JP2012177033A - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、直径0.1〜30μmの範囲のボイドを多数有し、前記ボイドが、(i)前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面から中心に向かって50μmまでの表面領域において、100個/mm2以下存在し、(ii)表面から中心に向かって200μmを除く中心領域において、10〜500個/mm2存在し、前記表面領域のボイドの数と前記中心領域のボイドの数が、1:5〜500の範囲であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子により上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、通常、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで得られる。ここで、発泡剤を含浸させてすぐに加熱発泡させると、発泡粒子中の気泡が不均一になることがあるため、通常、発泡剤を含浸させた後5日間程度室温で放置される。この工程は、一般に熟成工程と称されている。
かくして本発明によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、直径0.1〜50μmの範囲の小孔を多数有し、
前記小孔が、
(i)前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面から中心に向かって50μmまでの表面領域において、1〜100個/mm2存在し、
(ii)表面から中心に向かって200μmを除く中心領域において、5〜500個/mm2存在し、
前記表面領域の小孔数と前記中心領域の小孔数が、1:5〜500の範囲であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
更に、上記発泡粒子を発泡成形して得られた発泡成形体が提供される。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、18万〜35万の重量平均分子量のポリスチレン系樹脂を含むことで、熟成工程を短縮可能であり、かつ優れた外観、物性の発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、ポリスチレン系樹脂が、2.3〜2.9の範囲の重量平均分子量/数平均分子量、1.9〜2.3の範囲のz平均分子量/数平均分子量を有することで、熟成工程を短縮可能であり、かつ優れた物性の発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、イソペンタンとノルマルペンタンの混合物からなる発泡剤を含み、ノルマルペンタンが、イソペンタン100質量部に対して、110〜1000質量部の割合で含まれることで、熟成工程を短縮可能であり、発泡樹脂の製造時まで発泡剤の抜けが抑制されるので、高倍の発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が脂肪酸塩で表面被覆され、脂肪酸塩がステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物であり、パルミチン酸亜鉛が、ステアリン酸亜鉛100質量部に対して、200〜500質量部の割合で含まれることで、熟成工程を短縮可能であることに加え、融着が良好な発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
即ち、発泡性粒子中には小孔が存在しているが、その小孔が、発泡剤の熟成工程に関連しているとの知見は従来存在していなかった。そこで、発明者が検討した結果、特定の範囲内で小孔が存在することで、発泡成形性を維持し、熟成工程を短縮可能であり、且つ発泡成形体の強度を維持できる発泡性粒子を得るに至った。例えば、一般に熟成工程が13℃で5日間以上行われていたのに対して、本発明では3日以内に短縮可能である。
発泡性粒子は、直径0.1〜50μmの範囲の小孔を多数有している。更に小孔は、
(i)発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面から中心に向かって50μmまでの表面領域において、1〜100個/mm2存在し、
(ii)表面から中心に向かって200μmを除く中心領域において、5〜500個/mm2存在している。
表面領域の小孔数が、100個/mm2より多く存在する場合、成形体の外観が低下することや、成形体の強度が低下することがある。好ましい小孔数は、1〜80個/mm2である。
また、中心領域の小孔数が、1個/mm2未満の場合、熟成時間が短くならない。500個/mm2より多く存在する場合、成形体の強度低下に繋がる。好ましい小孔数は、20〜300個/mm2である。
更に、表面領域の小孔数と中心領域の小孔数が、1:5〜500の範囲である。つまり、中心領域の小孔が、表面領域より多いため、より短時間で熟成を完了できる。より好ましくは、1:100〜500の範囲である。
(1)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の成分を50質量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンからなることがより好ましい。
更に、ポリスチレン系樹脂は、2.3〜2.9の範囲の重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)、1.9〜2.3の範囲のz平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn)を有することが好ましい。Mw/Mnが2.3未満の場合、発泡体強度が低下することがある。2.9より大きい場合、発泡成形性が低下することがある。Mz/Mnが1.9未満の場合、成形性が低下し、2.3より大きい場合、成形サイクルが長くなることがある。なお、Mnは5万〜12万、Mzは50万〜100万の範囲が好ましい。
重量平均分子量を、通常の発泡成形に適合した範囲に調製するには、重合開始剤を効率よく働かせることが重要であり、無駄な分解を防ぎ重合工程全域でラジカル発生するよう、重合開始剤の配分、重合温度プログラム、シード重合法においては更にモノマーの供給速度、重合時の重合率等を調製し制御することが好ましい。
発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、ノルマルヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。特に、ノルマルペンタンが、イソペンタン100質量部に対して、110〜1000質量部の割合で含まれる発泡剤が、発泡性粒子から抜けが抑制されている観点から好ましい。
発泡剤の使用量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部である。
発泡性粒子は溶剤や可塑剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。特に、1000〜5000ppmのエチルベンゼン及び/又は1500〜5000ppmのスチレンを含むことが好ましい。この範囲でこれら溶剤を含むことで、優れた成形性及び柔軟性の発泡成形体を得ることができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
発泡性粒子は、融着が良好な発泡成形体を与えるために、その表面が脂肪酸塩で被覆されていてもよい。そのような脂肪酸塩としては、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物が挙げられる。また、パルミチン酸亜鉛が、ステアリン酸亜鉛100質量部に対して、200〜500質量部の割合で含まれることが好ましい。
難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。そして、発泡性粒子中における難燃剤の含有量が少ない場合、発泡成形体の難燃性が不充分となることがある。一方、多い場合、発泡成形体の成形性が低下することがある。難燃剤の含有量は、0.5〜1.5質量%が好ましい。
また、難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。そして、発泡性粒子中における難燃助剤の含有量が少ない場合、難燃助剤を添加した効果が発現しないことがある。一方、多い場合、発泡成形体の成形性が低下することがある。難燃助剤の含有量は、0.05〜0.5質量%が好ましい。
発泡性粒子は、例えば、
(i)スチレン系モノマーを連続的又は断続的に水性媒体中に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆる懸濁重合法によって得られた粒子、あるいは
(ii)水性媒体中にポリスチレン系樹脂種粒子(以下種粒子)を分散させ、これにスチレン系モノマーを連続的又は断続的に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆるシード重合法によって得られた粒子等を使用できる。
特にシード重合法は、懸濁重合法よりも粒子径の調製が行いやすい。
(A)反応容器内で水性媒体中に分散させてなる種粒子に、スチレン系モノマーを含浸させた後に重合させるか又は含浸させつつ重合させることでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程
(B)ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させるか又はスチレン系モノマーの重合途上で発泡剤を含浸させる工程
種粒子を得るためのモノマーには、上記ポリスチレン系樹脂の欄で挙げたスチレン系モノマー及びビニルモノマーをいずれも使用できる。種粒子を構成しているポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さい場合、発泡性粒子を発泡させて得られる発泡成形体の機械強度を低下させることがある。一方、大きいと、発泡性粒子の発泡性が低下することがある。好ましい平均分子量は、12万〜60万である。
種粒子は、汎用の方法で製造できる。例えば、ポリスチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して所定長さ毎に切断することで、種粒子を製造できる。また、懸濁重合、乳化重合、塊状重合法等によっても製造できる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
(c)スチレン系モノマー
スチレン系モノマーとしては、上記ポリスチレン系樹脂の欄で挙げたスチレン系モノマーを使用できる。
重合開始剤としては、いずれも通常のスチレンの懸濁重合において用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。分子量を調製し、残存モノマーを減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃の範囲にある複数種の重合開始剤を併用することが好ましい。
種粒子の使用量は、重合終了時の樹脂粒子全量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜70質量%、最も好ましくは15〜50質量%である。種粒子の使用量が10質量%未満では種粒子に含浸させるスチレン系モノマー量を所定範囲内に制御することが困難となったり又はポリスチレン系樹脂が高分子量化したりもしくは微粉末状粒子が多量に発生して製造効率が低下したりすることがある。また90質量%を越えると、成形性が低下することがある。
スチレン系モノマーの液滴及び種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。
懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
アニオン界面活性剤は、上記懸濁安定剤による分散を安定化させるための補助安定剤として機能すると共に、一部がポリスチレン系樹脂粒子内に溶け込んだり、あるいは巻き込まれたりすることによって、得られる発泡成形体内の気泡径の大きさに影響することがある。従って、所望の気泡膜厚の範囲内に入るようにアニオン界面活性剤の種類を選択すればよい。
重合は、使用するモノマー種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、60〜150℃の加熱を、1〜10時間維持することにより行われる。
重合雰囲気としては、重合反応中での反応容器内の酸素濃度を15体積%以上に保持した雰囲気が挙げられる。より好ましい酸素濃度は、15〜21体積%の範囲である。
また、スチレン系モノマーは、スチレン系モノマーの含浸始期から重合終期までの間の種粒子中におけるスチレン系モノマー量が60質量%以下となるように、水性媒体中に供給されることが好ましい。スチレン系モノマー量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
ポリスチレン系樹脂粒子の粒径は、後述する予備発泡粒子の成形型内への充填性の点から、0.3〜2.0mmであることが好ましく、0.3〜1.4mmであることがより好ましい。
(i)含浸工程
発泡剤は、スチレン系モノマーの重合後の粒子に含浸させてもよく、成長途上粒子に発泡剤を含浸させてもよい。重合の途中での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。また、重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。
溶剤、可塑剤及び他の添加剤の含浸は、スチレン系モノマーの重合後の粒子又はスチレン系モノマー含浸中の種粒子に対して行うことができる。更に、種粒子に予め溶剤、可塑剤及び他の添加剤を添加しておいてもよい。
溶剤、可塑剤及び他の添加剤のポリスチレン系樹脂粒子、種粒子又はスチレン系モノマー含浸中の種粒子への含浸温度が低い場合、含浸に時間を要し、発泡性粒子の製造効率が低下することがある。一方、高い場合、発泡性粒子同士の合着が多量に発生することがある。含浸温度は、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
発泡性粒子は、発泡機で水蒸気等を用いて発泡されて多数の小孔を有する発泡粒子とされる。発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.03g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.03g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
発泡成形体は、10〜30kg/m3の密度を有することが好ましい。この特定の範囲の密度を有することで、より曲げ強度の高い発泡成形体を提供できる。より好ましい密度は、12.5〜20.0kg/m3である。
発泡成形体は、魚箱等の梱包材や保温容器、建材用断熱材として好適に用いることができる。
発泡成形体は、例えば、次の方法により製造できる。
発泡粒子(予備発泡粒子)を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体が製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調製する等して調製できる。
発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
<最低重合転化率>
重合中のポリスチレン系樹脂粒子の最低重合転化率は、下記の要領で測定された値をいう。
即ち、重合中のポリスチレン系樹脂粒子を反応液中から取り出し、ポリスチレン系樹脂粒子の表面に付着した水分をガーゼによりふき取ることで除去する。
水分が除去されたポリスチレン系樹脂粒子を0.08g精秤し、トルエン25ml中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ml、5質量%のヨウ化カリウム水溶液30ml及び1質量%のでんぷん水溶液30mlを供給して試料とし、この試料をN/40チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定することにより、試料の滴定数(ml)を求める。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素を8.7g及び三塩化ヨウ素を7.9g溶解したものである。
一方、ポリスチレン系樹脂粒子を溶解させることなく、上記と同様に滴定を行うことで、ブランクの滴定数(ml)を求める。
最低重合転化率は下記式によって算出する。
最低重合転化率(質量%)
=100−0.1322×[ブランクの滴定数(ml)−試料の滴定数(ml)]÷試料の質量[g]
重量平均分子量、数平均分子量及びz平均分子量は、下記の要領で測定されたスチレン換算重量平均分子量をいう。
即ち、ポリスチレン系樹脂30mgをクロロホルム10ミリリットルで溶解する。得られた溶液を、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した後、クロマトグラフを用いて平均分子量を下記条件にて測定する。
ガスクロマトグラフ:Water社製商品名「Detector 484,Pump 510」
カラム:昭和電工社製
商品名「Shodex GPC K−806L(φ8.0×300mm)」2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:クロロホルム
キャリアーガス流量:1.2ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:室温
検出:UV254nm
注入量:50マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製商品名「shodex」重量平均分子量:1030000及び東ソー社製の重量平均分子量:5480000,3840000,355000,102000,37900,9100,2630,495のポリスチレン
評価方法
発泡性樹脂粒子をほぼ半分に分割し、断面をミクロトームで切り出し、この断面を走査型電子顕微鏡で観察し、倍率350倍の写真を撮る。この写真より、表面領域(粒子の表面から中心に向かって50μmまでの領域)の小孔の数の計測には0.1mm×0.1mmの範囲から、また中心領域(表面から中心に向かって200μmを除く領域)の小孔の数の計測には0.2mm×0.2mmの範囲を用いる。これら範囲から計測された小孔の数を1mm2当りの値に換算し、得られた換算小孔数を本明細書における小孔数とする。
発泡性樹脂粒子を13℃に保管する。
次いで、1時間置きに試料AとBを各10g熟成完了時間が計測されるまで採取する。
試料Aをポリエチレン製の袋に入れ、40℃にて2時間加熱する。
加熱後の試料Aと未加熱の試料Bを蒸気にて密度20g/cm3に発泡させる。
試料AとBより得られた発泡粒子断面の平均気泡径を測定する。試料Aの平均気泡径と試料Bの平均気泡径の差が10μm以内となった時間を発泡性樹脂粒子の熟成完了時間とする。
上記の方法にて熟成完了時間を測定し、3日以内を○、それ以上を×として評価した。
嵩密度20g/cm3に発泡させた発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ発泡粒子の中心を通る平面で二等分する。二等分された発泡粒子の一方の切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成する。
次に、粒子切断面の画像上に粒子の中心から半径90%に相当する距離を半径とする円(表層円)を描く。表層円の外側に存在する気泡を粒子表層部の気泡とする。この気泡について、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して径を測定する。つまり、各画像について円上にある気泡の個数を数え、次式によりこの気泡の平均弦長(t)を算出する。
平均弦長t(μm)=(円周×1000)/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、この気泡の平均気泡径(D)を算出する。
平均気泡径D(μm)=t/0.616
計10画像分の平均値を熟成完了時間に関する表層部の平均気泡径とする。
以下の装置及び測定条件で、上記量を測定する。
ガスクロマトグラフ:島津製作所社製 商品名「GC−14A」
検出器:FID
カラム:ジーエルサイエンス社製
商品名「PEG−20MPT(25%)Uniport B(60/80)2m」
カラム温度:105℃
検出器温度:220℃
注入口温度:220℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:50ミリリットル/分
測定溶液注入量:3ミリリットル
発泡性樹脂粒子を20mg採取し測定試料とする。この測定試料を熱分解炉(島津製作所社製、商品名:PYR−1A)の入り口にセットして15秒間に亘って窒素雰囲気下に放置して、測定試料を熱分解炉にセットした際の混入ガスを窒素と置換する。次に、測定試料を密閉後、200℃に保持された炉心内に供給して60秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製、商品名:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを作成する。予め測定しておいた、発泡剤成分の検量線に基づいて、前記チャートから発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量(質量%)を算出する。
測定条件は、カラム:ジーエルサイエンス社製、商品名「ポラパックQ」(80/100)(φ3mm×1.5m)、カラム温度:70℃、検出器温度:110℃、注入口温度:110℃、キャリアーガス:窒素、キャリアーガス流量:1mL/minとする。
(1)脂肪酸塩量
発泡性樹脂粒子を20gにメタノールを100ml加え、約1分間高速攪拌する。
沈殿管に移し、3000rpmで10分間遠心分離する。
上澄み液を分離し、アセトンを30ml加えて、3000rpmで10分間遠心分離し、沈殿物を得る。得られた沈殿物を測定試料とする。
測定試料を下記の装置及び条件で簡易熱抽出TMS誘導体化法に付すことで脂肪酸塩量を得る。
測定装置:ポータブル高周波加熱前処理装置QUICKER 1010(DICエンジニアリング社製)
抽出温度:170℃×10分
使用試験間:7mm径×100mm
誘導体化試薬:TMS化液=約200μL
試料質量:約1mg
前記の試料を以下の装置及び条件によりGC/MS法にて分析する。分析結果から、ステアリン酸ピークの面積を100とした際のパルミチン酸の面積比率を算出し、算出値をステアリン酸亜鉛100質量部に対するパルミチン酸亜鉛の比率とする。
測定装置:ガスクロマトグラフ質量分析計 QP5000 島津製作所社製
カラム:DB−5(0.25μm×0.25mmφ×30m:J&W社製)
測定条件:カラム温度(60℃(1分)→昇温10℃/分→300℃(1分)
測定時間(26分)、キャリアーガス(He)、He流量(16.6ml/分)
注入口温度(220℃)インターフェース温度(220℃)、注入量(2μL)
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)
=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m3)を求める。
<発泡成形体の外観評価>
成形体表面を目視し、粒子間に隙間がなく、外観に優れる場合を○、粒子間に隙間が多く、平滑性に劣る場合を×として評価する。
内容量100Lの攪拌機付き重合容器に、水40.0L、ピロリン酸マグネシウム(懸濁剤)100g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(界面活性剤)2.0gを入れた。続いて攪拌しながらスチレン40.0kg、ベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤)128.0g、t−ブチルパーオキシベンゾエート(重合開始剤)28.0g、ポリエチレンワックス(平均分子量1000)20gを添加し、90℃に昇温して重合温度とした。この温度で6時間保持し、更に125℃に昇温してから2時間後冷却することで、ポリスチレン樹脂粒子(A)を得た。このポリスチレン樹脂粒子(A)の重量平均分子量(Mw)は26万、分散度(Mw/Mn)は2.4、(Mz/Mn)は2.1であった。
このポリスチレン樹脂粒子(A)を0.7〜1.2mmに篩い分けしてポリスチレン樹脂粒子(B)を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡剤含有量、スチレン、エチルベンゼン含有量を測定した。イソペンタン量が3.1質量%、ノルマルペンタン量が5.3質量%、スチレン量3300ppm、エチルベンゼン量が3500ppmであった。
次いで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、ポリスチレン用予備発泡機で嵩密度0.016g/cm3に予備発泡した。予備発泡後、20℃で24時間熟成した。
次に、予備発泡粒子を、発泡ポリスチレン系樹脂用成形機(積水工機社製ACE−11QS)で成形し、寸法400×300×30(mm)の板状の発泡成形体を製造した。
この発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間養成した後、密度を測定したところ、0.0162g/cm3であった。この発泡成形体は、収縮もなく、外観も非常に優れたものであった。
ポリエチレンワックス量を40gとしたこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡成形体を得た。この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熟成完了時間は1日であった。
また、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、収縮もなく、外観も非常に優れたものであった。
ポリエチレンワックス量を15gとしたこと以外は、実施例1と同様にして
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡成形体を得た。この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熟成完了時間は3日であった。
また、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、収縮もなく、外観も非常に優れたものであった。
ベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤)を180.0gとし、スチレン量を11.0g、エチルベンゼンを12.0gとしたこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡成形体を得た。重量平均分子量は19万であった。
スチレン量は4500ppm、エチルベンゼン量は4800ppmであった。
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熟成完了時間は2日であった。
また、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、収縮もなく、外観も非常に優れたものであった。
実施例1において得られたポリスチレン樹脂粒子(A)を0.5〜0.7mmに篩い分けしてポリスチレン樹脂粒子(C)を得た。
内容量5Lの攪拌機付き重合容器に、水2.0L、ポリスチレン樹脂粒子(C)500g、ピロリン酸マグネシウム(懸濁剤)6.0g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(界面活性剤)0.3gを入れ、攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、ベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤)4.5g、t−ブチルパーオキシベンゾエート(重合開始剤)1.1gをスチレン200gに溶解し、重合容器に入れた。30分後90℃に昇温し、スチレン1300gを150分かけてポンプで一定量づつ重合容器に供給した。この際、10分ごとに重合中のポリスチレン系樹脂粒子の最低重合転化率を測定したところ、最低重合転化率は87%であった。スチレンの供給が終了した後、125℃に昇温してから2時間保持することでポリスチレン樹脂粒子(D)を得た。このポリスチレン樹脂粒子(D)の重量平均分子量(Mw)は30万、分散度(Mw/Mn)は2.4、(Mz/Mn)は2.2であった。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡剤含有量、スチレン、エチルベンゼン含有量を測定した。イソペンタン量が3.0質量%、ノルマルペンタン量が5.0質量%、スチレン量3300ppm、エチルベンゼン量が3600ppmであった。
次いで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熟成時間を測定した。熟成が完了するまでの時間は2日であった。
次に、予備発泡粒子を、発泡ポリスチレン系樹脂用成形機(積水工機社製ACE−11QS)で成形し、寸法400×300×30(mm)の板状の発泡成形体を製造した。
この発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間養成した後、密度を測定したところ、0.0162g/cm3であった。この発泡成形体は、収縮もなく、外観も非常に優れたものであった。
ポリエチレンワックスを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、収縮が発生した。熟成完了時間は5日であった。
ポリエチレンワックスを80g添加すること以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡成形体を得た。
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の熟成完了時間は1日であったが、発泡成形体は、収縮し、外観の劣るものであった。
実施例及び比較例の結果を下記表にまとめて示す。
Claims (8)
- 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、直径0.1〜50μmの範囲の小孔を多数有し、
前記小孔が、
(i)前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面から中心に向かって50μmまでの表面領域において、1〜100個/mm2存在し、
(ii)表面から中心に向かって200μmを除く中心領域において、5〜500個/mm2存在し、
前記表面領域の小孔数と前記中心領域の小孔数が、1:5〜500の範囲であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。 - 前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、18万〜35万の重量平均分子量のポリスチレン系樹脂を含む請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記ポリスチレン系樹脂が、2.3〜2.9の範囲の重量平均分子量/数平均分子量、1.9〜2.3の範囲のz平均分子量/数平均分子量を有する請求項2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、1000〜5000ppmのエチルベンゼン及び/又は1500〜5000ppmのスチレンを含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、イソペンタンとノルマルペンタンの混合物からなる発泡剤を含み、前記ノルマルペンタンが、前記イソペンタン100質量部に対して、110〜1000質量部の割合で含まれる請求項1〜4のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が脂肪酸塩で表面被覆され、前記脂肪酸塩がステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物であり、前記パルミチン酸亜鉛が、前記ステアリン酸亜鉛100質量部に対して、200〜500質量部の割合で含まれる請求項1〜5のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡して得られた発泡粒子。
- 請求項7に記載の発泡粒子を発泡成形して得られた発泡成形体。
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