JP2004337268A - モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、放射線の放出量を制御可能とすることで、腫瘍細胞を破壊するのに充分で、かつ正常細胞に対して傷害を残すことがないモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置を提供する。
【解決手段】PET装置4,CT装置5,MRI装置6を用いて腫瘍細胞を測定し、抗体としてモノクローナル抗体を用い、そのモノクローナル抗体に硼素を抱かせて、腫瘍細胞に結合させ、その硼素に向けて外部の中性子線発生装置1から熱中性子線を照射すると、硼素が核反応を起こして腫瘍細胞に放射線を放出し、腫瘍細胞のみを破壊する治療装置である。
【選択図】 図1
【解決手段】PET装置4,CT装置5,MRI装置6を用いて腫瘍細胞を測定し、抗体としてモノクローナル抗体を用い、そのモノクローナル抗体に硼素を抱かせて、腫瘍細胞に結合させ、その硼素に向けて外部の中性子線発生装置1から熱中性子線を照射すると、硼素が核反応を起こして腫瘍細胞に放射線を放出し、腫瘍細胞のみを破壊する治療装置である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉療法(Monocronal Boron Neutron Capture Therapy:MBNCT)を実現する治療装置に係り、特に、効果的に腫瘍細胞を破壊できる治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗体利用中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は我が国では昭和40年代より開始されたものであり、硼素がある種類の腫瘍細胞に集積する性質を利用し腫瘍細胞を集中的に攻撃する療法である。
硼素に中性子線を照てると、中性子と硼素原子核の反応で放出されるα粒子やLi反跳核を利用して腫瘍細胞を破壊する放射線治療の一種である。これらの放出粒子の飛程はα粒子で10ミクロン以下、Li反跳核で5ミクロン以下であり、細胞を一個破壊するのに丁度良い長さとなっていた。
【0003】
従って、硼素が腫瘍細胞に選択的に集積し、そこに適切なエネルギーの中性子が照射されたなら、腫瘍細胞のみを破壊することができる。これは、通常のX線は勿論のこと、陽子線や炭素イオン線でも得られない特長である。
【0004】
今までの放射線治療法は体外から皮膚を通してX線や陽子線、炭素イオン線などを使って病巣に放射線を照射し治療するものである。
病巣に限局して照射することができれば、正常な部分を損なわずに腫瘍の治療ができる。現在、放射線における治療方法はいかに病巣のみに限局して放射線を当てるか焦点になっている。
【0005】
2次元的な照射は対象腫瘍の形を確定し、それに合った型を通して照射することでガン細胞を破壊する方法、また、多方向から照射し、その集まった所のガン細胞を破壊する方法がある。陽子線や炭素イオン線では陽子や炭素イオンが消滅するときに大きなエネルギーを放出する性質を使って体内の特定の深さにある腫瘍細胞のみを破壊する。
【0006】
しかしながら、CT(Computer Tomography:コンピュータ断層撮影)やMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像法)を使っても完全に正確な腫瘍の形を得ることができないことから、これらの方法は腫瘍細胞を限局することが非常に困難であり、実際の病巣より大きめに照射しなければならなくなるため、必要以上に正常な細胞を破壊してしまうという問題点があった。また、照射範囲が腫瘍細胞より小さい場合は取り残しにより再発の誘因となるとの問題点があった。
【0007】
近年、腫瘍細胞等に特異的に現れる抗原を使った腫瘍の治療法が開発されている。モノクローナル抗体を使った治療法である。
細胞の表面には特異的な抗原が発生することがある。乳癌の約30%に発現するHER2や悪性リンパ腫のB細胞型に発現するCD20等である。今後免疫検査の発展により特定の腫瘍に発生する数多くの抗原が発見されると思われる。
【0008】
これらの抗原に選択的に結合する抗体を利用して選択的に腫瘍細胞のみを攻撃できれば腫瘍の治療成績は必ずや向上するものと思われる。
現在、この抗原を利用した治療薬は乳癌のHER2はハーセプチン、悪性リンパ腫B細胞型の場合はリタキサンである。
【0009】
リタキサンの作用機序について図3、図4、図5を参照しながら説明する。図3は、リタキサンの概略図であり、図4は、リタキサンと腫瘍細胞との結合状態を示す概略図であり、図5は、マクロファージの働きを示す概略図である。
リタキサンは、図3に示すように、ヒトBリンパ球細胞表面に存在する抗原(分化抗原CD20)を認識するマウス由来の抗体それ以外の部分がヒト由来の抗体である、キメラ抗体となっている。
【0010】
この抗体が、図4に示すように、腫瘍細胞の表面にあるCD20と結合すると抗体及び補体を介して免疫作用が起こり腫瘍細胞を傷害する。抗体と補体とは、この場合はマウス由来の抗体とヒト由来の補体になる。
【0011】
このキメラ抗体が、図5に示すように、腫瘍表面の抗原CD20に結合する作用及びこの抗体を排除しようとするマクロファージ(食大細胞)の二重の働きにより腫瘍細胞は傷害される。
要するに腫瘍細胞はその表面に発現しているCD20の抗原にリタキサンが結合し、なおかつリタキサンにマクロファージが接着することにより動きがとれなくなり腫瘍細胞として集積・活動ができなくなる。
【0012】
近年、モノクローナル抗体とイットリュウム90等を結合させて治療を行う放射線モノクローナル療法が行われるようになり一部の腫瘍の治療に効果を上げている。
この療法は、図6に示すように、リタキサンのヒト由来の抗体部分にイットリュウム90を抱かせ、このイットリュウム90から特定時間(約2日)放射線が放出されて、それにより集中的に腫瘍細胞を被爆させ破壊するというものである。図6は、放射線モノクローナル治療の概要を示す説明図である。
【0013】
尚、放射線の到達距離は4mm程度なので正常細胞に与えるダメージは限局される。これは現在ゼバリンという製品として米国では認可されている。
他の抗原の発生していない正常細胞には抗体が結合しないため、正確で効率の良い治療が行われる。
【0014】
尚、上記記述に関連する特許文献として、特許第2866093号公報「術中および内視鏡検査的な腫瘍検出ならびに治療に用いられる医薬組成物」がある。
【0015】
【特許文献1】
特許第2866093号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のモノクローナル抗体とイットリュウム90等を結合させて治療を行う放射線モノクローナル療法では、放射線の放出量の調整が難しいという問題点があった。
【0017】
つまり、イットリュウム90における放射線放出の半減期の問題であり、投与したときが一番強い放射線を出すようになっており、腫瘍細胞に到達するときに治療可能のレベルの放射線を放出するよう制御しなければならなかった。
また、長期の半減期を持った放射線放出物質を使うと、正常細胞に重篤な影響を与える原因になってしまうという問題点があった。
【0018】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、放射線の放出量を制御可能とすることで、腫瘍細胞を破壊するのに充分で、かつ正常細胞に対して傷害を残すことがないモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合した状態で中性子線を照射する治療装置であって、腫瘍細胞の位置及び状態を測定する測定手段と、測定された腫瘍細胞の位置及び状態から中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求める中性子線情報処理手段と、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する中性子線照射制御手段とを有するものであり、中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御でき、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さないよう調整できる。
【0020】
本発明は、上記治療装置において、測定手段が、中性子線照射制御手段から中性子線が照射されたことで、治療された腫瘍細胞の状態を測定し、中性子線情報処理手段が、当該治療された腫瘍細胞の状態に応じて中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求め、中性子線照射制御手段が、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御するものであり、中性子線の照射状況に応じて腫瘍の破壊効果をモニターしながら適正な治療を可能にできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係るモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置は、抗体としてモノクローナル抗体を用い、そのモノクローナル抗体に硼素を抱かせて、腫瘍細胞に結合させ、その硼素に向けて熱中性子線を照射すると、硼素が核反応を起こして腫瘍細胞に放射線を放出し、腫瘍細胞のみを破壊するものである。
【0022】
本発明の実施の形態に係る治療装置(本装置)を説明する前に、本装置で行われる治療方法について図2を参照しながら説明する。図2は、モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療方法の概略図である。
本発明の実施の形態に係る治療方法(本治療法:MBNCT)は、硼素に中性子を照射すると核反応が起こることを利用したBNCTと腫瘍細胞に特異的に発生する抗原を利用した治療法である。
【0023】
本発明では、イットリュウムの代わりに硼素を抱かせるものである。
硼素は、中性子線を照射することにより硼素原子核の反応でα粒子やLi反跳核を放出するので、必要なときに体外より中性子(高速中性子は正常細胞を傷害するので低速化した中性子(熱中性子))を照射する。
それにより約10ミクロンの飛程でα粒子が、約5ミクロンの飛程でLi反跳核が放出され腫瘍細胞のみを破壊する。
【0024】
本治療法によれば、熱中性子の照射量を調整することで、必要なときに放射線を放出できる。そのため、硼素が腫瘍細胞に到達してからの被爆とすることができ、正常な部分に対しての傷害がゼバリンより少なくなる。
【0025】
本治療法によれば、熱中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御できるので、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さない線量の調整ができる。
また、本治療法によれば、半減期を気にした治療スケジュールから解放される。
【0026】
また、本治療法によれば、薬剤の取扱がゼバリンと比べて格段に簡単になる。
現在は半減期の問題でゼバリンは薬剤を作り置きしておくことができず、治療効率の向上の妨げになっていたが、本治療法によれば、治療効率を向上させることができる。
【0027】
硼素の他に弱い放射線を放出する物質(Indiumやフッ素同位元素)を混在させることにより腫瘍細胞に薬剤が確実に結合しているかを確認してから治療することができる。
本治療法によれば、熱中性子を段階的に照射し、腫瘍は破壊効果を確認しながら治療することができる。
【0028】
次に、本発明の実施の形態に係るモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置(本装置)について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る治療装置の概略構成図である。
本装置は、図1に示すように、中性子線発生装置1と、中性子線制御装置2と、情報処理装置3と、PET装置4と、CT装置5と、MRI装置6と、純水タンク7と、中性子速度低下装置8と、遮蔽タンク9とを備えている。
【0029】
尚、請求項における測定手段がPET装置4と、CT装置5と、MRI装置6の測定装置に相当し、中性子線情報処理手段が情報処理装置3に相当し、中性子線照射制御手段が中性子線発生装置1、中性子線制御装置2及び中性子速度低下装置8に相当し、中性子線の照射速度及び照射量を制御する手段が中性子速度低下装置8に相当する。
【0030】
本装置の各部を具体的に説明する。
中性子線発生装置1は、中性子を発生させて照射する装置であり、正常な細胞を傷害しないように、高速中性子よりも低速化した中性子(熱中性子)を照射するものであることが望ましい。
【0031】
中性子線制御装置2は、情報処理装置3からの制御情報に従って中性子線発生装置1での中性子線の照射位置、照射時間及び中性子速度低下装置8での照射速度及び照射量を制御する。
尚、中性子線発生装置1で中性子線の照射速度及び照射量をも調整可能であれば、中性子線制御装置2は、その調整を行うようにしてもよい。
【0032】
情報処理装置3は、PET装置4と、CT装置5と、MRI装置6で撮影された患部の映像に基づいて中性子の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量に関する情報を計算して中性子線制御装置2に計算結果を出力する。
また、情報処理装置3と中性子線制御装置2の構成を一体化してもよい。
尚、情報処理装置3としては、コンピュータを想定している。
【0033】
PET(Positron Emission Tomography)装置4は、陽電子[ポジトロン]を放出して身体の断層を撮影する装置である。
CT(Computer Tomography)装置5は、コンピュータによる身体の断層を撮影する装置である。
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像法)装置6は、強力な磁場と電波を用いて、体内の水素原子核の状態を見ることで人体内を画像化する装置である。
【0034】
純水タンク7は、純水を貯水するタンクであり、中性子速度低下装置8への管には純水の流入及び流出を制御するバルブが設けられている。尚、純水は、放射化を防ぐために定期的に廃棄する。
【0035】
中性子速度低下装置8は、内部に純水を貯水する箱状又は板状のものを複数重ねたものとなっており、当該箱状等の内部に純水を選択的に流入させることで、中性子速度の低下の具合を調整する。具体的には、箱状等の内部に純水が充填されている割合が多い程、中性子線の照射速度が低下するものである。
遮蔽タンク9は、中性子速度低下装置8の純水タンク7とは反対側を遮蔽するタンクとなっている。
【0036】
次に、本装置の動作について説明する。
まず、事前にモノクローナル抗体と硼素を点滴等で人体内に送り込む。人体内に投入する薬剤を、硼素とフッ素同位元素若しくはインジウム(Indium)を両方抱かせた薬剤としてもよい。これにより、腫瘍細胞に確実の薬剤が結合していることを確認できる。
【0037】
そして、PET装置4を用いて腫瘍細胞の集積度合を参照して、情報処理装置3で中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量を算出する。照射時間、照射速度及び照射量は、腫瘍細胞の集積度合に基づいて実験的に求められるもので、これら数値を求めるための演算式又は変換テーブル等を予め作成して情報処理装置3に記憶させておき、これら演算式又は変換ケーブル等を用いて照射時間等を求めるようになっている。
【0038】
次に、PET装置4、CT装置5及びMRI装置6を用いて患部の撮影を行い、腫瘍部の位置を特定し、情報処理装置3に出力する。ここで、硼素が集積していることを確認する。
尚、PET装置4、CT装置5及びMRI装置6は、中性子線照射後の腫瘍細胞の状況を確認するのに利用するものである。
【0039】
情報処理装置3は、求めた中性子線照射時間、照射方向、照射速度及び照射量に基づいて、中性子速度低下装置8での速度及び照射量、中性子線発生装置1での照射時間及び照射方向を制御する情報を中性子線制御装置2に出力する。
【0040】
中性子線制御装置2では、情報処理装置3からの情報に基づいて、中性子速度低下装置8における中性子線の速度及び照射量を制御するための純水の量、中性子線発生装置1での照射時間及び照射方向を制御する情報を出力する。
【0041】
中性子速度低下装置8では純水の量が制御され、中性子線発生装置1では制御された照射時間及び照射方向で中性子線を発生させる。このようにして、中性子線の照射が為される。
【0042】
腫瘍細胞に中性子線が照射されると、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合しているので、その硼素が硼素原子核の反応でα粒子やLi反跳核を放出する。それにより約10ミクロンの飛程でα粒子が、約5ミクロンの飛程でLi反跳核が放出され腫瘍細胞のみを破壊するようになっている。
【0043】
また、情報処理装置3における制御として、一定の照射時間で一定の照射速度及び一定の照射量にて腫瘍細胞に中性子線の照射を行い、その後に腫瘍細胞の状況を画像パターンとして情報処理装置3に認識させ、変化がなければ、上記処理を繰り返し、変化があれば、照射時間、照射速度又は/及び照射量を減少させて、腫瘍細胞の状況を画面パターンとして認識させ、更に照射時間、照射速度又は/及び照射量の制御を自動的に行うようにしてもよい。
尚、上記制御処理において、照射時間、照射速度又は/及び照射量を腫瘍細胞の状況に変化があるまで徐々に増加させるようにしてもよい。
【0044】
本装置によれば、熱中性子の照射量を調整することで、必要なときに硼素から放出される放射線を制御できるため、硼素が腫瘍細胞に到達してからの被爆とすることができ、正常な部分に対しての傷害を少なくできる効果がある。
つまり、本装置によれば、熱中性子線の線量に応じて放射線を放出できるので、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さない線量の調整ができる効果がある。
【0045】
また、本装置によれば、半減期を気にした治療スケジュールから解放される。
また、本装置によれば、薬剤の取扱がゼバリンと比べて格段に簡単になる。
【0046】
また、本装置によれば、熱中性子を段階的に照射し、腫瘍は破壊効果を確認しながら治療することができる効果がある。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合した状態で中性子線を照射する治療装置であって、腫瘍細胞の位置及び状態を測定する測定手段と、測定された腫瘍細胞の位置及び状態から中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求める中性子線情報処理手段と、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する中性子線照射制御手段とを有するものとしているので、中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御でき、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さないよう調整できる効果がある。
【0048】
本発明によれば、測定手段が、中性子線照射制御手段から中性子線が照射されたことで、治療された腫瘍細胞の状態を測定し、中性子線情報処理手段が、当該治療された腫瘍細胞の状態に応じて中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求め、中性子線照射制御手段が、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する上記治療装置としているので、中性子線の照射状況に応じて腫瘍の破壊効果をモニターしながら適正な治療を可能にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る治療装置の概略構成図である。
【図2】モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療方法の概略図である。
【図3】リタキサンの概略図である。
【図4】リタキサンと腫瘍細胞との結合状態を示す概略図である。
【図5】マクロファージの働きを示す概略図である。
【図6】放射線モノクローナル治療の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
1…中性子線発生装置、 2…中性子線制御装置、 3…情報処理装置、 4…PET装置、 5…CT装置、 6…MRI装置、 7…純水タンク、 8…中性子速度低下装置、 9…遮蔽タンク
【発明の属する技術分野】
本発明は、モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉療法(Monocronal Boron Neutron Capture Therapy:MBNCT)を実現する治療装置に係り、特に、効果的に腫瘍細胞を破壊できる治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗体利用中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は我が国では昭和40年代より開始されたものであり、硼素がある種類の腫瘍細胞に集積する性質を利用し腫瘍細胞を集中的に攻撃する療法である。
硼素に中性子線を照てると、中性子と硼素原子核の反応で放出されるα粒子やLi反跳核を利用して腫瘍細胞を破壊する放射線治療の一種である。これらの放出粒子の飛程はα粒子で10ミクロン以下、Li反跳核で5ミクロン以下であり、細胞を一個破壊するのに丁度良い長さとなっていた。
【0003】
従って、硼素が腫瘍細胞に選択的に集積し、そこに適切なエネルギーの中性子が照射されたなら、腫瘍細胞のみを破壊することができる。これは、通常のX線は勿論のこと、陽子線や炭素イオン線でも得られない特長である。
【0004】
今までの放射線治療法は体外から皮膚を通してX線や陽子線、炭素イオン線などを使って病巣に放射線を照射し治療するものである。
病巣に限局して照射することができれば、正常な部分を損なわずに腫瘍の治療ができる。現在、放射線における治療方法はいかに病巣のみに限局して放射線を当てるか焦点になっている。
【0005】
2次元的な照射は対象腫瘍の形を確定し、それに合った型を通して照射することでガン細胞を破壊する方法、また、多方向から照射し、その集まった所のガン細胞を破壊する方法がある。陽子線や炭素イオン線では陽子や炭素イオンが消滅するときに大きなエネルギーを放出する性質を使って体内の特定の深さにある腫瘍細胞のみを破壊する。
【0006】
しかしながら、CT(Computer Tomography:コンピュータ断層撮影)やMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像法)を使っても完全に正確な腫瘍の形を得ることができないことから、これらの方法は腫瘍細胞を限局することが非常に困難であり、実際の病巣より大きめに照射しなければならなくなるため、必要以上に正常な細胞を破壊してしまうという問題点があった。また、照射範囲が腫瘍細胞より小さい場合は取り残しにより再発の誘因となるとの問題点があった。
【0007】
近年、腫瘍細胞等に特異的に現れる抗原を使った腫瘍の治療法が開発されている。モノクローナル抗体を使った治療法である。
細胞の表面には特異的な抗原が発生することがある。乳癌の約30%に発現するHER2や悪性リンパ腫のB細胞型に発現するCD20等である。今後免疫検査の発展により特定の腫瘍に発生する数多くの抗原が発見されると思われる。
【0008】
これらの抗原に選択的に結合する抗体を利用して選択的に腫瘍細胞のみを攻撃できれば腫瘍の治療成績は必ずや向上するものと思われる。
現在、この抗原を利用した治療薬は乳癌のHER2はハーセプチン、悪性リンパ腫B細胞型の場合はリタキサンである。
【0009】
リタキサンの作用機序について図3、図4、図5を参照しながら説明する。図3は、リタキサンの概略図であり、図4は、リタキサンと腫瘍細胞との結合状態を示す概略図であり、図5は、マクロファージの働きを示す概略図である。
リタキサンは、図3に示すように、ヒトBリンパ球細胞表面に存在する抗原(分化抗原CD20)を認識するマウス由来の抗体それ以外の部分がヒト由来の抗体である、キメラ抗体となっている。
【0010】
この抗体が、図4に示すように、腫瘍細胞の表面にあるCD20と結合すると抗体及び補体を介して免疫作用が起こり腫瘍細胞を傷害する。抗体と補体とは、この場合はマウス由来の抗体とヒト由来の補体になる。
【0011】
このキメラ抗体が、図5に示すように、腫瘍表面の抗原CD20に結合する作用及びこの抗体を排除しようとするマクロファージ(食大細胞)の二重の働きにより腫瘍細胞は傷害される。
要するに腫瘍細胞はその表面に発現しているCD20の抗原にリタキサンが結合し、なおかつリタキサンにマクロファージが接着することにより動きがとれなくなり腫瘍細胞として集積・活動ができなくなる。
【0012】
近年、モノクローナル抗体とイットリュウム90等を結合させて治療を行う放射線モノクローナル療法が行われるようになり一部の腫瘍の治療に効果を上げている。
この療法は、図6に示すように、リタキサンのヒト由来の抗体部分にイットリュウム90を抱かせ、このイットリュウム90から特定時間(約2日)放射線が放出されて、それにより集中的に腫瘍細胞を被爆させ破壊するというものである。図6は、放射線モノクローナル治療の概要を示す説明図である。
【0013】
尚、放射線の到達距離は4mm程度なので正常細胞に与えるダメージは限局される。これは現在ゼバリンという製品として米国では認可されている。
他の抗原の発生していない正常細胞には抗体が結合しないため、正確で効率の良い治療が行われる。
【0014】
尚、上記記述に関連する特許文献として、特許第2866093号公報「術中および内視鏡検査的な腫瘍検出ならびに治療に用いられる医薬組成物」がある。
【0015】
【特許文献1】
特許第2866093号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のモノクローナル抗体とイットリュウム90等を結合させて治療を行う放射線モノクローナル療法では、放射線の放出量の調整が難しいという問題点があった。
【0017】
つまり、イットリュウム90における放射線放出の半減期の問題であり、投与したときが一番強い放射線を出すようになっており、腫瘍細胞に到達するときに治療可能のレベルの放射線を放出するよう制御しなければならなかった。
また、長期の半減期を持った放射線放出物質を使うと、正常細胞に重篤な影響を与える原因になってしまうという問題点があった。
【0018】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、放射線の放出量を制御可能とすることで、腫瘍細胞を破壊するのに充分で、かつ正常細胞に対して傷害を残すことがないモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合した状態で中性子線を照射する治療装置であって、腫瘍細胞の位置及び状態を測定する測定手段と、測定された腫瘍細胞の位置及び状態から中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求める中性子線情報処理手段と、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する中性子線照射制御手段とを有するものであり、中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御でき、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さないよう調整できる。
【0020】
本発明は、上記治療装置において、測定手段が、中性子線照射制御手段から中性子線が照射されたことで、治療された腫瘍細胞の状態を測定し、中性子線情報処理手段が、当該治療された腫瘍細胞の状態に応じて中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求め、中性子線照射制御手段が、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御するものであり、中性子線の照射状況に応じて腫瘍の破壊効果をモニターしながら適正な治療を可能にできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係るモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置は、抗体としてモノクローナル抗体を用い、そのモノクローナル抗体に硼素を抱かせて、腫瘍細胞に結合させ、その硼素に向けて熱中性子線を照射すると、硼素が核反応を起こして腫瘍細胞に放射線を放出し、腫瘍細胞のみを破壊するものである。
【0022】
本発明の実施の形態に係る治療装置(本装置)を説明する前に、本装置で行われる治療方法について図2を参照しながら説明する。図2は、モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療方法の概略図である。
本発明の実施の形態に係る治療方法(本治療法:MBNCT)は、硼素に中性子を照射すると核反応が起こることを利用したBNCTと腫瘍細胞に特異的に発生する抗原を利用した治療法である。
【0023】
本発明では、イットリュウムの代わりに硼素を抱かせるものである。
硼素は、中性子線を照射することにより硼素原子核の反応でα粒子やLi反跳核を放出するので、必要なときに体外より中性子(高速中性子は正常細胞を傷害するので低速化した中性子(熱中性子))を照射する。
それにより約10ミクロンの飛程でα粒子が、約5ミクロンの飛程でLi反跳核が放出され腫瘍細胞のみを破壊する。
【0024】
本治療法によれば、熱中性子の照射量を調整することで、必要なときに放射線を放出できる。そのため、硼素が腫瘍細胞に到達してからの被爆とすることができ、正常な部分に対しての傷害がゼバリンより少なくなる。
【0025】
本治療法によれば、熱中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御できるので、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さない線量の調整ができる。
また、本治療法によれば、半減期を気にした治療スケジュールから解放される。
【0026】
また、本治療法によれば、薬剤の取扱がゼバリンと比べて格段に簡単になる。
現在は半減期の問題でゼバリンは薬剤を作り置きしておくことができず、治療効率の向上の妨げになっていたが、本治療法によれば、治療効率を向上させることができる。
【0027】
硼素の他に弱い放射線を放出する物質(Indiumやフッ素同位元素)を混在させることにより腫瘍細胞に薬剤が確実に結合しているかを確認してから治療することができる。
本治療法によれば、熱中性子を段階的に照射し、腫瘍は破壊効果を確認しながら治療することができる。
【0028】
次に、本発明の実施の形態に係るモノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療装置(本装置)について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る治療装置の概略構成図である。
本装置は、図1に示すように、中性子線発生装置1と、中性子線制御装置2と、情報処理装置3と、PET装置4と、CT装置5と、MRI装置6と、純水タンク7と、中性子速度低下装置8と、遮蔽タンク9とを備えている。
【0029】
尚、請求項における測定手段がPET装置4と、CT装置5と、MRI装置6の測定装置に相当し、中性子線情報処理手段が情報処理装置3に相当し、中性子線照射制御手段が中性子線発生装置1、中性子線制御装置2及び中性子速度低下装置8に相当し、中性子線の照射速度及び照射量を制御する手段が中性子速度低下装置8に相当する。
【0030】
本装置の各部を具体的に説明する。
中性子線発生装置1は、中性子を発生させて照射する装置であり、正常な細胞を傷害しないように、高速中性子よりも低速化した中性子(熱中性子)を照射するものであることが望ましい。
【0031】
中性子線制御装置2は、情報処理装置3からの制御情報に従って中性子線発生装置1での中性子線の照射位置、照射時間及び中性子速度低下装置8での照射速度及び照射量を制御する。
尚、中性子線発生装置1で中性子線の照射速度及び照射量をも調整可能であれば、中性子線制御装置2は、その調整を行うようにしてもよい。
【0032】
情報処理装置3は、PET装置4と、CT装置5と、MRI装置6で撮影された患部の映像に基づいて中性子の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量に関する情報を計算して中性子線制御装置2に計算結果を出力する。
また、情報処理装置3と中性子線制御装置2の構成を一体化してもよい。
尚、情報処理装置3としては、コンピュータを想定している。
【0033】
PET(Positron Emission Tomography)装置4は、陽電子[ポジトロン]を放出して身体の断層を撮影する装置である。
CT(Computer Tomography)装置5は、コンピュータによる身体の断層を撮影する装置である。
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像法)装置6は、強力な磁場と電波を用いて、体内の水素原子核の状態を見ることで人体内を画像化する装置である。
【0034】
純水タンク7は、純水を貯水するタンクであり、中性子速度低下装置8への管には純水の流入及び流出を制御するバルブが設けられている。尚、純水は、放射化を防ぐために定期的に廃棄する。
【0035】
中性子速度低下装置8は、内部に純水を貯水する箱状又は板状のものを複数重ねたものとなっており、当該箱状等の内部に純水を選択的に流入させることで、中性子速度の低下の具合を調整する。具体的には、箱状等の内部に純水が充填されている割合が多い程、中性子線の照射速度が低下するものである。
遮蔽タンク9は、中性子速度低下装置8の純水タンク7とは反対側を遮蔽するタンクとなっている。
【0036】
次に、本装置の動作について説明する。
まず、事前にモノクローナル抗体と硼素を点滴等で人体内に送り込む。人体内に投入する薬剤を、硼素とフッ素同位元素若しくはインジウム(Indium)を両方抱かせた薬剤としてもよい。これにより、腫瘍細胞に確実の薬剤が結合していることを確認できる。
【0037】
そして、PET装置4を用いて腫瘍細胞の集積度合を参照して、情報処理装置3で中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量を算出する。照射時間、照射速度及び照射量は、腫瘍細胞の集積度合に基づいて実験的に求められるもので、これら数値を求めるための演算式又は変換テーブル等を予め作成して情報処理装置3に記憶させておき、これら演算式又は変換ケーブル等を用いて照射時間等を求めるようになっている。
【0038】
次に、PET装置4、CT装置5及びMRI装置6を用いて患部の撮影を行い、腫瘍部の位置を特定し、情報処理装置3に出力する。ここで、硼素が集積していることを確認する。
尚、PET装置4、CT装置5及びMRI装置6は、中性子線照射後の腫瘍細胞の状況を確認するのに利用するものである。
【0039】
情報処理装置3は、求めた中性子線照射時間、照射方向、照射速度及び照射量に基づいて、中性子速度低下装置8での速度及び照射量、中性子線発生装置1での照射時間及び照射方向を制御する情報を中性子線制御装置2に出力する。
【0040】
中性子線制御装置2では、情報処理装置3からの情報に基づいて、中性子速度低下装置8における中性子線の速度及び照射量を制御するための純水の量、中性子線発生装置1での照射時間及び照射方向を制御する情報を出力する。
【0041】
中性子速度低下装置8では純水の量が制御され、中性子線発生装置1では制御された照射時間及び照射方向で中性子線を発生させる。このようにして、中性子線の照射が為される。
【0042】
腫瘍細胞に中性子線が照射されると、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合しているので、その硼素が硼素原子核の反応でα粒子やLi反跳核を放出する。それにより約10ミクロンの飛程でα粒子が、約5ミクロンの飛程でLi反跳核が放出され腫瘍細胞のみを破壊するようになっている。
【0043】
また、情報処理装置3における制御として、一定の照射時間で一定の照射速度及び一定の照射量にて腫瘍細胞に中性子線の照射を行い、その後に腫瘍細胞の状況を画像パターンとして情報処理装置3に認識させ、変化がなければ、上記処理を繰り返し、変化があれば、照射時間、照射速度又は/及び照射量を減少させて、腫瘍細胞の状況を画面パターンとして認識させ、更に照射時間、照射速度又は/及び照射量の制御を自動的に行うようにしてもよい。
尚、上記制御処理において、照射時間、照射速度又は/及び照射量を腫瘍細胞の状況に変化があるまで徐々に増加させるようにしてもよい。
【0044】
本装置によれば、熱中性子の照射量を調整することで、必要なときに硼素から放出される放射線を制御できるため、硼素が腫瘍細胞に到達してからの被爆とすることができ、正常な部分に対しての傷害を少なくできる効果がある。
つまり、本装置によれば、熱中性子線の線量に応じて放射線を放出できるので、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さない線量の調整ができる効果がある。
【0045】
また、本装置によれば、半減期を気にした治療スケジュールから解放される。
また、本装置によれば、薬剤の取扱がゼバリンと比べて格段に簡単になる。
【0046】
また、本装置によれば、熱中性子を段階的に照射し、腫瘍は破壊効果を確認しながら治療することができる効果がある。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合した状態で中性子線を照射する治療装置であって、腫瘍細胞の位置及び状態を測定する測定手段と、測定された腫瘍細胞の位置及び状態から中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求める中性子線情報処理手段と、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する中性子線照射制御手段とを有するものとしているので、中性子線の線量に応じて放出する放射線を制御でき、腫瘍破壊に充分でかつ正常細胞に対して傷害を残さないよう調整できる効果がある。
【0048】
本発明によれば、測定手段が、中性子線照射制御手段から中性子線が照射されたことで、治療された腫瘍細胞の状態を測定し、中性子線情報処理手段が、当該治療された腫瘍細胞の状態に応じて中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求め、中性子線照射制御手段が、当該求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する上記治療装置としているので、中性子線の照射状況に応じて腫瘍の破壊効果をモニターしながら適正な治療を可能にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る治療装置の概略構成図である。
【図2】モノクローナル抗体を用いた抗体利用中性子捕捉治療方法の概略図である。
【図3】リタキサンの概略図である。
【図4】リタキサンと腫瘍細胞との結合状態を示す概略図である。
【図5】マクロファージの働きを示す概略図である。
【図6】放射線モノクローナル治療の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
1…中性子線発生装置、 2…中性子線制御装置、 3…情報処理装置、 4…PET装置、 5…CT装置、 6…MRI装置、 7…純水タンク、 8…中性子速度低下装置、 9…遮蔽タンク
Claims (8)
- 硼素を抱かせたモノクローナル抗体が腫瘍細胞に結合した状態で中性子線を照射する治療装置であって、
腫瘍細胞の位置及び状態を測定する測定手段と、
測定された腫瘍細胞の位置及び状態から中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求める中性子線情報処理手段と、
前記求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御する中性子線照射制御手段と
を有することを特徴とする治療装置。 - 測定手段は、PET装置、CT装置又は/及びMRI装置であることを特徴とする治療装置。
- 中性子線照射制御手段における中性子線の照射速度及び照射量を制御する手段は、照射される中性子線に対して、複数重ね合わせた箱状の内部に純水を選択的に注入可能とし、注入状態によって通過する中性子線の照射速度及び照射量を制御することを特徴とする請求項1記載の治療装置。
- 測定手段が、中性子線照射制御手段から中性子線が照射されたことで、治療された腫瘍細胞の状態を測定し、
中性子線情報処理手段が、当該治療された腫瘍細胞の状態に応じて中性子線の照射時間、照射方向、照射速度及び照射量の情報を求め、
中性子線照射制御手段が、前記求めた情報に基づいて中性子線の照射を制御することを特徴とする請求項1乃至3記載の治療装置。 - 測定手段が、腫瘍細胞における硼素の集積状況をも測定することを特徴とする請求項1、2又は4記載の治療装置。
- 中性子線照射制御手段が、熱中性子線を照射することを特徴とする請求項1、3又は4記載の治療装置。
- 中性子線発生装置から照射された中性子によって核反応を起こす硼素を抱いたモノクローナル抗体なら成ることを特徴とする薬剤。
- 硼素の他に、フッ素同位元素又は/及びインジウムを混在させたことを特徴とする請求項7記載の薬剤。
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