以下、図面を参照して本発明に係る中性子捕捉療法装置及び中性子線の測定方法の実施形態について詳細に説明する。
図1及び図2に示されるように、硼素中性子捕捉療法を用いたがん治療を行う中性子捕捉療法装置1は、硼素(10B)が投与された患者(被照射体)Sの硼素が集積した部位に中性子線を照射してがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1は、治療台3に拘束された患者Sに中性子線Nを照射して患者Sのがん治療を行う照射室2を有しており、照射室2内には患者Sを撮影するためのカメラ4が配置されている。このカメラ4は、例えばCCDカメラである。
患者Sを治療台3に拘束する等の準備作業は、照射室2外の準備室(不図示)で実施され、患者Sが拘束された治療台3が準備室から照射室2に移動される。また、中性子捕捉療法装置1は、治療用の中性子線Nを発生させる中性子線発生部10と、照射室2内で治療台3に拘束された患者Sに中性子線Nを照射させる中性子線照射部20とを備えている。
中性子線発生部10は、荷電粒子線Lを作り出すサイクロトロン11と、サイクロトロン11が作り出した荷電粒子線Lを輸送するビーム輸送路12と、荷電粒子線Lを走査してターゲットTに対する荷電粒子線Lの照射制御を行う荷電粒子線走査部13と、ターゲットTとを備えている。サイクロトロン11及びビーム輸送路12は、略長方形状を成す荷電粒子線生成室14の室内に配置されており、この荷電粒子線生成室14は、コンクリート製の遮蔽壁Wで覆われた閉鎖空間である。また、荷電粒子線走査部13は、荷電粒子線LのターゲットTに対する照射位置を制御する。
サイクロトロン11は、陽子等の荷電粒子を加速して陽子線等の荷電粒子線Lを生成する加速器である。このサイクロトロン11は、例えば、ビーム半径が40mmであり、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Lを生成する能力を有している。なお、サイクロトロン11に代えて、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン又はライナック等の他の加速器を用いてもよい。
ビーム輸送路12の一端は、サイクロトロン11に接続されている。ビーム輸送路12は、荷電粒子線Lを調整するビーム調整部15を備えている。ビーム調整部15は、荷電粒子線Lの軸を調整する水平型ステアリング及び水平垂直型ステアリングと、荷電粒子線Lの発散を抑制する四重極電磁石と、荷電粒子線Lを整形する四方向スリット等を有している。なお、ビーム輸送路12は荷電粒子線Lを輸送する機能を有していればよく、ビーム調整部15は無くてもよい。
ビーム輸送路12によって輸送された荷電粒子線Lは、荷電粒子線走査部13によって照射位置を制御されてターゲットTに照射される。なお、荷電粒子線走査部13を省略して、常にターゲットTの同じ箇所に荷電粒子線Lを照射するようにしてもよい。ターゲットTは、荷電粒子線Lが照射されることによって中性子線Nを発生させる。ターゲットTは、例えば、ベリリウム(Be)、リチウム(Li)、タンタル(Ta)又はタングステン(W)で構成されており、直径160mmの円板状を成している。ターゲットTが発生させた中性子線Nは、中性子線照射部20によって照射室2内の患者Sに向かって照射される。
中性子線照射部20は、ターゲットTから出射された中性子線Nを減速する減速材21と、中性子線N及びガンマ線等の放射線が外部に放出されないように遮蔽する遮蔽体22とを備えており、この減速材21と遮蔽体22とでモデレータが構成されている。
減速材21は例えば異なる複数の材料から成る積層構造とされており、減速材21の材料は荷電粒子線Lのエネルギー等の諸条件によって適宜選択される。具体的には、例えばサイクロトロン11からの出力が30MeVの陽子線でありターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材21の材料は鉛、鉄、アルミニウム又はフッ化カルシウムとすることができる。また、サイクロトロン11からの出力が11MeVの陽子線でありターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材21の材料は重水(D2O)又はフッ化鉛とすることができる。
遮蔽体22は、減速材21を囲むように設けられており、中性子線N、及び中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等の放射線が遮蔽体22の外部に放出されないように遮蔽する機能を有する。遮蔽体22は、荷電粒子線生成室14と照射室2とを隔てる壁W1に少なくともその一部が埋め込まれている。また、照射室2と遮蔽体22との間には、照射室2の側壁面の一部を成す壁体23が設けられている。壁体23には、中性子線Nの出力口となるコリメータ取付部23aが設けられている。このコリメータ取付部23aには、中性子線Nの照射野を規定するためのコリメータ31が固定されている。
以上の中性子線照射部20では、荷電粒子線LがターゲットTに照射され、これに伴いターゲットTが中性子線Nを発生させる。ターゲットTによって発生した中性子線Nは、減速材21内を通過している際に減速され、減速材21から出射された中性子線Nは、コリメータ31を通過して治療台3上の患者Sに照射される。ここで、中性子線Nとしては、比較的エネルギーが低い熱中性子線又は熱外中性子線を用いることができる。
治療台3は、中性子捕捉療法で用いられる載置台として機能し、患者Sを所定の姿勢に拘束すると共に、姿勢を拘束したまま準備室(不図示)から照射室2へ移動可能となっている。治療台3は、治療台3の土台を構成する土台部32と、土台部32を床面上で移動可能とするキャスタ33と、患者Sを載置するための天板34と、天板34を土台部32に対して相対的に移動させるためのロボットアーム35とを備えている。
土台部32は、直方体状の基礎部32aと、基礎部32aの上部に位置しロボットアーム35を支持する直方体状の支持部32bとを備えている。平面視において支持部32bは基礎部32aの内部に収まっており、支持部32bの上面にロボットアーム35が固定されている。キャスタ33は、基礎部32aの下部に4個取り付けられている。ここで、キャスタ33に対してモータ等の駆動力を与えるようにしてもよく、この場合キャスタ33を容易に床面上で転動させることができるので水平方向への治療台3の移動が容易になる。
ロボットアーム35は、天板34を土台部32に対して相対的に移動させるためのものであり、天板34の上に拘束された患者Sをコリメータ31に対して相対移動可能となっている。天板34は、平面視において略長方形状となっており、天板34の長手方向の長さは、患者Sが天板34の上に体を横たえることが可能な長さ(例えば2m)となっている。天板34は、ロボットアーム35が移動及び回転することによって土台部32に対する位置を三次元的に調整可能となっている。また、天板34には、患者Sを天板34上で拘束するための拘束具(不図示)が設けられている。
天板34上で拘束された患者Sに対しては、コリメータ31の開口31aを通過した中性子線Nが照射される。コリメータ31は、例えば略直方体状となっており、その中央部に中性子線Nの照射範囲を規定するための開口31aを有している。コリメータ31の外形形状は壁体23におけるコリメータ取付部23aの内面形状に対応しており、コリメータ31は壁体23のコリメータ取付部23aに嵌った状態で固定されている。
ところで、図3に示されるように、中性子捕捉療法装置1では、患者Sに中性子線Nの照射を行うと同時に、照射室2と別室のモニタリングルーム5におけるコンピュータ50のディスプレイ51に中性子線Nの中性子線量がリアルタイムで出力される。ここで、中性子線照射部20から照射される中性子線のうち、一部がシンチレーション検出器(中性子線検出部)41に照射され、他の一部が患者Sに照射される。図4に示されるシンチレーション検出器41のシンチレータ41aは例えば患者Sの頭部に貼り付けられる。シンチレータ41aは、シンチレータ41aに入射された中性子線を光に変換する蛍光体であり、入射された中性子線の線量に応じて内部結晶が励起状態となりシンチレーション光を発生させる。
シンチレーション検出器41は、上記のシンチレータ41aと、シンチレータ41aからの光を伝達するライトガイド41bと、ライトガイド41bによって伝達された光を光電変換して電気信号Eを出力する光検出器41cとを備えている。ライトガイド41bは、例えば、フレキシブルな光ファイバの束で構成されており、シンチレータ41aで発生した光を光検出器41cに伝達させる。ライトガイド41bは、例えば、照射室2からモニタリングルーム5にまで延びておりモニタリングルーム5内の光検出器41cに接続されている。光検出器41cは、ライトガイド41bからの光を検出すると共に電気信号をパルス信号として信号処理回路42に出力する。光検出器41cとしては、例えば光電管や光電子増倍管等を用いることができる。
信号処理回路42は、シンチレーション検出器41からのパルス信号を整形して中性子線測定部43に出力する機能とノイズ除去機能とを有しており、例えばモニタリングルーム5内のコンピュータ50に隣接する位置に配置されている。中性子線測定部43は、コンピュータ50内部のソフトウェアであり、信号処理回路42から受けたパルス信号のパルスを計数してシンチレータ41aに照射された中性子線Nの量をリアルタイムで測定する。
ここで、中性子線測定部43は、中性子線Nの量を、シンチレーション検出器41が単位時間当たりに出力した信号の数(計数率)として測定する。すなわち、中性子線測定部43は、シンチレーション検出器41の信号に関するデータ(以下、信号データとする)を測定し、測定したシンチレーション検出器41の信号データを中性子線量出力部44に出力する。以上のシンチレーション検出器41、信号処理回路42、中性子線測定部43及び中性子線量出力部44によってリアルタイム線量出力部40が構成されている。
また、シンチレーション検出器41は、中性子線Nの照射回数の増加に伴ってライトガイド41bの光ファイバ等が劣化し、中性子線Nの検出効率が低下する。このように中性子線Nの検出効率が低下すると、実際にシンチレーション検出器41に照射された中性子線Nの量に対するシンチレーション検出器41からの信号データが徐々に変化してしまうので、中性子線Nの測定精度が低下する問題を生じさせる。
また、中性子線Nの測定方法としては、例えば患者Sの頭部に金線を装着し、この金線の放射化量を測定することによって照射された中性子線Nの量を測定する方法もある。このように、金線の放射化量を測定して中性子線Nの量を測定する方法は、中性子場を乱しにくい方法であると共に、金線から出るガンマ線の量を測定することで中性子線量を確実に検出することができる。しかしながら、この方法は、金線の放射化に時間を要すると共に、中性子線Nの照射中には中性子線Nの量を測定できずリアルタイム測定ができないという問題がある。更に、事後的に金線の放射化量から中性子線Nの線量の総量を算出するので、線量の総量を照射時間で除算することで単位時間当たりの線量の平均値は算出できるものの、所定時間ごとの線量の変化は算出できないという問題もある。
そこで、上述した各問題を解消するために、中性子捕捉療法装置1では、リアルタイム線量出力部40が中性子線量をリアルタイムで出力可能となっている。また、中性子捕捉療法装置1を用いた中性子線Nの測定方法は、中性子線量をリアルタイムで出力するリアルタイム線量出力ステップを有する。すなわち、リアルタイム線量出力部40の中性子線量出力部44は、中性子線測定部43からシンチレーション検出器41の信号データを受けると、その信号データを予め設定された補正係数45で中性子線Nの中性子線量に変換し、リアルタイムで中性子線Nの線量を出力する。
補正係数45は、シンチレーション検出器41の信号を患者Sに照射される中性子線Nの線量に変換するための変換条件として機能するものであり、シンチレーション検出器41の信号データと患者Sに照射される中性子線Nの線量との関係を示している。この補正係数45は、治療を行う前の校正作業(変換条件設定ステップ)で予め設定される。ここで「治療を行う前」とは、毎治療前であることを示している。なお、毎治療前ではなく所定の治療回数ごとに校正を行ってもよいし、又は所定時間経過後に校正を行ってもよい。以下では、この校正作業と、中性子線Nを用いて患者Sを治療する際における中性子線Nの測定方法について説明する。
校正作業は、例えば患者Sが照射室2内に存在しないときに行われる。図5及び図6に示されるように、校正作業では、補正係数設定部(変換条件設定部)60が治療前に補正係数45を設定する。補正係数設定部60は、金(Au)の細線である金線(金属部材)61と、ガンマ線を検出するガンマ線検出器(ガンマ線検出部)62と、ガンマ線検出器62からの信号を処理する信号処理回路63と、中性子線Nの線量を測定する中性子線量測定部64と、補正係数45を算出する補正係数算出部(変換条件算出部)65とを備えている。
図5に示されるように、シンチレーション検出器41は、例えば患者Sの頭部が位置する箇所に配置され、このシンチレーション検出器41に近接して金線61が配置される。ここで、シンチレーション検出器41と金線61は、コリメータ31の開口31aに対する位置及び方向が同一となるように配置される。このような条件下でシンチレーション検出器41及び金線61に一定時間(例えば10分)中性子線Nを照射する(第2の中性子線照射ステップ)。シンチレーション検出器41に一定時間中性子線Nが照射されると、中性子線測定部43がリアルタイムでシンチレーション検出器41の信号データを測定する。
また、図6に示されるように、一定時間中性子線Nが照射された後に、シンチレーション検出器41及び金線61に対する中性子線Nの照射が停止される。そして、中性子線Nの照射によって放射化された金線61は、照射室2から持ち出されると共に例えばモニタリングルーム5内のホルダに配置される。金線61をホルダに配置した後は、ガンマ線検出器62、信号処理回路63、中性子線量測定部64及び補正係数算出部65によって補正係数45が算出される。この補正係数45の算出処理は、金線61が配置された後にコンピュータ50が操作されることによって自動的に行われる。
ガンマ線検出器62は、放射化された金線61から発生したガンマ線を検出する(ガンマ線検出ステップ)。ここでガンマ線検出器62としては、ゲルマニウム検出器等の半導体検出器を用いることができ、例えばガンマ線検出器62の半導体結晶の中にガンマ線が入ると電気信号が発生する。ガンマ線検出器62は、この電気信号を信号処理回路63に出力する。ガンマ線検出器62と信号処理回路63は、例えばモニタリングルーム5内のコンピュータ50に隣接する位置に配置されている。
信号処理回路63は、ガンマ線検出器62からの電気信号を整形して中性子線量測定部64に出力する機能とノイズ除去機能とを有している。中性子線量測定部64は、信号処理回路63によって整形された電気信号を受けて金線61に照射された中性子線Nの線量を測定する。ここで、中性子線量測定部64は、中性子線Nの量を、単位面積当たりの中性子線Nの量、すなわち中性子フラックス(中性子線束)として測定する。中性子線量測定部64が測定する中性子線量の単位は例えばN/cm2である。中性子線量測定部64が測定した中性子線Nの線量は補正係数算出部65に出力される。
補正係数算出部65には、中性子線量測定部64が測定した中性子線Nの線量と、中性子線測定部43が測定したシンチレーション検出器41の信号データが入力される。そして、補正係数算出部65は、シンチレーション検出器41の信号データと中性子線Nの線量とから、シンチレーション検出器41の信号と中性子線量とを対応付けるための補正係数45を算出する(変換条件算出ステップ)。このように補正係数算出部65によって補正係数45が算出された後に一連の校正作業が完了する。なお、ここで算出した補正係数45は、中性子線測定部43で測定される単位データ(単位時間における光の数)に対する中性子線量測定部64で測定される中性子線量である。
以上のように校正作業が完了した後には、患者Sを治療台3に拘束する等の準備作業が行われる。そして、患者Sを拘束した治療台3を照射室2内に移動した後には、ロボットアーム35を駆動することにより、患者Sの頭部がコリメータ31の開口31aに近接し中性子線Nの照射位置が患者Sの患部に位置するように、コリメータ31に対する患者Sの位置合わせを行う。その後、中性子線Nを患者Sに照射して治療を開始する。
具体的には、図1に示されるようにサイクロトロン11が荷電粒子線Lを発生させて、この荷電粒子線Lをビーム輸送路12及び荷電粒子線走査部13を介してターゲットTに照射させる。そして、図2に示されるようにターゲットTが中性子線Nを発生させる(中性子線発生ステップ)。ターゲットTで発生した中性子線Nは、減速材21で減速されてからコリメータ31の開口31aで照射範囲が規定された後に患者Sに照射される(第1の中性子線照射ステップ)。
ここで、図3に示されるように、コリメータ31から照射された中性子線Nはシンチレーション検出器41に入射する。シンチレーション検出器41に中性子線Nが入射すると、シンチレーション検出器41の信号データが信号処理回路42を介して中性子線測定部43にリアルタイムに伝達される。そして、シンチレーション検出器41の信号データは、中性子線量出力部44によって補正係数45を用いて中性子線Nの線量に変換されてリアルタイムにコンピュータ50のディスプレイ51に出力される(リアルタイム線量出力ステップ)。このように、中性子線Nの線量がリアルタイムにディスプレイ51に出力されるので、治療中に医者等が常時中性子線Nの線量を見ることができる。
以上、中性子捕捉療法装置1及び中性子捕捉療法装置1を用いた中性子線の測定方法によれば、中性子線照射部20が照射した中性子線Nを検出してシンチレーション検出器41がリアルタイムで信号を出力し、この信号データを中性子線量出力部44が予め設定された補正係数45で中性子線量に変換しリアルタイムで中性子線量をコンピュータ50のディスプレイ51に出力する。このように、シンチレーション検出器41及び中性子線量出力部44を有するリアルタイム線量出力部40を備えることによって、中性子線Nを照射して治療を行っている際に中性子線Nの中性子線量をリアルタイムで出力させることができる。
また、補正係数設定部60は、中性子線Nが照射されることによって放射化された金線61から発せられるガンマ線を検出するガンマ線検出器62を備え、中性子線Nを検出してシンチレーション検出器41が出力する信号データと、ガンマ線検出器62によって検出されたガンマ線に基づいて取得される中性子線量とに基づいて補正係数45を修正(更新)する。よって、中性子線Nを検出したことによってシンチレーション検出器41が出力する信号データと、金線61から得られる中性子線量とを用いて補正係数45を修正することにより、信号を出力するシンチレーション検出器41の検出効率が低下しても、修正された補正係数45でシンチレーション検出器41の信号データが中性子線量に補正される。すなわち、シンチレーション検出器41の検出効率が低下しても補正係数45を設定し直すことによって、正確な中性子線量を算出することができる。よって、実際に照射された中性子線量に対する測定された中性子線量のずれを解消することができる。このように、シンチレーション検出器41の信号データを修正された補正係数45で中性子線量に変換して出力することによって中性子線の測定精度が低下する事態を回避することができる。
また、中性子捕捉療法装置1は、中性子線検出部として、中性子線が照射されることによって光信号を発生させるシンチレータ41aを用いている。シンチレータ41aは小型化し易く且つ種々の形に加工し易いので、シンチレータ41aを用いることによって装置の小型化を図ることができる。
更に、中性子線測定部43、中性子線量出力部44、中性子線量測定部64及び補正係数算出部65はコンピュータ50内のソフトウェアであり、信号処理回路42、ガンマ線検出器62及び信号処理回路63はコンピュータ50に隣接する位置に配置されている。このように、中性子線Nの測定作業や校正作業を行う各装置がモニタリングルーム5内で集約されている。また、中性子線Nの測定作業や校正作業は、シンチレーション検出器41や金線61のセットを行えば、モニタリングルーム5内の各装置によって自動的に行われるようになっている。このように、中性子捕捉療法装置1は、中性子線Nの測定作業や校正作業を容易に行える構成となっている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
上記実施形態では、患者Sが照射室2内に存在しないときに校正作業が行われたが、校正作業を行うタイミングは適宜変更可能である。例えば、患者Sが照射室2内に存在している治療中に校正作業を行ってもよい。すなわち、全体の照射時間を30分としたときに、最初の10分で金線61を用いた校正作業を行い、その後の20分で中性子線量のリアルタイム測定を行うことも可能である。
また、補正係数設定部60の金属部材として金線61を用いたが、例えば金箔等、金線61とは異なる形状の金属部材を用いてもよい。また、金属部材の材料は金に限定されず、例えばマンガン等、中性子線が照射されたときに放射化する材料であれば用いることが可能である。
また、上記実施形態では、補正係数算出部65がシンチレーション検出器41の信号データと中性子線Nの線量とから補正係数45を算出した。しかしながら、シンチレーション検出器41の信号以外から補正係数45を算出することも可能であり、例えば、2回目以降の補正係数45の算出にあっては、前回中性子線量出力部44が出力した中性子線量と、今回中性子線量測定部64によって得られた中性子線量とから補正係数45を算出することも可能である。また、信号データを中性子線量に変換する変換条件としては補正係数45に限定されず、例えば式等を用いることも可能である。
また、中性子線を受けてリアルタイムで信号を発生させる中性子線検出部としてシンチレーション検出器41を用いたが、シンチレーション検出器41に代えて電離箱を用いてもよい。
モニタリングルーム5内には、コンピュータ50、ガンマ線検出器62及び信号処理回路42,63が互いに隣接する位置に配置されていたが、これらの配置位置は適宜変えてもよい。また、中性子線発生部10及び中性子線照射部20の構成や中性子捕捉療法装置1内における各装置の配置についても適宜変更することが可能である。