本発明の実施の形態のトナーは、電子写真方式の画像形成方法に使用される静電荷像現像用のトナーであって、コア粒子とシェル層とを有するコアシェル構造のトナー母体粒子を含有する。
上記トナーは、後述の特定の構造を上記トナー母体粒子が有する以外は、公知のトナーと同様に構成することが可能である。上記トナーは、乾式トナーであり、トナー母体粒子とその表面に付着する外添剤とによって構成されるトナー粒子からなる一成分現像剤であってもよいし、当該トナー粒子およびキャリア粒子とによって構成される二成分現像剤であってもよい。上記トナー母体粒子は、後述の特定のコアシェル構造を有する範囲において、結着樹脂や着色剤、ワックスなどのトナー母体粒子の公知の材料を用いて構成することが可能である。
上記コア粒子は、遍在している空隙を有している。空隙とは、コア粒子中に存在する結着樹脂などの固体で占められていない空間のことであり、コア粒子の内部に多数、そして均一に分散して存在する空洞(空孔)である。コア粒子が空隙を有する、とは、例えば、コア粒子が内部に微細な空孔を多数有する多孔質体であることを意味する。空隙には、通常、空気などの気体が充満しているが、他の媒体、例えば、トナー母体粒子の製造時に使用した溶媒、が含まれていてもよい。
上記空隙の大きさは、5〜180nmであることが、記録媒体に定着されたトナー画像の柔軟性を高める観点から好ましい。当該大きさが小さすぎると、上記柔軟性が不十分となることがあり、上記大きさが大きすぎると、上記トナー画像の定着時に空隙が潰れて上記柔軟性が不十分となることがある。上記空隙の大きさは、トナー母体粒子中で上記空隙をより一層均一に存在させる観点から、5〜100nmであることが好ましい。
上記トナー母体粒子中における上記空隙の存在比率は、上記柔軟性を高める観点、および、上記トナー画像の加筆による破損を抑制する観点、から5〜50%であることが好ましく、2〜25%であることがより好ましい。当該存在比率が高すぎると、定着されたトナー画像がやや脆くなり、当該トナー画像への筆記(加圧)によってトナー画像に欠陥が生じることがある。また、上記存在比率が低すぎると、上記トナー画像の柔軟性が不十分となることがある。
上記空隙の存在比率のばらつきは、小さい程、空隙が遍在していること、すなわち均一に分散していることを表す。このような空隙の存在比率のばらつきは、記録媒体に定着されたトナー画像の柔軟性を高める観点から、1%以下であることが好ましい。上記空隙の存在比率のばらつきは、例えば、撹拌強度などのトナー母体粒子の製造条件によって生じることがある。
上記空隙は、その大きさに応じた適当な検出装置を用いて確認することができる。たとえば、孔径が20nm以上の空隙は、透過型電子顕微鏡、例えば「2000FX」(日本電子株式会社製)、で観察することによって確認することができ、孔径が20nm未満の空隙は、走査型プローブ顕微鏡、例えば「AFM5400L」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、例えば、測定する際の画素数を512×512ピクセルとしで、200nm×200nm(約0.4nm/ピクセル)をスキャン範囲として確認することができる。
上記空隙の大きさは、空隙の孔径の平均値(平均孔径、Dh)として求めることができる。上記空隙は、独立気泡でも連続気泡でもよく、よって上記空隙の個々の孔径は、その空隙の大きさを代表する適当な値であればよく、例えば短径であってもよいし、長径と短径との平均値であってもよい。上記平均孔径は、以下の方法によって求めることができる。トナー母体粒子を硬化性樹脂に埋設し、ウルトラミクロトームにより設定厚100nmの超薄切片を作製し、その切片を用いる。
孔径が20nm以上の空隙については、透過型電子顕微鏡「2000FX(日本電子株式会社製)」にて、上記切片における10個のトナー母体粒子の断面を50000倍の倍率で撮影し、得られた拡大画像をスキャナーにて取り込み、当該拡大画像中の特定の測定領域において、画像解析装置「ルーゼックスAP(株式会社ニレコ製、「ルーゼックス」は同社の登録商標)」によって当該孔径を求める。
孔径が20nm未満の空隙については、走査型プローブ顕微鏡「AFM5400L」にて、上記切片における10個のトナー母体粒子の断面を200nm×200nmの範囲で撮影し、得られた拡大画像をスキャナーにて取り込み、当該拡大画像中の特定の測定領域において、「ルーゼックスAP」によって当該孔径を求める。そして、下記式より平均孔径を求める。
Dh(nm)=(測定した空隙の孔径の総和)/測定した空隙の数
また、トナー母体粒子における空隙の存在比率(Rh)は、上記拡大画像の特定の測定領域において、当該測定領域の面積(STOTAL)と、透過型電子顕微鏡で観察された空隙の面積(STEM)と、走査型プローブ顕微鏡で観察された空隙の面積(SSPM)とから、下記の式より求められる。
Rh(%)={(STEM+SSPM)/(STEM+SSPM+STOTAL)}×100
また、トナー母体粒子における空隙の存在比率のばらつき(Vh)トナー母体粒子全体の空隙の存在比率から上記測定領域のそれぞれにおける上記存在比率を差し引いた差によって求めることができる。存在比率のばらつきは、当該ばらつきの傾向を示す代表的な値であればよく、例えば、各測定領域における存在比率の差のうちの最大値であってもよいし、これらの平均値であってもよい。
なお、上記の特定の測定領域は、以下のように決めることができる。まず、図1に示されるように、トナー母体粒子100の断面において、当該断面における最長径の方向に沿う第1の軸A1と、第1の軸A1における当該最長径の中点(交点)Oで直交する第2の軸A2とを設定する。トナー母体粒子100は、コア粒子110と、その表面を覆うシェル層120とで構成される。そして、交点Oからシェル層120の表面までのそれぞれの第1の軸A1および第2の軸A2に沿う距離を半径rとする。rは、全ての軸で異なる値であってもよい。
コア粒子110における上記測定領域は、第1の軸A1と第2の軸A2との交点Oを中心とする所定の大きさの一つの領域と、交点Oから0.8rの距離でその最も外側の一辺が第1の軸A1または第2の軸A2と交差するように位置する所定の大きさの四つの領域との五つの領域である。
上記シェル層における上記測定領域は、第1の軸A1および第2の軸A2をその中心軸とし、当該中心軸に沿う特定の所定の大きさの四つの領域である。
孔径が20nm以上の空隙を測定するための測定領域は、その一辺が1μmの正方形の領域であり、コア粒子110であれば領域R11〜R15、シェル層120であれば領域R16〜19である。なお、シェル層120では、その厚さが1μmに満たない場合は、第1の軸または第2の軸を中心とする幅1μmの領域であってよい。
孔径が20nm未満の空隙を測定するための測定領域は、その一辺が200nmの正方形の領域であり、コア粒子110であれば領域R21〜R25、シェル層120であれば領域R26〜R29である。領域R26〜R29は、第1の軸A1または第2の軸A2を中心軸とし、シェル層120内に含まれる位置であればどこに設定されてもよく、例えば、第1の軸A1または第2の軸A2がシェル層120を横断する部分の中点を中心として設定される。
上記コア粒子の粒径は、例えば、トナー母体粒子の所期の大きさおよびシェル層の所期の厚さに応じて適宜に決めることができる。コア粒子の平均粒径は、体積基準のメディアン径で4.0〜10.0μmであることが好ましく、4.0〜8.0μmであることがより好ましい。
上記シェル層は、コア粒子の表面を覆う。上記シェル層は、遍在する空隙を有することが、トナー母体粒子中の空隙の分散度合いを高める観点から好ましい。シェル層にも空隙が存在することは、定着されたトナー画像においてより均一に存在するよう上記空隙が維持される。特に、当該トナー画像におけるトナー粒子間の界面も空隙が十分かつ均一に存在する。このように、空隙がトナー画像全体により均一に存在することによって、トナー画像がより一層柔軟になると考えられる。
シェル層の厚さは、トナーの低温定着性と耐熱安定性との両方を高める観点から、100nm〜1μmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましく、200〜300nmであることがさらに好ましい。
上記コア粒子は、第1の結着樹脂を含有する。上記シェル層は、第2の結着樹脂を含有する。第1の結着樹脂は、コア粒子の連続相を構成し、第2の結着樹脂は、シェル層の連続相を構成する。第1の結着樹脂および第2の結着樹脂は、それぞれ、一種でもそれ以上でもよい。また、両者は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上記第1および第2の結着樹脂は、トナー母体粒子の材料として使用可能な樹脂から適宜に選ぶことができる。その代表例には、ビニル系単量体と呼ばれる重合性単量体を重合して形成される重合体が挙げられる。上記ビニル系単量体は、一種でもそれ以上でもよい。
上記ビニル系単量体の例には、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、オレフィン類、ハロゲン化オレフィン系モノマー、ジオレフィン系モノマー、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N−ビニル化合物およびその他のビニル化合物が含まれる。
上記スチレン系単量体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレンおよびp−n−ドデシルスチレンが含まれる。
上記(メタ)アクリル酸系単量体の例には、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアクリルアミドが含まれる。
上記オレフィン類の例には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1および4−メチルペンテン−1が含まれる。上記ハロゲン化オレフィン系モノマーの例には、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが含まれる。上記ジオレフィン系モノマーの例には、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンが含まれる。
上記ビニルエステル類の例には、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルおよびギ酸ビニルが含まれる。上記ビニルエーテル類の例には、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテルおよびビニルシクロヘキシルエーテルが含まれる。上記ビニルケトン類の例には、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンおよびビニルヘキシルケトンが含まれる。上記N−ビニル化合物の例には、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールおよびN−ビニルピロリドンが含まれる。上記その他のビニル化合物の例には、ビニルナフタレンおよびビニルピリジンが含まれる。
上記ビニル系単量体は、イオン性解離基を有することが好ましい。イオン性解離基の例には、カルボキシル基、スルホン酸基およびリン酸基が含まれる。中でも、カルボキシル基を有するビニル系単量体が好ましい。
カルボキシル基を有するビニル系単量体の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステルおよびイタコン酸モノアルキルエステルが含まれる。スルホン酸基を有するビニル系単量体の例には、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸が含まれる。リン酸基を有するビニル系単量体の例には、アシドホスホオキシエチルメタクリレートが含まれる。
上記第1の結着樹脂および上記第2の結着樹脂の一方または両方は、架橋構造を有することが、空隙の潰れを抑制する観点、および、定着トナー画像の柔軟性、加筆耐久性を高める観点、から好ましい。架橋構造は、例えば、上記ビニル系単量体に多官能のビニル系単量体などの架橋性モノマーを用いることによって構築することが可能である。
多官能のビニル系単量体の例には、特に重合性不飽和結合を2個以上(特に、2〜4個)有する化合物が含まれ、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートおよびテトラエチレングリコールジメタクリレートが含まれる。
多官能のビニル系単量体とそれ以外のビニル系単量体との好ましい組み合わせの例には、単官能性モノマーとしての、スチレン単独、アクリル酸エステル単独、メタクリル酸エステル単独、スチレンとアクリル酸エステル、スチレンとメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、又は、スチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルと、架橋性モノマーとしてのジビニルベンゼン、との組み合わせが含まれる。
上記重合性単量体における上記架橋性モノマーの割合は、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。たとえば、上記第2の結着樹脂は、上記架橋性モノマー10〜100質量%(特に30〜100質量%)と、それ以外の重合性単量体90〜0質量%(特に70〜0質量%)の重合体または共重合体であることが好ましい。
上記コア粒子およびシェル層の一方または両方に上記空隙を導入する方法には、当該コア粒子またはシェル層に空隙を形成する公知の方法を採用することができる。たとえば、上記空隙は、重合性単量体、重合開始剤および有機溶媒の溶液を水系溶媒中に添加して重合を行うことによって、コア粒子またはシェル層に導入することが可能である。
なお、前述したカルボキシル基を有するビニル系単量体を、第1、第2の結着樹脂の両方のモノマーとして用いる場合、第2の結着樹脂のモノマー中のカルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量は、第1の結着樹脂のモノマー中のカルボキシル基を有するビニル系単量体の含有量の1.5〜3.0倍であることが、コア粒子とシェル層との接着性を高める観点から好ましい。
また、前述した重合性単量体の量は、上記コア粒子の所期の粒径およびシェル層の所期の厚さに応じて適宜に決めることができ、一般には、上記有機溶媒1質量部に対して0.1〜2質量部であることが好ましく、0.5〜1質量部であることがより好ましい。
上記コア粒子およびシェル層は、いずれも、本実施の形態の効果が得られる範囲において、第1および第2の結着樹脂以外の他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分の例には、着色剤およびワックスが含まれる。ただし、コア粒子およびシェル層の一方または両方ともに着色剤を含有していなくてもよい。当該着色剤には、公知の着色剤を用いることができる。
黒色用の着色剤の例には、カーボンブラックおよび磁性粉が含まれる。カーボンブラックの例には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックが含まれる。磁性粉の例には、マグネタイトおよびフェライトが含まれる。
マゼンタまたはレッド用の着色剤の例には、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238および同269が含まれる。
オレンジまたはイエロー用の着色剤の例には、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180および同185が含まれる。
グリーンまたはシアン用の着色剤の例には、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66およびC.I.ピグメントグリーン7が含まれる。
また、染料の例には、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93および同95が含まれる。
トナー母体粒子における上記着色剤の含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。上記着色剤の数平均1次粒子径は、種類により異なるが、概ね10〜200nmであることが好ましい。上記着色剤は、例えば、樹脂微粒子を凝集剤の添加にて凝集させる段階で凝集系に添加することにより、コア粒子またはシェル層に導入することが可能である。また、着色剤はその表面をカップリング剤などの表面処理剤で処理して使用されてもよい。
上記ワックスは、トナー母体粒子の材料に使用可能な公知の化合物から適宜に選ぶことができ、一種でもそれ以上でもよい。当該ワックスの例には、ポリオレフィン系ワックス、長鎖炭化水素系ワックス、ジアルキルケトン系ワックス、エステル系ワックスおよびアミド系ワックスが含まれる。
上記ポリオレフィン系ワックスの例には、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスが含まれる。長鎖炭化水素系ワックスの例には、パラフィンワックスおよびサゾールワックスが含まれる。ジアルキルケトン系ワックスの例には、ジステアリルケトンが含まれる。エステル系ワックスの例には、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリルおよびジステアリルマレエートが含まれる。アミド系ワックスの例には、エチレンジアミンジベヘニルアミドおよびトリメリット酸トリステアリルアミドが含まれる。
上記ワックスの融点は、通常40〜125℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。ワックスの融点が上記範囲内であることは、トナーの低温定着性および耐熱安定性の両方を高める観点から好ましい。また、トナー母体粒子中のワックスの含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、5質〜20質量%であることがより好ましい。
上記トナー母体粒子(またはトナー粒子)の粒径は、非常に微小なドット画像(たとえば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベル)を忠実に再現する観点から、体積基準におけるメディアン径(D50v)で3〜8μmであることが好ましい。
一般に、トナーには、写真画像の色再現を忠実に行えることが要求されるが、上記の粒径を有すトナー母体粒子を有するトナーによれば、写真画像を構成するドット画像が微小化され印刷画像と同等以上の高精細写真画像を得ることが可能である。特に、オンデマンド印刷と呼ばれる数百部から数千部レベルでプリント注文を受ける印刷分野では、高精細な写真画像の入った高画質プリントを迅速にユーザへ納品することが可能となる。
トナー母体粒子の体積基準メディアン径(D50v)は、「マルチサイザー3」(ベックマン コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー粒子またはトナー母体粒子0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTON II(ベックマン コールター社製、「ISOTON」は同社の登録商標)」の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、「マルチサイザー3」のアパチャー径は50μmのものを使用する。
また、上記トナー母体粒子(またはトナー粒子)の体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、2〜21%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。このCV値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、それだけトナー母体粒子の大きさが揃っていることを意味する。すなわち、大きさの揃ったトナー母体粒子が得られることになるので、デジタル画像形成で求められる微細なドット画像や細線をより高精度に再現することが可能となる。また、写真画像をプリントするにあたり、大きさの揃った小径トナーを用いることにより、印刷インクで作製された画像レベルあるいはそれ以上の高画質の写真画像を作成することが可能となる。
体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、トナー母体粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表し、以下の式によって定義される。下記式中、「σv」は体積基準の粒度分布における標準偏差を表し、「D50v」は体積基準の粒度分布におけるメディアン径を表す。CV値は、例えばトナー粒子の分級によって調整することが可能である。
CV値(%)=(σv/D50v)×100
また、上記トナー母体粒子の軟化点(Tsp)は、70〜110℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。着色剤は、一般に、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するが、軟化点を上記の範囲とすることで、定着時にトナー母体粒子に加わる熱の着色剤に対する影響をより低減させることが可能となる。したがって、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。また、トナー母体粒子の軟化点を上記の範囲とすることにより、低い温度でのトナー画像の定着を行うことが可能となり、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成が可能となる。
トナー母体粒子の軟化点は、たとえば、以下の方法を単独で、あるいは、組み合わせることにより制御が可能である。
(1)樹脂形成に用いる単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により樹脂の分子量を調節する。
(3)ワックス等の種類や添加量を調節する。
また、トナー母体粒子の軟化点は、例えば、「フローテスターCFT−500(株式会社島津製作所製)」を用い、トナー母体粒子またはトナー粒子を高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×106Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、降下量5mmの時の温度を軟化点とすることにより求めることができる。
上記トナー母体粒子は、コア粒子を作製し、それを覆うシェル層を作製する通常のコアシェル構造のトナー母体粒子の製造方法を利用して製造することが可能である。たとえば、上記トナー母体粒子は、コア粒子が分散された水系媒体中に、当該水系媒体を撹拌しながら、重合性単量体、重合開始剤および溶媒を含有するシェル層用材料液を添加し、シェル層を形成することによって作製することができ、あるいは、上記トナー母体粒子は、空隙を有するシェル層用微粒子を、コア粒子が分散された水系媒体中に添加し、コア粒子の周囲に凝集、合一させてシェル層を形成することによって作製することができる。
この他にも、上記トナー母体粒子は、例えば、相乳化法を利用して作製することができる。すなわち、コア粒子用混合液またはシェル層用混合液に機械的せん断力を加えながら、水系溶媒または、コア粒子が分散された水系媒体を徐々に添加することによって、作製することもできる。
なお、上記「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンおよびテトラヒドロフランが含まれる。当該有機溶媒は、得られる樹脂を溶解しないアルコール系の有機溶媒であることが好ましい。
また、コア粒子に、または必要に応じてシェル層にも上記空隙を導入する方法は、このような多孔質構造のシェル層を作製する方法を利用することにより行うことが可能である。たとえば、上記空隙は、コア粒子またはシェル層の疎水性の材料液を水系媒体中で機械的せん断力によって十分に分散させることによって、当該材料液中に液滴の状態で導入することが可能である。この状態でモノマーを含有する上記材料液から樹脂製の微粒子、あるいはコア粒子またはシェル層を直接合成することにより、上記空隙を有するトナー母体粒子を作製することが可能である。
水系媒体中にコア層用材料液またはシェル層用材料液を分散する方法には、機械的せん断力による分散方法などの公知の分散方法を採用することが可能である。このような分散方法に用いられる分散装置の例には、高速回転するロータを備えた市販の分散装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製、同社の登録商標)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン、および、圧力式のホモジナイザーが含まれる。
分散の際の温度条件は、上記材料液中に通常配合される重合開始剤の分解に影響する温度以下であればよく、通常は、室温付近またはそれ以下であり、特に0〜30℃程度であることが好ましい。
コア粒子またはシェル層中の空隙の存在比率は、例えば、上記材料液中の有機溶媒の含有量により調整することが可能である。例えば、上記材料液中の重合性単量体に対する有機溶媒の量が少ないと上記空隙の存在比率を小さくすることが可能となり、上記材料液中の重合性単量体に対する有機溶媒の量が多いと上記空隙の存在比率を大きくすることが可能となる。
また、空隙の大きさは、例えば、上記の分散において機械的せん断力を強く与えることにより、あるいは、互いに親和性の高い重合性単量体と有機溶媒とを選択することにより、小さくすることが可能となる。機械的せん断力を弱くすることにより、あるいは、互いに親和性がやや低い重合性単量体と有機溶媒とを選択することにより、上記空隙を大きくすることが可能となる。
上記材料液には、通常、重合開始剤および有機溶媒が含有される。また、上記材料液には、コア粒子またはシェル層の作製に好適なさらなる成分がさらに含有されていてもよい。このようなさらなる成分の例には、連鎖移動剤、分散安定剤および界面活性剤が含まれる。
上記重合開始剤には、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用することができる。油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系またはジアゾ系重合開始剤および過酸化物系重合開始剤が含まれる。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤の例には、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルおよびアゾビスイソブチロニトリルが含まれる。
上記過酸化物系重合開始剤の例には、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパンおよびトリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンが含まれる。
また、上記水溶性の重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、ならびに、過酸化水素、が含まれる。
上記材料液中の上記重合開始剤の量は、重合性単量体1質量部に対して、0.005〜0.1質量部であることが好ましく、0.01〜0.05質量部であることがより好ましい。
上記有機溶媒は、上記重合性単量体および重合開始剤を溶解するが、重合生成物に対する相溶性が低く、当該重合生成物の相分離を促進し、かつ当該重合性単量体の重合による皮膜の形成を妨げない成分であることが好ましい。当該有機溶媒の例には、炭素数8〜18、特に炭素数12〜18の飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、および、脂肪酸エステル類、が含まれる。特に好ましくは、トルエン、酢酸エチルおよびヘキサデカン、が挙げられる。
上記連鎖移動剤は、樹脂粒子における分子量調整のために用いられ、その例には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素およびα−メチルスチレンダイマーが含まれる。
上記分散安定剤は、水系媒体中に分散させた重合性単量体を重合したり、水系媒体中に分散させた樹脂粒子等を凝集、融着してトナー母体粒子を作製する際に、トナー母体粒子の材料を水系媒体中に安定して分散させておく観点から好ましい。当該分散安定剤の例には、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物および高級アルコール硫酸ナトリウムが含まれる。なお、上記分散安定剤には、一般には界面活性剤とされている成分であっても使用することが可能である。
上記界面活性剤は、水系媒体中で重合性単量体を用いて重合を行う場合、当該重合性単量体を含有する上記材料液の油滴を水系媒体中に均一に分散させる観点から好ましい。当該界面活性剤の例には、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が含まれる。
イオン性界面活性剤の例には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩および脂肪酸塩が含まれる。当該スルホン酸塩の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、および、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、が含まれる。
上記硫酸エステル塩の例には、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、および、オクチル硫酸ナトリウムが含まれる。上記脂肪酸塩の例には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、および、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、が含まれる。
上記ノニオン性界面活性剤の例には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、および、ソルビタンエステル、が含まれる。
上記トナー粒子は、上記トナー母体粒子に外添剤を添加することによって調製することができる。外添剤には、公知の外添剤を用いることができ、外添剤の添加には公知の技術を採用することができる。
上記外添剤の大きさは、数平均一次粒径で4〜800nmであることが好ましい。当該外添剤は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、無機微粒子、有機微粒子および滑剤が含まれる。外添剤の添加により、トナー粒子の流動性および帯電性が改良され、また、クリーニング性が向上する。
上記無機微粒子の例には、シリカ、チタニア、アルミナおよびチタン酸ストロンチウムの微粒子が含まれる。無機微粒子は、その表面が疎水化処理されていてもよい。
シリカ微粒子の例には、日本アエロジル株式会社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、および、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5、が含まれる。
チタニア微粒子の例には、日本アエロジル株式会社製の市販品T−805、T−604、テイカ株式会社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン工業株式会社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、および、出光興産株式会社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC、が含まれる。
アルミナ微粒子の例には、日本アエロジル株式会社製の市販品RFY−C、C−604、および、石原産業株式会社製の市販品TTO−55、が含まれる。
上記有機微粒子の例には、その数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子が含まれ、具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体の微粒子が含まれる。
上記滑剤の例には、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リシノール酸などの高級脂肪酸の金属塩が含まれる。ステアリン酸の金属塩の例には、ステアリン酸の亜鉛塩、アルミニウム塩、銅塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩が含まれる。オレイン酸の金属塩の例には、オレイン酸の亜鉛塩、マンガン塩、鉄塩、銅塩およびマグネシウム塩が含まれる。パルミチン酸の金属塩の例には、パルミチン酸の亜鉛塩、銅塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩が含まれる。リノール酸の金属塩の例には、リノール酸の亜鉛塩およびカルシウム塩が含まれる。リシノール酸の金属塩の例には、リシノール酸の亜鉛塩およびカルシウム塩が含まれる。
トナー粒子における上記外添剤の含有量は、0.1〜10.0質量%であることが好ましい。外添剤の添加方法の例には、タービュラーミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサ、V型混合機などの公知の混合装置を使用して添加する方法が含まれる。
上記トナー粒子は、そのまま一成分現像剤として用いることが可能であり、例えば非磁性一成分現像剤として使用することができる。非磁性一成分現像方式による画像形成は、現像装置の構造を簡略化できるので、画像形成装置全体をコンパクト化できるメリットがある。したがって、前述したトナーを非磁性一成分現像剤として使用することにより、コンパクトなカラープリンタによるフルカラープリントを作製することができ、スペース的に制限がある作業環境で色再現性に優れたフルカラープリントを作製することが可能となる。
本実施の形態のトナーは、二成分現像剤として用いられる場合では、上記トナー粒子に加えてキャリア粒子を含有する。キャリア粒子には、二成分現像剤のキャリア粒子として使用可能な公知の粒子を用いることができる。キャリア粒子の例には、磁性粒子、樹脂で表面が被覆された樹脂被覆磁性粒子、および、樹脂粒子中に磁性粒子が分散されている磁性粒子分散型樹脂粒子、が含まれる。
上記磁性粒子の材料の例には、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金、が含まれる。中でも、磁性粒子は、フェライト粒子であることが好ましい。
キャリア粒子の体積基準粒径は、15〜100μmであることが好ましく、25〜80μmであることがより好ましい。また、キャリア粒子の飽和磁化値は、20〜80emu/g(2.0×10−2〜8.0×10−2A・m2/g)であることが好ましい。このような粒径と飽和磁化値を有するキャリア粒子は、画像形成時に現像スリーブ上に柔らかな磁気ブラシを形成し、鮮鋭性に優れたトナー画像を形成する観点から好ましい。上記体積平均粒径および飽和磁化値は、それぞれ、公知の測定装置により測定が可能である。具体的には、体積基準粒径は、湿式分散器を備えたレーザー回折式粒度分析装置「HELOS」(シンパテック社製)により、飽和磁化は「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電気株式会社製)により測定が可能である。
二成分現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とを公知の方法で混合することにより得られる。二成分現像剤におけるトナー粒子のキャリア粒子に対する含有量は、2〜10質量%であることが好ましい。また、上記の混合に用いられる混合装置は、限定されず、その例には、ナウターミキサ、WコーンおよびV型混合機が含まれる。
上記トナーは、電子写真方式の画像形成方法に、通常のトナーと同様に適用することができる。すなわち、上記画像形成方法は、トナーによって形成された記録媒体上の未定着トナー画像を上記記録媒体に定着させて画像を形成する電子写真方式の画像形成方法において、トナーに、上記の本実施の形態のトナーを用いる画像形成方法である。上記画像形成方法は、例えば、下記工程を含む。
(1)電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程
(2)電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像剤担持体に担持させた現像剤で現像してトナー画像を形成する現像工程
(3)電子写真感光体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程
(4)記録媒体の表面に担持されているトナー画像を熱定着させる定着工程。
上記記録媒体は、定着されたトナー画像を担持するための部材である。記録媒体には、公知の媒体を用いることができ、その例には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、コート紙などの塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用または包装材用のブラスチックフィルム、および、布、が含まれる。上記ブラスチックフィルムにおけるブラスチックの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ONY)、無延伸ナイロン(CNY)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、および、PLA(ポリ乳酸)が含まれる。
上記画像形成方法は、前述の本実施の形態のトナーを用いる以外は、公知の画像形成装置を用いて行うことが可能である。以下、図を用いてさらに説明する。
画像形成装置200は、いわゆるタンデム型カラー画像形成装置であり、図2に示されるように、原稿画像を読み取るための原稿画像読取装置SCと、トナー画像を形成するための四つの画像形成部と、画像形成部で形成されたトナー画像を記録媒体Pに転写するための転写装置と、記録媒体Pを搬送するための給紙搬送装置と、記録媒体Pが担持する未定着のトナー画像を記録媒体Pに定着させるための定着手段としての熱ロール式の定着装置50とを有している。
四つの上記画像形成部は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の四色の画像を形成するための装置であり、例えば、図2の上からYMCKの順で配置されている。それぞれの画像形成部は、感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、およびクリーニング装置6を有する。
感光体1は、例えばドラム状の有機感光体であり、帯電装置2は、例えばコロナ放電による非接触の帯電装置である。露光装置3は、例えばレーザー発振装置であり、現像装置4は、YMCKのいずれかの色の二成分現像剤を収容する二成分現像剤用の現像装置である。一次転写ローラ5は、例えば、中間転写ベルト7を介して感光体1に向けて自在に付勢される帯電ローラであり、クリーニング装置6は、例えば、感光体1の表面に当接するゴム製の弾性ブレードを有するブレードクリーニング装置である。上記二成分現像剤は、本実施の形態のトナーである。
上記転写装置は、無端状の中間転写ベルト7と、中間転写ベルト7を張設する複数のローラ8と、二次転写ローラ9と、クリーニング装置10と、を有する。ローラ8は、一つ以上の駆動ローラを含み、駆動ローラ以外の従動ローラを含んでいてもよい。二次転写ローラ9は、例えば、搬送されてくる記録媒体Pを介して中間転写ベルト7との間にニップ部を形成可能なる帯電ローラであり、クリーニング装置10は、例えば、中間転写ベルト7の表面に当接する上記弾性ブレードを有するブレードクリーニング装置である。
上記給紙搬送装置は、記録媒体Pを収容する給紙カセット11と、給紙カセット11から記録媒体Pを取り出すための給紙ローラ12と、記録媒体Pを二次転写ローラ9のニップ部まで搬送するための搬送ローラ13と、搬送されている記録媒体Pの位置を制御するためのレジストローラ14と、定着装置50から排出された記録媒体Pを機外へ排出するための排出ローラ15と、機外に排出された記録媒体Pを収容するための排紙トレイ16とを有する。
原稿画像読取装置SCは、原稿の画像情報を読み取り、YMCKの各色の画像データに変換し、対応する色の画像データを露光装置3に送る。
上記画像形成部では、回転駆動する感光体1の表面が帯電装置2からの電圧の印加によって帯電する。帯電した感光体1の表面に、露光装置3がYMCKの対応する色の画像データに応じたレーザー光を照射して静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体1の表面には、現像装置4からトナー粒子が供給され、当該トナー粒子が静電潜像の部分に付着して静電潜像が現像される。
こうしてそれぞれの画像形成部において形成された、感光体1の表面に担持されているYMCKのそれぞれの色のトナー画像は、一次転写ローラ5からの電圧の印加により、回動する中間転写ベルト7上に逐次重なるように転写されて、合成されたカラートナー画像が中間転写ベルト7上に形成される。一次転写ローラ5は、一次転写時のみに感光体1に当接してもよく、例えば、黒色画像用の画像形成部における一次転写ローラ5は、常時、感光体1に当接しており、他の色用の一次転写ローラ5は、一次転写時のみに感光体1に当接する。
一次転写後の感光体1の表面における転写残トナーなどの付着物は、クリーニング装置6によって当該表面から除去される。
給紙カセット11内に収容された記録媒体P(例えば普通紙)は、給紙ローラ12により給紙カセット11から取り出され、搬送ローラ13、レジストローラ14を経て二次転写ロール9に搬送される。中間転写ベルト7上のカラートナー画像は、二次転写ローラ9からの電圧の印加により、記録媒体P上に転写される。二次転写ローラ9は、例えば、二次転写時のみ中間転写ベルト7に向けて付勢される。
二次転写後の中間転写ベルト7の表面における転写残トナーなどの付着物は、クリーニング装置10によって当該表面から除去される。
記録媒体P上のカラートナー画像は、定着装置50の加熱加圧により記録媒体Pの表面に定着する。こうして、定着したカラートナー画像が記録媒体Pに形成される。カラートナー画像が形成された記録媒体Pは、排出ローラ15を経て排紙トレイ16上に搬送される。上記の工程の繰り返しにより、記録媒体P上に定着したトナー画像が次々と形成される。
こうして作製されたトナー画像は、適度な柔軟性を有する。その理由は、以下のように考えられる。
上記トナー母体粒子は、コアシェル構造を有し、少なくともコア粒子に遍在する上記空隙を有する。このため、トナー粒子が画像として記録媒体上に定着された状態でも、空隙は遍在している状態が維持され、定着トナー画像その空隙が遍在するために、トナー画像の柔軟性が向上する。このため、記録媒体の折り曲げに対するトナー画像の追従性が向上し、トナー画像を形成した後の記録媒体の加工時におけるトナー画像の破損が抑制される。
また、トナー画像の柔軟性が高められていることから、トナー画像に局所的に圧力が加わってもトナー画像が破損しにくい。よって、トナー画像への加筆による当該トナー画像の破損が抑制される。
なお、上記画像形成方法について、タンデム式の画像形成装置を用いる形態を、図を用いて説明したが、画像形成部の周面部に配置されているドラム式の、例えば特開2010−276754号公報の図4に記載されているような画像形成装置を用いても行うことが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態のトナーは、第1の結着樹脂を含有するコア粒子と、その表面を覆う、第2の結着樹脂を含有するシェル層とを有するトナー母体粒子を含有する静電荷像現像用のトナーであって、上記コア粒子は、遍在している空隙を有する。また、本実施の形態の画像形成方法は、本実施の形態のトナーによって形成された記録媒体上の未定着トナー画像を上記記録媒体に定着させて画像を形成する電子写真方式の画像形成方法である。よって、本実施の形態によれば、電子写真方式の画像形成において、記録媒体の変形や筆記に伴う加圧による画像の破損が抑制される画像を形成することができる。
上記シェル層が遍在する空隙を有することは、形成されるトナー画像の柔軟性を高める観点からより一層効果的である。
また、上記トナー画像の柔軟性を高める観点から、上記空隙の大きさが5〜180nmであることはより効果的であり、5〜100nmであることはより一層効果的である。
また、上記トナー画像の柔軟性を高める観点から、上記トナー母体粒子中における上記空隙の存在比率が5〜50%であることはより効果的であり、2〜25%であることはより一層効果的である。
また、上記第1の結着樹脂および上記第2の結着樹脂の一方または両方が架橋構造を有することは、上記空隙の保存性、トナー画像の柔軟性およびトナー画像の加筆耐久性を高める観点からより一層効果的である。
[コア用樹脂粒子A1の作製]
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、界面活性剤ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩4.0質量部とイオン交換水3000質量部とを投入して界面活性剤溶液1を調製した。この界面活性剤溶液1を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら80℃に昇温した。
次に、下記の成分を下記の量で含有してなる単量体混合溶液1を80℃に昇温後、界面活性剤溶液1中に添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)により、5000rpm30分間分散処理を行って、乳化粒子分散液を調製した。下記「パラフィンワックス」は、「HNP−0190」(日本製蝋株式会社製)である。また、単量体混合液1中、トルエンは溶媒である。
スチレン 650質量部
n−ブチルアクリレート 255質量部
メタクリル酸 45質量部
トルエン 620質量部
n−オクチルメルカプタン 18質量部
パラフィンワックス 140質量部
次に、上記乳化粒子分散液に、過硫酸カリウム(KPS)15質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる開始剤水溶液1を添加し、これらの混合液を80℃で1時間にわたり、230rpmの撹拌速度で撹拌することにより重合(第1段重合)を行った。このして、樹脂微粒子分散液a1を作製した。
(2)第2段重合
上記樹脂微粒子分散液a1に、過硫酸カリウム(KPS)5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させてなる開始剤水溶液2を添加し、得られた混合液を80℃にして、「クレアミックス」により5000rpmで30分間分散処理を行った。次いで、得られた分散液に、下記の成分を下記の量で含有してなる単量体混合液2を1時間かけて滴下した。単量体混合液2中、トルエンは溶媒である。
スチレン 310質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 20質量部
トルエン 290質量部
n−オクチルメルカプタン 7.1質量部
単量体混合液2の滴下終了後、得られた混合液を2時間にわたり加熱して80℃に維持し、かつ、撹拌速度230rpmで撹拌処理を行って重合(第2段重合)を行った。その後、得られた反応液を28℃まで冷却し、コア用樹脂粒子A1を含有する分散液を作製した。
得られたコア用樹脂粒子A1の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメディアン径D50vで220nmであった。
[コア用樹脂粒子A2の作製]
第1段重合における溶媒の量を515質量部に、第2段重合における溶媒の量を240質量部にそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A2を作製した。コア用樹脂粒子A2のD50vは220nmであった。
[コア用樹脂粒子A3の作製]
第1段重合における溶媒の量を290質量部に、第2段重合における溶媒の量を135質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を7000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A3を作製した。コア用樹脂粒子A3のD50vは210nmであった。
[コア用樹脂粒子A4の作製]
第1段重合における溶媒の量を230質量部に、第2段重合における溶媒の量を110質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を10000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A4を作製した。コア用樹脂粒子A4のD50vは180nmであった。
[コア用樹脂粒子A5の作製]
第1段重合における溶媒の量を195質量部に、第2段重合における溶媒の量を90質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を20000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A5を作製した。コア用樹脂粒子A5のD50vは120nmであった。
[コア用樹脂粒子A6の作製]
第1段重合における溶媒の量を195質量部に、第2段重合における溶媒の量を90質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を21000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A6を作製した。コア用樹脂粒子A6のD50vは120nmであった。
[コア用樹脂粒子A7の作製]
第1段重合における溶媒の量を450質量部に、第2段重合における溶媒の量を210質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を18000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A7を作製した。コア用樹脂粒子A7のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A8の作製]
第1段重合における溶媒の量を50質量部に、第2段重合における溶媒の量を20質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を19000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A8を作製した。コア用樹脂粒子A8のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A9の作製]
第1段重合における溶媒の量を245質量部に、第2段重合における溶媒の量を110質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を19000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A9を作製した。コア用樹脂粒子A9のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A10の作製]
第1段重合における溶媒の量を40質量部に、第2段重合における溶媒の量を20質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を16000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A10を作製した。コア用樹脂粒子A10のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A11の作製]
第1段重合における溶媒の量を235質量部に、第2段重合における溶媒の量を110質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を16000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A11を作製した。コア用樹脂粒子A11のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A12の作製]
第1段重合における溶媒の量を195質量部に、第2段重合における溶媒の量を90質量部に、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を16000rpmにそれぞれ変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A12を作製した。コア用樹脂粒子A12のD50vは150nmであった。
[コア用樹脂粒子A13の作製]
第1段重合および第2段重合のいずれにも溶媒を添加せず、そして第1段重合および第2段重合における「クレアミックス」の回転数を16000rpmに変更する以外はコア用樹脂粒子A1の作製と同様にして、コア用樹脂粒子A13を作製した。コア用樹脂粒子A13のD50vは150nmであった。
[シェル用樹脂粒子1の作製]
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、前述の界面活性剤溶液1を、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。その後、界面活性剤溶液1中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる開始剤水溶液3を添加し、得られた混合液の液温を80℃にして、下記の成分を下記の量で含有する単量体混合液3を当該混合液へ2時間かけて滴下した。
スチレン 340質量部
n−ブチルアクリレート 113質量部
メタクリル酸 47質量部
n−オクチルメルカプタン 22質量部
上記単量体混合液3を滴下後、得られた混合液の撹拌速度を270rpmにして撹拌処理を行いながら、80℃で1.5時間かけて重合反応を行い、次いで、得られた反応液を室温まで冷却した。こうして当該反応液中に分散するシェル用樹脂粒子1を作製した。シェル用樹脂粒子1の体積基準のD50vは160nmであった。
[シェル用樹脂粒子2〜10および12の作製]
上記単量体混合液3におけるトルエンの含有量を0質量部から265質量部、150質量部、120質量部、105質量部、100質量部、235質量部、25質量部、125質量部、20質量部、および233質量部へそれぞれ変更する以外はシェル用樹脂粒子1の作製と同様にして、シェル用樹脂粒子2〜12のそれぞれを作製した。シェル用樹脂粒子2〜10および12のD50vは、それぞれ、220nm、210nm、180nm、130nm、130nm、130nm、130nm、130nm、130nmおよび130nm、であった。
[シェル用樹脂粒子11の作製]
上記単量体混合液3におけるトルエンの含有量を0質量部から120質量部に変更し、当該単量体混合液3に架橋剤として1,10−デカンジオールジアクリレート5質量部をさらに添加する以外はシェル用樹脂粒子1の作製と同様にして、シェル用樹脂粒子11を作製した。シェル用樹脂粒子11のD50vは130nmであった。
[シアン着色剤粒子分散液の調製]
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に「C.I.ピグメントブルー15:3」を25質量部徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行って、シアン着色剤粒子分散液を調製した。得られたシアン着色剤粒子分散液中のシアン着色剤粒子の平均粒径は、D50vで98nmであった。
[トナー粒子1の作製]
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記の成分を下記の量で投入し、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、得られた分散液に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、当該分散液のpHを10に調整した。
コア用樹脂粒子A1の分散液 1430質量部(固形分換算)
純水 820質量部
シアン着色剤粒子分散液 70質量部(固形分換算)
次いで、塩化マグネシウム・6水和物200質量部を純水1000質量部に溶解した水溶液を、上記分散液へ、撹拌の下で30℃にて10分間かけて滴下した。滴下完了後に撹拌を行いながら昇温を開始し、上記分散液の温度が75℃になるまで昇温させて、上記分散液中の粒子の凝集、融着を行った。
このとき、「マルチサイザー3」(ベックマン コールター社製)により分散液中の凝集粒子の粒径を測定するとともに、「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製、「FPIA」は同社の登録商標)を用いて分散液中の粒子の平均円形度を測定しながら上記の凝集、融着を行った。そして、凝集粒子の体積基準メディアン径D50vが6.3μmになったところで、塩化ナトリウム40質量部を純水500質量部に溶解した水溶液を上記分散液に添加して粒子の凝集を停止させた後、引き続き上記分散液の温度を75℃に維持させて凝集粒子の熟成処理を行った。
凝集粒子の平均円形度が0.87になったときに、上記分散液へ、前述の「シェル用樹脂粒子1」の分散液を180質量部(固形分換算)添加して、凝集、融着を継続させた。
引き続き上記分散液の温度を75℃に維持して前述の粒子の凝集および融着を継続させて、上記反応容器より上記分散液を少量取り出して、これを遠心分離装置で遠心分離処理して上澄みが透明になったことを確認し、その後、熟成をさらに継続させた。そして、分散液中の粒子の平均円形度が0.95になったところで上記分散液を室温になるまで冷却した。冷却後、分散液中の粒子をろ過し、純水での洗浄とろ過とを繰り返し行って当該粒子を洗浄した後、35℃の温風で乾燥処理した。こうして、トナーの母体粒子となるコアシェル構造の着色粒子1を作製した。
着色粒子1の粒径D50vを前述したように「マルチサイザー3」を用いて求めたところ、6.3μmであった。また、着色粒子1の空隙の孔径Dhを、前述した測定領域での透過型電子顕微鏡および走査型プローブ顕微鏡による拡大画像中の10個の着色粒子1について、前述の画像解析装置から求めたところ、192nmであった。また、着色粒子1の空隙の存在比率Rhを前述の式から求めたところ、51%であった。
着色粒子1に下記外添剤を添加し、「ヘンシェルミキサ」(日本コークス工業株式会社製)で混合する外添剤処理を行って、トナー粒子1を作製した。なお、ヘンシェルミキサによる外添剤処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、および、処理時間15分間、である。なお、下記の「表面処理したシリカ粒子」は、ヘキサメチルシラザン処理したシリカ粒子であり、「表面処理した酸化チタン粒子」は、n−オクチルシラン処理した二酸化チタン粒子である。
表面処理したシリカ粒子(平均1次粒径12nm) 0.6質量部
表面処理した酸化チタン粒子(平均1次粒径24nm) 0.8質量部
[トナー粒子2〜11の作製]
コア用樹脂粒子A1の分散液に代えてコア用樹脂粒子A2〜A11のそれぞれの分散液を用い、シェル用樹脂粒子1の分散液に代えてシェル用樹脂粒子2〜11のそれぞれの分散液を用いる以外はトナー粒子1の作製と同様にして、着色粒子2〜11のそれぞれを作製し、トナー粒子2〜11のそれぞれを作製した。
着色粒子2のD50vは6.7μmであり、Dhは190nmであり、Rhは53%であった。着色粒子3のD50vは6.7μmであり、Dhは175nmであり、Rhは30%であった。着色粒子4のD50vは6.7μmであり、Dhは90nmであり、Rhは24%であった。着色粒子5のD50vは6.7μmであり、Dhは5nmであり、Rhは20%であった。着色粒子6のD50vは6.6μmであり、Dhは4nmであり、Rhは20%であった。着色粒子7のD50vは6.9μmであり、Dhは12nmであり、Rhは47%であった。着色粒子8のD50vは6.9μmであり、Dhは10nmであり、Rhは5%であった。着色粒子9のD50vは6.9μmであり、Dhは10nmであり、Rhは25%であった。着色粒子10のD50vは6.9μmであり、Dhは20nmであり、Rhは4%であった。また、着色粒子11のD50vは7.0μmであり、Dhは20nmであり、Rhは24%であった。
[トナー粒子12の作製]
コア用樹脂粒子A1の分散液に代えてコア用樹脂粒子A12の分散液を用い、「シェル用樹脂粒子1」の分散液を添加しない以外はトナー粒子1の作製と同様にして、着色粒子12を作製し、トナー粒子12を作製した。着色粒子12のD50vは6.3μmであり、Dhは20nmであり、Rhは20%であった。
[トナー粒子13の作製]
コア用樹脂粒子A1の分散液に代えてコア用樹脂粒子A13の分散液を用い、シェル用樹脂粒子1の分散液に代えてシェル用樹脂粒子12の分散液を用いる以外はトナー粒子1の作製と同様にして、着色粒子13を作製し、トナー粒子13を作製した。着色粒子13のD50vは6.8μmであり、Dhは20nmであり、Rhは14%であった。
なお、着色粒子1〜13の空隙の存在比率のばらつきVhを求めたところ、いずれも1%以下であった。上記Vhは、着色粒子1〜13のそれぞれについて、その空隙の存在比率の数値から、各測定領域における空隙の存在比率の値を引いた差のうちの最大値である。ただし、着色粒子13では、コア粒子において空隙が実質的に観察されず、着色粒子13のDh、RhおよびVhは、そのシェル層の観察結果から求めた。
トナー粒子1〜13の製造条件を表1に、トナー粒子1〜13および着色粒子1〜13の性状を表2に、それぞれ示す。
[現像剤1〜13の作製]
フェライト粒子にスチレン−アクリル樹脂で被覆してなる平均粒径35μmのキャリア粒子と、トナー粒子1〜13のそれぞれとを混合処理して、トナー濃度が8質量%の(二成分)現像剤1〜13をそれぞれ作製した。
[評価]
画像形成装置として、「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の商標)の改造機を用意した。この画像形成装置300は、図3に示されるように、前述の画像形成装置200のそれと同様の原稿画像読取装置SC、画像形成部および定着装置50を有し、ロール状の記録媒体Pを搬送経路へ供給可能に収容するとともに、トナー画像が形成された当該記録媒体をロール状に巻いて収容可能な構成を有している。
(1)曲げに対する画像耐性(曲げ耐久性)
現像剤1〜13のそれぞれについて、上記改造機を用い、記録媒体に厚さ40μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、付着量が8g/m2のベタ画像を当該フィルムに形成した。
トナーの定着画像を有する上記フィルム(F)の画像部を、図4に示すように、1.5mm径の円柱40の外周面に沿って90°まで曲げ、その後まっすぐに(180°まで)に伸ばす上記画像部の屈伸運動を500回、1000回および、1500回繰り返し、これらのそれぞれの回数において上記画像部の画像を、「JKワイパー」(日本製紙クレシア株式会社製、キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッドの登録商標)を用いて、3kgf(29.4N)の荷重をかけて擦り、繰り返し屈伸運動を行わせた上記画像部における画像の剥がれの有無を確認し、以下の基準により評価した。◎、○、△が実用上問題ないレベルであり、×は、実用上問題がある。
×:500回時点で画像の剥がれが発生
△:500回時点では画像の剥がれはなく、1000回時点で画像の剥がれが発生
○:1000回時点では画像の剥がれはなく、1500回時点で画像の剥がれが発生
◎:1500回時点でも画像の剥がれがない
(2)耐加筆試験評価(加筆耐久性)
現像剤1〜13について、上記改造機を用いて常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)環境下において、A4サイズの上質紙上に、トナー付着量11g/m2のベタ画像を現像した。その後、上記上質紙上の未定着のトナー画像を10℃/10%RHの環境下で、定着用ヒートローラーの温度を170℃として上記上質紙に定着させ、トナー画像を形成した。
次いで、0.5mmのシェープペン芯を入れたシープペンを、下記の荷重変動型摩擦磨耗試験機に取りつけ、200gの荷重をシャープペンにかけて、下記の条件にて上記ベタ画像に10cmの直線を5本描いた。そして、加筆部(直線部)とその周辺のトナー画像の剥がれの状態を以下の3段階の評価基準で評価した。ランク3〜2が実用上問題ないレベルであり、ランク1は、実用上問題がある。
(条件)
装置:HEIDONトライボギア 18L 引掻強度試験機(新東科学株式会社製)
シャープ替芯:「ユニ ナノダイヤ」(三菱鉛筆株式会社製、太さ0.5mm、HB、黒)
引っかき速度:200mm/分
(評価基準)
ランク3:トナー画像の剥がれが全くない
ランク2:トナー画像の剥がれが発生するが、画像として問題ない
ランク1:トナー画像の剥がれが発生し、加筆部のトナー画像の剥がれで下地の紙が露出する
表3に示されるように、現像剤1〜11で形成された定着トナー画像は、曲げ耐久性および加筆耐久性のいずれも十分に良好である。
これに対して、現像剤12で形成された定着トナー画像は、曲げ耐久性および加筆耐久性のいずれも不十分である。これは、トナー粒子中に空隙部が分散して存在するものの、トナー粒子がコアシェル構造を有さないため、トナー画像の定着時に空隙部がトナー画像から追い出され、あるいは偏在し、散在する空隙部によるトナー画像の柔軟性の発現が十分でないため、と考えられる。
また、現像剤13で形成された定着トナー画像は、加筆耐久性が不十分である。これは、トナー粒子がコアシェル構造を有するものの、空隙部がトナー粒子のシェル部にのみ散在するため、散在する空隙部によるトナー画像の柔軟性を発現させるほどの十分量の上記空隙部が、定着トナー画像中に導入されないため、と考えられる。