JP2018125362A - 原子発振器、電子機器および移動体 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コスト化を図りつつ、発振特性を向上させることができる原子発振器を提供すること、また、かかる原子発振器を備える電子機器および移動体を提供すること。【解決手段】アルカリ金属が封入されている原子セルと、前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、前記光源部と前記原子セルとの間に配置されている集光レンズと、を備え、前記集光レンズは、前記光を前記原子セルに向けて前記集光レンズの光軸に対して傾斜した方向に出射することを特徴とする原子発振器。【選択図】図5
Description
本発明は、原子発振器、電子機器および移動体に関するものである。
高い長期周波数安定度を有する発振器として、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属原子のエネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような原子発振器として、特許文献1には、垂直共振器面発光レーザー(光源部)、1/4波長板、気相セル(原子セル)および検出器(受光部)を含む原子時計が開示されている。ここで、1/4波長板、気相セルおよび検出器は、それぞれ、垂直共振器面発光レーザーの放射面に対して傾斜して配置されている。これにより、垂直共振器面発光レーザーからの光が4分の1波プレート、気相セルおよび検出器で反射して垂直共振器面発光レーザーに戻ることを低減している。
しかし、特許文献1に記載の原子時計は、1/4波長板、気相セルおよび検出器の前述したような傾斜した組み立てが難しく、その結果、高コスト化を招くという問題がある。
本発明の目的は、低コスト化を図りつつ、発振特性を向上させることができる原子発振器を提供すること、また、かかる原子発振器を備える電子機器および移動体を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の原子発振器は、アルカリ金属が封入されている原子セルと、
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記レンズは、前記光を前記原子セルに向けて前記レンズの光軸に対して傾斜した方向に出射することを特徴とする。
本発明の原子発振器は、アルカリ金属が封入されている原子セルと、
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記レンズは、前記光を前記原子セルに向けて前記レンズの光軸に対して傾斜した方向に出射することを特徴とする。
このような原子発振器によれば、光源部と原子セルとの間に配置されているレンズが光源部からの光を原子セルに向けてレンズの光軸に対して傾斜した方向に出射するため、当該光が原子セル、受光部等で反射しても、その反射光を光源部(特に、光を出射する部分)とは異なる位置(レンズの光軸に対して垂直な方向にずれた位置)に集光させることができる。そのため、当該反射光が戻り光として光源部に入射する量を少なくし、戻り光による光源部の出力変動(波長変動、強度変動)を低減することができる。その結果、原子発振器の周波数特性を向上させることができる。
本発明の原子発振器は、アルカリ金属が封入されている原子セルと、
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記光源部の前記光を出射する部分は、前記レンズの光軸およびその延長線に対して離間していることを特徴とする。
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記光源部の前記光を出射する部分は、前記レンズの光軸およびその延長線に対して離間していることを特徴とする。
このような原子発振器によれば、光源部の光を出射する部分がレンズの光軸およびその延長線に対して離間しているため、当該光が原子セル、受光部等で反射しても、その反射光を光源部(特に、光を出射する部分)とは異なる位置(レンズの光軸に対して垂直な方向にずれた位置)に集光させることができる。そのため、当該反射光が戻り光として光源部に入射する量を少なくし、戻り光による光源部の出力変動(波長変動、強度変動)を低減することができる。その結果、原子発振器の周波数特性を向上させることができる。
本発明の原子発振器では、前記光源部と前記レンズとの間に配置されている減光フィルターを備えることが好ましい。
これにより、アルカリ金属に照射される光の強度を容易に最適化することができる。また、戻り光も減光フィルターを通過することとなるため、光源部への戻り光の量をより低減することができる。
本発明の原子発振器では、前記減光フィルターは、前記光を吸収する物質を含有していることが好ましい。
これにより、光源部からの光が減光フィルターで反射して戻り光となるのを低減することができる。
本発明の原子発振器では、前記減光フィルター上に配置され、前記光の反射を低減する反射低減層を備えることが好ましい。
これにより、光源部からの光が減光フィルター表面で反射して戻り光となるのを低減することができる。
本発明の原子発振器では、前記光源部の前記光を出射する部分と、前記レンズの焦点を通り前記光軸またはその延長線を法線とする面との間の距離は、前記レンズの焦点深度以下であることが好ましい。
これにより、光源部とレンズとの間の距離を比較的小さくしつつ、光源部への戻り光の量を効果的に低減することができる。
本発明の原子発振器では、前記光源部を収納しているパッケージを備え、
前記パッケージは、前記光が透過する窓部を有することが好ましい。
前記パッケージは、前記光が透過する窓部を有することが好ましい。
これにより、光源部を原子セルとは独立して温度調節することができ、その結果、光源部の温度変動による出力変動を容易に低減することができる。
本発明の原子発振器では、前記窓部の前記光源部側の面上に配置され、前記光の反射を低減する反射低減層を備えることが好ましい。
これにより、光源部からの光が窓部で反射して戻り光となるのを低減することができる。ここで、光源部を収納しているパッケージの窓部は光源部に極めて近い位置にあるため、光源部からの光は当該窓部で反射すると戻り光として光源部に入射しやすい。そのため、当該窓部での反射光を低減することは、光源部への戻り光の量を低減する上で特に効果的である。
本発明の原子発振器では、前記窓部は、減光フィルターであることが好ましい。
これにより、光源部からの光が減光フィルターで反射して戻り光となるのを低減することができる。また、パッケージの外部に設ける減光フィルターを省略することができ、原子発振器の構成を簡素化することもできる。
これにより、光源部からの光が減光フィルターで反射して戻り光となるのを低減することができる。また、パッケージの外部に設ける減光フィルターを省略することができ、原子発振器の構成を簡素化することもできる。
本発明の電子機器は、本発明の原子発振器を備えることを特徴とする。
このような電子機器によれば、原子発振器の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
このような電子機器によれば、原子発振器の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
本発明の移動体は、本発明の原子発振器を備えることを特徴とする。
このような移動体によれば、原子発振器の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
このような移動体によれば、原子発振器の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
以下、本発明の原子発振器、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.原子発振器
まず、本発明の原子発振器について説明する。
まず、本発明の原子発振器について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る原子発振器を示す概略図である。
図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに当該2つの共鳴光がアルカリ金属原子に吸収されずに透過する現象が生じる量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、電磁誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象とも言う。
図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに当該2つの共鳴光がアルカリ金属原子に吸収されずに透過する現象が生じる量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、電磁誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象とも言う。
この原子発振器1は、図1に示すように、発光素子モジュール10と、原子セルユニット20と、発光素子モジュール10と原子セルユニット20との間に設けられている光学系ユニット30と、発光素子モジュール10および原子セルユニット20の作動を制御する制御ユニット50と、を備える。以下、まず、原子発振器1の概略について説明する。
発光素子モジュール10は、ペルチェ素子2と、発光素子3(光源部)と、温度センサー4と、を備える。発光素子3は、周波数の異なる2種の光を含んでいる直線偏光の光LLを出射する。また、温度センサー4は、発光素子3の温度を検出する。また、ペルチェ素子2は、発光素子3の温度を調節(発光素子3を加温または冷却)する。
光学系ユニット30は、減光フィルター301と、集光レンズ302(レンズ)と、1/4波長板303と、を備える。減光フィルター301は、前述した発光素子3からの光LLの強度を減少させる。また、集光レンズ302は、光LLの放射角度を調整する(例えば光LLを平行光に近づける)。また、1/4波長板303は、光LLに含まれる周波数の異なる2種の光を直線偏光から円偏光(右円偏光または左円偏光)に変換する。
原子セルユニット20は、原子セル201と、受光素子202(受光部)と、ヒーター203と、温度センサー204と、コイル205と、を備える。
原子セル201は、光透過性を有し、原子セル201内には、アルカリ金属が封入されている。アルカリ金属原子は、互いに異なる2つの基底準位と励起準位とからなる3準位系のエネルギー準位を有する。原子セル201には、発光素子3からの光LLが減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303を介して入射する。そして、受光素子202は、原子セル201を通過した光LLを受光し、その受光強度に応じた信号を出力する。
ヒーター203は、原子セル201内のアルカリ金属を加熱し、そのアルカリ金属の少なくとも一部を所望濃度のガス状態とする。また、温度センサー204は、原子セル201の温度を検出する。コイル205は、原子セル201内のアルカリ金属に所定方向の磁場を印加し、そのアルカリ金属原子のエネルギー準位をゼーマン***させる。このようにアルカリ金属原子がゼーマン***した状態において、前述したような円偏光の共鳴光対がアルカリ金属原子に照射されると、アルカリ金属原子がゼーマン***した複数の準位のうち、所望のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数を他のエネルギー準位のアルカリ金属原子の数に対して相対的に多くすることができる。そのため、所望のEIT現象を発現する原子数が増大し、所望のEIT信号(EIT現象に伴って受光素子202の出力信号に現れる信号)が大きくなり、その結果、原子発振器1の発振特性(特に短期周波数安定度)を向上させることができる。
制御ユニット50は、温度制御部501と、光源制御部502と、磁場制御部503と、温度制御部504と、を備える。温度制御部501は、温度センサー204の検出結果に基づいて、原子セル201内が所望の温度となるように、ヒーター203への通電を制御する。また、磁場制御部503は、コイル205が発生する磁場が一定となるように、コイル205への通電を制御する。また、温度制御部504は、温度センサー4の検出結果に基づいて、発光素子3の温度が所望の温度(温度領域内)となるように、ペルチェ素子2への通電を制御する。
光源制御部502は、受光素子202の検出結果に基づいて、EIT現象が生じるように、発光素子3からの光LLに含まれる2種の光の周波数を制御する。ここで、これら2種の光が原子セル201内のアルカリ金属原子の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数差の共鳴光対となったとき、EIT現象が生じる。また、光源制御部502は、前述した2種の光の周波数の制御に同期して安定化するように発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器(図示せず)を備えており、この電圧制御型水晶発振器(VCXO)の出力信号を原子発振器1の出力信号(クロック信号)として出力する。
以上、原子発振器1の概略について説明した。以下、図2および図3に基づいて、原子発振器1のより具体的な構成について説明する。
図2は、図1に示す原子発振器の断面図である。図3は、図2に示す原子発振器が備える発光素子モジュールの断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」ともいう。
図2に示すように、原子発振器1は、発光素子モジュール10と、原子セルユニット20と、発光素子モジュール10を保持している光学系ユニット30と、原子セルユニット20および光学系ユニット30を一括して支持している支持部材40と、発光素子モジュール10および原子セルユニット20に電気的に接続されている制御ユニット50と、これらを収納しているパッケージ60と、を備えている。
(発光素子モジュール)
発光素子モジュール10は、図3に示すように、ペルチェ素子2と、発光素子3と、温度センサー4と、これらを収納しているパッケージ5と、を有している。
発光素子モジュール10は、図3に示すように、ペルチェ素子2と、発光素子3と、温度センサー4と、これらを収納しているパッケージ5と、を有している。
パッケージ5は、凹部511を有するベース51と、凹部511の開口を塞ぐリッド52とを有し、ベース51とリッド52との間に、ペルチェ素子2、発光素子3および温度センサー4を収納している気密空間である内部空間Sを形成している。このようなパッケージ5内は、減圧(真空)状態であることが好ましい。これにより、パッケージ5の外部の温度変化がパッケージ5内の発光素子3や温度センサー4等に与える影響を低減し、パッケージ5内の発光素子3や温度センサー4等の温度変動を低減することができる。なお、パッケージ5内は、減圧状態でなくともよく、また、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入されていてもよい。
ベース51の構成材料としては、特に限定されないが、絶縁性を有し、かつ、内部空間Sを気密空間とするのに適した材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の酸化物系セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化物系セラミックス、炭化珪素等の炭化物系セラミックス等の各種セラミックスなどを用いることができる。
また、ベース51は、凹部511の底面よりも開口側であって、凹部511の底面の外周を囲むように形成されている段差部512を有している。この段差部512上には、図示しない複数の接続電極(内部電極)が設けられている。これらの接続電極は、ベース51を貫通する図示しない貫通電極を介して、ベース51の外表面(図中下側の面)に設けられた複数の外部実装電極61に電気的に接続されている。
外部実装電極61等の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料が挙げられる。
また、ベース51のリッド52側の端面には、枠状(環状)のシールリング53が設けられている。このシールリング53は、例えば、コバール等の金属材料で構成され、ろう付け等によりベース51に対して接合されている。このようなシールリング53を介してベース51にシーム溶接等によりリッド52が接合されている。
リッド52は、板状をなす本体部54と、本体部54上に設けられている筒状の突出部55と、突出部55の内側に形成された孔551(開口)を塞いでいる窓部56と、を有している。
本体部54の構成材料としては、特に限定されないが、金属材料が好適に用いられ、その中でも、ベース51の構成材料と線膨張係数が近似する金属材料を用いることが好ましい。したがって、例えば、ベース51をセラミックス基板とした場合には、本体部54の構成材料としてはコバール等の合金を用いることが好ましい。
突出部55は、その内側に、前述した本体部54の孔541に連通している孔551と、孔551に対して孔541とは反対側で孔551に連通している孔552と、を有している。これら孔551、552は、それぞれ、発光素子3からの光LLの少なくとも一部を通過させる。ここで、孔552の幅(径)は、孔551の幅(径)よりも大きくなっており、これにより、孔551と孔552との間には、段差部553が形成されている。この段差部553は、前述した本体部54の板面に対して平行となっている。なお、段差部553は、本体部54の板面に対して傾斜していてもよい。
このような突出部55の構成材料としては、本体部54の構成材料と異なっていてもよいが、本体部54の構成材料と線膨張係数が近似する金属材料を用いることが好ましく、本体部54の構成材料と同じであることがより好ましい。また、突出部55は、本体部54とは別体で形成され、公知の接合方法により接合してもよいし、金型等を用いて本体部54と一体で(一括して)形成してもよい。
孔552の内部には、光LLを透過する板状の部材で構成された窓部56が設置されている。この窓部56は、前述した段差部553上に公知の接合法により接合され、前述した突出部55の孔551の孔552側の開口を塞いでいる。ここで、前述したように段差部553が本体部54の板面540に対して平行となっているため、それに伴って、窓部56の発光素子3側の面56aも、本体部54の板面540に対して平行となっている。なお、窓部56は、前述した段差部553と同様、本体部54の板面に対して傾斜していてもよい。
このような窓部56の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス材料等が挙げられる。なお、窓部56は、レンズ、減光フィルター等の光学部品であってもよいし、窓部56の面56a上には、例えば、後述する反射低減層57のような機能性膜を有していてもよい。
このようなリッド52は、本体部54および突出部55が後述する光学系ユニット30のホルダー304に係合して位置決めされる。より具体的には、本体部54の板面がホルダー304の位置決め面306に当接することで、光LLの出射方向におけるリッド52の位置決めがなされる。また、突出部55がホルダー304の貫通孔305内に挿入された状態で突出部55の側面が貫通孔305の内壁面に当接することで、光LLの出射方向におけるリッド52の位置決めがなされる。また、このように本体部54および突出部55がホルダー304に接触することで、金属材料で構成されている放熱性のホルダー304からの放熱によりリッド52の温度を低減することもできる。
このようなパッケージ5のベース51の凹部511の底面には、ペルチェ素子2が配置されている。ペルチェ素子2は、ベース51に対して例えば接着剤により固定されている。ペルチェ素子2は、1対の基板21、22と、これらの基板21、22間に設けられている接合体23と、を有する。基板21、22は、それぞれ、金属材料、セラミックス材料等の熱伝導性に優れる材料で構成されている。また、基板21、22の表面には、それぞれ、必要に応じて、絶縁膜が設けられている。
このようなペルチェ素子2は、図示しない配線(ボンディングワイヤーを含む配線)を介して、パッケージ5に設けられた接続電極(図示せず)に電気的に接続されている。そして、ペルチェ素子2は、通電により接合体23で生じるペルチェ効果により、基板21、22のうち、一方の基板が発熱側、他方が吸熱側となる。ここで、ペルチェ素子2は、供給される電流の向きにより、基板21が発熱側となるとともに基板22が吸熱側となる状態と、基板21が吸熱側となるとともに基板22が発熱側となる状態と、を切り換えることができる。そのため、環境温度の範囲が広くても、発光素子3等を所望の温度(目標温度)に温度調節することができる。これにより、温度変化による悪影響(例えば光LLの波長変動)をより低減することができる。ここで、発光素子3の目標温度は、発光素子3の特性に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、30℃以上40℃以下程度である。
発光素子3は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザーである。半導体レーザーは、直流バイアス電流に高周波信号を重畳して(変調を掛けて)用いることにより、波長の異なる2種の光を出射させることができる。本実施形態では、発光素子3から出射する光は、直線偏光している。この発光素子3は、図示しない配線(ボンディングワイヤーを含む配線)を介して、パッケージ5に設けられた接続電極(図示せず)に電気的に接続されている。
温度センサー4は、例えば、サーミスタ、熱電対等の温度検出素子である。この温度センサー4は、図示しない配線(ボンディングワイヤーを含む配線)を介して、パッケージ5に設けられた接続電極(図示せず)に電気的に接続されている。
(光学系ユニット)
図2に示すように、光学系ユニット30は、減光フィルター301と、集光レンズ302と、1/4波長板303と、これらを保持しているホルダー304と、を有している。ここで、ホルダー304は、両端が開口した貫通孔305を有する。この貫通孔305は、光LLの通過領域であり、貫通孔305内には、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303がこの順で配置されている。図3に示すように、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303は、それぞれ、図示しない接着剤等によりホルダー304に対して固定されている。このようなホルダー304は、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されており、放熱性を有する。
図2に示すように、光学系ユニット30は、減光フィルター301と、集光レンズ302と、1/4波長板303と、これらを保持しているホルダー304と、を有している。ここで、ホルダー304は、両端が開口した貫通孔305を有する。この貫通孔305は、光LLの通過領域であり、貫通孔305内には、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303がこの順で配置されている。図3に示すように、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303は、それぞれ、図示しない接着剤等によりホルダー304に対して固定されている。このようなホルダー304は、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されており、放熱性を有する。
前述したように、減光フィルター301は、前述した発光素子3からの光LLの強度を減少させる機能を有する。減光フィルター301としては、特に限定されず、吸収型または反射型のいずれであってもよい。また、集光レンズ302は、光LLの放射角度を調整する(例えば光LLを平行光に近づける)機能を有する。これにより、原子セル201内において光LLのパワー密度が進行方向で変化するのを低減し、EIT信号の線幅の拡がりを抑制することができる。その結果、原子発振器1の発振特性(特に短期周波数安定度)を向上させることができる。また、1/4波長板303は、光LLに含まれる周波数の異なる2種の光を直線偏光から円偏光(右円偏光または左円偏光)に変換する機能を有する。これにより、コイル205からの磁界との相互作用により、EIT信号の強度を大きくすることができる。
なお、光学系ユニット30は、発光素子3からの光LLの強度等によっては、減光フィルター301を省略することができる。また、光学系ユニット30は、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303以外の光学素子を有していてもよい。また、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303の配置順は、図示の順に限定されず、任意である。また、減光フィルター301、集光レンズ302および1/4波長板303のそれぞれの姿勢は、任意である。
(原子セルユニット)
原子セルユニット20は、原子セル201と、受光素子202と、ヒーター203と、温度センサー204と、コイル205と、これらを収納しているパッケージ206と、を備える。
原子セルユニット20は、原子セル201と、受光素子202と、ヒーター203と、温度センサー204と、コイル205と、これらを収納しているパッケージ206と、を備える。
原子セル201内には、ガス状のルビジウム、セシウム、ナトリウム等のアルカリ金属が封入されている。また、原子セル201内には、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
原子セル201は、柱状の貫通孔を有する胴体部2011と、その胴体部2011の貫通孔の両開口を封鎖して気密封止された内部空間を形成している1対の窓部2012、2013と、を有する。ここで、一方の窓部2012には、原子セル201内へ入射する光LLが透過し、他方の窓部2013には、原子セル201内から出射した光LLが透過する。したがって、各窓部2012、2013の構成材料としては、光LLに対する透過性を有していればよく、特に限定されないが、例えば、ガラス材料、水晶等が挙げられる。一方、胴体部2011の構成材料としては、特に限定されず、金属材料、ガラス材料、シリコン材料、水晶等が挙げられるが、加工性や各窓部2012、2013との接合の観点から、ガラス材料、シリコン材料を用いるのが好ましい。また、胴体部2011と各窓部2012、2013との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、直接接合法、陽極接合法、溶融接合法、オプティカル接合法等を用いることができる。
受光素子202は、原子セル201に対して発光素子モジュール10とは反対側に配置されている。この受光素子202としては、原子セル201内を透過した光LL(共鳴光対)の強度を検出し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、フォトダイオード等の光検出器(受光素子)が挙げられる。
ヒーター203は、図示しないが、例えば、前述した原子セル201上に配置されているか、または、金属等の熱伝導性部材を介して原子セル201に接続されている。このヒーター203としては、原子セル201(より具体的には原子セル201内のアルカリ金属)を加熱することができれば、特に限定されないが、例えば、発熱抵抗体を有する各種ヒーター、ペルチェ素子等が挙げられる。
温度センサー204は、図示しないが、例えば、原子セル201またはヒーター203の近傍に配置されている。この温度センサー204としては、原子セル201またはヒーター203の温度を検出することができれば、特に限定されないが、例えば、サーミスタ、熱電対等の公知の各種温度センサーが挙げられる。
コイル205は、図示しないが、例えば、原子セル201の外周に沿って巻回して設けられているソレノイド型のコイル、または、原子セル201を介して対向するヘルムホルツ型の1対のコイルである。このコイル205は、原子セル201内に光LLの光軸に沿った方向(平行な方向)の磁場を発生させる。これにより、原子セル201内のアルカリ金属原子の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップをゼーマン***により拡げて、分解能を向上させ、EIT信号の線幅を小さくすることができる。なお、コイル205が発生する磁場は、直流磁場または交流磁場のいずれかの磁場であってもよいし、直流磁場と交流磁場とを重畳させた磁場であってもよい。
パッケージ206は、図示しないが、例えば、板状の基体と、この基体に接合されている蓋体と、を備え、これらの間に、前述した原子セル201、受光素子202、ヒーター203、温度センサー204およびコイル205を収納している気密空間を形成している。ここで、基体は、原子セル201、受光素子202、ヒーター203、温度センサー204およびコイル205を直接的または間接的に支持している。また、基体の外表面には、受光素子202、ヒーター203、温度センサー204およびコイル205に電気的に接続されている複数の端子が設けられている。一方、蓋体は、一端部が開口した有底筒状をなし、その開口が基体により塞がれている。また、蓋体の他端部(底部)には、光LLに対する透過性を有する窓部207が設けられている。
このようなパッケージ206の基体および蓋体の窓部207以外の部分の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス、金属等が挙げられる。また、窓部207の構成材料としては、例えば、ガラス材料等が挙げられる。また、基体と蓋体との接合方法としては、特に限定されないが、例えば、ろう接、シーム溶接、エネルギー線溶接(レーザー溶接、電子線溶接等)等が挙げられる。また、パッケージ206内は、大気圧よりも減圧されていることが好ましい。これにより、簡単かつ高精度に、原子セル201の温度を制御することができる。その結果、原子発振器1の特性を向上させることができる。なお、窓部207は、パッケージ206内を気密空間としない場合、省略してもよい。
(支持部材)
支持部材40は、板状をなし、その一方の面上には、前述した原子セルユニット20および光学系ユニット30が載置されている。この支持部材40は、光学系ユニット30のホルダー304の下面の形状に沿った設置面401を有する。この設置面401には、段差部402が形成されている。この段差部402は、ホルダー304の下面の段差部と係合して、ホルダー304が原子セルユニット20側(図2中右側)へ移動するのを規制する。同様に、支持部材40は、原子セルユニット20のパッケージ206の下面の形状に沿った設置面403を有する。この設置面403には、段差部404が形成されている。この段差部404は、パッケージ206の端面(図2中左側の端面)と係合して、パッケージ206が光学系ユニット30側(図2中左側)へ移動するのを規制する。
支持部材40は、板状をなし、その一方の面上には、前述した原子セルユニット20および光学系ユニット30が載置されている。この支持部材40は、光学系ユニット30のホルダー304の下面の形状に沿った設置面401を有する。この設置面401には、段差部402が形成されている。この段差部402は、ホルダー304の下面の段差部と係合して、ホルダー304が原子セルユニット20側(図2中右側)へ移動するのを規制する。同様に、支持部材40は、原子セルユニット20のパッケージ206の下面の形状に沿った設置面403を有する。この設置面403には、段差部404が形成されている。この段差部404は、パッケージ206の端面(図2中左側の端面)と係合して、パッケージ206が光学系ユニット30側(図2中左側)へ移動するのを規制する。
このように、支持部材40により原子セルユニット20および光学系ユニット30の相対的な位置関係を規定することができる。そして、発光素子モジュール10がホルダー304に対して固定されているため、原子セルユニット20および光学系ユニット30に対する発光素子モジュール10の相対的な位置関係も規定されることとなる。ここで、パッケージ206およびホルダー304は、それぞれ、図示しないネジ等の固定部材により、支持部材40に対して固定されている。また、支持部材40は、図示しないネジ等の固定部材により、パッケージ60に対して固定されている。また、支持部材40は、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されており、放熱性を有する。これにより、発光素子モジュール10の放熱を効率的に行うことができる。
(制御ユニット)
図3に示すように、制御ユニット50は、回路基板505と、回路基板505上に設けられている2つのコネクター506a、506bと、発光素子モジュール10に接続されているリジット配線基板507aと、原子セルユニット20に接続されているリジット配線基板507bと、コネクター506aとリジット配線基板507aとを接続しているフレキシブル配線基板508aと、コネクター506bとリジット配線基板507bとを接続しているフレキシブル配線基板508bと、回路基板505を貫通している複数のリードピン509と、を有する。
図3に示すように、制御ユニット50は、回路基板505と、回路基板505上に設けられている2つのコネクター506a、506bと、発光素子モジュール10に接続されているリジット配線基板507aと、原子セルユニット20に接続されているリジット配線基板507bと、コネクター506aとリジット配線基板507aとを接続しているフレキシブル配線基板508aと、コネクター506bとリジット配線基板507bとを接続しているフレキシブル配線基板508bと、回路基板505を貫通している複数のリードピン509と、を有する。
ここで、回路基板505には、IC(Integrated Circuit)チップ(図示せず)が設けられ、このICチップが前述した温度制御部501、光源制御部502、磁場制御部503および温度制御部504として機能する。また、回路基板505は、前述した支持部材40が挿通されている貫通孔5051を有する。また、回路基板505は、複数のリードピン509を介してパッケージ60に対して支持されている。複数のリードピン509は、それぞれ、パッケージ60の内外を貫通しており、回路基板505に電気的に接続されている。
なお、回路基板505と発光素子モジュール10とを電気的に接続する構成、および、回路基板505と原子セルユニット20とを電気的に接続する構成は、図示のコネクター506a、506b、リジット配線基板507a、507bおよびフレキシブル配線基板508a、508bに限定されず、それぞれ、他の公知のコネクターおよび配線であってもよい。
パッケージ60は、例えば、コバール等の金属材料で構成されており、磁気シールド性を有する。これにより、外部磁場が原子発振器1の特性に悪影響を与えるのを低減することができる。なお、パッケージ60内は、減圧されていてもよいし、大気圧であってもよいが、気密空間であることが好ましい。
以上のような原子発振器1では、発光素子3から出射された光LLが、窓部56、減光フィルター301、集光レンズ302、1/4波長板303および原子セル201をこの順で透過して、受光素子202で受光される。その際、窓部56、減光フィルター301、集光レンズ302、1/4波長板303、原子セル201および受光素子202のうちの少なくとも1つで光LLの一部が反射して戻り光として発光素子3に高強度で入射すると、発光素子3の出力変動(波長変動、強度変動)をもたらすおそれがある。そこで、原子発振器1は、このような戻り光の強度を低減する構成を有する。以下、かかる構成について詳述する。
(光源部の光路)
図4は、集光レンズの焦点上に光源部を配置した場合の光路を説明するための模式図である。図5は、図2に示す原子発振器(集光レンズの光軸axからずれた位置に光源部を配置した場合)の光路を説明するための模式図である。図6は、図4および図5に示す光軸からの距離(位置)と戻り光(集光レンズによる集光のみを考慮した戻り光)の強度との関係を示すグラフである。
図4は、集光レンズの焦点上に光源部を配置した場合の光路を説明するための模式図である。図5は、図2に示す原子発振器(集光レンズの光軸axからずれた位置に光源部を配置した場合)の光路を説明するための模式図である。図6は、図4および図5に示す光軸からの距離(位置)と戻り光(集光レンズによる集光のみを考慮した戻り光)の強度との関係を示すグラフである。
前述したように、レンズの一例である集光レンズ302は、光LLを平行光に近づけることで、原子セル201内において光LLのパワー密度が進行方向で変化するのを低減し、原子発振器1の発振特性(特に短期周波数安定度)を向上させるのに寄与する。
しかし、図4に示す原子発振器1Xのように、集光レンズ302から出射した光LLが平行光となる場合、すなわち、発光素子3の光出射部(光LLが出射する部分)の位置Pが集光レンズ302の発光素子3側の焦点である焦点Fに一致する場合、光LLが1/4波長板303、原子セル201の窓部2012、2013または受光素子202で反射すると、その反射光である戻り光LL1は、元の光路と同一の光路で戻って、焦点Fで集光する。すなわち、この場合、戻り光LL1の集光点P1(ビームウエスト)は、焦点Fに一致する。そのため、図4に示す場合、戻り光LL1が発光素子3の光出射部に高強度で入射し、発光素子3の出力変動が生じるという問題がある。
そこで、図5に示すように、原子発振器1は、集光レンズ302から原子セル21に向かう光LLが集光レンズ302の光軸axに対して非平行となるように構成されている。すなわち、原子発振器1は、発光素子3の光出射部(光LLが出射する部分)の位置Pが集光レンズ302の発光素子3側の焦点である焦点Fに一致しないように構成されている。より具体的には、位置Pが集光レンズ302の光軸axからずれている(離間している)。これにより、光LLが1/4波長板303、原子セル201の窓部2012、2013または受光素子202で反射しても、その反射光である戻り光LL1は、焦点Fに対して位置Pとは反対側の位置(集光点P1)で集光する。そのため、図5に示すように、発光素子3は、戻り光LL1の集光点P1から光軸axに対して垂直な方向にずれた領域(反射光の光量密度の極めて低い領域)内に位置することとなり、原子発振器1における発光素子3への戻り光の強度(図6中二点鎖線で示すa)は、前述した原子発振器1Xの場合(図6中実線で示すb)に比べて、大幅に低減することができる。
なお、「発光素子3(光源部)の光LLが出射する部分」は、発光素子3(光源部)が有する共振器の光LLを出射する側の端面である。なお、図6の横軸は、発光素子3(光源部)の光LLが出射する部分の中心を基準(0)としている。
ここで、集光点P1は、集光レンズ302の光軸axに対して発光素子3の位置Pとは反対側に位置することとなる。また、発光素子3の位置Pは、光軸axを法線とする面であって焦点Fを通る面h上に位置している。これにより、当該面h上に集光点P1が位置することとなるため、当該面h上における戻り光LL1のスポット径を極めて小さくすることができる。そのため、位置Pを面h上で焦点Fからわずかにずらすだけで、発光素子3への戻り光LL1の入射を大幅に低減することが可能となる。なお、発光素子3の位置Pが面hから光軸ax方向にずれていても、発光素子3への戻り光LL1の入射を低減することが可能であるが、面h上における戻り光LL1のスポット径を極めて小さくするために、位置Pと面hとの間の距離(光軸ax方向での距離)は、集光レンズ302の焦点深度以下(戻り光LL1のビームウエストの長さ以下)であることが好ましい。また、発光素子3からの光LLの出射方向(光LLの中心軸に沿った方向)は、位置Pと焦点Fとの距離Lに応じて、集光レンズ302の光軸axに対して傾斜していてもよいし、位置Pと焦点Fとの距離に関係なく、集光レンズ302の光軸axに対して平行であってもよい。
また、位置Pの焦点Fからのずれ量が少ないと、集光レンズ302から出射する光LLを平行光に近い状態とすることができ、前述したような当該平行光による効果を顕著に発揮させることができる。このような効果を、発光素子3への戻り光LL1の入射を低減する効果と両立させる観点から、発光素子3の位置Pと集光レンズ302の光軸axとの間の距離Lは、戻り光LL1の幅W1以上、発光素子3の幅W2以下であることが好ましく、発光素子3の光LLが出射する部分の幅W以上、発光素子3の幅W2以下であることがより好ましい。なお、戻り光LL1の幅W1は、戻り光LL1の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)である。
同様の観点から、集光レンズ302を出射する光LLは、原子セル201内において、平行光に対して、±5°の範囲内で光軸axに対して傾斜していることが好ましく、±3°の範囲内で光軸axに対して傾斜していることがより好ましい。これにより、前述した集光レンズ302により光LLを平行光とすることによる効果を好適に発揮させつつ、発光素子3への戻り光LL1の入射量を低減することができる。
以上のように、集光レンズ302から出射した光LLを光軸axに対して非平行とすること、すなわち、発光素子3の位置Pを集光レンズ302の光軸axからずらすことにより、発光素子3への戻り光LL1の入射量を低減することができる。このような効果を確認すべく、発光素子3に入射する戻り光の強度をシミュレーションにより測定した。その結果を図7に示す。
図7は、各種条件(サンプル1〜8)と戻り光(集光レンズによる集光および他の要素での反射を考慮した戻り光)の強度との関係を示すグラフである。図8は、図2に示す原子発振器の変形例を示す模式図である。
ここで、図7中、「サンプル1」は、発光素子3を集光レンズ302の光軸axからずらし(距離L=0.3mm)、窓部56の両面および減光フィルター301の発光素子3側の面にそれぞれ反射防止膜(反射率0.05%のARコート)を設けた場合を示す。「サンプル2」は、減光フィルター301の反射防止膜を省略した以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。「サンプル3」は、減光フィルター301を省略し、窓部56が減光フィルター301と同様の減光機能を有することで、窓部56が減光フィルター301を兼ねている以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。「サンプル4」は、窓部56および減光フィルター301の反射防止膜を省略した以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。「サンプル5」は、窓部56の反射防止膜を省略した以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。「サンプル6」は、窓部56の反射防止膜を省略した以外はサンプル3と同様に構成した場合を示す。「サンプル7」は、発光素子3を集光レンズの光軸ax上(焦点F上)に配置するとともに窓部56および減光フィルター301の反射防止膜を省略した以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。「サンプル8」は、発光素子3を集光レンズの光軸ax上(焦点F上)に配置した以外はサンプル1と同様に構成した場合を示す。
図7に示すように、発光素子3が集光レンズ302の光軸axからずれているか否かのみが異なるサンプル1、8を比較すると、サンプル1の方がサンプル8よりも発光素子3へ入射する戻り光の強度が小さい。同様に、発光素子3が集光レンズ302の光軸axからずれているか否かのみが異なるサンプル4、7を比較すると、サンプル4の方がサンプル7よりも発光素子3へ入射する戻り光の強度が小さい。ここで、サンプル4、7間の発光素子3へ入射する戻り光の強度の差は、サンプル1、8間の発光素子3へ入射する戻り光の強度の差よりも小さい。これは、窓部56および減光フィルター301に反射防止膜を設けることによって発光素子3への戻り光を低減する効果が発光素子3を集光レンズ302の光軸axからずらすことによって発光素子3への戻り光を低減する効果よりも大きいことを意味している。
また、サンプル2、4、5を比較すると、減光フィルター301に反射防止膜を設けるよりも、窓部56に反射防止膜を設けた方が発光素子3への戻り光を低減する効果が大きいことがわかる。また、サンプル3のように、窓部56が減光フィルター301を兼ねていると、発光素子3への戻り光を低減する効果が最も大きい。なお、窓部56に反射防止膜を設けることによる効果は、窓部56の発光素子3側の面のみに反射防止膜を設けた場合でも同様の効果が得られることが確認されている。
このように、窓部56および減光フィルター301のうちの少なくとも窓部56に反射防止膜を設けることにより、発光素子3への戻り光を低減する効果が大きい。これは、次のa.およびb.の理由によるものと推察される。a.窓部56が他の光学要素(集光レンズ302、1/4波長板303、原子セル201および受光素子202)に比べて発光素子3に極めて近いため、窓部56での反射光が他の光学要素での反射光に比べて発光素子3への戻り光に対する影響が大きい。b.減光フィルター301を透過した光LLは、強度が大幅に減衰するため、減光フィルターよりも原子セル201側にある他の光学要素での反射光は、発光素子3への戻り光に対する影響が少ない。
以上のように、原子発振器1は、アルカリ金属が封入されている原子セル201と、原子セル201内のアルカリ金属に照射する光LLを出射する「光源部」である発光素子3と、原子セル201を透過した光LLを受光し、その受光強度に応じた信号を出力する「受光部」である受光素子202と、発光素子3と原子セル201との間に配置されている「レンズ」である集光レンズ302と、を備える。特に、発光素子3の光LLを出射する部分は、集光レンズ302の光軸axおよびその延長線に対して離間している。あるいは、集光レンズ302は、光LLを原子セル201に向けて集光レンズ302の光軸axに対して傾斜した方向に出射するよう構成されている。
このような原子発振器1によれば、発光素子3と原子セル201との間に配置されている集光レンズ302が発光素子3からの光LLを原子セル201に向けて集光レンズ302の光軸axに対して傾斜した方向に出射する(あるいは、発光素子3の光LLを出射する部分が集光レンズ302の光軸axおよびその延長線に対して離間している)ため、当該光LLが原子セル201、受光素子202等で反射しても、その反射光を発光素子3(特に、光LLを出射する部分)とは異なる位置に集光させることができる。そのため、当該反射光が戻り光LL1として発光素子3に入射する量を少なくし、戻り光LL1による発光素子3の出力変動(波長変動、強度変動)を低減することができる。その結果、原子発振器1の周波数特性(特に、短期周波数安定度)を向上させることができる。
本実施形態では、発光素子3(光源部)の光LLを出射する部分である位置Pと、集光レンズ302の焦点Fを通り光軸axまたはその延長線を法線とする面hとの間の距離は、集光レンズ302の焦点深度以下である。これにより、発光素子3と集光レンズ302との間の距離を比較的小さくしつつ、発光素子3への戻り光LL1の量を効果的に低減することができる。
また、原子発振器1は、発光素子3(光源部)と集光レンズ302との間に配置されている減光フィルター301を備える。これにより、原子セル201内のアルカリ金属に照射される光LLの強度を容易に最適化することができる。また、戻り光LL1も減光フィルター301を通過することとなるため、発光素子3への戻り光LL1の量をより低減することができる。
ここで、減光フィルター301は、光を吸収する物質を含有していること、すなわち、いわゆる吸収型の減光フィルターであることが好ましい。これにより、発光素子3からの光LLが減光フィルター301で反射して戻り光となるのを低減することができる。
また、減光フィルター301上には、図8に示す原子発振器1Aのように、反射防止膜(光学薄膜等)である反射低減層307が設けられていることが好ましい。すなわち、原子発振器1は、減光フィルター301上(図示では発光素子3側の面上)に配置され、光LLの反射を低減する反射低減層307を備えることが好ましい。これにより、発光素子3からの光LLが減光フィルター301で反射して戻り光となるのを低減することができる。
また、原子発振器1は、発光素子3(光源部)を収納しているパッケージ5を備え、パッケージ5は、光LLが透過する窓部56を有する。これにより、発光素子3を原子セル201とは独立して温度調節することができ、その結果、発光素子3の温度変動による出力変動を容易に低減することができる。
また、発光素子3と受光素子202と間にある複数の光学要素のうち最も発光素子3に近い窓部56の発光素子3側の面56a上には、図8に示す原子発振器1Aのように、反射防止膜(光学薄膜等)である反射低減層57が設けられていることが好ましい。すなわち、原子発振器1は、窓部56の発光素子3(光源部)側の面上に配置され、光LLの反射を低減する反射低減層57を備えることが好ましい。これにより、発光素子3からの光LLが窓部56で反射して戻り光となるのを低減することができる。ここで、発光素子3を収納しているパッケージ5の窓部56は発光素子3に極めて近い位置にあるため、発光素子3からの光LLは当該窓部56で反射すると戻り光として発光素子3に入射しやすい。そのため、当該窓部56での反射光を低減することは、発光素子3への戻り光の量を低減する上で特に効果的である。反射低減層307および57は、各々、例えば、光学多層薄膜を有する構成とされており、薄膜の材料(屈折率)、膜厚、層数等の組み合わせによって、所望の光学特性を得ることができる。
また、窓部56には、減光フィルター301と同様の減光機能を有していてもよい。すなわち、窓部56は、減光フィルターであってもよい。この場合、発光素子3からの光LLが減光フィルターで反射して戻り光となるのを低減することができる。また、パッケージ5の外部に設ける減光フィルター301を省略することができ、原子発振器1の構成を簡素化および低コスト化することもできる。
2.電子機器
以上説明したような原子発振器1は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、本発明の電子機器について説明する。
以上説明したような原子発振器1は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、本発明の電子機器について説明する。
図9は、GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。
図9に示す測位システム1100は、GPS衛星1200と、基地局装置1300と、GPS受信装置1400とで構成されている。
GPS衛星1200は、測位情報(GPS信号)を送信する。
基地局装置1300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ1301を介してGPS衛星1200からの測位情報を高精度に受信する受信装置1302と、この受信装置1302で受信した測位情報をアンテナ1303を介して送信する送信装置1304とを備える。
基地局装置1300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ1301を介してGPS衛星1200からの測位情報を高精度に受信する受信装置1302と、この受信装置1302で受信した測位情報をアンテナ1303を介して送信する送信装置1304とを備える。
ここで、受信装置1302は、その基準周波数発振源として前述した本発明の原子発振器1(発光素子モジュール10)を備える電子機器である。また、受信装置1302で受信された測位情報は、リアルタイムで送信装置1304により送信される。
GPS受信装置1400は、GPS衛星1200からの測位情報をアンテナ1401を介して受信する衛星受信部1402と、基地局装置1300からの測位情報をアンテナ1403を介して受信する基地局受信部1404とを備える。
以上説明した測位システム1100が備える「電子機器」である受信装置1302は、原子発振器1を備える。これにより、原子発振器1の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
なお、本発明の電子機器は、前述したものに限定されず、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター)、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地上デジタル放送、携帯電話基地局等に適用することができる。
3.移動体
図10は、本発明の移動体の一例を示す図である。
図10は、本発明の移動体の一例を示す図である。
この図において、移動体1500は、車体1501と、4つの車輪1502とを有しており、車体1501に設けられた図示しない動力源(エンジン)によって車輪1502を回転させるように構成されている。このような移動体1500には、原子発振器1が内蔵されている。
以上のように、移動体1500は、原子発振器1を備える。これにより、原子発振器1の効果(例えば優れた周波数特性)を享受して、優れた特性を発揮させることができる。
以上、本発明の原子発振器、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、波長の異なる2種類の光による量子干渉効果を利用してセシウム等を共鳴遷移させる原子発振器に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、光およびマイクロ波による二重共鳴現象を利用してルビジウム等を共鳴遷移させる原子発振器にも適用可能である。
また、前述した実施形態では、光源部を収納するパッケージと、原子セルおよび受光部を収納するパッケージとの2つのパッケージを有する場合を例に説明したが、光源部、原子セルおよび受光部を1つの共通した内部空間のパッケージに収納してもよい。
1…原子発振器、1A…原子発振器、1X…原子発振器、2…ペルチェ素子、3…発光素子(光源部)、4…温度センサー、5…パッケージ、10…発光素子モジュール、20…原子セルユニット、21…基板、22…基板、23…接合体、30…光学系ユニット、40…支持部材、50…制御ユニット、51…ベース、52…リッド、53…シールリング、54…本体部、55…突出部、56…窓部、56a…面、57…反射低減層、60…パッケージ、61…外部実装電極、201…原子セル、202…受光素子(受光部)、203…ヒーター、204…温度センサー、205…コイル、206…パッケージ、207…窓部、301…減光フィルター、302…集光レンズ、303…1/4波長板、304…ホルダー、305…貫通孔、306…位置決め面、307…反射低減層、401…設置面、402…段差部、403…設置面、404…段差部、501…温度制御部、502…光源制御部、503…磁場制御部、504…温度制御部、505…回路基板、506a…コネクター、506b…コネクター、507a…リジット配線基板、507b…リジット配線基板、508a…フレキシブル配線基板、508b…フレキシブル配線基板、509…リードピン、511…凹部、512…段差部、540…板面、541…孔、551…孔、552…孔、553…段差部、1100…測位システム、1200…GPS衛星、1300…基地局装置、1301…アンテナ、1302…受信装置、1303…アンテナ、1304…送信装置、1400…GPS受信装置、1401…アンテナ、1402…衛星受信部、1403…アンテナ、1404…基地局受信部、1500…移動体、1501…車体、1502…車輪、2011…胴体部、2012…窓部、2013…窓部、5051…貫通孔、F…焦点、L…距離、LL…光、LL1…戻り光、P…位置、P1…集光点、S…内部空間、a…光軸、ax…光軸、h…面、W…幅、W1…幅、W2…幅
Claims (11)
- アルカリ金属が封入されている原子セルと、
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記レンズは、前記光を前記原子セルに向けて前記レンズの光軸に対して傾斜した方向に出射することを特徴とする原子発振器。 - アルカリ金属が封入されている原子セルと、
前記アルカリ金属に照射する光を出射する光源部と、
前記原子セルを透過した前記光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する受光部と、
前記光源部と前記原子セルとの間に配置されているレンズと、を備え、
前記光源部の前記光を出射する部分は、前記レンズの光軸およびその延長線に対して離間していることを特徴とする原子発振器。 - 前記光源部と前記レンズとの間に配置されている減光フィルターを備える請求項1に記載の原子発振器。
- 前記減光フィルターは、前記光を吸収する物質を含有している請求項2に記載の原子発振器。
- 前記減光フィルター上に配置され、前記光の反射を低減する反射低減層を備える請求項2または3に記載の原子発振器。
- 前記光源部の前記光を出射する部分と、前記レンズの焦点を通り前記光軸またはその延長線を法線とする面との間の距離は、前記レンズの焦点深度以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の原子発振器。
- 前記光源部を収納しているパッケージを備え、
前記パッケージは、前記光が透過する窓部を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の原子発振器。 - 前記窓部の前記光源部側の面上に配置され、前記光の反射を低減する反射低減層を備える請求項7に記載の原子発振器。
- 前記窓部は、減光フィルターである請求項7または8に記載の原子発振器。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の原子発振器を備えることを特徴とする電子機器。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の原子発振器を備えることを特徴とする移動体。
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2017
- 2017-01-30 JP JP2017014834A patent/JP2018125362A/ja active Pending
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