍、癌、および/または細胞増殖性障害を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量の抗DLL4抗体を投与することを含む方法を提供する。
一局面では、本発明は、血管形成を抑制するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量の抗DLL4抗体を投与することを含む方法を提供する。
一局面では、本発明は、血管形成に関連する病的状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量の抗DLL4抗体を投与することを含む方法を提供する。ある実施態様では、血管形成と関連する病的状態は、腫瘍、癌、および/または細胞増殖性障害である。ある実施態様では、病的状態は、眼内血管新生症である。
さらに、本発明の抗体の少なくともあるものは、他の動物種由来の抗原に結合することが可能である。したがって、本発明の抗体は、例えば、抗原を含む細胞培養物において、ヒトの被験者において、または、本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の動物種(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザルおよびアカゲザル、ブタ、またはマウス)において特異的抗原活性に結合させるために使用することが可能である。一実施態様では、本発明の抗体は、抗原に抗体を、抗原活性が抑制されるように接触させることによって、抗原活性を抑制するために使用することが可能である。抗原は、ヒトのタンパク分子であることが好ましい。
一実施態様では、本発明の抗体は、抗原発現および/または活性の上昇と関連する障害に罹患した被験体において抗原に結合させるための方法において使用することが可能である。該方法は、被験体に対し、本発明の抗体を、被験体の抗原に結合されるように投与することを含む。好ましくは、抗原は、ヒトのタンパク分子であり、被験体はヒトの被験者である。それとは別に、被験体は、本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳動物であることも可能である。さらにまた、被験体は、抗原が導入された(例えば、抗原の投与、または抗原トランスジーンの発現によって)哺乳動物であることも可能である。本発明の抗体は、獣医学的目的、または、ヒト疾患の動物モデルとして、該免疫グロブリンが交差反応する抗原を発現する、非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、またはマウス)に投与することが可能である。後者に関しては、そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療効果(例えば、投与の用量および時間経過の試験)を評価するのに有用である場合がある。
本発明の抗体は、一つ以上の抗原分子の発現および/または活性に関連する疾病、障害、または病態を処置、抑制、その進行を遅延させる、その再発を予防/遅延、緩和、または予防するために使用することが可能である。
例示の障害としては、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。このような癌のさらに詳細な例としては、例えば、扁平上皮癌(例えば、表皮扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌を含む胃癌、すい臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳および頭部および頸部癌、および関連する転移腫瘍が挙げられる。ある実施態様では、この癌は、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、および肝細胞癌から成る群から選ばれる。ある実施態様では、癌は、小細胞肺癌、結腸直腸癌、および乳癌で、これらの癌の転移形を含む癌から成る群から選ばれる。
ある実施態様では、一つ以上の細胞傷害剤(単数または複数)に結合させた抗体を含む免疫複合体が患者に投与される。ある実施態様では、免疫複合体、および/または、その結合する抗原は、細胞によって内部に取り込まれ、そのため、免疫複合体の、その結合する標的細胞に対する殺作用において治療効果の上昇がもたらされる。一実施態様では、細胞傷害剤は、標的細胞中の核酸を標的とするか、または干渉する。一実施態様では、細胞傷害剤は、微小管重合を標的とするか、または干渉する。このような細胞傷害剤の例として、本明細書に注記される化学療法剤のいずれか(例えば、マイタンシノイド、アウリスタチン、ドルスタチン、またはカリケアミシン)、放射性同位元素、またはリボヌクレアーゼ、またはDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
本発明の抗体は、治療において、単独で使用することも可能であるし、または、他の組成物と組み合わせて使用することも可能である。例えば、本発明の抗体は、別の抗体、化学療法剤(単数または複数)(複数の化学療法剤のカクテルを含む)、他の細胞傷害剤(単数または複数)、抗血管形成剤(単数または複数)、サイトカイン、および/または増殖阻害剤(単数または複数)と同時投与してもよい。本発明の抗体が、腫瘍増殖を抑制する場合、それを、やはり腫瘍増殖を抑制する、一つ以上の、他の化学療法剤(単数または複数)、例えば、VEGFに対する抗体などの抗VEGF剤と組み合わせることは特に望ましいと考えられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、患者には、併用の放射線治療(例えば、外部からの放射線被爆、または、抗体などの放射性標識剤による治療)を与えてもよい。上記のような併用療法として、併用投与(二つ以上の薬剤が、同じ、または別々の処方に含まれる場合)、および個別投与が挙げられる。後者の場合、本発明の抗体の投与は、一つのまたは複数の補助治療剤の投与前、および/または投与後に行うことが可能である。
併用療法
上述のように、本発明は、抗DLL4抗体が、別の治療剤と共に投与される併用療法を提供する。例えば、抗DLL4抗体は、各種新生または非新生病態を処置するために、抗癌治療剤、または抗血管形成治療剤と組み合わせて使用される。一実施態様では、新生または非新生病態は、異常な、または有害な血管形成と関連する病的障害によって特徴づけられる。抗DLL4抗体は、上記目的のために有効な別の薬剤と、同じ組成物において、または、別々の組成物において、連続的に、または併用的に投与することが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、DLL4の複数の阻害剤を投与することも可能である。
抗DLL4抗体の投与は、同時に、例えば、単一組成物として、または、二つ以上の、別々の組成物として、同じまたは異なる投与ルートを用いて行うことが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、投与は、継時的に、任意の順序で行うことが可能である。ある実施態様では、二つ以上の組成物の投与の間には、数分から数日、数週から数ヶ月に亘る間隔が存在することが可能である。例えば、抗癌剤が先ず投与され、次いで、DLL4阻害剤が投与されてもよい。しかしながら、同時投与、または、最初に抗DLL4抗体を投与することも考慮の対象とされる。
抗DLL4抗体と組み合わせて投与される治療剤の有効量は、医師または獣医の裁量に委ねられる。用量投与および調整は、処置される病態について最大の管理を実現するように行われる。さらに、用量は、使用される治療剤の種類、および、処置される特定の患者などの要因に依存する。抗癌剤の適切な用量は、現在使用されるものであるが、抗癌剤および抗DLL4抗体の併合作用(協働作用)にしたがって下げることも可能である。ある実施態様では、複数の阻害剤の併用は、単一阻害剤の効力を増強する。「増強する」という用語は、その一般的、または承認用量における治療剤効力の向上を指す。さらに、本明細書の「製薬組成物」という表題のついたセクションを参照されたい。
通常、抗DLL4抗体および抗癌剤は、同じまたは同様の病気に対して好適であって、腫瘍増殖、または癌細胞の増殖などの病的障害を阻止または緩和する。一実施態様では、抗癌剤は、抗血管形成剤である。
癌と関連する抗血管形成治療は、腫瘍増殖を支える栄養素の補給に必要な腫瘍血管の発達の抑制を目標とした、癌処置戦略である。血管形成は、一次的腫瘍増殖および転移の両方に関与するのであるから、本発明によって提供される血管形成処置は、原発部位における腫瘍の新生増殖を抑制するばかりでなく、二次部位における腫瘍の転移をも阻止することが可能であり、したがって、他の治療剤による腫瘍の攻撃が可能とされる。
多くの抗癌剤が特定され、当該分野で知られており、例えば、本明細書において列挙されるもの、例えば、「定義」において列挙されるもの、例えば、Carmeliet and Jain,Nature 407:249−257(2000);Ferrara et al.,Nature Reviews:Drug Discovery,3:391−400(2004);およびSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)に列挙されるものが挙げられる。さらに、米国特許出願公開第20030055006号明細書を参照されたい。一実施態様では、抗DLL4抗体は、抗VEGF中和抗体(または断片)、および/または、別のVEGF拮抗剤、VEGF受容体拮抗剤、例えば、ただしこれらに限定されないが、可溶性VEGF受容体(VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、ニューロピリン(例えば、NRP1、NRP2))断片、VEGFまたはVEGFRを阻止することが可能なアプタマー、中和性抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤(RTK)、VEGFに対するアンチセンス戦略、VEGFまたはVEGF受容体に対するリボザイム、VEGFの拮抗変異種など;および、それらの任意の組み合わせと組み合わせて使用される。それとは別に、またはそれに加えてさらに、VEGF拮抗剤および他の薬剤の外に、二つ以上の血管形成阻害剤が、患者に対し任意に同時投与されてよい。ある実施態様では、さらに別の、一つ以上の治療剤、例えば、抗癌剤を、抗DLL4抗体、VEGF拮抗剤、および抗血管形成剤と組み合わせて投与することが可能である。
本発明のある局面では、抗DLL4抗体との併用腫瘍治療に有用な、その他の治療剤としては、他の癌治療法(例えば、手術、放射線処置(例えば、放射性物質による被爆、または放射性物質の投与)、化学療法、本明細書に列挙され、当該分野で既知の抗癌剤による処置、またはそれらの組み合わせ)が挙げられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、本明細書に開示される、同じ、または二つ以上の異なる抗原に結合する、二つ以上の抗体を、患者に同時投与することも可能である。場合によって、患者に対し一つ以上のサイトカインを投与することが有利であることがある。
化学療法剤
ある局面では、本発明は、有効量の、DLL4の拮抗剤および/または血管形成抑制剤(単数または複数)および一つ以上の化学療法剤を、癌に対して感受性を持つか、または癌と診断された患者に対し投与することによって、腫瘍増殖または癌細胞の増殖を阻止するか、または抑える方法を提供する。本発明の併用処置法では、種々の化学療法剤を用いてよい。考慮の対象とされる、例示の、非限定的化学療法剤が、本明細書の「定義」に掲載される。
当業者には理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、一般に、該化学療法剤が、単独で、または他の化学療法剤と組み合わせて投与される、臨床治療で既に用いられている用量にほぼ等しい。処置される病態に応じて、用量に変動が起こる可能性がある。処置を担当する医師は、個々の対象患者のために適切な用量を決定することが可能である。
本発明はさらに、腫瘍増殖または癌細胞増殖の再発を抑制、または阻止するための方法および組成物を提供する。腫瘍増殖の再発、または癌細胞増殖の再発とは、患者は、1種以上の現在利用が可能な処置(例えば、癌治療、例えば、化学療法、放射線治療、手術、ホルモン療法、および/または生物学的療法/免疫療法、抗VEGF療法、特に、特定の癌に対する標準的治療処方)を現在受けているか、またはそれによって治療されるが、治療は、患者を治療するには臨床的には十分でないか、あるいは、患者は、その治療からもはや十分な治療作用を受容することがなく、さらに別の効果的治療を必要とする状態を記述するために使用される。本明細書で用いる場合、この語句はまた、「非反応性/難治性」患者の病態、例えば、治療には反応するが、副作用に苦しむ患者、耐性を発達させる患者、治療に反応しない患者、治療に十分反応しない患者を記述する状態を指すことも可能である。種々の実施態様において、癌は、癌細胞の数が顕著に減少しないか、増加するか、または、大きさ、または癌細胞数においてそれ以上の減少を見せることがなくなった、再発腫瘍増殖、または再発癌細胞増殖である。癌細胞が、再発腫瘍増殖か、または再発癌細胞増殖であるかを決める判断は、上記背景における「再発」または「難治」または「非反応性」に関する、当該分野において認知済みの意味に基づいて、癌細胞に対する処置効果を定量するための、当該分野で既知の任意の方法によってインビボ、またはインビトロで行うことが可能である。抗VEGF処置に対して耐性を持つ腫瘍は、再発腫瘍増殖の一例である。
本発明は、対象における再発腫瘍増殖または再発癌細胞増殖を阻止または抑制する方法であって、対象に再発腫瘍増殖または再発癌細胞増殖を阻止または抑制する、一つ以上の抗DLL4抗体を投与することによってそれを行う方法を提供する。ある実施態様では、癌治療に次いで拮抗剤を投与することが可能である。ある実施態様では、抗DLL4抗体は、癌治療と同時に投与される。それとは別に、またはそれに加えてさらに、抗DLL4抗体治療は、別の癌治療と交互に行われるが、この治療は、任意の順序で行うことが可能である。本発明はさらに、癌に罹りやすい患者において癌の発症または再発を防ぐために、一つ以上の抑制性抗体を投与する方法を包含する。一般に、対象は、以前に癌治療を受けたことがあるか、または同時に癌治療を受ける。一実施態様では、癌治療は、抗血管形成剤、例えば、VEGF拮抗剤による処置である。抗血管形成剤としては、当該分野で既知のもの、および本明細書の「定義」に見られるものが挙げられる。一実施態様では、抗血管形成剤は、抗VEGF中和性抗体、または断片(例えば、AVASTIN(登録商標)(Genentech,South San Francisco,CA)、またはLUCENTIS(登録商標)(Genentech,South San Francisco,CA)),Y0317、M4、G6、B20、2C3など)である。例えば、米国特許第6,582,959号明細書、同第6,884,879号明細書、同第6,703,020号明細書;国際公開第98/45332号パンフレット;国際公開第96/30046号パンフレット;国際公開第94/10202号パンフレット;欧州特許第0666868B1号明細書;米国特許出願公開第20030206899号明細書、同第20030190317号明細書、同第20030203409号明細書、および同第20050112126号明細書;Popkov et al.,Journal of Immunological Methods 288:149−164(2004);および国際公開第2005012359号パンフレットを参照されたい。再発腫瘍増殖または再発癌細胞増殖を阻止または抑えるために、VEGF拮抗剤および抗DLL4抗体と組み合わせて、さらに別の薬剤を投与することが可能である。本明細書の「併用療法」という表題のセクションを参照されたい。
本発明の抗体(および補助治療剤)は、任意の適切な手段によって、例えば、非経口的、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内など、および、局所処置が望みであるなら、病巣内、または硝子体内投与によって投与される。非経口的注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。さらに、抗体は、パルス状注入、特に、抗体用量を漸減させることによって好適に投与される。投与は、任意の適切なルートによって、例えば、注入によって、例えば、一部は、投与が一過性かまたは慢性であるかに応じて、静脈内または皮下注入によって行うことが可能である。
本発明の抗体組成物は、医療実施基準と合致するやり方で処方、用量設定、および投与される。この背景において考慮される要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個別患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与法、投与スケジュール、および開業医には既知の、その他の要因が挙げられる。抗体は、対象とする障害の予防または処置のために現今使用される一つ以上の薬剤と共に任意に処方される。このような、その他の薬剤の有効量は、、処方中に存在する本発明の抗体の量、障害または処置の種類、および、上に述べたその他の要因に依存する。これらは、一般に同じ用量で、かつ、前述の投与ルートを通じて、これまでに使用された用量の約1から99%として使用される。
病気の予防または処置のためには、本発明の抗体の適切用量は(単独で使用される場合、または、化学療法剤などの他の薬剤と組み合わせて使用される場合)、処置される病気の種類、病気の重症度および経過、抗体が、予防目的または治療目的のために投与されるのか、以前の治療、患者の臨床歴および抗体に対する反応、および主治医の判断に依存する。抗体は、一時に、または一連の処置時点に亘って患者に適切に投与される。病気の種類および重症度に応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体は、例えば、1回以上の個別投与であれ、または連続輸液であれ、患者に対する投与のための、初回候補用量である。一つの典型的な1日当たり用量は、前述の要因に応じて約1μg/kgから100mg/kg以上の範囲に亘ると考えられる。数日以上に亘る反復投与の場合は、処置は、症状の望みの抑制が起こるまで持続される。抗体の、一つの例示の用量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲にあると考えられる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(または、それらの任意の組み合わせ)の、一つ以上の用量を患者に投与してよい。この用量は、断続的に、例えば、週に1回、または3週間に1回(例えば、患者が、約2回から約20回、例えば、約6回の抗体投与を受け取るように)投与されてもよい。初回に比較的高い負荷用量、次いで、1回以上の比較的低用量を投与してもよい。例示の投与スケジュールは、約4mg/kgの初回負荷用量、次いで、約2mg/kgの抗体から成る週1回の維持投与を含む。しかしながら、他の投与スケジュールが有用な場合もある。この治療の進行は、従来技術およびアッセイによって簡単に監視される。
本発明の抗DLL4抗体は、特異的細胞または組織におけるDLL4発現を検出するアッセイ(例えば、診断または予後判定アッセイ)において有用である。その際、抗体は、下記のように標識され、不溶の基質に固定される。
別の局面では、本発明は、DLL4を検出するための方法であって、サンプルにおいてDLL4−抗DLL4抗体複合体を検出することを含む方法を提供する。本明細書で用いる「検出」という用語は、コントロールを参照するか、または参照することのない、定性的および/または定量的(濃度の測定)検出を含む。
別の局面では、本発明は、DLL4発現および/または活性に関連する障害を診断する方法であって、該障害を有する、または有することが疑われる患者から得られた生物サンプルにおいてDLL4−抗DLL4抗体複合体を検出することを含む方法を提供する。ある実施態様では、DLL4発現は、発現上昇、または異常(有害)な発現である。ある実施態様では、障害は、腫瘍、癌、および/または細胞増殖性障害である。
別の局面では、本発明は、検出可能ラベルを含む、本明細書に記載される抗DLL4抗体のいずれか一つを提供する。
別の局面では、本発明は、本明細書に記載される抗DLL4抗体のいずれかと、DLL4との複合体を提供する。ある実施態様では、複合体は、インビボまたはインビトロに存在する。ある実施態様では、複合体は、癌細胞である。ある実施態様では、抗DLL4抗体は、検出可能に標識される。
いくつかの周知の検出アッセイ法のいずれか一法においてDLL4を検出するために、抗DLL4抗体を使用することが可能である。例えば、ある生物サンプルについて、DLL4をアッセイするのに、サンプルを所望の供給源から得ること、サンプルを抗DLL4抗体と混ぜ合わせ、抗体に、混合物中に存在するDLL4と、抗体/DLL4複合体を形成させること、および、混合物中に存在する抗体/DLL4複合体を検出することによって行う。生物サンプルは、その特定のサンプルのために好適な、当該分野で既知の方法によってアッセイのために調製されてもよい。サンプルを抗体と混ぜ合わせる方法、および、抗体/DLL4複合体を検出する方法は、使用されるアッセイの種類にしたがって選ばれる。そのようなアッセイとして、免疫組織化学、競合的およびサンドイッチアッセイ、および立体阻害アッセイが挙げられる。
DLL4の分析法は皆、下記の試薬の一つ以上を使用する:標識DLL4類縁体、固定DLL4類縁体、標的抗DLL4抗体、固定抗DLL4抗体、および立体複合体。標識試薬はまた、「トレーサー」とも呼ばれる。
使用されるラベルは、DLL4および抗DLL4抗体の結合を妨げないものである限り、いずれの検出可能な官能基であってもよい。イムノアッセイにおける使用のために多くのラベルが知られるが、例えば、直接検出可能な成分、例えば、蛍光色素、化学発光、および放射性ラベルのほか、検出のために反応または誘導体形成しなければならない酵素などの成分が挙げられる。このようなラベルの例としては:
使用されるラベルは、DLL4および抗DLL4抗体の結合を妨げないものである限り、いずれの検出可能な官能基であってもよい。イムノアッセイにおける使用のために多くのラベルが知られるが、例えば、直接検出してもよい成分、例えば、蛍光色素、化学発光、および放射性ラベルの外、検出のために反応、または誘導体形成しなければならない酵素などの成分が挙げられる。このようなラベルの例として、例えば、放射性同位元素、32P、14C、125I、3H、および131I、蛍光発色団、例えば、希土類キレート剤、または、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、蛍ルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロ環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ、およびキサンチンオキシダーゼ、これらを、過酸化水素を用いて、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼなどの染料前駆体を酸化する酵素と結合させて使用し、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定なフリーラジカルなどが挙げられる。
これらのラベルをタンパクまたはポリペプチドに共有的に結合するためには、従来法が利用可能である。前述の蛍光、化学発光、および酵素ラベルによって抗体を標識するためには、例えば、結合剤、例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス−イミデート、ビス−ジアゾチゼドベンジジンなどを使用してよい。例えば、米国特許第3,940,475号明細書(蛍光定量法)、および同第3,645,090号明細書(酵素);Hunter et al.,Nature,144:945(1962);David et al.,Biochemistry,13:1014−1021(1974);Pain et al.,J.Immunol.Methods,40:219−230(1981);Nygren,J.Histochem. and Cytochem.,30:407−412(1982)を参照されたい。本発明において好ましいラベルは、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびアルカリフォスファターゼである。酵素を含む、このようなラベルの、抗体に対する結合は、イムノアッセイ技術に熟練した当業者にとっては標準的操作手順である。例えば、O′Sullivan et al.,“Methods for the Preparation of Enzyme−antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”, Methods in Enzymology,ed.J.J.Langone and H.Van Vunakis,Vol.73(Academic Press,New York,New York,1981),pp.147−166を参照されたい。
ある種のアッセイ法にとっては試薬の固定が必要である。固定は、液中に遊離して存在するDLL4からの抗DLL4抗体の分離をもたらす。これは、通常、抗DLL4抗体またはDLL4類縁体を、例えば、水に不溶の基質また表面に対し吸着させることによって(Bennich et al.,米国特許第3,720,760号明細書)、または、共有結合によって(例えば、グルタルアルデヒド架橋結合を用いて)、または、後で、例えば、免疫沈降によって抗DLL4抗体またはDLL4類縁体を不溶化することによって、実現される。
サンプルにおけるタンパクの発現は、免疫組織化学および染色プロトコールによって調べてもよい。組織切片の免疫組織化学的染色は、サンプルにおけるタンパクの存在を評価または検出するための信頼性の高い方法であることが示されている。免疫組織化学(“IHC”)技術は、一般的には、発色団または蛍光法によってインシトゥーにおいて細胞抗原を探り、可視化するために抗体を利用する。サンプル調製には、哺乳動物(通常は、ヒトの患者)から得られた組織または細胞サンプルを用いてよい。サンプルの例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、癌細胞、例えば、結腸、***、前立腺、卵巣、肺、胃、すい臓、リンパ腫、および白血病癌細胞が挙げられる。細胞は、当該分野で既知の種々の手法によって、例えば、ただしこれらに限定されないが、手術による摘出、吸引、またはバイオプシーによって獲得することが可能である。組織は、新鮮なままでもよいし、凍結させてもよい。一実施態様では、サンプルは固定され、パラフィンなどに包埋される。組織サンプルは、通例法によって固定(すなわち、保存)されてもよい。当業者であれば、固定剤の選択は、そのサンプルが組織学的に染色されるか、または他のやり方で分析されるその目的によって決められることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、固定の期間は、組織サンプルのサイズ、および使用される固定剤に依存することを理解するであろう。
IHCは、さらに別の技術、例えば、形態学的染色および/または蛍光インシトゥハイブリダイゼーションと組み合わせて行ってもよい。IHCについては、二つの一般的方法:直接および間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイによれば、標的抗原(例えば、DLL4)に対する抗体の結合は直接定量される。この直接アッセイは、それ以上抗体相互作用を要することなく可視化することが可能な、標識試薬、例えば、蛍光タグ、または、酵素標識一次抗体を使用する。典型的な間接アッセイでは、未結合一次抗体が抗原に結合し、次に、標識二次抗体が、この一次抗体に結合する。二次抗体が酵素ラベルに結合される場合、発色性または蛍光性基質が加えられ、抗原の可視化を実現する。いくつかの二次抗体は、一次抗体上の異なるエピトープと反応するために信号増幅が起こる。
免疫組織化学に使用される一次および/または二次抗体は、通常、検出可能な成分によって標識される。数多くのラベルの利用が可能であるが、それらは、一般に、下記の範疇に分類される:
前述の、サンプル調製手順を除外すると、IHCの前、最中、または後に組織切片についてさらに処理することが望ましい場合がある。例えば、エピトープ回収法では、例えば、クエン酸バッファー中で組織サンプルの加熱を実行してもよい(例えば、Leong et al.Appl.Immunohistochem.4(3):201(1996))。
任意に実行してよいブロッキング工程の後、一次抗体が組織サンプル中の標的タンパク抗原に結合するように、十分な時間、好適な条件下に、組織切片を一次抗体に暴露する。これを実行するための適切な条件は、通例の実験によって決定することが可能である。サンプルに対する抗体の結合の程度は、前述の検出可能なラベルの内のいずれかを用いて定量される。ラベルは、3,3′−ジアミノベンジミド発色団などの発色性基質の化学的変化を触媒する、酵素ラベル(例えば、HRPO)であることが好ましい。酵素ラベルは、一次抗体に特異的に結合する抗体に結合される(例えば、一次抗体は、ウサギポリクローナル抗体で、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)ことが好ましい。
このようにして調製されるサンプルは、スライドマウントされ、ガラス被覆される。次に、例えば、顕微鏡を用いてスライド評価を判定するが、当該分野で通例として使用される染色強度基準を用いてもよい。染色強度基準は、下記のように評価してもよい。
通常、IHCアッセイにおいて染色パターンスコアが約2+以上の場合、診断および/または予後判定陽性である。ある実施態様では、染色パターンスコアが約1+以上の場合、診断および/または予後判定陽性である。別の実施態様では、染色パターンスコアが約3以上の場合、診断および/または予後判定陽性である。腫瘍または結腸腺癌からの細胞および/または組織をIHCを用いて調べる場合、染色は、一般に、腫瘍細胞および/または組織において(サンプル中に存在する可能性のある支質または周辺組織ではなく)定量または評価される。
競合またはサンドイッチアッセイと呼ばれる他のアッセイ法も確立されており、診断産業界において広く使用されている。
競合アッセイは、トレーサーDLL4類縁体が、少数の抗DLL4抗体の抗原結合部位を求めて試験サンプルのDLL4と競合する能力に依存する。抗DLL4抗体は、一般に、競合の前または後に不溶とされ、この抗DLL4抗体に結合したトレーサーとDLL4が、未結合トレーサーおよびDLL4から分離される。この分離は、傾斜分離(結合パートナーを、事前に不溶とした場合)か、または、遠心(結合パートナーを、競合反応後に沈殿させた場合)によって行う。試験サンプルのDLL4の量は、マーカー物質の量で測定した結合トレーサーの量に逆比例する。既知量のDLL4による用量−反応曲線が準備され、試験結果と比較されて、試験サンプル中に存在するDLL4の量を定量的に決定する。これらのアッセイは、酵素が検出可能マーカーとして使用される場合、ELISAシステムと呼ばれる。
「均質」アッセイと呼ばれる、もう一種類の競合アッセイは、相分離を必要としない。このアッセイでは、酵素とDLL4の複合体が調製され、この複合体は、抗DLL4抗体がこのDLL4に結合すると、抗DLL4抗体の存在が、酵素活性を修飾するように使用される。この場合、DLL4、または免疫学的に活性なその断片は、二官能性有機架橋によってペルオキシダーゼなどの酵素に結合される。複合体は、抗DLL4抗体との使用において、抗DLL4抗体の結合が、ラベルの酵素活性を抑制するか、または増強するように選ばれる。この方法自体は、EMITの名の下に広く行われている。
均質アッセイのための立体障害法では立体複合体が使用される。これらの複合体は、低分子量ハプテンを、小型のDLL4断片に共有的に連結することによって合成されるが、その連結は、ハプテンに対する抗体が、抗DLL4抗体と同時には複合体に事実上結合できないように行われる。このアッセイ手法では、試験サンプル中に存在するDLL4は、抗DLL4抗体に結合し、そうすることによって抗ハプテンが複合体に結合することを可能とする。これは、複合体ハプテンの特徴に変化を、例えば、ハプテンが蛍光発色団の場合、蛍光に変化をもたらす。
サンドイッチアッセイは、DLL4、または抗DLL4抗体の定量に特に有用である。継時的サンドイッチアッセイでは、試験サンプルのDLL4を吸着するために、抗DLL4抗体が使用され、試験サンプルは、洗浄などで除去され、第2の、標識抗DLL4抗体を吸着するために、結合DLL4が使用され、次に、標識抗DLL4抗体および結合物質が、残余のトレーサーから分離される。結合トレーサーの量は、試験サンプルのDLL4に直接比例する。「同時」サンドイッチアッセイでは、試験サンプルは、標識抗DLL4を加える前に分離されない。一方の抗体として抗DLL4モノクローナル抗体を、他方の抗体として抗DLL4ポリクローナル抗体を用いる、継時的サンドイッチアッセイは、DLL4に関してサンプルを試験するのに有用である。
前記は、DLL4のための、単に例示の検出アッセイであるにすぎない。DLL4の定量のために抗DLL4抗体を使用する、現在開発中の、また今後開発されるその他の方法も、本明細書に含まれるバイオアッセイを含め、本発明の範囲内に含まれる。
製造品
本発明のもう一つの局面では、前述の障害の処置、予防、および/または診断に有用な物質を含む製造品が提供される。この製造品は、容器、および、該容器の上、またはそれと関連させて、ラベルまたは同封挿入体を含む。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されてよい。容器は、病態の処置、予防、および/または診断にそれ自体で有効であるか、または、別の組成物(単数または複数)と組み合わされると有効な組成物を保持するが、無菌のアクセスポート(例えば、容器は、静注液バッグであってもよいし、あるいは、皮下注射針によって貫通することが可能なストッパー付きバイアルであってもよい)を有し得る。組成物における少なくとも一つの活性剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは包装挿入体は、組成物が、癌などの選択病態を処置するために使用されることを示す。さらに、本製造品は、(a)その中に、本発明の抗体を含む組成物を有する第1容器;および、(b)さらに別の治療剤を含む組成物をその中に擁する第2容器を含んでもよい。前記さらに別の治療剤は、例えば、化学療法剤、または、抗血管形成剤、例えば、抗VEGF抗体(例えば、bevacizumab)などを含んでもよい。本発明のこの実施態様における製造品は、さらに、第1および第2抗体組成物が、癌などの特定の病態を処置するために使用することが可能であることを示す包装挿入体を含んでもよい。それとは別に、またはそれに加えてさらに、製造品はさらに、薬理学的に受容可能なバッファー、例えば、注入用静菌水(BWFI)、リン酸バッファー生理的食塩水、リンゲル液、およびデキストロース液を含む、第2(または第3)容器を含んでもよい。該製造品はさらに、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の物質、例えば、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、およびシリンジなどを含んでもよい。
下記は、本発明の方法および組成物の実施例である。一般的記述が上に与えられたのであるから、外にも種々の実施態様が実施可能であることが理解されよう。
実施例
実施例に言及される市販の試薬は、別様に指示しない限り、メーカーの指示にしたがって使用した。下記の実施例、および本明細書全体に亘って、ATCC(登録商標)アクセス番号によって特定される、細胞供給源は、米国基準菌株保存機関、Manassas、VA20108である。実施例に引用される参考文献は、例にしたがって列挙する。本明細書に引用される参考文献は全て、参照により本明細書に含む。
(実施例1)
材料および方法
本実施例では、下記の材料および方法を使用した。
HUVECフィブリンゲルビーズアッセイ。HUVECフィブリンゲルビーズアッセイの詳細は、既に記載されている(Nakatsu,M.N. et al.Microvasc Res 66,102−12(2003))。簡単に言うと、Cytodex(商標)3ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を、ビーズ当たり350−400 HUVECでコートした。約200個のHUVECコート済みビーズを、12−ウェル組織培養プレートの1ウェルにおいてフィブリンクロット中に埋設した。8×104SF細胞を、クロットの上にプレートした。アッセイは、7日目と9日目の間で停止し、免疫染色および画像撮影に備えた。ある実施態様では、HUVEC新芽を、ビオチン抗CD31(クローンWM59、cBioscience)およびストレプトアビジン−Cy3で染色することによって可視化した。HUVEC核染色のために、フィブリンゲルを、2%パラフォルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定し、4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、Sigma)で染色した。Ki67染色のために、フィブリンゲルを、10Xトリプシン−EDTAで5分間処理し、最上層SFを除去し、PBSに溶解した10%FBSで中和し、4%PFA中で一晩固定した。次に、フィブリンゲルを、PBSTに溶解した10%ヤギ血清、4時間でブロックし、ウサギ抗マウスKi67(直ちに使用が可能な調製品、クローンSp6、Lab Vision)と一晩インキュベートし、次いで、抗ウサギIgG−Cy3(Jackson ImmunoResearch)による二次検出を行った。一晩経過インキュベーションは全て4℃で行った。
マウスの新生児網膜実験。同腹のCD1マウス新生児に、P1およびP3において、PBS、またはYW26.82(10mg/kg)をi.p.注入した。眼球をP5に収集し、PBSに溶解した4%PFAで一晩固定した。摘出網膜を、PBSTに溶解した10%ヤギ血清で3時間ブロックし、次いで、一次抗体と一晩インキュベートした。一次カクテルは、ビオチニル化イソレクチンB4(25μg/ml、Bandeiraea simplicifolia;Sigma)、および、下記:ウサギ抗マウスKi67(1:1、即時使用可能調製品、クローンSp6、Lab Vision)、または、マウスCy3−結合抗アルファSMA(1:2000、Sigma−Aldrich)の内の一つを、PBLEC(1%Triton X−100、0.1mM CaCl2、0.1mM MgCl2、0.1mM MnCl2、PBS溶液として、pH6.8)に溶解した10%血清と共に含む。次に、網膜をPBSTにて洗浄し、Alexa Fluor(登録商標)488ストレプトアビジン(1:200;Molecular Probes)、およびCy3−抗ウサギIgG(1:200;Jackson ImmunoResearch)から成る、二次抗体併用剤と一晩インキュベートした。染色完了後、網膜を、PBSに溶解した4%PFAにて染色後固定した。一晩経過インキュベーションは全て4℃で行った。平坦に登載した網膜の画像を、共焦点蛍光顕微鏡によって捕捉した。
腫瘍モデル。8から10週齢のベージュ色雌ヌードマウスを用いた。皮下腫瘍を得るため、マウスに、50%マトリゲル(BD Bioscience)を含む、0.1ml細胞縣濁液を、右後方横腹に注入した。5×106ヒト結腸癌HM7細胞、10×106結腸癌Colo205細胞、10×106ヒト肺癌Calu6細胞、10×106ヒト肺癌MV−522細胞、10×106マウス白血病WEHI−3細胞、10×106マウスリンパ腫EL4細胞、10×106ヒト卵巣癌SK−OV−3X1細胞、10×106マウス肺癌LL2細胞、10×106白血病/リンパ腫EL4細胞、または10×106非小細胞肺癌H1229細胞を、各マウスに注入した。ヒトメラノーマMDA−MB−435モデルについては、マウスの乳腺脂肪パッドに、50%マトリゲルを含む、0.1mlの細胞縣濁液(5×106)を注入した。抗DLL4抗体YW26.82をi.p.を通じて投与した(10mg/kg体重、週2回)。下記の腫瘍モデルについては、各試験マウスの右横腹の皮下に、腫瘍断片(1mm3)を移植した:非小細胞肺癌SKMES−1、ヒト乳癌MX−1、ヒト結腸直腸癌SW620、およびヒト腺癌LS174T。腫瘍成長は、キャリパ測定によって定量した。腫瘍体積(mm3)は、長さ(l)および幅(w)を測定し、体積(V=lw2/2)を計算することによって決定した。各群には10から15匹の動物を含めた。処理群の統計学的比較は、スチューデントの両側t−検定を用いて行った。
腫瘍の血管標識および免疫組織化学。マウスを、イソフルランによって麻酔した。FITC−標識Lycopersicon esculentumレクチン(150μgを150μlの0.9%NaClに溶解;Vector Laboratories)をi.v.注入し5分間循環させた後、全身還流を行った。血管系を、PBSに溶解した1%PFAによって3分間経心臓的に還流した。腫瘍を取り出し、同じ固定液に2時間浸して固定し、次いで、30%スクロースに一晩インキュベートし、冷却保護に備え、次いで、OCTに包埋した。切片(4μm厚)を、抗マウスCD31(1:50、BD Pharmingen)で染色し、次いで、Alexa 594ヤギ抗ラットIgG(1:800、Molecular Probes)で処理した。
マウス小腸の組織学および免疫組織化学検査。フォルマリン固定およびパラフィン包埋マウス小腸組織を、3μm厚に薄切した。小腸の細胞タイプの組織化学的特定は、メーカー(PolyScientific)の推薦にしたがってアルシアンブルーによって実行した。抗Ki67染色のために、切片をあらかじめTarget Retrieval液(S1700、DAKO)で処理し、ウサギ抗Ki67(1:200、クローンSP6、Neomarkers)と共にインキュベートした。ヤギ抗ウサギ二次抗体、7.5g/ml(Vector labs)は、Vectastain ABC Eliteキット(Vector labs)によって検出した。Ki67染色切片は全て、Mayerのヘマトキシリンによってカウンターステインした。HES−1染色のため、抗ラットHES−1(クローンNM1、MBL、International)、次いでTSA−HRPを用いた。
RNA干渉。ヒトDLL4を標的とする、SMART pool小型干渉RNA(siRNA)2本鎖、およびSiコントロール非標的siRNA#2は、Dharmaconから購入した。siRNR2本鎖(50nM)のトランスフェクションは、OptiMEM−1(登録商標)およびLipfectamine(商標)2000(Invitrogen)を用い、40%集密度のHUVECに対して行った。FACS分析は、siRNAトランスフェクションの48時間後に行った。4種の抗DLL4 SMART pool siRNAの配列は下記の通りである:
Notchリガンド:Notch阻止ELISA。96−ウェルマイクロタイタープレートを、組み換えラットNotch1−Fc(rrNotch1−Fc、R&D Systems)、0.5μg/mlでコートした。このアッセイでは、DLL4−AP(DLL4のアミノ酸1−404を、ヒト胎盤アルカリフォスファターゼに融合させたもの)を含む調整媒体を用いた。調整媒体を準備するために、DLL4−APを発現するプラスミドをFugen6試薬(Roche Molecular Biochemicals)を用いて、293細胞に一過性にトランスフェクションした。トランスフェクションの5日後、調整媒体を収集し、ろ過し、4℃で保存した。0.15から25μg/mlの力価測定精製抗体を、コートされたrrNotch1−Fcに対し、最大達成結合度の50%結合を付与する希釈度において、DLL4−AP調整媒体とあらかじめ室温で1時間インキュベートした。次に、この抗体/DLL4−AP混合物を、rrNotch1−Fcコートプレートに加え、室温で1時間置き、その後、プレートを、PBS中で数回洗浄した。結合DLL4−APは、1−Step PNPP(Pierce)を基質として用い、OD 405nm吸光度測定によって検出した。同じアッセイを、DLL1−AP(ヒトDLL1、アミノ酸1−445)について行った。同様のアッセイを、精製DLL4−His(C−末端His標識ヒトDLL4、アミノ酸1−404)、およびJag1−His(R&D systems)についても行った。結合His−標識リガンドを、マウス抗His mAb(1μg/ml、Roche Molecular Biochemicals)、ビオチニル化ヤギ抗マウス(Jackson ImmunoResearch)、およびストレプトアビジン−AP(Jackson ImmunoResearch)によって検出した。
RNA抽出およびリアルタイム定量RT−PCR。2−D培養におけるHUVECからの全RNAの抽出は、RNeasy(登録商標)ミニキット(Qiagen)をメーカーの指示にしたがって用いて行った。フィブリンゲルにおいて増殖するHUVECから全RNAを抽出するため、フィブリンゲルを、10Xトリプシン−EDTA(Gibco)で5分間処理し、最上層の線維芽細胞を除去し、次いで、PBSに溶解した10%FBSで中和した。次に、ゲル塊を、組織培養ウェルから取り出し、微小試験管において遠心(10K、5分)し、余分の液体を除去した。得られたゲル「ペレット」を、溶解バッファー(RNeasy(登録商標)ミニキット)で溶解し、さらに、2−D培養におけるHUVECと同様に処理した。RNAの量を、RNA6000ナノチップ、およびAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)を用いて評価した。7500 Real Time PCR Systems(Applied Biosystems)を用いて、リアルタイム定量RT−PCR反応を三回実行した。正規化のために、ヒトのGAPDHを参照遺伝子として用いた。発現レベルは、3回の別々の定量値から、コントロールに対する、mRNA変化の平均(±SEM)倍数として表した。VEGFR2、TGFβ2、およびGAPDHのための、順行および逆行プライマーおよびプローブ配列は、下記の通り。
(実施例2)
ファージ抗DLL4抗体の生成
重鎖および軽鎖の相補性決定域(CDR)内部に多様性を導入することによって、単一骨組構造(ヒト化抗ErbB2抗体、4D5)の上に、合成ファージ抗体ライブラリーを構築した(Lee,C.V. et al.J Mol Biol 340,1073−93(2004);Liang,W.C.et al.J Biol Chem 281,951−61(2006))。天然ライブラリーを用いたプレートパンニングを、MaxiSorp(商標)イムノプレート上に固定したHis標識ヒトDLL4(アミノ酸1−404)に対して行った。4ラウンドの濃縮後、クローンをランダムに取り出し、ファージELISAを用いて特異的結合因子を特定した。得られたhDLL4結合クローンを、His標識マウスDLL4タンパクでさらにスクリーニングして、種間交差クローンを特定した。各陽性ファージクローンについて、重鎖および軽鎖の可変領域を、完全長IgG鎖を発現するように修飾されたpRK発現ベクターにサブクローンした。重鎖および軽鎖構築物を、293またはCHO細胞に同時にトランスフェクションし、その発現抗体を、プロテインAアフィニティーカラムを用いて血清無添加培地から精製した。精製抗体を、DLL4とラットのNotch1−Fcの間の相互作用を阻止するかどうかについてELISAで調べ、完全長ヒトDLL4、またはマウスDLL4を発現する安定な細胞系統に対する結合について、FACSによって調べた。アフィニティー熟成については、最初の対象クローンから得られたCDRループ(CDR−L3、−H1、および−H2)の、三つの異なる組み合わせを有するファージライブラリーを、ソフトランダム化戦略によって、各選択位置が、約50:50の頻度で、非野生型残基に突然変異するか、または野生型として維持されるように構築した(Liang et al.,2006,上記)。次に、ヒトおよびマウスのHis標識DLL4タンパクに対し、厳密性を次第に上昇させながら、4ラウンドの溶液相パンニングを行って高親和性クローンを特定した。
(実施例3)
抗DLL4抗体の特徴
抗DLL4 Mabの結合親和性を決めるために、BIAcore(商標)−3000による表面プラズモン共鳴(SRP)計測を用いた(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)。簡単に言うと、供給業者の指示にしたがって、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、N−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)およびN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)によって活性化した。抗DLL4抗体を、10mM酢酸ナトリウムpH4.8によって5μg/mlに希釈し、次いで、5μl/分の流速で注入して約500反応単位(RU)の結合抗体を実現した。次に、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンを注入した。速度論的測定のために、ヒトまたはマウスのDLL4−His分子の、連続2倍希釈液(0.7nMから500nM)を、PBSにおいて、0.05%Tween(商標)20と共に、25℃で、25μl/分の流速で注入した。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、単純な1対1 Langmuir結合モデル(BIAcore Evaluation Software、3.2バージョン)を用いて計算した。平衡解離定数(Kd)は、koff/konとして計算した。この実験結果を表3に示す。抗体YW26.81は、ヒトおよびマウスDLL4に対して近似のKd値を示し(Kd値は、それぞれ、0.1nM5および0.09nM)、そのマウスモデルにおける評価を可能にした。
表3:ヒトおよびマウスDLL4に対する抗DLL4抗体の結合親和性および反応速度変化。“NA”は、測定が行われなかったことを示す。
(実施例4)
抗DLL4抗体のさらに詳細な特徴
抗DLL4Mab YW26.82のエピトープマッピング:抗DLL4Mab26.82は、ヒトDLL4細胞外ドメイン(ECD)の、EGF様反復列番号2(EGL2)中に存在する結合決定基を認識する。EGL2は、ヒトDLL4 ECDのアミノ酸252−282を含む。簡単に言うと、DLL4 ECD突然変異は、アルカリフォスファターゼ融合タンパクとして発現され、抗体に結合する状態で評価される。図11aは、C−末端ヒト胎盤アルカリフォスファターゼ(AP)融合タンパクとして発現される、一組のDLL4突然変異の模式図を示す。括弧は、融合タンパク内に含まれるDLL4配列を示す。該融合タンパクを含む293T細胞調整媒体を、精製抗DLL4 Mab(YW26.82,0.5μg/ml)をコートした96−ウェルマイクロタイタープレートにおいて試験した。結合DLL4.APは、1−Step PNPP(Pierce)を基質として用い、OD 405nm吸光度測定によって検出した。Mab YW26.82は、DLL4 EGL2ドメインを含む構築物には結合したが、DLL4 EGL2ドメインを欠く構築物には結合しなかった。このことは、抗DLL4 Mab YW26.82は、ヒトDLL4 ECDのEGL2ドメイン中のエピトープを認識することを明らかにした。
Mab YW26.82は、マウスおよびヒトのDLL4に対し選択的に結合する。96−ウェルのNunc Maxisorpプレートを、表示(1μg/ml)の精製組み換えタンパクでコートした。表示の濃度におけるYW26.82の結合をELISAアッセイによって測定した。結合抗体は、TMBを基質として用い、抗ヒト抗体HRP複合体、およびOD 450nm吸光度測定によって検出した。抗HER2および組み換えErbB2−ECDを、アッセイコントロールとして用いた(図11b)。この実験の結果を図11bに示す。Mab YW26.82は、ヒトおよびマウスのDLL4には結合したが、ヒトのDLL1およびヒトのJAG1には検出可能となるほどには結合しなかった。これらの結果は、Mab YW26.82が、DLL4に選択的に結合することを示す。
さらに、ベクター、完全長DLL4、Jag1、またはDLL1によって一過性にトランスフェクションした293細胞のFACS分析も、Mab YW26.82がDLL4に選択的に結合することを示した。図11cに示すように、YW26.82の著明な結合は、DLL4トランスフェクション細胞にのみ検出された(上段パネル)。著明な結合は、DLL1またはJag1トランスフェクション細胞には検出されなかった。Jag1およびDLL1の発現は、それぞれ、組み換えラットNotch1−Fc(rrNotch1−Fc、中段パネル)、および組み換えラットNotch2−Fc(rrNotch2−Fc、下段パネル)の結合によって確認された。YW26.82、rrNotch1−Fc、またはrrNotch2−Fc(R&D system)は、2μg/mlで使用し、次いで、ヤギ抗ヒトIgG−PE(1:500、Jackson ImmunoResearch)を与えた。
競合実験は、Mab YW26.82が、NotchとDLL4との相互作用を効果的に、かつ選択的に阻止するが、他のNotchリガンドに対してはそうしないことを示した。図11dに示すように、抗DLL4 Mabは、コートされたrNotch1に対する、DLL1−APの結合は阻止しなかったが、DLL4−APの結合は阻止し、IC50計算値は〜12nMであった(左パネル)。抗DLL4 Mabは、コートされたrNotch1に対する、Jag1−Hisの結合は阻止しなかったが、DLL4−Hisの結合は阻止し、IC50計算値は〜8nMであった(右パネル)。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において内因的に発現されたDLL4に対する、抗DLL4 Mab YW26.82の特異的結合。コントロールまたはDLL4特異的siRNAでトランスフェクションしたHUVECのFACS解析。2μg/mlのYW26.82を用い、その後、ヤギ抗ヒトIgG−PE(1:500,Jackson ImmuneResearch)で処理した。この実験の結果を図11eに示す。結合は、トランスフェクションされないHUVEC(コントロール)および、コントロールsiRNAによってトランスフェクションされたHUVECに観察された。対照的に、DLL4 siRNAでトランスフェクションされたHUVECでは、結合が著明に低下した。これらの実験は、抗DLL4 Mab YW26.82は、HUVECにおいて内因的に発現されたDLL4に特異的に結合することを示す。
(実施例5)
抗DLL4抗体による処理は、インビトロにおいて内皮細胞の増殖を増した
同時培養されるヒトの皮膚芽(SF)細胞の存在下に、フィブリンゲルにおいて増殖するヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、明瞭な腔様構造を持つ新芽を生成する(Nakatsu,M.N.et al.Microvasc Res 66,102−12(2003))。抗DDL4抗体YW26.82の添加は、新芽の長さおよび数を著明に増した(図7a)。タンパク複合体のγ−セクレターゼ活性によって触媒される、Notchのタンパク分解処理は、Notch活性化時の必須の工程である(Baron,M.Semin Cell Dev Biol 14,113−9(2003))。興味深いことに、γ−セクレターゼ阻害剤ジベンザゼピン(DBZ)(van Es,J.H.et al.Nature 435,959−63(2005);Milano,J.et al.Toxicol Sci 82,341−58(2004))は、HUVECの発芽に対し同じ作用を及ぼした。これらの二つの処理の機序ははっきりと異なるのであるから、発芽増強は、明らかにNotchシグナル伝達が原因である。Ki67染色は、EC発芽の増強は、細胞増殖の上昇によることを明らかにした(図7b)。元のフィブリンアッセイでは、HUVEC発芽、および、それに続く腔形成は、同時培養されたSF細胞によって支持された。SF細胞を、調整した培地で置換しても、抗DLL4 MabおよびDBZのいずれも、HUVEC発芽を依然として強化することが可能であった(図1c)。これは、DLL4/Notchシグナル伝達におけるECの自律的役割を支持する。逆の実験において、固定DLL4タンパクによってNotchを活性化すると、著明な増殖抑制がもたらされた(図7e)。これらの所見は、DLL4/Notchシグナル伝達の活性化状態は、EC増殖と密接な関連のあることを示唆する。
(実施例6)
抗DLL4抗体による処理は、インビボにおいて内皮細胞増殖を増した
生後間もないマウスの網膜は、明瞭に定められる一連の事象としてステレオタイプな血管パターンを発達させる(Stone, J.& Dreher,Z.J Comp Neurol 255,35−49(1987);Gerhardt,H.et al.J Cell Biol 161,1163−77(2003);Fruttiger,M.Invest Ophthalmol Vis Sci 43,522−7(2002))。新生児網膜の増殖ECにおけるDLL4の、顕著で、ダイナミックな発現は、網膜の血管発達の制御におけるDLL4の可能な役割を示唆する(Claxton,S.& Fruttiger,M.Gene Expr Patterns 5,123−7(2004))。YW26.82の全身輸送によって、網膜血管に深刻な変化が引き起こされた。網膜にECの大量の蓄積が起こり、原始的な血管形態を持つシート様構造が生成された(図7d)。ECにおけるKi67標識の著明な増加が観察された。これは、EC増殖の上昇を示す(図7h)。したがって、マウス新生児においてDLL4遮断によって網膜ECがこのように過剰増殖表現型を取ることは、インビトロ所見を確実なものとする。
(実施例7)
上皮細胞増殖の制御におけるDLL4/Notchの必須の役割
VEGFは、ECの、いくつかの基本的面を調節する(Ferrara,N.Exs、209−31(2005);Coultas,L.et al.Nature 438,937−45(2005))。しかしながら、VEGFシグナル伝達が、どのようにして複雑な血管形成過程、例えば、動静脈(AV)分化および階層的血管組織、明らかに、別の高度に統制されたシグナル伝達経路を必要とする事象たちに組み込まれるかは、比較的理解されていない。ゼブラフィッシュにおける遺伝学的実験から、VEGFは、動脈内皮の分化の際、Notch経路の上流で活動することが示唆されている(Lawson,N.D.et al.Development 128,3675−83(2001))。我々は、VEGFの、HUVEC刺激は、DLL4の表面発現の増加をもたらす(データ示さず)ことを見出した。これは、VEGF刺激によってDLL4 mRNAが上方調整されることを報ずる最近の報告と一致する(Patel,N.S.et al.Cancer Res 65,8690−7(2005))。興味深いことに、DLL4それ自体は、Notch活性化後上方調整された(図12)。これは、DLL4が、それによってVEGFシグナル伝達をNotch経路に効果的に中継するポジティブフィードバック機構のあることを示唆する。簡単に言うと、DBZ(0.08μM)の非存在下、または存在下に、C−末端固定His標識ヒトDLL4(アミノ酸1−404)によって、HUVECを刺激した。刺激36時間後、内因性DLL4発現を、抗DLL4抗体によるFACS分析によって調べた。
注目すべきことに、Notchシグナル伝達を阻止することによって得られる、ECの過剰増殖は、依然としてVEGF依存性であった。3−Dフィブリンゲル培養において、VEGF Mabによる処理は、DBZの存在下、非存在下のいずれにおいても、EC発芽の大部分を中絶した(図7f)。これは、過剰増殖行動の一部は、VEGFシグナル伝達の強化によるとする可能性を示唆する。実際、NotchをYW26.82またはDBZによって遮断すると、VEGFR2の上方調整がもたらされる(図7g)。したがって、VEGFは、DLL4/Notch経路の上流で作用するが、一方、DLL4/Notchは、VEGFR2発現をネガティブに調整することによってその反応を微調整することが可能である。
(実施例8)
抗DLL4抗体による処理は、内皮細胞分化を阻止し、動脈の発達を阻止した
EC増殖の上昇の外に、DLL4/Notchへの拮抗作用は、フィブリンゲルにおいてEC新芽の急激な形態的変化をもたらした。多細胞の腔様構造の多くが消失した(図8a)。これは、欠陥性のEC分化を示唆する。Mab YW26.82処理網膜では、放射状に交互に分枝する動脈および静脈の特徴的パターンが大きく破壊された。網膜動脈と関連する、抗α平滑筋アクチン(ASMA)染色は完全に消失した(図8c)。この所見は、DLL4+/−胚における、動脈の欠陥性発達と驚くほど近似していた。これらの所見は、異なる角度からではあるが、EC分化制御におけるDLL4/Notchの必須の役割に照明を当てる。
(実施例9)
TFGβ発現は、Notchの活性化状態とリンクされる
Notch経路同様、TGFβシグナル伝達も、状況依存性であり、細胞の分化、増殖、および成長抑制に対し、多様な、しばしば反対の作用を及ぼす。さらに、TGFβ経路は、従来から、血管過程への関与が示されている(Urness,L.D.et al,Nat Genet 26,328−31(2000);Oshima,M.et al.,Dev Biol 179,297−302(1996);Larsson,J.et al.Embo J 20,1663−73(2001))。例えば、アクチビン受容体様キナーゼ1(ALK1)、EC特異的I型TGFβ受容体の欠乏によって、卵黄嚢における原始的ECネットワーク、および動静脈の機能不全(AVM)がもたらされるが、これは、Notchシグナル伝達欠損を有するマウスによって共有される表現型である(Urness,L.D.et al,Nat Genet 26,328−31(2000);Iso,T.et al,Arterioscler Thromb Vasc Biol 23,543−53(2003))。これがきっかけとなって、我々は、これら二つの経路の間の、可能な接続の研究に導かれた。我々は、TFGβ2の発現が、Notchの活性化状態と緊密にリンクすることを見出した(図8b)。これは、TGFβ経路は、Notch経路の下流で活動する可能性のあることを示唆する。以上まとめると、我々の所見は、「シグナル伝達ルーター」として活動するDLL4/Notch軸が、DLL4発現を制御することによってVEGFシグナル伝達を組み込み、TGFβ経路と連結してEC分化を増強するとするモデルを支持する。
(実施例10)
抗DLL4抗体による処理は、インビボにおいて腫瘍増殖を抑制した
腫瘍の血管形成時の、DLL4/Notchシグナル伝達の可能な役割に直接取り組むために、我々は、前臨床腫瘍モデルにおいて、DLL4遮断の腫瘍増殖に及ぼす影響を調べた(図9a−d)。HM7、Colo205、およびCalu6異種移植腫瘍モデルにおいて(図9a−c)、YW26.82処理は、腫瘍定着(腫瘍サイズが≧250mm3)後に開始した。3種のモデル全てにおいて、コントロールと処理群の間の増殖速度における解離が、投与の3日後には明白となった。処理群の腫瘍体積は、2週間の処理に亘って静止したままであった。皮下の腫瘍ばかりでなく、抗DLL4 Mabは、マウスの乳腺脂肪パッドにおいて増殖する腫瘍も抑制した。MDA−MB−435腫瘍モデルでは、処理は、腫瘍細胞注入の14日後に開始した。コントロールと処理群の間の腫瘍増殖曲線の差は、投与後6日以内に明白となり、処理が続くにつれて次第に顕著になった(図9d)。
我々はさらに、前臨床腫瘍モデルにおいて、DLL4および/またはVEGF遮断の、種々の腫瘍増殖に及ぼす影響を調べた(図9e−f;i−p)。MV−522およびWEHI3異種移植腫瘍モデルでは、YW26.82処理および/または抗VEGF処理を、腫瘍定着後に開始した(腫瘍サイズが≧250mm3)。MV−522モデルでは、YW26.82および抗VEGF処理のいずれも、それぞれ腫瘍増殖を抑制したが、二つの処理の組み合わせがもっとも効果的であった。WEHI3モデルでは、抗VEGF処理は、腫瘍増殖にまったく作用を示さなかったが、一方、YW26.82は、腫瘍増殖の有意な抑制を示した。SK−OV−3X1、LL2、EL4、H1299、SKMES−1、MX−1、SW620、およびLS174Tモデルでは、YW26.82処理(5mg/kg、IP、週2回)、および/または抗VEGF処理(5mg/kg、IP、週2回)を、腫瘍定着後に行った。これらのモデルそれぞれにおいて、YW26.82処理は、単独で、腫瘍増殖を抑制した。さらに、併用処理を試験した、これらのモデル全てにおいて、YW26.82は、抗VEGFと組み合わされると効力の増強を示した。
(実施例11)
抗DLL4抗体による処理は、腫瘍内皮細胞の増殖を増した
腫瘍増殖抑制に鑑み、我々は、血管組織学実験のために、EL4マウスリンパ腫腫瘍モデルを用いた。我々は、抗DLL4 Mab処理が、内皮細胞密度において目覚しい増加をもたらすことを見出した(図9g)。逆に、抗VEGFは、正反対の作用を及ぼした(図9g)。ただし、両処理は、このモデルにおいて同様の効力を示した。
(実施例12)
抗DLL4抗体による処理は、腫瘍血管の還流を阻害した
DLL4/Notch経路のインビトロにおける遮断は、ECによる腔様構造の形成を阻害するので(図8a)、抗DLL4 Mabによる処理が、腫瘍血管において同様の作用をもたらし、効率的血流に影響を及ぼすかを調べた。Mab処置により腫瘍血管のレクチン標識の著しい減少が生じることが、FITC−レクチンを用いた全身灌流により示された(図9h)。注目すべきことに、ALK−1欠損マウスにおける動静脈機能不全が、異常な血液循環を引き起こすことが示された(Urness,L.D.et al,Nat Genet 26,328−31(2000))。胚網膜、および早期新生児網膜のいずれにおいても、AV分化においてDLL4/Notchシグナル伝達が決定的役割を担っているとすれば、抗DLL4 Mabは、腫瘍ECの細胞の運命を決する特殊化に影響を及ぼし、方向性に欠陥を持つ血流を引き起こすことが可能と考えられる。実際、抗DLL4 Mab処理Colo205腫瘍では、ECの高密度が、生存可能な腫瘍細胞の低含量と相関する領域があった。これは、低劣な血管機能を意味する。この血管の欠陥に関して理解を深めるには、血管画像技術を利用した今後の実験が必要とされる。
(実施例13)
マウス小腸のホメオスタシスにおいてDLL4/Notchは省略可能である
Notchの包括的阻害に関する大きな不安は、Notchシグナル伝達が、生後の自己更新システムのホメオスタシスの制御において広範な役割を担っているのであるから、Notchの阻害は有害である可能性のあることである。例えば、Notchシグナル伝達は、小腸における、未分化の、腺窩前駆細胞の維持に必要とされる(van Es,J.H.et al.Nature 435,959−63(2005);Fre,S.et al.Nature 435,964−8(2005))。実際、全てのNotch活性を無差別に阻止すると考えられるγ−セクレターゼ阻害剤は、腺窩区画内部における杯細胞の大量増加のためにげっ歯類では有害な副作用をもたらす(Milano,J.et al.Toxicol Sci 82,341−58(2004);Wong,G.T.et al.J Biol Chem 279,12876−82(2004))。我々は、抗DLL4 Mabで処理したマウスの小腸を、免疫組織化学的分析によって調べた。DBZ処理とは対照的に、6週間の処理後、抗DLL4 Mab処理群と、コントロール群の間には、上皮性腺窩細胞の分化、または増殖プロフィールにおいて差は特定されなかった(図10)。さらに、抗DLL4 Mabは、急激に***する転移増幅(TA)集団において、Notch標的遺伝子HES−1の発現を変えなかった(図10)。これらの結果は、DLL4/Notchシグナル伝達は、大部分、血管系に限局されるとする考えを支持する。
(実施例14)
抗DLL4抗体による処理は、成体の網膜の血管には影響しない
DLL4の阻止は、新生マウスにおける網膜血管の発達に対しては深刻な影響を及ぼすが、抗DDL4抗体の投与は、成体の網膜血管に対し目に見える影響を与えない(図8d)。したがって、DLL4/Notchシグナル伝達は、活発な血管形成中には決定的重要性を有するが、正常な血管維持における役割の重要性はより低い。この予想に一致して、抗DLL4 Mab処理の進行時、10mg/kgを週に2回最大8週間投与した場合、腫瘍負荷マウスにおいて、外見上体重減少または死亡例は観察されなかった。腫瘍モデルでは、抗DLL4 Mabと抗VEGFは、腫瘍血管に対し正反対の作用を示す。これは、活動機序の非重複性を示唆する。
前記において、本発明が、例示に基づき、理解の明確性のためにやや詳細に説明されたわけであるが、これらの記述および実施例が、本発明の範囲限定するものと考えてはならない。