以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態の無線電力伝送装置に用いる共振子を示す。図1(A)は上面図、図1(B)は紙面に沿って下から見た側面図、図1(C)は、紙面に沿って右から見た側面図である。
この共振子は、コイル11と、磁性体コア(磁性体コアブロック12、13)を備えている。コイル11は、概ね扁平であり、他の部分に比べて曲率の大きい部分が2つある側断面をもつコイルである。曲率の大きい部分は、磁力線が集中するところであり、図1では、これら2つの曲率の大きい部分が、左右両端に位置している。
コイル11内を貫通するように、少なくとも2つの磁性体コアブロック(第1の磁性体コアブロック)12および磁性体コアブロック(第2の磁性体コアブロック)13が配置されている。磁性体コアブロック12、13の短手方向に、磁性体コアをコイル11が巻回しており、磁性体コアブロック12、13は、コイル11内側の左右両端に近接させられている。
磁性体コアブロック12は、磁性体コアブロック12の長手方向に沿って第1部分12Aとその両側の第2部分12Bを含む。当該長手方向に直交する方向において、第1部分12Aの断面積は、第2部分12Bよりも大きい。なお、長手方向は、本例では、コイルの孔が貫通する方向に一致する。
磁性体コアブロック13は、磁性体コアブロック13の長手方向に沿って第3部分13Aと、その両側の第4部分13Bとを含む。当該長手方向に直交する方向において、第3部分13Aの断面積は、第4部分13Bよりも大きい。
コイル11は、磁性体コアブロック12、13のそれぞれ断面積の大きな部分、すなわち、第1部分12Aおよび第3部分13Aに巻かれている。磁性体コアブロック12、13の厚みは、それぞれ一定であり、第1部分12Aおよび第3部分13Aの各幅LAは、第2部分12Bおよび第4部分13Bの幅LAに比べて大きくなっている。つまり、厚みを一定としつつ、幅を大きくとることにより断面積を広げている。厚みを一定とすることで、磁性体コアブロックの厚みを揃えることができ、共振子を薄くすることができる。
このように構成することで、磁束が最も集中する、コイルの巻かれた部分の断面積が広くなり、コアロスを低減すると共に、それ以外の磁性体部分の分量を大幅に低減し、軽量化できる。
図43に示す扁平な共振子で、2つの磁性体コアブロック62、63の距離を変化させたときのインダクタンスの変動を示すグラフを図44に示す。グラフで最も右側に相当する左右の両端においた場合が、磁性体の影響が大きくなるため、より大きなインダクタンス値を得ることができている。
図2は、図1で示した共振子を、本無線電力伝送装置の1次側共振子21および2次側共振子22に用いる場合の配置例を示す側面図である。
1次側共振子と2次側共振子を対向するように配置している。一従来例(コアの上端近くから下端近くまでコイルを巻いたもの)に比べ、上下に対向する磁性体コアブロックのうち、巻き線のない部分が長くなるため、磁束ループの経路を長く確保でき、上下の結合を増加することができる。
また、当該一従来例に比べ、本実施形態では、コイルを巻く部分を中央部に集中させている。特に、磁性体コアブロックの長さL_coreに対し、コイルを巻く部分の上端からコイルを巻く部分の下端に至る長さをL_coreの1/3以下となるようにしている。一般に、図2の両共振子のコアブロックのように、磁路が閉じない状態で使用する場合(比較例として、たとえばトランスの一例では、コアがループ状になっており、この場合、磁路が閉じているといえる)には、反磁性の影響の影響で、コアの長さ方向に関して、中央から遠くなるほど、本来の磁性体の持つ透磁率に対して、実際の効果を示す等価透磁率が大きく低下する。本実施例のように、より中央に近い方にコイルを巻くことにより、等価透磁率がより大きいため、同一長さのコイルを巻く場合には、より高いインダクタンス値を得ることができる効果が生じる。つまり、共振子間の結合を増加させ、かつ、反磁性に起因するコイルを巻く部分の等価透磁率の低下を抑えることができる。
図3は、図1で示した共振子を用いた第1の実施形態の無線電力伝送装置のブロック図を示す。送電回路31からは、1次側共振子32が効率よく伝送可能な周波数の電力信号が供給される。1次側共振子32と2次側共振子33との間の結合により、電力信号が無線伝送される。2次側共振子33が受電した電力信号は、受電回路34へ送られる。なお、必要に応じて、送電回路31と受電回路34の間で、無線信号を用いて、送電回路31の制御部と受電回路34の制御部がやりとりを行い、送受電の開始、終了、中止、送電電力量の変更などが実施される。
図4に示すように、左右の磁性体コアブロックの上端41、43、下端42、44の厚さを小さくして、軽量化を図ることも考えられる。図4(A)は上面図、図4(B)は紙面に沿って下から見た側面図、図4(C)は、紙面に沿って右から見た側面図である。
図5に、図4の共振子を1次側共振子51および2次側共振子52として用いた場合の配置を示す。図5にあるように、磁性体コアブロックの上端、下端は、共振子同士の磁束の結合が起こるため、コア内部の磁束密度が中央部に比べて低下しており、厚さを小さくしても、磁気飽和が生じる恐れは低い。なお、図5に示したように、上下非対称に厚さを小さくし、残ったコアの上端部、下端部が、互いに近くなるように、両共振子を対向させることにより、共振子間の結合をより高めることも考えられる。
なお、左右各磁性体コアブロックの形状において、コイルを巻く部分の幅が他の部分に比べて大きくする場合において、図1の形状以外にも、図6および図7に示す形状も考えられる。
図6では、コイルを巻く部分61、62の幅が、他の部分に比べて、それぞれコイルの左右外側に大きくされている。
図7では、コイルを巻く部分71、72の幅が、他の部分に比べて、それぞれコイルの左右両側に大きくされている。
また、図8のように、コイルを巻く部分81、82を左右内側に大きくし、かつ、コイルを巻かない部分83、84を、テーパ状に上下端に向けて幅を徐々に狭くしてもよい。
あるいは、図9のように、コイルを巻く部分91、92をコイルの左右外側に大きくし、かつ、コイルを巻かない部分93、94を、テーパ状に上下端に向けて幅を徐々に狭くしてもよい。
あるいは、図10のように、コイルを巻く部分101、102を、コイルの左右両側に大きくし、かつ、コイルを巻かない部分103、104を、テーパ状に上下端に向けて幅を徐々に狭くしてもよい。
図8〜図10に示した例において、テーパのカーブを製造上の都合等により他の形状にすることも考えられる。
なお、左右各磁性体コアブロックの形状において、コイルを巻く部分の厚さを他の部分に比べて大きくすることにより、磁束が最も集中する部分の断面積を広くすることも考えられる。図11〜図13に、これらの例を示す。
図11では、コイルを巻く部分111、112の厚さを、他の部分113、114に比べて、ステップ状に2段階に変更した例が示される。
図12では、コイルを巻く部分121、122の厚さを、他の部分123、124に比べて、ステップ状に3段階に変更した例が示される。
図13では、コイルを巻く部分131、132の厚さを、他の部分133、134に比べて、ステップ状に3段階に変更する場合に、上下非対称に変える例が示される。もちろん、図4に示したように、テーパ状に変更することも差し支えない。
また、大電力を流す場合には、図14のように、コイルを巻く場所を複数にすることにより、温度上昇する場所を分散させることが考えられる。この場合にも、図14に示すように、左右各磁性体コアブロックの形状において、コイルを巻く部分141、142の幅を、他の部分143、144に比べて大きくする。これにより、磁束が最も集中する部分の断面積が広くなり、コアロスを低減すると共に、それ以外の磁性体の分量を低減し、軽量化できる。なお、コイルを巻いた部分の間は、磁束が最も集中する部分であることから、断面積を、コイルを巻いた部分と同様に広く取っている。
図15のように、左右各磁性体コアブロックにおいてコイルの巻かれていない外側部分151、152を、コアブロックの上下端に向けて幅を徐々に狭くするように、テーパ状に幅を変更することも考えられる。
また、図16のように、コイルを巻く場所を複数にする場合でも、コイルを巻く部分を、中央部で、磁性体コアブロックの長さL_coreに対し、コイルを巻く部分の上端からコイルを巻く部分の下端に至る長さをL_coreの1/3以下となるように集中させてもよい。これにより、図2の実施例と同様に、等価透磁率がより大きいため、同一長さのコイルを巻く場合には、より高いインダクタンス値を得ることができる。
また、図17に示すように、左右の磁性体コアブロックに対して、ひれ(拡張部)171、172を付加するように磁性体コアの形状を変えて、対向する磁性体コアブロックのうち、巻き線のない部分をさらに長くし、磁束ループの経路をさらに長く確保して、対向する共振子の結合係数をさらに増加させることも考えられる。なお、ひれの付加形態は図17に限定されず、図18に示すように、図17と異なる向きにひれ181、182を付加してもよい。
また図19、図20に、図1の実施例の左右の磁性体コアブロックに対して、コイルを巻く部分の上端からコイルを巻く部分の下端に至る長さを磁性体コアブロック長L_coreの1/3以下となるように保ったまま、厚さ方向に形状を変えた構成例を示す。この構成により、図21、図22に示すように、両共振子を構成する磁性体コアブロックの一部の距離を短縮し、上下の共振子の結合係数をさらに増加させることも考えられる。図20の構成は、図17または図18の方向(幅方向)と異なる方向(厚み方向)にひれ(拡張部)を付加した構成と見ることもできる。
なお、図23のように、コイル231の断面が概ね扁平ではなく、楕円などの場合でも、曲率が大きい部分が少なくとも2つあれば、それら2つの部分にコアブロック232、232を配置することが考えられる。
あるいは、図24などのように、コイル241が、一部241Aで急激に折れ曲がるが、その折れ曲がり角が、曲率が大きい他の2つの部分242Bの折れ曲がり角よりも小さい場合には、曲率が大きくかつ折れ曲がり角が小さい2つの部分241Aに、コアブロックを配置することが考えられる。
また、コイルの左右方向の中央を含む部分に磁性体コアブロックを追加配置する構成も可能である。この場合の構成例を図28に示す。図1の実施例のようにコイルの左右方向両端に配置された磁性体コアブロック281、282に加え、コイルの中央付近に磁性体コアブロック(第3の磁性体コアブロック)283が追加されている。磁性体コアブロック283は、磁性体コアブロック283の長手方向に沿って第5部分283Aと、その両側の第6部分283Bとを含む。当該長手方向に直交する方向において、第5部分283Aの断面積は、第6部分283Bよりも大きい。コイルは、断面積の大きい第5部分283Aに巻かれている。なお各第6部分283Bの端部に前述したひれ(拡張部)が付加されてもよい。以下、磁性体コアブロック283のコイルの巻かれた部分の断面積が、磁性体コアブロック281、282と同様に、他の部分に比べて広くされていることについて説明する。
たとえば、計算によれば、図25に示すコイル251の両端のみに棒状の磁性体コアブロック252、253を設置したコイルのリアクタンス値が23μHの場合に、図26に示す追加の棒状の磁性体コアブロック261を端の磁性体コアブロック253に並べて置いたとする。この場合に、リアクタンス値が26.5μHであるのに対し、図27のようにコイル251の真ん中に棒状の磁性体コアブロック261を追加すると、29.4μHとなる。
したがって、図27の共振子に対して、さらに、図28のように、第1の実施形態と同様、各磁性体コアブロック281、282、283の形状において、コイルを巻く部分の幅を他の部分に比べて大きくしている。これにより、磁束が最も集中する部分と2番目に集中する部分の断面積が広くなり、コアロスを低減すると共に、それ以外の磁性体の分量を大幅に低減し、軽量化できる。つまり、左右両端に近接した部分の次に、コイルのインダクタンス増加効果の大きい中央を含む部分に第3の磁性体コアブロックを配置し、かつ、第3の磁性体コアブロックの中で磁束が最も集中する部分の断面積が広くなることでコアロスを低減すると共に、それ以外の磁性体の分量を大幅に低減し、軽量化できる。
なお、図28の考え方に加えて、棒状の磁性体コアブロックを追加設置した場合のコイル周りの磁界分布において、図29の計算結果に示されるようにコイルの線のごく近傍の磁界強度は大きくなる。これを利用し、図30や図31のようにコイルの線のごく近傍には、磁性体コアブロック301、302を設置するようにすることが考えられる。図30、図31の構成は、各磁性体コアブロックの断面積の大きな部分を一体化したものととらえることができる。これらのコイルの線のごく近傍に設置する磁性体コアブロックは、反磁性の効果が小さい短い形状のものでも、磁界の強い所に置かれるので効果が大きく、リアクタンス値を増加することができる。また、長い形状の磁性体コアブロックに近接して短い形状のものを配置することにより、長い形状の磁性体コアブロックにおける磁束の集中が緩和され、磁気飽和やコアロスが軽減される効果がある。
図45、図46、図47は、それぞれ、特許文献1に示された従来の磁性体コアブロックを用いた共振子、図1に示された第1の実施形態の共振子、図28に示された本発明の実施形態の一例の共振子に関して、磁性体内部の磁束密度を数値計算で求めたものである。前述のとおり、図45に見るように、従来の磁性体コアブロックでは、コアの幅全体にわたり、長辺方向の中央部のコイルを巻いた部分の磁束密度が大きくなっている。これに対し、図46に示す図1の共振子の場合は、一部の局所的にくぼんだ点で磁束密度が大きくなっているものの、長辺方向の中央部のコイルを巻いた部分の磁束密度は低減されている。さらに、図47に示す図28の共振子の場合は、やはり一部の局所的にくぼんだ点で磁束密度が大きくなっているものの、長辺方向の中央部のコイルを巻いた部分の磁束密度はさらに低減されている。なお、図46と図47に見られる、局所的な磁束密度の上昇は、一部の狭い面積に限られており、上昇もそれほど大きくないため、この部分での損失は、磁性体コアブロック全体の損失に占める割合は非常に小さい。
図32(A)は,本発明の実施形態の一例として試作した共振子の寸法を示している。
図32(B)に、2つの共振子間の位置関係を表す側面図を示す。巻線と平行な方向をx軸,垂直な方向をy軸とした。図33はxおよびy方向に位置ずれした時の結合係数を測定した結果を示している。
コイル間効率はkとQの積(k×Q)に依存し、Q=196の共振子を用いた場合、結合係数k>0.1の時、コイル間効率>90%が得られる。
結合係数k=0.1を目安とすると、x方向は420mm、y方向は120mmまでが位置ずれ許容範囲となる。
図32に示した寸法の場合,x方向およびy方向の位置ずれ許容範囲は3倍以上異なり、アンバランスとなっている。
y方向の位置ずれ許容範囲が小さいのは、2次側コイルを貫く磁束の総和が0になる点が存在するためである。図33に示すように,y方向位置ずれ200mmの時に磁束の打ち消しによる結合係数の低下が発生している。これは,y方向寸法の43%に相当し,非特許文献2の結果と一致している。
結合特性は、共振子の外形寸法に依存している。
したがって、図34の341に示すように,磁性体コアブロックを、y方向に長くすれば図35に示すように,結合係数が低下する位置をより遠くにシフトさせることができる。
また、上記の性質を用いて、図36のように左端と右端の磁性体コアブロック361、362の長さL_coreを異なる値とすると、図37に示すように、磁束の打ち消しによる結合係数の低下は、それぞれの長さに対応する位置ずれに生じるものの、その低下量を抑制することができると考えられる。したがって、位置ずれの広い範囲にわたって、大きな結合係数の低下を抑えることができると考えられる。
また、図38のように、例えばL_coreが短い磁性体コアブロック381にひれ392を付加するように磁性体コアの形状を変える、あるいは、図39のように、左右端両方の磁性体コアブロック391、392にひれ393、394を付加するように磁性体コアブロックの形状を変えてもよい。これにより、対向する磁性体コアブロックのうち、巻き線のない部分をさらに長くし、磁束ループの経路をさらに長く確保して、上下の共振子の結合係数をさらに増加させることも考えられる。
さらに、図40、図41、図42のように、コイルの左右方向の中央を含む部分に第3の磁性体コアブロックを配置し、左右端の磁性体コアブロックとあわせた3つの磁性体コアブロックのそれぞれの長さL_coreに対し、少なくとも2つは互いに異なる値とすることにより、図37に示すのと同様の効果を得ることができる。
以上のように本発明の実施形態によれば、電力伝送効率を高くしつつ、共振子を軽量にできる無線電力伝送装置を提供できる。また、軽量で、かつ、コアロスを低減して、より効率の高い無線電力伝送装置を提供できる。
なお、ここまでの実施形態の説明では、1次側共振子と2次側共振子とが同一のものを用いる形で説明をしてきたが、もちろん、別の形状を用いることも考えられる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。