JP2017076087A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に優れる静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】静電潜像現像用トナーは、トナー粒子を複数含む。トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを有する。シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。トナーコアは、ポリエステル樹脂を少なくとも含有する。トナー粒子の80℃における溶融粘度は、2.1×104Pa・s以上2.3×105Pa・s以下である。トナー粒子の90℃における溶融粘度は、7.0×103Pa・s以上2.3×104Pa・s以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナー(以下「トナー」と記載する場合がある)に関する。
画像形成装置の省エネルギー化と小型化との観点から、低温定着性に優れるトナーが望まれている。低温定着性に優れるトナーを用いることにより、定着ローラーを極力加熱することなく、トナーを記録媒体に定着できる傾向がある。しかし、低温定着性に優れるトナーには、融点又はガラス転移点の低い結着樹脂、及び融点の低い離型剤が含有されることが多い。このようなトナーを高温で保存すると、トナーに含まれるトナー粒子が凝集し易くなる。トナー粒子が凝集すると、凝集しているトナー粒子の帯電量が、凝集していないトナー粒子の帯電量と比較して低下し易い。
そこで、コア−シェル構造のトナー粒子を含むトナーが検討されている。コア−シェル構造のトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層とを備える。例えば、特許文献1に記載のトナーでは、トナーコアの表面が薄膜(シェル層)により実質的に連続して被覆されている。薄膜(シェル層)は熱硬化性樹脂を含む。
特開2004−138985号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、トナーコアが熱硬化性樹脂のシェル層で被覆されるため、トナーを低温で記録媒体に定着させることは困難である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー粒子を複数含む。前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアを被覆するシェル層とを有する。前記シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。前記トナーコアは、ポリエステル樹脂を少なくとも含有する。前記トナー粒子の80℃における溶融粘度は、2.1×104Pa・s以上2.3×105Pa・s以下である。前記トナー粒子の90℃における溶融粘度は、7.0×103Pa・s以上2.3×104Pa・s以下である。
本発明によれば、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に優れる静電潜像現像用トナーを提供できる。
溶融粘度の測定方法を説明するためのグラフである。 軟化点の測定方法を説明するためのグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下、アクリルとメタクリルとを包括して「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。更に、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、平均値は、何ら規定していなければ、個数平均値を意味する。また、粉体(例えば後述する、トナー、トナー粒子、及びトナー母粒子)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、個数平均値を意味する。個数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。更に、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、コールターカウンター法を用いて、体積基準で算出されたメディアン径である。
本実施形態は、トナーに関する。トナーは、トナー粒子を複数含む。トナーは複数のトナー粒子(粉体)の集合体である。トナー粒子は、トナーコアと、シェル層とを有する。シェル層は、トナーコアを被覆するように備えられる。
本実施形態に係るトナーは、実質的にトナー粒子のみを含んでもよいし、トナー粒子に加えてトナー粒子以外の成分を含んでもよい。また、本実施形態に係るトナーは、実質的にコア−シェル構造のトナー粒子を含有するが、コア−シェル構造以外のトナー粒子を含有してもよい。
トナー粒子の80℃における溶融粘度(η1t)は、2.1×104Pa・s以上2.3×105Pa・s以下である。トナー粒子の80℃における溶融粘度が2.3×105Pa・sを超えると、トナーの低温定着性が低下し易い。一方、トナー粒子の80℃における溶融粘度が2.1×104Pa・s未満であると、トナーの耐熱保存性が低下し易い。トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を更に両立させ易くするためには、トナー粒子の80℃における溶融粘度は、2.3×104Pa・s以上1.5×105Pa・s以下であることが好ましく、2.5×104Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることがより好ましい。
トナー粒子の90℃における溶融粘度(η2t)は、7.0×103Pa・s以上2.3×104Pa・s以下である。トナー粒子の90℃における溶融粘度が2.3×104Pa・sを超えると、トナーの低温定着性が低下し易い。一方、トナー粒子の90℃における溶融粘度が7.0×103Pa・s未満であると、トナーの耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性が低下し易い。トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を更に両立させ易くするためには、トナー粒子の90℃における溶融粘度は、8.3×103Pa・s以上2.1×104Pa・s以下であることが好ましく、8.9×103Pa・s以上9.8×103Pa・s以下であることがより好ましい。
ここで、トナー粒子が完全に溶融する直前におけるトナー粒子の溶融粘度の変化が、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に影響を与える傾向がある。そのため、トナー粒子の80℃及び90℃における溶融粘度を所定の範囲内に設定することにより、トナー粒子が完全に溶融する直前のトナー粒子の溶融粘度の変化(例えば、温度の上昇に対してトナー粒子の溶融粘度が低下する度合い)を制御できると考えられる。なお、80℃及び90℃においては、溶融状態のトナー粒子に対して溶融粘度を測定できる傾向がある。測定温度が低過ぎると、トナー粒子が溶融し難く、固体状態となる傾向がある。一方、測定温度が高過ぎると、トナー粒子が完全に溶融して、液体状態となる傾向がある。
トナー粒子の80℃及び90℃における溶融粘度は、例えば、トナーコアに結着樹脂として含有されるポリエステル樹脂の種類及び量、トナーコアに含有される結着樹脂以外の成分の種類及び量、並びにシェル層を形成するための樹脂の種類及び量の1種以上を変更することにより適宜調整される。
(溶融粘度の測定方法)
トナー粒子の80℃及び90℃における溶融粘度は、例えば以下のように測定される。測定試料(トナー粒子)の溶融粘度は、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定される。まず、測定試料1.2gを、測定試料作成用の成形型に充填する。続いて、充填された測定試料に4MPaの圧力を印加する。これにより、測定試料のペレット(直径1cm及び長さ2cmの円柱状のペレット)を作成する。得られた測定試料のペレットを高化式フローテスターにセットする。プランジャー荷重30kg/cm2、ダイス細孔径1mm、ダイス長1mm、予熱温度70℃、予熱時間300秒、昇温速度4℃/分、測定温度範囲70℃以上160℃以下の条件で、各温度における測定試料の溶融粘度を測定する。これにより、図1に示すように、温度と溶融粘度との関係を示すグラフが得られる。図1中、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は溶融粘度(Pa・s)を示す。得られた温度と溶融粘度との関係を示すグラフから、測定試料の80℃及び90℃における溶融粘度を各々読み取る。
なお、後述するトナー母粒子の表面に後述する外添剤が付着している場合には、トナー粒子の80℃及び90℃における溶融粘度(η1t及びη2t)は、各々、測定試料として外添剤が付着したトナー母粒子(トナー粒子)を用いることにより測定される。
トナー粒子のガラス転移点(Tg)は、25℃以上55℃以下であることが好ましい。トナー粒子のガラス転移点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、及び耐熱保存性を向上させ易い。更に、トナーを記録媒体に高温で定着させる際のオフセットの発生を抑制できる特性(耐オフセット性)を向上させ易い。トナーの耐熱保存性、及び耐ホットオフセット性を好適に維持しつつ、トナーの低温定着性を更に向上させるためには、トナー粒子のガラス転移点は、25℃以上45℃以下であることがより好ましく、34℃以上45℃以下であることが一層好ましい。トナー粒子のガラス転移点は、例えば、測定試料をポリエステル樹脂からトナー(複数のトナー粒子)に変更する以外は、後述する非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点の測定方法と同様にして測定される。
トナー粒子の軟化点(Tm)は、105℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。トナー粒子の軟化点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を向上させ易い。トナーの耐熱保存性、及び耐ホットオフセット性を好適に維持しつつ、トナーの低温定着性を更に向上させるためには、トナー粒子の軟化点は、70℃以上95℃以下であることが一層好ましい。トナー粒子の軟化点は、例えば、測定試料をポリエステル樹脂からトナー(複数のトナー粒子)に変更する以外は、後述するポリエステル樹脂の軟化点の測定方法と同様にして測定される。
トナー粒子のガラス転移点及び軟化点は、例えば、トナーコアに含有されるポリエステル樹脂の種類及び組成を変更することによって調整される。また、トナー粒子のガラス転移点及び軟化点は、例えば、離型剤の種類及び組成を変更することによっても調整される。
<1.トナーコア>
トナーコアは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を少なくとも含有する。トナーコアは、必要に応じて、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のうちの1種以上を更に含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
トナーコアの80℃における溶融粘度(η1c)は、2.0×104Pa・s以上1.5×105Pa・s以下であることが好ましい。トナーコアの80℃における溶融粘度が1.5×105Pa・sを超えると、トナーの低温定着性が低下し易い。一方、トナーコアの80℃における溶融粘度が2.0×104Pa・s未満であると、トナーの耐熱保存性が低下し易い。トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を更に両立させ易くするためには、トナーコアの80℃における溶融粘度は、2.5×104Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることがより好ましい。
トナーコアの90℃における溶融粘度(η2c)は、7.0×103Pa・s以上1.7×104Pa・s以下であることが好ましい。トナーコアの90℃における溶融粘度が1.7×104Pa・sを超えると、トナーの低温定着性が低下し易い。一方、トナーコアの90℃における溶融粘度が7.0×103Pa・s未満であると、トナーの耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性が低下し易い。トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を更に両立させ易くするためには、トナーコアの90℃における溶融粘度は、8.8×103Pa・s以上9.8×103Pa・s以下であることがより好ましい。
トナーコアはトナー粒子の大部分を占める。そのため、トナー(複数のトナー粒子)の低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性には、トナーコアの特性が影響する傾向がある。
トナーコアの80℃及び90℃における溶融粘度は、例えば、トナーコアに結着樹脂として含有されるポリエステル樹脂の種類若しくは量、又はトナーコアに含有される結着樹脂以外の成分の種類若しくは量を変更することにより適宜調整される。
トナーコアの80℃及び90℃における溶融粘度は、例えば、測定試料をトナー粒子からトナーコアに変更する以外は、上述のトナー粒子の80℃及び90℃における溶融粘度の測定方法と同様の方法で測定される。
<1−1.結着樹脂>
トナーコアは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有する。そのため、トナーコアの表面には、ポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)が露出している。そのため、トナーコアの表面にシェル層を形成する際に、熱硬化性樹脂のモノマー(例えば、メチロールメラミン)と、トナーコアの表面に露出する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)とが反応し易くなる。これにより、トナーコアとシェル層との間に、共有結合が形成され易くなる。その結果、シェル層とトナーコアとが強固に結合し易くなる。
ポリエステル樹脂は、トナー用の結着樹脂として使用されるポリエステル樹脂から適宜選択される。ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールとしては、例えば、2価アルコール、又は3価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールの例としては、ジオール類、又はビスフェノール類が挙げられる。
ジオール類の例としては、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、又はジプロピレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸としては、例えば、2価カルボン酸、又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価カルボン酸の例としては、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸が挙げられる。炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸の例としては、炭素原子数2以上16以下のアルカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、又はアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の具体例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の具体例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
上述したアルコール、及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、上述したカルボン酸を、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体は、例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステルである。ここで「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好ましく、27mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価がこのような範囲内であると、後述するシェル層形成工程が水性媒体を用いて行われる場合に、水性媒体中でトナーコアが良好に分散する傾向がある。その結果、シェル層形成工程において分散剤を用いない場合であっても、シェル層の形成が良好に進行し易くなる。なお、ポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを使用する場合には、ポリエステル樹脂全体(非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂)の酸価及び水酸基価がこのような範囲内であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば、ポリエステル樹脂を製造する際の、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と、2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とを、それぞれ適宜変更することで調整される。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は、例えば、JIS(日本工業規格)K0070−1992に記載の方法で測定される。
トナーコアには、ポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂が含有されることが好ましい。また、トナーコアには、ポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂が含有されてもよい。トナーコアが非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、トナーの低温定着性が向上する傾向がある。
ポリエステル樹脂が結晶性であるか又は非結晶性であるかは、ポリエステル樹脂の結晶性指数に基づいて判断される。結晶性指数が0.900以上1.100未満であるポリエステル樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂とする。結晶性指数が0.900未満、又は1.100以上であるポリエステル樹脂を、非結晶性ポリエステル樹脂とする。トナーの低温定着性を向上させるためには、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数が0.980以上1.050以下であることが好ましい。なお、結晶性指数が1.400を超える場合に、ポリエステル樹脂の非結晶部分が特に多くなる傾向がある。また、結晶性指数が0.600未満である場合にも、ポリエステル樹脂の非結晶部分が特に多くなる傾向がある。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)とポリエステル樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求められる。ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)と融点(Mp)とは、例えば、以下のように測定される。
(融点の測定方法)
ポリエステル樹脂の融点(Mp)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される。アルミ皿に10mg以上20mg以下の測定試料(ポリエステル樹脂)を入れる。続いてDSCの測定部にアルミ皿をセットする。リファレンスには空のアルミ皿を用いる。30℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で170℃まで昇温を行う。昇温の際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、測定試料の融点(Mp)とする。
(軟化点の測定方法)
ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定される。測定試料(ポリエステル樹脂)を高化式フローテスターにセットする。ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の測定試料を溶融させ流出させる。これにより、図2に示すように、温度(℃)とストローク(m)との関係を示すS字カーブを得る。図2中、横軸は温度(℃)を示し、縦軸はストローク(m)を示す。得られた温度(℃)とストローク(m)との関係を示すS字カーブから、測定試料の軟化点を読み取る。具体的には、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中の、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、測定試料の軟化点(Tm)とする。なお、測定試料の軟化点(Tm)は、測定試料の1/2流出温度(T1/2)に相当する。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、モノマーであるアルコールの種類、及び使用量、並びにカルボン酸の種類、及び使用量を適宜変更することにより調整される。結晶性ポリエステル樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、非結晶性ポリエステル樹脂も、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の合成には、例えば、上述したポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコール、及びカルボン酸が使用される。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールとして、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましい。ポリエステル樹脂の結晶化が促進されるためである。なかでも、ポリエステル樹脂の結晶化をより促進し易いことから、炭素原子数2以上8以下のα,ω−アルカンジオールを使用することがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールの含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールのモル数に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールに最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進し易いことから、炭素原子数2以上16以下の脂肪族2価カルボン酸(ジカルボン酸)が好ましく、炭素原子数2以上16以下のα,ω−アルカンジカルボン酸(例えば、1,10−デカンジカルボン酸)がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸の含有量が、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸のモル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を両立させ易くなる。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、例えば、測定試料として結晶性ポリエステル樹脂を用いた以外は、上述した融点の測定方法と同様の方法で測定される。
ポリエステル樹脂中の、非結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂を除く樹脂)の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)は、1.00以下であることが好ましく、0.01以上0.50以下であることがより好ましく、0.10以上0.20以下であることが特に好ましい。トナーコアに含有される非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を両立させ易くなる。
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、30℃以上60℃以下であることが好ましく、35℃以上55℃以下であることがより好ましく、35℃以上50℃以下であることが一層好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を両立させ易くなる。更に、非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点がこのような範囲内であると、所望の溶融粘度を有するトナー粒子が形成され易くなる。非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、例えば以下のように測定される。
(ガラス転移点の測定方法)
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、非結晶性ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求められる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いる。測定試料(非結晶性ポリエステル樹脂)10mgを測定装置のアルミパン中に入れる。リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、及び昇温速度10℃/分の条件で測定することにより、測定試料の吸熱曲線を得る。得られた測定試料の吸熱曲線から、測定試料のガラス転移点を求める。ガラス転移点が多段階で観測される場合には、最も低温で観測される点をガラス転移点とする。
非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は、60℃以上150℃以下であることが好ましく、70℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上100℃以下であることが一層好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を両立させ易くなる。更に、非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点がこのような範囲内であると、所望の溶融粘度を有するトナー粒子が形成され易くなる。非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点がこのような範囲内の値となるように、異なる軟化点を有する非結晶性ポリエステル樹脂を複数種組み合わせて用いてもよい。
トナーコアは、ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂の一方又は両方)以外に、更に別の結着樹脂を含有してもよい。別の結着樹脂は、トナー用結着樹脂として使用される公知の樹脂から適宜選択される。
結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有率(結晶性ポリエステル樹脂、及び非結晶性ポリエステル樹脂の合計含有率)は、結着樹脂の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
<1−2.着色剤>
着色剤としては、トナー粒子の色に合わせて公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤としては、例えば黒色顔料、又は黒色染料が挙げられる。黒色顔料の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された黒色着色剤を使用してもよい。
トナーがカラートナーである場合に、トナーコアに配合される着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤が挙げられる。
トナーコアは、カラー着色剤を含有してもよい。カラー着色剤の例としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤の例としては、イエロー顔料、又はイエロー染料が挙げられ、より具体的には、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、マゼンタ顔料、又はマゼンタ染料が挙げられ、より具体的には、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、シアン顔料、又はシアン染料が挙げられ、より具体的には、銅フタロシアニン、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
<1−3.離型剤>
トナーコアは、離型剤を更に含有してもよい。トナーコアが離型剤を含有することにより、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性が向上すると考えられる。トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としてはワックスが好ましい。ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、又はモンタンワックスが挙げられる。トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させるためには、エステルワックスが好ましい。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(具体的には、カルナウバワックス、又はライスワックス)、又は合成エステルワックスが挙げられる。これらの離型剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エステルワックスのなかでは、合成エステルワックスが好ましい。合成エステルワックスの原料を適宜選択することにより、示差走査熱量計を用いて測定される離型剤の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)を、後述する好適な範囲内に調整し易いためである。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法である限り特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でアルコールとカルボン酸とを反応させることにより合成される。別の例では、合成エステルワックスは、カルボン酸ハライドとアルコールとを反応させることにより合成される。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来する原料でもよい。また、合成エステルワックスとしては、合成品として市販されているエステルワックスを用いてもよい。
離型剤は、50℃以上100℃以下の融点を有するエステルワックスであることが好ましい。離型剤の融点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を両立させ易い。トナーの耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を一層向上させるためには、60℃以上90℃以下の融点を有するエステルワックスであることがより好ましい。離型剤の融点は、例えば、測定試料をポリエステル樹脂から離型剤に変更すること以外は、上述したポリエステル樹脂の融点の測定方法と同様にして測定される。
<1−4.電荷制御剤>
電荷制御剤は、例えば、帯電レベル、及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、耐久性及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルに帯電可能か否かの指標である。
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。一方、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電量が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させなくてもよい。
電荷制御剤としては、トナーに使用される電荷制御剤から適宜選択される。正帯電性の電荷制御剤の例としては、アジン化合物、アジン化合物からなる直接染料、ニグロシン化合物、ニグロシン化合物からなる酸性染料、ナフテン酸の金属塩類、高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、又は4級アンモニウム塩が挙げられる。
アジン化合物の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンが挙げられる。
アジン化合物からなる直接染料の例としては、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLが挙げられる。
ニグロシン化合物の例としては、ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体が挙げられる。
ニグロシン化合物からなる酸性染料の例としては、ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZが挙げられる。
4級アンモニウム塩の例としては、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウム、又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂を、正帯電性の電荷制御剤として使用してもよい。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル酸系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、又はカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート又は鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体;又は3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体が挙げられる。有機金属塩の例としては、サリチル酸系金属塩が挙げられる。なかでも、サリチル酸系金属錯体、及びサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、トナー100.0質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
<1−5.磁性粉>
磁性粉の例としては、鉄、強磁性金属、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、強磁性化処理を施された強磁性合金、あるいは二酸化クロムが挙げられる。鉄の例としては、フェライト、又はマグネタイトが挙げられる。強磁性金属の例としては、コバルト、又はニッケルが挙げられる。強磁性化処理の例としては、熱処理が挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。このような範囲内の粒子径を有する磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させ易い。
磁性粉を含有するトナーコアを用いて製造されたトナー粒子を含むトナーは、例えば、磁性1成分現像剤として使用される。トナーを磁性1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の含有量は、トナー100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉を含有するトナーコアを用いて製造されたトナー粒子を含むトナーを、キャリアと混合して、磁性2成分現像剤において使用してもよい。トナーを磁性2成分現像剤において使用する場合、磁性粉の含有量は、トナー100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
<2.シェル層>
シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。シェル層が熱可塑性樹脂のみを含有すると、トナーを高温で保存する際に、トナーに含まれるトナー粒子が互いに融着し易くなる。また、トナーを用いて画像を形成する際に、ホットオフセットが発生し易くなる。一方、シェル層が熱硬化性樹脂のみを含有すると、トナーを定着時に加熱する際に、トナーに含まれるトナー粒子が破壊され難く、トナーの低温定着性が低下し易い。そのため、シェル層に熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有させることにより、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び耐ホットオフセット性を両立させ易くなる。
シェル層は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、又はプレポリマー)と、熱可塑性樹脂の原料(例えば、熱可塑性樹脂)とを、混合、又は反応させることにより形成される。シェル層中で、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが混ざり合って固化し、熱硬化性樹脂で形成される領域と、熱可塑性樹脂で形成される領域とが、シェル層中に混在していてもよい。また、シェル層には、熱硬化性樹脂の原料(例えば、重合されていない又は縮重合されていない、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)が含有されていてもよい。更に、シェル層中で、熱硬化性樹脂が有する置換基の少なくとも一部と、熱可塑性樹脂が有する置換基の少なくとも一部とが、化学的に結合(架橋)していてもよい。
シェル層中で熱硬化性樹脂が有する置換基と熱可塑性樹脂が有する置換基とが化学的に結合(架橋)している場合、シェル層は、熱可塑性樹脂に起因する適度な柔軟性を有する。更に、適度な柔軟性と共に、熱硬化性樹脂が形成する三次元の架橋構造に起因して、シェル層は適度な機械的強度も有する。このようなシェル層を備えるトナー粒子は、保管時及び輸送時に破壊され難い。一方で、このようなトナー粒子は、定着時に温度及び圧力が印加されると、容易に破壊される傾向がある。その結果、シェル層が薄い場合であっても、トナーの耐熱保存性及び低温定着性を両立させ易くなる。以下、シェル層に含有される熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂を説明する。
<2−1.熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーの1種以上を重縮合させることにより形成される。熱硬化性樹脂のモノマーは、トナーコア中のポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)と反応し得る官能基を有することが好ましい。トナーコアの表面には、ポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)が露出している。そのため、トナーコアの表面にシェル層を形成する際に、熱硬化性樹脂のモノマー(例えば、メチロールメラミン)と、トナーコアの表面に露出する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)とが反応し易くなる。これにより、トナーコアとシェル層との間に、共有結合が形成され易くなる。その結果、シェル層とトナーコアとが強固に結合し易くなる。
シェル層に含有される熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂であることが好ましい。シェル層に含有される熱硬化性樹脂の原料としては、メラミン樹脂のモノマー、尿素樹脂のモノマー、又はグリオキザール樹脂のモノマーが挙げられる。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。メラミン樹脂の形成に使用されるモノマーはメラミンである。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは尿素である。グリオキザール樹脂は、グリオキサールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂の形成に使用されるモノマーは、グリオキサールと尿素との反応生成物である。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと反応させる尿素は、公知の変性を受けていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂のモノマーを、熱可塑性樹脂と反応させる前に、ホルムアルデヒドによりメチロール化することにより、誘導体としてもよい。
メラミン、尿素、及びグリオキサールと尿素との反応生成物は、プレポリマー(以下、初期重合体と記載する場合がある)の形態で使用されてもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーの重合反応、又は重縮合反応を、その重合度がポリマーの重合度に到達する前の段階で停止することにより得られる中間生成物を意味する。
熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂、尿素樹脂、又はグリオキザール樹脂を使用する場合、シェル層には窒素原子が含有される。具体的には、メラミン樹脂のモノマーであるメラミンに由来する窒素原子、尿素樹脂のモノマーである尿素に由来する窒素原子、グリオキザール樹脂のモノマーであるグリオキサールと尿素との反応生成物に由来する窒素原子のうちの1種以上が含有される。窒素原子を含むシェル層を備えるトナーは、正帯電され易い。よって、本実施形態のトナーを正帯電させて画像を形成する場合、トナーに含まれるトナー粒子を所望の帯電量に正帯電させ易い。トナーに含まれるトナー粒子を所望する帯電量に正帯電させ易い点で、シェル層中の窒素原子の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。
<2−2.熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー及びプレポリマーの一方又は両方)が有する官能基(例えば、メチロール基、又はアミノ基)と反応性を有する官能基を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の原料が有する官能基(例えば、メチロール基、又はアミノ基)と反応性を有する官能基としては、活性水素原子を含む官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基)が挙げられる。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。
シェル層の形成が容易であることから、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリルアミドに由来する単位を含む樹脂が好ましい。また同様の理由から、熱可塑性樹脂としては、カルボジイミド基、オキサゾリン基、若しくはグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含む樹脂も好ましい。
シェル層の形成に使用される熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系共重合体、シリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、又はエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は、カルボジイミド基、オキサゾリン基、若しくはグリシジル基のような官能基を有するモノマーに由来する単位を含んでいてもよい。これらの中でも、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を向上させるためには、アクリル酸系樹脂、又はシリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体が好ましい。
アクリル酸系樹脂は、アクリル酸系モノマーを重合させることにより形成される。アクリル酸系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物、又は(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルの例としては、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルの例としては、(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物の、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテルが挙げられる。
アクリル酸系モノマーのなかでも、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を向上させるためには、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルが好ましい。
アクリル酸系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
結着樹脂の溶解及び、トナーコアに含有される離型剤の溶出が生じ難いことから、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル層の形成に用いられる熱可塑性樹脂は水溶性であることが好ましい。特に、シェル層の形成には、熱可塑性樹脂を水溶液として用いることが好ましい。
シェル層の形成において、熱可塑性樹脂の水溶液(固形分濃度11質量%)と熱硬化性樹脂の原料の水溶液(固形分濃度80質量%)を使用する場合、熱可塑性樹脂の水溶液の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の水溶液の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、2.0/8.0以上9.0/1.0以下であることが好ましく、3.0/7.0以上7.0/3.0以下であることがより好ましく、3.0/7.0以上6.7/3.3以下であることが特に好ましい。
シェル層中の、熱可塑性樹脂の質量(Wp)に対する熱硬化性樹脂の質量(Ws)の比率(Ws/Wp)は、2.0以上65.0以下であることが好ましく、3.0以上17.0以下であることがより好ましく、3.0以上13.0以下であることが特に好ましい。
シェル層における、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との合計含有量は、シェル層の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
シェル層の厚さは、1nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上16nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることが更に好ましく、5nm以上10nm以下であることが特に好ましい。トナー粒子が有するシェル層の厚さが20nm超であると、トナーを記録媒体へ定着させる際にトナー粒子に圧力が印加されても、トナー粒子のシェル層が破壊され難い。そのため、トナーコアに含有される結着樹脂の軟化及び溶融、並びに離型剤の軟化及び溶融が進行し難く、低温域でトナーを記録媒体に定着させ難くなる。一方、トナー粒子が有するシェル層の厚さが1nm未満であると、シェル層の強度が低くなり易い。シェル層の強度が低いと、輸送時にトナー粒子に与えられる衝撃によって、トナー粒子のシェル層が破壊され易くなる。また、高温でトナーを保存する場合に、シェル層の少なくとも一部が破壊されたトナー粒子は凝集し易い。そのため、高温条件下で、シェル層の破壊された箇所を通じて、離型剤のような成分がトナー粒子の表面に染み出し易くなる。
(シェル層の厚さの測定方法)
シェル層の厚さは、例えば以下の方法で測定される。トナー粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30000倍及び100000倍で観察する。これにより、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影し、TEM撮影像を得る。続けて、トナー粒子の断面のTEM撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、2本の直線上のシェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行う。測定対象の10個のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求める。求められた平均値の和を測定対象の個数(10個)で除算する。得られた値を、トナーが備えるシェル層の厚さとする。
シェル層が薄い(例えば、5nm未満である)場合、TEM画像上でシェル層とトナーコアとの界面が不明瞭であるため、シェル層の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合は、TEM撮影と、電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM画像中に、シェル層の材質に特徴的な元素(例えば、窒素)のマッピングを行い、シェル層とトナーコアとの界面を明確化して、シェル層の厚さを計測してもよい。
シェル層の厚さは、シェル層を形成するために使用されるシェル層の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー、熱硬化性樹脂のプレポリマー、又は熱可塑性樹脂)の使用量を適宜変更することによって調整される。シェル層の厚さは、例えば、トナーコアの比表面積と、熱硬化性樹脂の量と、熱可塑性樹脂の量とから、数式(1)に従って算出される。
シェル層の厚さ=(熱硬化性樹脂のモノマーの量+熱可塑性樹脂の量)/トナーコアの比表面積・・・(1)
<3.外添剤>
シェル層で被覆されたトナーコアの表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。なお、外添剤を付着させる前の粒子(シェル層で被覆されたトナーコア)を、トナー母粒子と記載する場合がある。
外添剤としては、シリカ、又は金属酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムが挙げられる。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
<4.キャリア>
トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤において使用してもよい。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
キャリアの一例として、樹脂で被覆されたキャリアコアが挙げられる。キャリアコアは磁性粒子によって形成される。キャリアの別の例として、樹脂中に磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
磁性粒子の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、若しくはコバルトの粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金の粒子;鉄−コバルト合金の粒子;セラミックスの粒子;又は高誘電率物質の粒子が挙げられる。セラミックスの粒子として使用されるセラミックスとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質の粒子として使用される高誘電率物質としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩が挙げられる。
キャリアコアを被覆する樹脂、及び樹脂キャリアに含有される樹脂の例としては、アクリル酸系重合体、スチレン系重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、オレフィン重合体(例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、例えば、電子顕微鏡により測定される。
トナーを2成分現像剤において用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
<5.トナーの製造方法>
トナーの製造方法は、トナーコアがシェル層で被覆される方法である限り、特に限定されない。以下、トナーの製造方法の一例を説明する。
<5−1.トナーコアの形成工程>
トナーコアの形成工程では、結着樹脂中に任意成分(例えば、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を分散させることにより、トナーコアを形成する。トナーコアの製造方法は、結着樹脂中に任意成分(例えば、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)が良好に分散される限り特に限定されない。トナーコアの製造方法は、公知の方法から適宜選択される。トナーコアの製造方法としては、例えば、粉砕法、又は凝集法が挙げられる。
(粉砕法)
粉砕法では、まず、結着樹脂、及び任意成分(例えば、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を混合する。得られた混合物を、溶融し混練する。得られた溶融混練物を、粉砕した後、分級して、所望の粒子径のトナーコアを得る。粉砕法は、後述の凝集法と比較して、トナーコアの調製が容易であるという利点を有する。一方、粉砕法は、粉砕工程を経てトナーコアを得るため、平均円形度の高いトナーコアが得られ難い。しかし、後述するシェル層の形成工程で、シェル層の原料を加熱することによりシェル層の硬化反応が進行する。その際に、やや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮することで、トナーコアが球形化される傾向がある。従って、トナーコアを粉砕法で製造する場合であっても、トナー粒子の平均円形度を向上させ易い。そのため、トナーコアの製造方法としては粉砕法が好ましい。
(凝集法)
凝集法では、まず、結着樹脂の微粒子、及び各任意成分(例えば、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)の微粒子を、水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得る。得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアを含む水性分散液が得られる。得られた水性分散液から分散剤等を除去して洗浄する。その結果、トナーコアが得られる。
トナーコアのゼータ電位は、pH4に調整された水性媒体中で負極性(0mV未満)であることが好ましく、−10mV以下であることがより好ましい。pH4に調整された水性媒体中でのトナーコアのゼータ電位は、例えば、以下の方法で測定される。
(ゼータ電位の測定方法)
測定試料(トナーコア)0.2g、イオン交換水80mL、及びノニオン界面活性剤(例えば、株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95%)20gを、マグネットスターラーを用いて混合する。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて分散液を得る。得られた測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整する。これにより、pH4の測定試料の分散液を得る。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を測定する。ゼータ電位は、ゼータ電位・粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定される。
標準キャリアと、標準キャリアの質量に対して7質量%のトナーコアとを、混合装置を用いて30分間混合する。この場合のトナーコアの摩擦帯電量は、負極性(0μC/g未満)であることが好ましく、−10μC/g以下であることがより好ましい。トナーコアの摩擦帯電量は、例えば、以下の方法により測定される。
(摩擦帯電量の測定方法)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(トナーコア)とを、混合装置(例えば、WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合する。得られた混合物中の測定試料の摩擦帯電量をQ/mメーター(例えば、トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定する。このようにして測定される測定試料の摩擦帯電量は、トナーコアの帯電され易さの指標となる。また、トナーコアが、正負何れの極性に帯電され易いかの指標となる。
通常、トナーコアに均一なシェル層を形成するためには、分散剤を含む水性媒体中でトナーコアを高度に分散させておくことが多い。しかし、トナーコアの摩擦帯電量が負極性(0μC/g未満)である場合、水性媒体中で、トナーコアに、シェル層の原料(例えば、水性媒体中で正に帯電する熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)が、電気的に引き寄せられる。そして、トナーコアの表面で、トナーコアと熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマー)との反応が良好に進行する。このため、水性媒体中で負帯電するトナーコアを用いてシェル層を形成すると、分散剤を用いて水性媒体中にトナーコアを高度に分散させない場合であっても、トナーコアの表面に均一なシェル層が形成される傾向がある。トナーコアのpH4の水性媒体中でのゼータ電位が、負極性(0mV未満)である場合にも同様の利点が得られる傾向がある。
標準キャリアとの摩擦帯電量、及びpH4の水性媒体中でのゼータ電位のうちの少なくとも一方が負極性を示す場合、このようなトナーコアを用いてトナー粒子を製造すると、以下のような利点があると考えられる。例えば、分散剤を用いない場合であっても、トナーコアが均一なシェル層で被覆され易くなる。また、例えば、排水を希釈しない場合であっても、トナー粒子を製造する際に排出される排水の全有機炭素濃度が、低いレベル(例えば、15mg/L以下)に維持される傾向がある。
<5−2.シェル層の形成工程>
シェル層の形成工程では、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアをシェル層で被覆することにより、シェル層を形成する。これにより、トナー母粒子が得られる。
シェル層を形成するための原料としては、例えば、メラミン、尿素、グリオキサールと尿素との反応生成物、及びこれらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)のうちの1種以上が用いられる。シェル層を形成するための原料として、更に熱可塑性樹脂が用いられる。
シェル層を形成する際には、シェル層の形成に用いる溶媒に対する、結着樹脂の溶解、及びトナーコアに含有される成分(例えば離型剤)の溶出を防ぐことが好ましい。このため、シェル層の形成は、水性媒体中で行われることが好ましい。
水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体中に含有される極性溶媒の例としては、メタノール又はエタノールが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、水性媒体の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
シェル層の形成は、例えば、シェル層を形成するための原料を含む水性媒体に、トナーコアを添加することにより行われる。水性媒体中にトナーコアを添加した後、水性媒体中でトナーコアを分散させる。
分散方法としては、分散液を強力に攪拌する装置を用いて、トナーコアを水性媒体中で機械的に分散させる方法が挙げられる。分散液を強力に攪拌する装置としては、例えば、混合装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスミックス(登録商標)」)が用いられる。
シェル層を形成するための原料を含む水性媒体にトナーコアを添加する前に、水性媒体のpHを、酸性物質を用いて4程度に調整することが好ましい。水性媒体のpHを酸性側に調整することで、シェル層を形成するための原料の重縮合反応が促進され易くなる。
必要に応じて水性媒体のpHを調整した後、水性媒体中で、シェル層を形成するための原料と、トナーコアとを混合する。これにより、トナーコアの水性分散液を得る。得られた水性分散液中で、トナーコアの表面においてシェル材料の重合反応を進行させる。
シェル層を形成する際の水性媒体の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。このような範囲内の温度でシェル層を形成すると、シェル層の形成を進行させ易い。
トナーコアの表面でシェル層を形成する際の温度は、40℃以上95℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。このような範囲内の温度下でシェル層を形成することで、シェル層の形成が良好に進行する。
シェル層が、トナーコアを被覆するように形成されることにより、トナー母粒子を含む水性分散液が得られる。トナー母粒子を含む水性分散液を常温まで冷却する。その後、必要に応じて、後述するトナー母粒子の洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程から選択される1つ以上の工程を行う。その結果、トナー粒子を含むトナーが得られる。
<5−3.洗浄工程>
トナー母粒子は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。洗浄方法の例としては、トナー母粒子を含む水性分散液から、固液分離(例えば、濾過)によりトナー母粒子のウェットケーキを回収し、得られるウェットケーキを、水を用いて洗浄する方法が挙げられる。洗浄方法の別の例としては、分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
<5−4.乾燥工程>
トナー母粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー母粒子を乾燥させる方法としては、乾燥機を用いる方法が挙げられる。乾燥機の例としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機が挙げられる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の乾燥と同時に、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。
<5−5.外添工程>
トナー母粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件で、混合機(例えば、FMミキサー及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
トナーの製造方法は、要求されるトナーの特性に応じて任意に変更される。また、必要のない操作、及び工程は割愛してもよい。なお、外添工程を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
以上、本実施形態のトナーを説明した。本実施形態のトナーによれば、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性を向上させることができる。このため、本発明の静電潜像現像用トナーは、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
実施例、及び比較例における各物性は、以下の方法で測定した。
(ガラス転移点、軟化点、及び融点)
結着樹脂としてのポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、及び融点(Mp)は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法、軟化点の測定方法、及び融点の測定方法と同様の方法で測定した。トナー粒子のガラス転移点(Tg)、及び軟化点(Tm)、は、測定試料をポリエステル樹脂から複数のトナー粒子(トナー)に変更した以外は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法と同様の方法で測定した。離型剤の融点(Mp)は、測定試料をポリエステル樹脂から離型剤に変更した以外は、実施形態で述べた融点の測定方法と同様の方法で測定した。熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、測定試料をポリエステル樹脂から熱可塑性樹脂に変更した以外は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法と同様の方法で測定した。
(結晶性指数)
結着樹脂としてのポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)と、ポリエステル樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求めた。
(体積中位径)
トナーコア、及びトナー母粒子の体積中位径D50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。
(膜厚)
膜厚(シェル層の厚さ)は、以下のように測定した。まず、測定試料を調製した。トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し、硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、得られた硬化物から、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用の薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、測定試料とした。測定試料を用いて、シェル層の厚さを、実施形態で述べたシェル層の厚さの測定方法と同様の方法で測定した。
(溶融粘度)
トナーコアの80℃における溶融粘度(η1c)と、トナーコアの90℃における溶融粘度(η2c)とは、実施形態で述べたトナーコアの溶融粘度の測定方法と同様の方法で測定した。また、外添工程後のトナー粒子の80℃における溶融粘度(η1t)と、外添工程後のトナー粒子の90℃における溶融粘度(η2t)とは、実施形態で述べたトナー粒子の溶融粘度の測定方法と同様の方法で測定した。
<1.トナーを調製するための原料>
次に、実施例及び比較例のトナーを調製するために用いた原料を説明する。
<1−1.非結晶性ポリエステル樹脂1A〜1I>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂1A〜1Iを準備した。詳しくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BPA−PO)1575g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)163g、フマル酸377g、及び触媒(酸化ジブチル錫)4gを反応容器に仕込んだ。反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら反応容器内部の温度を220℃まで上昇させた。反応容器の内容物を220℃で8時間反応させた後、反応容器内を60mmHgに減圧した。続けて、反応容器の内容物を更に1時間反応させた。その後、反応容器内の内容物を210℃に冷却した。反応容器内の内容物に、トリメリット酸無水物336gを添加した。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより、非結晶性ポリエステル樹脂1Aを得た。
以下の点を変更した以外は、非結晶性ポリエステル樹脂1Aと同様の方法で、非結晶性ポリエステル樹脂1B〜1Iを各々調製した。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BPA−PO)の使用量を、非結晶性ポリエステル樹脂1Aの調製における1575gから、表1に示す量に変更した。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPA−EO)の使用量を、非結晶性ポリエステル樹脂1Aの調製における163gから、表1に示す量に変更した。フマル酸の使用量を、非結晶性ポリエステル樹脂1Aの調製における377gから、表1に示す量に変更した。トリメリット酸無水物の使用量を、非結晶性ポリエステル樹脂1Aの調製における336gから、表1に示す量に変更した。表1に、非結晶性ポリエステル樹脂1A〜1Iのガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、及び結晶性指数を示す。
Figure 2017076087
<1−2.非結晶性ポリエステル樹脂2A>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂2Aを準備した。詳しくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物420g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物1235g、テレフタル酸714g、及び触媒(酸化ジブチル錫)4gを反応容器に仕込んだ。次に反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を220℃まで上昇させた。反応容器の内容物を220℃で8時間反応させた後、反応容器内を60mmHgに減圧した。続けて、反応容器の内容物を更に1時間反応させた。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより、非結晶性ポリエステル樹脂2Aを得た。表2に、非結晶性ポリエステル樹脂2Aのガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、及び結晶性指数を示す。
Figure 2017076087
<1−3.結晶性ポリエステル樹脂I及びII>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂I及びIIを準備した。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール132g、1,10−デカンジカルボン酸230g、触媒(酸化ジブチル錫)1g、及びハイドロキノン0.3gを反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を200℃まで上昇させた。反応容器内部の温度を200℃に保持し、副生水を留去しながら、反応容器の内容物を5時間重合させた。次いで、反応容器内を5mmHg以上20mmHg以下に減圧した。減圧下200℃で1時間重合反応を継続した。重合反応が終了した後、反応容器の内容物を取り出して冷却し、結晶性ポリエステル樹脂Iを得た。また、減圧下200℃で1時間重合反応を継続する代わりに、減圧下200℃で8時間重合反応を継続した以外は、結晶性ポリエステル樹脂Iの調製と同様の方法で、結晶性ポリエステル樹脂IIを得た。表3に、結晶性ポリエステル樹脂I及びIIの融点(Mp)、及び結晶性指数を示す。
Figure 2017076087
<1−4.ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の測定>
上述のようにして準備したポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を、JIS(日本工業規格)K0070−1992に従って測定した。まず、非結晶性ポリエステル樹脂1A〜1I、及び2Aの酸価及び水酸基価を測定した。次に、非結晶性ポリエステル樹脂1A(85質量部)と結晶性ポリエステル樹脂I(15質量部)との混合物について、酸価及び水酸基価を測定した。この混合物は、後述するトナーA−25の原料に相当する。次に、非結晶性ポリエステル樹脂1A(85質量部)と結晶性ポリエステル樹脂II(15質量部)との混合物について、酸価及び水酸基価を測定した。この混合物は、後述するトナーA−26の原料に相当する。測定されたポリエステル樹脂の酸価(AV)及び水酸基価(OHV)を、表5、表7及び表9に示す。
<1−5.離型剤>
トナーコアに含有させる結着樹脂として、以下の離型剤W1〜W3を準備した。表4に、離型剤W1〜W3の融点(Mp)を示す。
離型剤W1:カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)
離型剤W2:合成エステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−2」)
離型剤W3:合成エステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)
Figure 2017076087
<1−6.熱硬化性樹脂>
シェル層に含有させる熱硬化性樹脂の原料として、以下の熱硬化性樹脂の原料A〜Cを準備した。
熱硬化性樹脂の原料A:ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)
熱硬化性樹脂の原料B:グリオキサール系モノマーの水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)NS−11」、固形分濃度40質量%)
熱硬化性樹脂の原料C:メチロール化尿素の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)J−300S」、固形分濃度70質量%)
<1−7.熱可塑性樹脂>
シェル層に含有させる熱可塑性樹脂として、以下の熱可塑性樹脂D〜Fを準備した。
熱可塑性樹脂D:アクリルアミド樹脂の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、固形分濃度11質量%、水溶性ポリアクリルアミドの水溶液)
熱可塑性樹脂E:アクリルアミド系共重合体の水溶液(単量体組成:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリルアミド/メタクリル酸−メトキシポリエチレングリコール=30/50/20(モル比率)、固形分濃度5質量%、ガラス転移点110℃、質量平均分子量55000)
熱可塑性樹脂F:シリコーン−アクリルグラフト共重合体の水溶液(東亞合成株式会社製「サイマック(登録商標)US−480」、固形分濃度25質量%)
<2.トナーA−1の調製>
以下のようにしてトナーA−1を調製した。
<2−1.トナーコアの形成工程>
結着樹脂としての非結晶性ポリエステル樹脂1A(100質量部)と、着色剤としての銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー、5質量部)と、離型剤W3(5質量部)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、2400rpmの速度で混合した。これにより、混合物を得た。
次いで、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料投入速度5kg/時、軸回転数160rpm、及び設定温度範囲80℃以上130℃以下の条件で、溶融し混練した。これにより、混練物を得た。得られた混練物を冷却した。冷却した混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて粉砕し、粉砕物を得た。粉砕物を、分級機(エルボージェット、日鉄工業株式会社製「EJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、トナーコアが得られた。得られたトナーコアの体積中位径D50は6.0μmであった。
得られたトナーコア(トナーA−1の調製に用いるトナーコア)の一部を取り出した。取り出したトナーコアの80℃における溶融粘度、及び90℃における溶融粘度を測定した。なお、後述する表5、表7及び表9に示す各トナーについても、トナーコアの80℃における溶融粘度、及び90℃における溶融粘度を測定した。各トナーについて、トナーコアの80℃における溶融粘度(η1c)、及び90℃における溶融粘度(η2c)の測定結果を、表5、表7及び表9に示す。
得られたトナーコア(トナーA−1の調製に用いるトナーコア)の一部を取り出した。取り出したトナーコアを、標準キャリアとの摩擦帯電量の測定と、pH4の分散液中でのゼータ電位の測定とに用いた。各測定は以下のように行った。その結果、トナーA−1の調製に用いるトナーコアについて、標準キャリアとの摩擦帯電量は−20μC/gであった。pH4の分散液中でのゼータ電位は−30mVであった。
(標準キャリアとの摩擦帯電量の測定方法)
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(トナーコア)とを、混合装置(WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合した。得られた混合物を標準キャリアと摩擦させ、混合物中の測定試料の摩擦帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。
(pH4の分散液中でのゼータ電位の測定方法)
測定試料(トナーコア)0.2gと、イオン交換水80mLと、ノニオン界面活性剤(株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて、測定試料の分散液を得た。その後、測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整した。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
<2−2.シェル層の形成工程>
温度計、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバスを用いてフラスコの内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の液のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内にシェル層の原料を添加した。詳しくは、フラスコ内に、熱硬化性樹脂の原料A(2.0mL)と、熱可塑性樹脂D(2.0mL)とを添加した。次いで、フラスコの内容物を攪拌し、シェル層の原料をイオン交換水に溶解させた。これにより、シェル層の原料の水溶液を得た。
得られたシェル層の原料の水溶液に、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの300gを添加した。フラスコの内容物を、200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水の300mLを追加した。その後、フラスコの内容物を100rpmの速度で攪拌しながら、フラスコ内温を1℃/分の速度で70℃まで上げた。昇温後、フラスコ内温70℃、速度100rpmの条件でフラスコの内容物を2時間攪拌した。その後、フラスコ内に、水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコの内容物を、常温まで冷却した。その結果、トナーコアを被覆するようにシェル層が形成された。これにより、トナー母粒子の分散液が得られた。
<2−3.洗浄工程>
得られたトナー母粒子の分散液をブフナー漏斗で濾過し、トナー母粒子のウェットケーキを得た。次いで、トナー母粒子のウェットケーキをイオン交換水に分散させて、分散液に含まれるトナー母粒子を濾過した。これにより、トナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作を、同様の方法で5回繰り返した。これにより、洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを得た。
<2−4.乾燥工程>
洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。コートマイザー(登録商標)による乾燥は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分の条件で行った。
<2−5.外添工程>
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(乾式シリカ微粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」、容量10L)を用いて5分間混合した。これにより、トナー母粒子に外添剤を付着させた。外添剤を付着させたトナー母粒子を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。これにより、複数のトナー粒子を含むトナーA−1を得た。
得られたトナーA−1について、トナー粒子が備えるシェル層の厚さ(膜厚)を測定した。また、得られたトナーA−1について、ガラス転移点、及び軟化点を測定した。更に、得られたトナーA−1の80℃における溶融粘度(η1t)、及び90℃における溶融粘度(η2t)を測定した。なお、後述する表6、表8及び表10に示す各トナーについても、膜厚、ガラス転移点、軟化点、80℃における溶融粘度及び90℃における溶融粘度を測定した。各トナーについて、膜厚、ガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、80℃における溶融粘度(η1t)及び90℃における溶融粘度(η2t)の測定結果を、表6、表8及び表10に示す。
<3.トナーA−1以外のトナーの調製>
以下の方法で、表5〜表10に示すトナーA−1以外の各トナーを調製した。
(トナーA−2、及びA−3)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−2及びA−3を得た。熱硬化性樹脂の原料Aの添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。熱可塑性樹脂Dの添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。これにより膜厚について、トナーA−1の9μmから、表6に示す膜厚に変更した。
(トナーA−8〜A−11)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−8〜A−11を得た。熱硬化性樹脂の原料の添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。熱可塑性樹脂の添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。これにより、熱可塑性樹脂の添加量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の添加量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、トナーA−1の調製における5.0/5.0から、表6に示す比率に変更した。
(トナーA−12)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−12を得た。トナーA−1の調製における熱硬化性樹脂の原料Aから、熱硬化性樹脂の原料Bに変更した。熱硬化性樹脂の原料の添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。これにより、熱可塑性樹脂の添加量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の添加量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、トナーA−1の調製における5.0/5.0から、表6に示す比率に変更した。また、熱硬化性樹脂の原料Bを添加する際に、複合金属塩触媒の水溶液(DIC株式会社製「キャタリスト GT−3」)2mLも添加した。
(トナーA−13)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−13を得た。トナーA−1の調製における熱硬化性樹脂の原料Aから、熱硬化性樹脂の原料Cに変更した。熱硬化性樹脂の原料の添加量について、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6に示す添加量に変更した。これにより、熱可塑性樹脂の添加量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の添加量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、トナーA−1の調製における5.0/5.0から、表6に示す比率に変更した。また、熱硬化性樹脂の原料Cを添加する際に、アミン塩触媒の水溶液(DIC株式会社製「キャタリスト 376」)2mLも添加した。
(トナーA−14、及びA−15)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−14、及びA−15を得た。トナーA−1の調製における熱可塑性樹脂Dから、表6及び表8に示す種類の熱可塑性樹脂に変更した。熱可塑性樹脂の添加量を、トナーA−1の調製における2.0mLから、表6及び表8に示す添加量に変更した。
(トナーA−16〜A−19、A−4、及びB−1〜B−4)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−16〜A−19、A−4、及びB−1〜B−4を得た。トナーA−1の調製における非結晶性ポリエステル樹脂1Aから、表7及び表9に示す種類の非結晶性ポリエステル樹脂に変更した。
(トナーA−5)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−5を得た。結着樹脂として、トナーA−1の調製における非結晶性ポリエステル樹脂1A(100質量部)に代えて、非結晶性ポリエステル樹脂1A(85質量部)と結晶性ポリエステル樹脂I(15質量部)とを用いた。
(トナーA−6)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−6を得た。結着樹脂として、トナーA−1の調製における非結晶性ポリエステル樹脂1A(100質量部)に代えて、非結晶性ポリエステル樹脂1A(85質量部)と結晶性ポリエステル樹脂II(15質量部)とを用いた。
(トナーA−7、及びA−20)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーA−7、及びA−20を得た。トナーA−1の調製における離型剤W3に代えて、表7に示す種類の離型剤を用いた。
(トナーB−5)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーB−5を得た。トナーA−1の調製における熱可塑性樹脂は、トナーB−5の調製では使用しなかった。
(トナーB−6)
以下を変更した以外は、トナーA−1の調製と同様の方法で、トナーB−6を得た。トナーB−6の調製では、シェル層の形成工程、洗浄工程、及び乾燥工程を行わなかった。トナーコアの形成工程で得られたトナーコアを、トナー母粒子として用いて外添工程を行った。
<4.評価>
得られた各トナーについて、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性を評価した。
<4−1.低温定着性>
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、トナー5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
調製した2成分現像剤を用いて、評価機により用紙に画像を形成した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。用紙として、90g/m2の紙(富士ゼロックス株式会社製「C290」、A4サイズ、90g/m2の普通紙評価用紙)を用いた。調製した2成分現像剤を評価機のシアン用現像器に投入し、補充用トナーを評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。
評価機を用いて、用紙の後端から10mmまでの部分に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された用紙を評価機の定着器に通した。定着器のニップ幅を8mm、ニップ通過時間を40m秒に設定した。
最低定着温度の評価では、定着温度を100℃以上200℃以下の範囲に設定した。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から1℃ずつ上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下の折擦り試験で確認した。詳しくは、定着器に通した用紙を、画像を形成した面が内側となるように半分に折り曲げた。折り曲げた用紙を、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上を10往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。なお、最低定着温度が155℃以下であるトナーを、トナーの低温定着性が良好であると評価した。
<4−2.耐ホットオフセット性>
調製した2成分現像剤により、低温定着性の評価と同様の評価機及び用紙を用いて、用紙に未定着のソリッド画像を形成した。耐ホットオフセット性の評価では、定着温度を180℃以上230℃以下の範囲に設定した。定着温度以外の条件は、低温定着性の評価における条件と同様に設定した。定着器のヒートローラーの2周目において、トナーが用紙に転移した温度のうちの最低温度を、ホットオフセット発生温度とした。なお、ホットオフセット発生温度が200℃以上であるトナーを、トナーの耐ホットオフセット性が良好であると評価した。
<4−3.耐熱保存性>
トナー3gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。これにより、耐熱保存性評価用のトナーが得られた。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)を用いて篩別した。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、200メッシュの篩を用いて、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下記数式(2)に従って凝集度[質量%]を求めた。なお、凝集度が30質量%以下であるトナーを、トナーの耐熱保存性が良好であると評価した。
凝集度[質量%]=100×篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量・・・(2)
トナーA−1〜A−20及びB−1〜B−6の各々について、トナーを調製するための原料の種類及び添加量を、表5〜表10に示す。また、各トナーについて、トナーコアが含有するポリエステル樹脂の酸価(AV)、及び水酸基価(OHV)を、表5、表7及び表9に示す。各トナーのトナーコアの80℃における溶融粘度(η1c)、及び90℃における溶融粘度(η2c)を、表5、表7及び表9に示す。なお、表5、表7及び表9中、Mpは結晶性ポリエステル樹脂の融点を示す。
各トナーのトナー粒子が備えるシェル層の厚さ(膜厚)を、表6、表8及び表10に示す。各トナーのトナー粒子のガラス転移点(Tg)、及び軟化点(Tm)を、表6、表8及び表10に示す。各トナーのトナー粒子(外添工程後)の80℃における溶融粘度(η1t)、及び90℃における溶融粘度(η2t)を、表6、表8及び表10に示す。なお、表6、表8及び表10中、Vs/Vpは、熱可塑性樹脂の添加量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の添加量(Vs、単位:mL)の比率を示す。
更に、各トナーの最低定着温度、ホットオフセット発生温度、及び凝集度の測定結果を、表11に示す。表11中、wt%は質量%を示す。
なお、トナーA−1〜A−20は実施例である。一方、トナーB−1〜B−6は比較例である。
Figure 2017076087
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表11に示すように、トナーA−1〜A−20は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に優れていた。
トナーB−1では、トナー粒子の80℃における溶融粘度(η1t)が、2.1×104Pa・s未満であった。そのため、表11に示すように、トナーB−1は耐熱保存性に劣ったと考えられる。
トナーB−2では、トナー粒子の80℃における溶融粘度(η1t)が、2.3×105Pa・sを超えていた。そのため、表11に示すように、トナーB−2では粘性が得られ難く、トナーB−2は低温定着性に劣ったと考えられる。
トナーB−3では、トナー粒子の90℃における溶融粘度(η2t)が、7.0×103Pa・s未満であった。そのため、表11に示すように、トナーB−3は耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に劣ったと考えられる。
トナーB−4では、トナー粒子の90℃における溶融粘度(η2t)が、2.3×104Pa・sを超えていた。そのため、表11に示すように、トナーB−4ではトナーの粘性が得られ難く、トナーB−4は低温定着性に劣ったと考えられる。
トナーB−5では、シェル層が熱可塑性樹脂を含有していなかった。そのため、表11に示すように、トナーB−5を用紙に定着する際にトナー粒子のシェル層が破壊され難く、トナーB−5は低温定着性に劣ったと考えられる。
トナーB−6では、トナー粒子がシェル層を有していなかった。そのため、表11に示すように、トナーB−6は耐熱保存性に劣ったと考えられる。
本発明に係るトナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。

Claims (7)

  1. トナー粒子を複数含む、静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアを被覆するシェル層とを有し、
    前記シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有し、
    前記トナーコアは、ポリエステル樹脂を少なくとも含有し、
    前記トナー粒子の80℃における溶融粘度は、2.1×104Pa・s以上2.3×105Pa・s以下であり、
    前記トナー粒子の90℃における溶融粘度は、7.0×103Pa・s以上2.3×104Pa・s以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記トナー粒子のガラス転移点は、25℃以上45℃以下であり、
    前記トナー粒子の軟化点は、70℃以上95℃以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記ポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂が含有される、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記ポリエステル樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とが含有され、
    前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50℃以上100℃以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、35℃以上50℃以下であり、
    前記非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、80℃以上100℃以下である、請求項3又は4に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、
    前記ポリエステル樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記トナーコアは、離型剤を更に含有し、
    前記離型剤は、50℃以上100℃以下の融点を有するエステルワックスである、請求項1〜6の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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