以下、図面を参照しながら、本実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施の形態にかかる共振子の第1構成例を示す。図1(A)は、平面図、図1(B)は方向Xから見た正面図、図1(C)は方向Yから見た側面図である。
この共振子は、磁束の集中する領域では低い磁気抵抗率、それ以外の領域では高い磁気抵抗率の磁性体部材とすることで、高伝送効率を維持しつつ、軽量化したことを特徴としている。
図1の共振子は、磁性体コアブロック11と、磁性体コアブロック11を巻回するコイル12とを備える。
磁性体コアブロック11は、第1の磁性体コア21と、第2の磁性体コア22(22A、22B)とを有する。第2の磁性体コア22は、2つのコア部分22A、22Bとを含む。
第2の磁性体コア22のコア部分22A、22Bは、図1(A)に示すように、第1の方向(紙面に沿って上下方向)に沿って、第1磁性体コア21の両側に配置されている。コイル12は、上記第1の方向に沿って、第1の磁性体コア21の一部または全部を巻回している。コイル12が部分的に第2の磁性体コア22にかかってもかまわない。
第1の磁性体コア21の磁気抵抗は、第2の磁性体コア22の磁気抵抗より低くなっている。第2磁性体コア22(コア部分22A、22B)の横幅は、第1磁性体コア21と略同一である。第2磁性体コア22の厚みは、第1磁性体コア21より薄くなっている。ただし、第2磁性体コア22(コア部分22A、22B)の横幅は、第1磁性体コア21と異なっていてもかまわない。また、第1の磁性体コア21の磁気抵抗が、第2の磁性体コア22の磁気抵抗より低い限り、第2磁性体コア22の厚みが、第1磁性体コア21と同じかもしくはそれよりも厚くなる構成も可能である。
図2に、図1の構成の磁束分布の強度を領域に応じて模式的に示したものである。領域1が、磁束が強い部分、領域2が弱い部分である。図1の構成では、主に、領域1に相当する箇所に第1の磁性体コアを配置し、領域2に相当する箇所に、第1の磁性体コアよりも磁気抵抗の高い第2の磁性体コアを配置している。これにより、全体として高い伝送効率を維持しつつ、軽量化可能になっている。このような効果が得られる理由については後述する。
以下、第2の磁性体コア22の構成例を示す。
第2の磁性体コア22は、第1の磁性体コアと同一の材料で構成し、かつ第1の磁性体コアよりも薄く構成してもよい。第2の磁性体コア22は、第1の磁性体コア21より薄く構成することで磁気抵抗が第1の磁性体コア21よりも高くなるが、その結果、共振子の軽量化が可能になる。この第2の磁性体コア22は、第1の磁性体コア21と同一の材料でも、異なる組成の磁性体で構成してもよい。
また、第2の磁性体コア22として、第1の磁性体コア21と異なる磁性体材料で形成されてもよい。たとえば、第2の磁性体コア22は、第1の磁性体コア21よりも比重が小さい磁性体材料で形成されてもよい。第2の磁性体コア22は、第1の磁性体コア21よりも比重が小さい磁性材料で形成することで、磁気抵抗が第1の磁性体コア21よりも高くなるが、その結果、共振子の軽量化が可能になる。比重を小さくする方法として、第2の磁性体コア22は、磁性体材料と、磁性体材料と異なる材料との混合により形成されてもよい。このとき、当該磁性体材料と異なる材料は、たとえば樹脂性素材等の誘電体素材を含むことができる。これにより第2の磁性体コア22の強度を高めることができる。
また、第2の磁性体コア22は、誘電体基板と、前記誘電体基板の表面に配置された磁性体膜とから形成されてもよい。これにより第2の磁性体コア22の強度を高めることができる。磁性体膜は、たとえばフェライト膜または磁性体シートでもよい。
図3は、本実施の形態にかかる共振子の第2構成例を示す。図3(A)は、平面図、図3(B)は方向Aから見た正面図、図3(C)は方向Bから見た側面図である。
磁性体コアブロック41は、第1の磁性体コア51と、第2の磁性体コア52とを有する。第1の磁性体コア51は、2つのコア部分51A、51Bとを含む。コア部分51A、51Bは、間隔を開けて配置されている。
コイル42は、第1の磁性体コア51を巻回している。コイル42により巻回されるコア部分51A、51Bの部分は、それぞれ磁束が集中するため、紙面に沿って幅が広くなった拡張部51A-1、51B-1を有する。拡張部51A-1、51B-1は、コア部分51A、51Bの一部である。これにより磁束が集中する部分のコアの断面積を広くとっている。コイル42は、拡張部51A-1、51B-1を含むように、第1の磁性体コア51を巻回している。
第2の磁性体コア52は、コア部51A、51B間の隙間に配置されている。
図4は、図3の構成の磁束分布の強度を領域に応じて模式的に示したものである。領域1が、磁束が強い部分、領域2が弱い部分である。図3の構成では、主に、領域1に相当する箇所に第1の磁性体コア51A、51Bを配置し、領域2に相当する箇所に第2の磁性体コア52を配置している。ただし、領域1の一部(拡張部51A-1、51B-1の間の部分)は、軽量化を優先して、第2の磁性体コア52を配置している。
第1構成例と同様に、第1の磁性体コア51の磁気抵抗は、第2の磁性体コア52の磁気抵抗より低くなっており、第2の磁性体コア52は、第1構成例で示した具体例と同様にして形成できる。
図5に、図3の第2の磁性体コア52を、誘電体基板61と、フェライト膜62とで構成した場合の共振子構成を示す。フェライト膜62は割れやすいため、誘電体基板61に貼り付けることで、強度を向上させることができる。フェライト膜62の代わりに、磁性体シートを用いてもよい。また、ゴム等の樹脂性素材等と磁性体材料を混ぜた基板を生成し、これを第2の磁性体コアとして用いてもよい。これによっても第2の磁性体コア52の強度を向上させることができる。
図6(A)に、第2の磁性体コア73を、筐体71の内壁面(ここでは底面)に貼り付けた構成を示す。筐体71はたとえば誘電体で構成される。図6(B)に示すように、筐体の一部(たとえば底面)を、アルミニウムや銅などの金属板72により形成し、その上に第2の磁性体コア73を配置してもよい。
図7は、図3の第2構成例の変形例を6つ示す。それぞれ平面図のみ示す。正面図および側面図は、図3から容易に理解可能なため、図示を省略する。
図7(A)は第1の変形例を示す。第1の磁性体コアの各コア部81A、81Bの中心部において、各コア部の対向方向と反対方向側(外側)に、拡張部81A-1、81B-1が設けられている。82は第2の磁性体コア、82はコイルを示す。
図7(B)は第2の変形例を示す。この例では、各コア部91A、91Bとも、内側と外側の両方に拡張部91A-1、91A-2、91B-1、91B-2が設けられている。92は第2の磁性体コア、93はコイルを示す。
図7(C)は第3の変形例を示す。この例では、各コア部101A、101Bとも、拡張部101A、101Bが内側に設けられ、拡張部101A、101Bの形状は、コア部の中心に近づくほど、幅が広くなっている。102は第2の磁性体コア、103はコイルを示す。
図7(D)は第4の変形例を示す。この例では、各コア部111A、111Bとも、拡張部111A-1、111B-1が外側に設けられ、拡張部111A-1、111B-1の形状は、コア部の中心に近づくほど、幅が広くなっている。
図7(E)は第5の変形例を示す。この例では、各コア部121A、121Bとも、内側および外側の両方に、拡張部121A-1,121A-2,121B-1,121B-2が設けられ、これらの拡張部の形状は、いずれも中心に近づくほど、それぞれ幅が広くなっている。122は第2の磁性体コア、123はコイルを示す。
図3および図7に示した構成では、第1の磁性体コアを、間隔を開けた2つのコア部分により形成したが、3つ以上のコア部により形成してもよい。このとき、第2の磁性体コアを複数のコア部により形成し、第1の磁性体コアのコア部間の隙間または当該隙間に対向するように、第2の磁性体コアのコア部を配置すればよい。
図8に、本実施の形態にかかる共振子の第3構成例を示す。図8(A)は、平面図、図3(B)は方向Aから見た正面図、図8(C)は方向Bから見た側面図である。
図3と異なる点は、第1の磁性体コアが、コア部51A、51Bの拡張部51A-1、51B-1間にコア部51Cをさらに含む点である。第2の磁性体コア(コア部52A、52B)は、コア部51A、51B間の隙間のうち、少なくともコア部51Cが配置されていない部分に配置されている。なお図示の例では、コア部51Cの厚みや磁気抵抗は、コア部51Aや拡張部51A-1と同じである。図3の構成よりも重くなるが、磁束が集中する部分の断面積を広くして、伝送効率を高くできる。第2の磁性体コアは、コア部51Cを介して、コア部52A、52Bに分割されている。コイル42は、コア部51Cを含むように巻回されている。
図9は、本実施形態に係る無線電力伝送装置のブロック図を示す。無線電力伝送を行う際は、1次側共振子132および2次側共振子133を向かい合わせて、これらの間で磁気結合が行われることで、電力伝送が行われる。1次側共振子および2次側共振子としてそれぞれ、図1、図3、図7および図8等で示したような共振子を用いることができる。
送電回路131からは、1次側共振子132が効率よく伝送可能な周波数の電力信号が供給される。1次側共振子132と2次側共振子133との間の結合により、電力信号が無線伝送される。2次側共振子133が受電した電力信号は、受電回路134へ送られる。なお、必要に応じて、送電回路131と受電回路134の間で、無線信号を用いて、送電回路131の制御部と受電回路134の制御部がやりとりを行い、送受電の開始、終了、中止、送電電力量の変更などが実施される。
以下、本発明者が本実施形態を着想するに至った経緯について説明する。
図10は,入力電流に対するコアロスに起因する損失抵抗をプロットしたグラフである。シミュレーションでは、図11(A),図11(B)、図11(C)に示す共振子構成を用いた。図11(A)−図11(C)の共振子はいずれも、アルミケース141上に配置されている。
図11(A)は、磁性体コアの厚みt=10mmで、全面に一様な磁性体コアを配置した構成(基本構成)を示している。磁性体コア143をコイル142が巻回している。
図11(B)は,磁性体コア144の厚みが、図11(A)の磁性体コア143の半分t=5mmになっている。それ以外は、図11(A)と同様である。
図11(C)は、図11(A)と同様、磁性体コア143(143A、143B、143C)の厚みはt=10mmであるが、コアの配置を工夫している。すなわち、3つのコア部分143A、143B、143Cを間隔を開けて配置することで、磁性体コアを形成している。図11(B)および図11(C)の構成の重さは,図11(A)の構成の約半分である。なお、図11(C)では、コア部分間の隙間に、図3等で示したような第2の磁性体コアは配置していない。
図11(A)と図11(B)に対するシミュレーション結果を比較すると、磁性体コアの厚みを単純に薄くすると,磁気抵抗が増えるために,コア磁性体内での損失が増加している。
それに対して,磁束の集中する箇所に重点的にコアを配置し,磁束密度が小さい箇所についてはコアを配置しない形状(図11(C))では,単純に厚みを半分にしたものよりも、コアロスの増加を抑制できている。
次に,図12は,図11(A)−図11(C)の3つの共振子を用いた場合の結合係数を計算したシミュレーション結果を示す。
磁性体コアの厚みにかかわらず、全面にわたり磁性体コアを配置した方が,間隔を開けて複数のコア部を配置するよりも(コアを間引くよりも)、結合係数が高いことが分かる。つまり、磁性体コアの厚みを小さくしても、結合係数への影響はない、もしくは限定的であると、理解できる。
図12のシミュレーション結果から、高い結合係数の値を得るためには、磁性体コアの平面積を大きくすることが望ましい。また、図10のシミュレーション結果から磁束がより集中するところの磁気抵抗を低くすることで、コアロスの上昇を抑制できる。無線電力伝送の効率は、共振子間の結合係数Kと,共振子のQ値(ωL/R)の積できまる。そこで、本発明者は、磁性体コアの面積を広くとりつつ、磁束の集中が弱い箇所は磁気抵抗を高く(軽量化)することで、結合係数の低下およびコアロスの上昇を抑制して全体を軽量化する共振子構成を着想した。
図13(B)は,図13(A)に示した共振子構成の磁束密度分布の計算結果を示す。図13(A)の共振子は、磁性体コア151にコイル152を巻回したもので、図11(A)または図11(B)と同様の構成を有する。
図13(B)に示されるように、コイルの巻線直下の磁束密度が一番高くなっており、端に行くほど磁束密度は低くなっている。そこで、前述したように,磁束密度分布に応じて領域をわけ,磁束の集中する領域は磁気抵抗を低くし、それ以外の領域は磁気抵抗を高く(軽量化)する。そうすることで,高効率(結合係数の低下を抑制、コアロスの上昇を抑制)の伝送を実現しつつ、軽量化を実現できる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。