以下、本発明のエアバッグ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
このエアバッグ装置は、例えば車両のステアリングホイールやインストルメントパネル等に取り付けられて乗員を保護する運転席や助手席用等のエアバッグ装置であり、以下の実施形態では、助手席用のエアバッグ装置を例に採り説明する。
図1は、本実施形態のエアバッグ装置のエアバッグが膨張展開が完了した状態を示す斜視図であり、エアバッグ装置とともに、通常の状態で着座した乗員5S、及びOOP状態の乗員5Pを模式的に示す。
このエアバッグ装置1は、図示のように、ガスの導入により膨張展開可能なエアバッグ10と、エアバッグ10下面のガス導入口20に取り付けられたインフレータ2等を備えている。
インフレータ2は、所定の態様に折り畳まれたエアバッグ10とともに車両のインストルメントパネル内等に取り付けられ、車両の衝突時等には、ガス導入口20を通してエアバッグ10内にガスを供給する。このガスにより、インフレータ2は、エアバッグ10を乗員5S、5Pの位置する方向を中心に、上下方向や左右方向等に向かって膨張展開させる。
エアバッグ10は、膨張展開可能な袋状に形成されており、例えば略帯状の基布の長手方向の両端部を縫合、接着、溶着等により接合して筒状にし、その両側開口の周縁部に一対の側布を接合して側面部を閉塞する等して形成されている。また、このエアバッグ10内には、その内部空間を分割する隔壁11と、エアバッグ10の膨張時に隔壁11の移動を規制する規制部材である第1のテザーベルト12と、一端が隔壁11よりも下側のエアバッグ10の下方部分に連結された第2のテザーベルト13とが、それぞれ所定位置に設けられている。
更に、エアバッグ10の隔壁11により分割された一方側(後述する第1室10A側)には、エアバッグ10の内外を連通する第1及び第2の開口部23、24が形成されるとともに、各開口部23、24部分に、その状態によりエアバッグ10内のガスの排気状態を切替可能なスイッチベントホール機構(排気状態切替部材30、35)が設けられている。これら各排気状態切替部材30、35の内、第1の開口部23に設けられた第1の排気状態切替部材30は、第1のテザーベルト12により隔壁11と連結され、第2の開口部24に設けられた第2の排気状態切替部材35は、第2のテザーベルト13によりエアバッグ10の下方部分に連結されている。
図2は、このエアバッグ10の各連結状態を分かり易く示すため、各テザーベルト12、13により互いに連結されたものを、それぞれ抜き出して示す斜視図であり、図2Aは第1のテザーベルト12に、図2Bは第2のテザーベルト13に、それぞれ連結されたものを示す。
以下、これら各図ごとに、各部材等についてより詳細に説明する。
図2Aに示すように、第1のテザーベルト12に連結された隔壁11は、膨張展開時のエアバッグ10内をインフレータ2側の第1室10Aと、乗員5S側の第2室10Bとに区画するためのものであり、ここでは、第2室10Bを、第1室10Aに比べて容積の小さな小気室になるように区画している。また、このエアバッグ装置1では、隔壁11を、エアバッグ10の乗員5S側の比較的上方に配置して接合し、第2室10Bを、エアバッグ10の膨張展開時に、主に正規着座状態の乗員5Sを受け止めて拘束する正規乗員拘束部にしている。即ち、隔壁11により、乗員5Sの主に上半身に対向する位置に第2室10Bを設け、この第2室10Bにより、侵入する乗員5Sの頭部から胸部を受け止めて拘束するようになっている。
ここで、主に正規着座状態の乗員5Sとは、シートベルトを装着又は装着可能な正規(正常)の姿勢で着座した状態や、その姿勢から、例えば多少エアバッグ装置1に接近、或いは前傾した姿勢等、正規の着座姿勢から大きく外れない通常の一般的な状態の乗員5Sのことをいう。従って、本発明で主に正規着座状態という場合には、正規着座状態に加えて、軽いOOP状態である上記したような通常の一般的な状態を含む。
本実施形態では、この第2室10Bを、隔壁11用基布片をエアバッグ10用基布片に重ね合わせ、それらの所定位置を互いに接合することにより、各基布片の間に形成している。即ち、第2室10Bは、隔壁11を構成する隔壁11用基布片(例えばシリコンコート基布片)を、エアバッグ10を構成するエアバッグ10用基布片の第2室10Bを形成すべき部分(エアバッグ10の乗員5Sと対向する正面部10C)に重ね合わせ、その重ね合わせた各基布片のエアバッグ10と隔壁11との境界に対応する部分を互いに接合して形成されている。従って、エアバッグ10は、例えば、基布をエアバッグ10の正面部10Cと略同じ形状、又は、それに近い形状に裁断して隔壁11用基布片を形成し、それを袋状に接合する前の平面状のエアバッグ10用基布片と重ね合わせ、平らな状態で隔壁11用基布片の周縁部をエアバッグ10用基布片に縫い合わせた後、他の基布片と接合する等して袋状に形成される。
また、この隔壁11には、略中央部に第1室10Aと第2室10Bとの間のガスの流通を可能とする略円形の連通孔等のガス通路22が形成されるとともに、そこからのガスの流通を制御する逆止弁25が取り付けられている。逆止弁25は、第1室10Aから第2室10Bへのガスの流入は許容するが、第2室10B内に流入したガスが第1室10Aへ流出するのを阻止する一方向弁であり、例えばガス通路22を閉鎖可能な大きさの基布片を、第2室10B側からガス通路22を覆うようにして被せ、その周囲の数カ所を隔壁11に接合して固定する等してガス通路22に設置される。
なお、この隔壁11は、区画するエアバッグ10の第2室10Bが、車両衝突時に乗員5Sを受け止めて拘束等し得るよう、エアバッグ装置1の用途や形状等に応じて形成・配置される。即ち、隔壁11は、乗員5Sの拘束すべき部分(ここでは頭部及び胸部)やエアバッグ10全体の大きさ及び膨張展開形状等に応じて、膨張展開した第2室10Bが充分な乗員5Sの拘束力等を発揮し得る大きさ及び形状に、かつ安全に乗員5Sを受け止め得る位置になるよう、適切な大きさ及び形状に形成されて、エアバッグ10の適切な位置に配置される。
第1の開口部23は、エアバッグ10の第1室10A側に設けられた、エアバッグ10の内外を連通させる長尺な連通部(連通孔)であり、膨張展開形態におけるエアバッグ10の一方の側方部分10D(図では紙面奥側の側面)に形成されている。また、この第1の開口部23は、エアバッグ10の側方部分10Dの隔壁11から離れたガス導入口20に比較的近い位置に、垂直方向(図では上下方向)に近い角度で直線状に延びるように形成され、その長手方向に沿って第1の排気状態切替部材30が設けられている。
ここで、膨張前のエアバッグ10が折り畳まれた状態では、隔壁11のガス通路22は、ガス導入口20と対向するガス供給方向の下流側に位置しており、エアバッグ10の膨張時に、ガス導入口20から供給されるガスが入り易くなっている。これに対し、ガス導入口20に比較的近い第1の開口部23は、ガス供給方向の上流側に位置している。このような位置にある連通孔は、エアバッグ10の膨張途中において、ガス導入口20からのガスが流出し難いことに加えて、膨張初期には、エアバッグ10内のガスの流れに引かれて、エアバッグ10の外部から内部に向かって空気が流れ込もうとする傾向がある。そのため、この第1の開口部23からは、エアバッグ10の膨張展開時にガスが抜け難くなっている。
第1の排気状態切替部材30は、エアバッグ10内のガスを排気するためのベントホール30Hを有する部材であり、連結された第1のテザーベルト12からの張力やエアバッグ10の内圧に応じて、ベントホール30Hをエアバッグ10内のガスを排気する状態と非排気の状態とに切替可能に構成されている。即ち、第1の排気状態切替部材30は、エアバッグ10が膨張展開した状態では、ベントホール30Hとともにエアバッグ10内に導入され、第1の開口部23を閉塞するように覆ってベントホール30Hを閉じ、インフレータ2作動時におけるエアバッグ10内のガス排気を抑制する非排気状態となる。一方、第1の排気状態切替部材30は、膨張展開したエアバッグ10で乗員5Sを受け止めた状態では、ベントホール30Hとともにエアバッグ10外に導出され、ベントホール30Hを開放してエアバッグ10内のガスを排気可能な排気状態に状態変更する。
なお、第1の排気状態切替部材30は、上記した非排気状態において、エアバッグ10内からのガスを完全に防止する必要はなく、ある程度の量のガスが排気されるような状態であってもよい。従って、本発明において、非排気状態又は非排気の状態というときは、ガスの排気を防止し得る状態に加えて、ガスの排気を抑制し得る状態を含む。
以下、この第1の排気状態切替部材30について、より具体的に説明する。
図3及び図4は、非排気状態にある第1の排気状態切替部材30を模式的に示す図であり、図3は側面図、図4は平面図である。また、図5及び図6は、排気状態にある第1の排気状態切替部材30を模式的に示す図であり、図5は側面図、図6は平面図である。
第1の排気状態切替部材30は、第1の開口部23を囲う一端部と、互いに接合されて第1の開口部23を覆う他端部とを有する一対の基布片30Kからなり、その一端部と他端部間の両側開口をベントホール30Hにしている。即ち、この第1の排気状態切替部材30は、図3〜6に示すように、エアバッグ10の第1の開口部23から延び、それを塞ぐように上下方向に重ねて設けられた一対の基布片(帯状部材)30Kからなる。この一対の基布片30Kは、第1の開口部23側の一端部(基端部)から他端部(先端部)に向かって幅が徐々に縮小する平面視略台形形状(図4、図6参照)をなし、先端部同士が、第1のテザーベルト12の先端部とともに、その幅方向に沿って略全体に亘って接合(図の接合部30B)されている。一方、その両側部は、エアバッグ10側の基端部付近だけ互いに接合(図の接合部30C)されており、接合部30Cから先端部の接合部30Bまでの部分は、接合されずに開口状態(非接合部)になっている。従って、エアバッグ10の内外は、この一対の基布片30Kの両側開口(非接合部)を介して連通しており、本実施形態では、この非接合部を囲む一対の基布片30Kの両側部分により、第1の排気状態切替部材30のベントホール30Hを形成している。
なお、一対の基布片30Kの両側部は、エアバッグ10側の基端部付近が所定長さに亘って接合(接合部30C)されているため、ベントホール30Hとエアバッグ10の開口部23とは連続した位置関係になく、接合部30Cを挟んで互いに離れた位置に設けられている。また、これら各基布片30Kは、例えば所定形状の一対の基布を、エアバッグ10に形成した貫通孔に、その周縁部を囲むように縫い合わせて第1の開口部23を形成しつつ接合する等して、エアバッグ10と一体化されている。或いは、各基布片30Kは、例えばエアバッグ10の側方部分10Dを第1の開口部23部分で分割して2枚の分割片から構成し、この各分割片の裁断(形成)時に予め基布片30Kに対応する部分を持たせて裁断した後、第1の開口部23以外の部分を互いに接合して、一対の基布片30Kの一端部で囲まれた部分を第1の開口部23にする等して、側方部分10Dと一体に形成してもよい。
第1のテザーベルト12は、第1の排気状態切替部材30と隔壁11とを互いに連結する所定長さの連結部材であり、エアバッグ10等と同様な基布を略帯状又は紐状に裁断する等して形成されている。このエアバッグ装置1では、第1のテザーベルト12を、細長い略帯状に形成し、その一方の端部(図2A参照)を、隔壁11の略中央部のガス通路22よりも下方位置に縫い合わせる等して接合している。また、第1の排気状態切替部材30(基布片30K)の先端部に連結(接合)された他方の端部(図4、6参照)を、端部に向かって徐々に広がる形状に、かつ、これら接合された各端部の幅が略同一になるように形成し、第1の排気状態切替部材30の先端部の全体を引っ張るようにして張力や引込力等を作用させるようになっている。
この第1のテザーベルト12は、エアバッグ10の膨張時(図2A参照)に、一方の端部に連結された隔壁11に他方の端部に連結された第1の排気状態切替部材30側への張力を作用させ、これにより隔壁11の第2室10B側への移動を規制して、第2室10Bの膨張を促進して迅速な膨張展開を可能にしている。同時に、第1のテザーベルト12は、インフレータ2の作動時にエアバッグ10が膨張展開した状態では、第1の排気状態切替部材30に他端側(隔壁11側)への張力を作用させて、そのベントホール30H(図3、図4参照)を閉じるとともに、膨張展開したエアバッグ10が侵入した乗員5Sを受け止めて変形したときは、その受け止め位置に応じて、第1の排気状態切替部材30への隔壁11側への張力を解放してベントホール30H(図5、図6参照)を開放する。このように、第1のテザーベルト12は、その張力により、第1の排気状態切替部材30のベントホール30Hを、エアバッグ10内のガスを排気する状態と非排気の状態との間で相互に状態変更させる機能を有する。
即ち、第1のテザーベルト12は、インフレータ2が作動してエアバッグ10が膨張展開した状態(図2A参照)では、インフレータ2からのガス供給による膨張展開力を受けて隔壁11と第1の排気状態切替部材30との間で引っ張られる。その状態で、第1のテザーベルト12は、袋状の第2室10Bの膨張展開をほぼ完了させるとともに、第1の排気状態切替部材30を、エアバッグ10の内圧に抗してエアバッグ10内(図3、4参照)に引き込んで略直線状に引っ張り、そのベントホール30Hを閉じて非排気状態にする長さに形成されている。
また、第1のテザーベルト12は、エアバッグ10の膨張途中においても、その膨張展開に伴い、一端側に連結された第1の排気状態切替部材30に引っ張られて他端側に連結された隔壁11を前記一端側に徐々に引っ張り、隔壁11を第1室10A内に引き込むようにその移動を規制して、隔壁11(第2室10B)を第1室10A内に膨出させる。この膨出時に、第1のテザーベルト12は、隔壁11の膨張展開完了時に最も第1室10A側に突出する略中央部を引っ張り、第2室10Bを第1室10A側に向かって略均等に膨張させるようになっている。同時に、第1の排気状態切替部材30に隔壁11側への張力を作用させ、エアバッグ10の膨張開始の比較的早期に、ベントホール30Hを閉鎖させて非排気状態に状態変更させる。
一方、膨張展開したエアバッグ10が侵入する乗員5Sを受け止めた場合には、その受け止め位置に応じて、内圧を保持する第2室10Bが乗員5Sを包み込むように変形して、第2室10B及び隔壁11が第1室10A側に凸状に変形するとともに、第2室10B全体が乗員5Sの進入方向に押されて、第1の開口部23側に移動する。その結果、第1室10Aの内圧が徐々に上昇し、かつエアバッグ10内で、第1の開口部23と隔壁11の第1のテザーベルト12の接合位置との間の距離が短くなり、第1のテザーベルト12が隔壁11と第1の排気状態切替部材30との間で弛んだ状態となって隔壁11側への張力が解放される。第1のテザーベルト12は、その状態で、第1の排気状態切替部材30がエアバッグ10の内圧を受けてエアバッグ10外に導出(図5、6参照)され、そのベントホール30Hを開放して排気状態に状態変更するのを許容する長さに形成されている。
以上説明した一端が隔壁11に連結された第1のテザーベルト12(図2A参照)に対し、第2のテザーベルト13は、一端がエアバッグ10の第1室10A側に直接連結されている。
第2のテザーベルト13は、図2Bに示すように、一方の端部が、膨張展開形態におけるエアバッグ10(第1室10A)の第2室10B(隔壁11)よりも下側となる下方位置(エアバッグ10の底部)に接合等して連結され、他方の端部が、第2の開口部24に設けられた第2の排気状態切替部材35に連結されている。この第2のテザーベルト13は、第2の排気状態切替部材35をエアバッグ10の所定位置に連結する所定長さの連結部材であり、細長い略帯状に形成される等、上記した第1のテザーベルト12と同様に形成されている。また、第2の排気状態切替部材35も、第1の開口部23と同様に形成された第2の開口部24から延びる一対の基布片35Kからなり、その両側開口をベントホール35Hにする等、上記した第1の排気状態切替部材30(図3〜図6参照)と同様に構成され、一対の基布片35Kの先端部同士が、第2のテザーベルト13の先端部とともに接合されている。
ただし、第2の開口部24は、膨張展開形態におけるエアバッグ10の第1の開口部23が形成された側方部分10D(図1参照)とは逆側の、他方の側方部分10D(図では紙面手前側)に形成されている。また、第2の開口部24は、第2のテザーベルト13のエアバッグ10への連結位置から離れた、側方部分10Dのガス導入口20に比較的近い上方位置に、斜めに傾斜して直線状に延びるように形成されている。更に、これら第1及び第2の開口部23、24のそれぞれから延びる各排気状態切替部材30、35及びテザーベルト12、13は、膨張展開したエアバッグ10内で、互いに異なる方向に延びるように離間して配置されている。
このような連結状態において、第2のテザーベルト13は、エアバッグ10が膨張展開した状態では、第2の排気状態切替部材35に他端側(エアバッグ10の下方側)への張力を作用させ、第2の排気状態切替部材35を、エアバッグ10の内圧に抗してエアバッグ10内(図3、4参照)に引き込んで略直線状に引っ張り、そのベントホール35Hを閉じて非排気状態にする長さに形成されている。また、第2のテザーベルト13は、エアバッグ10の膨張途中においても、その膨張展開に伴い、第2の排気状態切替部材35に他端側への張力を作用させ、エアバッグ10の膨張開始の比較的早期に、ベントホール35Hを閉鎖させて非排気状態に状態変更させるようになっている。
一方、膨張展開したエアバッグ10が侵入したOOP状態の乗員5Pを受け止めた場合には、その受け止め位置に応じて、エアバッグ10(ここでは下方部分)が第1室10A内に凸状に変形し、第1室10Aの内圧が徐々に上昇し、かつ第2のテザーベルト13が弛んだ状態になる。その状態で、第2のテザーベルト13は、第2の排気状態切替部材35への張力を解放してベントホール35H(図5、図6参照)を開放し、エアバッグ10の内圧を受けて、第2の排気状態切替部材35がエアバッグ10外に導出され、そのベントホール35Hが排気状態に状態変更するのを許容する長さに形成されている。
本実施形態では、この第2のテザーベルト13のエアバッグ10への連結位置を、エアバッグ10の膨張時に、主に正規着座状態から比較的大きく外れたOOP状態の乗員5Pが接触して侵入する位置に配置している。即ち、子供等の小さな乗員5Pがインストルメントパネルに接近又は接触している場合等、乗員5Pが、エアバッグ10の下方部分を中心に、正規接触位置から比較的大きく外れた位置に接触して侵入した場合に、第2のテザーベルト13による張力が解放されて、第2の排気状態切替部材35が排気状態に状態変更可能な位置に、第2のテザーベルト13を連結している。この第2のテザーベルト13の連結位置は、例えば米国連邦安全基準FMVSS208で定める、6歳児、3歳児、12ヶ月児のダミーがインストルメントパネルに頭部や胸部を接触等させた状態である試験ポジション1、2で、ダミーが作動したエアバッグ10に接触して第2の排気状態切替部材35が排気状態になる範囲、例えば膨張展開形態におけるエアバッグ10のインストルメントパネルに近い下方位置(底部)に配置される。
次に、以上説明したエアバッグ装置1の作動時における各部の機能等について説明する。
図7、図8は、エアバッグ装置1が作動したときの状態を模式的に示す側面図であり、図7は乗員5Sが主に正規着座状態にある場合の例を、図8は乗員5Pが上記したOOP状態にある場合の例を、それぞれ示す。
このエアバッグ装置1は、エアバッグ10をインフレータ2と合体組み付けした状態で、車両の助手席前の所定位置(インストルメントパネル内等)に取り付けられており、その状態では、エアバッグ10は、各排気状態切替部材30、35をエアバッグ10内に導入した状態で、所定の態様に折り畳まれている。その状態から、車両の衝突時等には、インフレータ2を起動(図1参照)してガス導入口20からエアバッグ10内にガスを供給し、エアバッグ10の第1室10Aを膨張させる。同時に、第1室10Aから隔壁11のガス通路22を通してガスを第2室10Bに導入し、第2室10Bを膨張展開させつつ、エアバッグ10全体を膨張展開させる。
このようにエアバッグ10が膨張展開するのに従って、第1のテザーベルト12が、第1の排気状態切替部材30に徐々に引っ張られて隔壁11の移動が規制され、第2室10Bの膨張が補助されて膨張展開が進行する。同時に、第2のテザーベルト13も各連結部間で引っ張られ、これら各テザーベルト12、13に連結されたエアバッグ10内の各排気状態切替部材30、35に強い張力が作用し、それらが各ベントホール30H、35Hをほぼ閉じた状態(図3、4参照)になりエアバッグ10内で開口部23、24を閉塞する。この非排気状態をテザーベルト12、13の張力により維持して、エアバッグ10内からのガス排気を抑制し、ガスの漏出を少なくして迅速にエアバッグ10を膨張展開させる。また、エアバッグ10及び第2室10Bの膨張展開がほぼ完了すると、テザーベルト12、13により各排気状態切替部材30、35がエアバッグ10の内側方向により強く引っ張られた状態となり、この強い張力により、排気状態切替部材30、35をエアバッグ10内の内圧に抗して非排気状態に確実に維持する。
その状態(図7A参照)で、車両衝突の衝撃で前方に向かって移動する乗員5Sがエアバッグ10の正面部10Cに接触(図7B参照)すると、エアバッグ10(第2室10B)が乗員5Sを受け止めて、膨張展開したエアバッグ10全体が乗員5Sの進入方向等に向かって変形する。この変形時には、第2室10Bが、乗員5Sを包み込むように凹状に変形するが、逆止弁25により内部からのガスの流出が防止され、その凹状の変形形状を維持して乗員5Sを確実に拘束する。同時に、第1室10A内のガスが圧縮されてその内圧が上昇するとともに、第2室10B全体が乗員5Sの進入方向(第1の開口部23側)に移動し、かつ隔壁11が凸状に変形して第1のテザーベルト12が弛み、第1の排気状態切替部材30に作用する隔壁11側への張力が解放される。その結果、第1の排気状態切替部材30が、第1室10Aの内圧によってエアバッグ10外に押し出されるように導出(図5、6参照)され、そのベントホール30Hが開放されて第1室10Aの内外が連通する。第1の排気状態切替部材30は、以上のようにして非排気状態(図7A参照)から排気状態(図7B参照)に状態変更し、第1室10A内のガスを第1の開口部23から第1の排気状態切替部材30内を通してベントホール30Hから外部に排気する。これにより第1室10Aを徐々に萎ませて乗員5Sをエアバッグ10で柔らかく受け止め、乗員5Sに加わる衝突の衝撃を吸収・緩和して保護する。
ここで、乗員5Sが前傾等の非正常な乗車姿勢で着座する等して、通常よりも早期にエアバッグ10に接触した場合には、エアバッグ10は、膨張が完了する途中形態で乗員5Sに接触し、それ以上の膨張展開が妨げられることになる。しかしながら、このような場合でも、このエアバッグ10では、第1のテザーベルト12が弛んだままの状態で第1室10Aの内圧が上昇し、第1の排気状態切替部材30が内圧によって第1室10A外に導出されて排気状態に状態変更するため、ベントホール30Hからのガスの排気が可能である。また、第2のテザーベルト13(図7C参照)は、エアバッグ10の下方位置に連結されており、このような乗員5Sが侵入してエアバッグ10が変形(図7D参照)しても張力が作用した状態に維持される。その為、第2のテザーベルト13に連結された第2の排気状態切替部材35は、非排気状態に維持され、そのベントホール35H及び第2の開口部24からのガスの排気は防止又は抑制される。
一方、上記したOOP状態にある乗員5Pが、膨張展開したエアバッグ10の第2のテザーベルト13が連結された下方部分付近に接触した場合(図8A参照)には、エアバッグ10が乗員5Pを受け止めて、それを包み込むように上方に向かって変形する。これにより、第1室10A内のガスが圧縮されて内圧が上昇するとともに、第2のテザーベルト13が弛んで、第2の排気状態切替部材35に作用する張力が解放される。その結果、第2の排気状態切替部材35が、エアバッグ10外に導出(図5、6参照)されて非排気状態から排気状態に状態変更し、そのベントホール35Hが開放されて第1室10Aの内外が連通し、第1室10A内のガスが第2の開口部24を介してベントホール35Hから外部に排気される。このようにして、侵入した乗員5Pをエアバッグ10により拘束しつつ、第1室10Aを徐々に萎ませて乗員5Pをエアバッグ10で柔らかく受け止めて、乗員5Pに加わる衝突の衝撃を吸収・緩和して保護する。
この第2の排気状態切替35による乗員5Pの保護は、エアバッグ10の膨張完了後に加えて、その完了前に乗員5Pがある程度膨張展開したエアバッグ10に接触した場合にも行われるのは、上記した第1の排気状態切替部材30と同様である。また、第1のテザーベルト12(図8B参照)は、このような乗員5Pが侵入してエアバッグ10が変形しても張力が作用した状態に維持されるため、第1のテザーベルト12に連結された第1の排気状態切替部材30は、非排気状態に維持され、そのベントホール30H及び第1の開口部23からのガスの排気は防止又は抑制される。
以上説明したように、本実施形態のエアバッグ装置1では、各開口部23、24をエアバッグ10の膨張時にガスが抜け難い位置に形成するとともに、各排気状態切替部材30、35を非排気状態に維持して膨張時におけるエアバッグ10内からのガスの排気を抑制するため、エアバッグ10を迅速に膨張展開させることができる。その結果、エアバッグ10を早期に充分な乗員5S、5Pの拘束力を発揮し得る状態にすることができ、OOP状態にある乗員5P(図8A参照)に加えて、例えば正規着座状態の乗員5S(図7参照)がエアバッグ装置1側に接近し、又は通常の乗車姿勢よりも前傾した姿勢で着座している等、非正常な乗車姿勢で着座して通常よりも早期にエアバッグ10に接触した場合等でも、乗員5S、5Pの保護を図ることができる。
また、このエアバッグ装置1では、隔壁11のガス通路22から第2室10B側へガスが入り易いことに加えて、第1のテザーベルト12により隔壁11の第2室10B側への移動を規制して第2室10Bを膨張させるため、第2室10Bの膨張展開(隔壁11の第1室10A内への膨出)をより早期に、かつ確実に行うことができる。同時に、第1のテザーベルト12により、エアバッグ10の膨張時における隔壁11(第2室10B)の乗員5S側への突出距離及び突出圧力の制御等も可能となるため、エアバッグ10の展開特性及び乗員5Sの保護機能の向上等も図ることができる。加えて、このエアバッグ装置1では、第2室10B側にガスを排気するベントホールを設けず、かつ隔壁11のガス通路22に逆止弁25を設けたため、膨張展開した第2室10Bで乗員5Sの頭部等を受け止めた後でも第2室10Bからガスが排気されず、その内圧を保つことができる。これにより、乗員5Sを受け止めて変形した第2室10Bの変形形状を維持し、衝突後の乗員5Sの頭部等の移動をより強く規制することができる等、最も乗員が侵入する確立が高い第2室10Bの乗員5Sの拘束力を向上させることができる。
更に、このエアバッグ装置1では、上記したように、膨張展開したエアバッグ10が接触・侵入した乗員5S、5Pを受け止めて変形したときに、その受け止め位置に応じて、第1の排気状態切替部材30又は第2の排気状態切替部材35に作用する張力を解放して、いずれか一方のベントホール30H、35Hを開放させるため、乗員5S、5Pの接触位置にかかわらずエアバッグ10(第1室10A)のガスを確実に排気させて、それらを安全に保護することができる。即ち、最も一般的なエアバッグ10の正面部10Cに接触する乗員5S(図7B参照)は、第2室10Bにより確実に拘束しつつ第1の排気状態切替部材30からガスを排気して保護し、上記したOOP状態にある乗員5P(図8A参照)がエアバッグ10の下方部分に接触した場合には、第2の排気状態切替部材35からガスを排気して保護する。
これら各排気状態において、このエアバッグ装置1では、各排気状態切替部材30、35が互いに独立に作動し、その一方のみが排気状態になるため、エアバッグ10内から必要以上にガスが排気されるのを防止できるとともに、各排気状態切替部材30、35を、それぞれの用途に合わせて最適化することができる。例えば、各排気状態切替部材30、35のベントホール30H、35Hを異なる大きさに形成したり、或いは、そのエアバッグ10内での設置位置や各テザーベルト12、13の長さを変更等することで、各ベントホール30H、35Hを、それぞれ最適なタイミングで開放し、又はガスの排気量を最適化する等することで、各排気状態切替部材30、35を、その用途に応じて最適に作動するようにできる。特に、子供等を保護するための第2の排気状態切替部材35は、より多いガスの排気量が必要であるが、このエアバッグ装置1によれば、そのベントホール35Hを通常よりも大きく(例えば5倍程度)しても問題が生じることはない。
また、これら各排気状態切替部材30、35は、それぞれエアバッグ10の側方部分10Dに形成された各開口部23、24に設けられており、排気状態に移行したときでも、車両のフロントガラスやインダッシュパネル等に干渉されずにエアバッグ10外に導出されるため、安定したガス排気を行うことができる。同時に、各開口部23、24が、エアバッグ10の両側方部分10Dのそれぞれに設けられ、かつ各排気状態切替部材30、35及びテザーベルト12、13が離間して配置されているため、それらが互いに干渉して作動を邪魔し合うのを防止することもでき、より安定したガス排気が可能となり、円滑かつ確実な作動状態を得ることができる。
更に、このエアバッグ装置1では、各開口部23、24を、エアバッグ10の乗員5S、5Pの接触位置である第2室10B及び第2のテザーベルト13の連結位置付近から離れた位置に設けたため、排気状態切替部材30、35が、乗員5S、5Pの侵入によるエアバッグ10の変形の影響を受け難く、その導出(排気状態への状態変更)を確実に行うことができる。その結果、第1室10Aから安定して大量のガスを確実に排気でき、エアバッグ10からの充分なガスの排気量を確保して、エアバッグ10の衝撃の吸収性能を向上させることができる。同時に、膨張途中で乗員5S、5Pを受け止めたときにも、第1室10Aからのガスの排気が可能であるため、そのような状態での乗員5S、5Pへの衝撃を低下させることもできる。
また、第1のテザーベルト12に関しては、その一端を第2室10Bを区画する隔壁11に取り付けたため、乗員5Sがエアバッグ10の第2室10Bを区画する何れの位置に接触しても、第2室10B全体が第1の開口部23側へ移動し、又は、第2室10Bの変形により隔壁11が凸状に変形して、第1のテザーベルト12に弛みを生じさせることができる。その結果、乗員5Sの受け止め位置に関わらず、第1の排気状態切替部材30の排気状態を切り替えることができ、その衝突時の応答性を向上させることができる。
加えて、これら各排気状態切替部材30、35では、それぞれベントホール30H、35Hと開口部23、24との間に接合部30Cを設け、それらを互いに離れた位置に形成している。そのため、非排気状態では、ベントホール30H、35Hのエアバッグ10側の基端部(主に両接合部30C間の周辺部分)が、エアバッグ10の内圧により密着して重なり合う状態になり、この密着部分が一種の弁として作用する。これにより、ベントホール30H、35Hを介して各開口部23、24からガスが漏れ難くなり、非排気状態でのガスの排気をより確実に抑制することができる。また、排気状態切替部材30、35が、その先端部の略全体に亘ってテザーベルト12、13に引っ張られるため、エアバッグ10内で排気状態切替部材30、35の姿勢を安定させることができ、非排気状態を確実かつ安定して維持することもできる。
従って、本実施形態のエアバッグ装置1によれば、車両衝突時等におけるエアバッグ10の乗員5S、5Pの拘束力が高くなり、その頭部等を確実に拘束して衝突時の乗員5S、5Pの移動をより確実に規制することができる。また、各排気状態切替部材30、35により、一般的な着座姿勢の乗員5Sに加えて、OOP状態の乗員5Pが接触した場合であっても、エアバッグ10からのガスの排気が確実かつ適切に行われるため、各乗員5S、5Pへの衝撃を低下させることができ、エアバック装置1の乗員5S、5Pの保護機能を効果的に向上させることができる。これは、第2室10Bを、保護する必要性がより高い乗員5Sの頭部を拘束するエアバッグ10の頭部拘束部とした場合に特に効果が高く、かつ隔壁11を気密性が高いシリコンコート基布で形成した場合に、より高い効果を得ることができる。
また、このエアバッグ10は、製造に必要な部品数が比較的少ないことに加えて、例えば第2室10Bを、上記したように隔壁11用基布片をエアバッグ10用基布片に重ね合わせて互いに接合して形成できる等、その構成も比較的単純である。また、排気状態切替部材30、35についても、それぞれ開口部23、24から延びる一対の基布片30K、35Kの端部同士を接合して、その両側開口をベントホール30H、35Hにしたものであり、比較的簡単な構造で実現できる。このように、本実施形態のエアバッグ10は、その機能に比して構成及び構造が簡単であり、縫い合わせ等の製造の作業性及び生産性が低下するのを抑制でき、比較的低コストでエアバッグ10を製造することができる。
なお、本実施形態では、テザーベルト12、13を、エアバッグ10の膨張展開時に各連結部間で略直線状に延びる長さに形成したが、テザーベルト12、13は、膨張展開時に多少の弛み等があっても隔壁11の移動を規制し、又は排気状態切替部材30、35を非排気状態に維持する効果を発揮し得る。従って、テザーベルト12、13は、その長さに、ある程度の長短があってもよい。
また、上記したエアバッグ10の開口部23、24及び排気状態切替部材30、35(ベントホール30H、35H)の大きさに加えて、隔壁11のガス通路22の大きさ等の形態も、エアバッグ10や隔壁11(第2室10B)の形態や、エアバッグ10に要求される膨張及び排気速度等の各膨張及び排気パターン等に応じて、それぞれ適切な大きさ等に設定すればよい。同様に、ここでは、隔壁11にガス通路22を1個のみ形成したが、ガス通路22は、複数箇所に複数個形成する等、必要な位置に必要な個数形成すればよい。
更に、本実施形態では、ガス通路22に逆止弁25を設けたが、ガス通路22とベントホール30H、35Hの大きさ等によっては、逆止弁25を省略してもよい。但し、この場合には、各ベントホール30H、35Hに対して、ガス通路22の大きさを相対的に小さくする等、ベントホール30H、35Hからのガス排気量に対して、ガス通路22(第2室10B)からのガス導出量を少なくした場合には、乗員5Sとの接触時に、第2室10Bがより潰れ難くなって上記した各効果を相対的に大きくできるため、より好ましい。
加えて、エアバッグ10の開口部23、24は、排気状態切替部材30、35の配置方向やテザーベルト12、13の連結位置等の各態様に合わせて、本実施形態とは異なる方向に延びるように形成する等、他の形態に形成してもよい。更に、このエアバッグ10では、排気状態切替部材30、35のみにベントホール30H、35Hを設けたが、例えば、膨張展開形態におけるエアバッグ10(第1室10A)のフロントガラス側に孔状のベントホールを形成する等、第1室10A側に他のベントホールを形成してもよい。この場合には、他のベントホールによる排気と、排気状態切替部材30、35を介した排気との組み合わせにより、多彩な排気パターンの設定が可能となる。
また、排気状態切替部材30、35は、エアバッグ装置1の作動前に、エアバッグ10外に導出された状態で、エアバッグ10とともに折り畳まれていてもよい。このような場合であっても、排気状態切替部材30、35は、膨張の途中からテザーベルト12、13による張力(エアバッグ10内への引込力)によりエアバッグ10内に導入されて非排気状態になるため、ガス排気を抑制してエアバッグ10を迅速に膨張展開させることができる。また、上記した非正常な姿勢の乗員5S、5Pが通常よりも早期にエアバッグ10に接触したときには、排気状態切替部材30、35が非排気状態から排気状態に状態変更する過程を省略してエアバッグ10内のガスを排気できるため、より早い段階で大量のガスを排気することができ、乗員5S、5Pへの衝撃をより緩和することもできる。
ここで、エアバッグ10の各開口部23、24と排気状態切替部材30、35は、膨張が完了したエアバッグ10や膨張途中のエアバッグ10が乗員5S、5Pを受け止めたときに、排気状態切替部材30、35が排気状態となり、ガスの排気が妨げられない位置に設けられていればよく、エアバッグ10の第1室10A側の他の位置に設けてもよい。例えば、これらは、膨張展開形態におけるエアバッグ10の第1室10A側の同一の側方部分10Dや、上方部分等に設けてもよい。
同様に、第1のテザーベルト12は、隔壁11及び第1の排気状態切替部材30の先端部の一部に取り付けられていれば、第1の排気状態切替部材30の排気状態の切り替えや隔壁11の移動の規制を行えるため、第1のテザーベルト12の両端を、本実施形態とは異なる位置に取り付けてもよい。また、第2のテザーベルト13の第2の排気状態切替部材35等への取付位置に関しても同様である。即ち、各開口部23、24の位置と、第1のテザーベルト12の隔壁11への取付位置、及び第2のテザーベルト13のエアバッグ10への取付位置が、膨張展開したエアバッグ10により乗員5S、5Pを受け止めたときに、それらの間の距離が近くなるような位置関係にあればよい。
また、排気状態切替部材30、35(各基布片30K、35K)を、それぞれエアバッグ10の各開口部23、24の開口幅よりも幅広に形成してもよい。このようにした場合には、排気状態切替部材30、35が、エアバッグ10の内部から外部へ向かって、又はその逆に移動する際に、その幅方向に縮小するように変形しつつ開口部23、24内をくぐり抜けるように移動する。その結果、開口部23、24部分を移動する排気状態切替部材30、35に所定の抵抗を作用させることができ、所定値以上のテザーベルト12、13による張力やエアバッグ10の内圧が作用していないとき等に、排気状態切替部材30、35が不用意に移動して排気状態と非排気状態との間で状態変更するのを防止することができる。
更に、本実施形態では、第2のテザーベルト13をエアバッグ10の下方部分(底部)に直接連結したが、エアバッグ10の第1室10Aを更に区画して第2室10Bよりも下側に位置する第3室を形成し、第2のテザーベルト13を、第3室を区画する隔壁に接合してエアバッグ10に間接的に連結してもよい。即ち、エアバッグ10(第1室10A)の第2のテザーベルト13の接合位置付近を中心に小気室を形成し、第2の排気状態切替部材35を、第2のテザーベルト13を介して小気室側に連結するようにしてもよい。
図9は、このように小気室を形成したエアバッグ装置1の例を模式的に示す側面図であり、上記した図8Aに対応して、第2のテザーベルト13に連結された部材等のみを抜き出して示す。
このエアバッグ装置1では、図9Aに示すように、第2の隔壁14を、エアバッグ10の第2室10B(隔壁11)(図1参照)よりも下側となる下方位置に接合し、膨張展開形態におけるエアバッグ10の第1室10Aの第2室10B(隔壁11)よりも下方部分を第1室10Aから区画して、エアバッグ10の少なくとも底部を含む小気室(第3室)10Fを形成している。この第2の隔壁14は、第1室10Aと第3室10Fとの間でのガスの流通を可能とする図示しないガス通路や逆止弁を有する等、隔壁11と同様に構成され、上記したOOP状態の乗員5Pが接触して侵入する範囲に第3室10Fが位置するように、エアバッグ10の下方部分に配置されている。また、第2のテザーベルト13は、一端が第2の隔壁14の中央位置付近に連結され、第1のテザーベルト12と同様に、エアバッグ10の膨張時に、第2の隔壁14の第3室10F側への移動を規制して第3室10Fを膨張展開させつつ、他端側に連結された第2の排気状態切替部材35に、第2の隔壁14側への張力を作用させるようになっている。
このエアバッグ装置1では、上記した各効果に加えて、OOP状態の乗員5Pが、膨張展開したエアバッグ10の第3室10F部分に接触して侵入した場合に、上記した第2室10Bが発揮する効果と同様の効果を得ることができる。即ち、図9Bに示すように、第3室10Fに侵入した乗員5Pを、内圧を保持する第3室10Fで受け止めるため、エアバッグ10の乗員5Pに対する拘束力が高くなり、そのような状態の乗員5Pを、より確実に拘束して保護することができる。また、乗員5Pがエアバッグ10の第3室10Fを区画する何れの位置に接触しても、第3室10F全体が第2の開口部24側へ移動し、又は、第3室10Fの変形により第2の隔壁14が上方に変形し、第2のテザーベルト13に弛みを生じさせることができる。その結果、乗員5Pの受け止め位置に関わらず、第2の排気状態切替部材35の排気状態を切り替えることができ、その衝突時の応答性を向上させることができる。
次に、排気状態切替部材の他の例について説明する。
なお、以下では、各排気状態切替部材を、エアバッグ10の2つの開口部23、24の内、第1の開口部23(以下、開口部23という)に取り付けた場合を例に採り説明する。
図10は、排気状態切替部材の第1の変形例を示す模式図であり、図10Aは側面図、図10Bは平面図である。
この排気状態切替部材50は、図示のように、エアバッグ10の開口部23から延びる一対の略矩形状の基布片51を有し、その先端部51C同士を縫い合わせる等して接合している。また、この先端部51C同士の接合部に長尺状のテザーベルト55の一端部を連結し、一対の基布片51の略平行な両側辺51Dで囲まれる両側部分により一対のベントホール51H(図では太線で示す)を形成している。
図11は、排気状態切替部材の第2の変形例を示す模式図であり、図11Aは側面図、図11Bは平面図である。
この排気状態切替部材60は、図示のように、エアバッグ10の開口部23から延びる一対の略台形状の基布片61を有し、その長辺側である各底辺61Bを開口部23側の基端部とし、傾斜した両斜辺61D同士を接合している。また、一対の基布片61の短辺側である上辺61Cに長尺状のテザーベルト65の一端部を連結し、一対の基布片61の上辺61C同士で囲まれる部分によりベントホール61H(図では太線で示す)を形成している。
図12は、排気状態切替部材の第3の変形例を示す模式図であり、図12Aは側面図、図12Bは平面図である。
この排気状態切替部材70は、図示のように、エアバッグ10の開口部23から延びる一対の略台形状の基布片71を有し、その長辺側である各底辺71Bを開口部23側の基端部とし、その短辺側である両上辺71C同士及び傾斜した両斜辺71D同士を接合している。また、一対の基布片71の各上辺71Cに長尺状のテザーベルト75の一端部を連結し、一対の基布片71の一方又は双方の略中央部に略円形孔を形成してベントホール71Hとしている。
これら排気状態切替部材の第1から第3の変形例でも、上記した排気状態切替部材30、35と同様に、排気状態切替部材50、60、70がエアバッグ10内に導入され、又は導出されることで、非排気状態と排気状態との間で状態変更する。
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、5S、5P・・・乗員、10・・・エアバッグ、10A・・・第1室、10B・・・第2室、10C・・・正面部、10D・・・側方部分、10F・・・第3室、11・・・隔壁、12・・・第1のテザーベルト、13・・・第2のテザーベルト、14・・・第2の隔壁、20・・・ガス導入口、22・・・ガス通路、23・・・第1の開口部、24・・・第2の開口部、25・・・逆止弁、30・・・第1の排気状態切替部材、30B・・・接合部、30C・・・接合部、30H・・・ベントホール、30K・・・基布片、35・・・第2の排気状態切替部材、35H・・・ベントホール、35K・・・基布片、50・・・排気状態切替部材、51・・・基布片、51C・・・先端部、51D・・・側辺、51H・・・ベントホール、55・・・テザーベルト、60・・・排気状態切替部材、61・・・基布片、61B・・・底辺、61C・・・上辺、61D・・・斜辺、61H・・・ベントホール、65・・・テザーベルト、70・・・排気状態切替部材、71・・・基布片、71B・・・底辺、71C・・・上辺、71D・・・斜辺、71H・・・ベントホール、75・・・テザーベルト。