JP2013182925A - 電気化学セル - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成により、内部抵抗を抑制することができ、優れた電気容量を確保するとともに、短絡を抑制できる電気化学セルを提供すること。
【解決手段】正極2と、正極2に対して対向配置される負極3と、正極2および負極3が浸漬される電解液6とを備えるハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3を短辺および長辺を備える長方形状に形成するとともに、その厚み方向を貫通する貫通部10を備え、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aを、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺B、C、Dに臨むように形成するとともに、貫通部10の長手方向長さを正極2および/または負極3の短辺長さ未満とし、かつ、貫通部10を、一辺に臨む一方側端部aが一辺に臨まない他方側端部bに対して鉛直方向上方に配置されるように形成する。
【選択図】図1
【解決手段】正極2と、正極2に対して対向配置される負極3と、正極2および負極3が浸漬される電解液6とを備えるハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3を短辺および長辺を備える長方形状に形成するとともに、その厚み方向を貫通する貫通部10を備え、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aを、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺B、C、Dに臨むように形成するとともに、貫通部10の長手方向長さを正極2および/または負極3の短辺長さ未満とし、かつ、貫通部10を、一辺に臨む一方側端部aが一辺に臨まない他方側端部bに対して鉛直方向上方に配置されるように形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、電気化学セルに関し、詳しくは、電気化学キャパシタ、二次電池などに用いられる電気化学セルに関する。
従来より、ハイブリッド車両や燃料電池車両に搭載される蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池などの二次電池、電気二重層キャパシタおよびハイブリッドキャパシタなどの電気化学キャパシタの検討および開発が進められている。
このような蓄電デバイスは、一般的に、正極と、負極と、これら電極間に介在されるセパレータと、電極およびセパレータを収容し、これらを浸漬するように電解液が満たされているセル槽とを有している。そして、各電極において、電気二重層および/または酸化還元反応により蓄電されるエネルギーが放電されることにより、蓄電デバイスの充放電が行なわれる。
このような蓄電デバイスでは、電解液として、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩を、エチレンカーボネート(C3H4O3)などの有機溶媒に溶解させた有機電解液が用いられている。しかるに、このような有機電解液は、充電時において酸化分解され、ガス(例えば、CO2など)を発生させる場合がある。ガスが発生すると、ガスが蓄電デバイスのセル内に滞留し、内部抵抗を向上させることにより、出力特性の低下を惹起する場合がある。
このような不具合を解決するため、例えば、正極と、正極に対して対向配置される負極と、正極および負極が浸漬される電解液とを備え、正極および負極のそれぞれの端部には、その長手方向と直交する幅方向の全域において、集電用タブ(集電体の、塗工層が形成されていない領域)が備えられ、正極および/または負極の塗工層が形成されている領域には、電流が流れる方向に沿って、具体的には、正極および/または負極の長手方向に沿って、塗工層の長辺長さと略同一長さで正極および/または負極の厚み方向を貫通する貫通部を備えている電気化学セルが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このような電気化学セルによれば、電解液の酸化分解によって発生するガスを貫通部によって除去することができるので、内部抵抗の低減、および、出力特性の向上を図ることができる。
一方、このような電気化学セルにおいて、ガスは貫通部に沿って移動する傾向にあるため、上記のように貫通部を塗工層の長辺長さと略同一長さとなるように形成すると、貫通部の長手方向途中にガスが滞留することによりイオンの移動が阻害され、内部抵抗が大きくなるという不具合がある。
また、上記のように貫通部を塗工層の長辺長さと略同一長さとなるように形成すると、正極および/または負極の有効面積が小さくなり、電気容量の低下を惹起する場合があり、さらには、局部的に充放電され、デンドライトによる短絡が惹起される場合がある。
一方、特許文献1には、断続的に形成された貫通部、すなわち、ミシン目状の貫通部の開示もあるが、このように貫通部を形成する場合、長手方向途中の貫通部が、正極および/または負極の端部(一辺)に臨まず、やはり、ガスが滞留することによりイオンの移動が阻害され、内部抵抗が大きくなるという不具合がある。
本発明の目的は、簡易な構成により、内部抵抗を抑制することができ、優れた電気容量を確保するとともに、短絡を抑制できる電気化学セルを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の電気化学セルは、正極と、前記正極に対して対向配置される負極と、前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、前記正極および/または前記負極は、短辺および長辺を備える長方形状に形成されるとともに、その厚み方向を貫通する貫通部を備えており、すべての前記貫通部の長手方向一方側端部が、前記正極および/または前記負極の鉛直方向下端辺を除く少なくとも一辺に臨むように形成されるとともに、前記貫通部の長手方向長さが、前記短辺長さ未満であり、かつ、前記貫通部は、前記一辺に臨む前記一方側端部が、前記一辺に臨まない前記他方側端部に対して、鉛直方向上方に配置されるように形成されていることを特徴としている。
また、本発明の電気化学セルでは、前記貫通部が、前記正極および前記負極の両方に備えられており、前記正極および前記負極の対向方向に投影した投影面において、前記正極に備えられた前記貫通部と、前記負極に備えられた前記貫通部とが、互いに重複しないことが好適である。
また、本発明の電気化学セルでは、前記貫通部が、前記正極および/または前記負極の水平方向一方側および水平方向他方側のそれぞれに配置されており、前記水平方向一方側に配置される前記貫通部の前記長手方向他方側端部と、前記水平方向他方側に配置される前記貫通部の前記長手方向他方側端部とが、前記水平方向沿って対向しないことが好適である。
本発明の電気化学セルでは、すべての貫通部の長手方向一方側端部が、正極および/または負極の鉛直方向下端辺を除く少なくとも一辺に臨むように形成されるとともに、その長手方向長さが、正極および/または負極の短辺長さ未満であり、さらに、貫通部の上記した一辺に臨む一方側端部が、その一辺に臨まない他方側端部に対して、鉛直方向上方に配置される。
そのため、本発明の電気化学セルでは、電解液の酸化分解によって発生するガス(気泡)は、浮力により貫通部に沿って移動し、その長手方向一方側端部において脱離する。また、本発明の電気化学セルでは、貫通部が正極および/または負極の短辺長さ未満と短いので、ガスが貫通部の長手方向途中で滞留することなく、効率良く脱離される。
その結果、本発明の電気化学セルでは、貫通部にガスが滞留することを抑制でき、その結果、イオンの移動の阻害を抑制できるので、内部抵抗の増大を抑制できる。
また、本発明の電気化学セルでは、貫通部が正極および/または負極の短辺長さ未満であるため、正極および/または負極の有効面積を十分に確保することができ、電気容量の低下を抑制することができ、さらに、局部的な充放電を抑制することができるので、デンドライトによる短絡を抑制することができる。
図1は、本発明の電気化学セルの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
図1において、ハイブリッドキャパシタ1は、正極2と、正極2に対して間隔を隔てて対向配置される負極3と、正極2と負極3との間に介在されるセパレータ4と、正極2、負極3、セパレータ4および必要により設けられる捕捉部材7(後述)を収容するセル槽5と、セル槽5に貯留され、正極2、負極3およびセパレータ4が浸漬される電解液6とを備えている。なお、ハイブリッドキャパシタ1は、ラボスケールで採用される電池セルであって、工業的には、このハイブリッドキャパシタ1を、公知の技術によって適宜スケールアップしたものが採用される。
正極2は、分極性カーボンからなる正極材料(分極性カーボン材料)を含有し、例えば、正極材料と、導電剤と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(詳しくは後述)に成形した後、必要により乾燥させることにより形成される。
正極材料は、例えば、カーボン材を賦活処理することにより得られる。
カーボン材としては、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボンなどが挙げられる。
ソフトカーボンは、例えば、不活性雰囲気中での熱処理によって、炭素原子で構成される六角網面が、ハードカーボンの六角網面よりも相対的に規則的な積層構造(黒鉛構造)を形成しやすいカーボンの総称である。具体的には、不活性雰囲気中、2000〜3000℃、好ましくは、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Å以下、好ましくは、3.35〜3.40Åとなる結晶構造を形成するカーボンの総称である。
具体的なソフトカーボンとしては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、メソフェーズ系ピッチなどのピッチ類、例えば、石油系ニードルコークス、石炭系ニードルコークス、アントラセン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどの易黒鉛化性コークス類などの熱分解物などが挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。
また、ハードカーボンは、例えば、不活性雰囲気中、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Åを超える結晶構造を形成するカーボンの総称である。
具体的なハードカーボンとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、レゾルシノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、例えば、フリュードコークス、ギルソナイトコークスなど易黒鉛化性コークスとは異なる難黒鉛化性コークス、例えば、やしがら、木粉などの植物系原料、例えば、ガラス状炭素などの熱分解物などが挙げられる。
これらは、単独使用または併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ソフトカーボンが挙げられる。
賦活処理としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを賦活剤として用いるアルカリ賦活処理、例えば、塩化亜鉛(ZnCl2)、リン酸(H3PO4)などを賦活剤として用いる薬品賦活処理、例えば、二酸化炭素(CO2)、空気などを賦活剤として用いるガス賦活処理、例えば、水蒸気(H2O)を賦活剤として用いる水蒸気賦活処理などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカリ賦活処理が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化カリウム(KOH)を賦活剤として用いるアルカリ賦活処理(KOH賦活処理)が挙げられる。
賦活処理は、例えば、KOH賦活処理の場合、窒素雰囲気下において、カーボン材を、例えば、500〜800℃で予備焼成し、次いで、700〜1000℃でKOHとともに焼成する。用いられるKOHの量は、例えば、カーボン材1重量部に対して、0.5〜5重量部である。
上記賦活処理によって得られる正極材料を正極2に用いたハイブリッドキャパシタでは、例えば、正極2の電位が4.23V vs.Li/Li+以上となる充放電サイクルにおいて、正極2に比較的大きな不可逆容量を発現させることができる。そのため、放電過程において、より低い電位にまで正極の放電が可能となる。その結果、正極2の電気容量を拡大することができる。
正極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が70〜99重量%の割合となるように配合される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。つまり、導電剤は、配合しても配合しなくてもよい。
ポリマーバインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体架橋ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、PVdFが挙げられる。
また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜20重量%の割合となるように配合される。
そして、正極2を形成するには、正極材料、導電剤およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを正極側集電体8aの表面に塗工し、正極側塗工層9aを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(詳しくは後述)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、正極2が得られる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、水などのプロトン性極性溶媒、例えば、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチルなどの低極性溶媒が挙げられる。これらのうち、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
正極側集電体8aとしては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などの金属箔が挙げられる。
正極側集電体8aの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、10〜50μmであり、正極側塗工層9aの厚さが、例えば、10〜140μmであり、正極2の厚さ(正極側集電体8aおよび正極側塗工層9aの合計厚さ)が、例えば、30〜150μmである。
負極3は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する電極であって、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極材料を含有している。
より具体的には、負極3は、例えば、負極材料と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(詳しくは後述)に成形した後、必要により乾燥させることにより形成される。
負極材料としては、特に制限されないが、例えば、上記したハードカーボン、上記したソフトカーボン、グラファイトなどが挙げられる。
グラファイトとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛化メソフェーズカーボン繊維、黒鉛ウィスカ、黒鉛化炭素繊維、ピッチ、コークスなどの縮合多環炭化水素化合物の熱分解物などのグラファイト系炭素材料が挙げられる。
これらは単独使用または2種以上併用することができる。また、グラファイトは、粉末状のもの(例えば、平均粒径が25μm以下のもの)が好ましく用いられる。
そして、上記のような負極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が80〜99重量%の割合となるように配合される。
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PVdFが挙げられる。また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜10重量%の割合となるように配合される。
また、負極の製造においては、必要により、さらに、導電剤を配合することもできる。
導電剤としては、例えば、上記した導電剤が挙げられる。また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。
そして、負極3を形成するには、例えば、まず、負極材料およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60重量%)を得る。次いで、スラリーを負極側集電体8bの表面に塗工し、負極側塗工層9bを形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(詳しくは後述)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、負極3が得られる。
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
また、負極側集電体8bとしては、例えば、上記した金属箔が挙げられる。
負極側集電体8bの厚さは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、10〜50μmであり、負極側塗工層9bの厚さが、例えば、5〜60μmであり、負極3の厚さ(負極側集電体8bおよび負極側塗工層9bの合計厚さ)が、例えば、15〜70μmである。
セパレータ4としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、ウィスカなどの無機繊維、例えば、セルロースなどの天然繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリエステルなどの有機繊維などからなるセパレータが挙げられる。
また、セパレータ4の厚さおよび大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、厚さが、例えば、15〜150μmであり、大きさが、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、55〜115mmであり、長手方向と直交する方向(幅方向)長さが、例えば、50〜100mmである。
セル槽5は、正極2、負極3、セパレータ4および電解液6を封止する公知の容器であって、鉛直方向上部に、公知の逆止弁12を備えている。
電解液6は、リチウム塩を含む有機溶媒を含有しており、具体的には、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解させることにより調製される。
リチウム塩としては、ハロゲンを含むアニオン成分を有し、例えば、LiClO4、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiC4F9SO3、LiC8F17SO3、LiB[C6H3(CF3)2−3,5]4、LiB(C6F5)4、LiB[C6H4(CF3)−4]4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3CO2、LiN(CF3SO2)2などが挙げられる。なお、上式中[C6H3(CF3)2−3,5]は、フェニル基の3位と5位に、[C6H4(CF3)−4]はフェニル基の4位に、それぞれ−CF3が置換されているものを意味する。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート誘導体、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジオキソラン、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,3−プロパンスルトン、4,5−ジヒドロピラン誘導体、ニトロベンゼン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体、シドノン化合物、アセトニトリル、ニトロメタン、アルコキシエタン、トルエンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
そして、電解液6を調製するには、例えば、リチウム塩の濃度が、例えば、0.5〜5mol/L、好ましくは、1〜3mol/Lとなるように、また、電解液6中の水分量が、例えば、50ppm以下、好ましくは、10ppm以下となるように、リチウム塩を有機溶媒に溶解する。
図2は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の一実施形態(貫通部の長手方向一方側端部が正極および/または負極の水平方向一端辺または水平方向他端辺に臨む形態)の正面図である。
このハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3は、短辺および長辺を備える長方形状(略矩形板形状)に形成されている。
正極2および/または負極3の短辺と長辺との長さの比は、例えば、長辺長さ100%に対して、短辺長さが、例えば、40〜90%、好ましくは、55〜85%である。
より具体的には、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2は、正面視略矩形状に形成された正極側集電体8aの一方側表面に、長方形状の正極側塗工層9aが積層されることによって(図1参照)、長方形状に形成されている。
正極側集電体8aのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、46〜97mm、好ましくは、67〜97mm、幅方向長さが、例えば、41〜73mm、好ましくは、53〜73mmである。
このような正極2は、その一辺の一部、具体的には、長手方向一方側の一辺において、幅方向一方側端部のみに、正極側集電用タブ11aを備えている。
正極側集電用タブ11aは、正極2の一辺の幅方向の一方側端部において、その長手方向に沿って突出するように形成される正面視略矩形状の金属箔であって、例えば、上記した正極側集電体8aと同様の材料から、正極側集電体8aから連続するように、正極側集電体8aと一体的に形成されている。
正極側集電用タブ11aのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、12〜39mm、好ましくは、22〜39mm、幅方向長さが、例えば、21mm以上であり、例えば、73mm未満、好ましくは、37mm以下である。
また、正極側集電用タブ11aの幅方向長さは、正極2の幅方向長さに対して、例えば、28%以上であり、例えば、100%未満、好ましくは、50%以下である。
また、負極3は、正面視略矩形状に形成された負極側集電体8bの一方側表面に、長方形状の負極側塗工層9bが積層されることによって(図1参照)、長方形状に形成されている。
負極側集電体8bのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、50〜105mm、好ましくは、75〜105mm、幅方向長さが、例えば、45〜80mm、好ましくは、60〜80mmである。
このような負極3は、その一辺の一部、具体的には、長手方向一方側の一辺において、幅方向一方側端部のみに、負極側集電用タブ11bを備えている。
負極側集電用タブ11bは、負極3の一辺の幅方向の一方側端部において、その長手方向に沿って突出するように形成される正面視略矩形状の金属箔であって、例えば、上記した負極側集電体8bと同様の材料から、負極側集電体8bから連続するように、負極側集電体8bと一体的に形成されている。
負極側集電用タブ11bのサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、長手方向長さが、例えば、10〜44m、好ましくは、20〜44mm、幅方向長さが、例えば、25mm以上であり、例えば、80mm未満、好ましくは、40mm以下である。
また、負極側集電用タブ11bの幅方向長さは、負極3の幅方向長さに対して、例えば、31%以上であり、例えば、100%未満、好ましくは、50%以下である。
また、このハイブリッドキャパシタ1において、正極2および/または負極3は、その厚み方向を貫通する貫通部10を備えている。
より具体的には、このハイブリッドキャパシタ1では、上記により得られた正極2、および、上記により得られた負極3のいずれか、または、それらの両方の、塗工層9(正極側塗工層9aおよび/または負極側塗工層9b)が形成される領域に、塗工層9および集電体8(正極側集電体8aおよび/または負極側集電体8b)の厚み方向を貫通する貫通部10が、形成されている。好ましくは、正極2および負極3の両方に、貫通部10が形成されている。
貫通部10の形状は、特に制限されず、例えば、直線状、例えば、S字状、J字状などの曲線状などが挙げられ、好ましくは、直線状が挙げられる。
このような貫通部10は、その長手方向(貫通部10が曲線状などである場合、一端と他端とを結ぶ線分の長手方向。以下同様)長さが、正極2および/または負極3の短辺長さ未満のスリット状に形成されている。
貫通部10の長手方向長さは、正極2および/または負極3の短辺長さ未満であれば特に制限されないが、正極2および/または負極3の短辺長さに対して、例えば、20〜95%、好ましくは、30〜90%である。
また、この正極2および/または負極3では、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aが、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺に臨んでいる。
すなわち、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2および/または負極3の短辺が、鉛直方向下端辺Aおよび鉛直方向上端辺Bとなり、また、長辺が、水平方向一端辺Cおよび水平方向他端辺Dとなるように、正極2および/または負極3が配置されている。
そして、貫通部10の長手方向一方側端部aは、鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺、すなわち、鉛直方向上端辺B、水平方向一端辺Cおよび水平方向他端辺Dの少なくともいずれか一辺に臨んでいる。
より具体的には、図2において、貫通部10は、正極2および/または負極3の水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)および水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)のそれぞれにおいて、複数(10本づつ)、互いに並行となるように配置されている。
そして、水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)に配置されている貫通部10の長手方向一方側端部aは、水平方向一端辺Cに臨んでいる。また、水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)に配置されている貫通部10の長手方向一方側端部aは、水平方向他端辺Dに臨んでいる。
また、これら貫通部10の長手方向他方側端部bは、正極2および/または負極3の水平方向中央近傍に配置されており、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aは、一辺に臨まない長手方向他方側端部bに対して、鉛直方向上方に配置されている。
つまり、すべての貫通部10は、その長手方向他方側端部bが鉛直方向最下端となり、かつ、長手方向他方側端部bから長手方向一方側端部aに向かうに従って、常に鉛直方向上側向かってに延びる(上昇する)ように、形成されている。
とりわけ、貫通部10が直線状である場合、貫通部10は、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aと並行な直線(仮想線参照)に対して、所定の角度θを成すように形成される。
貫通部10が鉛直方向下端辺Aと並行な直線に対して成す角度θは、直角または鋭角側の角の角度として、例えば、0°<θ≦90°、好ましくは、20°<θ≦90°の範囲である。
なお、貫通部10の数およびサイズは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。
また、貫通部10が複数形成される場合において、各貫通部10の間隔(貫通部10が延びる方向と直交する方向における間隔)は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なり、目的および用途に応じて適宜設定される。
また、貫通部10は、好ましくは、正極2および/または負極3の、塗工層9が形成される領域の全体において、均一に形成される。
なお、図2に示す実施形態において、貫通部10は、正極2および負極3の両方の水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)および水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)のそれぞれにおいて、複数(10本づつ)、互いに並行となるように配置されているが、貫通部10の形成される位置は、上記に限定されず、例えば、より一層正極2および負極3の周端縁の近傍に、貫通部10を配置することができる(図2破線参照)。
このようなスリット状の貫通部10は、特に制限されないが、例えば、金属製の刃物によって、正極2および/または負極3を、その厚み方向を貫通するように切り込むことにより、形成される。
このようにして、正極2および/または負極3に貫通部10を形成することにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、その貫通部10を介して除去することができる。
すなわち、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、公知の方法によってラミネートセルとして形成した後、充電させ、その後、ラミネートセルを一度開封することにより、充電時(とりわけ、初回の充電時)に発生するガスを除去することができる。
具体的には、例えば、上記した正極2、負極3およびセパレータ4を積層し、得られた積層体を、セル槽5(例えば、アルミニウム製のラミネートフィルムなど)に収容する。その後、セル槽5に電解液6を注入することにより、ラミネートセルとしてハイブリッドキャパシタ1を形成する。
そして、この方法では、得られたハイブリッドキャパシタ1を、製品として出荷する前に、1回以上(数回〜数百回)充電させ(プレサイクル)、電解液6を酸化分解させることにより、ガスを発生させる。次いで、ハイブリッドキャパシタ1のラミネートセルを一旦開封して、貫通部10を介してガスを除去し、その後、ラミネートセルを再度封止する。
これにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、ハイブリッドキャパシタ1から、貫通部10によって良好に除去することができる。
さらに、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、ガス捕集部(図示せず)をハイブリッドキャパシタ1に連通するように形成し、充電時に発生するガスを、そのガス捕集部とともに、ハイブリッドキャパシタ1から除去することもできる。
すなわち、この方法では、例えば、上記したハイブリッドキャパシタ1を形成するとともに、逆止弁12を介して、その内部と連通するガス捕集部を設ける。次いで、そのハイブリッドキャパシタ1を、製品として出荷する前に、1回以上(数回〜数百回)充電させ(プレサイクル)、電解液6を酸化分解させることにより、ガスを発生させ、そのガスを、正極2および/または負極3に形成されている貫通部10を介して、逆止弁12からガス捕集部に導入する。そして、この方法では、ハイブリッドキャパシタ1からガスが捕集されたガス捕集部を切り離すとともに、その切り離された部分を、再度封止する。
これにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、貫通部10およびガス捕集部(図示せず)によって、簡易かつ確実に除去することができる。
さらに、このようなハイブリッドキャパシタ1では、上記のプレサイクルにおいて発生するガスのみならず、継続的な使用により電解液6が酸化分解して生じるガスをも、例えば、貫通部10を介して、逆止弁12から継続的に除去することができる。
このようにして、正極2および/または負極3に貫通部10を形成することにより、電解液6の酸化分解によって発生するガスを、その貫通部10を介して除去することができる。
そのため、このようなハイブリッドキャパシタ1によれば、良好にエネルギー密度を維持することができ、さらには、内部抵抗を低減することができ、その結果、出力特性の向上を図ることができる。
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aが、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺(図2の辺B、辺C、辺D)に臨むように形成されるとともに、その長手方向長さが、正極2および/または負極3の短辺長さ未満であり、さらに、貫通部10の上記した一辺に臨む一方側端部aが、その一辺に臨まない他方側端部bに対して、鉛直方向上方に配置される。
そのため、このハイブリッドキャパシタ1では、電解液6の酸化分解によって発生するガス(気泡)は、浮力により貫通部10に沿って移動し、その長手方向一方側端部aにおいて脱離する。また、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10が正極2および/または負極3の短辺長さ未満と短いので、ガスが貫通部10の長手方向途中で滞留することなく、効率良く脱離される。
その結果、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10にガスが滞留することを抑制でき、その結果、イオンの移動の阻害を抑制できるので、内部抵抗の増大を抑制できる。
また、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10が正極2および/または負極3の短辺長さ未満であるため、正極2および/または負極3の有効面積を十分に確保することができ、電気容量の低下を抑制することができ、さらに、局部的な充放電を抑制することができるので、デンドライトによる短絡を抑制することができる。
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位が、好ましくは、4.23V vs Li/Li+以上とされる。
正極2の電位を4.23V vs Li/Li+以上とするには、例えば、負極3にソフトカーボンおよび/またはハードカーボンを用いた場合には、セル電圧を3V以上で印加する。
正極2の電位を4.23V vs Li/Li+以上とすれば、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度の向上を図ることができる。
一方、このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位を4.23V vs Li/Li+以上などの高電位とした場合に、正極2の不可逆容量の発現に起因して、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPF6に含まれるPF6 −など)から誘導される負極活性阻害物質が生成する場合がある。
負極活性阻害物質が生成する過程、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因してHFが生成する過程は、以下のように推考される。
まず、正極2および負極3に上記した所定電圧(すなわち、4.23V vs Li/Li+以上)を印加すると、電解液6内では、例えば、正極2や電解液6に含まれる水分や有機物から、下記式(1)(2)に示すように、プロトン(H+)が生成する。
(1) 2H2O→O2+4H++4e−
(2) R−H→R+H++e−(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPF6に含まれるPF6 −など)と反応し、HFが生成する(下記式(3)参照)。
(3) PF6 −+H+→PF5+HF
HFのような負極活性阻害物質は、負極3の電気容量を低下させて、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度を低下させるおそれがある。
(1) 2H2O→O2+4H++4e−
(2) R−H→R+H++e−(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、電解液6に含まれるアニオン(例えば、LiPF6に含まれるPF6 −など)と反応し、HFが生成する(下記式(3)参照)。
(3) PF6 −+H+→PF5+HF
HFのような負極活性阻害物質は、負極3の電気容量を低下させて、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度を低下させるおそれがある。
そのため、このハイブリッドキャパシタ1では、好ましくは、正極2と負極3との間、正極2内部および負極3内部の少なくともいずれかに、電解液6に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する捕捉剤を含有させる。
ハイブリッドキャパシタ1に捕捉剤を含有させることにより、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を捕捉剤で捕捉することができる。
捕捉剤としては、例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)など、アルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。これらは、単独または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、炭酸リチウムが挙げられる。
より具体的には、例えば、捕捉剤が、正極2と負極3との間に含有(配置)される場合には、捕捉剤は、好ましくは、捕捉部材7として形成される。
捕捉部材7は、例えば、負極活性阻害物質を捕捉するための捕捉剤と、ポリマーバインダとを加圧延伸することにより得られるシートである。
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PTFEが挙げられる。
そして、捕捉部材7を形成するには、例えば、まず、捕捉剤と、ポリマーバインダとを、例えば、捕捉剤:ポリマーバインダの配合割合が、固形分の重量割合で20:80〜98:2、好ましくは、50:50〜90:10となるように配合して、混合物を調製する。次いで、混合物を、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して捕捉剤含有シートを得る。
そして、捕捉剤含有シートを所定の形状(例えば、矩形状)に打ち抜いた後、必要により乾燥させる。これにより、捕捉部材7が得られる。
そして、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、図1に示されるように、セパレータ4として、正極2側に配置されるセパレータ4aと負極3側に配置されるセパレータ4bとを設け、これらセパレータ4aと4bとの間に、捕捉部材7を設ける。
捕捉部材7を設けることによって、例えば、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を捕捉部材7で捕捉することができる。また、このような捕捉部材7は、捕捉剤含有セパレータとして、セパレータを兼ねることができる。
また、このハイブリッドキャパシタ1では、例えば、捕捉部材7を形成することなく、捕捉剤として、上記の炭酸塩を、セパレータ4aとセパレータ4bとの間に配置することもできる。
炭酸塩をセパレータ4aとセパレータ4bとの間に配置するには、例えば、粉末状の炭酸塩をセパレータ4aまたはセパレータ4bの一方の表面に添加し、当該表面と他方のセパレータ4a(4b)の表面とで、炭酸塩を挟み込む。
また、このハイブリッドキャパシタ1において、炭酸塩は、正極2および/または負極3の表面にコーティングされていてもよい。
炭酸塩を正極2および/または負極3の表面にコーティングするには、例えば、炭酸塩および結合剤を配合した混合物を、溶媒中で攪拌混合し、それを正極2および/または負極3上に塗布後、乾燥させる。
結合剤としては、例えば、上記したポリマーバインダなどが挙げられる。
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)や水が挙げられる。
さらに、このハイブリッドキャパシタ1では、捕捉剤として、リチウム箔を用いることもできる。
リチウム箔としては、公知のリチウム箔を用いることができ、例えば、円形状、矩形状に形成される。
また、リチウム箔は、好ましくは、その表面積が正極2および負極3の表面積と略同一面積、または、より広い面積となるように形成される。リチウム箔の表面積がこのような面積であると、負極活性阻害物質(例えば、HFなど)を、効率よく捕捉することができる。
さらに、その厚みは、例えば、0.01〜0.1mmであり、好ましくは、0.01〜0.05mmである。
また、リチウム箔には、その厚み方向に複数の孔が形成されている。このような孔が形成されることによって、電解液6が、セパレータ4aとセパレータ4bとの間を通過することができ、充放電することができる。
なお、リチウム箔は、リチウム金属であればよく、例えば、捕捉剤として、リチウム粉末やペースト状のリチウムを設けることもできる。
また、上記したリチウム金属のほか、Si−N結合を有する化合物(例えば、ペルヒドロポリシラザン、メチルポリシラザンなど)をセル槽5内に含めることによっても、負極活性阻害物質を捕捉することができる。この場合、負極活性阻害物質は、Si−N結合を有する化合物に捕捉されて安定化する。
また、捕捉剤が、正極2内部および/または負極3内部に含有される場合には、捕捉剤は、例えば、正極2および/または負極3の材料成分として用いられる。
すなわち、このような場合には、捕捉剤(例えば、炭酸塩、リチウム粉末など)が、正極2および/または負極3の製造工程において、正極材料または負極材料とともに配合される。これにより、捕捉剤が、正極2内部および/または負極3内部に含有される。
そして、このような捕捉剤(捕捉部材7)は、正極2で発現する不可逆容量1mAhに対して、好ましくは、2×10−5mol〜175×10−5molの割合で含まれる。
捕捉剤の量が、このような範囲であると、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
例えば、上記式(1)〜(3)を参照すると、電子1molの流れに伴い、HFが1mol生成する。すなわち、正極2で発現する不可逆容量をQ(mAh)とし、ファラデー定数を96500(C/mol)すると、ハイブリッドキャパシタ1で発生するHFの発生量MHFは、MHF=3.6×Q×F−1(mol)となる。
また、Li2CO3を捕捉剤として用いた場合、下記式(4)に示すように、HFがLi2CO3に捕捉されて(Li2CO3と反応して)、LiFおよびH2CO3が生成する。
(4) Li2CO3+2HF→2LiF+H2CO3
上記式(4)に示すように、1molのHFを捕捉するためには、0.5molのLi2CO3が必要である。より具体的には、Li2CO3の必要量MLi2CO3は、MLi2CO3=0.5MHF=1.8×Q×F−1(mol)であり、F=96500を代入すると、MLi2CO3=2×10−5×Q(mol)である。すなわち、Li2CO3が、不可逆容量Q(mAh)に対して2×10−5×Qmol以上含まれることによって、HFを十分捕捉することができる。その結果、負極活性阻害物質(HF)に起因するエネルギー密度の低下を抑制できるので、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
(4) Li2CO3+2HF→2LiF+H2CO3
上記式(4)に示すように、1molのHFを捕捉するためには、0.5molのLi2CO3が必要である。より具体的には、Li2CO3の必要量MLi2CO3は、MLi2CO3=0.5MHF=1.8×Q×F−1(mol)であり、F=96500を代入すると、MLi2CO3=2×10−5×Q(mol)である。すなわち、Li2CO3が、不可逆容量Q(mAh)に対して2×10−5×Qmol以上含まれることによって、HFを十分捕捉することができる。その結果、負極活性阻害物質(HF)に起因するエネルギー密度の低下を抑制できるので、より一層優れたエネルギー密度を発現することができる。
図3は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(正極と負極とを対向させたときに、その対向方向に投影した投影面において、正極に備えられた貫通部と、負極に備えられた貫通部とが、互いに重複しない形態)の正面図である。
図2に示す実施形態では、貫通部10が、正極2および負極3のそれぞれに対して同様に形成されているが、このような正極2および正極3を対向配置させると(図1参照)、正極2および負極3の対向方向に投影した投影面において、正極2の貫通部10と、負極3の貫通部10とが重複する。
このような場合、正極2および/または負極3に破損(破れなど)を生じる場合があり、また、ハイブリッドキャパシタ1の電気容量が低下する場合がある。
そこで、例えば、図3に示すように、正極2および負極3の対向方向に投影した投影面において、正極2に備えられた貫通部10と、負極3に備えられた貫通部10とが、互いに重複しないように、正極2および負極3に貫通部10を備えることができる。
より具体的には、図3(a)において、貫通部10は、正極2および負極3の両方の水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)および水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)のそれぞれにおいて、複数(10本づつ)、互いに並行となるように配置されている。
また、正極2に形成された貫通部10と、負極3に形成された貫通部10とは、同一パターンで形成されている。
そして、このような正極2および負極3では、図3(b)が参照されるように、正極2の貫通部10と、負極3の貫通部10とが、正極2および負極3を対向配置したときに、その対向方向に投影した投影面において、互いに重複しないように、配置されている。
つまり、正極2の互いに隣接する貫通部10の間に、負極3の貫通部10が、齟齬状に配置されている。
このようなハイブリッドキャパシタ1によれば、正極2および/または負極3の破損を抑制することができるとともに、ハイブリッドキャパシタ1の電気容量の低下を抑制することができる。
図4は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(水平方向一方側に配置される貫通部の長手方向他方側端部と、水平方向他方側に配置される貫通部の長手方向他方側端部とが、水平方向に沿って対向しない形態)の正面図である。
図2に示す実施形態では、貫通部10は、正極2および/または負極3の水平方向中央線に対して対称となるように形成されており、水平方向一方側の貫通部10の長手方向他方側端部bと、水平方向他方側の貫通部10の長手方向他方側端部bとが、水平方向に沿って対向するように配置されている。
このような場合、水平方向一方側の貫通部10の長手方向他方側端部bと、水平方向他方側の貫通部10の長手方向他方側端部bとが、互いに近接するため、それらの間において、正極2および/または負極3に破損(破れなど)を生じる場合がある。
そこで、例えば、図4に示すように、水平方向一方側に形成される貫通部10の長手方向他方側端部bと、水平方向他方側に形成される貫通部10の長手方向他方側端部bとが、水平方向に沿って対向しないように配置することができる。
より具体的には、図4において、貫通部10は、正極2および/または負極3の水平方向一方側および水平方向他方側のそれぞれに配置されている。そして、水平方向一方側に配置される貫通部10と、水平方向他方側に配置される貫通部10とは、正極2および/または負極3の水平方向中央線に対して非対称に形成されており、水平方向一方側の貫通部10の長手方向他方側端部bと、水平方向他方側の貫通部10の長手方向他方側端部bとが、水平方向に沿って対向しないように、配置されている。
つまり、このような正極2および/または負極3では、水平方向一方側の貫通部10の長手方向他方側端部bと、水平方向他方側の貫通部10の長手方向他方側端部bとが、相対的に離隔されている。
このようなハイブリッドキャパシタ1では、正極2および/または負極3の破損を抑制することができる。
図5は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(貫通部の長手方向一方側端部が正極および/または負極の鉛直方向上端辺、水平方向一端辺または水平方向他端辺に臨む形態)の正面図、図6は、図1に示すハイブリッドキャパシタに用いられる正極および負極の他の実施形態(貫通部の長手方向一方側端部が正極および/または負極の鉛直方向上端辺に臨む形態)の正面図である。
上記した説明では、正極2および/または負極3の短辺を、鉛直方向下端辺Aおよび鉛直方向上端辺Bとしているが、例えば、図5に示すように、正極2および/または負極3の長辺を鉛直方向下端辺Aおよび鉛直方向上端辺Bとすることもできる。
また、上記した説明では、貫通部10の長手方向一方側端部aが、正極2および/または負極3の水平方向一端辺Cまたは水平方向他端辺Dの2辺のいずれか一方に臨んでいるが、例えば、図5に示すように、貫通部10の長手方向一方側端部aを、鉛直方向上端辺B、水平方向一端辺Cおよび水平方向他端辺Dの3辺のいずれか一辺に臨ませることもできる。
具体的には、図5に示す実施形態では、長方形状に形成される正極2および負極3の長辺が、鉛直方向下端辺Aおよび鉛直方向上端辺Bとされ、短辺が、水平方向一端辺Cおよび水平方向他端辺Dとされている。
そして、このような実施形態において、貫通部10は、正極2および/または負極3の水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)、水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)、および、水平方向中央近傍のそれぞれにおいて、複数、互いに並行となるように配置されている。
そして、水平方向一方側(水平方向一端辺Cの側)に配置されている貫通部10の長手方向一方側端部aは、水平方向一端辺Cに臨んでおり、それら貫通部10は、鉛直方向下端辺Aと並行な直線に対して所定の角度θを成すように形成されている。
また、水平方向他方側(水平方向他方辺Dの側)に配置されている貫通部10の長手方向一方側端部aは、水平方向他端辺Dに臨んでおり、それら貫通部10は、鉛直方向下端辺Aと並行な直線に対して所定の角度θを成すように形成されている。
さらに、水平方向中央近傍に配置されている貫通部10の長手方向一方側端部aは、鉛直方向上端辺Bに臨んでおり、それら貫通部10は、鉛直方向下端辺Aと並行な直線に対して直角(90°)を成すように形成されている。
さらに、上記したように、長方形状に形成される正極2および負極3の長辺が、鉛直方向下端辺Aおよび鉛直方向上端辺Bとされる場合、例えば、図6に示すように、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aを、鉛直方向上端辺Bに臨ませることもできる。
より具体的には、この実施形態では、集電用タブ11が、正極2および/または負極3の水平方向一端辺Cの全長にわたって形成されており、すべての貫通部10が、水平方向に沿って等間隔に配置され、その長手方向一方側端部aが、鉛直方向上端辺Bに臨み、鉛直方向下端辺Aと並行な直線に対して直角(90°)を成すように形成されている。
図5または図6に示す正極2および/または負極3を用いて得られるハイブリッドキャパシタ1でも、すべての貫通部10の長手方向一方側端部aが、正極2および/または負極3の鉛直方向下端辺Aを除く少なくとも一辺(図2の辺B、辺C、辺D)に臨むように形成されるとともに、その長手方向長さが、正極2および/または負極3の短辺長さ未満であり、さらに、貫通部10の上記した一辺に臨む一方側端部aが、その一辺に臨まない他方側端部bに対して、鉛直方向上方に配置される。
そのため、このハイブリッドキャパシタ1では、電解液6の酸化分解によって発生するガス(気泡)は、浮力により貫通部10に沿って移動し、その長手方向一方側端部aにおいて脱離する。また、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10が正極2および/または負極3の短辺長さ未満と短いので、ガスが貫通部10の長手方向途中で滞留することなく、効率良く脱離される。
その結果、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10にガスが滞留することを抑制でき、その結果、イオンの移動の阻害を抑制できるので、内部抵抗の増大を抑制できる。
また、このハイブリッドキャパシタ1では、貫通部10が正極2および/または負極3の短辺長さ未満であるため、正極2および/または負極3の有効面積を十分に確保することができ、電気容量の低下を抑制することができ、さらに、局部的な充放電を抑制することができるので、デンドライトによる短絡を抑制することができる。
なお、上記した説明では、正極2および/または負極3に集電用タブ11を設けたが、目的および用途によっては、正極2および/または負極3に集電用タブ11を設けることなく、ハイブリッドキャパシタ1を形成することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、ハイブリッドキャパシタ1を、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池に変更することができる。
例えば、電気二重層キャパシタの場合には、負極および負極の材料として、例えば、活性炭が用いられる。
一方、リチウムイオン電池の場合には、正極の材料として、上記した正極2に用いられる材料の代わりに、種々の酸化物、硫化物が用いられ、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn2O4,LiMnO2など)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、バナジウム酸化物(例えば、V2O5など)などが用いられる。また、導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料などの有機材料も用いることができる。
そして、本発明の電気化学セルは、例えば、自動車(ハイブリッド車両など)に搭載される駆動用電池、ノートパソコン、携帯電話などのメモリバックアップ電源などの各種工業製品として、好適に用いることができる。
1 ハイブリッドキャパシタ
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 セル槽
6 電解液
7 捕捉部材
8a 正極側集電体
8b 負極側集電体
9a 正極側塗工層
9b 負極側塗工層
10 貫通部
11a 正極側集電用タブ
11b 負極側集電用タブ
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 セル槽
6 電解液
7 捕捉部材
8a 正極側集電体
8b 負極側集電体
9a 正極側塗工層
9b 負極側塗工層
10 貫通部
11a 正極側集電用タブ
11b 負極側集電用タブ
Claims (3)
- 正極と、
前記正極に対して対向配置される負極と、
前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、
前記正極および/または前記負極は、短辺および長辺を備える長方形状に形成されるとともに、その厚み方向を貫通する貫通部を備えており、
すべての前記貫通部の長手方向一方側端部が、前記正極および/または前記負極の鉛直方向下端辺を除く少なくとも一辺に臨むように形成されるとともに、前記貫通部の長手方向長さが、前記短辺長さ未満であり、かつ、
前記貫通部は、前記一辺に臨む前記一方側端部が、前記一辺に臨まない前記他方側端部に対して、鉛直方向上方に配置されるように形成されていることを特徴とする、電気化学セル。 - 前記貫通部が、前記正極および前記負極の両方に備えられており、
前記正極および前記負極の対向方向に投影した投影面において、前記正極に備えられた前記貫通部と、前記負極に備えられた前記貫通部とが、互いに重複しないことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学セル。 - 前記貫通部が、前記正極および/または前記負極の水平方向一方側および水平方向他方側のそれぞれに配置されており、
前記水平方向一方側に配置される前記貫通部の前記長手方向他方側端部と、
前記水平方向他方側に配置される前記貫通部の前記長手方向他方側端部とが、
前記水平方向沿って対向しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学セル。
Priority Applications (1)
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JP2012043981A JP2013182925A (ja) | 2012-02-29 | 2012-02-29 | 電気化学セル |
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JP (1) | JP2013182925A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019192617A (ja) * | 2018-04-27 | 2019-10-31 | 京セラ株式会社 | フロー電池 |
-
2012
- 2012-02-29 JP JP2012043981A patent/JP2013182925A/ja active Pending
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JP2019192617A (ja) * | 2018-04-27 | 2019-10-31 | 京セラ株式会社 | フロー電池 |
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