JP2011066324A - 電気化学セル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極2と、正極2に対して対向配置される負極3と、正極2および負極3が浸漬される電解液6とを備えるハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3に、その厚み方向を貫通する貫通部10を備える。そして、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2および/または負極3に、その厚み方向を貫通する貫通部10が備えられているため、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、その貫通部10を介して除去することができる。そのため、このハイブリッドキャパシタ1によれば、良好にエネルギー密度を維持することができ、さらには、内部抵抗を低減することができ、その結果、出力特性の向上を図ることができる。
【選択図】図1
Description
このような蓄電デバイスは、一般的に、正極と、負極と、これら電極間に介在されるセパレータと、電極およびセパレータを収容し、これらを浸漬するように電解液が満たされているセル槽とを有している。そして、各電極において、電気二重層および/または酸化還元反応により蓄電されるエネルギーが放電されることにより、蓄電デバイスの充放電が行なわれる。
一方、近年では、大容量のリチウムイオン電池用正極活物質として、例えば、Li2MnO3など、Liを過剰に含有したリチウム遷移金属酸化物(一般式:Li1+xMe1−xO2(式中、Meは、単独または複数の遷移金属元素を示す。))が、提案されている。しかし、この正極活物質をリチウムイオン電池に用いる場合には、初回に高電圧を印加する必要があるため、やはり、初回の充電時に多くのガスが発生および滞留し、リチウムイオン電池が劣化するという不具合がある。
また、本発明の電気化学セルでは、前記貫通部が、電流の流れる方向に沿ってスリット状に形成されていることが好適である。
また、本発明の電気化学セルでは、前記正極が、分極性カーボン材料を含有し、前記負極が、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な材料を含有し、前記電解液が、リチウム塩を含む有機溶媒を含有することが好適である。
また、本発明の電気化学セルでは、前記正極と前記負極との間、前記正極内部および前記負極内部の少なくともいずれかに、前記電解液に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する捕捉剤を含有することが好適である。
そのため、本発明の電気化学セルによれば、良好にエネルギー密度を維持することができる。
図1において、ハイブリッドキャパシタ1は、正極2と、正極2に対して間隔を隔てて対向配置される負極3と、正極2と負極3との間に介在されるセパレータ4と、正極2、負極3およびセパレータ4を収容するセル槽5と、セル槽5に貯留され、正極2、負極3およびセパレータ4が浸漬される電解液6とを備えている。なお、ハイブリッドキャパシタ1は、ラボスケールで採用される電池セルであって、工業的には、このハイブリッドキャパシタ1を、公知の技術によって適宜スケールアップしたものが採用される。
正極材料は、例えば、カーボン材を賦活処理することにより得られる。
ソフトカーボンは、例えば、不活性雰囲気中での熱処理によって、炭素原子で構成される六角網面が、ハードカーボンの六角網面よりも相対的に規則的な積層構造(黒鉛構造)を形成しやすいカーボンの総称である。具体的には、不活性雰囲気中、2000〜3000℃、好ましくは、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Å以下、好ましくは、3.35〜3.40Åとなる結晶構造を形成するカーボンの総称である。
具体的なハードカーボンとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、レゾルシノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、例えば、フリュードコークス、ギルソナイトコークスなど易黒鉛化性コークスとは異なる難黒鉛化性コークス、例えば、やしがら、木粉などの植物系原料、例えば、ガラス状炭素などの熱分解物などが挙げられる。
賦活処理としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを賦活剤として用いるアルカリ賦活処理、例えば、塩化亜鉛(ZnCl2)、リン酸(H3PO4)などを賦活剤として用いる薬品賦活処理、例えば、二酸化炭素(CO2)、空気などを賦活剤として用いるガス賦活処理、例えば、水蒸気(H2O)を賦活剤として用いる水蒸気賦活処理などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカリ賦活処理が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化カリウム(KOH)を賦活剤として用いるアルカリ賦活処理(KOH賦活処理)が挙げられる。
上記賦活処理によって得られる正極材料を正極2に用いたハイブリッドキャパシタでは、例えば、正極2の電位が4.23V vs.Li/Li+以上となる充放電サイクルにおいて、正極2に比較的大きな不可逆容量を発現させることができる。そのため、放電過程において、より低い電位にまで正極の放電が可能となる。その結果、正極2の電気容量を拡大することができる。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。つまり、導電剤は、配合しても配合しなくてもよい。
そして、正極2を形成するには、正極材料、導電剤およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを正極側集電体8aの表面に塗工し、正極側塗工層9aを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、矩形状)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、正極2が得られる。
正極側集電体8aの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、10〜50μmである。
このような方法により得られる正極2の厚さおよび大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚さが30〜150μm(正極側集電体8aを除く厚さ(すなわち、正極側塗工層9aの厚さ)が10〜140μm)であり、また、大きさが、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、10〜200mm、長手方向と直交する方向(幅方向)長さが、例えば10〜200mmである。
より具体的には、負極3は、例えば、負極材料と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(例えば、矩形状)に成形した後、必要により乾燥させることにより形成される。
グラファイトとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛化メソフェーズカーボン繊維、黒鉛ウィスカ、黒鉛化炭素繊維、ピッチ、コークスなどの縮合多環炭化水素化合物の熱分解物などのグラファイト系炭素材料が挙げられる。
そして、上記のような負極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が80〜99重量%の割合となるように配合される。
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PVdFが挙げられる。また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜10重量%の割合となるように配合される。
導電剤としては、例えば、上記した導電剤が挙げられる。また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。
そして、負極3を形成するには、例えば、まず、負極材料およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを負極側集電体8bの表面に塗工し、負極側塗工層9bを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、矩形状)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、負極3が得られる。
また、負極側集電体8bとしては、例えば、上記した金属箔が挙げられる。
負極側集電体8bの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、10〜50μmである。
また、セパレータ4の厚さおよび大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚さが15〜150μmであり、大きさが、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、15〜220mmであり、幅方向長さが、例えば、15〜220mmである。
リチウム塩としては、ハロゲンを含むアニオン成分を有し、例えば、LiClO4、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiC4F9SO3、LiC8F17SO3、LiB[C6H3(CF3)2−3,5]4、LiB(C6F5)4、LiB[C6H4(CF3)−4]4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2などが挙げられる。なお、上式中[C6H3(CF3)2−3,5]は,フェニル基の3位と5位に、[C6H4(CF3)−4]はフェニル基の4位に、それぞれ−CF3が置換されているものを意味する。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
図2は、丸孔状の貫通部が形成される正極および負極の正面図、図3は、スリット状の貫通部が形成される正極および負極の正面図である。
より具体的には、このハイブリッドキャパシタ1では、上記により得られた正極2、および、上記により得られた負極3のいずれか、または、それらの両方の、塗工層9(正極側塗工層9aおよび/または負極側塗工層9b)が形成される領域に、塗工層9および集電体8(正極側集電体8aおよび/または負極側集電体8b)の厚み方向を貫通する貫通部10が、形成されている。好ましくは、正極2および負極3の両方に、貫通部10が形成されている。
図2に示すように、貫通部10が丸孔状に形成される場合において、貫通部10の大きさ(直径)および数は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。
なお、丸孔状の貫通部10が複数形成される場合において、各貫通部10の間隔は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。好ましくは、塗工層9が形成される領域の全体において、均一に形成される。
また、このような貫通部10がスリット状に形成される場合には、貫通部10は、好ましくは、電流の流れる方向(図3における矢印E参照)に沿って延びるように形成される。
また、このようなスリット状の貫通部10は、電流の流れる方向に沿う軸線上において、連続的に形成されていてもよく、また、断続的に形成されていてもよい。
すなわち、電流の流れる方向に沿う1つの軸線上に、1つの貫通部10が連続的に形成されていてもよく(図3の実線参照)、また、複数(例えば、4つ)の貫通部10が、互いに長手方向に間隔を隔てて断続的に形成されていてもよい(図3の2点鎖線参照)。
このようなスリット状の貫通部10は、特に制限されないが、例えば、金属製の刃物によって、正極2および/または負極3を、その厚み方向を貫通するように切り込むことにより、形成される。
すなわち、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、公知の方法によってラミネートセルとして形成した後、充電させ、その後、ラミネートセルを一度開封することにより、充電時(とりわけ、初回の充電時)に発生するガスを除去することができる。
そして、この方法では、得られたハイブリッドキャパシタ1を、製品として出荷する前に、1回以上(数回〜数百回)充電させ(プレサイクル)、電解液6を酸化分解させることにより、ガスを発生させる。次いで、ハイブリッドキャパシタ1のラミネートセルを一旦開封して、貫通部10を介してガスを除去し、その後、ラミネートセルを再度封止する。
さらに、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ガス捕集部をハイブリッドキャパシタ1に連通するように形成し、充電時に発生するガスを、そのガス捕集部とともに、ハイブリッドキャパシタ1から除去することもできる。
そのため、このようなハイブリッドキャパシタ1によれば、良好にエネルギー密度を維持することができ、さらには、内部抵抗を低減することができ、その結果、出力特性の向上を図ることができる。
正極2の電位を4.23V vs Li/Li+以上とするには、例えば、負極3にソフトカーボンおよび/またはハードカーボンを用いた場合には、セル電圧を3V以上で印加する。
一方、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位を4.23V vs Li/Li+以上などの高電位とした場合に、正極2の不可逆容量の発現に起因して、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPF6に含まれるPF6 −など)から誘導される負極活性阻害物質が生成する場合がある。
まず、正極2および負極3に上記した所定電圧(すなわち、4.23V vs Li/Li+以上)を印加すると、電解液6内では、例えば、正極2や電解液6に含まれる水分や有機物から、下記式(1)(2)に示すように、プロトン(H+)が生成する。
(2)R−H→R+H++e−(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPF6に含まれるPF6 −など)と反応し、HFが生成する(下記式(3)参照)。
(3)PF6 −+H+→PF5+HF
HFのような負極活性阻害物質は、負極3の電気容量を低下させて、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度を低下させるおそれがある。
ハイブリッドキャパシタ1に捕捉剤を含有させることにより、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を捕捉剤で捕捉することができる。
より具体的には、例えば、捕捉剤が、正極2と負極3との間に含有(配置)される場合には、捕捉剤は、好ましくは、捕捉部材7として形成される。
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PTFEが挙げられる。
そして、捕捉部材7を形成するには、例えば、まず、捕捉剤と、ポリマーバインダとを、例えば、捕捉剤:ポリマーバインダの配合割合が、固形分の重量割合で20:80〜98:2、好ましくは、50:50〜90:10となるように配合して、混合物を調製する。次いで、混合物を、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して捕捉剤含有シートを得る。
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、図1に示されるように、セパレータ4として、正極2側に配置されるセパレータ4aと負極3側に配置されるセパレータ4bとを設け、これらセパレータ4aと4bとの間に、捕捉部材7を設ける。
また、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、捕捉部材7を形成することなく、捕捉剤として、上記の炭酸塩を、セパレータ4aとセパレータ4bとの間に配置することもできる。
また、このハイブリッドキャパシタ1において、炭酸塩は、正極2および/または負極3の表面にコーティングされていてもよい。
結合剤としては、例えば、上記したポリマーバインダなどが挙げられる。
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)や水が挙げられる。
リチウム箔としては、公知のリチウム箔を用いることができ、例えば、円形状、矩形状に形成される。
また、リチウム箔は、好ましくは、その表面積が正極2および負極3の表面積と略同一面積、または、より広い面積となるように形成される。リチウム箔の表面積がこのような面積であると、負極活性阻害物質(例えば、HFなど)を、効率よく捕捉することができる。
また、リチウム箔には、その厚み方向に複数の孔が形成されている。このような孔が形成されることによって、電解液6が、セパレータ4aとセパレータ4bとの間を通過することができ、充放電することができる。
また、上記したリチウム金属のほか、Si−N結合を有する化合物(例えば、ペルヒドロポリシラザン、メチルポリシラザンなど)をセル槽5内に含めることによっても、負極活性阻害物質を捕捉することができる。この場合、負極活性阻害物質は、Si−N結合を有する化合物に捕捉されて安定化する。
すなわち、このような場合には、捕捉剤(例えば、炭酸塩、リチウム粉末など)が、正極2および/または負極3の製造工程において、正極材料または負極材料とともに配合される。これにより、捕捉剤が、正極2内部および/または負極3内部に含有される。
捕捉剤の量が、このような範囲であると、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
例えば、上記式(1)〜(3)を参照すると、電子1molの流れに伴い、HFが1mol生成する。すなわち、正極2で発現する不可逆容量をQ(mAh)とし、ファラデー定数を96500(C/mol)すると、ハイブリッドキャパシタ1で発生するHFの発生量MHFは、MHF=3.6×Q×F−1(mol)となる。
(4)Li2CO3+2HF→2LiF+H2CO3
上記式(4)に示すように、1molのHFを捕捉するためには、0.5molのLi2CO3が必要である。より具体的には、Li2CO3の必要量MLi2CO3は、MLi2CO3=0.5MHF=1.8×Q×F−1(mol)であり、F=96500を代入すると、MLi2CO3=2×10−5×Q(mol)である。すなわち、Li2CO3が、不可逆容量Q(mAh)に対して2×10−5×Qmol以上含まれることによって、HFを十分捕捉することができる。その結果、負極活性阻害物質(HF)に起因するエネルギー密度の低下を抑制できるので、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
そのため、このハイブリッドキャパシタ1によれば、良好にエネルギー密度を維持することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池に変更することができる。
一方、リチウムイオン電池の場合には、正極の材料として、上記した正極2に用いられる材料の代わりに、種々の酸化物、硫化物が用いられ、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn2O4,LiMnO2など)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、バナジウム酸化物(例えば、V2O5など)などが用いられる。また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などの有機材料も用いることができる。
実施例1〜2および比較例1
1.正極の作製
メソフェーズ系ピッチ(三菱ガス化学株式会社製 AR樹脂)を大気中350℃で2時間加熱した。次いで、加熱後のピッチを、窒素雰囲気下800℃で2時間予備焼成した。これにより、ソフトカーボンを得た。得られたソフトカーボンをアルミナ製の坩堝に入れ、ソフトカーボン1重量部に対して4重量部のKOHを加えた。次いで、ソフトカーボンを、窒素雰囲気下800℃で2時間、KOHとともに焼成することにより、KOH賦活した。次いで、KOH賦活したソフトカーボンを超純水で洗浄した。洗浄は、廃液が中性になるまで行なった。これにより、KOH賦活ソフトカーボン(正極材料)を得た。洗浄後、KOH賦活ソフトカーボンを乳鉢で粉砕し、篩(32μm)で分級した。そして、ほぼ全てのKOH賦活ソフトカーボンが篩を通過できる粒径になるまで、乳鉢での粉砕操作を繰り返した。
次いで、電極シートを、長手方向長さ(縦)46mm×幅方向長さ(横)41mmの正極側塗工層が形成されている領域と、縦14mm×横41mmの正極側塗工層が形成されていない領域(アルミニウム箔露出部)とを一体的に備える縦60mm×横41mmの矩形状に裁断し、正極を形成した。
また、実施例2では、この正極における正極側塗工層が形成されている領域に、金属製の刃物を用いて切り込みを入れることによって、スリット状の貫通部(長さ38mm)を、電流の流れる方向に沿って、幅方向に4mm間隔を隔てるように、互いに平行に形成した。
2.負極の作製
人造黒鉛と、ソフトカーボンと、ポリマーバインダ(株式会社クレハ製 PVdF)とを、固形分67.5:22.5:10の重量割合で、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒に投入し、室温(25℃〜30℃)で12時間攪拌することにより、混合物のスラリー(固形分:40重量%)を得た。
次いで、電極シートを、縦50mm×横45mmの負極側塗工層が形成されている領域と、縦10mm×横45mmの負極側塗工層が形成されていない領域(銅箔露出部)とを一体的に備える縦60mm×横45mmの矩形状に裁断し、負極を形成した。
また、実施例2では、この負極における負極側塗工層が形成されている領域に、金属製の刃物を用いて切り込みを入れることによって、スリット状の貫通部(長さ42mm)を、電流の流れる方向に沿って、幅方向に4mm間隔と隔てるように、互いに平行に形成した。
3.捕捉剤含有セパレータの作製
炭酸リチウム(Li2CO3)粉末(キシダ化学社製 平均粒径85.0μm)と、ポリマーバインダ(ダイキン工業株式会社製 PTFEディスパージョン)とを、固形分80:20の重量割合で、乳鉢で混練することにより、それらの混合物を得た。
4.セパレータの作製
厚さ50μmのセルロース製セパレータ(ニッポン高度紙製 TF40−50)を、縦54mm×横49mmの矩形状に裁断することにより、セパレータを作製した。
5.電解液の調製
LiPF6(リチウム塩)を、濃度が2mol/Lとなるように、エチレンカーボネート−エチルメチルカーボネート混合溶媒(体積比1:1)に溶解することにより調製した。
6.ラミネートセルの組み立て
正極1枚、負極1枚、捕捉剤含有セパレータ1枚およびセパレータ2枚を積層した。具体的には、まず、1枚の捕捉剤含有セパレータを、2枚のセパレータで挟み、その後、積層されたセパレータの一方側に正極を、他方側に負極を、それぞれ積層した。
次いで、このアルミニウムラミネートフィルムで包んだ電極体をチャンバー内で減圧し、電解液を注入し、最後の4辺目を熱溶着によって封止し、常圧に戻した。以上の操作により、ラミネートセルを得た。
評価実験
1.充放電試験
上記実施例および比較例で組み立てた試験セルそれぞれに対して、以下に示す方法により充放電試験を実施した。
(1)1サイクル目
セル電圧が4.8Vに上昇するまで1mA/cm2で定電流充電した。充電後、電流値が0.3mA/cm2に降下するまでセル電圧を4.8Vに保持し、その後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cm2で定電流放電した。
(2)2〜6サイクル目
セル電圧が4.6Vに上昇するまで1mA/cm2で定電流充電した。充電後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cm2で定電流放電した。
(3)7サイクル目以降
セル電圧が4.6Vに上昇するまで5mA/cm2で定電流充電した。充電後、セル電圧が2.3Vに降下するまで5mA/cm2で定電流放電した。
2.評価
充放電試験によって得られた試験結果に基づいて、各試験セルのエネルギー密度維持率および内部抵抗を算出した。
(1)エネルギー密度の維持率の算出方法
以下の式から、プレサイクル後の充放電サイクルにおけるエネルギー密度の維持率を算出した。その結果を図4に示す。
ER=(DEX/VP+N)/(DE7/VP+N)=DEX/DE7
ER:エネルギー密度の維持率(Energy density retention)
DEX:Xサイクル目の放電エネルギー量(Discharging energy)[Wh]
DE7:7サイクル目の放電エネルギー量(Discharging energy)[Wh]
VP+N:正極側塗工層の厚みおよび負極側塗工層の厚みの和と、塗工層面積との積(Volume)[L]
なお、上記式のVP+Nにおいて、塗工層面積としては、正極側塗工層と負極極側塗工層とで大きいほう(負極側塗工層)の塗工面積を採用した。
(2)内部抵抗の算出方法
以下の式から試験セルの内部抵抗を算出した。その結果を図5に示す。
IR=V2IR/CD/2
IR:内部抵抗(Internal resistance)[Ω・cm2]
V2IR:休止の無い定電流充放電におけるIRドロップ(充電後、放電に切り替わる際の電圧降下)(Voltage)[V]
CD:電流密度(Current density)[A/cm2]
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 セル槽
6 電解液
7 捕捉部材
8a 正極側集電体
8b 負極側集電体
9a 正極側塗工層
9b 負極側塗工層
10 貫通部
Claims (6)
- 正極と、
前記正極に対して対向配置される負極と、
前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、
前記正極および/または負極は、その厚み方向を貫通する貫通部を備えることを特徴とする、電気化学セル。 - 前記貫通部が、電流の流れる方向に沿ってスリット状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学セル。
- 前記正極の電位が、4.23V vs.Li/Li+以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学セル。
- 前記正極が、分極性カーボン材料を含有し、
前記負極が、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な材料を含有し、
前記電解液が、リチウム塩を含む有機溶媒を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学セル。 - 前記正極が、KOH賦活ソフトカーボンを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学セル。
- 前記正極と前記負極との間、前記正極内部および前記負極内部の少なくともいずれかに、
前記電解液に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する捕捉剤を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学セル。
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