JP2008056712A - 制電性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)オレフィン系樹脂7〜91質量%、(B)オレフィン重合体ブロックと親水性重合体ブロックとを含有するブロック共重合体2〜60質量%、(C)芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックとを含有するブロック共重合体又はその水素添加物1.8〜50質量%、(D)アセトン可溶分の極限粘度〔η〕が0.2〜1.2dl/gの(ゴム強化)スチレン系樹脂5〜50質量%、(E)重量平均分子量1×106以上のメタクリル酸メチル系(共)重合体又は極限粘度〔η〕1.5dl/g以上の芳香族ビニル化合物系(共)重合体0.2〜15質量%からなる制電性樹脂組成物。(B)成分はNa及びKの含有量500ppm未満の重合体(B2)又はこれと該含有量500ppm以上の重合体(B1)の混合でもよい。
【選択図】なし
Description
制電性が充分でないこと及び耐薬品性が依然として劣る問題があった。
本出願人は、上記状況に鑑みて鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂とABS樹脂とからなる組成物に、オレフィン重合体ブロックと親水性重合体ブロックとを含有するブロック共重合体を配合することで制電性に優れた材料が得られることを見出し特許出願した(特許文献5)。しかし、この材料を用いたシート等の成形品において表面の平滑性の更なる改良が望まれていた。
すなわち、本発明の一局面によれば、下記(A)成分7〜91質量%と、下記(B)成分2〜60質量%と、下記(C)成分1.8〜50質量%と、下記(D)成分5〜50質量%と、下記(E)成分0.2〜15質量%とを含有する(但し、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計は100質量%)制電性樹脂組成物が提供される。
(A)成分:オレフィン系樹脂。
(B)成分:オレフィン重合体ブロックと親水性重合体ブロックとを含有するブロック共重合体。
(C)成分:芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロックと共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロックとを含有するブロック共重合体及びその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー。
(D)成分:ゴム質重合体(a)(但し、上記(C)成分を除く)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂(D1)、および/または、該ビニル単量体の(共)重合体(D2)からなり、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕が0.2〜1.2dl/g(メチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)であるスチレン系樹脂。
(E)成分:重量平均分子量が1×106以上である、メタクリル酸メチルを主体とする(共)重合体および/または極限粘度〔η〕が1.5dl/g以上(ジメチルホルムアミドを用いて、30℃で測定)である、芳香族ビニル化合物を主体とする(共)重合体。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記(B)成分は、ナトリウムおよびカリウムの合計の含有量が500ppm以上のブロック共重合体(B1)とナトリウムおよびカリウムの合計含有量が0〜500ppm未満のブロック共重合体とからなり、ブロック共重合体(B1)/ブロック共重合体(B2)比は1/99〜90/10(質量比)である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記(B)成分は、ナトリウムおよびカリウムの合計含有量が0〜500ppm未満のブロック共重合体(B2)のみからなる。
本発明において、上記(B)成分は、ナトリウムおよび/またはカリウムをスルホン酸塩の形態で含有することが好ましい。
本発明の更に他の好ましい実施形態によれば、本発明の制電性樹脂組成物は、更に、該制電性樹脂組成物100質量部に対して、リチウム塩(F)を0.01〜5質量部含む。
上記リチウム塩(F)は、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の制電性樹脂組成物からなる成形品、とりわけ、シートまたはフィルムが提供される。
上記オレフィン系樹脂(A)の形成に用いるオレフィン類の例としては、エチレン、及びプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα―オレフィン、更に環状オレフィン等が挙げられる。上記環状オレフィンとしては、炭素数11以下の化合物が好ましく、特に、ノルボルネン類が好ましい。上記環状オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−ウンデセン等が挙げられる。尚、炭素数が12以上の環状オレフィンを単独でまたは上記の炭素数11以下の化合物と組み合わせて用いることもできる。これらのオレフィン類は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1及びノルボルネンが好ましい。
オレフィン系樹脂(A)の形成において必要に応じて用いることのできる他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
本発明のオレフィン樹脂は、公知の重合法で製造されたものが使用でき、例えば高圧重合法、低圧重合法、メタロセン触媒重合法等がある。
更に、本発明で使用されるオレフィン系樹脂としては、重合触媒を脱触媒したもの、または、酸無水物、カルボキシル基、エポキシ基等で変性したものを用いることができる。
また、オレフィン系樹脂(A)のJIS K7121に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1種用いることが好ましい。
本発明の(A)成分としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、JIS K7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合は、JIS K6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分である。
上記オレフィン重合体ブロック(B−a)とは、オレフィン類の(共)重合体である。ここで使用されるオレフィン類の例としては、エチレン、及び、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα−オレフィン、更にノルボルネン等の環状オレフィン等があり、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ノルボルネンであり、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また他に4−メチル−1、4−ヘキサジエン、5−メチル1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを重合体成分の一部として使用することもできる。該オレフィン重合体ブロック(B−a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、好ましくは800〜20,000、更に好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,2000〜6,000である。
このために、上記ブロック(B−a)の分子末端は、上記ブロック(B−b)に分子両末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基等がある。
本発明の(B−a)成分は、重合法及び熱減成法等によって得ることができ、重合法により得られるポリオレフィンは公知の方法で製造でき、例えば、ラジカル触媒、金属酸化触媒、チーグラー触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒等の存在下で上記オレフィンを(共)重合させる方法により容易に得ることができる。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報記載の方法等により容易に得ることができる。上記分子末端の変性のし易さから、好ましいものは熱減成法によるものである。
熱減成法で得られたポリオレフィン中の二重結合量は、制電性の観点から好ましくは、炭素数1,000当たり1〜40個、更に好ましくは2〜30個、特に好ましくは4〜20個である。
1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性の観点及び制電性の観点から好ましくは、1.1〜5、さらに好ましくは1.3〜3、特に好ましくは1.8〜2.2である。
熱減成法においては、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)参照〕。
ポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、およびこれらの変性物が挙げられる。
ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、および、ポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記ポリエーテルとを必須成分単位とし、かつ一分子内に好ましくは2〜80個、更に好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。これらは、直鎖状であっても、また分岐状であってもよい。特に好ましい(B−b)成分はポリエーテルである。
H−(OA1)n―O−E1―O(A1O)n´―Hで表されるもの、及び一般式(II):
H−(OA2)m−O−E2−O−(A2O)m´―Hで表されるもの等が挙げられる。一般式(I)中、E1は二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2
〜4のアルキレン基、nおよびn´は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。n個の(OA1)とn´個の(A1O)とは同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロックもしくはランダムまたはこれらの組み合わせのいずれでもよい。nおよびn´は、通常1〜300、好ましくは2〜250、特に好ましくは10〜100の整数である。また、nとn´は、同一であっても異なっていてもよい。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−および1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4´−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、およびジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
で表されるグリシジルエーテルを重合、または炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
また、本発明の好ましい(B)成分は、上記オレフィン重合体ブロック(B−a)と親水性重合体ブロック(B−b)を公知の方法で重合することによって得ることができる。例えば、ブロック(B−a)とブロック(B−b)を減圧下200〜250℃で重合反応を行うことにより製造することができる。また、重合反応に際し公知の重合触媒を使用することができる。
(B−c)成分としては、ナトリウム、カリウムの有機酸、スルホン酸、無機酸の塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。
このようなブロック重合体(B)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載の方法等で製造することができ、更に、本発明の(B)成分は、三洋化成工業社製ペレスタット300シリーズの300、303、ペレスタット200シリーズの230等として入手できる。
本発明の制電性樹脂組成物の制電性を向上させる方向として本発明の(B)成分の配合量を増やす方法がとられるが、より溶出イオン量が多くなり前記した課題が顕著になる。
本発明によれば、制電性向上と溶出イオン低減の相反する性能を両立させるために、前記(B−c)成分の多い(B)成分と前記(B−c)成分の少ない(B)成分を特定の割合で併用する方法を採用できる。本方法によれば、例えば、ナトリム及びカリウムの合計含有量が500ppm以上のブロック共重合体(B1)とナトリウム及びカリウムの合計含有量が0〜500ppm未満のブロック共重合体(B2)とを併用できる。ブロック共重合体(B1)/ブロック共重合体(B2)は、ブロック共重合体(B1)/ブロック共重合体(B2)比((B1)/(B2)(質量比))が好ましくは1/99〜90/10、更に好ましくは1/99〜80/20、特に好ましくは2/98〜75/25の範囲で併用される。
また、ナトリムイオン及びカリウムイオンが溶出することを極度に嫌う用途においては、前記(B2)成分を使用することが好ましく、更には、ナトリウム及びカリウムを含まない(B2)成分を用いることが特に好ましい。
また、共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等があり、好ましくはブタジエン、イソプレンである。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、ブロック(C2)は、2種以上の共役ジエン化合物を使用し、それらがランダム状、ブロック状、テーパー状のいずれの形態で結合したブロックであってもよい。また、(C2)は、芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で含有していてもよく、重合体ブロック(C2)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合含有量の異なる重合体ブロック等が、適宜共重合していてもよい。
(A−B)Y (VI)
(A−B)Y−X (VII)
A−(B−A)Z (VIII)
(構造式(VI)〜(VIII)中、Aは芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックで、実質的に芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックであれば、一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは芳香族ビニル化合物を90質量%以上、更に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。Bは共役ジエン化合物の単独重合体または芳香族ビニル化合物等の他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体であり、Xはカップリング剤の残基であり、Yは1〜5の整数、Zは1〜5の整数をそれぞれ表す。Bが芳香族ビニル化合物等の他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体である場合、B中の当該他の単量体の含有量は、共役ジエン化合物と当該他の単量体との合計に対して50質量%以下であること好ましい。)
上記方法で重合体を得た後、カップリング剤を使用して重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された重合体も本発明の(C)成分に好ましく含まれるが、ここで使用されるカップリング剤としてはアジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化珪素、ブチルトリクロロ珪素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロ珪素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
上記ブロック共重合体(C−a)及びその水素添加物(C−b)に化学的に結合している他の重合体は、100質量%が化学的に結合している必要はなく、他の重合体の少なくとも10質量%が化学的に結合しておれば本発明の目的は達成できる。
本発明の(D)成分は、耐衝撃性の面から、ゴム質重合体(D−a)の存在下にビニル系単量体(D−b)をグラフト重合させた重合体を少なくとも1種含むものが好ましい。ゴム質重合体(D−a)の含有量は、(D)成分を100質量%として、好ましくは3〜80質量%、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜60質量%である。
また、これらのうちポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴムが好ましい。ここで用いられるブタジエン・スチレン共重合体は、通常、ブロック共重合体以外の共重合体、とりわけランダム共重合体が用いられる。
尚、上記ゲル含率は、以下に示す方法により求めることができる。すなわち、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置したのち、100メッシュの金網(質量をW1グラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量(質量W2グラムとする)し、下記式(1)により算出する。
ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、分子量調節剤の種類および量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜設定することにより調整される。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用すると、表面硬度が向上するので好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用する場合、その使用量は、(D−b)成分中、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは5〜80質量%である。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、マレイミド単位を導入するために、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化してもよい。マレイミド化合物を使用すると、耐熱性が付与される。マレイミド化合物を使用する場合、その使用量は、(D−b)成分中、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N―メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等があり、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記その他の各種官能基含有不飽和化合物を使用した場合、スチレン系樹脂と他のポリマーとをブレンドしたとき、両者の相溶性を向上させる効果が期待できる。かかる効果を達成するために好ましい単量体は、エポキシ基含有不飽和化合物、不飽和酸化合物、および水酸基含有不飽和化合物である。
上記その他の各種官能基含有不飽和化合物の使用量は、(D)成分中に使用される該官能基含有不飽和化合物の合計量で、(D)成分全体に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
又、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方等があり、特にレドックス系を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n―ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n―ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン類、及びα―メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩等を用いることができる。
重合温度は、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは85〜120℃の範囲である。
重合に際し、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、1、1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等が好ましく用いられる。
また,連鎖移動剤を用いる場合、例えば、メルカプタン類、ターピノーレン類、α−メチルスチレンダイマー類等を用いることができる。
また、塊状重合、懸濁重合で製造する場合、溶液重合において説明した重合開始剤、連鎖移動剤等を用いることができる。
上記各重合法によって得た(D)成分中に残存する単量体量は、好ましくは10,000ppm以下、さらに好ましくは5,000ppm以下である。
上記(D)成分のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、更に好ましくは30〜150質量%、特に好ましくは40〜120質量%であり、グラフト率は、下記式(2)により求めることができる。
上記式(2)中、Tは(D)成分1gをアセトン(ただし、ゴム質重合体(D−a)がアクリル系ゴムを使用したものである場合、アセトニトリル)20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは(D)成分1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
本発明に関わる(D)成分中に分散するグラフト化ゴム質重合体粒子の平均粒系は、好ましくは500〜30,000Å、更に好ましくは1,000〜20,000Å、特に好ましくは、1,500〜8,000Åの範囲である。平均粒径は、電子顕微鏡を用いる公知の方法で測定できる。
ここで使用される好ましいアクリル酸エステルとしては、炭素数が1〜18のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、そのアクリル酸エステルのアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状のアルキル基でもよい。具体的には、直鎖状のアルキル基を有するものとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等が挙げられる。また、分岐があるアルキル基を有するものとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。更に、環状アルキル基を有するものとしては、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。アルキル基の炭素数が18個を超えると、単量体の重合性が低下し、共重合が困難になる場合がある。
本発明の(E−1)成分は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の重合法で得ることができるが、特に好ましい方法は、乳化重合法である。乳化重合で使用される乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、更に凝固剤等の化合物については、前記(D)成分で述べたものが全て使用できる。
上記極限粘度〔η〕は、重合時に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等の種類や量を変えることで制御することができる。また、単量体の添加方法、添加時間、更に重合時間、重合温度を変えることによって制御することができる。
上記Mw/Mn比が小さすぎると、分散性が劣り、本発明の効果を有する組成物を得るには機械的混練りに大きな動力が必要となり、生産性が劣る傾向にある。
得られた重合体ラテックスは、上記(D)成分で述べたような公知の方法で回収され、得られた粉体は、粉体粒径が小さい方が分散性に優れるものとなることから、32メッシュ等を通したものを用いることが好ましい。
(E−1)成分を用いた場合、特に成形品表面平滑性に優れ、(E−2)成分を用いた場合、特に耐衝撃性に優れる。また、(E−1)成分と(E−2)成分を(E−1)成分/(E−2)成分=80/20〜20/80(質量比)で併用した場合、特に制電性に優れる。
リチウム塩(F)としては、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム等が好ましく使用され、更に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸リチウムである。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは、三光化学工業社製サンコノール0862−13T、AQ−50T、AQ−75T、TBX−25(商品名)として溶液またはマスターバッチの形態として入手することができる。
ここで使用される非イオン系帯電防止剤(G)としては、多価アルコールエステル化合物、アミン類、アミド類等があり、多価アルコールエステル化合物としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノラウレート等が挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいものは、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート及びこれらを少なくとも20質量%以上含有するものである。
上記非イオン系帯電防止剤は、例えば、花王社製エレクトロストリッパーEA、TS−3B、TS−6B、TS−5、TS−2B(商品名)等として市場より入手できる。
更に、上記充填材の分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤等で処理したものを用いることができ、公知のカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等がある。
上記無機または有機充填材は、本発明の制電性樹脂組成物100質量部に対して、1〜200質量部の範囲で通常使用される。
上記シート及びフィルムは、単層品であってもよく、また他材料と積層した多層品であってもよく、粘着剤等を積層したシート及びフィルムであってもよい。更に前記シート及びフィルムに公知のガスバリア膜を形成させることもできる。
上記多層シートにおいて、本発明の制電性樹脂組成物からなる層の厚みは、安定的に制電性を発現する目的から好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上である。このような多層シート及びフィルムを得る方法として好ましい方法は、Tダイによる共押出、インフレーションによる共押出である。このようにして得られたシートは、必要に応じて真空成形等でトレイ等の成形品を得ることができる。
(1)ゴム質重合体のゲル含率;前記の方法に従った。
(2)ゴム質重合体ラテックスの平均粒子径;
(D)成分の形成に用いるゴム質重合体ラテックスの平均粒子径は、光散乱法で測定した。測定機は、大塚電子社製LPA―3100型を使用し、70回積算でミュムラント法を用いた。尚、(D)成分中の分散グラフト化ゴム質重合体粒子の粒子径は、ラテックス粒子径とほぼ同じであることを電子顕微鏡で確認した。
(3)(D)成分のグラフト率;前記の方法に従った。
(4)(D)成分のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕;前記の方法に従った。
(5)(C)成分(重合体の結合スチレン量、ビニル結合量、数平均分子量、および水素添加率);
(5−1)結合スチレン量;
水素添加前の重合体で測定した。699cm―1のフェニル基の吸収に基づいた赤外法による検量線から求めた。
(5−2)数平均分子量;
水素添加前の重合体で測定した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求めた。
(5−3)ビニル結合量
水素添加前の重合体で測定した。赤外法(モレロ法)により求めた。
(5−4)水素添加率;
水素添加後の重合体で測定した。四塩化エチレンを溶媒として用い、15%濃度で測定した100MHzの1H―NMRスペクトルの不飽和二重結合物のスペクトル減少から算出した。
(6−1)制電性−1
成形品を用い、FTMS−101(米国連邦試験基準)に従い、米国ETS社製 STATIC DECAY METER 406Dを用い、23℃、湿度12%RH条件下で、+5000V印加した後、接地し、50Vまで減衰するまでの時間(秒)を測定した。
(6−2)制電性−2
成形品を23℃、50%RH条件下で24時間状態調製したのち、三菱化学社製ハイレスターUP MCP−450、URSプローグを用い印加電圧100Vで表面抵抗値(Ω)を
測定した。
(7)耐薬品性;
成形品に1%歪みをかけ、成形品表面にメチルアルコールを浸したガーゼを当て、密閉した後、23℃で72時間放置したあとの成形品の表面状態を、下記評価基準に基づき目視評価した。
○;変化無し。
×;クラック発生又は破断。
(8)成形品表面平滑性;
成形品の表面粗さを測定し、平均粗さ(μm)で表した。
(9)耐衝撃性
成形品を1/2インチ径、先端R 1/2インチの打撃棒を用いて、1.5m/secの速度で打ち抜いた際の破壊エネルギー(kgf・cm)を求めた。
(1)(A)成分;オレフィン系樹脂
本発明の(A)成分のオレフィン系樹脂として下記のものを用いた。
A1;日本ポリプロ社製 ノバテックPP FY6C(商品名)
ホモタイプポリプロピレン、メルトフローレート 2.4g/10分
A2;日本ポリプロ社製 ノバテックPP MA3AH(商品名)
ホモタイプポリプロピレン、メルトフローレート 10g/10分
A3;日本ポリプロ社製 ノバテックPP EG8(商品名)
ランダムポリプロピレン、メルトフローレート 0.8g/10分
A4;日本ポリプロ社製 ノバテックPP BC6C(商品名)
ブロックタイプポリプロピレン、メルトフローレート 2.5g/10分
A5;日本ポリプロ社製 ノバテックPP EA9BT(商品名)
ホモタイプポリプロピレン、メルトフローレート 0.5g/10分
A6;日本ポリエチレン社製 ノバテックLD LF122(商品名)
低密度ポリエチレン、メルトフローレート 0.3g/10分
(2−1)ナトリウム化合物含有の(B1)成分として三洋化成工業社製の下記のものを用いた。
B1−1;ペレスタット303(商品名、スルホン酸ナトリウム系化合物含有品)
ポリプロピレン−ポリエーテルブロック共重合体(ナトリウム含有量約4000ppm)
B1−2;ペレスタット230(商品名、スルホン酸ナトリウム系化合物含有品)
ポリオレフィン−ポリエーテルブロック共重合体(ナトリウム含有量約4000ppm)
(2−2)(B2)成分;ナトリウム非含有品
(2−2−1)製造例1;ポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体
ステンレス製オートクレーブに、高分子量ポリプロピレンの熱減成法で得られた低分子量ポリプロピレン(Mn2,500)80部を仕込んだ後、160℃で溶融し、無水マレイン酸7部及び12−アミノドデカン酸14部を加え、窒素ガス通気下、攪拌しながら160℃で1時間反応させた。その後、200℃で20時間反応を行い、ポリオレフィンブロックを得た(B2−a)を得た。(B2−a)の酸価は32.1、Mnは2,800であった。
上記(B2−a)64部、ポリエチレングリコール(Mn2,000)36部、酸化防止剤〔商品名「イルガノックス1010」、チバガイギー社製、以下同じ〕0.3部及び酢酸ジルコニル0.5部をステンレス製オートクレーブに加え、230℃、1mmHg以下の減圧下の条件で4時間重合させ、ポリマーを得た。このポリマーをベルト状で取り出し、ペレット化しブロック重合体(B2)を得た。(B2)のMnは25,000であった。また、このMnと1H−NMR分析より、(B2)の平均繰り返し数は5.0であった。
(3−1)製造例2:スチレンーブタジエンラジアルテレブロック共重合体
撹拌機およびジャケット付きオートクレーブを乾燥、窒素置換し、窒素気流中でシクロヘキサンとテトラヒドロフラン2.75部投入した。スチレン25部を加え、60℃に昇温したのち、n―ブチルリチウム0.175部を含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合反応を60分間行った(1段目)。次いで、スチレン3部、ブタジエン20部の混合物を添加し60分間重合反応を行った(2段目)、また、スチレン3部、ブタジエン20部の混合物を添加し60分間重合反応を行った(3段目)、更にブタジエン29部を添加し転化率100%になるまで重合し完結した。カップリング剤として四塩化珪素0.1部を添加したのち、カップリング反応を完結させた。重合終了後、2,6−ジ−tert―ブチルカテコールを上記で得られた共重合体100部に対して0.3部添加し、その後、溶媒を除去してテーパーブロックを有するカップリングタイプのスチレンーブタジエンブロック共重合体C1を得た。このもののスチレン含有量は31%、数平均分子量は200,000であった。
撹拌機及びジャケット付きオートクレーブを乾燥、窒素置換し、スチレン15部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。次いで、n―ブチルリチウムを添加し、70℃で1時間重合したのち、ブタジエン70部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間重合した。その後スチレン15部を含むシクロヘキサン溶液を添加し1時間重合し、得られたブロック重合体溶液の一部をサンプリングし、2,6−ジ−tert―ブチルカテコールをブロック共重合体100部に対して0.3部添加し、その後、溶媒を加熱除去した。このものの、スチレン含量は60%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量は35%、数平均分子量は74,000であった。残りのブロック共重合体溶液にチタノセンジクロライドとトリエチルアルミニウムをシクロヘキサン中で反応させた溶液を加え、50℃、50kgf/cm2の水素圧下、3時間水素化反応を行った。2,6−ジ−tert―ブチルカテコールをブロック共重合体100部に対して0.3部添加し、その後、溶媒を除去し、ブタジエン部分の水素添加率100%の重合体C2を得た。
(4−1)製造例4;ABS樹脂
撹拌機を備えた内容積7Lのガラス製フラスコに窒素気流中で、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert―ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;2000Å、ゲル含率;85%)30部(固形分)、ブタジエン−スチレンランダム重合体ラテックス(平均粒子径;6000Å、スチレン含量25%)10部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、撹拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部、およびブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert―ドデシルメルカプタン0.05部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に1時間重合を継続させた後、2、2′―メチレンービス(4―エチルー6−tert―ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してゴム強化スチレン系樹脂D1を得た。この樹脂D1のグラフト率は68%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は、0.45dl/gであった。
内容積30Lのリボン翼を備えたジャケット付き重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン75部、アクリロニトリル25部、トルエン20部を連続的に添加した。分子量調節剤としてtert―ドデシルメルカプタン0.12部およびトルエン5部の溶液、および重合開始剤として、1、1′―アゾビス(シクロヘキサンー1−カーボニトリル)0.1部、およびトルエン5部の溶液を連続的に供給した。1基目の重合温度は、110℃にコントロールし、平均滞留時間2.0時間、重合転化率57%であった。得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、分子量調節剤、および重合開始剤の供給量と同量を連続的に取り出し2基目の反応容器に供給した。2基目の反応容器の重合温度は、130℃で行い、重合転化率は75%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、直接未反応単量体と溶剤を脱揮し、極限粘度〔η〕0.48dl/gのスチレン系樹脂D2を得た。
還流冷却器、攪拌機を備えた容量10リットルの反応容器に、イオン交換水250部を添加し、30分間窒素バブリングを行った。乳化剤としてステアリン酸カリウム0.5部を添加し、窒素雰囲気下で、単量体成分としてスチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部を添加後昇温し、内温55℃で重合開始剤として過硫酸カリウム0.12部を2%水溶液で添加した。65℃で2時間重合後、スチレン37.5部、アクリロニトリル12.5部、イオン交換水50部、過硫酸カリウム0.084部(2%水溶液)を一括添加し、引き続き65℃で3時間重合を行った。重合終了時の重合転化率は97%であった。得られた重合体ラテックスを硫酸で凝固させた後、水洗、脱水、乾燥後、粉砕し32メッシュパス品を重合体E1とした。このものの極限粘度〔η〕は、2.0dl/gであり、Mw/Mnは6.5であった。
重量平均分子量が1×106以上であるメタクリル酸メチル系重合体として、三菱レイヨン社製 メタブレンP−531A(商品名、重量平均分子量4.5×106)を用いた。
リチウム塩(F)とし、三光化学工業社製の下記のものを用いた。
F1;サンコノールAQ−50T(商品名)(トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの50%水溶液)
F2;サンコノール0862−20T(商品名)(トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの20%アジピン酸ジブトキシエトキシエチル溶液)
表1記載の制電性樹脂組成物の配合割合で各構成成分をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(シリンダー設定温度220℃)を用いて溶融混練しペレット化した。
得られたペレットを充分に乾燥して得た制電性樹脂組成物と、表1記載の中間層成分を用い、制電性樹脂組成物を両表層とする三層シートを、シート押出装置を用いて得た。
三層シートの厚み0.8mm、中間層の厚み0.7mm、及び両表層の厚みを夫々0.05mmとした。中間層の成分は、表1の配合で混合し三層押出装置の押出機に投入した。
本三層シートを用い、制電性、耐薬品性、成形品表面平滑性及び耐衝撃性を評価し、評価結果を表1に示した。
実施例1〜24で得た三層シートを用いて真空成形(ヒーター温度400℃、予熱時間30〜45秒)を行い、表面平滑性に優れる成形品を得た。
本発明の実施例1〜24は、本発明の制電性樹脂組成物からなる成形品であり、制電性、耐薬品性、成形品表面平滑性及び耐衝撃性に優れる。
比較例1は、本発明の(A)成分の使用量が、発明の範囲外で少ない例であり耐薬品性および成形品表面平滑性が劣る。比較例2は、本発明の(B)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり制電性が劣る。比較例3は、本発明の(B)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり耐薬品性及び成形品表面平滑性が劣る。比較例4は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない量であり耐衝撃性が劣る。比較例5及び7は、本発明の(E)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり成形品表面平滑性が劣る。比較例6及び8は、本発明の(E)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり成形品表面平滑性及び耐衝撃性が劣る。
Claims (8)
- 下記(A)成分7〜91質量%と、下記(B)成分2〜60質量%と、下記(C)成分1.8〜50質量%と、下記(D)成分5〜50質量%と、下記(E)成分0.2〜15質量%とを含有する(但し、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計は100質量%)制電性樹脂組成物。
(A)成分:オレフィン系樹脂。
(B)成分:オレフィン重合体ブロックと親水性重合体ブロックとを含有するブロック共重合体。
(C)成分:芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロックと共役ジエン化合物から主としてなる重合体ブロックとを含有するブロック共重合体及びその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー。
(D)成分:ゴム質重合体(D−a)(但し、上記(C)成分を除く)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(D−b)を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂(D1)、および/または、該ビニル単量体の(共)重合体(D2)からなり、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕が0.2〜1.2dl/g(メチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)であるスチレン系樹脂。
(E)成分:重量平均分子量が1×106以上である、メタクリル酸メチルを主体とする(共)重合体および/または極限粘度〔η〕が1.5dl/g以上(ジメチルホルムアミドを用いて、30℃で測定)である、芳香族ビニル化合物を主体とする(共)重合体。 - 上記(B)成分が、ナトリウムおよびカリウムの合計の含有量が500ppm以上のブロック共重合体(B1)とナトリウムおよびカリウムの合計含有量が0〜500ppm未満のブロック共重合体(B2)とからなり、ブロック共重合体(B1)/ブロック共重合体(B2)比が1/99〜90/10(質量比)であることを特徴とする請求項1記載の制電性樹脂組成物。
- 上記(B)成分が、ナトリウムおよびカリウムの合計含有量が0〜500ppm未満のブロック共重合体(B2)のみからなることを特徴とする請求項1記載の制電性樹脂組成物。
- 上記(B)成分が、ナトリウムおよび/またはカリウムをスルホン酸塩の形態で含有する請求項1〜3の何れか1項に記載の制電性樹脂組成物。
- 更に、上記制電性樹脂組成物100質量部に対して、リチウム塩(F)を0.01〜5質量部含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の制電性樹脂組成物。
- 上記リチウム塩(F)が、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項5記載の制電性樹脂組成物。
- 請求項1〜6記載の何れか1項に記載の制電性樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1〜6記載の何れか1項に記載の制電性樹脂組成物からなるシートまたはフィルム。
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