JP2015137189A - Agドープp型ZnO系半導体結晶層 - Google Patents

Agドープp型ZnO系半導体結晶層 Download PDF

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Michihiro Sano
道宏 佐野
加藤 裕幸
Hiroyuki Kato
裕幸 加藤
千寿 斎藤
Senju Saito
千寿 斎藤
山本 哲也
Tetsuya Yamamoto
哲也 山本
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Abstract

【課題】 Agがドープされた低抵抗のp型ZnO系半導体結晶層を提供する。【解決手段】 陽元素の原子比で2%以上3%未満のAgがドープされたAgドープp型ZnO系半導体結晶層を提供する。【選択図】 図5

Description

本発明は、Agドープp型ZnO系半導体結晶層に関する。IIB族元素としてZn、VIB族元素としてOを含むII−VI族半導体をZnO系半導体と呼ぶ。Agドープの量を、陽元素の原子比(%)として表す。
なお、本願における陽元素とは、ZnO系半導体結晶中のZn、Mg等、+II価の元素のことであり、陽元素の原子比とは、ZnO系半導体結晶中の全陽元素の濃度に対する比率を指す。すなわち、Agの陽元素の原子比とは、ZnO系半導体結晶中に含まれるAg原子の濃度を、ZnO系半導体結晶中の全陽元素の濃度で除した値である。
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギーを持つ直接遷移型の半導体で、励起子の束縛エネルギーが60meVと他の半導体に比べて比較的大きい。また、原材料が安価であるとともに、環境や人体への影響が少ないという特徴を有する。このため、ZnOを用いた高効率・低消費電力で環境性に優れた発光素子の実現が期待されている。
ZnO系半導体のn型導電性は、不純物をドープしなくても得ることができる。ドナー不純物、たとえばGa等をドープすることで、n型導電性を高めることができる。ZnO系酸化物半導体は、強いイオン性に起因する自己補償効果のために、通常の熱拡散手法など熱平衡的不純物ドープ手法による結晶成長法では、p型の導電型制御が困難である。 そこで、現在、実用的な性能を有するp型のZnO系酸化物半導体を得るため、分子線エピタキシー(MBE)、レーザー分子線エピタキシー、有機金属化学気相堆積(MOCVD)、リモートプラズマMOCVD、スパッタリング等、様々な非熱平衡的成長手法により、p型ZnO系半導体層の開発が進められている。
現在までに、アクセプタ不純物として、N、P、As、Sb等のVA族元素、Li、Na、K等のIA族元素や、Cu、Ag、Au等のIB族元素が研究されている。まだキャリア濃度が低く、再現性や安定性等も含め、十分な品質が得られていない。2種類の不純物の共ドープ等の技術が考察されている。Cu、Ag等のアクセプタをGa等のドナーと共ドープしてp型層を得る技術(たとえば、特許文献1参照)、窒素とIB族元素を共ドープしてp型層を得る技術(たとえば、特許文献2参照)等が提案されている。また、MgZnO層とZnO層の積層構造を有する超格子層の少なくとも一方に、N、Cu等のアクセプタをドーピングする技術(たとえば、特許文献3参照)等が提案されている。
特開2004−221132号公報 特開2009−256142号公報 特開2009−21540号公報
本発明の目的は、Agがドープされた低抵抗のp型ZnO系半導体結晶層を提供することである。
本発明の一観点によれば、陽元素の原子比で2%以上3%未満のAgがドープされたAgドープp型ZnO系半導体結晶層が提供される。
また、本発明の他の観点によれば、Agがドープされたp型ZnO系半導体結晶層であって、Agの相互原子間距離が、6.169Åより大きく、10.045Å以下であるAgドープp型ZnO系半導体結晶層が提供される。
本発明によれば、Agがドープされた低抵抗のp型ZnO系半導体結晶層を提供することができる。
図1は、MBE装置の例を示す概略断面図である。 図2は、軌道準位と、M−O間の混成極性エネルギーΔ、混成共有エネルギーVとの関係を示す概念図である。 図3Aは、遷移金属のうち、AgまたはCuをZnO中にドーピングしたときのバンド図であり、図3Bは、AgまたはCuがZnO中にドーピングされた場合について、混成極性エネルギーΔ、AgまたはCuと、Oとの原子間距離d、及び1/dの値を比較した表である。 図4は、M−O anti−bonding orbital バンド幅の違いによる電子間の空間的距離を示す概念図である。 図5は、本発明者らによる理論計算結果を示す表である。 図6は、ドーピング濃度に対する M−O anti−bonding orbital バンドの幅及びEの変化を示す概念図である。 図7は、Ag濃度を1at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す図である。 図8は、Ag濃度を2at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す図である。 図9は、Ag濃度を3at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す図である。 図10は、実施例によるAgドープp型ZnO系半導体結晶層の製造方法を説明するための概略的な断面図である。 図11は、ZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。
まず、ZnO系半導体層等の成長に用いられる結晶製造装置について説明する。実施例では、結晶製造方法として、分子線エピタキシー(MBE)法を用いる。
図1は、MBE装置の例を示す概略断面図である。真空チャンバー101内に、Znソースガン102、Oソースガン103、Mgソースガン104、Agソースガン105、及び他の固体ソースガン106が備えられている。
Znソースガン102、Mgソースガン104、Agソースガン105、及び他の固体ソースガン106は、それぞれ、Zn(7N)、Mg(6N)、Ag(6N)、及び他の固体の固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、セルを加熱することにより、Znビーム、Mgビーム、Agビーム、及び他の分子ビーム(たとえば、Gaビーム)を出射できる。Oソースガン103は、ラジオ周波数(たとえば13.56MHz)を用いる無電極放電管を含み、Oガス(6N)をプラズマ化して、Oラジカルビームを出射する。放電管材料として、アルミナ、高純度石英、窒化ボロン等を使用することができる。
真空チャンバー101内に、基板ヒーターを含むステージ107が配置され、成長基板108を保持する。各ソースガン102〜106は、それぞれセルシャッターを備え、セルシャッターの開閉により、成長基板108上にビームを照射する状態と照射しない状態とを切り替える。成長基板108上に、所望のタイミングで所望のビームを供給することにより、所望の組成のZnO系化合物半導体層を成長させることができる。
ZnOにMgを添加し、MgZn1−xO混晶とすることにより、Mg組成xに応じてバンドギャップを広げることができる。ZnOはウルツ鉱構造(六方晶)、MgOは岩塩構造(立方晶)であるため、Mg組成xは制限される。ウルツ鉱構造を保つ場合、MgZn1−xO(0≦x≦0.6)とする。
真空チャンバー101内に、水晶振動子を用いた膜厚計109が備えられている。膜厚計109で測定される付着速度から、固体ソースからのZnビーム等のフラックス強度(たとえばFZnと表す)が求められる。
真空チャンバー101に、反射高速電子回折(RHEED)用のガン110、及び、RHEED像を映すスクリーン111が取り付けられている。RHEED像から、基板108上に形成された結晶層の表面平坦性や成長モードを評価できる。
結晶が2次元成長し、表面が平坦なエピタキシャル成長(単結晶成長)である場合、RHEED像は、ストリークパターンを示す。結晶が3次元成長し、表面が平坦でないエピタキシャル成長(単結晶成長)の場合は、RHEED像はスポットパターンを示す。多結晶成長の場合は、RHEED像はリングパターンとなる。従ってRHEED像により、成長層が単結晶か多結晶か、単結晶の場合、表面が平坦か平坦でないかを知ることができる。
次に、VI/IIフラックス比について説明する。Znビームのフラックス強度をJZnと表し、Mgビームのフラックス強度をJMgと表し、Oラジカルビームのフラックス強度をJと表す。II族材料であるZnあるいはMgのビームは、原子または複数個の原子を含むクラスターのZnあるいはMgを含み、原子及びクラスターのいずれも結晶成長に有効である。ガス材料であるOのビームは、原子ラジカルや中性分子を含むが、ここでは、結晶成長に有効な原子ラジカルのフラックス強度を考える。
結晶へのZnの付着しやすさを示す付着係数をkZnとし、Mgの付着しやすさを示す付着係数をkMgとし、Oの付着しやすさを示す付着係数をkとする。Znの付着係数kZnとフラックス強度JZnとの積kZnZn、Mgの付着係数kMgとフラックス強度JMgとの積kMgMg、及び、Oの付着係数kとフラックス強度Jとの積kは、それぞれ、基板の単位面積に単位時間当たりに付着するZn原子、Mg原子、及びO原子の個数に対応する。
ZnZnとkMgMgの和に対するkの比であるk/(kZnZn+kMgMg)を、VI/IIフラックス比と定義する。VI/IIフラックス比が1より小さい場合をII族リッチ条件(Mgを含まない場合は単にZnリッチ条件)と呼び、VI/IIフラックス比が1に等しい場合をストイキオメトリ条件と呼び、VI/IIフラックス比が1より大きい場合をVI族リッチ条件(あるいはOリッチ条件)と呼ぶ。なお、+c面(Zn面)での結晶成長においては、基板表面温度850℃以下であれば、付着係数kZn、kMg、及びkを1とみなすことができ、VI/IIフラックス比をJ/(JZn+JMg)と表せる。
VI/IIフラックス比は、具体的にはたとえば以下のような手順で算出することができる。ZnOの成長を例とする。Znフラックスは、水晶振動子を用いた膜厚モニタによる、室温でのZnの蒸着速度FZn(nm/s)として測定される。Znフラックスの単位は、FZn(nm/s)からJZn(atoms/cms)に換算される。Oラジカルフラックスは、以下のように求められる。Oラジカルビーム照射条件一定(たとえば、O流量2.0sccm/RFパワー300W)の下で、Znフラックスを変化させてZnOを成長し、ZnOの成長速度のZnフラックス依存性を実験的に求める。その結果を、ZnO成長速度GZnOの近似式:GZnO=[(kZnZn−1+(k−1−1を用いてフィッティングすることにより、その条件でのOラジカルフラックスJが算出される。このようにして得られたZnフラックスJZn及びOラジカルフラックスJから、VI/IIフラックス比を算出することができる。
本発明者らは、単一のアクセプタ不純物としてAgを用い、低抵抗のp型導電性を得る方法について研究した。
一般に2つの原子が化学結合を形成した場合、2つの原子の最外殻電子は、化学結合のみに寄与する電子と化学結合には寄与しない電子とに分かれる。それぞれの電子状態(空間分布とそれに応じたエネルギー分布の双方)は、結合(bonding)状態、反結合(anti−bonding)状態と呼ばれる。
遷移金属Mをドーピングして、低抵抗のp型ZnO系半導体薄膜を得るためには、遷移金属Mと酸素Oとの化学結合に由来する M−O anti−bonding orbital energy (反結合軌道準位)を下げる、すなわち価電子帯最上部からの軌道準位(活性化エネルギー)を下げることが必要である。なお、遷移金属Mには、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)が含まれる。
図2に、軌道準位(同図中、Oにおいては、O hybrid orbitals (以下、O混成エネルギー準位と称する。)、Mにおいては、M orbitals(以下、Md準位のエネルギーと称する。))と、M−O間の混成極性エネルギーΔ、混成共有エネルギーVとの関係を概念的に示す。
図2からわかるように、軌道準位を下げるためには、M−O間の混成極性エネルギーΔ、混成共有エネルギーVの下記(1)、(2)の制御が必要である。
(1)混成極性エネルギーΔ(O混成エネルギー準位とMd準位のエネルギー差)を下げる。
(2)混成共有エネルギーV(MとOの原子間距離の2乗に反比例する値)を下げる。
図3Aは、遷移金属のうち、AgまたはCuをZnO中にドーピングしたときのバンド図であり、図3Bは、AgまたはCuがZnO中にドーピングされた場合について、混成極性エネルギーΔ、AgまたはCuと、Oとの原子間距離d、及び1/dの値を比較した表である。
Ag及びCuは、ZnO中でZn位置でZn置換する。Agの場合、混成極性エネルギーΔは0.665eV、Oとの原子間距離dは2.20Åである。1/dは0.207Å−2となる。Cuの場合、混成極性エネルギーΔは1.13eV、Oとの原子間距離dは1.98Åである。1/dは0.255Å−2となる。
Agは、同族(IB族)の遷移金属であるCuと比較して、
(1)混成極性エネルギーΔ(O混成軌道準位とMd軌道準位のエネルギー差)が小さい、
(2)混成共有エネルギーV(MとOの原子間距離の2乗に反比例する値)が小さい、
という特徴を有することがわかる。
実際に、たとえば一般的な半導体のドーピング濃度の範囲(一例として1at%)で計算を行うと、活性化エネルギーは、Agの場合、386meV、Cuの場合、700meVとなる。このように、Agは、たとえばCuに比べ、ZnO系半導体の低抵抗p型化に優位なドーパントであるということができる。
一方、活性化エネルギーが小さい場合であっても、M−O anti−bonding orbital バンドの幅が小さいと、価電子帯からの活性化された励起電子と、励起された電子が入る軌道の占有電子との空間的距離が短くなる。
図4に、M−O anti−bonding orbital バンド幅の違いによる電子間の空間的距離を概念的に示した。
バンド幅が狭い場合、M−O anti−bonding orbital バンド内での電子同士のクーロン反発力が強くなることから、価電子帯からの励起電子の占有可能性が抑制されてしまう。その結果、価電子帯最上部でホール(正孔)が生成されにくくなり、低抵抗p型化が困難となる。
本発明者らは、たとえば M−O anti−bonding orbital バンドの幅が、Agの場合、ドーピング濃度によって変化することを理論計算により見出した。
図5は、本発明者らによる理論計算結果を示す表である。表は、Ag−O anti−bonding orbital バンドの幅、及び、Ag−O anti−bonding orbital energy(活性化エネルギー)のAgドーピング濃度依存性を示す。
バンド幅については、1at%以下のAg濃度範囲においては58meV、2at%のAg濃度においては98meV、3at%のAg濃度においては245meVと計算された。
また、活性化エネルギーについては、1at%以下のAg濃度範囲においては386meV、2at%のAg濃度においては348meV、3at%のAg濃度においては456meVと計算された。ドーピング濃度の増加に伴って、基本的に活性化エネルギーも増加することが確認される。活性化エネルギーの増加は、価電子帯からの電子の励起を困難にする、すなわちホール(正孔)キャリアの生成を困難にする。したがって、ZnO系半導体の低抵抗p型化の阻害因子となる。
図6は、ドーピング濃度に対する M−O anti−bonding orbital バンドの幅及びEの変化を示す概念図である。
たとえばAgである遷移金属Mのドーピング濃度が増大すると、AgとAgとの間の相互作用が大きくなり(強結合状態)、Eは、バンド幅増大を伴いながら上昇する。
図5、及び、図7〜図9を参照し、本発明者らによる考察を説明する。
静的誘電率を8.49とし、正孔の有効質量を0.45〜0.59としたときの、正孔に対するボーア半径(Bohr radius(hole))は、
7.64Å<Bohr radius(hole)<10.017Å
と見積もられる。
たとえばZnO系半導体結晶中にドープされたAgの相互原子間距離(Ag−Ag原子間距離)がボーア半径(7.64Å〜10.017Åの範囲に含まれる値)よりも短い場合は、AgとAgとの間の相互作用が大きくなり(強結合状態)、M−O 反結合軌道準位(活性化エネルギー)、つまりアクセプタの励起準位が増加してしまい、p型キャリアを得ることが困難になる。
図7に、Ag濃度を1at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す。
一般的な半導体のドーピング範囲(1×1017cm−3〜5×1020cm−3程度)に対応するAg濃度1at%以下の範囲においては、ボーア半径に対し、Ag−Ag原子間距離が大きく、AgとAgとの間の相互作用が微小であるため、アクセプタの励起準位の増加もほぼない。図5に示した計算結果によると、活性化エネルギーは386meVである。
しかし1at%以下のAg濃度範囲では、Ag−O anti−bonding orbital バンドの幅(励起準位の幅)は58meVと狭く、価電子帯からの電子励起による該軌道での占有は困難である(占有可能性が抑制される)。すなわち、たとえばAg濃度が1at%以下の範囲では、低抵抗p型のZnO系半導体薄膜の作製は困難であることが示唆される。
図8に、Ag濃度を2at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す。
Ag濃度が2at%の場合、ZnO半導体結晶中にドープされたAgの相互原子間距離は、たとえば10.045Åである。なお、Agは、ZnO中で、Zn位置でZn置換し、かつそのZnO結晶内空間分布が一様となるように配置した。
Ag濃度1at%以下の場合と異なり、Ag−Ag間の原子間距離がホール(正孔)のボーア半径(10.017Å未満の値)に近づく。このため、相互作用が生じはじめ、アクセプタ励起準位のバンド幅が増大する。図5に示した計算結果によると、Ag−O anti−bonding orbital バンドの幅は、98meVである。このため、2at%のAg濃度においては、価電子帯からの電子励起による該軌道での占有の困難性は排除されると考えられる。
一方、図5に示した結果によると、活性化エネルギーは348meVである。2at%のAg濃度におけるAg−Ag間の原子間距離は、活性化エネルギーを増加させる相互作用が効いてこない程度の距離であることがわかる。
したがって、ZnO系半導体の低抵抗p型化のために、Agドーピング濃度を2at%以上とすればよいということがいえる。
図9に、Ag濃度を3at%としたときのAgドープZnO半導体結晶のモデルを示す。
Ag濃度が3at%の場合、ZnO半導体結晶中にドープされたAgの相互原子間距離は、たとえば7.915Å(Ag1−Ag2間の原子間距離)、8.539Å(Ag2−Ag3間の原子間距離)、6.169Å(Ag1−Ag3間の原子間距離)である。なお、Ag1〜Ag3は、同一(0001)面内でのZn置換とならず、かつ3つのAg−Ag間の原子間距離の中、可能な限り2つは、ホール(正孔)のボーア半径よりも大きくなるように配置した。
Ag濃度3at%のときでは、Ag−Ag間の原子間距離はホール(正孔)のボーア半径(7.64Åより大きい値)よりも短くなる(たとえばAg1−Ag3間の距離=6.169Å)。このため、Ag−Ag間の相互作用が大きくなり、アクセプタ励起準位の増大を引き起こし、ZnO系半導体の低抵抗p型化が困難になる。図5に示した計算結果によると、活性化エネルギーは456meVである。ZnO系半導体の低抵抗p型化のためには、Agドーピング濃度を3at%未満とする必要があるということがいえる。
図5に示す計算結果、及び、図7〜図9を参照して説明した考察から、ZnO系半導体にドープするAgの濃度を2at%以上、3at%未満の値とすることで、ZnO系半導体の低抵抗p型化を行うことが可能になるという結論を導くことができる。
このとき、Agがドープされたp型ZnO系半導体結晶中におけるAgの相互間距離は、6.169Åより大きく、10.045Å以下である。
図10を参照して、実施例によるAgドープp型ZnO系半導体結晶層の製造方法を説明する。
Zn面ZnO(0001)基板11に900℃で30分サーマルクリーニングを施した後、基板温度を250℃まで下げる。その後、成長温度250℃で、Znの蒸着速度FZnを0.15nm/sとし、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccm(OフラックスJ=8.1×1014atoms/cms)として、厚さ30nmのZnOバッファー層12を成長させる。成長時間は5分間である。そして、バッファー層12の結晶性及び表面平坦性の改善のため、950℃で30分間のアニールを行う。
ZnOバッファー層12上に、成長温度950℃で、Zn蒸着速度FZnを0.15nm/sとし、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccmとして、厚さ100nmのアンドープZnO層13を成長させる。成長時間は15分間である。
アンドープZnO層13上に、AgドープZnO層を成長する。成長温度250℃、Zn蒸着速度FZnを0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccm、Agのセル温度TAgを900℃として、厚さ130nmのAgドープZnO層を成長させる。これは、ZnO層にドープするAgの濃度を2at%以上、3at%未満の範囲とする成長条件の一例である。成長時間は15分間である。そしてAgドープZnO層に、不純物(Ag)活性化のためのアニール処理を施す。アニールは、酸素雰囲気中、550℃で10分間実施する。こうして、アンドープZnO層13上に、Agドープp型ZnO結晶層14が形成される。
Agドープp型ZnO結晶層14は、Ag濃度が2at%以上、3at%未満の低抵抗ZnO系半導体単結晶層である。Agドープp型ZnO結晶層14におけるAgの相互間距離は、6.169Åより大きく、10.045Å以下である。
低抵抗p型ZnO系半導体単結晶層を実現できるため、高品質の発光ダイオード等の半導体素子が製造可能となる。
図11は、ZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。Zn面ZnO基板1上に、成長温度250℃で、Zn蒸着速度FZnを0.15nm/s(ZnフラックスJZn=9.9×1014atoms/cms)とし、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccm(OフラックスJ=8.1×1014atoms/cms)として、厚さ30nmのZnOバッファー層2を成長させる。バッファー層の結晶性及び表面平坦性の改善のため、950℃で30分間のアニールを行う。
ZnOバッファー層2上に、成長温度900℃で、Zn、O及びGaを同時に供給して、厚さ150nmのn型ZnO層3を成長する。Zn蒸着速度FZnは0.15nm/sとし、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー250W、O流量1.0sccm(OフラックスJ=4.0×1014atoms/cms)とし、Gaのセル温度TGaは460℃とする。n型ZnO層3のGa濃度は、1.5×1018cm−3である。
n型ZnO層3上に、成長温度900℃で、Zn蒸着速度FZnを0.03nm/s(ZnフラックスJZn=2.0×1014atoms/cms)とし、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccmとして、厚さ15nmのアンドープZnO活性層4を成長する。
基板温度を250℃まで下げ、アンドープZnO活性層4上に、p型層として、AgドープZnO層5を形成する。Zn蒸着速度FZnを0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O流量2.0sccm、Agのセル温度TAgを900℃として、厚さ130nmのAgドープZnO層を成長させ(成長時間は15分間)、不純物(Ag)活性化のために、酸素雰囲気中、550℃で10分間のアニールを実施する。
ZnO基板1の裏面にn側電極6nを形成し、Agドープp型ZnO層5上にp側電極6pを形成し、p側電極6p上にボンディング電極7を形成する。n側電極6nは、厚さ10nmのTi層上に厚さ500nmのAu層を積層して形成する。p側電極6pは、大きさ300μm□で厚さ1nmのNi層上に、厚さ10nmのAu層を積層して形成し、ボンディング電極7は、大きさ100μm□で厚さ500nmのAu層で形成する。このようにして、ZnO系半導体発光素子を作製する。
なお、活性層を多重量子井戸構造としてもよい。
ZnOにAgをドープする場合を説明したが、ZnOとMgZn1−xO(0≦x≦0.6)はほぼ同様の結晶成長が可能である。従って、AgドープMgZn1−xO(0≦x≦0.6)の成長にも適用可能であろう。
また、酸素源として、酸素ガスのプラズマから発生するOラジカルを用いたが、酸素ガスに限らず、オゾンやHO、アルコール等の極性酸化剤等酸化力の強い他のガスを用いることも可能であると考えられる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。たとえば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
1 ZnO基板
2 ZnOバッファー層
3 n型ZnO層
4 ZnO活性層
5 Agドープp型ZnO層
6n n側電極
6p p側電極
7 ボンディング電極
11 ZnO基板
12 ZnOバッファー層
13 アンドープZnO層
14 Agドープp型ZnO結晶層
101 真空チャンバー
102 Znソースガン
103 Oソースガン
104 Mgソースガン
105 Agソースガン
106 固体ソースガン
107 ステージ
108 成長基板
109 膜厚計
110 RHEED用ガン
111 スクリーン

Claims (2)

  1. 陽元素の原子比で2%以上3%未満のAgがドープされたAgドープp型ZnO系半導体結晶層。
  2. Agがドープされたp型ZnO系半導体結晶層であって、Agの相互原子間距離が、6.169Åより大きく、10.045Å以下であるAgドープp型ZnO系半導体結晶層。
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Citations (5)

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