JP2007281439A - 圧電セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた圧電特性を示すとともに、温度によって圧電特性が変化し難い等、温度依存性が小さい圧電/電歪素子を提供する。
【解決手段】圧電セラミックスからなる圧電/電歪部2と、圧電/電歪部2に電気的に接続される電極4,5とを備えた圧電/電歪素子51である。圧電セラミックスが、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、圧電/電歪部2が、圧電セラミックスの相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成されている。
【選択図】図6

Description

本発明は、温度依存性が小さく、優れた圧電特性を示す圧電セラミックス、及びその製造方法、並びに、温度依存性が小さく、優れた圧電特性を示す圧電/電歪素子に関する。
従来、サブミクロンのオーダーで微小変位を制御できる素子として、圧電/電歪素子が知られている。特に、セラミックスからなる基体上に、圧電/電歪磁器組成物(以下、単に「圧電セラミックス」という)からなる圧電/電歪部(圧電/電歪部)と、電圧が印加される電極部とを積層した圧電/電歪素子は、微小変位の制御に好適であることの他、高電気機械変換効率、高速応答性、高耐久性、及び省消費電力等の優れた特性を有するものである。これらの圧電/電歪素子は圧電型圧力センサ、走査型トンネル顕微鏡のプローブ移動機構、超精密加工装置における直進案内機構、油圧制御用サーボ弁、VTR装置のヘッド、フラットパネル型の画像表示装置を構成する画素、又はインクジェットプリンタのヘッド等、様々な用途に用いられている。
また、圧電/電歪部を構成する圧電セラミックスについても、種々検討がなされている。例えば、近年、酸性雨による鉛(Pb)の溶出等、地球環境に及ぼす影響が問題視される傾向にあるため、環境に対する影響を考慮した圧電/電歪材料として、鉛(Pb)を含有しなくとも良好な圧電/電歪特性を示す圧電体や圧電素子を提供可能な(LiNaK)(NbTa)O系の圧電セラミックスの開発がなされている(例えば、特許文献1参照)。
圧電セラミックスは強誘電体であるため、電子機器等に組み込んでその性質(圧電特性)を利用するには、分極処理を実施する必要がある。この分極処理とは、高電圧を印加して自発分極の向きを特定方向に揃える処理をいい、圧電セラミックスに適当な温度条件下で電圧印加すること等により実施される。
関連する従来技術として、異なる温度領域で分極処理を二回実施する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、得られる圧電セラミックスの機械的品質係数Qmを向上させるべく、分極処理後に加熱する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。更には、所定の等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる、特定の結晶面が配向した結晶配向セラミックスとその製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、特許文献2〜4で開示された方法によって分極処理等された圧電セラミックスであっても、温度によって圧電特性が変化し易い等、温度依存性が大きいことが問題となっている。温度依存性の大きい圧電セラミックスを用いた圧電/電歪素子は、温度条件が変化した場合の応答が不安定になり易く、より微量な変位が要求される用途には採用し難いといった問題がある。
特開2003−221276号公報 特開2005−228865号公報 特開2004−2051号公報 特開2004−300019号公報
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、優れた圧電特性を示すとともに、温度によって圧電特性が変化し難い等、温度依存性の小さい圧電セラミックス、及びその効率的な製造方法、並びに温度依存性が小さく、優れた圧電特性を示す圧電/電歪素子を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスを、その相転移点よりも高い所定の温度条件下で分極処理することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、圧電セラミックスに対して、駆動電界が負荷される方向とは逆方向の分極電界が負荷される条件下で分極処理することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す圧電セラミックス、及びその製造方法、並びに圧電/電歪素子が提供される。
[1]圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備えた圧電/電歪素子であって、前記圧電セラミックスが、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスの前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成された圧電/電歪素子(以下、「第一の圧電/電歪素子」ともいう)。
[2]圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備え、前記圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能な圧電/電歪素子であって、前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスに対して、前記駆動電界が負荷される前記所定の方向とは逆方向の分極電界が負荷される条件下で分極処理されて形成された圧電/電歪素子(以下、「第二の圧電/電歪素子」ともいう)。
[3]前記圧電セラミックスは、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスの前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理された前記[2]に記載の圧電/電歪素子。
[4]前記圧電セラミックスの組成が、下記一般式(1)で表される前記[1]〜[3]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
{Li(Na1−x1−y(Nb1−zTa)O (1)
(但し、前記一般式(1)中、a=0.90〜1.2、x=0.2〜0.8、y=0.02〜0.2、及びz=0.05〜0.5である)
[5]歪率の最大値に対する歪率の最小値の比で表される歪率比の、25〜70℃の範囲内における最大値と最小値の差が、0.2以下である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
[6]前記圧電/電歪部の、温度上昇させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度と、温度下降させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度の差の絶対値が、15℃以下である前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
[7]前記圧電/電歪部の、X線回折法によって25℃で測定されるチャート上の、2θ=45°±1に現れるピークの強度(S)と、2θ=46°±1に現れるピークの強度(S)の比が、S:S=1:5〜5:1である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
[8]前記圧電/電歪部の、25℃における正方晶の含有量(T)と斜方晶の含有量(R)の質量比が、T:R=2:8〜10:0である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
[9]前記圧電/電歪部と前記電極の形状がそれぞれ膜状であるとともに、セラミックスからなる基体を更に備え、前記圧電/電歪部が前記基体上に直接又は前記電極を介して固着された前記[1]〜[8]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
[10]アクチュエータ又はセンサとして使用される前記[1]〜[9]のいずれかに記載の圧電/電歪素子。
[11]圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備えた圧電/電歪素子の製造方法であって、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスを、前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理して前記圧電/電歪部を形成することを含む圧電/電歪素子の製造方法。
[12]圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備え、前記圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能な圧電/電歪素子の製造方法であって、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスに対して、前記駆動電界が負荷される前記所定の方向とは逆方向の分極電界を負荷する条件下で分極処理して前記圧電/電歪部を形成することを含む圧電/電歪素子の製造方法。
[13]前記圧電セラミックスを、前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理する前記[12]に記載の圧電/電歪素子の製造方法。
本発明の第一及び第二の圧電/電歪素子は、優れた圧電特性を示すとともに、温度によって圧電特性が変化し難い等、温度依存性が小さいといった効果を奏するものである。
本発明の圧電/電歪素子の製造方法によれば、優れた圧電特性を示すとともに、温度によって圧電特性が変化し難い等、温度依存性の小さい圧電/電歪素子を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。なお、単に「本発明(本実施形態)の圧電/電歪素子」というときは、第一の圧電/電歪素子と第二の圧電/電歪素子のいずれをも意味する。
本発明の第一の圧電/電歪素子の一実施形態は、圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備えた圧電/電歪素子であり、圧電セラミックスが、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、圧電/電歪部が、圧電セラミックスの相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成されたものである。以下、その詳細について説明する。
本実施形態の第一の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部は、圧電セラミックスを所定の条件で分極することによって形成される部分である。ここで、本明細書にいう「圧電セラミックス」とは、圧電/電歪部を形成するために用いられる圧電/電歪材料であって、分極処理されることによって圧電特性を発現するものをいう。なお、圧電セラミックスの組成は、形成される圧電/電歪部と略同一の一般式で表される。
この圧電セラミックスは、その結晶構造が、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るセラミックス材料である。より具体的には、圧電セラミックスは、高温条件下では立方晶であり、温度下降に伴って正方晶へと変化する。なおも温度下降させると、相転移点を境に斜方晶へと相転移する。
本実施形態の第一の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部は、この圧電セラミックスを、正方晶と斜方晶の間で可逆的に相転移する相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理することによって形成された部分である。なお、圧電セラミックスの相転移点は、その組成にもよるが、通常、−30〜100℃である。本実施形態の第一の圧電/電歪素子の圧電/電歪部は、相転移点よりも高い所定の温度範囲内で分極処理されたものであるために、優れた圧電特性を発揮するとともに、従来の圧電/電歪素子に比して温度依存性が小さいといった特性を示す。
「温度依存性が小さい」ことの具体例としては、歪率や誘電率の温度による変化が小さい点や、温度上昇時に測定される歪率や誘電率の値と、温度下降時に測定される歪率や誘電率の値との差が小さい(即ち、温度履歴を生じ難い)点等を挙げることができる。即ち、本実施形態の第一の圧電/電歪素子は、従来の圧電/電歪素子に比して温度の影響を受け難いものであるために、温度が変化する状況下であっても微量の変位が要求される用途に好適に採用される。
分極処理の温度は、相転移点を超える温度〜50℃高い温度である。但し、本実施形態の第一の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部は、相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成された部分であることが、更に優れた圧電特性を示すとともに温度依存性がより小さくなるために好ましく、相転移点よりも5〜20℃高い温度条件下で分極処理されて形成された部分であることが更に好ましい。
次に、本発明の第二の圧電/電歪素子の一実施形態について説明する。本実施形態の第二の圧電/電歪素子の一実施形態は、圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備え、圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能なものであり、圧電/電歪部が、圧電セラミックスに対して、駆動電界が負荷される前記所定の方向とは逆方向の分極電界が負荷される条件下で分極処理されて形成されたものである。以下、その詳細について説明する。
本実施形態の第二の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部は、圧電セラミックスを所定の条件で分極することによって形成される部分である。また、本実施形態の第二の圧電/電歪素子は、その圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能である。
この圧電/電歪部は、所望とする形状に成形された圧電セラミックスに対して、前述の駆動電界が負荷される方向と逆方向に分極電界が負荷される条件下で分極処理されて形成された部分である。このように、実使用に際して負荷される駆動電界の方向とは逆の方向に分極電界が負荷されたことにより、優れた圧電特性を発揮するとともに、従来の圧電/電歪素子に比して温度依存性が小さいといった特性を示すことになる。また、本実施形態の第二の圧電/電歪素子は、従来の圧電/電歪素子に比して温度の影響を受け難いものであるために、温度が変化する状況下であっても微量の変位が要求される用途に好適に採用される。
本実施形態の第二の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部は、圧電セラミックスによって形成されているが、この圧電セラミックスは、例えば、その結晶構造が相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものである。なお、圧電セラミックスの相転移点は、その組成にもよるが、通常、−30〜100℃である。本実施形態の第二の圧電/電歪素子においては、このような圧電セラミックスが、相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成された部分であることが、更に優れた圧電特性を示すとともに温度依存性がより小さくなるために好ましく、相転移点よりも5〜20℃高い温度条件下で分極処理されて形成された部分であることが更に好ましい。
本実施形態の圧電/電歪素子は、温度依存性が小さいものである。より具体的には、圧電/電歪部の、温度上昇させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度と、温度下降させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度の差の絶対値が、好ましくは15℃以下であり、更に好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下である。
また、本実施形態の圧電/電歪素子の圧電/電歪部(圧電セラミックス)は、概ね配向していないものである点において、特許文献4において開示された結晶配向セラミックスと異なる。即ち、本実施形態の圧電/電歪素子の圧電/電歪部の、25℃における、正方晶の含有量(T)と斜方晶の含有量(R)の質量比は、通常、T:R=2:8〜10:0であり、好ましくはT:R=2:8〜8:2、更に好ましくはT:R=3:7〜7:3である。
一方、本実施形態の圧電/電歪素子の圧電/電歪部に含有される結晶相(正方晶及び斜方晶)の割合は、X線回折法によって測定及び算出することができる。より具体的には、X線回折法によって25℃で測定されるチャート上の、2θ=45°±1に現れるピークの強度(S)は、a軸方位に相当する。また、同一の条件下、2θ=46°±1に現れるピークの強度(S)は、c軸方位に相当する。このため、SとSの比によって、正方晶と斜方晶の含有割合が推測される。ここで、本実施形態の圧電/電歪素子の圧電/電歪部のこれらのピーク強度の比は、通常、S:S=1:5〜5:1であり、好ましくはS:S=1:4〜4:1、更に好ましくはS:S=1:3〜3:1である。
本実施形態の圧電/電歪素子の圧電/電歪部は、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスを使用して所定の条件下で形成された部分であれば、その組成は特に限定されないが、具体的には下記一般式(1)で表されるものを挙げることができる。
{Li(Na1−x1−y(Nb1−zTa)O (1)
(但し、前記一般式(1)中、a=0.90〜1.2(好ましくはa=1.00〜1.2)、x=0.2〜0.8、y=0.02〜0.2、及びz=0.05〜0.5である)
なお、圧電セラミックスの組成が、前記一般式(1)で表される場合において、この一般式(1)中のBサイト(構成金属元素として、Nb及びTaが含まれるサイト)には、NbとTa以外の遷移金属元素が更に含まれていてもよい。NbとTa以外の遷移金属元素としては、例えばV、W、Cu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Ti、Zr、Mo、Zn等を挙げることができる。また、圧電セラミックスの組成が、前記一般式(1)で表される場合において、この一般式(1)中のAサイト(構成金属元素として、Li、Na、及びKが含まれるサイト)には、Li、Na、及びK以外の元素が更に含まれていてもよい。Li、Na、及びK以外の元素としては、例えばAg、La、Ba、Ca、Sr等を挙げることができる。
更に、圧電セラミックスの組成が、前記一般式(1)で表される場合において、この一般式(1)中、更にSbが含まれることが、発生する歪量がより大きく、更に優れた圧電特性を示す圧電/電歪素子を製造可能となるために好ましい。
圧電/電歪部を形成するために用いられる圧電セラミックスを製造するには、先ず、圧電セラミックスの組成中の各金属元素の割合(モル比)を満たすように、それぞれの金属元素を含有する化合物を秤量し、ボールミル等の混合方法により混合して混合スラリーを得る。なお、それぞれの金属元素を含有する化合物の種類は特に限定されないが、各金属元素の酸化物、又は炭酸塩等が好適に用いられる。
得られた混合スラリーを、乾燥器を使用するか、又は濾過等の操作によって乾燥することにより、混合原料を得ることができる。得られた混合原料を仮焼、及び必要に応じて粉砕することにより、圧電セラミックスを得ることができる。なお、仮焼は750〜1300℃の温度で行えばよい。また、粉砕はボールミル等の方法により行えばよい。次いで、得られた圧電セラミックスを、必要に応じて適当な形状に成形した後、前述の特定条件下で分極処理すれば、圧電/電歪部とすることができる。
圧電/電歪部を構成する結晶粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜8.5μmであることが更に好ましく、0.3〜7μmであることが特に好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、圧電/電歪部中で分域が十分に発達しない場合があるため、圧電特性の低下を生ずる場合がある。一方、平均粒径が10μm超であると、圧電/電歪部中の分域は十分に発達する反面、分域が動き難くなり、圧電特性が小さくなる場合がある。なお、本実施形態の圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪部及び電極は、その形状を種々の形状とすることができる。具体的にはブロック状のもの(いわゆるバルク体)や、シート状(膜状)のもの等を好適例として挙げることができる。
次に、本発明の圧電/電歪素子の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。図6は、本発明の圧電/電歪素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。図6に示すように、本実施形態の圧電/電歪素子51は、セラミックスからなる基体1と、膜状の圧電/電歪部2と、この圧電/電歪部2に電気的に接続される膜状の電極4,5とを備え、圧電/電歪部2が、電極4を介在させた状態で基体1上に固着されているものである。なお、圧電/電歪部は、電極を介在させることなく、直接、基体上に固着されていてもよい。なお、本明細書にいう「固着」とは、有機系、無機系の一切の接着剤を用いることなく、圧電/電歪部2と、基体1又は電極4との固相反応により、両者が緊密一体化した状態のことをいう。
本実施形態の圧電/電歪素子51の圧電/電歪部2は、圧電セラミックスが、所定の温度条件下で分極処理されて形成された部分である。また、図8に示すように、本実施形態の圧電/電歪素子51は、圧電/電歪部2,3を複数、及び電極4,5,6を複数備え、複数の圧電/電歪部2,3が、複数の電極4,5,6により交互に挟持・積層されてなる構成とすることも好ましい。この構成は、いわゆる多層型の構成であり、低電圧で大きな屈曲変位を得ることができるために好ましい。
本実施形態の圧電/電歪素子51(図6参照)は、圧電/電歪部2の厚みが0.5〜50μmであることが好ましく、0.8〜40μmであることが更に好ましく、1.0〜30μmであることが特に好ましい。圧電/電歪部2の厚みが0.5μm未満であると、緻密化が不十分となる場合がある。一方、圧電/電歪部2の厚みが50μmを超えると、焼成時の圧電セラミックスの収縮応力が大きくなり、基体1が破壊されるのを防止するため、より厚い基体1が必要となり、素子の小型化への対応が困難になる場合がある。なお、図8に示すように、圧電/電歪素子51の構成がいわゆる多層型である場合における圧電/電歪部2,3の厚みとは、圧電/電歪部2,3のそれぞれの厚みをいう。
本発明の実施形態である圧電/電歪素子を構成する基体はセラミックスからなるものであるが、このセラミックスの種類に特に制限はない。もっとも、耐熱性、化学的安定性、及び絶縁性の点から、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、及びガラスからなる群より選択される少なくとも一種を含むセラミックスが好ましい。中でも、機械的強度が大きく、靭性に優れる点から安定化された酸化ジルコニウムが更に好ましい。なお、本明細書にいう「安定化された酸化ジルコニウム」とは、安定化剤の添加により結晶の相転移を抑制した酸化ジルコニウムをいい、安定化酸化ジルコニウムの他、部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。
安定化された酸化ジルコニウムとしては、酸化ジルコニウムに安定化剤として、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、又は希土類金属の酸化物を、1〜30mol%含有するものを挙げることができる。中でも、振動部の機械的強度が特に高い点で、酸化イットリウムを安定化剤として含有させたものが好ましい。この際、酸化イットリウムは、1.5〜6mol%含有させることが好ましく、2〜4mol%含有させることが更に好ましい。また、更に酸化アルミニウムを0.1〜5mol%含有させたものが好ましい。安定化された酸化ジルコニウムの結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相等であってもよいが、主たる結晶相が、正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相であるものが、強度、靭性、及び耐久性の観点から好ましい。
なお、基体の厚みは、1μm〜1mmが好ましく、1.5〜500μmが更に好ましく、2〜200μmが特に好ましい。基体の厚みが1μm未満であると、圧電/電歪素子の機械的強度が低下する場合がある。一方、1mmを超えると圧電/電歪部に電圧を印加した場合に、発生する収縮応力に対する基体の剛性が大きくなり、圧電/電歪部の屈曲変位が小さくなってしまう場合がある。
但し、図7に示すように、基体1の形状が、その一表面に固着面1aが形成された、上記の厚みを有する薄肉部1cと、この固着面1aに対応する部分以外の部分に配設された、薄肉部1cよりも厚みのある厚肉部1bとを備えた形状であってもよい。なお、電極4(又は圧電/電歪部)は、固着面1aに略対応する領域で配設される。基体1がこのような形状であると、屈曲変位が十分に大きく、かつ機械的強度の大きい圧電/電歪素子とすることができる。また、図7に示す基体1の形状が連続して形成された、図9に示すような共通基体20を使用し、第一の圧電/電歪部12、第二の圧電/電歪部13、及び電極4,5,6を含む複数の圧電/電歪素子単位10をこの共通基体20上に配設することもできる。
本発明の実施形態である圧電/電歪素子における基体の表面形状(図6における、電極4が固着される面の形状)について特に制限はなく、例えば、長方形、正方形、三角形、楕円形、真円形、R付正方形、R付長方形、又はこれらを組み合わせた複合形等の表面形状を挙げることができる。また、基体全体の形状についても特に制限はなく、適当な内部空間を有するカプセル形状であってもよい。
本実施形態の圧電/電歪素子において、電極は圧電/電歪部に電気的に接続されるものであり、各圧電/電歪部の間に配設されることが好ましい。また、電極は、圧電/電歪部の実質上屈曲変位等に寄与する領域を含んだ状態で配設されることが好ましく、例えば、図8に示すように第一の圧電/電歪部12と第二の圧電/電歪部13の形成面のうちの、その中央部分付近を含む80面積%以上の領域において電極4,5,6が配設されていることが好ましい。
本実施形態の圧電/電歪素子においては、電極の材質として、Pt、Pd、Rh、Au、Ag、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属を挙げることができる。中でも、圧電/電歪部を焼成する際の耐熱性が高い点で、白金、又は白金を主成分とする合金が好ましい。
本実施形態の圧電/電歪素子においては、電極の厚みは15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。15μmを超えると電極が緩和層として作用し、屈曲変位が小さくなる場合がある。なお、実質的な電極としての機能を発揮させるといった観点からは、電極の厚みは0.05μm以上であればよい。
次に、本発明の圧電/電歪素子の製造方法について、圧電/電歪部と電極の形状がそれぞれ膜状であるとともに、セラミックスからなる基体を備えたもの(圧電/電歪膜型素子)を例に挙げて説明する。先ず、セラミックスからなる基体上に、又は基体表面に形成された電極上に、圧電セラミックスからなる層を形成する。電極を形成する方法としては、例えば、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、PVD、イオンプレーティング、CVD、メッキ、エアロゾルデポジション、スクリーン印刷、スプレー、又はディッピング等の方法を挙げることができる。なかでも、基体、及び圧電/電歪部との接合性の点でスパッタリング法、又はスクリーン印刷法が好ましい。形成された電極は、その材質や形成方法により適度な温度が選択されるが、500〜1400℃程度の熱処理により、基体及び/又は圧電/電歪部と一体化することができる。この熱処理は電極を形成する毎に行ってもよいが、圧電セラミックスからなる層についてする焼成と一括して行ってもよい。但し、圧電セラミックスからなる層が形成された後では、圧電セラミックスからなる層の焼成温度を超える温度での熱処理は行わない。
圧電セラミックスからなる層を基体上に形成する方法としては、例えば、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、PVD、イオンプレーティング、CVD、メッキ、ゾルゲル、エアロゾルデポジション、スクリーン印刷、スプレー、又はディッピング等の方法を挙げることができる。中でも、簡単に精度の高い形状、厚さで連続して形成することができる点でスクリーン印刷法が好ましい。なお、圧電/電歪部及び電極を複数備え、これらが交互に挟持・積層された圧電/電歪膜型素子を作製する場合には、基体上に形成した圧電セラミックスからなる層の上に、前述の方法と同様の方法により電極を形成する。なお、この電極上に圧電セラミックスからなる層、及び電極を、所望とする多層となるまで交互に繰り返し形成する。
その後、圧電セラミックスからなる層、及び電極を基体上に交互に積層することにより得られた積層体を一体的に焼成する。この焼成により、膜状の圧電/電歪部を基体に直接又は膜状の電極を介して固着させることができる。なお、この焼成は必ずしも一体的に実施する必要はなく、圧電セラミックスからなる層を一層形成する毎に順次実施してもよいが、生産効率の観点からは電極も含めた状態で一体的に焼成することが好ましい。
このときの焼成温度は800〜1250℃が好ましく、900〜1200℃が更に好ましい。800℃未満では、基体又は電極と、圧電/電歪部との固着が不完全であったり、圧電/電歪部の緻密性が不十分となる場合がある。一方、1250℃を超えると、得られる圧電/電歪部の圧電特性がかえって低下する場合がある。また、焼成時の最高温度保持時間は1分以上10時間以下が好ましく、5分以上4時間以下が更に好ましい。最高温度保持時間が1分未満では、圧電/電歪部の緻密化が不十分となり易く、所望の特性が得られない場合があり、最高温度保持時間が10時間を超えると、かえって圧電/電歪特性が低下するという不具合が発生する場合もある。その後、前述の所定の温度条件下で分極処理を実施すれば、目的とする圧電/電歪素子を得ることができる。
また、圧電/電歪部の全体形状をシート状とするには、圧電セラミックスに可塑剤や分散剤や溶媒等を加えて、ボールミル等の一般的な混合装置を用いてスラリー化した後、ドクターブレード等の一般的なシート成形機によりシート状に成形することができる。
更に、シート状に成形された圧電/電歪部の表面上に、電極となる導体膜(導電材料を主成分とする膜)をスクリーン印刷等の手法により所定のパターンで形成し、その後、圧電セラミックスからなる層、及び電極とを交互に積層・圧着して、所定の厚さを有するセラミックグリーン積層体を得ることができる。このとき、例えばパンチやダイによる打ち抜き加工を行ったシートを積層することにより、セル構造を形成することもできる。得られたセラミックグリーン積層体を一体的に焼成すれば、焼成積層体を得ることができる。なお、セル構造を形成した場合には、セル駆動型の圧電/電歪素子を得ることができる。なお、この焼成は必ずしも一体的に実施する必要はなく、圧電セラミックスからなる層を一層形成する毎に順次実施してもよいが、生産効率の観点からは電極も含めた状態で一体的に焼成することが好ましい。
上述のようにして得られる本実施形態の圧電/電歪素子は、極めて圧電特性に優れたものであるとともに、温度依存性が小さいといった特性を有するものである。このため、本実施形態の圧電/電歪素子は、歪率比(=歪率最小値/歪率最大値)の、25〜70℃の範囲内における最大値と最小値の差が、通常、0.2以下、好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.06以下である。また、25〜70℃の範囲内における歪率の温度変化率が、通常、10%以下、好ましくは8%以下、更に好ましくは5%以下である。従って、本実施形態の圧電/電歪素子は、その優れた特性を生かし、アクチュエータ又はセンサとして好適に用いられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[歪率(電界誘起歪)]:電極上に歪ゲージを貼付し、4kV/mmの電圧を印加した場合における、電界と垂直な方向の歪量を歪率(電界誘起歪)(ppm)として測定した。
[誘電率]:インピーダンスアナライザーを使用し、周波数=1kHz、電圧=0.5Vの条件で測定した。
[d31定数]:日本電子材料工業会標準規格「圧電セラミック振動子の電気的試験方法 EMAS−6100」に従い測定した。
(実施例1)
所定量のLiCO、CNa・HO、CK、Nb、及びTaを、アルコール中で16時間混合して混合物を調製した。得られた混合物を、750℃、5時間仮焼した後、ボールミルで粉砕することにより、その組成が「(Li0.052Na0.5020.4461.01(Nb0.918Ta0.082)O」で表される圧電セラミックス(相転移点=68℃)を調製した。得られた圧電セラミックスを使用し、2t/cmの圧力で直径20mm×厚み6mmの大きさに圧粉成形して圧粉成形体を得た。得られた圧粉成形体をアルミナ容器内に収納し、1000℃で3時間焼成して焼成体を得た。得られた焼成体を、12mm×3mm×1mmの大きさに加工し、その両面に銀ペーストを塗布して電極を焼き付け、これを75℃のシリコンオイル中に浸漬するとともに、電極間に4kV/mmの直流電圧を15分間印加することにより分極処理して圧電/電歪素子(実施例1)を得た。
得られた圧電/電歪素子の歪率比(=歪率最小値/歪率最大値)を表1に示す。また、得られた圧電/電歪素子の、25〜70℃における歪率(ppm)、及び歪率比(=各温度における歪率最小値/歪率最大値)を表2に示す。
(比較例1)
25℃のシリコンオイル中に浸漬して分極処理したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様の操作により圧電/電歪素子(比較例1)を得た。得られた圧電/電歪素子の歪率比(=歪率最小値/歪率最大値)を表1に示す。また、得られた圧電/電歪素子の、25〜70℃における歪率(ppm)、及び歪率比(=各温度における歪率最小値/歪率最大値)を表2に示す。
Figure 2007281439
Figure 2007281439
なお、実施例1及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率(ppm)をプロットしたグラフを図1に示す。また、実施例1及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率比をプロットしたグラフを図2に示す。
(考察)
表1,2に示す結果から、実施例1の圧電/電歪素子は、比較例1の圧電/電歪素子に比して、歪率比が1により近いものであることが明らかである。これは、実施例1の圧電/電歪素子の方が、温度依存性が小さいものであることを示している。また、図1,2に示す結果から、実施例1の圧電/電歪素子は、比較例1の圧電/電歪素子に比して、歪率の温度によるバラツキが少ないことが明らかである。
(実施例2)
所定量のLiCO、CNa・HO、CK、Nb、及びTaを、アルコール中で16時間混合して混合物を調製した。得られた混合物を、750℃、5時間仮焼した後、ボールミルで粉砕することにより、その組成が「(Li0.057Na0.5190.4241.01(Nb0.918Ta0.082)O」で表される圧電セラミックス(相転移点=58℃)を調製した。得られた圧電セラミックスを使用し、2t/cmの圧力で直径20mm×厚み6mmの大きさに圧粉成形して圧粉成形体を得た。得られた圧粉成形体をアルミナ容器内に収納し、1000℃で3時間焼成して焼成体を得た。得られた焼成体を、12mm×3mm×1mmの大きさに加工し、その両面に銀ペーストを塗布して電極を焼き付け、これを75℃のシリコンオイル中に浸漬するとともに、電極間に4kV/mmの直流電圧を15分間印加することにより分極処理して圧電/電歪素子(実施例2)を得た。
得られた圧電/電歪素子の、25℃から100℃へと温度上昇させた場合の各温度で測定された誘電率ε、及び100℃から25℃へと温度下降させた場合の各温度で測定された誘電率εを表3に示す。また、実施例2の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して誘電率をプロットしたグラフを図4に示す。
(比較例2)
25℃のシリコンオイル中に浸漬して分極処理したこと以外は、前述の実施例2の場合と同様の操作により圧電/電歪素子(比較例2)を得た。得られた圧電/電歪素子の、25℃から100℃へと温度上昇させた場合の各温度で測定された誘電率ε、及び100℃から25℃へと温度下降させた場合の各温度で測定された誘電率εを表3に示す。また、比較例2の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して誘電率をプロットしたグラフを図3に示す。
Figure 2007281439
(考察)
表3、及び図3,4に示す結果から、実施例2の圧電/電歪素子は、比較例2の圧電/電歪素子に比して、温度上昇時に測定される誘電率(ε)と、温度下降時に測定される誘電率(ε)の値との差が小さいことが明らかである。即ち、図3,4を比較しても明らかなように、実施例2の圧電/電歪素子は、温度上昇時と温度下降時において測定される誘電率がほぼ同等である。また、実施例2の圧電/電歪素子は、温度上昇時に測定される誘電率のうちの最大値が測定される温度と、温度下降時に測定される誘電率のうちの最大値が測定される温度がほぼ同じである。これらの事実より、実施例2の圧電/電歪素子は、温度履歴を生じ難いものであることが明らかである。
(実施例3,4、比較例3)
25℃、65℃、及び85℃のシリコンオイル中にそれぞれ浸漬して分極処理したこと以外は、前述の実施例2の場合と同様の操作により圧電/電歪素子(実施例3,4、比較例3)を得た。得られた圧電/電歪素子のd31定数、及び歪率(ppm)を表4に示す。また、実施例3の圧電/電歪素子の圧電/電歪部のXRDチャートを図5に示す。
Figure 2007281439
(考察)
表4に示す結果から、実施例3,4の圧電/電歪素子は、比較例3の圧電/電歪素子に比して歪率の値が大きく、良好な圧電特性を示すものであることが明らかである。また、相転移点よりも7℃高い温度で分極処理した実施例3の圧電/電歪素子は、相転移点よりも27℃高い温度で分極処理した実施例4の圧電/電歪素子に比して、更に歪率の値とd31定数の値が大きく、より圧電特性に優れたものであることが明らかである。
(実施例5)
その駆動電界が負荷される方向を、分極電界が負荷された方向と逆の方向になるように電極の向きを設定したこと以外は、実施例1の圧電/電歪素子と同一の圧電/電歪素子(実施例5)を得た。
実施例1,5、及び比較例1の圧電/電歪素子の、25〜70℃における歪率(ppm)、及び歪率比(=各温度における歪率最小値/歪率最大値)を表5に示す。また、実施例1,5、及び比較例1の圧電/電歪素子の歪率比(=歪率最小値/歪率最大値)を表6に示す。更に、実施例1,5及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率(ppm)をプロットしたグラフを図10に示す。また、実施例1,5及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率比をプロットしたグラフを図11に示す。
Figure 2007281439
Figure 2007281439
(考察)
表5,6に示す結果から、実施例1,5の圧電/電歪素子は、比較例1の圧電/電歪素子に比して、歪率比が1により近いものであることが明らかである。これは、実施例1,5の圧電/電歪素子の方が、温度依存性が小さいものであることを示している。また、また、図10,11に示す結果から、実施例1,5の圧電/電歪素子は、比較例1の圧電/電歪素子に比して、歪率の温度によるバラツキが少ないことが明らかである。
更に、駆動電界が負荷される方向が、分極電界が負荷された方向と逆方向である実施例5の圧電/電歪素子は、駆動電界が負荷される方向が、分極電界が負荷された方向と同方向である実施例1の圧電/電歪素子に比して、より温度依存性が小さく、かつ、歪量の大きいものであることが明らかである。
本発明の圧電/電歪素子は、各種のアクチュエータ、センサ等として好適である。
実施例1及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率(ppm)をプロットしたグラフである。 実施例1及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率比をプロットしたグラフである。 比較例2の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して誘電率をプロットしたグラフである。 実施例2の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して誘電率をプロットしたグラフである。 実施例3の圧電/電歪素子の圧電/電歪部のXRDチャートである。 本発明の圧電/電歪素子の一の実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の圧電/電歪素子の他の実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の圧電/電歪素子の、更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の圧電/電歪素子の、更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。 実施例1,5、及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率(ppm)をプロットしたグラフである。 実施例1,5、及び比較例1の圧電/電歪素子の、温度(℃)に対して歪率比をプロットしたグラフである。
符号の説明
1a:固着面、1b:厚肉部、1c:薄肉部、1:基体、2,3:圧電/電歪部、4,5,6:電極、10:圧電/電歪素子単位、12:第一の圧電/電歪部、13:第二の圧電/電歪部、20:共通基体、51:圧電/電歪素子

Claims (13)

  1. 圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備えた圧電/電歪素子であって、
    前記圧電セラミックスが、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、
    前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスの前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理されて形成された圧電/電歪素子。
  2. 圧電セラミックスからなる圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備え、前記圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能な圧電/電歪素子であって、
    前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスに対して、前記駆動電界が負荷される前記所定の方向とは逆方向の分極電界が負荷される条件下で分極処理されて形成された圧電/電歪素子。
  3. 前記圧電セラミックスは、相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得るものであり、
    前記圧電/電歪部が、前記圧電セラミックスの前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理された請求項2に記載の圧電/電歪素子。
  4. 前記圧電セラミックスの組成が、下記一般式(1)で表される請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
    {Li(Na1−x1−y(Nb1−zTa)O (1)
    (但し、前記一般式(1)中、a=0.90〜1.2、x=0.2〜0.8、y=0.02〜0.2、及びz=0.05〜0.5である)
  5. 歪率の最大値に対する歪率の最小値の比で表される歪率比の、25〜70℃の範囲内における最大値と最小値の差が、0.2以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  6. 前記圧電/電歪部の、
    温度上昇させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度と、
    温度下降させる途中で測定される誘電率のうちの最大値(ε)が測定される温度の差の絶対値が、15℃以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  7. 前記圧電/電歪部の、X線回折法によって25℃で測定されるチャート上の、2θ=45°±1に現れるピークの強度(S)と、2θ=46°±1に現れるピークの強度(S)の比が、S:S=1:5〜5:1である請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  8. 前記圧電/電歪部の、25℃における正方晶の含有量(T)と斜方晶の含有量(R)の質量比が、T:R=2:8〜10:0である請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  9. 前記圧電/電歪部と前記電極の形状がそれぞれ膜状であるとともに、セラミックスからなる基体を更に備え、
    前記圧電/電歪部が前記基体上に直接又は前記電極を介して固着された請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  10. アクチュエータ又はセンサとして使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の圧電/電歪素子。
  11. 圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備えた圧電/電歪素子の製造方法であって、
    相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスを、前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理して前記圧電/電歪部を形成することを含む圧電/電歪素子の製造方法。
  12. 圧電/電歪部と、前記圧電/電歪部に電気的に接続される電極とを備え、前記圧電/電歪部に対して所定の方向に駆動電界が負荷されることにより駆動可能な圧電/電歪素子の製造方法であって、
    相転移点を境に正方晶と斜方晶に可逆的に相転移し得る圧電セラミックスに対して、前記駆動電界が負荷される前記所定の方向とは逆方向の分極電界を負荷する条件下で分極処理して前記圧電/電歪部を形成することを含む圧電/電歪素子の製造方法。
  13. 前記圧電セラミックスを、前記相転移点を超える温度〜50℃高い温度条件下で分極処理する請求項12に記載の圧電/電歪素子の製造方法。
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