JP2009046770A - アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維 - Google Patents

アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】航空機用途複合材料としての強度発現性、特に衝撃後残留圧縮強度(CAI)の高い炭素繊維を得るための、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を目的とする。
【解決手段】繊維軸に対して平行な方向の輪郭曲線の算術平均粗さRaが3.0〜10.0nmである、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維に関する。
従来、アクリル系繊維を前駆体とする炭素繊維はその優れた力学的性質により、航空宇宙用途を始め、スポーツ、レジャー用途の高性能複合材の補強繊維素材として広い範囲で利用されている。炭素繊維の高性能化の要望は年々高まってきており、特に航空機用炭素繊維としては高強度化、高弾性化の方向へと進んでいる。
航空機の一次構造材に使用される複合材料としては、耐衝撃強度の大きいこと、特に損傷許容性に重点をおいた衝撃後残留圧縮強度(以下、CAIと略記する。) の高いことが必須性能として要求されている。一般的には複合材料のCAIを向上させるために、マトリックス樹脂の強靭化と炭素繊維の高伸度化による改良の試みが多くなされてきている。
複合材料の強度は炭素繊維の表面状態と密接な関係がある。一般に、表面が極めて平滑な炭素繊維では樹脂との接着性が劣り、複合材料にしたときに強度特性が十分に発揮できない。一方、表面の凹凸が大きい炭素繊維では樹脂との接着性は改善されるが、凹凸が大きすぎると表面欠陥となり、複合材料にしたときの強度に劣るという欠点があった。
そこで、特許文献1には、繊維軸の長手方向に延びる多数の皺を有する炭素繊維であって、その皺の表面に微細な凹凸を有する炭素繊維について開示されている。
また、特許文献2には乾−湿式紡糸法によって表面構造が高度に緻密化された前駆体繊維が開示されている。
特開2005−133274号公報 特開昭63−35821号公報
しかしながら、特許文献1における炭素繊維表面の微細な凹凸は、炭素繊維の表面をエッチングすることにより形成されるものであり、該炭素繊維に用いる炭素繊維前駆体の表面形態については制御しておらず、複合材料として満足なCAI値を得るのが困難であった。
また、特許文献2における炭素繊維の前駆体繊維は、炭素繊維の破断の原因となる繊維表面の疵等の欠陥の少ない、緻密性の高い炭素繊維用アクリル系繊維であって、繊維表層部の緻密性が高い炭素繊維製造用アクリル繊維に関するものである。しかし、該前駆体は、表層部の緻密性を高めることによってストランド強度の高い炭素繊維を得るものであり、複合材料としてのCAIの特性を満足させることは困難であった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、CAI値の高い炭素繊維を得るための、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維、及びその製造方法を目的とする。
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、繊維軸に対して平行な方向の輪郭曲線の算術平均粗さRaが3〜10nmであることを特徴とする。
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維によれば、繊維表面に微細な凹凸を有した炭素繊維を形成することができる。その炭素繊維は、マトリックスとの接着性も良好で、航空機の複合材料としても耐えうるCAI値を得ることができる。
〔アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維〕
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、繊維軸に対して平行な方向の輪郭曲線の算術平均粗さRaが3〜10nmであることを特徴とする。
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の表面は、凝固糸の段階では図1に示すようにフィブリル(小繊維)同士が融着せず、表面にボイド(空隙)が観察される状態であり、この凝固糸の段階で観察されるフィブリルの端部が、最終的なアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維表面に微細な凹凸としてあらわれてくる。アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維表面の凹凸の程度は、繊維軸に対して平行な方向の輪郭曲線の算術平均粗さRaにより求められ、Raは3〜10nmであり、3〜8nmであると更に好ましく、3.5〜6nmであると特に好ましい。
輪郭曲線の算術平均粗さRaが上記範囲よりも小さいと、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を炭素繊維とした際、炭素繊維と樹脂との接着性が悪く、複合材料にしたときのCAI(衝撃後残留圧縮強度)に劣り、上記範囲よりも大きいとその凹凸が表面欠陥となり炭素繊維としてのストランド強度が低下する。
尚、本発明の輪郭曲線の算術平均粗さRaは、JIS B0601に定義されている。この算術平均粗さRaは走査型プローブ顕微鏡においてアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の表面の形状測定を行い、走査型プローブ顕微鏡に付属の画像解析ソフトウエアでデータ処理することによって求めることができる。
〔製造方法〕
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、ノズルから押出したアクリロニトリル系重合体の溶液を、空気中に吐出した後、繊維表面にスキン層が完全に形成される前に、凝固浴に導入して製造されると好ましい。
(アクリロニトリル系重合体)
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を構成するアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを90.0質量%以上含有するものである。
該アクリロニトリル系重合体では、アクリロニトリルと共重合可能な他の単量体を1種類もしくは2種類以上使用しても良い。他の単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン等を挙げることができる。なかでも親水性・水溶性のコモノマーがアクリロニトリルと共重合しやすいので好ましい。
尚、アクリロニトリル系重合体の重合方法としては、溶液重合、懸濁重合等公知の方法のいずれをも採用することができる。
重合によって得たアクリロニトリル系重合体からは、未反応モノマーや重合触媒残滓、その他の不純物類は、極力除くことが好ましい。
(紡糸原液)
次に、得られたアクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡糸原液とする。溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液を使用することができる。しかし、繊維中に金属を含有せず、工程が簡略化される点で有機溶剤が好ましく、その中でも再利用しやすい点からジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミドが好ましい。
紡糸する際、繊維内部が緻密である凝固糸を得るためには、紡糸原液はある程度以上のアクリロニトリル系重合体の濃度を有する溶液であることが好ましい。アクリロニトリル系重合体の濃度の下限値としては、17質量%であると好ましく、19質量%以上であると更に好ましい。また、上限値としては、通常25質量%以下であると好ましい。紡糸原液におけるアクリロニトリル系重合体の濃度が17質量%以上であると、繊維内部が緻密である凝固糸を得ることができ、19質量%以上25質量%以下であると、紡糸原液の粘度が適度であり紡糸安定性に優れる。
(紡糸工程)
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の製造方法にあっては、繊維表面にスキン層が完全に形成される前に、凝固浴に導入することで、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を得る。
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の紡糸方法として、湿式紡糸方法を適用した場合には紡糸時に即座に繊維のスキン層が形成されるので、本発明の様に、繊維の表面に凹凸を得ることが困難である。一方、乾式紡糸方法を適用した場合は、フィブリル(小繊維)同士が融着して表面が緻密になるので、繊維の表面に繊維軸に垂直な方向の凹凸を得ることが困難である。
繊維のスキン層が完全に形成される前に凝固浴に導入するには、ノズルと凝固浴の間の空気中での滞在時間、空気の湿度、温度、さらには共重合体の組成、溶剤、紡糸ノズル、ノズルからの吐出量、原液濃度、凝固浴温度、紡糸速度、紡糸ドラフト等を適正な範囲に制御することが必要となる。尚、繊維のスキン層が完全に形成される前にアクリロニトリル系重合体溶液を凝固浴に導入することができたかどうかは、凝固糸を凍結乾燥した後、走査型電子顕微鏡観察によって確認することができる。
ここでスキン層とは図2に示されるように繊維形成においてフィブリル(小繊維)同士が融着して、繊維表面が緻密になった状態である。一方、スキン層が完全に形成される前の状態とは、図1に示されるように、フィブリル同士が融着せず、表面にボイド(空隙)が観察される状態である。これは、空気中で紡糸原液が引き伸ばされ分子配向が向上し、結果としてフィブリルが形成しやすい状態である。
つまり、本発明では、空気中に紡糸原液を吐出し、繊維の表面が図1に示される状態となった繊維を、凝固浴に導き凝固することで、繊維の表面に微細な凹凸を形成させている。
紡糸時に繊維のスキン層が完全に形成される前にアクリロニトリル系重合体の溶液を凝固浴に導入するには、特にノズル面と凝固浴の距離を適正に制御することが必要となる。
例えば、紡糸ノズル孔径0.10〜0.20mm、ノズルからの吐出量7.0〜8.5g/min、紡糸引き取り速度20.0〜30.0m/minの条件では、ノズル面と凝固浴の距離は1.0〜10.0mmが好ましい。ノズル面と凝固浴の距離が1.0mm以下であると凝固液面が波立ったときに、ノズル面と凝固液面がくっついた状態になるので紡糸の安定性が悪くなり、10.0mm以上であると繊維の表面にスキン層が形成し易くなるため繊維の表面の凹凸を得ることが困難となってくる。
凝固浴としては、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好適に使用され、含まれる溶剤の濃度を調節して繊維の凝固の速度を調整する。凝固浴の濃度は、使用する溶剤によって異なるが、例えばジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミドを使用する場合、その溶剤の濃度は70〜90質量%であると好ましく、75〜85質量%であると更に好ましい。
溶剤の濃度が70質量%以上であるとスキン層の形成が遅くなり、90質量%以下であるとフィブリル(小繊維)同士が融着せず、表面にボイド(空隙)が観察される状態をとることができる。
凝固浴の温度が高すぎると、スキン層の形成が遅くなりすぎてフィブリル同士が融着しやすいので、凝固浴は通常温度が低い方が好ましい。しかし、温度を下げすぎると凝固しにくく、凝固糸の引き取り速度を低下させる必要があり、生産性が低下する。この点を考慮し、凝固浴の温度は通常30℃以下であることが好ましく、5℃以上、20℃以下であると更に好ましい。以上のように凝固浴で得られた繊維を凝固糸とする。
凝固糸は、さらに延伸(浴中、あるいは空気中)および洗浄を行う。凝固糸の延伸は浴中で行う場合は、沸水中で凝固糸に含まれている溶媒を洗浄しながら湿熱延伸する。空気中で行う場合は、熱板延伸や乾熱延伸により行うことが好ましい。
尚、本発明の製造方法により製造されるアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の表面の微細な凸凹は、アクリロニトリル系重合体の溶液を凝固浴に導いた段階ですでに形成されており、その後の延伸、洗浄によって大きく形態が変化するものではない。以上の延伸・洗浄後の凝固糸を工程糸とする。
延伸、洗浄後の工程糸は公知の方法、例えば油浴中に工程糸をくぐらすことによって油剤処理を行う。油剤の種類は特に限定されるものではないが、アミノシリコン系界面活性剤が好適に使用される。
凝固糸を油剤処理後、乾燥緻密化を行い、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維とする。乾燥緻密化の温度は、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維のガラス転移温度を越えた温度を選択する。実質的には、凝固糸を含水状態から乾燥状態へと変化させ、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維とする際に、ガラス転移温度が異なることもあるため、温度が100〜200℃程度の加熱ローラーに凝固糸を接触させる方法で乾燥緻密化を行うことが好ましい。更に、乾燥緻密化後、後延伸を行うこともできる。
以上の操作で得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、単繊維繊度が0.5〜1.5dtexであると好ましく、0.8〜1.2dtexであると更に好ましい。
〔炭素繊維およびその製造方法〕
上記製造方法で得たアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を、公知の方法で焼成することにより炭素繊維を得ることができる。焼成方法としては例えば、耐炎化処理、炭素化処理をこの順に行う方法を用いることができる。
(耐炎化処理)
耐炎化処理では、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を、220〜270℃の熱風耐炎化炉を通過させることで耐炎化繊維が得られる。耐炎化工程における雰囲気については、空気、酸素、二酸化窒素、塩化水素などの各酸化性雰囲気を採用できるが、空気雰囲気が低コストであり、好ましい。
(炭素化処理)
耐炎化を完了したアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、不活性雰囲気中で炭素化し、炭素繊維を得る。このとき、雰囲気温度は、得られる炭素繊維の性能を高める観点から、1000℃以上が好ましく、1200℃以上がさらに好ましい。さらに必要に応じて2000℃以上で炭化して、黒鉛化繊維とすることもできる。不活性雰囲気としては、窒素などが挙げられる。
また、ボイド(空隙)等、炭素繊維内部に欠陥の少ない、緻密性の高い炭素繊維を得るために、炭素化処理温度が、350〜500℃及び1000〜1200℃であるときの昇温速度は、500℃/分以下が好ましく、300℃/分以下がより好ましく、150℃/分以下であると更に好ましい。さらに、炭素繊維の緻密性を向上させるためには、炭素化処理温度が350〜500℃の際に、1%以上、好ましくは5%以上延伸すると好ましい。なお、10%を超える延伸は毛羽が発生し易くなるという点で不利である。
(その他の処理)
以上の方法で得られた炭素繊維は、電解液中で電解酸化処理を施したり、気相、または液相での酸化処理を施したりすることにより、炭素繊維の表面に酸素を含む官能基を導入し、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性、接着性を高めることができる。
〔複合材料〕
炭素繊維は、常法によりマトリックスと組み合わせて、中間基材であるプリプレグや、最終生産品である複合材料とすることができる。
マトリックスとして使用する樹脂としては、特に制限はないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。また、マトリックスには、前記樹脂以外に、セメント、金属、セラミックスなどを使用することもできる。
炭素繊維の表面形態は、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面の接着性に大きく影響するものであり、炭素繊維の表面形態を制御することにより、複合材料の目的、用途に応じた性能が得られるようになる。特に、複合材料のCAI試験に際しては、わずかな炭素繊維の表面形状の変化が最終的なCAI値を決定する。
本発明のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維からなる炭素繊維のように、表面の凹凸形状が制御された炭素繊維を用いると、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性やその界面にかかる力、エネルギー吸収の状態などが最適となり、CAI値の高い複合材料が提供できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本実施例及び比較例における各物性の測定及び評価は以下の方法で行った。各測定の評価は、複数の試料に対して行った測定値の平均値を評価したものである。
〔輪郭曲線の算術平均粗さRa〕
アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の単糸の両端を、走査型プローブ顕微鏡装置付属の金属製サンプルホルダー板上にカーボンペーストで固定し、走査型プローブ顕微鏡にて、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の測定を以下の条件で行う。
(走査型プローブ顕微鏡測定条件)
装置 :エスアイアイナノテクノロジーズ社 SPI4000プローブステーション、SPA400(ユニット)
走査モード :ダイナミックフォースモード(DFM)(形状像測定)
探針 :エスアイアイナノテクノロジーズ社製 SI−DF−20
走査範囲 :5μm×5μm
Rotation :90℃(繊維軸方向に対して垂直方向にスキャン)
走査速度 :1.0Hz
ピクセル数 :512×512
測定環境 :室温、大気中
単糸1本に対して、上記条件にて1画像を得、得られた画像を走査型プローブ顕微鏡付属の画像解析ソフト(SPIWin)で以下条件にて画像解析を行う。
(画像解析条件)
得られた形状像に、「フラット処理」、「メディアン8処理」、「三次傾き補正」を行い、曲面を平面にフィッティング補正した画像を得る。平面補正した画像の表面粗さ解析より、繊維軸に平行な方向の断面プロファイルを計測し、輪郭曲線の算術平均粗さRaを求める。
測定は束になって形成されているアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の1つのサンプルについて単糸10本のサンプルを用意し、走査型プローブ顕微鏡で形状測定した。まず、各単糸の測定画像について、繊維軸に平行な方向の断面プロファイルを10点計測して輪郭曲線の算術平均粗さRaを求め、単糸10本のサンプルの平均値を1つのアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維サンプルの算術平均粗さRaとした。
〔ストランド強度〕
ストランド強度はJIS R−7601の方法で測定した。
ストランドの作製は、まず、油化シェル社製「エピコート828」(100部)、無水メチルナジック酸(90部)、ジベンジルジメチルアミン(2部)、アセトン(50部)を混合した組成の樹脂を炭素繊維に含浸させた。次に、50℃で1時間、130℃に1時間かけて炭素繊維を昇温し、130℃、2時間の条件で硬化させ、樹脂含浸ストランドを得た。得られた樹脂含浸ストランドを用い、樹脂含浸ストランド試験法(JIS R−7601に準拠)により樹脂含浸ストランドの引っ張り強度を求めた。
〔衝撃後残留圧縮強度(CAI)〕
衝撃後残留圧縮強度(CAI)はSACMA法に準拠して次のように行った。三菱レイヨン株式会社製エポキシ樹脂#1053Xと炭素繊維から、炭素繊維目付け198g/m 、樹脂含有率35質量%の一方向プリプレグを作成し〔+45°/0°/−45°/90°〕3sの擬似等方に積層させ、180℃、2時間の条件で硬化させて寸法150mm×100mm×(厚み)4.5mmの試験片を作成した。
前記試験片を、3インチ(7.62cm)×5インチ(12.7cm)の矩形穴のあいたスチール製台に固定し、その中心に16mmRのノーズをつけた5.6kgの分銅を落下させ、30Jの衝撃エネルギーを与える。その後に、該試験片を圧縮することによりCAI値を求めた。
〔実施例1〕
アクリロニトリル96質量%、メタクリル酸1質量%、アクリル酸メチル3質量%、からなる極限粘度〔η〕1.8の重合体を、ジメチルアセトアミドに溶解し、重合体の濃度が23質量%の紡糸原液を調製した。
この紡糸原液を20μおよび5μのフィルターで濾過し、70℃に保持させて、直径0.15mm、孔数2000の口金を用いて乾湿式紡糸法を用いて紡出し凝固糸を得た。なお、凝固浴の組成はジメチルアセトアミド/水=78/22(質量%)、温度15℃、ノズル面と凝固浴の距離は4mmとし、繊維表面にスキン層が完全に形成される前に、紡糸原液を凝固浴に導入した。
得られた凝固糸を空中で延伸し、次いで熱水中で延伸洗浄を行い、シリコン系油剤処理を施し工程糸とした。次に工程糸を乾燥させ、さらに加熱ローラーにて乾熱延伸を行い、全延伸倍率を9倍として、単繊維繊度0.9dtex、2000フィラメントのアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を得た。
次に、得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維に、230℃〜260℃に設定した熱風循環式耐炎化炉を用い、5%の伸長を付与しながら耐炎化処理を施した。耐炎化終了時の繊維密度は1.35g/cmとした。次に耐炎化処理を施した繊維を、窒素雰囲気下、最高温度が1400℃の高温熱処理炉にて炭素化させた。その後、電解酸化処理を5質量%炭酸水素アンモニウム21クーロン/gの条件にて行い、炭素繊維を得た。
以上の操作で得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の特性を表1に示す。
〔実施例2〕
電解酸化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の工程を経て炭素繊維を得た。得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の特性を表1に示す。
〔実施例3〕
アクリロニトリル98質量%、メタクリル酸2質量%からなる、極限粘度〔η〕1.8の重合体を、ジメチルホルムアミドに溶解し、重合体の濃度が23質量%の紡糸原液を調製した。
この紡糸原液を20μおよび5μのフィルターで濾過し、65℃に保持させて、直径0.15mm、孔数2000の口金を用いて乾湿式紡糸法を用いて紡出し凝固糸を得た。なお凝固浴の組成はジメチルホルムアミド/水=79/21(質量%)、温度15℃、ノズル面と凝固浴の距離は2.5mmとし、繊維表面にスキン層が完全に形成される前に、紡糸原液を凝固浴に導入した。
得られた凝固糸を空中で延伸し、次いで熱水中で延伸洗浄を行い、シリコン系油剤処理を施し工程糸とした。次に工程糸を乾燥させ、さらに加熱ローラーにて乾熱延伸を行い、全延伸倍率を9倍として、単繊維繊度0.8dtex、2000フィラメントのアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を得た。
得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維に、実施例1と同様の耐炎化処理、炭素化、電解酸化処理を施して、炭素繊維を得た。以上の操作で得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の特性を表1に示した。
〔比較例1〕
実施例1においてノズル面と凝固浴の距離を12mmとし、繊維表面にスキン層が完全に形成されてから、繊維を凝固浴に導入した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維を得た。さらに得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維に、実施例1と同様の処理を施して炭素繊維を得た。得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の特性を表1に示した。
Figure 2009046770
表1に示すように、実施例1〜3で得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、輪郭曲線の算術平均粗さRaが良好であるので、その炭素繊維によって得られた複合材料のCAI値も良好である。一方、比較例1で得られたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維は、輪郭曲線の算術平均粗さRaが低く、その炭素繊維によって得られた複合材料のCAI値も劣っていた。
スキン層が完全に形成される前のアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の凝固糸の走査型電子顕微鏡像である。 スキン層が形成されたアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維の凝固糸の走査型電子顕微鏡像である。

Claims (1)

  1. 繊維軸に平行な方向の輪郭曲線の算術平均粗さRaが、3〜10nmである、アクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維。
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