JP2013227696A - 織物製品 - Google Patents

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真一 鷲野
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Abstract

【課題】風合いに優れ、かつ、裾部、袖口部等の端部の耐久性に優れた織物製品を提供すること。
【解決手段】本発明の織物製品は、織地からなる身生地部と、該身生地部から連続して製織された、裾部および袖口部から選択される少なくとも1つの端部とを有する。該端部を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含み、該熱融着性弾性繊維が、該端部を構成する他の構成繊維と熱融着している。
【選択図】なし

Description

本発明は、織物製品に関する。より具体的には、本発明は、耐久性に優れた端部を有する織物製品に関する。
ズボン、スカート、ジャケット等の着衣製品、カーテン等のインテリア製品等においては、使用中の擦れや引っ掛かりによって、裾部、袖口部等の端部が傷み、擦り切れ、破れ、ほつれ、毛羽立ち、白化、色褪せ等が大きくなり、審美性が低下するという問題がある。
上記問題に対して、摩耗抵抗性樹脂を布帛の表面に被覆することで布帛の耐摩耗性を向上させることが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法で得られる布帛は風合い、着心地、耐久性等の点で問題がある場合がある。
また、従来、着衣製品、インテリア製品等を構成する布帛においては、ほつれ防止のために裁断部を折り返し、該折り返し部を縫製することによって、その端部が形成されている。しかしながら、当該縫製によるほつれ止めでは、縫製工程に手間がかかる、使用中に縫製糸や裁断部にほつれが生じ、端部全体の傷みへと広がる、縫製箇所が肌に当たると硬さを感じ不快になる、さらに、縫製箇所が審美性を低下させる等の問題がある。
上記問題に対して、裾部に接着剤を用いてほつれ止めを行うこと(特許文献2)、熱融着糸を用いて端部をオーバーロックすることで、ほつれ止めを行うこと(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、これらの方法では、処理箇所が硬くなったり、耐久性等の点で問題がある場合がある。
特開2008−69487号公報 実開平6−65412号公報 特開昭61−125384号公報
本発明の目的は、風合いに優れ、かつ、裾部、袖口部等の端部の耐久性に優れた織物製品を提供することにある。
本発明の織物製品は、織地からなる身生地部と、該身生地部から連続して製織された、裾部および袖口部から選択される少なくとも1つの端部とを有する織物製品であって、該端部を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含み、該熱融着性弾性繊維が、該端部を構成する他の構成繊維と熱融着している。
好ましい実施形態においては、上記熱融着性弾性繊維を含む緯糸の上記端部の裏面における露出率が、25〜88%である。
好ましい実施形態においては、上記熱融着性弾性繊維を含む緯糸の上記端部の表面における露出率が、45〜88%である。
好ましい実施形態においては、上記織物製品の端部の少なくとも一部が無縫製である。
好ましい実施形態においては、上記織物製品は、ズボン、スカート、ジャケット、またはカーテンである。
本発明によれば、端部を構成する緯糸の総数の50%以上が熱融着性弾性繊維を含み、該熱融着性弾性繊維が他の構成繊維と熱融着することにより、良好な風合いを維持しつつ、端部の構成繊維の毛羽立ち、撚りの解け、繊維同士の擦れ等を防止して、該端部の耐久性を向上させることができる。その結果、使用中の摩耗等による端部の傷みを低減することができ、例えば、ほつれ防止用の縫製をしない場合であっても実用可能な織物製品が得られ得る。
2/1綾織の組織図である。黒の升目は経糸が上となっている交差点、白の升目は緯糸が上になっている交差点を示す。
A−1.織物製品
本発明の織物製品は、織地からなる身生地部と、該身生地部から連続して製織された、裾部および袖口部から選択される少なくとも1つの端部(以後、単に「端部」と称することがある)とを有し、該端部を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含み、該熱融着性弾性繊維が、該端部を構成する他の構成繊維と熱融着している。このように、端部を構成する緯糸の半数以上が熱融着性弾性繊維を含み、これらを他の構成繊維と熱融着させることにより、該端部の構成繊維およびその組織全体を固定することができる。その結果、構成繊維の毛羽立ち、撚りの解け、繊維同士の擦れ等が効果的に防止されて、端部の耐久性が向上するので、使用中の摩耗等による端部の傷み、例えば、擦り切れ、白化が低減され得る。また、本発明によれば、織物製品を構成する織地全体において、端部の緯糸以外に熱融着性弾性繊維を使用しなくてもよいので、熱融着性弾性繊維の使用が局所的、かつ、少量であり得る。その結果、製品全体の風合いを劣化させることなく、端部の耐久性を向上させることができる。なお、本発明において、「裾部」は、織物製品を使用する際の鉛直方向最下部を基準として、該基準から鉛直上方に少なくとも2mmまでの範囲を含み、50mmまでの範囲で任意に設定可能な領域であり、該領域を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含む繊維とされる。同様に、「袖口部」は、袖口の縁を基準として、該基準から袖幅線と直交する方向の袖山向きに少なくとも2mmまでの範囲を含み、50mmまでの範囲で任意に設定可能な領域であり、該領域を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含む繊維とされる。例えば、上記各基準からそれぞれ5mmまで、好ましくは10mmまで、より好ましくは20mmまでの範囲を裾部または袖口部とすることができ、これにより、耐久性向上効果がより好適に発揮され得る。また、本発明の織物製品においては、上記の通り、裾部または袖口部はそれぞれ、上記各基準から所定の方向に50mmまでの範囲とされるが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、該範囲を超えて、すなわち、身生地部の一部分または全部を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含む繊維とされてもよい。また、本発明の織物製品は、上記端部を規定する各基準から所定の方向が織地の経方向と概ね一致するように形成される。なお、本明細書において、「経」および「経方向」は、経糸の延びる方向を意味し、「緯」および「緯方向」は、緯糸の延びる方向を意味する。
本発明の織物製品は、熱融着性弾性繊維を含む織地を用いて形成される。本発明の織物製品を形成する織地全体における熱融着性弾性繊維の含有率は、例えば、0.01〜8.0質量%、好ましくは0.01〜6.0質量%、より好ましくは0.01〜5.0質量%であり得る。代表的には、該織地は、経糸を共有させて身生地部と端部とを一体に製織することによって得られ得る。
本発明の織物製品においては、熱融着性弾性繊維の熱融着によって端部の組織全体が固定されているので、該端部を裁断したままで使用してもほつれが生じにくい。よって、該端部の少なくとも一部を無縫製、例えば、切りっ放し仕様とすることができる。このような織物製品によれば、縫製による使用感や審美性の低下を回避し得る。
本発明の織物製品は、好ましくはズボン、スカート、ジャケット、またはカーテンである。ズボンは、股下の長さを問わず、長ズボン、ハーフパンツ、ショートパンツ等であり得る。また、本発明の織物製品は、裾上げ、袖詰め等の丈詰めが施されたものであってもよい。
A−2.身生地部
身生地部は、任意の適切な織地から形成される。身生地部を構成する経糸および緯糸としては、用途等に応じて任意の適切な繊維が用いられ得る。熱融着性弾性繊維(A−3項にて詳述する)は用いてもよく、用いなくてもよい。好ましくは、セルロース系繊維が経糸および緯糸として用いられ得る。吸水性および風合いに優れた織物製品が得られ、また、セルロース繊維を架橋させることによって、優れた防しわ効果が得られ得るからである。身生地部におけるセルロース系繊維の含有率は、例えば、50〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%である。
上記セルロース系繊維は、セルロース繊維を30質量%以上含むことが好ましい。このようなセルロース系繊維を用いることにより、吸水性および風合いに優れた織物製品が得られ得る。当該セルロース系繊維は、好ましくはセルロース繊維を50質量%以上含む。このような含有量であれば、吸水性および風合いに極めて優れ、さらに、セルロース繊維を架橋させることによって、優れた防しわ効果が得られ得る。当該セルロース繊維の含有量は、JIS L 1030−2に準拠して求められる値である。
上記セルロース繊維としては、用途等に応じて任意の適切なセルロース繊維が選択され得る。当該セルロース繊維の具体例としては、綿(例えば、短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿)、麻、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、被嚢類等の植物性および動物性の天然セルロース繊維;レーヨン繊維(例えば、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン)等の再生セルロース繊維;アセテート繊維(例えば、ビスアセテート、トリアセテート)等の半再生セルロース繊維;等が挙げられる。なかでも、吸水性、風合い、および物性に優れた織物製品が得られ得ることから、綿、麻、およびレーヨンが好ましく用いられ得る。当該セルロース繊維は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記セルロース系繊維において、上記セルロース繊維と組み合わせて用いられ得る他の繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維、ポリ乳酸繊維等が挙げられる。ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維等を上記セルロース繊維と組み合わせて用いることにより、織物製品の引裂強力や破断強力の向上効果が得られ得る。当該他の繊維は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記セルロース系繊維は、目的に応じて任意の適切な形態であり得る。具体的には、原糸(未加工糸)、仮撚糸、染色糸等の形態が挙げられる。また、単糸、合撚糸、カバリングヤーン等の形態が挙げられる。また、当該セルロース系繊維が2種以上の繊維を含む場合、当該2種以上の繊維は、例えば、混紡糸、混撚糸等の形態であり得る。これらの形態は、単独でまたは2種以上組み合わせて採用され得る。
上記セルロース系繊維の繊度は、好ましくは英式綿番手で1番手〜60番手である。繊度が1番手未満であると、繊維が太いために織地が硬く、厚く、重くなるという問題がある。一方、繊度が60番手を超えると、繊維が細いために織地の引張強力、引裂強力等が低くなる、製造コストが高くなる等の問題がある。ズボン、スカート、ジャケット等の着衣製品として用いる場合の繊度は、吸水性、速乾性、柔らかさ、織地の強度等の観点から、好ましくは12〜40番手である。また、カーテン等のインテリア製品として用いる場合の繊度は、好ましくは1〜30番手である。なお、繊度が60番手である糸としては、60番手の単糸、120番手の単糸からなる双糸等を用いることができる。一般に、太い繊維を使用した厚手の織地で織物製品を作成する場合には、裾処理における縫製箇所の厚みが増すが、無縫製の切りっ放し状態にすることで、厚手の織地であってもすっきりとした形状を維持することができる。
身生地部は、上記セルロース系繊維に加えて他の繊維を経糸および/または緯糸として用いて製織(いわゆる、交織り)されてもよい。該他の繊維としては、上記セルロース系繊維においてセルロース繊維と混紡され得る他の繊維と同様の繊維が挙げられる。該他の繊維の繊度は、上記セルロース系繊維と同様である。
身生地部の織組織としては、用途等に応じて、任意の適切な織組織が選択され得る。例えば、平織、朱子織、綾織(例えば、ギャバジン、チノクロス、葛城等)の三原組織が使用され得る。これらの織組織は単独で、または組み合わせて使用され得る。
また、一重織に加えて、織地の表地と裏地とをそれぞれ別の織組織で織り上げることができる二重織も使用され得る。二重織としては、経緯二重織、経二重織、緯二重織等が挙げられる。また、ビロード組織、タオル組織等のパイル織であってもよい。
身生地部の織密度としては、用途等に応じて、任意の適切な織密度が選択され得る。経糸密度は、好ましくは30〜200本/インチであり、緯糸密度は、好ましくは30〜100本/インチである。織密度が上記範囲より疎であると、繊維間の隙間の多い織地となるので、例えばズボンとして用いた場合には、透けたり、強度、吸水性等が劣る場合がある。また、織密度が上記範囲より密であると、繊維間の隙間が少なくなるので、例えばズボンとして用いた場合には、風合いが硬く、張りが強くなったり、織地が重たくなる等の問題が生じる場合がある。所望の用途に応じた性能(例えば、吸水性、速乾性、柔らかさ)、織地の強度、厚さおよび重さ等の観点から、経糸密度は、より好ましくは50〜180本/インチであり、緯糸密度は、好ましくは40〜100本/インチである。
身生地部は、代表的には、端部と経糸を共用し、緯糸の一部または全部を置き換えて製織されているが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その一部または全部が端部と同じ組成であってもよい。1つの実施形態においては、緯糸の一部に熱融着性弾性繊維を含む繊維を用いて端部と隣接する部分を製織し、端部から離れるにつれて該繊維の使用量を減少させていってもよい。このように製織することにより、織物製品における身生地部と端部との風合いの差を目立たなくすることができる。別の実施形態においては、端部と隣接する所定の範囲を端部と同じ組成としてもよい。このように製織することにより、本発明の織物製品を丈詰めして使用したとしても、使用時(丈詰め後)の織物製品の端部を構成する緯糸の半数以上を熱融着性弾性繊維を含む繊維とすることができるので、使用時の端部の耐久性を向上させることができる。
A−3.端部
本発明の織物製品の端部を構成する緯糸の総数の50%以上は、熱融着性弾性繊維を含み、該熱融着性弾性繊維が該端部を構成する他の構成繊維と熱融着している。熱融着性弾性繊維が熱融着する他の構成繊維としては、熱融着可能な程度に接触している繊維であればよく、交差する経糸および/または隣接する緯糸が挙げられる。なお、本発明において、熱融着とは、熱融着性弾性繊維が外からの熱または熱と圧力とにより、熱融着性弾性繊維相互および/または熱融着性弾性繊維と他の繊維とが融着し、密着している状態や、繊維の少なくとも一部が融着し、密着している状態、あるいは融着まで至らなくても繊維同士が接着している状態をいう。
本発明においては、端部を構成する緯糸の総数に対して50〜100%、好ましくは60〜100%、より好ましくは67〜100%、さらに好ましくは75〜100%の緯糸が、熱融着性弾性繊維を含む。このような割合で熱融着性弾性繊維を含む繊維を緯糸として用いることにより、熱融着箇所が増加するので、端部の耐久性をより向上させることができる。
熱融着性弾性繊維を含む緯糸は、端部に均等に分散するように織り込まれていることが好ましい。熱融着箇所が均等に分散するので、耐久性をムラなく向上させることができるからである。具体的には、連続して織り込まれ得る熱融着性弾性繊維を含まない緯糸の本数は、例えば5本以下、好ましくは4本以下、より好ましくは3本以下、特に好ましくは2本以下である。
端部に含まれる熱融着性弾性繊維を含む緯糸の本数としては、端部を構成する緯糸の総数に対して50%以上であれば、特に制限されない。端部は、熱融着性弾性繊維を含む緯糸を、例えば、2本以上、好ましくは5本以上、より好ましくは10本以上含むことができる。端部に含まれる熱融着性弾性繊維を含む緯糸の本数の上限は、特に制限されないが、風合い等の観点から、例えば100本以下とすることができる。
端部を形成する織地中において、熱融着性弾性繊維は、代表的には、熱融着により楕円等の扁平形状に変形し、織地を加工する際に付与される緯方向の張力により織地の経方向に長径が配された状態で存在している。本発明においては、熱融着後の熱融着性弾性繊維の長さ方向に直交する断面のアスペクト比(P1)が、1.2〜10であることが好ましく、1.3〜9であることがより好ましく、1.7〜9であることがさらに好ましい。当該範囲内のアスペクト比(P1)を有する熱融着性弾性繊維は、その断面形状と上記織地中での配向状態との相乗効果によって経糸との接触面積(すなわち、融着面積)が増大し得、その結果、高い密着力で織地中に固定され得る。このような織地によれば、例えば、洗濯後においても熱融着性弾性繊維が織地中に留まり、端部から指先で熱融着性弾性繊維を含む繊維を取り出すことも困難であり、擦り切れ防止、ほつれ防止等の効果が好適に得られ得る。一方、該アスペクト比が1.2未満であると、洗濯等によってほつれが生じる場合がある。また、該アスペクト比が10を超えると、繊度によっては使用中に断糸する場合や、熱融着性弾性繊維の広がりが大きくなって織地が硬くなる場合がある。なお、該アスペクト比(P1)は、電子顕微鏡観察(50〜300倍)によって測定される熱融着後の熱融着性弾性繊維の長さ方向に直交する断面の外接矩形における短辺の長さ(D1)に対する長辺の長さ(L1)の比(P1=L1/D1)として算出される。該アスペクト比は、例えば、熱融着性弾性繊維の種類(フィラメント数、繊度、融点等)を選択すること、熱処理の温度および/または時間を選択すること、熱融着時に圧力を付与すること、織地に緯方向の張力を付与すること等によって所望の範囲に調整することができる。
端部の裏面における熱融着性弾性繊維を含む緯糸の露出率は、好ましくは25〜88%、より好ましくは30〜88%である。裏面における露出率がこのような範囲内であれば、表面における露出率が低く抑えられるので、外観的に身生地部との色差等を少なくすることができる。その結果、非熱融着性繊維の風合いを維持しつつ、端部の耐久性を向上させることができる。また、端部を裏面側に折り返して熱処理をすることにより、織地同士を良好に接着することができるので、縫製をせずに裾上げ、裾始末等の裾処理や袖詰めを行うことができる。
端部の表面における熱融着性弾性繊維を含む緯糸の露出率は、好ましくは45〜88%、より好ましくは60〜88%である。表面における露出率がこのような範囲内であれば、表面の耐摩耗性がより向上されるので、耐久性に優れた織物製品が得られ得る。このような効果は、後述するように織地中のセルロース繊維を架橋した場合に顕著に発揮され得る。また、熱融着性弾性繊維の色や風合いをデザインとして活用することもできる。
なお、本明細書においては、糸の露出率とは、緯糸と経糸との交錯の仕方を表した組織図(JIS L0206 3.1一般用語1011)において、所定の糸が織地の表面または裏面に現れる割合を意味し、下記の式に基づいて算出される。例えば、図1に示す2/1綾織の組織図において、所定の糸を緯糸とした場合、緯糸の露出率は、表面では33%、裏面では67%と算出される。
緯糸の露出率(%)=(組織図中の白の升目数)/(組織図中の全升目数)×100
端部の摩耗減量率は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。このような摩耗減量率であれば、洗濯および使用を繰り返した場合であっても、擦り切れ等の摩耗が生じにくいので、織物製品の審美性が維持され得る。摩耗減量率は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
端部は、機械的強度に優れることが好ましい。1つの実施形態においては、端部は無縫製であっても、その機械強度(例えば、引裂強力)が、身生地部以上であり得る。このような織物製品によれば、使用または洗濯を繰り返しても端部に破れや裂けが生じにくいという利点がある。端部の引裂強力は、好ましくは7Nより高く、より好ましくは10Nより高い。端部の引裂強力が7N以下であると、使用時または洗濯時に織物製品に破れや裂けが生じ易くなる傾向にある。端部の引裂強力は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
端部の織密度および織組織としては、用途等に応じて、任意の適切な織密度および織組織が選択され得る。これらはそれぞれ、上記身生地部と同様であることが好ましく、織組織については表裏を入れ換えてもよい。
1つの実施形態においては、端部の織組織として、2/1、3/1、4/1の綾組織、5枚朱子組織、8枚朱子組織等が好ましく用いられ得る。これらの織組織であれば、織地の裏面における熱融着性弾性繊維を含む緯糸の露出率を25%以上とすることができるので、外観的に色差を少なくして熱融着性弾性繊維を目立ち難くすることができ、また、折り返して熱処理することによって織地の裏面同士を強固に接着することができる。
別の実施形態においては、端部の織組織として、2/1、3/1の綾組織の裏組織または織地の経緯逆使い、5枚緯朱子織、8枚緯朱子織、平組織、2/2、3/3の綾組織等が好ましく用いられ得る。これらの織組織であれば、織地の表面における熱融着性弾性繊維を含む緯糸の露出率を45%以上とすることができるので、耐摩耗性が顕著に向上されて、擦り切れ、白化等が好適に低減され得る。
また、二重織を用いる場合、例えば、経緯二重織、経二重織、緯二重織等において表地(織物製品の表面)における熱融着性弾性繊維の使用量を変えずに、裏地(織物製品の裏面)に熱融着性弾性繊維を多用することで、熱融着性弾性繊維の効果を高めることができる。
上記熱融着性弾性繊維を含む緯糸としては、熱融着性弾性繊維を単独で使用してもよく、熱融着性弾性繊維を含む複合糸を使用してもよい。単独で使用する場合は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸、原着糸等の任意の形態であり得る。複合糸として使用する場合は、熱融着性弾性繊維を芯糸として、周囲を非熱融着性繊維で被覆したカバリングヤーン、熱融着性弾性繊維と非熱融着性繊維とを合撚した合撚糸、エア交絡糸等の形態であり得る。熱融着性弾性繊維の被覆率が低いほど熱融着箇所が増加することから、熱融着性を高める観点からは、単独で、例えば原糸(未加工糸)で使用することが好ましい。一方、原糸(未加工糸)専用の送り出し装置が不要であること、織地の伸度コントロールがし易いこと、織地の引裂強力を高めること等の観点からは、複合糸の形態で使用することが好ましい。複合糸の中でも、複合糸の中心に熱融着性弾性繊維を配置することができ、また熱融着性弾性繊維の被覆率のコントロールが容易で、均一に被覆できることから、カバリングヤーンを用いることが好適である。
上記熱融着性弾性繊維としては、例えば、1.0倍以上、好ましくは1.0倍を超える伸長倍率および90〜180℃の溶融開始温度を有する任意の適切な熱融着性弾性繊維が用いられ得る。熱融着性弾性繊維の種類としては、熱融着性ポリウレタン弾性繊維、熱融着性ポリエーテルエステル弾性繊維、熱融着性ポリエステル弾性繊維等が挙げられる。なかでも、熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、ゴムのように柔軟で伸び縮みし、加熱により該繊維同士または他の繊維との接触箇所で融着による変形を生じるが、融着により溶けだして織り込み場所から抜け出ることなく連なっており、融着後も柔軟性を保持しているので好適である。これに対し、融解時に溶けて織り込み場所から抜け出して他の繊維に浸透し、凝固するタイプの熱融着性繊維は、凝固箇所が硬くなる、一部が鋭角的に固まり肌への刺激性が強くなる等の点で好ましくない。
熱融着性弾性繊維としては、目立ちにくくすることを目的として、他の構成繊維と同系色のものを用いてもよく、デザイン性を高めることを目的として、他の構成繊維と異なる色のものを用いてもよい。
上記熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、任意の適切な製造方法によって得られ得る。当該製造方法としては、例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンまたは低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し糸条に成形する方法、当該固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、さらには、上記のそれぞれの方法で得られたポリマーまたはポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し糸条に成形する方法等がある。好ましくは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマー(紡糸用ポリマー)を固化することなく溶融紡糸する方法である。低温で融着しやすく、かつ、耐熱性を有する熱融着性ポリウレタン弾性繊維が得られ得るからである。当該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造に用いられ得るポリオール、ジイソシアネート、ジアミン、およびジオールとしては、例えば、特開2011−74516に記載のものが挙げられる。
熱融着性ポリウレタン弾性繊維を単独で、または複合糸の芯糸として使用する場合、モノフィラメント糸またはフィラメント数2〜8のマルチフィラメント糸として使用することが好ましい。フィラメント数が8を超えると、上記熱融着後の断面アスペクト比(P1)が10を超える場合がある。フィラメント数が2〜8のマルチフィラメント糸として使用すると、フィラメント毎の変形とフィラメント間の熱融着とによって、上記熱融着後の断面アスペクト比(P1)が1.3以上となるのでより好ましい。
単独で使用する場合の熱融着性弾性繊維の繊度(マルチフィラメント糸の場合はトータル繊度)は、用途に応じて任意の適切な繊度に設定され得る。熱融着性ポリウレタン弾性繊維の場合は、代表的には44〜622dtexである。表面積が大きいほど、熱融着する面積が大きいことから、78dtex以上が好ましく、より好ましくは99dtex以上、さらに好ましくは110dtex以上である。622dtexより太くなると、製品によってはゴムのような感触に近付いたり、繊維の生産性が低下する場合がある。
熱融着性弾性繊維を含む複合糸を使用する場合、上記非熱融着性繊維としては特に制限は無く、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等からなる繊維を使用することができる。なかでも、長繊維ではナイロンまたはポリエステルが好ましく、短繊維では綿を50質量%以上含む繊維が好ましい。これらの繊維は、製織性、複合糸の製造のしやすさ、風合い等の点に優れるからである。特に、綿糸を用いて身生地部を製織し、複合糸の非熱融着性繊維を綿100%の糸とする場合、織地中の天然繊維の含有率を高めることができるので、風合い等の点から好ましい。
上記カバリングヤーンとしては、SCY(シングルカバリングヤーンまたはシングルカバードヤーン)またはDCY(ダブルカバリングヤーンまたはダブルカバードヤーン)があるが、熱融着性弾性繊維の被覆率のコントロールが容易であり、均一に被覆できること、および、熱融着性弾性繊維の被覆率が低いほど、熱融着性弾性繊維と他の構成繊維との接点が増し、熱融着箇所が増加することからSCYの使用がより好ましい。
熱融着性ポリウレタン弾性繊維をSCYの芯糸に用いる場合、当該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度(マルチフィラメント糸の場合はトータル繊度)は、代表的には44〜622dtexである。繊維の生産性、熱融着性、製織性、所望の用途に応じた物性および触感等の観点から、好ましくは78dtex以上が好ましく、より好ましくは99dtex以上、さらに好ましくは110dtex以上である。
SCYの芯糸に用いられる熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.0〜3.0倍、より好ましくは1.0〜2.3倍である。鞘糸に長繊維を使用した場合は、さらに好ましくは1.0〜1.8倍である。鞘糸に短繊維を使用した場合は、さらに好ましくは1.0〜1.5倍である。伸長倍率が低すぎると、例えば、SCY製造中に熱融着性ポリウレタン弾性繊維の巻取体からの該弾性繊維の解舒性が悪くなり、その結果、断糸したり、できあがりのSCYの伸長性にばらつきが生じる場合がある。一方、伸長倍率が高すぎると、織り込んだ箇所の織地の収縮が大きくなる等の問題が生じる場合がある。
SCYの鞘糸に用いる非熱融着性繊維の繊度は、熱融着性、製織性、所望の用途に応じた物性および触感等の観点から、適切に設定され得る。鞘糸が長繊維である場合、その繊度は、好ましくは11〜156dtex、より好ましくは44〜156dtex、さらに好ましくは55〜156dtexである。また、そのフィラメント数は、好ましくは1〜100、より好ましくは10〜46である。鞘糸が短繊維である場合、その繊度は、好ましくは89dtex(英国式綿番手60番手)〜1063dtex(英国式綿番手5番手)である。引裂強力が低い織地を用いた織物製品は、端部を縫製することで端部の引裂強力を向上させ得るが、無縫製のまま使用する場合には引裂強力の低下が大きな問題になる場合がある。これに対し、本発明では、このような鞘糸を用いることにより、端部の引裂強力を7N超とすることができる。このような引裂強力であれば、使用または洗濯を繰り返しても破れや裂けの発生が防止され得る。
SCYの鞘糸の撚り数は、好ましくは100〜2100T/m、より好ましくは100〜1400T/mである。撚り数が低すぎると、製織性の低下等の問題が生じる場合がある。一方、撚り数が高すぎると、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が高くなり、熱融着しにくくなる場合がある。
SCY中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは50〜90質量%である。混率が低すぎると、摩耗低減等の効果が弱くなったり、熱融着箇所が少なくなるので、ほつれ防止等の効果が弱くなる場合がある。混率が高すぎると、熱融着効果は十分となるが、製織性の低下、織り込み箇所の織地の収縮が大きくなる、得られる織物製品の引裂強力が低下する等の問題が生じる場合がある。
SCY中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率は、好ましくは0.8%以上であり、また、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下である。被覆率が低すぎると熱融着効果は十分となるが、製織性の低下、織り込み箇所の織地の収縮が大きくなる、得られる織物製品の引裂強力が低下する等の問題が生じる場合がある。被覆率が高すぎると、熱融着が不十分となって、ほつれ防止、摩耗低減等の効果が弱くなる場合がある。
なお、上記カバリングヤーン中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率は、下記(1)式で計算した値であり、上記カバリングヤーンの被覆率は下記(2)式で計算した値である。
ポリウレタン弾性繊維の混率(%)=(PU/DR)/((PU/DR)+D)×100…(1)式
C = (0.012 × √ D × T / ( 1000/ D R ) ) ×100…(2)式
ここで、Cは被覆率(%)を、PUは熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度(デシテックス)を、Dは熱融着性ポリウレタン弾性繊維の周囲に被覆される非熱融着性繊維の繊度(デシテックス)を、Tは撚糸時の撚り数(T/m)を、DRはカバリングまたは撚糸時のポリウレタン弾性繊維の伸長倍率(倍)を示す。
好ましいSCYの具体例としては、鞘糸が長繊維であって、その繊度が45〜156dtexであり、芯糸が熱融着性ポリウレタン弾性繊維であって、その繊度が110〜622dtexであり、被覆率が2.5〜8.1%であるSCY;鞘糸が短繊維であって、その繊度が89〜1063dtexであり、芯糸が熱融着性ポリウレタン弾性繊維であって、その繊度が98〜311dtexであり、被覆率が5.1〜11.5%であるSCY;が挙げられる。なお、鞘糸が短繊維の場合には、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度が622dtexを超えても所定の性能が発揮され得るが、該繊維の生産性が低下する場合がある。
上記熱融着性弾性繊維を含む緯糸が、熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む合撚糸である場合、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.0〜3.0倍である。また、撚り数は、好ましくは300〜500T/mである。撚り数が300T/mよりも低いと、製織安定性が低下する場合があり、500T/mよりも高いと、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が高くなり、熱融着しにくくなる場合がある。
上記熱融着性弾性繊維を含む緯糸が、熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含むエア交絡糸である場合、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.0〜3.0倍である。また、交絡数は、好ましくは30〜150個/mである。交絡数が30個/m未満であると、製織安定性が低下する場合があり、150個/mよりも多いと、使用される熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が高くなり、熱融着が不十分となる場合がある。
本発明においては、上記熱融着性弾性繊維として、熱融着性コンジュゲートヤーンを用いることもできる。熱融着性コンジュゲートヤーンは、融点の異なる2成分を複合紡糸して得られる繊維であり、熱処理することにより、その低融点成分の融着により繊維交差点を固定化することが可能である。熱融着性コンジュゲートヤーンとしては、例えば、結晶性ポリプロピレンとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートと共重合体ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンとポリプロピレン、ポリウレタンとポリアミドエラストマー等の組み合わせのものが知られている。
上記熱融着性コンジュゲートヤーンの原料としては、任意の適切な熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコール等をブロック共重合したポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられ得る。
上記端部が熱融着性弾性繊維を含まない緯糸を含む場合、該緯糸としては、任意の適切な繊維が用いられ得る。具体的には、上記身生地部の経糸および/または緯糸として用いられ得る繊維が挙げられ、好ましくは身生地部を構成する緯糸と同じ繊維が用いられ得る。緯糸の一部を身生地部と揃えることで、外観の差を小さくすることができる。
B.織物製品の製造方法
本発明の織物製品は、代表的には、上記織地を熱処理して熱融着性弾性繊維を熱融着させること(熱融着工程)、該織地を裁断すること(裁断工程)、および、該織地を縫製すること(縫製工程)を含む方法によって得られ得る。織地には、毛焼、精練、漂白、シルケット加工等の公知の加工処理、染色またはプリント加工処理等を施してもよい。
熱融着工程における熱処理条件としては、用いる熱融着性弾性繊維の種類等に応じて適切に設定され得る。必要に応じて、加圧してもよい。また、熱融着工程は複数回行ってもよい。例えば、後述の架橋処理において熱融着性弾性繊維の溶融開始温度以上の温度が適用される場合、該架橋処理は熱融着工程でもある。上記熱処理における加熱温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。また、加熱時間(熱融着工程が複数回行われる場合は合計時間)は、好ましくは0.5〜150分、より好ましくは0.5〜120分である。
裁断工程は、熱融着工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。例えば、端部に熱融着性弾性繊維を含む緯糸と含まない緯糸とが2:1〜20:1の割合で交互に織り込まれている場合、熱融着工程前に裁断し、熱融着性弾性繊維を含まない緯糸まで抜き取ることで裁断ラインを揃えることができる。また、型紙を用いて、素早く裁断場所を決めてもよい。
縫製工程における縫製条件は、特に制限されず、用途等に応じて適切に設定され得る。本発明の織物製品は、端部にほつれ止めの縫製が施されていてもよく、切りっ放し仕様であってもよい。また、ほつれ止めの縫製の代わりに、または、該縫製に加えて、端部に熱融着性樹脂を熱融着させてもよい。熱融着性樹脂を熱融着させることにより、摩耗およびほつれに対する耐性をより向上させ得る。
上記熱融着性樹脂は、熱融着性樹脂フィルムまたは熱融着性樹脂層を備えた熱融着性テープの形態で用いられ得る。具体的には、端部の一方の面に熱融着性テープを熱融着させてもよいし、端部を所定幅折り返して、該折り返し部の織地の間に熱融着性樹脂フィルム(接着芯)を挟んで熱融着させてもよい。織地の質量に対する熱融着性樹脂の使用量は、好ましくは0.01質量%〜2.0質量%である。
上記熱融着性樹脂としては、一般にホットメルト樹脂として用いられるものであれば、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、上記織地との接着力が4.9N以上、より好ましくは6.8N以上である樹脂である。接着力が4.9N未満であると、使用中に剥離する場合がある。好ましい樹脂の具体例としては、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系ホットメルト樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂等の反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は適度の伸縮性を備えているので、伸縮性に優れた織物製品が得られ得る。なかでも、ポリウレタン系ホットメルト樹脂を用いることが好ましい。
上記ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、90℃〜150℃が好ましい。温度が90℃未満であると、製品の仕上げ加工前(糊抜き、精練、および漂白工程)で溶融する可能性があるので、取り扱いが難しくなるおそれがある。また、150℃より高い場合は、織地そのものにダメージを与え、風合いを損なうおそれがある。
上記織地がセルロース繊維を含む場合には、架橋剤を用いて織地中のセルロース繊維を架橋するための処理(架橋処理)を施してもよい。これにより、織物製品に優れた防しわ性およびウォッシュアンドウェアー性(以下、「W&W性」と称する場合がある)を付与し得る。通常、セルロース繊維を架橋すると耐摩耗性が低下する傾向にあるが、本発明の織物製品においては、特定の割合で熱融着性弾性繊維が熱融着しているので、防しわ性およびW&W性と耐久性とを高いレベルで両立することができる。
上記架橋剤とは、セルロースの水酸基と反応し、セルロース系繊維間に架橋結合を形成させる化合物を意味し、本発明においては、セルロースの水酸基と反応し、セルロース系繊維間に架橋を生成するものであれば任意の化合物を使用することができる。
上記化合物としては、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基および水酸基のいずれかを含む化合物が挙げられる。具体的には、尿素・ホルムアルデヒド化合物(例えば、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、尿素誘導体)、メラミン・ホルムアルデヒド化合物(例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン誘導体)、環状尿素化合物(例えば、環状尿素型樹脂、エチレン尿素誘導体、ブチレン尿素誘導体)、アルキル・カーバメート化合物(例えば、アルキル・カーバメート樹脂)、アセタール化合物(例えば、アセタール樹脂)、エポキシ化合物(例えば、エポキシ樹脂)、オルガノオキシ基または水酸基含有シリコーン化合物(例えば、シリコーン樹脂、シリコーンゾル)、カルボン酸化合物、ポリカルボン酸、スルフォン化合物、第4級アンモニウム塩、1,3−ジクロロ−2−プロパノール誘導体、N−メチロールアクリルアミド等の化合物が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を混合して用いられ得る。これらのなかでも、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、オルガノオキシ基または水酸基含有シリコーン化合物、ポリカルボン酸が、効果、物性、反応性、経済性等の点で好ましい。さらにこれらの中でも、エチレン尿素型の環状尿素化合物がより好ましい。
上記尿素誘導体としては、尿素、モノメチロール尿素、ジメチロール尿素等の公知のものを使用することができる。
上記環状尿素化合物としては、具体的にはジメチロールエチレン尿素、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等があげられる。これらの中では、エチレン尿素タイプが反応性や価格の点で好ましく、ホルマリン低減の為には、メチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの、あるいは、低ホル型と呼ばれるジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等の使用が有効である。
上記架橋剤のなかでも、メラミン誘導体、エチレン尿素型の環状尿素化合物、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシランおよびテトラオルガノキシシラン、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、ならびにセルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つ化合物を好適に用いることができる。
上記架橋処理においては、上記架橋剤を水等に溶解または分散させた架橋処理液として用いることが好ましい。当該架橋処理液中の架橋剤の濃度は、好ましくは0.5〜80質量%、より好ましくは0.5〜50質量%である。
上記架橋処理液には、上記架橋剤とセルロースとの反応性を高め、架橋処理を迅速に行うために触媒を添加することができる。当該触媒としては、通常、セルロース系繊維の樹脂加工に用いられる触媒であれば特に限定されず、尿素誘導体;メラミン誘導体;環状尿素化合物;エポキシ化合物;シリコーン化合物;アルキルカーバメート樹脂;ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、ホウ酸等の無機酸;等が挙げられる。これらの触媒には、必要に応じて、助触媒としてクエン酸、酒石酸、林檎酸、マレイン酸等の有機酸等を併用することもできる。
上記触媒の使用量は、上記架橋剤に対して0.01〜400質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜300質量%である。触媒の使用量が0.01質量%未満であると、反応収率が低下して架橋量が少なくなり、効果が不足する場合がある。一方、触媒の使用量が400質量%を超えると、セルロース系繊維の酸分解等により繊維の強度が低下したり、変色の原因になる場合がある。
上記架橋処理液には、必要に応じて、セルロースと架橋剤との反応を円滑に進めるための助剤を添加することができる。助剤は、架橋剤とセルロースの反応を促進させたり、架橋生成反応においても反応を均一に進めるといった反応溶媒としての作用、更にはセルロースを膨潤させる作用等を有するものである。当該助剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上記助剤の使用量は、架橋剤に対して1〜400質量%が好ましく、より好ましくは5〜300質量%である。助剤の使用量が1質量%未満であると、反応を円滑にする効果が不十分となる場合がある。一方、助剤の使用量が400質量%を超えると、セルロースの脆化を招いたり、架橋処理後に織地から助剤を除去することが煩雑になる場合がある。
上記架橋処理液には、上述の成分の他に、必要に応じて、風合い調整用の柔軟剤や、遊離ホルマリン濃度低減のためのホルマリンキャッチャー、浸透剤としての界面活性剤等を添加することもできる。メラミン誘導体や環状尿素型樹脂等のホルマリンを発生するおそれのあるものはホルマリンキャッチャー剤との併用が、架橋セルロースが硬くなることで引裂強力や引張強度が低下する場合は柔軟剤の併用が、架橋処理液の織地への浸透性が低い場合は浸透剤の併用が好ましい。なお、本発明の織物製品中の残留ホルマリンは、75ppm以下が好ましい。75ppmを超えると使用時に皮膚刺激を引き起こす恐れがある。
上記架橋処理液のpHは、通常1〜6、好ましくは2〜5の範囲内に調整され得る。このような範囲内であれば、セルロースの加水分解による繊維強度の低下や変色を防止することができる。pHは、任意の適切なpH調整剤によって調整され得る。
上記架橋処理は、代表的には、上記架橋剤等を含む架橋処理液を処理する織地に付着させ、次いで、熱処理することによって行われ得る。織地に架橋処理液を付着させる方法としては、通常のパッド・ドライ法、浸漬法、含浸法、印捺法、インクジェット印刷法、レーザープリンター印刷法、塗布法、噴霧法等の公知の方法を採用することができる。例えば、織地全体を処理する場合は、パッド・ドライ法が効率的で好ましい。製品全域を処理する場合は、浸漬法や噴霧法によって手軽に実施できる。製品の一部を処理する場合は、噴霧法が効率的である。例えば、架橋処理しない部分を所望の形状をしたマスキング等で覆い、その上から織地全体に架橋処理液を噴霧することで、マスキングした部分以外に処理液を付着させることができる。また、所望の形状に型抜きしたシート等を織地の上にセットし、型抜きされた部分だけに処理液を噴霧して付着させることもできる。インクジェット印刷方式等で精巧な柄を形成する場合、液の滲み、濃度むら等のない鮮明な図柄を得る目的で、上記処理液に、公知の増粘剤、浸透剤、粘着剤、カチオン処理剤等を添加することができる。
本発明の織物製品における架橋剤の付着量は、織地の質量に対して、0.3〜25質量%が好ましい。付着量が0.3質量%未満であると、防しわ性およびW&W性が十分に得られない場合がある。また、付着量が25質量%を超えると、架橋セルロース繊維の破断強度および引裂強力が大きく低下する場合がある。ただし、セルロース系繊維の種類等を選択することにより物性(引張強度、引裂強力、破裂強力等)を高めることができる場合は、架橋剤の付着量を多くすることもできる。例えば、中繊維綿からなる綿糸に代えて、長繊維綿、超長綿または超・超長綿を含む綿糸を一部あるいは全部使用すると破裂強力、引張強度および引裂強力の向上に効果がある。
上記熱処理は、ピンテンター、スチームセッター、オーブン、ベーキング機等の加熱手段を用いて、好ましくは70〜220℃、より好ましくは80〜180℃で、好ましくは0.5〜60分間、より好ましくは1〜40分間の熱処理条件で行われ得る。このような条件であれば、セルロース繊維や架橋セルロース繊維を脆化させることなく、十分な架橋量が得られ得る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例で用いられる測定方法および評価方法は以下の通りである。
[摩耗減量試験]
JIS 1096 D法に準拠して摩耗減量率を測定した。具体的には、経11cm×緯11cmの試験片を用意し、試験片の周縁部にほつれ防止のために、接着剤を塗布して、乾燥させた。内面に粒度700番(JISR6253耐水研磨紙)の研磨紙を取り付けたアクセレローター型試験機のローターに試験片を入れ、3,000rpmで5分間回転させた。該試験前後の試験片の重量の減少率を摩耗減量率として次式で算出する。
摩耗減量率(%)=(試験前の試験片重量−試験後の試験片重量)/(試験前の試験片重量)×100
[洗濯耐久性評価試験]
実施例等で得た織物製品(2〜3枚)を、家庭用2槽式洗濯機(TOSHIBA(株)製 AW-60SDF(W))を使用して下記条件にて洗濯および乾燥を5回行った。
洗濯(5分)→遠心脱水(3分)→注水すすぎ(2分)→遠心脱水(3分)→注水すすぎ(2分)→遠心脱水(3分)→タンブル乾燥(30分)
液温は、洗い時が40℃、すすぎ時が30℃であった。水流は強水流であった。洗剤はライオン(株)製の商品名「(登録商標)トップ」を使用した。水量は23リットルであった。洗濯水1リットルに対して洗剤1.3gを使用した。織物製品と負荷布の重量をあわせて、0.8kgになるように負荷布の重量を定めて、織物製品と負荷布を一緒に洗濯した。
5回の洗濯および乾燥後の織物製品の端部のほつれ程度を観察し、下記の4段階で評価した。なお、△および×は、使用をためらう程度の傷みであり、◎または○が洗濯耐久性の点で好ましい。
〈評価基準〉
◎(4点):傷みが認められない
○(3点):やや傷みが認められる
△(2点):傷みが認められる
×(1点):傷みが激しい
[織地の引裂強力(N)]
JIS L−1096 D法(ペンジュラム法)に準拠して測定した。具体的な測定方法は以下の通りである。なお、以下の測定方法は緯方向の引裂強力の測定方法であるが、経方向の引裂強力は、試験片の長辺を緯方向とすること以外は同様にして測定できる。経方向および緯方向の引裂強力のうち、より低い値を物性評価に用いた。
実施例等で用いた端部用の織地から経10cm×緯6.3cmの試験片をそれぞれ3枚以上採取した。エレメンドルフ形引裂強さ試験機を用い、両つかみの中央で該試験片の長辺のほぼ中央に該辺と直角に鋭利な刃によって2cmの切れ目を入れ、残りの4.3cm分の経糸が引裂かれたときに示す荷重(N)を測定した。平均値を織地の緯方向の引裂強力とした。
[織地中の残留ホルマリン(ppm)]
JIS L−1041 アセチルアセトン B法に準拠して測定した。具体的には、次のとおりである。測定する織地を1cm角に切って、三角フラスコに入れ、その上に蒸留水100ccを加えて、40℃の高温槽に1時間浸漬した。その後、ガラスフィルターで濾過し、得られたろ液を5ml採取し、2,4−ペンタジオン(アセチルアセトン)試薬を5ml加えて撹拌した。得られた混合液を40℃の恒温槽に30分間浸漬した。分光光度計で混合液の吸光度を測定して、ブランクとの差から残留ホルマリン量を求めた。
[W&W性評価試験]
JIS L―1096 洗濯後のしわ A法に準じて、洗濯を実施した。脱水後はタンブル乾燥を実施した。試験点数は1点とした。W&W性の判定者は1名として、レプリカ(AATCC TEST METHOD 124にて規定)と比較して判定した。判定標準間は0.1級刻みで評価した。例えば、等級3.0から等級3.5の場合、3.1級と3.2級、3.3級、3.4級、3.5級とした。なお、一般に、W&W性が3.0級以上であれば、織物製品のしわが少なくなり、3.2級以上であればさらにしわが目立ちにくくなり、さらに3.5級以上とすると、アイロン掛けをしなくても安心してそのまま使用できるレベルとされている。
[アスペクト比の測定]
実施例等で得た織物製品の熱融着後の端部を経糸および緯糸に沿って5cm角の正方形となるように裁断して試料とする。試料は5枚準備する。次に、該試料中の熱融着性弾性繊維の長さ方向に直交する方向に切断した断面を、電子顕微鏡(KEYENCE社製、型番「VE−7800」、倍率:50〜300倍)を使用して観察し、該断面の外接矩形における短辺の長さ(D1)に対する長辺の長さ(L1)を算出する。1試料につき5か所の測定を実施し、最大および最小を除いた3か所の平均をとり、該試料のアスペクト比として記録する。残り4枚の試料も同様に測定し記録する。5枚の試料の各々からとった5個の記録の平均値をその織地の熱融着性弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)と定める。
[実施例1]
ズボン用の織地を製織した。具体的には、身生地部用の織地として、経糸に英国式綿番手綿30番手黒色先染め糸(60番双糸、綿100%)、緯糸に英国式綿番手綿30番手黒色先染め糸(60番双糸、綿100%)を用い、経糸密度156本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、2/2右綾織組織で製織した。該身生地部用の織地に続いて裾部用の織地として、経糸を身生地部と共用し、緯糸にSCY黒色原着糸(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−Lタイプ(繊度156dtex4フィラメント、伸長倍率1.3倍、黒の原着糸は糸の質量に対して0.2%のカーボンブラックを練り込んで得た)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex46フィラメント、撚り数300T/m、黒の先染め糸)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率61%、被覆率4.1%である)と英国式綿番手綿30番手黒色先染め糸(60番双糸、綿100%)とを2:1(SCY:綿糸)の割合で使用し、身生地部用の織地と同様の経糸密度、緯糸密度、および織組織で製織した。このとき、SCYが均等に配置されるように、SCY2本と綿糸1本とを交互に織り込んだ。
次に、得られた織地を製織密度(経糸156本/2.54cm、緯糸83本/2.54cm)になるように伸長しつつテンターでセットし、150℃で1分間処理することにより、1回目の熱処理を行った。その後、糊抜(ビーカーで酵素糊抜き剤と精練剤で30分処理)、乾燥の順で処理した。続いて、当該織地を1回目の熱処理と同様の伸長条件にしてテンターでセットして、150℃で4分間乾熱処理することにより、2回目の熱処理を行った。SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの接触部においてこの時点で完全に熱融着し、該接触部の境界が消失する程度に融着した。
さらに、該織地を架橋処理液(水70質量部、架橋剤として下記式(1)のジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(固形分濃度60質量%)16質量部、触媒として固形分濃度20質量%の塩化マグネシウムの水溶液3質量部、ホルマリンキャッチャー剤として大日本インキ化学工業(株)製、製品名「ファインテックスFC−KP」3質量部、柔軟剤として大日本インキ化学工業(株)製、製品名「ファインテックスPE−140−E」3質量部、および日華化学(株)製、製品名「AMC−800E」5質量部)を付与したパッダーに浸漬し、マングルでパッドオン率(織地中に含まれる架橋処理液重量/架橋処理液付与前の織地の重量×100)65%として絞った後、架橋反応させた。条件は、上記1回目の熱処理と同様の伸長条件で、155℃設定のピンテンターで4分間処理とした。この段階で、セルロース繊維とセルロース架橋剤とが反応した。
加工後の織地中のSCYは、芯糸と鞘糸、および、芯糸と綿糸の接触部で芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれた。糸相互の境界面は存在し一体化していないので鞘糸および綿糸を芯糸から手で引き剥がすことはできるが、芯糸には大きな熱融着痕(埋没跡)が生じており、芯糸と芯糸、芯糸と該芯糸の鞘糸、芯糸と他のSCYの鞘糸、芯糸と綿糸の接触交差部における熱融着により優れたほつれ防止機能が生じていることがわかる。また、熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、2.7であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
Figure 2013227696
その後、ズボンの型紙に従って織地を裁断し、チャックやポケット、ベルト穴等の付属品の取り付けおよび縫製を施した。これにより、ビジネス用スラックスである織物製品を得た。得られたスラックスの裾には、縫製が施されておらず、切りっ放しの状態であった。また、該スラックスにおいては、使用時の鉛直方向最下部、すなわち、裾の縁から上方に50mmまでの部分が上記裾部用の織地で形成されていた。裾部における緯糸の総数の67%がSCYであった。また、裾部の表面および裏面におけるSCYの露出率は、共に33%であった。
その後、着用者の股下寸法に合わせて裾を裁断することにより裾上げを行い、切りっ放しの状態で着用に供した。裾上げ後のスラックスは、裾の縁から上方に10mmまでの部分が、上記裾部用の織地で形成されており、該裾部は緯糸として22本のSCYを含んでいた。また、スラックスの風合いおよび着心地は良好であった。
[実施例2]
ズボン用の織地を製織した。具体的には、身生地部用の織地として、経糸に英国式綿番手綿20番手黒色先染め糸(20番単糸、綿100%)、緯糸に英国式綿番手綿20番手黒色先染め糸(20番単糸、綿100%)を用い、経糸密度114本/2.54cm、緯糸密度56本/2.54cm、1/2左綾織組織で製織した。該身生地部用の織地に続いて裾部用の織地として、経糸を身生地部と共用し、緯糸にSCY黒色糸(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−Lタイプ(繊度233dtex4フィラメント、伸長倍率1.08倍、黒の原着糸は糸の質量に対して0.2%のカーボンブラックを練り込んで得た)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex46フィラメント、撚り数300T/m、黒の先染め糸)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率73%、被覆率3.4%である)と英国式綿番手綿20番手黒色先染め糸(20番単糸、綿100%)とを3:1(SCY:綿糸)の割合で使用し、身生地部用の織地と同様の経糸密度、緯糸密度、および織組織で製織した。このとき、SCYが均等に配置されるように、SCY3本と綿糸1本とを交互に織り込んだ。
次に、得られた織地を製織密度(経糸114本/2.54cm、緯糸56本/2.54cm)になるように伸長しつつテンターでセットし、150℃で1分間処理することにより、1回目の熱処理を行った。その後、糊抜(ビーカーで酵素糊抜き剤と精練剤で30分処理)、乾燥の順で処理した。続いて、当該織地を1回目の熱処理と同様の伸長条件にしてテンターでセットして、150℃で4分間乾熱処理することにより、2回目の熱処理を行った。SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの接触部においてこの時点で完全に熱融着し、該接触部の境界が消失する程度に融着した。その後、実施例1と同様にして架橋処理を施した。得られた織地における熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、2.8であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
上記織地を用いて、実施例1と同様にしてビジネス用スラックスである織物製品を得た。得られたスラックスの裾には、縫製が施されておらず、切りっ放しの状態であった。また、該スラックスにおいては、使用時の鉛直方向最下部、すなわち、裾の縁から上方に50mmまでの部分が上記裾部用の織地で形成されていた。裾部における緯糸の総数の75%がSCYであった。また、裾部の表面および裏面におけるSCYの露出率は、各々50%と25%であった。
その後、着用者の股下寸法に合わせて裾を裁断することにより裾上げを行い、切りっ放しの状態で着用に供した。裾上げ後のスラックスは、裾の縁から上方に10mmまでの部分が、上記裾部用の織地で形成されており、該裾部は緯糸として17本のSCYを含んでいた。また、スラックスの風合いおよび着心地は良好であった。
[実施例3]
異なるSCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−Lタイプ(繊度78dtex1フィラメント、伸長倍率1.08倍)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度56dtex24フィラメント、撚り数300T/m)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率56%、被覆率2.9%である)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてズボン用の織地を得た。得られた織地における熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は1.2であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
上記織地を用いて、実施例1と同様にしてビジネス用スラックスである織物製品を得た。該スラックスの裾部における緯糸の総数の67%がSCYであった。また、裾部の表面および裏面におけるSCYの露出率は、各々33%であった。
その後、着用者の股下寸法に合わせて裾を裁断することにより裾上げを行い、切りっ放しの状態で着用に供した。裾上げ後のスラックスは、裾の縁から上方に10mmまでの部分が、上記裾部用の織地で形成されており、該裾部は緯糸として22本のSCYを含んでいた。また、スラックスの風合いおよび着心地は良好であった。
[実施例4]
ズボン用の織地を製織した。具体的には、身生地部用の織地として、経糸に英国式綿番手綿30番手白色先染め糸(60番双糸、綿100%)、緯糸に英国式綿番手綿30番手白色先染め糸(60番双糸、綿100%)を用い、経糸156本/2.54cm、緯糸83本/2.54cm、3/1右綾織組織で製織した。該身生地部用の織地に続いて裾部用の織地として、経糸を身生地部と共用し、緯糸には、SCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−Lタイプ(繊度156dtex2フィラメント、伸長倍率1.08倍)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex46フィラメント、撚り数300T/m)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率65%、被覆率3.4%である)を使用し、身生地部用の織地と同様の経糸密度および緯糸密度で、表面と裏面の織組織を入れ換えた織地を製織した。
次に、得られた織地を製織密度(経糸156本/2.54cm、緯糸83本/2.54cm)になるように伸長しつつテンターでセットし、150℃で1分間処理することにより、熱処理を行った。その後、糊抜(ビーカーで酵素糊抜き剤と精練剤で30分処理)、乾燥の順で処理した。続いて、当該織地を1回目の熱処理と同様の伸長条件にしてテンターでセットして、150℃で4分間乾熱処理することにより、2回目の熱処理を行った。SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの接触部においてこの時点で完全に熱融着し、該接触部の境界が消失する程度に融着した。その後、実施例1と同様にして架橋処理を施した。得られた織地における熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、1.9であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
上記織地を用いて、実施例1と同様にしてビジネス用スラックスである織物製品を得た。得られたスラックスの裾には、縫製が施されておらず、切りっ放しの状態であった。また、該スラックスにおいては、使用時の鉛直方向最下部、すなわち、裾の縁から上方に50mmまでの部分が上記裾部用の織地で形成されていた。該部分(裾部)における緯糸はすべてSCYであった。また、裾部用の織地の表面および裏面におけるSCYの露出率は、それぞれ25%および75%であった。
その後、着用者の股下寸法に合わせて裾を裁断することにより裾上げを行い、切りっ放しの状態で着用に供した。裾上げ後のスラックスは、裾の縁から上方に10mmまでの部分が、上記裾部用の織地で形成されており、該裾部は緯糸として33本のSCYを含んでいた。また、スラックスの風合いおよび着心地は良好であった。
[比較例1]
裾部を身生地部と同じ織地で形成したこと以外は実施例1と同様にして、ビジネス用スラックスである織物製品を得た。
[比較例2]
裾部にSCY1本と綿糸2本とを交互に織り込んだ以外は実施例1と同様にして、ビジネス用スラックスである織物製品を得た。裾部における緯糸の総数の33%がSCYであった。また、裾部の表面および裏面におけるSCYの露出率は、共に17%であった。熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、2.7であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
実施例1〜4および比較例1〜2のスラックスについての各評価結果を表1に示す。熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、電子顕微鏡(KEYENCE社製、型番「VE−7800」)を用いて、倍率200倍で観察して求めた。
Figure 2013227696
表1に示される通り、実施例1、2および4のスラックスの裾は、切りっ放しの状態であるが、洗濯や摩耗による傷みが生じ難く、耐久性に優れていた。さらに、着用時にしわになり難く、また、洗濯後もアイロンを必要としない、高い防しわ効果を有していることから、ビジネス用スラックスとして優れていた。実施例3のスラックスの裾は、洗濯後にやや傷みが見られた。一方、比較例1および2のスラックスは、防しわ効果は同等であるが、洗濯による裾の傷みが激しく、また、摩耗による劣化が目立つことから、繰り返し着用には不適であった。
[実施例5]
実施例4と同じ織地を製織密度(経糸156本/2.54cm、緯糸83本/2.54cm)になるように伸長しつつテンターでセットし、150℃で1分間処理することにより、熱処理を行った。その後、糊抜(ビーカーで酵素糊抜き剤と精練剤で30分処理)、乾燥の順で処理した。
その後、ズボンの型紙に従って織地を裁断し、チャックやポケット、ベルト穴等の付属品の取り付けおよび縫製を施した。裾始末は、裾の裁断部を約10mm内側に折り返し、アイロン(パナソニック(株)製 NI-R36 質量1.3kg)を使用して、該アイロンの自重により1分間中温(140〜160℃)で熱圧着することによって行った。折り返し部においては、この時点で、織地の裏面に露出していたSCY中の熱融着性の芯糸は隣接するSCY中の芯糸と、その接触部において境界が消失する程度に完全に熱融着した。また、SCYの芯糸と鞘糸、および芯糸と綿糸の接触部で芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれ、これにより、織地の折り返し部が接着固定された。これにより、ショートパンツである織物製品を得た。なお、熱融着後の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の断面のアスペクト比(P1)は、1.6であり、織地の経方向に長径が配された状態で、織地中に固定化されていた。
得られたショートパンツにおいては、裾の縁から上方に10mmまでの部分が、上記裾部用の織地で形成されており、該部分(裾部)における緯糸はすべて(33本×2)SCYであった。また、裾部用の織地の表面および裏面におけるSCYの露出率は、それぞれ25%および75%であった。裾部の洗濯耐久性評価は3〜4級と良好で、接着が剥がれることもなかった。また、裾部用の織地の摩耗減量率は10%、引裂強力は23Nと共に良好であった。
本発明の織物製品は、ズボン、スカート、ジャケット等の衣料品およびカーテン等のインテリア用品に好適に用いられ得る。

Claims (5)

  1. 織地からなる身生地部と、該身生地部から連続して製織された、裾部および袖口部から選択される少なくとも1つの端部とを有する織物製品であって、
    該端部を構成する緯糸の総数の50%以上が、熱融着性弾性繊維を含み、
    該熱融着性弾性繊維が、該端部を構成する他の構成繊維と熱融着している、織物製品。
  2. 前記熱融着性弾性繊維を含む緯糸の前記端部の裏面における露出率が、25〜88%である、請求項1に記載の織物製品。
  3. 前記熱融着性弾性繊維を含む緯糸の前記端部の表面における露出率が、45〜88%である、請求項1または2に記載の織物製品。
  4. 前記端部の少なくとも一部が無縫製である、請求項1から3のいずれかに記載の織物製品。
  5. ズボン、スカート、ジャケット、またはカーテンである、請求項1から4のいずれかに記載の織物製品。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018144319A (ja) * 2017-03-03 2018-09-20 ワールド海綿株式会社 インクジェットプリンター専用の綿布用紙

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