JP2018167796A - エアバッグ装置 - Google Patents

Abstract

【課題】簡便な構成として、挿入用開口のシール性が良好なエアバッグ装置を提供すること。【解決手段】インフレーター４０が、エアバッグ９０内に挿入させた状態のリテーナの保持部５６に、エアバッグに形成される挿入用開口９４を経て、挿入されることにより、一端側をエアバッグ外に配置させて、保持部に保持される。エアバッグが、バッグ本体９１と、バッグ本体の内周側において挿入用開口を覆うフラップ部材１１０と、を備える。フラップ部材が、バッグ本体を平らに展開した状態において、挿入用開口の配置領域を全面にわたって覆うとともに、インフレーターの挿入方向側の先端側となる先端縁１１０ｃ側を除いた周縁を、連続的に形成される結合部位１１１によって、バッグ本体側に結合される。フラップ部が、先端縁を、リテーナの保持部に形成される開口部７２を経て、インフレーターの外周面４１ｃに圧接可能な位置に、配置させている。【選択図】 図３０

Description

本発明は、可撓性を有した基材から構成される袋状のエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、インフレーターとエアバッグとを車体側部材側に取り付けるリテーナと、を備える構成のエアバッグ装置に関する。

従来、エアバッグ装置としては、エアバッグ内に挿入させた状態のリテーナの保持部に、エアバッグに形成される挿入用開口を経て、インフレーターを挿入させることにより、インフレーターを、一端側をエアバッグ外に配置させるようにして、保持部に保持させる構成のものがあった（例えば、特許文献１参照）。

このエアバッグ装置では、エアバッグにおけるバッグ本体の内部に、挿入用開口の周縁から延びる略筒状のシールチューブを配置させ、リテーナは、このシールチューブに挿入されるようにして、エアバッグ内に挿入される構成であった。そして、車両搭載時におけるインフレーターの作動時には、バッグ本体内に流入する膨張用ガスによって、このシールチューブを、保持部に形成される圧接用開口部に押し込むようにして、インフレーターの外周面に圧接させることにより、バッグ本体の挿入用開口の周縁をシールさせていた。

特開２０１４−１９６０６３公報

しかし、従来のエアバッグ装置では、良好なシール性を確保できるものの、シールチューブは、インフレーターの外周側を覆うような筒状として構成され、この筒状のシールチューブの一端側を、バッグ本体の内周側において、挿入用開口の周縁に連結させていることから、構成が簡便ではなく、製造工数及びコストの低減に改善の余地があった。

本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、挿入用開口のシール性が良好なエアバッグ装置を提供することを目的とする。

本発明に係るエアバッグ装置は、可撓性を有した基材から構成される袋状のエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、インフレーターとエアバッグとを車体側部材側に取り付けるリテーナと、を備えて、
リテーナが、インフレーターを保持可能な筒状の保持部と、保持部の底部から突設される取付手段と、を備える構成とされて、取付手段をエアバッグから突出させるようにしてエアバッグ内に配置され、保持部にインフレーターを保持させた状態で、取付手段を車体側部材に取り付けることにより、インフレーターとエアバッグとを車体側部材に取り付ける構成とされ、
インフレーターが、エアバッグ内に挿入させた状態のリテーナの保持部に、エアバッグに形成される挿入用開口を経て、挿入されることにより、一端側をエアバッグ外に配置させるようにして、保持部に保持される構成のエアバッグ装置であって、
エアバッグが、バッグ本体と、バッグ本体の内周側において挿入用開口を覆う領域に配置されるフラップ部材と、を備える構成とされ、
フラップ部材が、バッグ本体を平らに展開した状態において、挿入用開口の配置領域を全面にわたって覆うとともに、インフレーターの挿入方向側の先端側となる先端縁側を除いた周縁を、挿入用開口の周囲で、連続的に形成される結合部位によって、バッグ本体側に結合されて、リテーナをバッグ本体の内部に挿入させた状態で、保持部を覆うように配置される構成とされ、
保持部が、
エアバッグの挿入用開口側に配設されて、保持部に挿入したインフレーターを保持可能に、底部から延びてインフレーターの外周を覆う開口側筒状部と、
開口側筒状部における底部から離れた側に配設されて、保持部に挿入させた前記インフレーターの外周面を露出可能な開口部と、
を備え、
フラップ部が、先端縁を、リテーナの開口部を経て、インフレーターの外周面に圧接可能な位置に、配置させていることを特徴とする。

本発明のエアバッグ装置では、エアバッグが、バッグ本体の内周側において、インフレーターを挿入させるための挿入用開口の配置領域を全面にわたって覆うフラップ部材を、備える構成とされており、このフラップ部材は、インフレーターの挿入方向の先端側となる先端縁側を除いた周縁を、連続的に形成される結合部位によって、バッグ本体側に結合される構成とされている。すなわち、フラップ部材は、先端縁のみを自由端としたポケット状として、構成されている。そのため、バッグ本体の膨張時に、保持部を覆うように配置されているフラップ部材とバッグ本体との間に膨張用ガスが流入し難く、バッグ本体の内部に流入した膨張用ガスによって、浮き上がり等が生じることを抑制できる。そのため、フラップ部材を、膨張用ガスの圧力（バッグ本体の内圧）によって、円滑に、リテーナの開口部を経て、インフレーターの外周側に圧接させることができる。本発明のエアバッグ装置では、フラップ部材の先端縁が、リテーナの開口部を経てインフレーターの外周側に圧接可能な位置に、配置される構成であることから、先端縁を、強くインフレーターの外周側に圧接させることができて、フラップ部材とインフレーターとの間からガスが漏れることを規制でき、挿入用開口からのガス漏れを、防止することができる。また、本発明のエアバッグ装置では、シート状のフラップ部材の先端縁側を除いた周縁を、挿入用開口の周囲の部位で、バッグ本体に結合させるだけでよいことから、従来のエアバッグ装置と比較して、構成を簡便とすることができ、製造工数及びコストの低減を図ることができる。

したがって、本発明のエアバッグ装置では、簡便な構成として、挿入用開口のシール性を良好とすることができる。

また、本発明のエアバッグ装置において、挿入用開口を、基材の開口形成部位に、線状のスリットを形成することにより、インフレーターを挿入可能に構成し、
リテーナにおいて、開口側筒状部における挿入用開口側の端部に、バッグ本体内に収納させた際に、挿入用開口のスリットからバッグ本体外に突出して、挿入用開口の周縁に係止可能な係止爪部を、配設させる構成とすることが、好ましい。

エアバッグ装置を上記構成とすれば、挿入用開口をスリットから形成することにより、インフレーターの挿入時に、スリットの周囲の部位が、インフレーターの外周面を覆うような態様となって、一層シール性を向上させることができるとともに、また、挿入用開口をスリットから構成しても、リテーナが、挿入用開口の周縁に係止される係止爪部を有していることから、この係止爪部によって、バッグ本体の挿入用開口と、リテーナの保持部と、の位置合わせを容易にすることができて、インフレーターの保持部への挿入作業も容易である。また、リテーナの係止爪部によって、挿入用開口を係止させることにより、フラップ部材の保持部に対する配置位置も安定させることができる。

さらに、上記構成のエアバッグ装置において、結合部位の先端縁側の端末を、先端縁との間に未結合部位を設けるように、先端縁と距離を開け、かつ、インフレーターの軸方向側において、開口部のエリアに配置されるように、構成することが、好ましい。このような構成とすれば、インフレーターをエアバッグ内に挿入させる際に、フラップ部材における先端縁側が、突っ張ることなく撓んで、インフレーターの挿入作業が容易となり、また、結合部位を、先端縁まで配置させる場合と比較して、先端縁のバッグ本体に対する動きの自由度を増大させることができて、バッグ本体の膨張時に、内部に充満する膨張用ガスの圧力によって、フラップ部材における先端縁側の部位を、一層強く、インフレーターの外周面に圧接させることができる。

本発明の一実施形態である膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略縦断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大縦断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両左右方向の概略横断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両後方側から見た概略正面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するケースを、車両前方側から見た斜視図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するリテーナを、車両後方側から見た斜視図である。 図６のリテーナを車両後方側から見た正面図である。 図６のリテーナの平面図である。 図６のリテーナを右方から見た拡大側面図である。 図６のリテーナにおいて、弾性変形支持部の部位を示す部分拡大図である。 図６のリテーナの断面図であり、図７のXI−XI部位に対応する。 図６のリテーナの拡大断面図であり、図７のXII−XII部位に対応する。 図６のリテーナの拡大断面図であり、図７のXIII−XIII部位に対応する。 図６のリテーナにインフレーターを挿入させた状態を示す横断面図である。 図６のリテーナにインフレーターを挿入させた状態を示す圧接部の部位での断面図である。 図６のリテーナにインフレーターを挿入させた状態を示す弾性変形支持部及び支持突起部の部位での断面図である。 図６のリテーナにインフレーターを挿入させた状態を示す圧接用開口部の部位での断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するエアバッグの背面図である。 図１８のエアバッグのXIX−XIX部位の拡大断面図である。 図１８のエアバッグにおいて、挿入用開口の部位を示す部分拡大背面図である。 図１８のエアバッグにおいて、挿入用開口のスリットの配置状態をを示す概略部分拡大図である。 図１８のエアバッグにおいて、取付部の部位を示す部分拡大縦断面図である。 図１８のエアバッグの内部にリテーナとインフレーターとを挿入させた状態でのフラップ部材の配置位置を示す概略部分拡大平面図である。 図１８のエアバッグの内部にリテーナとインフレーターとを挿入させた状態でのフラップ部材の配置位置を示す概略部分断面図である。 図１８のエアバッグを構成する基材を並べた状態の平面図である。 図１８のエアバッグを構成する残りの基材を並べた状態の平面図である。 リテーナをエアバッグ内に挿入させた状態の挿入用開口の部位を示す概略図である。 リテーナをエアバッグ内に挿入させた状態の挿入用開口の部位付近を示す概略断面図である。 インフレーターを、挿入用開口を経てリテーナに挿入させた状態を示す概略断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張時の状態を示す部分拡大横断面図である。 実施形態の膝保護用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張時の状態を示す部分拡大縦断面図である。

以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、乗員としての運転者Ｄの膝Ｋ（ＫＬ，ＫＲ）を保護するための膝保護用エアバッグ装置（以下「エアバッグ装置」と省略する）Ｓを例に採り、説明をする。エアバッグ装置Ｓは、図１，４に示すように、運転者Ｄの車両前方側であるステアリングコラム７の下方に配設されている。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後の方向は、特に断らない限り、エアバッグ装置Ｓを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向と一致するものである。

ステアリングコラム７は、図１，４に示すように、コラム本体８と、コラム本体８の外周側を覆うコラムカバー１１と、を備えている。コラム本体８は、図１に示すように、メインシャフト９と、メインシャフト９の周囲を覆うコラムチューブ１０と、から構成されている。

エアバッグ装置Ｓは、図１〜３に示すように、折り畳まれたエアバッグ９０と、エアバッグ９０に膨張用ガスを供給するインフレーター４０と、折り畳まれたエアバッグ９０とインフレーター４０とを収納する車体側部材としてのケース２８と、インフレーター４０とエアバッグ９０とをケース２８に取り付けるためのリテーナ５５と、折り畳まれたエアバッグ９０の車両後方側を覆うエアバッグカバー１６と、を備えて構成されている。

エアバッグカバー１６は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー（ＴＰＯ）から形成されて、ケース２８の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー１６は、図１〜４に示すように、アッパパネル１２ａとロアパネル１２ｂとから構成されるインストルメントパネル（以下「インパネ」と省略する）１２のロアパネル１２ｂ側に配設されている。エアバッグカバー１６は、ケース２８の突出用開口２８ａ付近に配置される扉配設部１７と、扉配設部１７の周囲に延びる周縁部２６と、を備えて構成されている。

扉配設部１７は、ケース２８の突出用開口２８ａを覆う扉部１８と、扉部１８の上下両側から前方に向かって延びてエアバッグカバー１６をケース２８に取り付けるための取付片部２１，２２と、扉部１８の左右両側から前方に向かって延びる側壁部２３，２４と、を備えている。扉部１８は、ケース２８の突出用開口２８ａの車両後方側を覆う略長方形板状とされている。実施形態では、扉部１８は、周囲に、車両後方側から見て略Ｈ字形状とされる薄肉の破断予定部１９と、上下両端側において開き時の回転中心となるヒンジ部２０と、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。取付片部２１，２２は、ケース２８における後述する上壁部３２と下壁部３３との外周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側に突出するように配置されるもので、前端側に、ケース２８に形成される係止爪３２ａ，３３ａを係止させるための長方形状に開口した係止穴２１ａ，２２ａを、係止爪３２ａ，３３ａに対応して、左右方向側で複数個ずつ、配置させている。側壁部２３，２４は、ケース２８における後述する左壁部３４Ｌと右壁部３４Ｒとの内周側に、それぞれ、隣接して、車両前方側に突出するように、配置されている。

エアバッグカバー１６における周縁部２６は、扉配設部１７の周縁に全周にわたって配置されるもので、実施形態の場合、後面側を扉部１８と略面一として、扉部１８から外方に延びるように、形成されている（図２，３参照）。

ケース２８は、板金製として、図２，３，５に示すように、実施形態の場合、車両前方側に配置される略四角形状の底壁部２９と、底壁部２９の周縁から前後方向に略沿って後方に延びる略四角筒形状の周壁部３１と、を有して、周壁部３１の後端側に、エアバッグ９０を突出可能な突出用開口２８ａを有した略箱形状とされている。

底壁部２９は、左右に幅広の略長方形板状として、リテーナ５５に配設される取付手段としてのボルト８５と、インフレーター４０に配設されるボルト４５と、を、それぞれ、挿通させるための挿通孔２９ａ，２９ｂを、左右方向に沿った２箇所に、配設させている。実施形態では、このケース２８の底壁部２９が、インフレーター４０とエアバッグ９０とを取り付ける車体側部材を、構成している。

周壁部３１は、上下方向側で対向する上壁部３２，下壁部３３と、左右方向側で対向する左壁部３４Ｌ，右壁部３４Ｒと、を備えている。上壁部３２，下壁部３３における後端近傍には、エアバッグカバー１６の取付片部２１，２２に形成される係止穴２１ａ，２２ａ周縁を係止するための係止爪３２ａ，３３ａが、それぞれ、上下の外方へ突出し、先端を車両前方側に向けるように断面略Ｌ字形状に屈曲して、形成されている。各係止爪３２ａ，３３ａは、それぞれ、上壁部３２，下壁部３３に、左右方向側で複数個（実施形態の場合、５個）ずつ、形成されている。

左壁部３４Ｌと右壁部３４Ｒとは、実施形態の場合、左右対称形として、構成されている。実施形態では、インフレーター４０の本体部４１におけるコネクタ４７側に配置される右壁部３４Ｒを例に採り、詳細に説明する。

右壁部３４Ｒは、底壁部２９側（前端側）を左右方向の内方（左方）に位置させ、突出用開口２８ａ側（後端側）を左右方向の外方（右方に位置させるように、段差を有して構成されている。そして、右壁部３４Ｒには、インフレーター４０の本体部４１をケース２８に取り付けた状態で、接続口部４３にコネクタ４７を接続可能とするように、接続口部４３を露出可能とされるコネクタ用開口３５Ｒが、左右方向側から見て略長方形状に開口して、形成されている（図５参照）。

また、実施形態のケース２８では、図３，５に示すように、左壁部３４Ｌ，右壁部３４Ｒの後縁側に、それぞれ、左右の外方に向かって延びるように、取付片部３７Ｌ，３７Ｒが、形成されている。これらの取付片部３７Ｌ，３７Ｒは、ケース２８を車両のボディ１側に取り付けるための部位である。これらの取付片部３７Ｌ，３７Ｒは、車両搭載時において、インパネ１２におけるロアパネル１２ｂの前側に配置されるもので、図３，４に示すように、ボディ１側のインパネリインフォースメント２から延びるブラケット４に連結される構成である。

インフレーター４０は、実施形態の場合、図３に示すように、略円柱状の本体部４１と、本体部４１の右端４１ｂ側（元部側）において本体部４１から突出されるボルト４５と、を備える構成とされている。本体部４１は、軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状とし、実施形態の場合、左端４１ａ側（先端側）に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部４２を配設させている。ガス吐出部４２には、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口４２ａが、本体部４１の周方向に沿って放射状で、かつ、本体部４１の軸方向に沿って複数列で、配設されている（図３参照）。本体部４１における右端４１ｂ（元部）側には、作動信号入力用のリード線４８を結線させたコネクタ４７を接続させるための接続口部４３が、形成されている（図３参照）。ボルト４５は、本体部４１の右端４１ｂ側において、本体部４１の軸方向と略直交するように本体部４１から突出されて、詳細に説明すれば、実施形態の場合、本体部４１の右端４１ｂ側において、右端４１ｂの端面から、本体部４１の長さ寸法の１／５程度となる位置に、配設されている。

リテーナ５５は、インフレーター４０の外周側を覆って保持可能とされる略筒状の保持部５６と、保持部５６における底部としての底壁部５７から突設される取付手段としてのボルト８５と、インフレーター４０の本体部４１から突設されるボルト４５を収納させる収納凹部７８と、車両搭載時に本体部４１の外周側に圧接される圧接部８２と、を備える構成とされている。実施形態では、リテーナ５５におけるボルト８５以外の部材（保持部５６，収納凹部７８を構成する後述する延設部７７，圧接部８２）は、板金素材から一体的に形成されている。

保持部５６は、インフレーター４０の本体部４１の外周側を覆い可能に、軸方向を左右方向側に略沿わせるようにして左右両端側を開口させた略四角筒形状とされている。保持部５６は、ケース２８の底壁部２９に略沿うように配置される底壁部５７と、底壁部５７の上縁側から後方に延びて本体部４１の上側を覆う上壁部６５と、底壁部５７の下縁側から後方に延びて本体部４１の下側を覆う下壁部６６と、上壁部６５，下壁部６６の後端を連結するようにして本体部４１の後方を覆う後壁部６７と、を備えている。後壁部６７は、詳細には、上側と下側とに、それぞれ、角部を面取りするように傾斜している上側傾斜部６７ａと下側傾斜部６７ｂとを配置させる構成とされている。また、この保持部５６は、インフレーター４０の本体部４１におけるガス吐出部４２から吐出される膨張用ガスＧをエアバッグ９０内に流出可能なガス流出用開口５６ｃ，５６ｄを、備えている。各ガス流出用開口５６ｃ，５６ｄは、保持部５６の左端５６ａ側において、インフレーター４０のガス吐出部４２の後方を覆う領域（後壁部６７の領域）を切り欠いて、構成されている。また、この保持部５６において、右端５６ｂ側の開口が、インフレーター４０の本体部４１をガス吐出部４２側から内部に挿入させる挿入用開口５６ｅを、構成している。また、実施形態の場合、保持部５６において、右端５６ｂ側の部位、すなわち、挿入用開口５６ｅ側に配設される部位が、エアバッグ９０の後述する挿入用開口９４側に配設される開口側筒状部５６ｆを、構成している。この開口側筒状部５６ｆは、詳細には、実施形態の場合、保持部５６における右半分程度のエリアから構成されている。

底部としての底壁部５７は、車体側部材としてのケース２８の底壁部２９に略沿うように、左右方向に沿った長尺状の平板状として、構成されている（図２，３参照）。実施形態では、リテーナ５５におけるボルト８５以外の部材（保持部５６，収納凹部７８を構成する延設部７７，圧接部８２）は、所定形状の板金素材を、プレス加工等によって所定形状に賦形しつつ、底壁部５７の領域において、板金素材の端縁を二重に重ねて、トックスかしめ等により結合させることによって、一体的に形成されている。すなわち、底壁部５７は、外側部位５７ａと内側部位５７ｂとの二枚重ね状とされている（図１１，１３参照）。

底壁部５７には、インフレーター４０の本体部４１の挿入時に弾性変形して本体部４１の外周面４１ｃに当接可能な弾性変形支持部５８が、形成されている。弾性変形支持部５８は、左右方向に略沿って帯状として、本体部４１の挿入方向側となる右側を元部として底壁部５７側に連ならせ、先端５８ｃを底壁部５７から分離させるように構成されている（図１０，１１参照）。詳細には、弾性変形支持部５８は、図１１，１３に示すように、左側にかけて内周側（車両搭載時における後方側）に突出するように傾斜させつつ、底壁部５７から分離されている先端５８ｃを前方に向けるように、断面略「Ｊ」字形状に湾曲して形成されている。すなわち、弾性変形支持部５８は、元部側の傾斜部５８ａと先端５８ｃとの間に、内周側に向かって突出するように略円弧状に湾曲した支持部本体５８ｂを、配設させる構成とされ、本体部４１の挿入時には、元部側の傾斜部５８ａの部位を撓ませるようにして、この支持部本体５８ｂを、本体部４１の外周面４１ｃに当接させる構成とされている（図１４参照）。底壁部５７の内側部位５７ｂは、弾性変形支持部５８を切り起こすために、弾性変形支持部５８の部位を開口されているが、このような開口部位５９は、外側部位５７ａによって塞がれている（図１１，１３参照）。

また、弾性変形支持部５８における支持部本体５８ｂの内側部位５７ｂからの突出量は、インフレーター４０の本体部４１を挿入させた際に、傾斜部５８ａにおける元部付近の部位を弾性変形させ（撓ませ）つつ、支持部本体５８ｂを、本体部４１の外周面４１ｃに当接可能とする寸法に、設定されている（図１４参照）。詳細には、この支持部本体５８ｂの突出量は、保持部５６への本体部４１の挿入時において、後述する支持突起部７０の先端７０ａと、支持部本体５８ｂと、を、本体部４１の外周面４１ｃに当接させた状態で、傾斜部５８ａの撓んだ状態を維持して、本体部４１を、保持部５６に対して、軸方向に沿った移動を抑制して保持可能とするように、設定されている。この弾性変形支持部５８の先端５８ｃは、支持部本体５８ｂによってインフレーター４０の本体部４１を支持させた際の弾性変形代を確保可能に（図１４参照）、外側部位５７ａとの間に隙間を有するように、構成されている（図１１参照）。さらに、この弾性変形支持部５８は、インフレーター４０の本体部４１を挿入させる後述する挿入用開口５６ｅ（保持部５６の右端５６ｂ）から離れた左側にかけて内周側への突出量を大きくするように、傾斜する傾斜部５８ａを有していることから、保持部５６内に、右側の挿入用開口５６ｅからインフレーター４０の本体部４１を挿入させる際に、この傾斜部５８ａによりガイドさせるようにして、インフレーター４０の本体部４１を円滑に保持部５６内に挿入させることができる。

この弾性変形支持部５８は、保持部５６に形成される後述する当接部６９（支持突起部７０）と協働して、リテーナ５５に挿入させた状態のインフレーター４０の本体部４１を保持させるためのものであり、実施形態の場合、車両搭載時に、当接部６９（支持突起部７０）と左右方向側（インフレーター４０の軸方向側）の位置を略一致させつつ、当接部６９（支持突起部７０）と前後方向側で対向する位置に、形成されている（図７，１１，１３参照）。また、実施形態の場合、弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒは、図７，１１に示すように、底壁部５７における左右方向の中央よりも右側となる領域において、左右方向側で２箇所に、配設されている。すなわち、実施形態では、弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒは、保持部５６において、開口側筒状部５６ｆの領域に、配設されている。詳細には、右側に配置される弾性変形支持部５８Ｒは、保持部５６の右端５６ｂ近傍（挿入用開口５６ｅ近傍）に配設されており、換言すれば、圧接部８２の左側に近接して、配設されている。

保持部５６における後壁部６７には、インフレーター４０の本体部４１の保持部５６への挿入時に、本体部４１の外周面４１ｃに当接する当接部６９が、形成されている。当接部６９Ｌ，６９Ｒは、実施形態の場合、図６，７，１１に示すように、弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒと左右方向側（インフレーター４０の軸方向側）の位置を略一致させるようにして、左右方向側で２箇所に、形成されている。また、この当接部６９Ｌ，６９Ｒは、弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒと前後方向側で対向する位置に、形成されている（図１１，１３参照）。すなわち、当接部６９Ｌ，６９Ｒと弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒとは、保持するインフレーター４０の本体部４１の周方向側で一致した位置に、配設されている。各当接部６９Ｌ，６９Ｒは、図１３に示すように、前後方向に沿った断面において、上下方向側、すなわち、本体部４１の周方向側で離れた２箇所に配置される２つの支持突起部７０，７０を、備える構成とされている。各支持突起部７０は、後壁部６７における上側傾斜部６７ａの領域と下側傾斜部６７ｂの領域とを、それぞれ、内周側（インフレーター４０の本体部４１側であって、前方側）に向かって凹ませるようにして、本体部４１側に突出して形成される。各支持突起部７０は、凹みの先端７０ａ側を略円弧状に湾曲させるように構成されて、弾性変形支持部５８よりも剛性を高く設定され、この先端７０ａを、本体部４１の外周面４１ｃと当接させる構成とされている。すなわち、実施形態では、弾性変形支持部５８と、２つの支持突起部７０，７０と、は、インフレーター４０における本体部４１の周方向側で一致し、さらに、インフレーター４０における本体部４１の軸心周りで略放射状となるように、配置されている。

また、保持部５６において、当接部６９Ｌ，６９Ｒ間の部位、すなわち、開口側筒状部５６ｆの領域内には、保持部５６に挿入させたインフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃを露出可能な開口部としての圧接用開口部７２が、形成されている。この圧接用開口部７２（開口部）は、底壁部５７から離れた側に配設されている。この圧接用開口部７２は、エアバッグ９０の膨張時に、後述するフラップ部材１１０を直接インフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃに圧接させて、エアバッグ９０における挿入用開口９４の周縁をシールさせるために、形成されている（図３０，３１参照）。具体的には、圧接用開口部７２は、図６〜８，１１，１７に示すように、保持部５６における底壁部５７を除いた領域を、大きく切り欠くようにして形成されるもので、実施形態の場合、上壁部６５から後壁部６７を経て下壁部６６にかけての領域に、配設されている。この圧接用開口部７２は、インフレーター４０の軸方向に沿った方向側（左右方向側）の開口幅寸法Ｈ１（図８参照）を、エアバッグ９０の膨張時に、フラップ部材１１０の先端縁（左縁１１０ｃ）を配置可能な寸法に、設定されており、実施形態の場合、この開口幅寸法Ｈ１は、エアバッグ９０の膨張時のフラップ部材１１０の左右方向側へのずれを考慮して、幅広とされており、具体的には、保持部５６の長さ寸法Ｌ１（図８参照）の１／６程度に設定されている。また、圧接用開口部７２におけるインフレーター４０の周方向側の開口幅寸法Ｈ２（図１７参照）は、フラップ部材１１０を広い範囲で圧接可能に、フラップ部材１１０の前後方向側の幅寸法（後述する結合部位１１１における前側部位１１１ａと後側部位１１１ｂとの間の離隔距離Ｈ３、図２０参照）と略同一として、インフレーター４０の本体部４１の直径寸法Ｄ１（図１４参照）の３倍程度に、設定されている。

また、保持部５６において、挿入用開口５６ｅの周縁を構成する右端５６ｂ側（開口側筒状部５６ｆにおける挿入用開口９４側の端部側）には、リテーナ５５をエアバッグ９０内に収納させてエアバッグ９０を折り畳んだ状態で、エアバッグ９０の挿入用開口９４から突出するように配置される係止爪部７４が、形成されている。係止爪部７４は、保持部５６の周方向に沿った（本体部４１の周方向側で離れた）２箇所に形成されるもので、それぞれ、上側傾斜部６７ａ，下側傾斜部６７ｂの端縁から延びて後方に突出するように形成されている。すなわち、係止爪部７４は、保持部５６において、底壁部５７から離れた後側の領域に、形成されている。各係止爪部７４は、左右方向側（本体部４１の軸方向側）から見た外形形状を、後述する係止用スリット９６の端末９６ａを係止させる元部側を幅広とし先端側にかけて狭幅とされる略三角形状として、かつ、先端側の端縁を湾曲させるように、構成されている（図９参照）。なお、この係止爪部７４は、係止用スリット９６の係止時に、係止用スリット９６に略沿って突出するとともに、幅方向を係止用スリット９６に対して（係止用スリット９６の端末９６ａと先端部９６ｂとを結ぶ方向に対して）略直交させるように配置されて、係止用スリット９６の端末９６ａ側を幅方向に押し広げるようにして、係止用スリット９６を係止している（図２７参照）。また、係止爪部７４，７４は、インフレーター４０（保持部５６）の周方向側において、インフレーター４０における本体部４１の略直径寸法分で離れた２箇所に、形成されている。すなわち、係止爪部７４の相互の離隔距離Ｈ４（図９参照）は、本体部４１の直径寸法Ｄ１（図１４参照）と略同一に、設定されている。

実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、組立作業時において、リテーナ５５を内部に収納させた状態のエアバッグ９０を折り畳んだ後、インフレーター４０の本体部４１を、挿入用開口９４からエアバッグ９０内に挿入させつつ、リテーナ５５の挿入用開口５６ｅを経て保持部５６内に挿入させる構成である。そして、これらの係止爪部７４，７４は、リテーナ５５をバッグ本体９１内に収納させた際に、挿入用開口９４の係止用スリット９６からバッグ本体９１外に突出して、挿入用開口９４の周縁（係止用スリット９６の端末９６ａ）に形成されることにより、エアバッグ９０の挿入用開口９４とリテーナ５５の挿入用開口５６ｅとの位置（挿入中心Ｃ１，Ｃ２相互、図９，２０，２７参照）を略一致させて、インフレーター４０の本体部４１を円滑にリテーナ５５の保持部５６内に挿入させるために、配設されている。

保持部５６の底部としての底壁部５７から突設される取付手段としてのボルト８５は、底壁部５７における左右方向の中央よりも左側となる領域、すなわち、弾性変形支持部５８から左右方向側で離れた領域に、形成されている。詳細に説明すれば、ボルト８５は、底壁部５７における左端（保持部５６の左端５６ａ）から１／４程度となる位置に、配設されている。このボルト８５は、インフレーター４０の本体部４１における軸方向と略直交するように（換言すれば、本体部４１に対して略直交するように）、底壁部５７と略直交して底壁部５７から突設されている。

インフレーター４０から突設されるボルト４５を収納させる収納凹部７８は、保持部５６の右側において、底壁部５７の右端５７ｃ側に配置されるもので、保持部５６から突出するように、底壁部５７から連なって形成される延設部７７の部位に、形成されている。収納凹部７８は、延設部７７を右縁７７ａ側から凹ませるようにして形成される凹部本体７９と、凹部本体７９の周縁を構成する周縁部位８０と、を備えている。延設部７７は、ケース２８の底壁部２９に略沿って配置される平板状として、構成されている。すなわち、延設部７７は、保持部５６の底壁部５７に略沿うように、形成されている。凹部本体７９は、本体部４１の保持部５６内への挿入時に、インフレーター４０の本体部４１から突出するボルト４５を挿入可能に構成されるもので、延設部７７を、右縁７７ａ側に開口７９ａを形成するように、左右方向に沿った溝状に切り欠いて形成されている（図７参照）。この凹部本体７９は、前後方向側の開口幅寸法を、ボルト４５の外径寸法より僅かに大きく設定されて、ボルト４５を挿通可能に構成されている。実施形態の場合、凹部本体７９は、ボルト４５の挿入作業時のガイドとして、開口７９ａ側となる右端側の領域を端縁にかけて拡開させるように、構成されている。インフレーター４０の本体部４１のリテーナ５５の保持部５６への挿入時に、インフレーター４０の本体部４１から突出されるボルト４５を、開口７９ａからこの凹部本体７９内に挿入させれば、ボルト４５は、凹部本体７９の周縁部位８０（上縁８０ｂ，下縁８０ｃ）にガイドされつつ、突出方向を、底壁部５７から突設されているボルト８５の突出方向と略同一として、配置されることとなる（図１４参照）。そして、周縁部位８０の左縁８０ａに当接させるようにして凹部本体７９内に挿入された状態で、ボルト４５は、リテーナ５５に形成されるボルト８５に対する向きや、離隔距離を、ケース２８の底壁部２９に形成される挿通孔２９ａ，２９ｂに、ボルト８５と同時に、円滑に挿入可能とするように、配置されることとなる。

車両搭載時に本体部４１の外周側に圧接される圧接部８２は、底壁部５７と、収納凹部７８を配置させている延設部７７と、の間に配設されている。すなわち、圧接部８２は、底壁部５７から突設されるボルト８５と収納凹部７８との間における収納凹部７８近傍となる位置に、配設されている。この圧接部８２は、ボルト４５の底壁部２９への取付時に、本体部４１における底壁部５７側の外周面に圧接可能に構成されている。具体的には、圧接部８２は、本体部４１の外周面４１ｃにおける車両搭載時の前側の領域に、周方向に沿って連続的に接触可能とされるもので、車両搭載時における左右方向側から見た状態において、本体部４１から突出されるボルト４５から上下に延びるように、形成されている（図９，１２参照）。圧接部８２は、具体的には、本体部４１の外周面４１ｃにおける前側の領域を、周方向に沿った略１／４程度の領域を圧接可能に、左右方向側から見た外形形状を、なだらかに湾曲させて構成されている。また、この圧接部８２は、図１１に示すように、本体部４１（保持部５６）の軸方向に沿った断面形状を、底壁部５７からなだらかに***して突出するように、形成されている。この圧接部８２の底壁部５７からの突出量は、図１１に示すように、インフレーター４０の本体部４１を挿入させる前の状態においての弾性変形支持部５８の底壁部５７からの突出量よりも、小さく設定されており、本体部４１を挿入させた弾性変形支持部５８の変形時に、先端８２ａを、インフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃに接触されることとなる（図１４参照）。詳細に説明すれば、実施形態では、圧接部８２は、先端８２ａの部位の前後方向側の断面形状を、なだらかに湾曲させて形成されるものの、略円弧状とはされていないが（図１２参照）、インフレーター４０の本体部４１を保持部５６の内部に収納させた状態で、ケース２８の底壁部２９から突出させたボルト４５にナット８６を締結させる際に、圧接部８２は、インフレーター４０の本体部４１に押圧されて、先端８２ａの上下の端縁８２ｂ，８２ｂ側を相互に押し広げられるように変形するような態様となる（図１５参照）。そして、ケース２８内に収納させた状態では、圧接部８２は、先端８２ａを、インフレーター４０の周方向の略全域にわたって、連続的に、本体部４１の外周面４１ｃに当接させることとなる。すなわち、圧接部８２は、車両搭載状態においては、本体部４１における底壁部５７側（前方側）の外周面４１ｃに、先端８２ａを周方向に沿った略全域にわたって連続的に当接させるようにして、外周面４１ｃに圧接されることとなる。この圧接部８２は、保持部５６における挿入用開口５６ｅに隣接して形成されており、換言すれば、リテーナ５５をエアバッグ９０の内部に収納させた状態においては、図２８に示すように、エアバッグ９０の挿入用開口９４の近傍であって、エアバッグ９０の外側となる位置に配設されることとなる。この圧接部８２は、車両搭載時には、図１５に示すように、先端８２ａを周方向に沿って連続的に外周面４１ｃに当接させるようにして、本体部４１の外周面４１ｃを圧接する構成であることから、挿入用開口９４側に向かって流れる膨張用ガスの流れを規制することができる。そのため、図３０に示すように、底壁部５７と本体部４１との間の隙間を流れる膨張用ガスＧが、さらに、ボルト４５側に向かって流れることを、圧接部８２によって、的確に防止することができ、インフレーター４０が、本体部４１におけるボルト４５側の領域を、エアバッグ９０外に突出させるようにして、車両に搭載される構成であっても、外部へのガス漏れを抑制して、エアバッグ９０を迅速に膨張させることができる。

実施形態では、インフレーター４０の本体部４１を保持部５６内に収納させた際に、本体部４１の外周面４１ｃは、弾性変形支持部５８の支持部本体５８ｂと、当接部６９の支持突起部７０，７０と、によって、周方向側で離れた３点で支持されることとなり（図２参照）、このような支持が、左右方向側で離れた２箇所で行われることとなる。そのため、インフレーター４０の本体部４１が、保持部５６に対して中心軸Ｃ３を傾斜させるように挿入されることを防止でき、保持部５６と中心軸Ｃ３を一致させた状態で、インフレーター４０の本体部４１を保持させることができる。また、弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒは、弾性変形された状態で、本体部４１を支持することから、本体部４１は、軸方向に沿った移動を規制された状態で、保持部５６に保持されることとなる。そのため、単にインフレーター４０の本体部４１を、挿入用開口５６ｅ側から保持部５６内に収納させ、ボルト４５を、周縁部位８０における左縁８０ａに当接させるまで凹部本体７９に挿入させるだけで、本体部４１の外周面４１ｃを弾性変形支持部５８Ｌ，５８Ｒの支持部本体５８ｂと、当接部６９Ｌ，６９Ｒの支持突起部７０，７０と、によって支持させることができて、インフレーター４０の本体部４１の保持部５６に対する位置決めを図ることができて、本体部４１を保持部５６に仮保持させることができる。また、右端側を開口させるように左右方向に沿った溝状の凹部本体７９に単に挿入させるだけであっても、ボルト４５が、凹部本体７９内を移動することも抑制でき、ボルト４５は、リテーナ５５に形成されるボルト８５に対する向きや、離隔距離を、一定として配置させることができる。そのため、ボルト４５は、ケース２８の底壁部２９に形成される挿通孔２９ａ，２９ｂに、ボルト８５と同時に、円滑に挿入させることができる。

そして、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、インフレーター４０の本体部４１をエアバッグ９０内に配置されるリテーナ５５の保持部５６に収納させて、エアバッグ９０をケース２８内に収納させる際に、リテーナ５５のボルト８５と、インフレーター４０のボルト４５と、を、ケース２８の底壁部２９から突出させて、各ボルト４５，８５にナット８６を締結させることにより、インフレーター４０とエアバッグ９０とを、車体側部材を構成するケース２８の底壁部２９に取り付ける構成である。また、このナット８６の締結時には、インフレーター４０の本体部４１は、ボルト４５の近傍に配置される圧接部８２により支持されることにより、保持部５６に対する中心軸Ｃ３の傾斜（軸直交方向側でのずれ）を規制された状態で、リテーナ５５に保持されて、ケース２８に取り付けられることとなる。

エアバッグ９０は、実施形態の場合、図１８，１９，２２に示すように、バッグ本体９１と、バッグ本体９１内に配置されるフラップ部材１１０と、バッグ本体９１内に配置されるテザー１２０，１２１と、を備えて構成されている。

バッグ本体９１は、膨張完了時の形状を、図４の二点鎖線及び図１８に示すように、略長方形板状として、運転者Ｄの左右の膝Ｋ（ＫＬ，ＫＲ）を保護可能に構成されている。バッグ本体９１は、図１８に示すように、外形形状を略同一として、膨張完了時にステアリングコラム７側に配置される車体側壁部９１ａと、膨張完了時に運転者側に配置される乗員側壁部９１ｂと、の周縁相互を結合させて、袋状とされている。また、バッグ本体９１は、図１８に示すように、膨張完了時にケース２８側に配置される取付部９２と、取付部９２より左右に幅広として膨張完了時に運転者Ｄの左右の膝Ｋ（ＫＬ，ＫＲ）を保護する保護膨張部１０２と、を備えている。

車体側壁部９１ａにおける取付部９２の領域には、図１８，２０に示すように、インフレーター４０の本体部４１を挿入させるための挿入用開口９４と、リテーナ５５のボルト８５を突出させるための取付孔９３と、が、形成されている。挿入用開口９４は、取付部９２の右端側に形成され、取付孔９３は、挿入用開口９４の左側に形成されている。実施形態の場合、取付孔９３は、バッグ本体９１の左右の中央よりやや右側となる位置に、形成されている。

挿入用開口９４は、車体側壁部９１ａの開口形成部位に、線状のスリット９５を複数個形成することにより、インフレーター４０の本体部４１を挿入可能に構成されている。実施形態の場合、挿入用開口９４は、図２０，２１に詳細に示すように、インフレーター４０の本体部４１を挿入させる挿入中心Ｃ２に形成される小径の円形状の貫通孔９４ａと、貫通孔９４ａ周縁において折曲されて貫通孔９４ａの周囲の挿入用開口９４の部位を形成する開口予定部９４ｂと、を有し、この開口予定部９４ｂの領域に、貫通孔９４ａから延びる複数のスリット９５を、配設させる構成とされている。この貫通孔９４ａは、スリット形成時の加工作業を容易とするために配置されるもので、本体部４１の外周面４１ｃを覆う際のシール性を阻害しない程度の大きさに、設定されている。実施形態の場合、この貫通孔９４ａは、内径寸法ｄ１（図２１参照）を、本体部４１の直径寸法Ｄ１の１／５程度に設定されている。スリット９５は、実施形態の場合、２本の係止用スリット９６，９６と、１本の補助スリット９７と、２本の第２補助スリット９８，９８と、を備える構成とされている。なお、実施形態では、スリット９５は、バッグ本体９１を平らに展開した状態での挿入中心Ｃ２を中心とした前後（車両搭載時における上下）で略対称形となるように、形成されている。

係止用スリット９６，９６は、リテーナ５５のエアバッグ９０内への挿入時に、端末９６ａから係止爪部７４を突出させるとともに、端末９６ａから先端部９６ｂに向かう方向を、挿入用開口９４の中心（挿入中心Ｃ２）側に向けて、相互に交差して形成される一対として、配置されている。実施形態の場合、係止用スリット９６，９６は、バッグ本体９１を平らに展開した状態で、貫通孔９４ａ（挿入中心Ｃ２）から右方に延びつつ、端末９６ａ，９６ａ相互を離隔させつつ、前後両側に拡開するように、傾斜して、配置されている。すなわち、この係止用スリット９６，９６は、端末９６ａから先端部９６ｂを超えて、貫通孔９４ａ内に延ばした延長線上で、相互に交差するように、形成されており、この係止用スリット９６，９６の仮想上の交点Ｐは、実施形態の場合、図２１に示すように、貫通孔９４ａの中心（挿入用開口９４における挿入中心Ｃ２）と一致している。また、係止用スリット９６，９６は、開口予定部９４ｂにおいて、貫通孔９４ａよりも右側の領域（車両搭載時において、リテーナ５５の係止爪部７４側となる係止爪側部位９４ｄの領域）で、隣接して配置されている。各係止用スリット９６は、図２７に示すように、リテーナ５５のエアバッグ９０内への挿入時に、それぞれ、端末９６ａから係止爪部７４を突出させることとなる。この係止用スリット９６，９６の端末９６ａ，９６ａ相互の離隔距離Ｈ５（図２１参照）は、係止爪部７４，７４間の離隔距離Ｈ４と同等として、インフレーター４０における本体部４１の直径寸法Ｄ１と略同一に設定されている。また、実施形態の場合、係止用スリット９６，９６の交差角度θ（図２０参照）は、８０°程度に設定されている。この係止用スリット９６，９６は、車両搭載状態においては、貫通孔９４ａから係止爪部７４，７４側に向かうように後方に延びつつ、上下両側に拡開するように、傾斜して配置される。

補助スリット９７は、端末９７ａを係止用スリット９６側から離隔させるように、交点Ｐから延びて、形成されている。詳細に説明すれば、補助スリット９７は、バッグ本体９１を平らに展開した状態では、図２０，２１に示すように、交点Ｐ（貫通孔９４ａ）から左方に延びるように、形成されている。実施形態の場合、補助スリット９７は、左右方向に略沿った直線状として、構成されるもので、交点Ｐからの長さ寸法Ｌ２（図２１参照）を、本体部４１の直径寸法Ｄ１の１／２程度に、設定されている。この補助スリット９７は、車両搭載状態において、ケース２８の底壁部２９側に向かって、貫通孔９４ａから前方に延びるように、前後方向に略沿って配置されることとなる。２本の第２補助スリット９８，９８は、補助スリット９７と略直交しつつ、交点Ｐから両側に延びるように形成されている。実施形態の場合、第２補助スリット９８，９８は、バッグ本体９１を平らに展開した状態では、図２０，２１に示すように、交点Ｐ（貫通孔９４ａ）から前後に延びるように、形成されている。実施形態の場合、各第２補助スリット９８は、前後方向に略沿った直線状として構成されるもので、交点Ｐからの長さ寸法Ｌ３（図２１参照）を、それぞれ、補助スリット９７の長さ寸法Ｌ２と略同一として、本体部４１の直径寸法Ｄ１の１／２程度に設定されている。すなわち、各第２補助スリット９８は、端末９８ａを、各係止用スリット９６の端末９６ａと左右方向側で略一致した位置に、配置される構成である。

実施形態では、補助スリット９７と第２補助スリット９８とは、開口予定部９４ｂにおいて、係止用スリット９６と離れた側となる貫通孔９４ａよりも左側の領域（車両搭載時において、リテーナ５５の底壁部５７側となる底壁側部位９４ｃの領域）に、配置されている。また、実施形態では、これらの補助スリット９７と第２補助スリット９８との端末９７ａ，９８ａは、バッグ本体９１を平らに展開した状態において、インフレーター４０における本体部４１を、本体部４１の軸心Ｃ３を挿入中心Ｃ２と一致させるように投影させた状態の本体部４１の外周面４１ｃ上に、位置することとなり、係止用スリット９６の端末９６ａは、この外周面４１ｃから外方に外れた位置に、配置されることとなる（図２１参照）。

そして、挿入用開口９４における開口予定部９４ｂにおいて、各係止用スリット９６，補助スリット９７，第２補助スリット９８間の部位が、それぞれ、インフレーター４０における本体部４１の挿入時に、本体部４１の外周面４１ｃに接触させるように折り込まれるように配置されて、本体部４１の外周面４１ｃを覆う折曲シール部位１００を、構成することとなる。実施形態の場合、図２０，２１に示すように、５枚の折曲シール部位１００Ａ，１００Ｂ，１００Ｃ，１００Ｄ，１００Ｅが、形成されることとなる。各折曲シール部位１００Ａ，１００Ｂ，１００Ｃ，１００Ｄ，１００Ｅは、外形形状を略三角形状として、それぞれ、本体部４１の挿入時に、隣接する端末９６ａ，９７ａ，９８ａ相互を結んだ直線ＣＬ１，ＣＬ２，ＣＬ３，ＣＬ４，ＣＬ５（図２１の一点鎖線参照）を起点として、折り込まれるような態様となる。詳細に説明すれば、実施形態の場合、補助スリット９７と第２補助スリット９８，９８との間の領域から構成される（換言すれば、開口予定部９４ｂにおける底壁側部位９４ｃから構成されて、車両搭載時に挿入中心Ｃ２よりも前側となる領域から構成される）折曲シール部位１００Ｄ，１００Ｅは、インフレーター４０の挿入前におけるリテーナ５５の挿入時に、リテーナ５５における保持部５６の前側の領域（底壁部５７から上壁部６５，下壁部６６の前側にかけての領域）の外周面に接触されるように、内側に折り込まれることとなる（図２８参照）。そして、係止用スリット９６，９６と第２補助スリット９８，９８との間の領域から構成される（換言すれば、開口予定部９４ｂにおける係止爪側部位９４ｄから構成されて、車両搭載時に挿入中心Ｃ２よりも後側となる領域から構成される）折曲シール部位１００Ａ，１００Ｂ，１００Ｃが、インフレーター４０の挿入時に、本体部４１の外周面４１ｃに接触するように、内側に折り込まれることとなる（図２９参照）。

また、実施形態のエアバッグ９０では、挿入用開口９４の部位から取付孔９３にかけての部位には、補強布１３２が配設されている。補強布１３２は、取付孔９３の周縁と、挿入用開口９４の周縁と、の部位で、車体側壁部９１ａに、縫合糸を用いて縫着されている。挿入用開口９４の周縁において、補強布１３２と車体側壁部９１ａとを結合させている結合部位１３３は、挿入用開口９４の周囲を全周にわたって囲むように略楕円形状に、形成されている。

フラップ部材１１０は、図１８，２０，２２に示すように、バッグ本体９１の内周側において挿入用開口９４を覆うように配置されている。詳細には、フラップ部材１１０は、バッグ本体９１を平らに展開した状態において、挿入用開口９４の配置領域（貫通孔９４ａ及び開口予定部９４ｂ）を、補強布１３２を結合させている結合部位１３３も含めて、全面にわたって覆うとともに、インフレーター４０の挿入方向側の先端縁（左縁１１０ｃ）側を除いた周縁を、挿入用開口９４の周囲で、連続的に形成される結合部位１１１によって、バッグ本体９１の車体側壁部９１ａ側に結合されている。具体的には、フラップ部材１１０は、バッグ本体９１を平らに展開した状態での外形形状を、前縁１１０ａと後縁１１０ｂとを左右方向に略沿わせた直線状とし、先端縁としての左縁１１０ｃを前後方向に略沿わせた直線状とするとともに、右縁１１０ｄ側の外形形状を略半円弧状として、構成されている。フラップ部材１１０は、先端縁である左縁１１０ｃを、バッグ本体９１を平らに展開した状態において、取付孔９３と挿入用開口９４の挿入中心Ｃ２（貫通孔９４ａ）との間の中央よりもやや左方（取付孔９３側）に位置させるように、構成されている。そして、フラップ部材１１０は、外周縁において、前縁１１０ａから右縁１１０ｄを経て後縁１１０ｂにかけてを、連続的に形成される結合部位１１１（縫合部位）によって、車体側壁部９１ａに結合させ、バッグ本体９１を平らに展開した状態での挿入用開口９４の左方を除いた三方を囲むようにして、車体側壁部９１ａに取り付けられている。詳細には、結合部位１１１は、フラップ部材１１０の外周縁に沿って形成されるもので、バッグ本体９１を平らに展開した状態での前側に配置される略直線状の前側部位１１１ａと、後側に配置される略直線状の後側部位１１１ｂと、右側に配置される略半円弧状に湾曲した右側部位１１１ｃと、を、有して、連続的に形成されている。そして、この結合部位１１１は、補強布１３２よりも前後左右で外方となる位置に、配置されており、換言すれば、フラップ部材１１０は、補強布１３２における取付孔９３の周縁を補強している部位を除いた領域を、全面にわたって覆う構成とされている。

また、フラップ部材１１０は、前後方向側の幅寸法（結合部位１１１における前側部位１１１ａと後側部位１１１ｂとの離隔距離Ｈ３、図２０参照）を、インフレーター４０における本体部４１の直径寸法Ｄ１の３倍程度に設定されており、ある程度の余裕をもって、インフレーター４０をフラップ部材１１０と車体側壁部９１ａとの間に挿入可能とし、かつ、リテーナ５５とインフレーター４０とをバッグ本体９１の内部に挿入させた状態では、図２４の二点鎖線に示すように、保持部５６（開口側筒状部５６ｆ）の外周側を、上方から後方を経て下方にかけて覆い可能とされている。また、フラップ部材１１０は、挿入用開口９４の挿入中心Ｃ２から先端縁である左縁１１０ｃまでの離隔距離Ｈ６を、インフレーター４０における本体部４１の直径寸法Ｄ１の２倍程度に設定されており、リテーナ５５とインフレーター４０とをバッグ本体９１の内部に挿入させた状態では、フラップ部材１１０の左縁１１０ｃは、図２３の二点鎖線に示すように、圧接用開口部７２の領域内（詳細には、圧接用開口部７２の左右の中央より左側の領域内）に配置されることとなる。さらに、実施形態では、フラップ部材１１０の周縁を車体側壁部９１ａに結合させている結合部位１１１は、図２０に示すように、先端縁（左縁１１０ｃ）側となる端末１１１ｄ，１１１ｄを、左縁１１０ｃとの間に未結合部位を設けるように、左縁１１０ｃとの間に距離ｄ２を開けて、構成されている。また、この結合部位１１１は、端末１１１ｄを、インフレーター４０の軸方向側において、圧接用開口部７２のエリアに配置させる構成とされている（図２３の二点鎖線参照）。

バッグ本体９１の内部に配置されるテザー１２０，１２１は、上下で離隔されて、それぞれ、左右方向に略沿うように、配置されている。このテザー１２０，１２１は、膨張完了時の厚さを規制するために配設されるもので、下側のテザー１２１は、取付部９２と保護膨張部１０２とを区画するように配置され、上側のテザー１２０は、保護膨張部１０２の領域を上下で区画するように配置されている。各テザー１２０，１２１には、膨張用ガスを流通可能な複数のガス流通孔１２０ａ，１２１ａが、形成されている。

実施形態の場合、エアバッグ９０は、ポリエステル糸やポリアミド糸等の織布からなる基材を、所定形状に裁断し、縫合糸を用いて縫着させて、袋状に形成されている。エアバッグ９０は、実施形態の場合、図２５，２６に示すように、バッグ本体９１の車体側壁部９１ａ及び乗員側壁部９１ｂを構成する３枚の本体用基布１２５，１２６，１２７と、２枚のテザー用基布１２９，１３０と、フラップ部材１１０と、補強布１３２と、から構成されている。

本体用基布１２５，１２６は、それぞれ、車体側壁部９１ａ，乗員側壁部９１ｂにおいて、取付部９２から上側のテザー１２０の配置領域まで（テザー１２０より下方の領域）を、構成している。本体用基布１２７は、テザー１２０より上方の車体側壁部９１ａと乗員側壁部９１ｂとを構成している。各テザー用基布１２９，１３０は、それぞれ、二つ折りされてテザー１２０，１２１を構成している。

次に、実施形態のエアバッグ装置Ｓの車両への搭載について説明する。まず、リテーナ５５を、ボルト８５を取付孔９３から突出させるようにして、挿入用開口９４からエアバッグ９０内に挿入させる。そして、リテーナ５５の保持部５６に形成される係止爪部７４，７４を、それぞれ、挿入用開口９４における係止用スリット９６，９６の端末９６ａ付近から突出させる。このとき、フラップ部材１１０は、リテーナ５５の保持部５６における開口側筒状部５６ｆの外周側を覆うように配置されることとなる（図２８参照）。また、挿入用開口９４において、補助スリット９７と第２補助スリット９８との間の領域（開口予定部９４ｂにおける底壁側部位９４ｃの領域）から構成される折曲シール部位１００Ｄ，１００Ｅは、図２８に示すように、リテーナ５５の保持部５６の前側の領域（底壁部５７から上壁部６５，下壁部６６の前側にかけての領域）の外周面を覆うように、内側に折り込まれることとなり、挿入用開口９４は、開口予定部９４ｂにおける底壁側部位９４ｃの領域（車両搭載時における前側となる底壁部５７側の領域）、すなわち、前半分程度の領域を、開口させるように、配置されることとなる（図２７参照）。そして、各係止爪部７４の係止用スリット９６からの突出状態を維持した状態で、エアバッグ９０を、ケース２８内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、ボルト８５と、挿入用開口９４を構成しているスリット９５の周囲の部位と、は、ラッピング材から露出させておく。

次いで、インフレーター４０の本体部４１を、挿入用開口９４を経て、ガス吐出部４２側からエアバッグ９０内（リテーナ５５の保持部５６内）に挿入させ、本体部４１から突出しているボルト４５を、周縁部位８０の左縁８０ａに当接させるまで、リテーナ５５の収納凹部７８の凹部本体７９内に挿入させる。このとき、挿入用開口９４において、係止用スリット９６と補助スリット９７との間の領域（開口予定部９４ｂにおける係止爪側部位９４ｄの領域）から構成される折曲シール部位１００Ａ，１００Ｂ，１００Ｃは、それぞれ、本体部４１とリテーナ５５の保持部５６との間に介在されつつ、内部に折り込まれて、本体部４１の外周面４１ｃを覆うこととなる（図２９参照）。そして、フラップ部材１１０は、開口側筒状部５６ｆを介して、インフレーター４０の本体部４１の外周側を覆うように配置されることとなる（図２９参照）。また、インフレーター４０の本体部４１は、傾斜部５８ａを撓ませた状態の弾性変形支持部５８の支持部本体５８ｂと、当接部６９の各支持突起部７０，７０の先端７０ａ，７０ａと、によって、軸方向側及び軸直交方向側への移動を規制された状態で、保持部５６に保持（仮保持）されることとなる。その後、底壁部２９からボルト４５，８５を突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ９０とインフレーター４０とをケース２８内に収納させ、底壁部２９から突出しているボルト４５，８５にナット８６を締結させて、エアバッグ９０とインフレーター４０とを車体側部材としてのケース２８の底壁部２９に取り付ける。このとき、リテーナ５５に形成される圧接部８２が、先端８２ａの端縁８２ｂ，８２ｂを変形させつつ、インフレーター４０の本体部４１における前方側（底壁部５７側）の外周面４１ｃに、先端８２ａを周方向に沿った略全域にわたって連続的に当接させるようにして、外周面４１ｃに圧接されることとなる。そして、インフレーター４０の本体部４１は、ボルト４５と、ボルト４５の近傍に配置されるこの圧接部８２と、によって、リテーナ５５に対するずれを規制されて、強固に底壁部２９に取付固定されることとなる。

その後、各係止爪３２ａ，３３ａを係止穴２１ａ，２２ａ周縁に係止させるようにして、エアバッグカバー１６をケース２８に組み付ければ、エアバッグ組付体を組み立てることができる。そして、エアバッグ組付体を、ブラケット４，４を利用して、ボディ１側に取付固定し、ケース２８のコネクタ用開口３５Ｒから露出しているインフレーター４０の本体部４１の接続口部４３に、エアバッグ作動回路から延びるリード線４８を結線させたコネクタ４７を接続させる。その後、インパネ１２やアンダーカバー１３（図１，２参照）を取り付ければ、エアバッグ装置Ｓを車両に搭載させることができる。

エアバッグ装置Ｓの車両への搭載後、リード線４８を経て、本体部４１に作動信号が入力されれば、インフレーター４０の本体部４１におけるガス吐出口４２ａから膨張用ガスが吐出されて、膨張用ガスは、リテーナ５５の保持部５６に形成されるガス流出用開口５６ｃ，５６ｄを経て、エアバッグ９０内に流入することとなる。そして、エアバッグ９０は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー１６の扉部１８を押圧し、扉部１８が、周囲の破断予定部１９を破断させつつ、ヒンジ部２０を回転中心として上下に開くこととなる。そして、バッグ本体９１が、ケース２８の突出用開口２８ａから車両後方側に向かって突出し、図１，４の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。

そして、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、エアバッグ９０が、バッグ本体９１の内周側において、インフレーター４０の本体部４１を挿入させるための挿入用開口９４の配置領域を全面にわたって覆うフラップ部材１１０を、備える構成とされており、このフラップ部材１１０は、インフレーター４０の挿入方向の先端側となる先端縁（左縁１１０ｃ）側を除いた周縁を、連続的に形成される結合部位１１１によって、バッグ本体９１側に結合される構成とされている。すなわち、フラップ部材１１０は、左縁１１０ｃのみを自由端としたポケット状として、構成されている。そのため、バッグ本体９１の膨張時に、保持部５６（開口側筒状部５６ｆ）を覆うように配置されているフラップ部材１１０とバッグ本体９１との間に膨張用ガスＧが流入し難く、バッグ本体９１の内部に流入した膨張用ガスＧによって、浮き上がり等が生じることを抑制できる。実施形態では、インフレーター４０のガス吐出部４２から吐出される膨張用ガスＧは、保持部５６においてガス吐出部４２の後方を開口させるように形成されるガス流出用開口５６ｃ，５６ｄを経て、エアバッグ９０内に流出することとなり、保持部５６と本体部４１との間の隙間をフラップ部材１１０に向かうように流れることは、抑制される。そのため、フラップ部材１１０を、膨張用ガスＧの圧力（バッグ本体９１の内圧）によって、円滑に、リテーナ５５の圧接用開口部７２を経て、インフレーター４０における本体部４１の外周面４１ｃ側に圧接させることができる。詳細に説明すれば、このフラップ部材１１０は、エアバッグ９０の膨張時に、内部に充満する膨張用ガスＧの押圧力を受けて、圧接用開口部７２内に押し込まれるようにして、インフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃに圧接されることとなる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、フラップ部材１１０の左縁１１０ｃが、圧接用開口部７２の領域内に配設される構成であり、換言すれば、左縁１１０ｃは、圧接用開口部７２を経てインフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃ側に圧接可能な位置に、配置される構成である。そのため、フラップ部材１１０の左縁１１０ｃを、強くインフレーター４０の本体部４１の外周面４１ｃに圧接させることができて、フラップ部材１１０とインフレーター４０の本体部４１との間からガスが漏れることを規制でき、挿入用開口９４からのガス漏れを、防止することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、シート状のフラップ部材１１０の左縁１１０ｃ側を除いた周縁を、挿入用開口９４の周囲の部位で、バッグ本体９１に結合させるだけでよいことから、従来のエアバッグ装置と比較して、構成を簡便とすることができ、製造工数及びコストの低減を図ることができる。

したがって、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、簡便な構成として、挿入用開口９４のシール性を良好とすることができる。

また、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、車体側壁部９１ａに線状のスリット９５を形成することにより、挿入用開口９４を、を構成していることから、インフレーター４０の挿入時に、スリット９５の周囲の部位が、インフレーター４０における本体部４１の外周面４１ｃを覆うような態様となって、一層シール性を向上させることができる。また、挿入用開口９４をスリット９５から構成しても、リテーナ５５が、挿入用開口９４の周縁に係止される係止爪部７４を有していることから、この係止爪部７４によって、バッグ本体９１の挿入用開口９４と、リテーナ５５の保持部５６と、の位置合わせをさせることができ、換言すれば、インフレーター４０の本体部４１を挿入させるための挿入中心Ｃ１，Ｃ２を略一致させることができる。そのため、インフレーター４０の保持部５６への挿入作業も容易である。また、リテーナ５５の係止爪部７４によって、挿入用開口９４を係止させることにより、フラップ部材１１０の保持部５６（開口側筒状部５６ｆ）に対する配置位置も安定させることができ、エアバッグ９０の膨張時に、フラップ部材１１０の左縁１１０ｃを、確実に、圧接用開口部７２の領域内に配置させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、挿入用開口を、バッグ本体を構成する基材を円形や四角形状等に切り欠くようにして、構成してもよい。

具体的には、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、挿入用開口９４が、エアバッグ９０を構成する基材（車体側壁部９１ａ）に、略直線状のスリット９５を複数個形成して、構成され、スリット９５間の部位が、インフレーター４０における本体部４１の外周面４１ｃを覆う折曲シール部位１００として、インフレーター４０の挿入時に、本体部４１の外周面４１ｃに接触させるように折り込まれるように配置されることから、インフレーター４０の本体部４１と挿入用開口９４との間に隙間が生じ難く、折曲シール部位１００によって、インフレーター４０から吐出された膨張用ガスがこの隙間から漏れることを抑制でき、良好なシール性を確保することができる。

さらに、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、フラップ部材１１０を車体側壁部９１ａ側に結合させている結合部位１１１の端末１１１ｄ，１１１ｄが、フラップ部材１１０の先端縁としての左縁１１０ｃとの間に未結合部位を設けるように、左縁１１０ｃと距離ｄ２を開け、かつ、インフレーター４０の軸方向に沿って、圧接用開口部７２のエリアに配置されるように、構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、フラップ部材１１０が、圧接用開口部７２のエリアまで、周囲を、結合部位１１１によって、バッグ本体９１における挿入用開口９４の周囲に結合されることから、インフレーター４０をエアバッグ９０（バッグ本体９１）内に挿入させる際に、フラップ部材１１０における左縁１１０ｃ側が、突っ張ることなく撓んで、インフレーター４０の挿入作業が容易となり、また、結合部位を、先端縁まで配置させる場合と比較して、左縁１１０ｃのバッグ本体９１に対する動きの自由度を増大させることができて、バッグ本体９１の膨張時に、内部に充満する膨張用ガスによって、フラップ部材１１０における左縁１１０ｃ側の部位を、一層強く、本体部４１の外周面４１ｃに圧接させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、結合部位を、先端縁まで配置させる構成としてもよい。

実施形態では、膝保護用のエアバッグ装置Ｓを例に採り説明したが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、膝保護用エアバッグ装置に限られるものではなく、例えば、シートの背もたれ部内に搭載されるサイドエアバッグ装置にも、本発明は適用可能である。

また、実施形態のエアバッグ装置Ｓでは、リテーナ５５とインフレーター４０とが、ともにボルト４５，８５を１本ずつ配置させて、インフレーター４０が、ボルト４５をエアバッグ９０外に配設させるように構成されるとともに、リテーナ５５も、インフレーター４０のボルト４５を収納させる収納凹部７８を構成する延設部７７の部位を、挿入用開口９４をからエアバッグ９０外に突出させる構成とされている。しかしながら、インフレーターにボルトを配設させず、リテーナに少なくとも２本のボルトを突設させる構成のエアバッグ装置にも、本発明は、適用可能である。

１…ボディ、２８…ケース、２９…底壁部（車体側部材）、４０…インフレーター、４１…本体部、４１ｃ…外周面、４２…ガス吐出部、５５…リテーナ、５６…保持部、５６ｅ…挿入用開口、５６ｆ…開口側筒状部、５７…底壁部（底面）、７２…圧接側開口部（開口部）、８５…ボルト（取付手段）、７４…係止爪部、９０…エアバッグ、９１…バッグ本体、９４…挿入用開口、９５…スリット、１１０…フラップ部材、１１０ｃ…左縁（先端縁）、１１１…結合部位、１１１ｄ…端末、Ｓ…膝保護用エアバッグ装置。

Claims (3)

1. 可撓性を有した基材から構成される袋状のエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、該インフレーターと前記エアバッグとを車体側部材側に取り付けるリテーナと、を備えて、
   該リテーナが、前記インフレーターを保持可能な筒状の保持部と、該保持部の底部から突設される取付手段と、を備える構成とされて、該取付手段を前記エアバッグから突出させるようにして前記エアバッグ内に配置され、前記保持部に前記インフレーターを保持させた状態で、前記取付手段を前記車体側部材に取り付けることにより、前記インフレーターと前記エアバッグとを前記車体側部材に取り付ける構成とされ、
   前記インフレーターが、前記エアバッグ内に挿入させた状態の前記リテーナの前記保持部に、前記エアバッグに形成される挿入用開口を経て、挿入されることにより、一端側を前記エアバッグ外に配置させるようにして、前記保持部に保持される構成のエアバッグ装置であって、
   前記エアバッグが、バッグ本体と、該バッグ本体の内周側において前記挿入用開口を覆う領域に配置されるフラップ部材と、を備える構成とされ、
   該フラップ部材が、前記バッグ本体を平らに展開した状態において、前記挿入用開口の配置領域を全面にわたって覆うとともに、前記インフレーターの挿入方向側の先端側となる先端縁側を除いた周縁を、前記挿入用開口の周囲で、連続的に形成される結合部位によって、前記バッグ本体側に結合されて、前記リテーナを前記バッグ本体の内部に挿入させた状態で、前記保持部を覆うように配置される構成とされ、
   前記保持部が、
   前記エアバッグの挿入用開口側に配設されて、前記保持部に挿入した前記インフレーターを保持可能に、前記底部から延びて前記インフレーターの外周を覆う開口側筒状部と、
   前記開口側筒状部における前記底部から離れた側に配設されて、前記保持部に挿入させた前記インフレーターの外周面を露出可能な開口部と、
   を備え、
   前記フラップ部が、前記先端縁を、前記リテーナの前記開口部を経て、前記インフレーターの外周面に圧接可能な位置に、配置させていることを特徴とするエアバッグ装置。
2. 前記バッグ本体の前記挿入用開口が、前記基材の開口形成部位に、線状のスリットを形成することにより、前記インフレーターを挿入可能に構成され、
   前記リテーナが、前記開口側筒状部における前記挿入用開口側の端部に、前記バッグ本体内に収納させた際に、前記挿入用開口の前記スリットから前記バッグ本体外に突出して、前記挿入用開口の周縁に係止可能な係止爪部を、備える構成を備えていることを特徴とする請求項１に記載のエアバッグ装置。
3. 前記結合部位の前記先端縁側の端末が、
   前記先端縁との間に未結合部位を設けるように、前記先端縁と距離を開け、
   かつ、前記インフレーターの軸方向側において、前記開口部のエリアに配置されるように、
   配設されていることを特徴とする請求項１または２に記載のエアバッグ装置。

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