JP2009040229A - 側突用エアバッグ装置 - Google Patents

Abstract

【課題】展開安定性を向上することができる側突用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】車両のボディの側壁部と前記ボディの内部に配置されたシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグ１０と、側突用エアバッグ１０を膨張展開させるためのガスを噴出部８より噴出するインフレータ２と、噴出部８を覆うように設けられ、インフレータ２の非作動時に蛇腹状に折り畳まれる筒状基布部材１２と、蛇腹状に折り畳まれた筒状基布部材１２を噴出部８近傍に保持する形状保持布１４とを有する。
【選択図】図３

Description

本発明は、自動車等の車両の側面衝突時等に乗員を拘束するための側突用エアバッグ装置に関する。

自動車等の車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータによって側突用エアバッグを乗員の側部に膨張させ、乗員の身体を拘束する側突用エアバッグ装置が知られている。この側突用エアバッグ装置は、例えばシートの背もたれ部に内蔵されており、側面衝突時等には、側突用エアバッグがインフレータから噴射されるガスによって背もたれ部から乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。

このような側突用エアバッグにおいて、膨張展開時のチャンバの圧力を調整し、膨張展開時の展開挙動を適宜制御する場合がある。このような場合、インフレータからのガス流を調整する必要がある。

従来、このようなガス流調整手段を有する側突用エアバッグ装置として、例えば特許文献１に記載のものが知られている。この従来技術では、インフレータの噴出口側に筒状の基布部材（インナーチューブ）を設け、インフレータから噴出されるガスを腰部を受け止める下側チャンバに導入して、下側チャンバを上側チャンバより早く膨張することが可能となっている。
特開２００５−２２５２７３号公報

上記従来技術においては、インフレータの噴出口側に筒状の基布部材を設けた側突用エアバッグ装置の基本構成が開示されている。この側突用エアバッグ装置の最適化を図る上では、展開安定性の向上を図ることが要求される。

本発明の目的は、展開安定性を向上することができる側突用エアバッグ装置を提供することにある。

上記目的を達成するために、第１の発明は、車両のボディの側壁部と前記ボディの内部に配置されたシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、前記側突用エアバッグを膨張展開させるためのガスを噴出部より噴出するインフレータと、前記噴出部を覆うように設けられ、前記インフレータの非作動時に蛇腹状又はロール状に折り畳まれる筒状基布部材と、前記蛇腹状又はロール状に折り畳まれた筒状基布部材を前記噴出部近傍に保持する保持部材とを有することを特徴とする。

第１の発明においては、インフレータの非作動時、筒状基布部材は保持部材により蛇腹状又はロール状に折り畳まれた状態で噴出部近傍に保持される。そして、インフレータが作動すると、噴出部から噴出されるガス圧により折り畳まれた筒状基布部材が展開し、この展開した筒状基布部材を介してエアバッグの内部にガスが流入する。これにより、側突用エアバッグが車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する。

このように、インフレータの非作動時に、筒状基布部材を蛇腹状又はロール状に折り畳んで保持することにより、筒状基布部材に不規則な折れやしわ等が生じることを防止し、インフレータ作動時における筒状基布部材の展開動作を安定させることができる。その結果、インフレータからの噴出ガスをエアバッグ内部に安定して導入することができ、エアバッグの展開速度の安定化を図ることができる。したがって、側突用エアバッグの展開安定性を向上することができる。

第２の発明は、前記第１の発明において、前記インフレータの噴出側である長手方向一方側を覆うように配置され、前記インフレータから噴出されるガスの流量を絞るための絞り部を有する前記噴出部としての筒状のスリーブをさらに備え、前記筒状基布部材は、前記スリーブを覆うように設けられていることを特徴とする。

第２の発明においては、インフレータのガス噴出側である長手方向一方側を覆うように配置されたスリーブが有する絞り部によって、インフレータから噴出されるガスの流路を絞る。これにより、例えば側突用エアバッグが区画された複数のチャンバを有する場合に、インフレータから複数のチャンバのうちの特定のチャンバに供給されるガスの流量を調整することが可能となる。その結果、膨張展開時の各チャンバの圧力比を調整したり、膨張展開時の各チャンバの展開挙動を異ならせることができる。

第３の発明は、上記第１又は第２の発明において、前記保持部材は、前記インフレータの作動時に前記筒状基布部材の展開を許容するための開裂部を有することを特徴とする。

第３の発明においては、インフレータが作動すると、噴出部から噴出されるガス圧により折り畳まれた筒状基布部材が展開しようとし、その力により折り畳まれた筒状基布部材を保持する保持部材の開裂部が開裂し、その結果、筒状基布部材が展開する。このように、保持部材が開裂部を有する構成とすることにより、インフレータの非作動時には筒状基布部材を折り畳んだ状態に保持しつつ、インフレータの作動時には速やかに筒状基布部材を展開させることができる。

第４の発明は、区画された複数のチャンバを内部に有し、車両のボディの側壁部と前記ボディの内部に配置されたシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、前記側突用エアバッグを膨張展開させるためのガスを長手方向一方側から噴出するインフレータと、前記複数のチャンバを連通する連通路において、前記インフレータの長手方向一方側を覆うように配置され、前記インフレータから噴出されるガスの流路を絞る絞り部を有するスリーブと、前記スリーブを覆うように設けられ、前記インフレータの作動時における前記スリーブからの突出長さが少なくとも前記スリーブの径以上となるように構成された筒状基布部材とを有することを特徴とする。

第４の発明においては、インフレータが作動すると、インフレータの長手方向一方側を覆うように配置されたスリーブが有する絞り部によって流量を絞られたガスが筒状基布部材を介して一方側のチャンバに流入し、絞られた分の流量のガスが連通路を介して他方側のチャンバに流入する。このようにして、インフレータから噴出されるガスが複数のチャンバに供給されることによって、側突用エアバッグが乗員と車両のボディの側壁部との間に膨張展開する。

このとき、一方側のチャンバにおいては、スリーブから噴出されるガス圧により筒状基布部材が展開し、この展開した筒状基布部材を介してエアバッグの内部にガスが流入する。したがって、筒状基布部材の長さが小さい方がその展開動作が速やかとなり、エアバッグの展開安定性を向上できる。

一方で、例えば乗員の胸部と腰部をそれぞれ拘束するチャンバを有する側突用エアバッグにおいて、安全性向上の観点から腰部を規制するチャンバの圧力を胸部側のチャンバよりも高圧に設定する場合のように、一方側のチャンバを他方側のチャンバより高圧に設定する場合には、エアバッグの膨張展開時に連通路に配置したスリーブを介してガスが逆流するのを防止することが必要となる。本願第４発明においては、一方側のチャンバからスリーブを介して他方側のチャンバにガスが逆流しようとすると、筒状基布部材が折り曲げられてスリーブを閉塞することにより、逆流を防止する。

このとき、第４発明においては、インフレータの作動時におけるスリーブからの突出長さが少なくともスリーブの径以上となるように筒状基布部材を構成する。これにより、エアバッグの膨張展開時に一方側のチャンバからスリーブを介して他方側のチャンバにガスが逆流しようとすると、スリーブの径以上の長さを有する筒状基布部材が折り曲げられてスリーブを確実に閉塞することができる。これにより、一方側のチャンバを他方側のチャンバより高圧にすることができる。

以上のように、第４発明によれば、スリーブからの突出長さが少なくともスリーブの径以上となるように筒状基布部材を構成することにより、逆流防止を確実に図りつつ、エアバッグ展開安定性の向上を両立して図ることが可能となる。

第５の発明は、上記第１乃至第４のいずれか１つの発明において、前記筒状基布部材は、前記インフレータの長手方向他方側に向かって延長され、前記インフレータを前記車両のボディ側に固定するための固定部材により係止される延長部を有していることを特徴とする。

第５の発明においては、筒状基布部材の延長部がインフレータを車両のボディ側に固定するための固定部材により係止されることで、筒状基布部材がインフレータに係止される。これにより、筒状基布部材を車両側に固定するための固定部材を別途設ける必要がなく、固定構造を簡易にすることができる。また、筒状基布部材用の固定部材が不要なため、筒状基布部材を有しない既存の側突用エアバッグ装置に対し、筒状基布部材を後付けして簡易な構成で逆止弁機能を有する構成とすることができる。

第６の発明は、上記第５の発明において、前記延長部は、前記固定部材による係止位置において、前記スリーブとこれに重ね合わされるプレートとにより挟持されることを特徴とする。

第６の発明においては、筒状基布部材の延長部をインフレータの固定部材により係止した上で、さらにその係止位置において延長部をスリーブとこれに重ね合わされるプレートとの間に挟みこむ。これにより、筒状基布部材を確実にインフレータに対し固定することができる。

第７の発明は、上記第１乃至第６発明のいずれか１つの発明において、前記筒状基布部材は、平面状である基布の対向する側縁同士を縫製することにより略円筒状に形成されており、その縫製ライン方向と前記基布の布目方向とが所定の角度を介し斜交するように構成されていることを特徴とする。

第７の発明においては、筒状基布部材の縫製部分における基布の強度を増大させることができ、インフレータのガス噴出時における縫製部の基布の破れを防止できる。その結果、インフレータ作動時における筒状基布部材の破損を防止することができる。また、筒状基布部材の端縁におけるほつれを抑制する効果もある。

本発明によれば、側突用エアバッグの展開安定性を向上することができる。

以下、本発明の一実施形態を図１乃至図５を参照しつつ説明する。図１は、本実施形態の側突用エアバッグを膨張展開させるためのガスを噴出するインフレータの全体斜視図、図２は側突用エアバッグの展開平面図、図３はインフレータの非作動時において、蛇腹状に折り畳まれた筒状基布部材をインフレータ噴出部近傍に形状保持布で保持した状態を示す、図２中Ａ−Ａによるインフレータ噴出部の部分断面図、図４はインフレータから噴出されるガスの流量を絞るスリーブを備えたインフレータの全体斜視図、図５は略中間部に開裂部を有する形状保持布を設けた筒状基布部材の斜視図である。なお、煩雑防止のために、図１では形状保持布を、図２では筒状基布部材を図示省略している。

図２に示す側突用エアバッグ装置１において、矢印ＦＲは車両前方側を示しており、矢印ＵＰは車両上方向を示している。図１乃至図３に示すように、上記側突用エアバッグ装置１は、車室内に配置された図示しない左右フロントシートの背もたれ部の車両ボディの側壁部（左右ドア内側部）側に装着されたケーシング内に収容された袋状の側突用エアバッグ１０と、この側突用エアバッグ１０を膨張展開させるためのガスを噴出部８（本実施形態ではインフレータの凸部６とスリーブ４との間の空間。図２及び図３参照）より噴出するインフレータ２と、上記噴出部８を覆うように設けられ、上記インフレータ２の非作動時に蛇腹状に折り畳まれる筒状基布部材１２と、蛇腹状に折り畳まれた上記筒状基布部材１２を上記噴出部８近傍に保持する形状保持布１４（保持部材）とから構成されている。

一方、上記側突用エアバッグ１０は、ほぼ同一形状に形成された基布がその外縁部に沿って全周に亘り縫製結合されることにより、袋体として構成されている。図２中２７はその縫製結合部を示しており、袋体の外縁部に沿う部分においては全て２重に縫製されている（なお、必ずしも二重にする必要はなく、一重でもよい）。

側突用エアバッグ１０の内部は、乗員の腰部側に膨張展開する下部の腰部用チャンバＷと、乗員の胸部（肩部）側に膨張展開する上部の胸部用チャンバＢと、この胸部用チャンバＢの下部に後述するテザークロス２６で仕切られた中間チャンバＭが両チャンバＷ，Ｂの中間に縫製により区画されており、上記中間チャンバＭと腰部用チャンバＷとを連通する連通路Ｒ１内には、噴出部８が腰部用チャンバＷ側に向くようにインフレータ２が装着されている（図２参照）。

また、上記側突用エアバッグ１０の腰部用チャンバＷと中間チャンバＭとの間には、エアバッグを車両幅方向（図２中図面に垂直な方向）に貫通する開口２４が形成されており、上記胸部用チャンバＢと中間チャンバＭとの間には非膨張部２２が形成されている。このような構成により、インフレータ２が作動すると、噴出部８からスリーブ４のガス流出孔Ｙを介して所定の流量に調整されたガスが腰部用チャンバＷ内に流入すると共に（図２中点線矢印Ｐ参照）、噴出部８からスリーブ４の流路Ｚ（図４参照）を介して所定の流量に調整されたガスが中間チャンバＭ内においてテザークロス２６によって前方側に案内され、中間チャンバＭと胸部用チャンバＢとを連通する連通路Ｒ２を経て胸部用チャンバＢ内に流入する（図２中点線矢印Ｑ参照）。

なお、上記縫製結合部２７のうち、腰部用チャンバＷの外縁を構成する部分には、縫製結合部２７をシールするためにこの縫製結合部２７に沿ってシリコンゴム等の適宜のシール材からなるシール材部２９が設けられている。このシール材部２９は、２重に設けた縫製結合部２７の両方をシールできるように、２重の縫製結合部２７よりも幅広に設けられている（図２参照）。これにより、腰部用チャンバＷの気密性を向上でき、乗員の腰部の移動を規制する腰部用チャンバＷ内の圧力を長時間高圧に保持することが可能である。

更に、上記側突用エアバッグ装置１において、図３に示す筒状基布部材１２は、上記形状保持布１４により蛇腹状に折り畳まれた状態で噴出部８の近傍に保持される。そして、インフレータ２が作動すると、噴出部８からスリーブ４のガス流出孔Ｙを介して噴出されるガス圧により折り畳まれた筒状基布部材１２が展開し、この展開した筒状基布部材１２を介して側突用エアバッグ１０の内部にガスが流入する。これにより、側突用エアバッグ１０が車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する。

尚、特に図示はしないが、上記筒状基布部材１２は、蛇腹状に折り畳む以外にもロール状に折り畳んだ状態で上記形状保持布１４により噴出部８の近傍に保持することができる。

上記インフレータ２は、その噴出部８側端部に、図示しない複数の噴出孔が形成された凸部６を有している。そして、インフレータ２の凸部６を覆うように、噴出されるガスの流量を絞るためのガス流出孔Ｙ（絞り部）を有する筒状のスリーブ４が配置されており、上記筒状基布部材１２は、上記スリーブ４を覆うように設けられている。

詳細には、図３に示すように上記筒状のスリーブ４は、長手方向の一方側（図３中左側）からガスを噴出する凸部６に対向するように先端にガス流出孔Ｙが形成されており、このガス流出孔Ｙにより噴出ガスの流量が絞られ腰部用チャンバＷ内に流入するガス量が調整される。一方、インフレータ２本体の長手方向一方側の外周とこの外周より大径となる上記スリーブ４の他方側（図３中右側）の開口端縁とで形成される環状隙間Ｚから、上記ガス流出孔Ｙで絞られた分の噴出ガスが流出し、中間チャンバＭ内に流入する。このとき、スリーブ４の外周面と連通路Ｒ１部分のシール材部２９とはほぼ密着されており、これらの隙間から噴出ガスが漏れないように構成されている。このようにして、スリーブ４により、インフレータ２から腰部用チャンバＷ側及び中間チャンバＭ（胸部用チャンバＢ）側に流入するガスの流量が適宜の比率で分配される。

また、上記形状保持布１４は、図３及び図５に示すように帯状の基布で形成されており、その一端１４ｂが上記筒状基布部材１２の一端１２ｂに縫着されるとともに、他端１４ａに形成された係止孔１６が、上記インフレータ２の前後に配置された一対の支持部材Ｈのボルト１５ａ，１５ｂの内、噴出口側のボルト１５ａに挿通係止されるようになっている。また、上記形状保持布１４の略中間部には、これを横切る方向にティアラインＴＬ（開裂部）が形成されており、インフレータ作動時には形状保持布１４がこのティアラインＴＬから破断することによって、筒状基布部材１２が展開可能となっている。

また、筒状基布部材１２は、図１及び図５に示すように、平面状である基布の対向する側縁同士を縫製部Ｓで縫製することにより略円筒状に形成されており、その他方側（図１及び図５中右側）端部にインフレータ１２の長手方向他方側（図１及び図５中右側）に向かって延長された係止片１２ａ（延長部）を有している。この係止片１２ａには係止孔１８が設けられており、この係止孔１８が上記ボルト１５ａに挿通係止される。さらに、蛇腹状に折り畳まれた筒状基布部材１２を外側から巻回保持する形状保持布１４の他端１４ａが上記係止片１２ａ上に重ね合わされ、上述したようにその他端１４ａに形成された係止孔１６が上記ボルト１５ａに挿通係止される。この状態で、これらの上部に係止孔２０ａをボルト１５ａに挿通係止してストッパープレート２０を重ね合わせることで、筒状基布部材１２の係止片１２ａと形状保持布１４の他端１４ａは、上記スリーブ４（詳細にはその支持部４ａ。図４参照）とストッパープレート２０により挟持される（図１、図３参照）。

また、上記筒状基布部材１２は、図５に示すように、上記縫製部Ｓの縫製ライン３２の方向と上記基布の布目ＣＲの方向とが所定の角度θ１，θ２を介し斜交するように構成されている。

上記ストッパープレート２０（プレート）は、インフレータ２の噴出側とは反対側（図１中右側）においてインフレータ２の端部の一部を覆うように折り曲げ形成された規制部３４と、上記ボルト１５ａ，１５ｂに対応する位置に形成された２つのボルト挿通孔２０ａ，２０ｂと、これら２つの挿通孔２０ａ，２０ｂの中間部位に切り起こして形成された突出部Ｄとを有している。

上記ストッパープレート２０の規制部３４は、インフレータ２がガス噴出時に反動でガス噴出方向と反対側に移動するのを防止するためのものである。また、突出部Ｄは、図示しないケーシングに側突用エアバッグ１０を折り畳んで収納する際に、上記ケーシングに形成された突出部確認用の孔を介して上記突出部Ｄを外部より確認することを可能とするものであり、上記ストッパープレート２０の取付け忘れを防止するためのものである。

次に、以上のような構成である本実施形態の作用効果について説明する。すなわち、上述したように、本実施形態においては、インフレータ２の非作動時、筒状基布部材１２は形状保持布１４により蛇腹状（又はロール状）に折り畳まれた状態で噴出部近傍に保持される。そして、インフレータ２が作動すると、噴出部８から噴出されるガス圧により折り畳まれた筒状基布部材１２が展開し、この展開した筒状基布部材１２を介して側突用エアバッグ１０の内部にガスが流入する。これにより、側突用エアバッグ１０が車両のボディの側壁部とシートに着座した乗員との間に膨張展開する。

このように、インフレータ２の非作動時に、筒状基布部材１２を蛇腹状（又はロール状）に折り畳んで保持することにより、上記筒状基布部材１２に不規則な折れやしわ等が生じることを防止し、インフレータ２作動時における筒状基布部材１２の展開動作を安定させることができる。その結果、上記インフレータ２からの噴出ガスを側突用エアバッグ１０内に安定して導入することができ、側突用エアバッグ１０の展開速度の安定化を図ることができる。したがって、側突用エアバッグ１０の展開安定性を向上することができる。

また、本実施形態では特に、インフレータ２のガス噴出側を覆うように配置されたスリーブ４が有するガス流出孔Ｙによって、インフレータ２から噴出されるガスの流路を絞る。これにより、インフレータ２から複数のチャンバのうちの特定のチャンバに供給されるガスの流量を調整することができる。その結果、膨張展開時の各チャンバの圧力比を調整したり、膨張展開時の各チャンバの展開挙動を異ならせることができる。したがって、本実施形態のように側突用エアバッグ１０が腰部用チャンバＷ、中間チャンバＭ及び胸部用チャンバＢを有する場合では、膨張展開時における腰部用チャンバＷの内圧を中間チャンバＭ及び胸部用チャンバＢの内圧よりも高くすることが可能である。

また、本実施形態では特に、インフレータ２が作動すると、噴出部８から噴出されるガス圧により折り畳まれた筒状基布部材１２が展開しようとし、その展開力により折り畳まれた上記筒状基布部材１２を保持する形状保持布１４のティアラインＴＬが開裂し、その結果、筒状基布部材１２が展開する。このように、形状保持布１４がティアラインＴＬを有する構成とすることにより、インフレータ２の非作動時には筒状基布部材１２を折り畳んだ状態に保持しつつ、インフレータ２の作動時には速やかに筒状基布部材１２を展開させることができる。

また、本実施形態では特に、筒状基布部材１２の係止片１２ａがインフレータ２を車両のボディ側に固定するためのボルト１５ａにより係止されることで、筒状基布部材１２がインフレータ２に対し係止される。このように、筒状基布部材１２が係止片１２ａを有する構成とすることで、筒状基布部材１２を車両側に固定するための固定部材を別途設ける必要がなく、固定構造を簡易にすることができる。また、筒状基布部材１２用の固定部材が不要なため、筒状基布部材１２を有しない既存の側突用エアバッグ装置に対し、筒状基布部材１２を後付けして簡易な構成で逆止弁機能を有する構成とすることができる。

また、本実施形態では特に、筒状基布部材１２の係止片１２ａをボルト１５ａに挿通係止した上で、さらにその係止位置において係止片１２ａをスリーブ４とこれに重ね合わされるストッパープレート２０との間に挟みこむ。これにより、筒状基布部材１２を確実にインフレータ２に対し固定することができる。

また、本実施形態では特に、筒状基布部材１２の縫製ライン３２の方向と筒状基布部材１２を構成する基布の布目ＣＲの方向とが所定の角度を介し斜交するように構成されている。これにより、筒状基布部材１２の縫製部分における基布の強度を増大させることができ、インフレータ２のガス噴出時における縫製部の基布の破れを防止できる。その結果、インフレータ作動時における筒状基布部材１２の破損を防止することができる。また、筒状基布部材１２の端縁におけるほつれを抑制する効果もある。

尚、筒状基布部材１２は、上述した一実施形態のように蛇腹状（又はロール状）に折り畳まずに、ストレートに伸ばした状態で取付けて使用することも可能である。以下、この場合の実施形態について図６及び図７を用いて説明する。

図６は、本発明の他の実施形態における筒状基布部材の斜視図、図７はインフレータの作動時において、筒状基布部材をインフレータ噴出部近傍に保持した状態を示すインフレータ噴出部の部分断面図である。なお、上記実施形態と同一構成部分は同一符号を付してその説明を省略する。

図６、図７に示すように、本実施形態の筒状基布部材２８は、前述の筒状基布部材１２と同様に、平面状である基布の対向する側縁同士を縫製部Ｓで縫製することにより略円筒状に形成されており、その他方側（図６及び図７中右側）端部にインフレータ１２の長手方向他方側（図６及び図７中右側）に向かって延長された係止片２８ａ（延長部）を有している。この係止片２８ａには係止孔３０が設けられており、この係止孔３０が上記ボルト１５ａに挿通係止される。なお、本実施形態では筒状基布部材２８を折り畳まないため、形状保持布１４は設けられていない。

また、筒状基布部材２８は、インフレータ２の作動時における上記スリーブ４端部からの突出長さＬが少なくともスリーブ４の径Ｄ以上となるように構成されている（図７参照）。

次に、以上のような構成である本実施形態の作用効果について説明する。すなわち、インフレータ２が作動すると、このインフレータ２の噴出側を覆うように配置されたスリーブ４が有するガス流出孔Ｙによって流量を絞られたガスが筒状基布部材２８を介して腰部用チャンバＷに流入し、絞られた分の流量のガスが中間チャンバＭを介して胸部用チャンバＢに流入する。このようにして、インフレータ２から噴出されるガスが複数のチャンバＷ，Ｍ，Ｂに供給されることによって、側突用エアバッグ１０が乗員と車両のボディの側壁部（左右ドア内側部）との間に膨張展開する。

このとき、一方側の腰部用チャンバＷ側においては、スリーブ４から噴出されるガス圧により筒状基布部材２８が膨張展開し、この展開した筒状基布部材２８を介して腰部用チャンバＷの内部にガスが流入する。したがって、筒状基布部材２８の長さＬが小さい方がその展開動作が速やかとなり、側突用エアバッグ１０の展開安定性を向上できる。

一方で、本実施形態のように乗員の胸部と腰部をそれぞれ拘束するチャンバを有する側突用エアバッグ１０において、安全性向上の観点から腰部用チャンバＷの圧力を胸部用チャンバＢよりも高圧に設定する場合には、側突用エアバッグ１０の膨張展開時に連通路Ｒ１に配置したスリーブ４を介して腰部用チャンバＷ側から胸部用チャンバＢ側にガスが逆流するのを防止することが必要となる。

本実施形態においては、腰部用チャンバＷ側からスリーブ４を介して他方側の胸部用チャンバＢにガスが逆流しようとすると、上記筒状基布部材２８が折り曲げられて上記スリーブ４のガス流出孔Ｙを閉塞することにより、逆流を防止する。

このとき、上述したように、インフレータ２の作動時におけるスリーブ４からの突出長さＬが少なくともスリーブ４の径Ｄ以上となるように筒状基布部材２８を構成する。これにより、側突用エアバッグ１０の膨張展開時に一方側の腰部用チャンバＷ側からスリーブ４を介して他方側の胸部用チャンバＢ側にガスが逆流しようとすると、スリーブ４の径Ｄ以上の長さＬを有する筒状基布部材２８が折り曲げられて上記スリーブ４のガス流出孔Ｙを確実に閉塞することができる。これにより、一方側の腰部用チャンバＷを他方側の胸部用チャンバＢより高圧に保持することができる。

以上のように、本実施形態によれば、スリーブ４からの突出長さＬが少なくともスリーブ４の径Ｄ以上となるように筒状基布部材２８を構成することにより、逆流防止を確実に図りつつ、側突用エアバッグ１０の展開安定性の向上を両立して図ることが可能となる。

なお、以上においては、インフレータ２の噴出側にスリーブ４を設けて噴出ガスの流量を分配する場合を例にとって説明したが、本発明の主要な作用効果である展開安定性の向上効果を得るにあたってはスリーブ４を必ずしも設ける必要はない。すなわち、例えば側突用エアバッグが前方側において連通された腰部用チャンバと胸部用チャンバの２チャンバ構成であり、インフレータ２の噴出部８（この場合はインフレータ２の凸部６）を覆うように設けた筒状基布部材を介して腰部用チャンバにガスを流入させ、その後、前方側の連通路を介して腰部用チャンバから胸部用チャンバにガスが流入するような場合にも、本発明は適用可能である。

本発明の一実施形態の側突用エアバッグを膨張展開させるインフレータの全体斜視図である。 本発明の一実施形態の側突用エアバッグの展開平面図である。 インフレータの非作動時において、蛇腹状に折り畳まれた筒状基布部材を形状保持布で保持した状態を示すインフレータ噴出部の部分断面図である。 噴出部にガスの流量を絞るスリーブを備えたインフレータの全体斜視図である。 略中間部にティアラインを有する形状保持布を設けた筒状基布部材の斜視図である。 本発明の他の実施形態の筒状基布部材の斜視図である。 インフレータの作動時において、筒状基布部材をインフレータ噴出部近傍に保持した状態を示すインフレータ噴出部の部分断面図である。

符号の説明

１ 側突用エアバッグ装置
２ インフレータ
４ スリーブ
６ 凸部
８ 噴出部
１０ 側突用エアバッグ
１２ 筒状基布部材
１２ａ 係止片（延長部）
１４ 形状保持布（保持部材）
１５ａ，１５ｂ ボルト（固定部材）
２０ ストッパープレート（プレート）
２８ 筒状基布部材
２８ａ 係止片（延長部）
３２ 縫製ライン
Ｂ 胸部用チャンバ
ＣＲ 布目
Ｈ 支持部材
Ｓ 縫製部
ＴＬ ティアライン（開裂部）
Ｙ ガス流出孔（絞り部）
Ｗ 腰部用チャンバ

Claims (7)

1. 車両のボディの側壁部と前記ボディの内部に配置されたシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、
   前記側突用エアバッグを膨張展開させるためのガスを噴出部より噴出するインフレータと、
   前記噴出部を覆うように設けられ、前記インフレータの非作動時に蛇腹状又はロール状に折り畳まれる筒状基布部材と、
   前記蛇腹状又はロール状に折り畳まれた筒状基布部材を前記噴出部近傍に保持する保持部材と
   を有することを特徴とする側突用エアバッグ装置。
2. 請求項１記載の側突用エアバッグ装置において、
   前記インフレータの噴出側である長手方向一方側を覆うように配置され、前記インフレータから噴出されるガスの流量を絞るための絞り部を有する筒状のスリーブをさらに備え、
   前記筒状基布部材は、前記スリーブを覆うように設けられている
   ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
3. 請求項１又は請求項２記載の側突用エアバッグ装置において、
   前記保持部材は、前記インフレータの作動時に前記筒状基布部材の展開を許容するための開裂部を有する
   ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
4. 区画された複数のチャンバを内部に有し、車両のボディの側壁部と前記ボディの内部に配置されたシートに着座した乗員との間に膨張展開する側突用エアバッグと、
   前記側突用エアバッグを膨張展開させるためのガスを長手方向一方側から噴出するインフレータと、
   前記複数のチャンバを連通する連通路において、前記インフレータの長手方向一方側を覆うように配置され、前記インフレータから噴出されるガスの流路を絞る絞り部を有するスリーブと、
   前記スリーブを覆うように設けられ、前記インフレータの作動時における前記スリーブからの突出長さが少なくとも前記スリーブの径以上となるように構成された筒状基布部材と
   を有することを特徴とする側突用エアバッグ装置。
5. 請求項１乃至請求項４のいずれか１項に記載の側突用エアバッグ装置において、
   前記筒状基布部材は、前記インフレータの長手方向他方側に向かって延長され、前記インフレータを前記車両のボディ側に固定するための固定部材により係止される延長部を有している
   ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
6. 請求項５記載の側突用エアバッグ装置において、
   前記延長部は、前記固定部材による係止位置において、前記スリーブとこれに重ね合わされるプレートとにより挟持される
   ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
7. 請求項１乃至請求項６のいずれか１項記載の側突用エアバッグ装置において、
   前記筒状基布部材は、平面状である基布の対向する側縁同士を縫製することにより略円筒状に形成されており、その縫製ライン方向と前記基布の布目方向とが所定の角度を介し斜交するように構成されている
   ことを特徴とする側突用エアバッグ装置。

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