以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
レンズ鏡筒3には、レンズ311、絞り312、ズームレンズ313、フォーカスレンズ314を含む撮影光学系31が内蔵されている。フォーカスレンズ314は、レンズ鏡筒3の光束L1の光軸に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズ駆動モータ34によってその位置が調節される。なお、フォーカスレンズ駆動モータ34は、後述するカメラ制御CPU25から出力され、レンズ制御CPU32を介してフォーカスレンズ駆動モータ34に入力される指令信号に基づいて駆動する。
レンズ鏡筒3の筐体外表面には液晶表示装置などから構成される距離表示器33が設けられ、フォーカスレンズ314の位置に連動した被写体距離を表示する。この被写体距離データは、後述するカメラ制御CPU25から出力され、レンズ制御CPU32を介して距離表示器33に入力される。なお、被写体距離を表示する距離表示器33は、レンズ鏡筒3以外にも、たとえばカメラ本体2に設けることもできる。
カメラ本体2は、被写体からの光束L1を撮像素子22及び観察光学系24へ導くためのハーフミラー21を備えている。このハーフミラー21は、回転軸Oを中心にして被写体の観察位置と撮影位置との間を回転する。図1では、ハーフミラー21が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を点線で示す。ハーフミラー21は、被写体の観察位置にある状態では光束L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光束L1の光路から退避するように回転する。したがって、以下の説明においてはハーフミラー21が観察位置にある状態を挿入位置とも言い、撮影位置にある状態を退避位置とも言う。
ハーフミラー21は、たとえば1mm程度の平行平面ガラスにより構成され、被写体側の主面に光束の半透過性を付与する多層膜が形成されている。そして、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束L1の一部の光束L2を当該ハーフミラー21で反射して観察光学系24へ導き、残りの光束L3を透過させて撮像素子22へ導く。
したがって、ミラー系21が観察位置にある場合、被写体からの光束L1は観察光学系24と撮像素子22に導かれ、使用者により被写体が観察されるとともに、フォーカスレンズ314の焦点調節状態の検出が行われる。この状態から、使用者が図示しないレリーズボタンを押すとハーフミラー21が撮影位置に回転し、被写体からの光束L1は全て撮像素子22へ導かれ、撮影した画像データをメモリ26に保存する。
観察光学系24は、スクリーン(焦点板)241とペンタプリズム242と接眼レンズ243を備えている。スクリーン241は、ハーフミラー21が観察位置にある状態において、撮像素子22の撮像面と共役な面に配置されている。これにより、使用者は、スクリーン241上に形成された像をペンタプリズム242と接眼レンズ243を介して観察することができる。
カメラ本体2にはカメラ制御CPU25が設けられている。カメラ制御CPU25は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御CPU32と電気的に接続され、このレンズ制御CPU32からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御CPU32へデフォーカス量などのカメラボディ情報を送信する。また、カメラ制御CPU25は、撮像素子22から画像信号を読み出すとともに、所定の情報処理を施して液晶ディスプレイ27やメモリ26に出力する。また、カメラ制御CPU25は、画像信号の補正や交換レンズ3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ全体の制御を司る。
液晶ディスプレイ27は、たとえばカメラ本体の背面に設けられた液晶表示素子271と、これを駆動する駆動回路272とを備え、カメラ制御CPU25から送出された画像信号を駆動回路272で受信し、この画像信号に応じた駆動信号を液晶表示素子271へ送出することで撮影画像を表示する。
なお、メモリ26は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
図2は、撮像素子22の撮像面における焦点検出位置を示す正面図、図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222の配列を模式的に示す正面図である。
本実施形態の撮像素子22は、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
図4Aは、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図7Aは断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図7Aの断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系31の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束IBを受光する。
なお、本実施形態のカラーフィルタはマイクロレンズ2211と光電変換部2212との間に設けられ、緑画素Gと赤画素Rと青画素Bのそれぞれのカラーフィルタの分光感度は、たとえば図5に示すとおりとされている。
図2及び図3に戻り、撮像素子22の撮像面の中心及び中心から左右対称位置の3箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222が配列された焦点検出画素列22a,22b,22cが設けられている。図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222が横一列に配列されて構成されている。本例の焦点検出画素222は、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
なお、図2に示す焦点検出画素列22a,22b,22cの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所又は二箇所にすることもでき、また、撮像素子22の中心から上下対称の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列22a〜22cの中から使用者の手動操作により所望の焦点検出画素列を選択することもできる。
図4Bは、焦点検出画素222の一つを拡大して示す正面図、図7Bは断面図である。焦点検出画素222は、図4Bに示すように、マイクロレンズ2221と、一対の光電変換部2222,2223から構成され、図7Bの断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222,2223が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221が形成されている。一対の光電変換部2222,2223は同じ大きさで、かつマイクロレンズ2221の光軸に対して左右対称に配置されている。この光電変換部2222,2223は、マイクロレンズ2221により撮影光学系31の特定の射出瞳(たとえばF2.8)を通過する一対の光束を受光する形状とされている。すなわち、図7Bに示すように、焦点検出画素222の一方の光電変換部2222は一方の光束AB1を受光する一方で、焦点検出画素222の他方の光電変換部2223は、マイクロレンズ2221の光軸に対して光束AB1と対称となる光束AB2を受光する。
なお、焦点検出画素222にはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。図6に焦点検出画素222の分光特性を示すが、相対感度は、図5に示す撮像画素221の青画素B、緑画素G及び赤画素Rの各感度を加算したような分光特性とされ、また感度が現れる光波長領域は、図5に示す撮像画素221の青画素B、緑画素G及び赤画素Rの感度の光波長領域を包摂した領域となっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
また、図4Bに示す焦点検出画素222の光電変換部2222,2223は半円形状としたが、光電変換部2222,2223の形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状にすることもできる。
ここで、上述した焦点検出画素222の出力に基づいて焦点を調節する、いわゆる瞳分割位相差検出方式について説明する。
図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図であり、撮影光軸L上に配置された焦点検出画素222−1と、これに隣接する焦点検出画素222−2が、射出瞳34の測距瞳341,342から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB2−1,AB2−2を受光することを示す。ただし、その他の焦点検出画素についても、一対の光電変換部は一対の測距瞳341,342から照射される一対の光束を受光する。
ここで、射出瞳34とは、交換レンズ3の予定焦点面に配置された焦点検出画素222のマイクロレンズ2221の前方Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳341,342とは、焦点検出画素222のマイクロレンズ2221により投影された光電変換部2222,2223の像をいう。
なお、同図において焦点検出画素222−1,222−2の配列方向は一対の測距瞳341,342の並び方向と一致している。
焦点検出画素222のマイクロレンズ2221−1,2221−2は、交換レンズ3の予定焦点面近傍に配置されており、光軸L上に配置されたマイクロレンズ2221−1により、その背後に配置された一対の光電変換部2222−1,2223−1の形状が測距瞳距離Dだけ離れた射出瞳34上に投影され、その投影形状は測距瞳341,342を形成する。
同様に、光軸L上から離間して配置されたマイクロレンズ2221−2により、その背後に配置された一対の光電変換部2222−2,2223−2の形状が測距瞳距離Dだけ離れた射出瞳34上に投影され、その投影形状は測距瞳341,342を形成する。
すなわち、測距瞳距離Dにある射出瞳34上で、各焦点検出画素222の光電変換部2222,2223の投影形状(測距瞳341,342)が一致するように各画素222の投影方向が決定されている。
なお、焦点検出画素222−1の光電変換部2222−1は、一方の測距瞳341を通過しマイクロレンズ2221−1に向かう一方の焦点検出光束AB1−1により、マイクロレンズ2221−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。これに対して、光電変換部2223−1は、他方の測距瞳342を通過しマイクロレンズ2221−1に向かう他方の焦点検出光束AB2−1により、マイクロレンズ2221−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
同様に、焦点検出画素222−2の光電変換部2222−2は、一方の測距瞳341を通過しマイクロレンズ2221−2に向かう一方の焦点検出光束AB1−2により、マイクロレンズ2221−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。これに対して、光電変換部2223−2は、他方の測距瞳342を通過しマイクロレンズ2221−2に向かう他方の焦点検出光束AB2−2により、マイクロレンズ2221−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
以上の焦点検出画素222を、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222の一対の光電変換部2222,2223の出力を、測距瞳341と測距瞳342のそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳341と測距瞳342のそれぞれを通過する焦点検出光束AB1,AB2が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。この強度分布データに対し、相関演算処理又は位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる瞳分割位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出位置における焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
図1に戻り、撮像素子22には、当該撮像素子22を交換レンズ3の光軸方向に移動させる移動機構23が設けられている。この移動機構23は、圧電素子アクチュエータ、超音波モータ、ボイスコイルモータなどの各種アクチュエータで構成することができ、ハーフミラー21を光束L1の光路内に挿入した場合と退避した場合との、当該ハーフミラー21による光路長変化を調整する。
すなわち、所定厚さdを有するハーフミラー21の屈折率nはn>1であるから、ハーフミラー21を透過してできる像の位置は、ハーフミラー21がないときの像の位置に比べてハーフミラー21から離れる位置になる。この光路長の変化量δはハーフミラー21の厚さdと、屈折率nと、ハーフミラー21の傾斜角から理論的又は実験的に求めることができるので、予め求めておく。
そして、ハーフミラー21を光束L1の光路から退避した場合の撮像素子22の光軸方向の位置(図1の点線で示す位置。以下、前進位置ともいう。)は交換レンズ3の予定焦点面であることから、この位置を機械的に位置決めしておく。たとえば、機械的ストッパをカメラ本体2に固定し、撮像素子22が前進位置でこのストッパに押し当てられることにより当該前進位置が位置決めされるように構成する。
この状態からハーフミラー21を光路内に挿入した場合には、移動機構23により、同図の実線で示すように(以下、この位置を後退位置ともいう。)、撮像素子22を光軸方向の後方(使用者の方向)へ光路長の変化量δだけ移動させる。この後退位置にも機械的ストッパを設けておくことができる。そしてこの状態から、ハーフミラー21を光路から退避した場合には、移動機構23により撮像素子22を光軸方向の前方(被写体方向)へ光路長の変化量δだけ移動させる。この移動指令はカメラ制御CPU25が実行する。
このように、本実施形態の撮像素子22の移動動作、特にハーフミラー21を退避させて撮像素子22を前進位置に戻す動作においては、複雑な位置制御は不要であり、単純に機械的ストッパなどに押し当てて停止すればよいので、ハーフミラー21を光路中に挿入した場合に生じる像面の移動量δを、フォーカスレンズ314の移動により行う場合に比べ、高速かつ高精度に行うことができる。
なお、移動機構23による撮像素子22の移動態様は、図1に実線で示す後退位置と点線で示す前進位置という2つの位置を移動させる態様以外にも、たとえば同図の実線と点線で示す位置の中間に初期位置を設定し、この初期位置から実線で示す後退位置へ後退させたり、又は点線で示す前進位置へ前進させたりすることもできる。
上述したとおりハーフミラー21を透過してできる像と透過せずにできる像の位置はハーフミラー21の厚さと屈折率が原因でずれるので、ハーフミラー21を透過してできる像に基づいて焦点調節を行ってもハーフミラー21のない状態で撮影すると焦点がずれることになる。
しかしながら、本実施形態では、ハーフミラー21を透過してできる像に基づいて焦点調節を行う一方で、ハーフミラー21のない状態で撮影する際にはハーフミラー21の光路長変化量δだけ撮像素子22を光軸方向前方へ移動させるので、撮像素子22の撮像面における合焦状態が維持されることになる。
また、交換レンズ3に設けられた距離表示器33にはフォーカスレンズ314の位置に連動した被写体距離が表示されるところ、本実施形態ではハーフミラー21を光路内に挿入した状態で焦点調節状態を検出し、この焦点調節状態に応じてフォーカスレンズ314の位置を調節し、このフォーカスレンズ314の位置を距離表示器33に表示する。すなわち、ハーフミラー21を光路から退避させて撮影する状態ではフォーカスレンズ314の位置を変更しないので、距離表示器33には正確な被写体距離データが表示されることになる。
ちなみに、本実施形態の焦点検出画素222に代えて図9及び図10に示す焦点検出画素222a,222bを用いることもできる。図9は、本発明の他の実施形態に係る画素の配列を模式的に示す正面図であり、図2のIII部に相当する拡大正面図、図10は、図9の一対の焦点検出画素を拡大して示す正面図である。
図3及び図4Bに示す実施形態では、焦点検出画素222として一つの画素に一対の光電変換部2222,2223を有するものを用いたのに対し、図9及び図10に示す実施形態では一対の焦点検出画素222a,222bのそれぞれに対をなす光電変換部2224,2225を有するものを用いる。
図10に示す焦点検出画素222aは、マイクロレンズ2221と、光電変換部2224から構成され、図7Bに示す断面図と同様に、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2224が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221が形成されている。光電変換部2224はマイクロレンズ2221の光軸に対して左右対称の位置のうちの左側に配置されている。
これに対して、図10に示す焦点検出画素222bも、マイクロレンズ2221と、光電変換部2225から構成され、図7Bに示す断面図と同様に、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2225が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221が形成されている。光電変換部2225はマイクロレンズ2221の光軸に対して左右対称の位置のうちの右側に配置されている。
そして、図9に示すように、一対の焦点検出画素222a,222bは撮像素子22の中心から左右一列に配置され、撮影光学系31の射出瞳を通過する一対の光束をこれら一対の焦点検出画素222a,222bそれぞれの光電変換部2224,2225で受光する。
このように、異なる画素で構成される一対の焦点検出画素222a,222bを用いても、一対の光電変換部2224,2225の出力結果に基づいて、瞳分割位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
これに加えて、撮像素子22を構成する画素からの出力読出回路の構成がシンプルになるという利点もある。
次に、本実施形態に係るカメラの動作例を説明する。図11は本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS100にてカメラ1の電源がONされていることを確認した上でステップS110に進み、ハーフミラー21を光路内への挿入位置へ移動させるとともに、移動機構23により撮像素子22を図1に実線で示す後退位置へ移動させる。
ステップS120では、ハーフミラー21が挿入位置(被写体の観察位置)にあり、また撮像素子22が後退位置にある状態で、撮像素子22の画像データをカメラ制御CPU25へ読み出すとともに、この画像データに間引き処理などを施したのち、液晶ディスプレイ27の駆動回路272を介して液晶表示素子271に現在の撮影画像を表示する。
なお、被写体からの光束L1の一部はハーフミラー21を通過して撮像素子22へ至る一方で、残りの光束L2はハーフミラー21で反射してスクリーン241に至るので、使用者は、ペンタプリズム242及び接眼レンズ243を介して被写体を観察できるとともに液晶ディスプレイ27によっても被写体を観察することができる。
ステップS130では、撮像素子22に設定された焦点検出画素列22a〜22cに設けられた焦点検出画素222から一対のデータを読み出す。この場合、使用者の手動操作により特定の焦点検出画素列が選択されているときは、その焦点検出画素列の焦点検出画素からのデータのみを読み出す。
ステップS140では、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を行って像ズレ量を演算し、さらにこの像ズレ量をデフォーカス量に変換する。
ここで、読み出された一対の像データに基づく像ズレ検出演算処理(相関演算処理)の一例を簡単に説明する。
焦点検出画素222が検出する一対の像は、測距瞳341,342が交換レンズ3の絞り開口312により遮光され、光量バランスが崩れている可能性がある。したがって、本実施形態では、この光量バランスの崩れに対して像ズレ検出精度を維持できるタイプの相関演算を施す。
まず、焦点検出画素列から読み出された一対の像データ列をA11〜A1M、A21〜A2M(Mはデータ数)とし、下記相関演算式(数式1)を行い、相関量C(k)を演算する。
[数1]
C(k)=Σ|A1n・A2n+1+k−A2n+k・A1n+1|
なお、数式1においてΣ演算はnについての累積演算(総和演算)を示し、nの範囲は、像ずらし量kに応じてA1n、A1n+1、A2n+k、A2n+1+kのデータが存在する範囲に限定される。また、像ずらし量kは整数であり、データ列のデータ間隔を単位とした相対的シフト量である。
数式1の演算結果は、図12(a)に示すように、一対のデータの相関が高いシフト量(図12(a)ではk=kj=2)において相関量C(k)が極小(小さいほど相関度が高い)になる。
次に、数式2〜数式5による3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値C(x)を与えるシフト量xを求める。
[数2]
x=kj+D/SLOP
[数3]
C(x)= C(kj)−|D|
[数4]
D={C(kj−1)−C(k j+1)}/2
[数5]
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)}
そして、数式2で算出されたシフト量xの信頼性があるかどうかは、以下のようにして判定する。
図12(b)に示すように、一対のデータの相関度が低い場合は、内挿された相関量の極小値C(x)の値が大きくなる。したがって、C(x)が所定の閾値以上の場合は算出されたシフト量の信頼性が低いと判定し、算出されたシフト量xをキャンセルする。
または、C(x)をデータのコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定値以上の場合は、算出されたシフト量の信頼性が低いと判定し、算出されたシフト量xをキャンセルする。
または、コントラストに比例した値となるSLOPが所定値以下の場合は、被写体が低コントラストであり、算出されたシフト量の信頼性が低いと判定し、算出されたシフト量xをキャンセルする。
また、図12(c)に示すように、一対のデータの相関度が低く、シフト範囲kmin〜kmaxの間で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、極小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定する。
なお、相関演算式としては上述した数式1に限定されず他の公知の相関式を利用することもできる。
算出されたシフト量xの信頼性があると判定された場合は、下記数式6により像ズレ量shftを求める。
[数6]
shft=PY・x
数式6において、PYは検出ピッチ(焦点検出画素のピッチ)である。
最後に、数式6で算出された像ズレ量shftに所定の変換係数kを乗じてデフォーカス量defを求める。
[数7]
def=k・shft
図11のステップS150へ戻り、ステップS140で算出されたデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを判断する。デフォーカス量の絶対値が所定値以内にあるときは合焦しているものとし、ステップS160をジャンプしてステップS170へ進む。デフォーカス量が所定値以内にないときは、ステップS160へ進み、カメラ制御CPU25からレンズ制御CPU32を介してレンズ駆動モータ34へ駆動信号を送出し、フォーカスレンズ314を合焦位置へ移動させる。これと相前後してフォーカスレンズ314の合焦位置に連動した被写体距離を距離表示器33に表示する。
なお、ステップS150にて焦点検出が不能であると判断された場合もこのステップS160へ進み、レンズ制御CPU32にスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ3のフォーカスレンズ314を無限端から至近端の間でスキャン駆動させることで合焦位置を探索したのち、ステップS100へ戻って上記動作を繰り返す。
ステップS170では、カメラ本体2に設けられた図示しないレリーズボタンが押されたか否かを判断する。レリーズボタンが押されないときはステップS100へ戻り、ステップS100〜S170の処理を繰り返す。
ステップS170でレリーズボタンが押されたことを検出したら、ステップS180へ進み、ハーフミラー21を光束L1の光路から退避させると同時に、移動機構23を制御して撮像素子22を光路長変化量δだけ光軸方向に前進させる。ハーフミラー21の退避動作により撮影光学系31による像面はδだけ前方にずれるので、撮像素子22の撮像面を前方に移動する。
これにより、再びフォーカスレンズ314を移動させることなく、撮像素子22の撮像面における焦点調節状態が維持されることになる。その結果、レリーズボタンを押した後にフォーカスレンズ314が動作するといった違和感を使用者に与えることがなくなる。
ステップS190では、レンズ制御CPU32に対して絞り調整命令を送信し、交換レンズ3の絞り312の絞り値を、使用者または自動設定された制御F値にする。この絞り制御が終了したのち、撮像素子22の撮像画素221および全ての焦点検出画素222から画像データを読み出す。
ここで、読み出された焦点検出画素222の画像データは白黒データであることから、ステップS200にて、焦点検出画素列22a〜22cの各焦点検出画素222が位置する画素データを、これら焦点検出画素222の周囲の撮像画素221の画像データに基づいて画素補間する。これにより、焦点検出画素列22a〜22cの位置におけるカラー画像データを得ることができる。
最後に、ステップS210にて、撮像画素221の画像データおよび補間された画像データをメモリ26に保存する。このとき、得られた画像データを間引き処理して液晶ディスプレイ27に表示することもできる。
ステップS220では連続撮影かどうかを判断し、連続撮影の場合にはステップS190〜S210を繰り返す。なお、連続撮影モードはカメラ本体2などに設けられる連続撮影モードスイッチを使用者が操作することで選択される。
連続撮影モードが選択されているときは、ハーフミラー21のアップ・ダウンを行うことなくハーフミラー21を退避位置に退避させた状態で撮像素子22からの画像データを連続して読み出すので、連続撮影の駒速度を上げることができる。なお、ハーフミラー21が退避位置にあると観察光学系24による被写体の観察はできないが、上述したように液晶ディスプレイ27に画像データを表示させることにより使用者は被写体を観察しながら連続撮影を行うことができる。
図13は、本発明の他の実施形態に係るカメラの動作例を示すフローチャートである。図11に示す実施形態の動作フローに対して、ステップS180とS190の間にステップS182,S186,S188を追加した動作フローであり、共通する動作フローについては説明を省略する。
上述した実施形態では、レリーズボタンが押されたらハーフミラー21を退避させるとともに撮像素子22を前進させた後、フォーカスレンズ314の焦点調節動作を行わずに撮像動作を行っている。これに対して、本実施形態では撮像素子22を前進させてから撮像動作するまでの間にフォーカスレンズ314の焦点調節動作を再度行うようにしている。
すなわち、ステップS180にて、ハーフミラー21を光束L1の光路から退避させると同時に、移動機構23を制御して撮像素子22を光路長変化量δだけ光軸方向に前進させたら、ステップS182へ進み、撮像素子22に設定された焦点検出画素列22a〜22cに設けられた焦点検出画素222から一対のデータを読み出す。この場合、使用者の手動操作により特定の焦点検出画素列が選択されているときは、その焦点検出画素列の焦点検出画素からのデータのみを読み出す。
次のステップS184では、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を行って像ズレ量を演算し、さらにこの像ズレ量をデフォーカス量に変換する。この像ズレ量の演算とデフォーカス量の算出は、上述したステップS140と同じである。
次のステップS186では、ステップS184で算出されたデフォーカス量の絶対値が所定値以内であるか否かを判断する。デフォーカス量の絶対値が所定値以内にあるときは合焦しているものとし、ステップS188をジャンプしてステップS190へ進む。デフォーカス量が所定値以内にないときは、ステップS188へ進み、カメラ制御CPU25からレンズ制御CPU32を介してレンズ駆動モータ34へ駆動信号を送出し、フォーカスレンズ314を合焦位置へ移動させる。これと相前後してフォーカスレンズ314の合焦位置に連動した被写体距離を距離表示器33に表示する。
本実施形態では、ハーフミラー21を退避させるとともに撮像素子22を光路長変化量δだけ前進させたのちに、再度フォーカスレンズ314の合焦操作を行うので、撮像素子22の移動動作や光路長変化量δに多少の誤差があっても確実に合焦した画像データを得ることができる。
なお、ステップS180の撮像素子22の前進移動によって既に合焦位置の近傍に移動しているので、このステップS188の焦点調節動作は、使用者に違和感を与えるほど大きな移動量ではなくまた迅速に行うことができる。
さて、上述した図11及び図13のステップS110においては、移動機構23を制御して撮像素子22を、基準位置からハーフミラーを光路中に挿入した場合に生じる像面の移動量、すなわち光路長変化量δだけ移動させる。しかしながら、ハーフミラー21を光路中に挿入した場合に生じる像面の移動量(光路長変化量δ)は、像を形成する光束の収差に応じて変化するために、交換レンズ3の絞り開口F値や焦点検出画素列22a〜22cの、画面中心からの像高位置によって変化する。
そこで、本発明の他の実施形態として、図11及び図13のステップS110において、ボディ制御CPU25は交換レンズ3のレンズ制御CPU32との通信によって絞り開口F値の情報を得るとともに、使用者等により選択された焦点検出画素列22a〜22cの位置を取得し、これら絞り開口F値及び焦点検出位置に応じて表1のように光路長変化量mを決定し、決定された光路長変化量δmだけ撮像素子22を移動させるようにしてもよい。
たとえば、絞り開口F値が1.4で焦点検出位置が図2に示す22aであるときは光路長変化量をδ1とし、絞り開口F値が1.4で焦点検出位置が図2に示す22b又は22cであるときは光路長変化量をδ2とする。こうした絞り開口F値及び焦点検出位置に応じた光路長変化量δmは理論的又は実験的に求めることができる。
このようにすれば、交換レンズ3の絞り開口F値や焦点検出位置によらず、より高精度な焦点調節を達成した状態での撮影が可能になる。
また同様に、光路長変化量δmを算出するに際には、表1に限定されずその他の情報、たとえば焦点距離、射出瞳距離又は色収差(分光感度特性)などを用いることもできる。
なお、上述したようにハーフミラー21が挿入位置にあるときの撮像素子22の光軸方向の位置が状況に応じて変化する場合、撮像素子22の移動量に拘らず常に撮像素子22の位置と共役な面にスクリーン241が位置するようにスクリーン241を移動させてもよい。撮像素子22の移動量に応じてスクリーン241を移動させることにより観察光学系24により観察される被写体像も正確に合焦することになる。
また、圧電素子などのアクチュエータで構成することができる移動機構23は、撮像素子22を光軸方向に移動させる機能を有するので、これを利用して当該移動機構23を他の用途にも使用することが可能である。たとえば、移動機構23により撮像素子22を光軸方向に高い周波数で振動させることにより、撮像素子22の表面に付着したゴミをふるい落とすこともできる。
また、上述した実施形態では、撮像素子22に組み込まれた瞳分割型の焦点検出画素222の出力信号に応じて、いわゆる位相差検出方式で焦点検出を行うように構成したが、これ以外にも撮像素子22の出力信号を用いてコントラスト検出を行い、このコントラスト評価結果に応じて、いわゆる山登り方式で自動焦点調節を行うように構成することもできる。
本実施形態の撮像装置1は、上述した一眼レフデジタルカメラに限定されず、銀塩フィルムカメラ、レンズ一体型デジタルスチルカメラや銀塩フィルムスチルカメラのほかビデオカメラにも適用できる。また、携帯電話機などに内蔵される小型カメラモジュール、監視カメラ、ロボット用視覚認識装置等にも適用できる。さらに、カメラ以外のたとえば焦点検出装置、測距装置、ステレオ測距装置などにも適用することができる。