JP5129067B2 - 圧電/電歪磁器組成物及び圧電/電歪素子 - Google Patents

圧電/電歪磁器組成物及び圧電/電歪素子 Download PDF

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Description

本発明は、圧電/電歪磁器組成物及び当該圧電/電歪磁器組成物を用いた圧電/電歪素子に関する。
圧電/電歪アクチュエータは、サブミクロンのオーダーで変位を精密に制御することができるという利点を有する。特に、圧電/電歪磁器組成物の焼結体を圧電/電歪体として用いた圧電/電歪アクチュエータは、変位を精密に制御することができる他にも、電気機械変換効率が高く、発生力が大きく、応答速度が速く、耐久性が高く、消費電力が少ないという利点も有し、これらの利点を生かして、インクジェットプリンタのヘッドやディーゼルエンジンのインジェクタ等に採用されている。
圧電/電歪アクチュエータ用の圧電/電歪磁器組成物としては、従来、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)系の圧電/電歪磁器組成物が用いられていたが、焼結体からの鉛の溶出が地球環境に与える影響が強く懸念されるようになってからは、(Li,Na,K)(Nb,Ta)O3系の圧電/電歪磁器組成物も検討されている。
また、特許文献1及び特許文献2に示すように、圧電/電歪特性を改善するためにBサイト元素としてSbを含む(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物も検討されている。
さらに、特許文献3には、(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物において、Bサイト元素の原子数よりもAサイト元素の原子数を過剰にすることにより、圧電/電歪特性を向上することができることが示されている。
特開2003−206179号公報 特開2004−244299号公報 国際公開第2006/095716号公報
しかし、従来の(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物では、圧電/電歪アクチュエータ用として重要な高電界印加時の電界誘起歪が必ずしも十分ではないという問題があった。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、高電界印加時の電界誘起歪が良好な(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、一般式{Li(Na1−x1−y(Nb1−z−wTaSb)Oで表され、a,x,y,z及びwが、それぞれ、1<a≦1.05,0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10,0≦z≦0.5及び0.01≦w≦0.1を満たす組成を有するペロブスカイト型酸化物と、前記ペロブスカイト型酸化物に添加されたMn化合物とからなる圧電/電歪磁器組成物である。Mnは、前記ペロブスカイト型酸化物の結晶格子に取り込まれない。前記ペロブスカイト型酸化物100モル部に対する前記Mn化合物の添加量がMn原子換算で0.001モル部以上0.1モル部以下である。
請求項2の発明は、一般式{Li (Na 1−x 1−y (Nb 1−z−w Ta Sb )O で表され、a,x,y,z及びwが、それぞれ、1<a≦1.05,0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10,0≦z≦0.5及び0.01≦w≦0.1を満たす組成を有するペロブスカイト型酸化物と、前記ペロブスカイト型酸化物に添加されたMn化合物とからなり、X線源にCu−Kαを用いたX線回折パターンにおいて、2θ=44〜47°の範囲に見られる前記ペロブスカイト化合物に由来する主要な2つのピークうち、高角側のピークから求めた面間隔に対する低角側のピークから求めた面間隔の比が1.003以上1.025以下である圧電/電歪磁器組成物である。Mnは、前記ペロブスカイト型酸化物の結晶格子に取り込まれない。前記ペロブスカイト型酸化物100モル部に対する前記Mn化合物の添加量がMn原子換算で0.001モル部以上0.1モル部以下である。
請求項3の発明は、LiSbOの異相を含まない請求項1又は請求項2に記載の圧電/電歪磁器組成物である。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧電/電歪磁器組成物の焼結体である圧電/電歪体膜と、前記圧電/電歪体膜の両主面上の電極膜とを備える圧電/電歪素子である。
請求項5の発明は、前記圧電/電歪体膜がLiSbOの異相を含まない請求項4に記載の圧電/電歪素子である。
本発明によれば、高電界印加時の電界誘起歪が良好な(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物を提供することができる。
以下では、本発明の望ましい実施形態に係る圧電/電歪磁器組成物について説明し、しかる後に、当該圧電/電歪磁器組成物を用いたアクチュエータについて説明する。ただし、以下の説明は、本発明の圧電/電歪磁器組成物の用途がアクチュエータに限られることを意味するものではない。例えば、本発明の圧電/電歪磁器組成物をセンサ等の圧電/電歪素子に用いてもよい。
<1 圧電/電歪磁器組成物>
{組成}
本発明の望ましい実施形態に係る圧電/電歪磁器組成物は、Aサイト元素としてリチウム(Li),ナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含み、Bサイト元素としてニオブ(Nb)及びアンチモン(Sb)を含み、Bサイト元素の総原子数に対するAサイト元素の総原子数の比(いわゆるA/B比)が1より大きいペロブスカイト型酸化物に微量のMn化合物を添加したものである。なお、このペロブスカイト型酸化物に、Aサイト元素として銀(Ag)等の1価元素をさらに含有させてもよいし、Bサイト元素としてタンタル(Ta)やバナジウム(V)等の5価元素をさらに含有させてもよい。
主成分であるペロブスカイト型酸化物の組成は、一般式{Liy(Na1-xx1-ya(Nb1-z-wTazSbw)O3で表され、a,x,y,z及びwが、それぞれ、1<a≦1.05,0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10,0≦z≦0.5及び0.01≦w≦0.1を満たすようにすることが好ましい。
A/B比を1<aとしたのは、粒成長を促進させ、緻密化させるためである。A/B比を1≧aとしたものは、粒成長を促進させるために1100℃以上の加熱が必要となる。この場合、アルカリ成分の蒸発が起こり易くなり、組成が変動することで特性が不安定になる。A/B比を1<aとすることで、焼成温度を1100℃以下とすることができ、組成の変動を回避することができる。これは、余剰のアルカリ成分の存在により、焼成過程において異相(低融点相)が生成することが影響しているものと推察される。
一方、A/B比をa≦1.05としたのは、この範囲を上回ると、誘電損失が増加し、高電界印加時の電界誘起歪が小さくなる傾向があるからである。誘電損失の増加は、高電界を印加するアクチュエータ用の圧電/電歪磁器組成物では問題が大きい。
Sb置換量を0.01≦w≦0.1としたのは、この範囲内において、圧電/電歪特性が高くなる正方晶−斜方晶相転移温度(以下、単に「相転移温度」という)TOTを大きく変動させることなく(望ましくは50℃以下)、高電界印加時の電界誘起歪を大きくすることができるからである。特に、Sb置換量を0.01≦w≦0.05とした場合は、相転移温度TOTを殆ど変動させることなく(望ましくは10℃以下)高電界印加時の電界誘起歪を特に大きくすることができる。これは、A/B比を1<aとした場合、Sb置換量が0.01≦w≦0.05の範囲を上回ると、LiSbO3の異相が焼結体の内部に生成してペロブスカイト単相が得られなくなり相転移温度TOTが上昇傾向となるからである。
K、Li及びTa量をそれぞれ0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10及び0≦z≦0.5としたのは、この範囲内でアクチュエータ用として好適な圧電/電歪磁器組成物を得ることができるからである。
例えば、xがこの範囲を下回ると、圧電/電歪特性が急激に低下する。一方、xがこの範囲を上回ると、焼結が困難になり、焼成温度を高くしなければならなくなる。焼成温度を高くすることが望ましくないのは、焼成温度を高くすると、圧電/電歪磁器組成物に含まれるアルカリ成分が蒸発し、圧電/電歪特性を安定して得ることができなくなるからである。
また、yがこの範囲を下回ると、やはり、焼結が困難になり、焼成温度を高くしなければならなくなる。一方、yがこの範囲を上回ると、異相の析出が多くなり、絶縁性が低下する。
さらに、zがこの範囲を上回ると、やはり、焼結が困難になり、焼成温度を高くしなければならなくなる。
副成分であるMn化合物は、ペロブスカイト型酸化物100モル部に対するMn原子換算の添加量が3モル部以下となるように添加することが望ましい。Mn化合物の添加量を3モル部以下としたのは、この範囲を上回ると、誘電損失が増加し、高電界印加時の電界誘起歪が小さくなる傾向があるからである。
ここで、Mn化合物の添加量はごく微量でも足りる。例えば、ペロブスカイト型酸化物100モル部に対してMn原子換算で0.001モル部のMn化合物を添加したに過ぎない場合でも、焼結体の分極処理は容易になり、Sbによる置換との相乗効果により、高電界印加時の電界誘起歪も大きくすることができる。
Mn化合物は、原子価が主として2価のMnの化合物であることが望ましい。例えば、酸化マンガン(MnO)やマンガンが固溶したその他の化合物であることが望ましく、ニオブ酸三リチウム(Li3NbO4)にマンガンが固溶した化合物であることが特に望ましい。ここで、「主として2価」とは、原子価が2価以外のMnの化合物を含んでいてもかまわず、最も多く含まれる原子価が2価であればよいことを意味している。Mnの原子価は、X線吸収端構造(XANES;X-ray absorption near-edge structure)により確認することができる。また、Mnは、母相であるペロブスカイト型酸化物の結晶格子に取り込まれることなく、マンガン化合物の異相を構成する元素としてセラミックス焼結体の内部に存在していることが望ましい。
このようなMn化合物を焼結体の内部に導入することにより、Mn化合物の添加による
ハード化を防ぐことができ、電界誘起歪を大きくすることができる。
{相転移温度}
(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系のペロブスカイト型酸化物及びその変性物は、一般的に言って、高温から低温に向かって立方晶、正方晶、斜方晶の順に逐次相転移するが、本発明の望ましい実施形態に係る圧電/電歪磁器組成物では、相転移温度TOTが室温の近傍となるように組成を選択することが望ましく、室温の極近傍となるように組成を選択することがさらに望ましい。相転移温度TOTが室温の近傍にあれば、高電界印加時の電界誘起歪を大きくすることができるからである。ここで、相転移温度は誘電率が温度に対して極値を持つ時の温度とする。(高温から温度を下げた時の第一のピークを立方晶−正方晶相転移温度、第二のピークを正方晶−斜方晶相転移温度とするが、測定条件により降温時と昇温時におけるピークは僅かながら異なる。ここでは、昇温時の正方晶−斜方晶相転移温度をTOTとする。)。
{結晶系及び格子歪}
また、本発明の望ましい実施形態に係る圧電/電歪磁器組成物では、結晶系が正方晶又は斜方晶であって、その格子歪がある程度小さくなるように組成を選択することが望ましい。具体的には、X線源にCu−Kα線を用いたX線回折パターンにおいて、2θ=44〜47°の範囲に見られる強度の大きい、ペロブスカイト化合物に由来する主要な2つのピークのうち、高角側のピークから求めた面間隔に対する低角側のピークから求めた面間隔の比が1.003以上1.025以下となるように組成を選択することが望ましい。ここで、結晶系が正方晶である場合、高角側のピークから求めた面間隔は(200)面の間隔に、低角側のピークから求めた面間隔は(002)面の間隔に対応し、その比はa軸方向の格子定数aに対するc軸方向の格子定数cの比c/aを意味する。即ち、結晶系が正方晶である場合、c/aが1.003以上1.025以下となるように組成を選択することが望ましい。面間隔がこれらの範囲内であれば、ドメインの回転が容易になり、高電界印加時の電界誘起歪を向上することができるからである。
{原料粉末の製造}
係る圧電/電歪磁器組成物の原料粉末の製造にあたっては、まず、圧電/電歪磁器組成物の構成元素(Li,Na,K,Nb,Ta,Sb,Mn等)の素原料に分散媒を加えてボールミル等で混合する。素原料としては、酸化物、炭酸塩及び酒石酸塩等の化合物を用いることができ、分散媒としては、エタノール、トルエン、アセトン等の有機溶剤を用いることができる。そして、得られた混合スラリーから蒸発乾燥や濾過等の手法により分散媒を除去し、混合原料を得る。続いて、混合原料を600〜1300℃で仮焼することにより、原料粉末を得ることができる。なお、所望の粒子径の原料粉末を得るために、仮焼後にボールミル等で粉砕を行ってもよい。また、固相反応法ではなくアルコキシド法や共沈法により原料粉末を製造してもよい。さらに、ペロブスカイト型酸化物を合成した後にMn化合物を構成するMnを供給するMnの素原料を添加してもよい。この場合、Mnの素原料として二酸化マンガン(MnO2)を合成したペロブスカイト型酸化物に添加することが望ましい。このようにして添加された二酸化マンガンを構成する4価のMnは、焼成中に還元されて2価のMnとなり、電界誘起歪の向上に寄与する。また、Bサイト元素のコロンバイト化合物を経由してペロブスカイト型酸化物を合成してもよい。
原料粉末の平均粒子径は、0.07〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがさらに好ましい。また、原料粉末の粒子径の調整のために、原料粉末を400〜850℃で熱処理してもよい。微細な粒子ほど他の粒子と一体化しやすいので、この熱処理を行うと、粒子径が均一な原料粉末を得ることができ、粒径が均一な焼結体を得ることができる。
<2 圧電/電歪アクチュエータ>
{全体構造}
図1及び図2は、先述の圧電/電歪磁器組成物を用いた圧電/電歪アクチュエータ1,2の構造例の模式図であり、図1は、単層型の圧電/電歪アクチュエータ1の断面図、図2は、多層型の圧電/電歪アクチュエータ2の断面図となっている。
図1に示すように、圧電/電歪アクチュエータ1は、基体11の上面に、電極膜121、圧電/電歪体膜122及び電極膜123をこの順序で積層した構造を有している。圧電/電歪体膜122の両主面上の電極膜121,123は、圧電/電歪体膜122を挟んで対向している。電極膜121、圧電/電歪体膜122及び電極膜123を積層した積層体12は基体11に固着されている。
また、図2に示すように、圧電/電歪アクチュエータ2は、基体21の上面に、電極膜221、圧電/電歪体膜222、電極膜223、圧電/電歪体膜224及び電極膜225をこの順序で積層した構造を有している。圧電/電歪体膜222の両主面上の電極膜221,223は、圧電/電歪体膜222を挟んで対向しており、圧電/電歪体膜224の両主面上の電極膜223,225は、圧電/電歪体膜224を挟んで対向している。電極膜221、圧電/電歪体膜222、電極膜223、圧電/電歪体膜224及び電極膜225を積層した積層体22は基体21に固着されている。なお、図2には、圧電/電歪体膜が2層である場合が図示されているが、圧電/電歪体膜が3層以上となってもよい。
ここで「固着」とは、有機接着剤や無機接着剤を用いることなく、基体11,21と積層体12,22との界面における固相反応により、積層体12,22を基体11,21に接合することをいう。なお、基体と積層体の最下層の圧電/電歪体膜との界面における固相反応により積層体を基体に接合してもよい。
圧電/電歪アクチュエータ1,2では、電圧が印加されると、印加された電圧に応じて圧電/電歪体122,222,224が電界と垂直な方向に伸縮し、その結果として屈曲変位を生じる。
{圧電/電歪体膜}
圧電/電歪体膜122,222,224は、先述の圧電/電歪磁器組成物の焼結体である。
圧電/電歪膜122,222,224の膜厚は、0.5〜50μmであることが好ましく、0.8〜40μmであることがさらに好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。この範囲を下回ると、緻密化が不十分になる傾向があるからである。また、この範囲を上回ると、焼結時の収縮応力が大きくなるため、基体11,21の板厚を厚くする必要が生じ、圧電/電歪アクチュエータ1,2の小型化が困難になるからである。
{電極膜}
電極膜121,123,221,223,225の材質は、白金、パラジウム、ロジウム、金若しくは銀等の金属又はこれらの合金である。中でも、焼成時の耐熱性が高い点で白金又は白金を主成分とする合金が好ましい。また、焼成温度によっては、銀−パラジウム等の合金も好適に用いることができる。
電極膜121,123,221,223,225の膜厚は、15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。この範囲を上回ると、電極膜121,123,221,223,225が緩和層として機能し、屈曲変位が小さくなる傾向があるからである。また、電極膜121,123,221,223,225がその役割を適切に果たすためには、膜厚は、0.05μm以上であることが好ましい。
電極膜121,123,221,223,225は、圧電/電歪体膜122,222,224の屈曲変位に実質的に寄与する領域を覆うように形成することが好ましい。例えば、圧電/電歪体膜122,222,224の中央部分を含み、圧電/電歪体膜122,222,224の両主面の80%以上の領域を覆うように形成することが好ましい。
{基体}
基体11,21の材質は、セラミックスであるが、その種類に制限はない。もっとも、耐熱性、化学的安定性及び絶縁性の観点から、安定された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種類を含むセラミックスが好ましい。中でも、機械的強度及び靭性の観点から安定化された酸化ジルコニウムがさらに好ましい。ここで、「安定化された酸化ジルコニウム」とは、安定化剤の添加によって結晶の相転移を抑制した酸化ジルコニウムをいい、安定化酸化ジルコニウムの他、部分安定化酸化ジルコニムを包含する。
安定化された酸化ジルコニウムとしては、例えば、1〜30mol%の酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリニウム、酸化イッテルビウム若しくは酸化セリウム又は希土類金属の酸化物を安定化剤として含有させた酸化ジルコニウムをあげることができる。中でも、機械的強度が特に高い点で、酸化イットリニウムを安定化剤として含有させた酸化ジルコニウムが好ましい。酸化イットリニウムの含有量は、1.5〜6mol%であることが好ましく、2〜4mol%であることがさらに好ましい。また、酸化イットリニウムに加えて、0.1〜5mol%の酸化アルミニウムを含有させることもさらに好ましい。安定化された酸化ジルコニウムの結晶相は、立方晶と単斜晶との混合晶、正方晶と単斜晶との混合晶又は立方晶と正方晶と単斜晶との混合晶等であってもよいが、主たる結晶相が正方晶と立方晶との混合晶又は正方晶となっていることが、機械的強度、靭性及び耐久性の観点から好ましい。
基体11,21の板厚は、1〜1000μmが好ましく、1.5〜500μmがさらに好ましく、2〜200μmが特に好ましい。この範囲を下回ると、圧電/電歪アクチュエータ1,2の機械的強度が低下する傾向にあるからである。また、この範囲を上回ると、基体11,21の剛性が高くなり、電圧を印加した場合の圧電/電歪体膜122,222,224の伸縮による屈曲変位が小さくなる傾向があるからである。
基体11,21の表面形状(積層体が固着される面の形状)は、特に制限されず、三角形、四角形(長方形や正方形)、楕円形又は円形とすることができ、三角形及び四角形については角丸めを行ってもよい。これらの基本形を組み合わせた複合形としてもよい。
単層型の圧電/電歪アクチュエータ1の基体11の板厚は均一になっている。これに対して、多層型の圧電/電歪アクチュエータ2の基体21の板厚は積層体22が接合される中央部215が周縁部216よりも薄肉化されている。基体21の機械的強度を保ちつつ、屈曲変位を大きくするためである。なお、基体21を単層型の圧電/電歪アクチュエータ1に用いてもよい。
なお、図3の断面図に示すように、図2に示す基体21を単位構造として、当該単位構造が繰り返される基体31を用いてもよい。この場合、単位構造の各々の上に積層体32を固着して圧電/電歪アクチュエータ3を構成する。
{圧電/電歪アクチュエータの製造}
単層型の圧電/電歪アクチュエータ1の製造にあたっては、まず、基体11の上に電極膜121を形成する。電極膜121は、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、メッキ、エアロゾルデポジション、スクリーン印刷、スプレー又はディッピング等の方法で形成することができる。中でも、基体11及び圧電/電歪体膜122との接合性の観点から、スパッタリング法又はスクリーン印刷法が好ましい。形成された電極膜121は、熱処理により、基体11及び圧電/電歪体膜122と固着することができる。熱処理の温度は、電極膜121の材質や形成方法に応じて異なるが、概ね500〜1400℃である。
続いて、電極膜121の上に圧電/電歪体膜122を形成する。圧電/電歪体膜122は、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、メッキ、ゾルゲル、エアロゾルデポジション、スクリーン印刷、スプレー又はディッピング等の方法で形成することができる。中でも、平面形状や膜厚の精度が高く、圧電/電歪体膜を連続して形成することができる点で、スクリーン印刷法が好ましい。
さらに続いて、圧電/電歪体膜122の上に電極膜123を形成する。電極膜123は、電極膜121と同様に形成することができる。
しかる後に、積層体12が形成された基体11を一体的に焼成する。この焼成により、圧電/電歪体膜122の焼結が進行するとともに、電極膜121,123が熱処理される。圧電/電歪体膜122の焼成の温度は、800〜1250℃が好ましく、900〜1200℃がさらに好ましい。この範囲を下回ると、圧電/電歪体膜122の緻密化が不十分になり、基体11と電極膜121との固着や電極膜121,123と圧電/電歪体膜122との固着が不完全になる傾向があるからである。また、この範囲を上回ると、圧電/電歪体膜122の圧電/電歪特性が低下する傾向にあるからである。また、焼成時の最高温度の保持時間は、1分〜10時間が好ましく、5分〜4時間がさらに好ましい。この範囲を下回ると、圧電/電歪体膜122の緻密化が不十分になる傾向があるからである。また、この範囲を上回ると、圧電/電歪体膜122の圧電/電歪特性が低下する傾向にあるからである。
なお、電極膜121,123の熱処理を焼成とともに行うことが生産性の観点から好ましいが、このことは、電極膜121,123を形成するごとに熱処理を行うことを妨げるものではない。ただし、電極膜123の熱処理の前に圧電/電歪体膜122の焼成を行っている場合は、圧電/電歪体膜122の焼成温度より低い温度で電極膜123を熱処理する。
焼成が終わった後には、適当な条件下で分極処理を行う。分極処理は、周知の手法により行うことができ、圧電/電歪体膜122のキュリー温度にもよるが、40〜200℃に加熱して行うことが好適である。
なお、多層型の圧電/電歪アクチュエータ2も、形成すべき圧電/電歪膜及び電極膜の数が増える点を除いては、単層型の圧電/電歪アクチュエータ1と同様に製造することができる。
また、圧電/電歪アクチュエータ1は、積層セラミック電子部品の製造において常用されているグリーンシート積層法により製造することもできる。グリーンシート積層法においては、まず、原料粉末にバインダ、可塑剤、分散剤及び分散媒を加えてボールミル等で混合する。そして、得られたスラリーをドクターブレード法等でシート形状に成形して成形体を得る。
続いて、スクリーン印刷法等で成形体の両主面に電極ペーストの膜を印刷する。ここで用いる電極ペーストは、上述の金属又は合金の粉末に、溶媒、ビヒクル及びガラスフリット等を加えたものである。
さらに続いて、電極ペーストの膜が両主面に印刷された成形体と基体とを圧着する。
しかる後に、積層体が形成された基体を一体的に焼成し、焼成が終わった後に適当な条件下で分極処理を行う。
<3 圧電/電歪アクチュエータの別例>
図4〜図6は、先述の圧電/電歪磁器組成物を用いた圧電/電歪アクチュエータ4の構造例の模式図であり、図4は、圧電/電歪アクチュエータ4の斜視図、図5は、圧電/電歪アクチュエータ4の縦断面図、図6は、圧電/電歪アクチュエータ4の横断面図となっている。
図4〜図6に示すように、圧電/電歪アクチュエータ4は、圧電/電歪体膜402と内部電極膜404とを軸Aの方向に交互に積層し、圧電/電歪体膜402と内部電極膜404とを積層した積層体410の端面412,414に外部電極膜416,418を形成した構造を有している。圧電/電歪アクチュエータ4の一部を軸Aの方向に分解した状態を示す図7の分解斜視図に示すように、内部電極膜404には、端面412に達しているが端面414には達していない第1の内部電極膜406と、端面414に達しているが端面412には達していない第2の内部電極膜408とがある。第1の内部電極膜406と第2の内部電極膜408とは交互に設けられている。第1の内部電極膜406は、端面412において外部電極膜416と接し、外部電極膜416と電気的に接続されている。第2の内部電極膜408は、端面414において外部電極膜418と接し、外部電極膜418と電気的に接続されている。したがって、外部電極膜416を駆動信号源のプラス側に接続し、外部電極膜418を駆動信号源のマイナス側に接続すると、圧電/電歪体膜402を挟んで対向する第1の内部電極膜406と第2の内部電極膜408とに駆動信号が印加され、圧電/電歪体膜402の厚さ方向に電界が印加される。この結果、圧電/電歪体膜402は厚さ方向に伸縮し、積層体410は全体として図4において破線で示す形状に変形する。
圧電/電歪アクチュエータ4は、既に説明した圧電/電歪アクチュエータ1〜3と異なり、積層体410が固着される基体を有していない。また、圧電/電歪アクチュエータ4は、パターンが異なる第1の内部電極膜406と第2の内部電極膜408とを交互に設けることから、「オフセット型の圧電/電歪アクチュエータ」とも呼ばれる。
圧電/電歪体膜402は、先述の圧電/電歪磁器組成物の焼結体である。圧電/電歪体膜402の膜厚は、5〜500μmであることが好ましい。この範囲を下回ると、後述のグリーンシートの製造が困難になるからである。また、この範囲を上回ると、圧電/電歪体膜402に十分な電界を印加することが困難になるからである。
内部電極膜404および外部電極膜416,418の材質は、白金、パラジウム、ロジウム、金もしくは銀等の金属またはこれらの合金である。内部電極膜404の材質は、これらの中でも、焼成時の耐熱性が高く圧電/電歪体膜402との共焼結が容易な点で白金または白金を主成分とする合金であることが好ましい。ただし、焼成温度によっては、銀−パラジウム等の合金も好適に用いることができる。
内部電極膜402の膜厚は、10μm以下であることが好ましい。この範囲を上回ると、内部電極膜402が緩和層として機能し、変位が小さくなる傾向があるからである。また、内部電極膜402がその役割を適切に果たすためには、膜厚は、0.1μm以上であることが好ましい。
なお、図4〜図6には、圧電/電歪体膜402が10層である場合が図示されているが、圧電/電歪体膜402が9層以下または11層以上であってもよい。
圧電/電歪アクチュエータ4の製造にあたっては、まず、先述の圧電/電歪磁器組成物の原料粉末にバインダ、可塑剤、分散剤および分散媒を加えてボールミル等で混合する。そして、得られたスラリーをドクターブレード法等でシート形状に成形してグリーンシートを得る。
続いて、パンチやダイを使用してグリーンシートを打ち抜き加工し、グリーンシートに位置合わせ用の孔等を形成する。
さらに続いて、グリーンシートの表面にスクリーン印刷等により電極ペーストを塗布し、電極ペーストのパターンが形成されたグリーンシートを得る。電極ペーストのパターンには、焼成後に第1の内部電極膜406となる第1の電極ペーストのパターンと焼成後に第2の内部電極膜408となる第2の電極ペーストのパターンとの2種類がある。もちろん、電極ペーストのパターンを1種類だけとして、グリーンシートの向きをひとつおきに180°回転させることにより、焼成後に内部電極膜406,408が得られるようにしてもよい。
次に、第1の電極ペーストのパターンが形成されたグリーンシートと第2の電極ペーストのパターンが形成されたグリーンシートを交互に重ね合わせるとともに、電極ペーストが塗布されていないグリーンシートを最上部にさらに重ね合わせた後に、重ね合わせたグリーンシートを厚さ方向に加圧して圧着する。このとき、グリーンシートに形成された位置合わせ用の孔の位置が揃うようにする。また、重ね合わせたグリーンシートの圧着にあたっては、圧着に使用する金型を加熱しておくことにより、加熱しながらグリーンシートを圧着するようにすることも望ましい。
このようにして得られたグリーンシートの圧着体を焼成し、得られた焼結体をダイシングソー等で加工することにより、積層体410を得ることができる。そして、焼き付け、蒸着、スパッタリング等により積層体410の端面412,414に外部電極膜416,418を形成し、分極処理を行うことにより、圧電/電歪アクチュエータ4を得ることができる。
以下では、本発明の圧電/電歪磁器組成物に関する実施例1〜8及び本発明の範囲外の圧電/電歪磁器組成物に関する比較例1〜8について説明する。ただし、下述する実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
{評価用の圧電/電歪素子の製造}
評価用の圧電/電歪素子の製造にあたっては、まず、炭酸リチウム(Li2CO3)、酒石酸ナトリウム一水和物(C456Na・H2O)、酒石酸カリウム(C456K)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化タンタル(Ta25)、酸化アンチモン(Sb23)等の素原料を、表1〜表3に示す組成となるように秤量した。表1〜表3の一覧表中のx,y,z,w及びaは、一般式{Liy(Na1-xx1-ya(Nb1-z-wTazSbw)O3中のパラメータであり、Mn量は、当該一般式で表されるペロブスカイト型酸化物100モル部に対する添加量である。
Figure 0005129067
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続いて、素原料に分散媒としてアルコールを加えてボールミルで16時間混合した。さらに続いて、得られた混合原料を乾燥した後、800℃で5時間仮焼してボールミルで粉砕することを2回繰り返し、圧電/電歪磁器組成物の原料粉末を得た。なお、この原料粉末に、実施例1〜21及び比較例1については、MnO2を表1及び表3に示す添加量となるように添加した。
次に、原料粉末を粗粉砕した後、500メッシュのふるいに通して粒度調整を行った。
このようにして得られた原料粉末を2.0×108Paの圧力で直径18mm、板厚5mmの円板形状に圧粉成形した。そして、圧粉成形体をアルミナ容器内に収納し、950〜1050℃で3時間焼成して焼結体(圧電/電歪体)を得た。
続いて、焼結体を長辺12mm×短辺3mm×厚み1mmの矩形形状に加工し、600〜900℃で熱処理を行った。その後、矩形試料の両主面にスパッタリングで金電極を形成した。そして、これを室温のシリコンオイル中に浸漬し、両主面の金電極に5kV/mmの電圧を15分間印加して厚さ方向に分極処理を行った。
{電気特性及び温度特性}
1000℃で焼成を行った実施例1〜8及び比較例1〜8の評価用の圧電/電歪素子を用いて、圧電定数d31(pm/V)、室温及び相転移温度TOTの付近における歪率S4000(ppm)を測定した。その測定結果を表1〜表3に示す。圧電定数d31は、圧電/電歪素子の周波数−インピーダンス特性及び静電容量をインピーダンスアナライザで測定するとともに、圧電/電歪素子の寸法をマイクロメータで測定し、長辺方向伸び振動の基本波の共振周波数及び***振周波数、静電容量並びに寸法から算出することにより得た。歪率S4000は、両主面の金電極に4kV/mmの電圧を印加したときの長辺方向の電界誘起歪を接着剤で電極に貼り付けた歪ゲージで測定することにより得た。相転移温度TOTの測定方法については後述する。
なお、上述の圧電/電歪磁器組成物は、少なくとも950〜1050℃の範囲内で良好に焼結することができ、970℃及び1030℃で焼成を行った圧電/電歪素子の圧電/電歪特性の傾向は、1000℃で焼成を行った圧電/電歪素子と同様であったことから、表1〜表3には、1000℃で焼成を行った圧電/電歪素子の圧電/電歪特性のみを示している。
表1及び表2を参照して、実施例1〜3,5〜6と比較例2〜7とを対比すれば明らかなように、Sb置換量が0.01≦w≦0.10の範囲内では、一般式{Li0.06(Na0.550.450.941.01(Nb0.918-wTa0.082Sbw)O3で表されるペロブスカイト型酸化物100モル部に0.02モル部(Mn原子換算で0.02モル部)のMn化合物を添加することにより、歪率S4000を著しく向上することができる。また、実施例3,8及び比較例4から明らかなように、化学式{Li0.06(Na0.550.450.941.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.04)O3で表されるSb置換量がw=0.04のペロブスカイト型酸化物100モル部に添加するMn化合物の添加量を0,0.02,0.1モル部(それぞれ、Mn原子換算で0,0.02,0.1モル部)の順に増加させることにより、歪率S4000を向上することができる。
しかし、比較例1と比較例8とを対比すれば明らかなように、化学式{Li0.06(Na0.550.450.941.01(Nb0.798Ta0.082Sb0.12)O3で表されるSb置換量がw=0.12のペロブスカイト型酸化物100モル部に0.02モル部(Mn原子換算で0.02モル部)のMn化合物を添加しても、歪率S4000を向上することはできない。
さらに、実施例1〜3,5よりもLi置換量を減少させ(y=0.06→0.05)Ta置換量を増加させた(z=0.082→0.160)実施例9〜12、実施例1〜3,5よりもLi置換量を増加させ(y=0.06→0.07)Ta置換量を減少させた(z=0.082→0)実施例13〜16、実施例3よりもA/B比を増減した(a=1.01→1.005〜1.03)実施例17〜19、実施例3よりもK量を増減した(x=0.45→0.3〜0.7)実施例13,14においても、なんらかの異相が生成したと考えられる実施例19を除いて、良好な歪率S4000を得ることができた。
加えて、実施例1〜7から明らかなように、Sb置換量が0.01≦w≦0.05の範囲内で特に良好な室温の付近における歪率S4000を得ることができる。
図8は、Sb置換量がw=0.02,0.04,0.05,0.06,0.08の実施例2〜6について、歪率S4000の温度変化を示す図である。
図8に示すように、一般式{Li0.06(Na0.550.450.941.01(Nb0.918-wTa0.082Sbw)O3で表されるペロブスカイト型酸化物100モル部に0.02モル部のMnO2を添加した場合、Sb置換量がw≦0.5の範囲内にあれば、Sb置換量が増加しても歪率S4000が最大となる温度はほとんど変化しないのに対して、Sb置換量が当該範囲を上回ると、Sb置換量が増加するとともに歪率S4000が最大となる温度は上昇する。このため、一般式{Li0.06(Na0.550.450.941.01(Nb0.918-wTa0.082Sbw)O3で表されるペロブスカイト型酸化物100モル部に0.02モル部のMn化合物を添加した場合、Sb置換量がw≦0.5の範囲内にあれば、温度特性を変えることなく高い歪率S4000を得ることができるのに対して、Sb置換量が当該範囲を上回ると、Sb置換量が増加するにつれて温度特性が変化する傾向となる。
{X線回折パターン}
図9は、Sb置換量がw=0.02,0.04,0.05,0.06,0.08の実施例2〜6の圧電/電歪素子に用いられている焼結体のX線回折パターンを示す図である。なお、図9には、Sb置換量をw=0とした焼結体のX線回折パターンも示されている。
加工した試料の12mm×3mmの表面にX線が照射されるように試料をセットし、試料のX線回折パターンを2θ/θ法により20°〜60°の範囲で測定した。X線回折パターンは、X線回折装置を用いて、Cu−Kα線を線源とし、グラファイトモノクロメータを検出器の手前に設置して測定した。X線発生条件を、35kV−30mA、スキャン幅0.02°、スキャン速度2°/分、発散スリット1°、受光スリット0.3mmとして測定し、2θ=44°〜47°の範囲に強度の大きい2つのピークが存在することを確認した。この時、高角側のピーク強度が低角側のピーク強度の約2倍である場合には、主として正方晶であり、低角側のピークが(002)面、高角側のピークが(200)面と断定することができる。
図9に示すように、Sb置換量が0≦w≦0.06の範囲内の場合、ペロブスカイトの正方晶に固有のX線回折パターンが観察され、焼結体の結晶系が正方晶であることがわかる。一方、Sb置換量がw=0.08の場合、ペロブスカイトの斜方晶に固有のX線回折パターンが観察され、焼結体の結晶系が斜方晶であることがわかる。
表1〜表3には、実施例1〜21及び比較例1〜8の圧電/電歪素子に用いられている焼結体のX線回折パターンの2θ=44〜47°の範囲に見られる強度の大きい2個のピークから半値幅中点法により算出した2個の面間隔の比である格子歪パラメータも示されている。この「格子歪パラメータ」とは、格子歪の度合いを表す指標値であり、結晶系が正方晶である場合は、(200)面の面間隔に対する(002)面の面間隔の比を概ね意味する。
実施例1〜7及び比較例1に示すように、格子歪パラメータは、Sb置換量が増加するにつれて減少し、Sb置換量が0.01≦w≦0.10の範囲内では、1.003以上1.025以下となっている。
なお、(Li,Na,K)(Nb,Ta,Sb)O3系の圧電/電歪磁器組成物においては、実施例2〜6の組成以外であっても、結晶系が正方晶又は斜方晶、格子歪パラメータが1.003以上1.02以下となっていれば、ドメインの回転が容易になり、歪率S4000を向上することができる。これは、表1及び表2において圧電定数の増加と比較して、歪率S4000の増加が大きいことから推察される。実際、歪率S4000が良好な実施例9〜21においても、格子歪パラメータは、1.003以上1.025以下となっている。
また、図8に示すように、Sb置換量が0≦w≦0.06の範囲内の場合、異相に由来するピークは観察されないが、Sb置換量がw=0.08の場合、矢印で示す異相に由来するピークが観察される。この異相は、LiSbO3であると考えられる。なお、実施例6の圧電/電歪素子に用いられている焼結体の研磨面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察したところ、針状結晶が観察され、当該針状結晶の構成元素をEDS(energy dispersive X-ray spectrometer)で分析したところ、Sbを多く含むことがわかった。このことは、X線回折パターンで観察された異相のピークがLiSbO3に由来するものであることを裏付けている。
なお、このような異相に由来するピークが観察されるようになるSb置換量は、ペロブスカイト型酸化物の組成やMn化合物の添加量によって若干変動する。ただし、Sb置換量が0≦w≦0.05の範囲内であれば、ペロブスカイト型酸化物の組成やMn化合物の添加量にかかわらず、このような異相に由来するピークが観察されることはない。実際、実施例9〜11,13〜15,17〜21においては、LiSbO3の異相は観察されなかった。
次に、実施例1〜21及び比較例1〜8の圧電/電歪素子に用いられている焼結体の相転移温度TOTを測定した。その測定結果を表1〜表3に示す。相転移温度TOTは、比誘電率ε/ε0の温度依存性をインピーダンスアナライザで測定することで求めた。この測定結果から明らかなように、Sb置換量が0.01≦w≦0.05の範囲内では、相転移温度TOTをほとんど変化させることなく、図8の説明の際に述べたように温度特性を変化させることなく歪率S4000を全体的に増加させることができる。しかし、Sb置換量がこの範囲を上回ると、相転移温度は上昇し、その結果として、温度特性が変化することで室温における歪率S4000が低下してしまう。このような相転移温度TOTの上昇は、LiSbO3の異相の発生がペロブスカイト相に含まれるLi量の減少を引き起こしたことに起因すると考えられる。
上記の説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
圧電/電歪アクチュエータの断面図である。 圧電/電歪アクチュエータの断面図である。 圧電/電歪アクチュエータの断面図である。 圧電/電歪アクチュエータの斜視図である。 圧電/電歪アクチュエータの縦断面図である。 圧電/電歪アクチュエータの横断面図である。 圧電/電歪アクチュエータの一部の分解斜視図である。 歪率の温度変化を示す図である。 焼結体のX線回折パターンを示す図である。
符号の説明
1,2,3,4 圧電/電歪アクチュエータ
122,222,224,402 圧電/電歪体膜
121,123,221,223,225 電極膜
404 内部電極膜

Claims (5)

  1. 一般式{Li (Na 1−x 1−y (Nb 1−z−w Ta Sb )O で表され、a,x,y,z及びwが、それぞれ、1<a≦1.05,0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10,0≦z≦0.5及び0.01≦w≦0.1を満たす組成を有するペロブスカイト型酸化物と、
    前記ペロブスカイト型酸化物に添加されたMn化合物と、
    からなり、
    Mnが前記ペロブスカイト型酸化物の結晶格子に取り込まれず、
    前記ペロブスカイト型酸化物100モル部に対する前記Mn化合物の添加量がMn原子換算で0.001モル部以上0.1モル部以下である
    圧電/電歪磁器組成物。
  2. 一般式{Li (Na 1−x 1−y (Nb 1−z−w Ta Sb )O で表され、a,x,y,z及びwが、それぞれ、1<a≦1.05,0.30≦x≦0.70,0.02≦y≦0.10,0≦z≦0.5及び0.01≦w≦0.1を満たす組成を有するペロブスカイト型酸化物と、
    前記ペロブスカイト型酸化物に添加されたMn化合物と、
    からなり、
    X線源にCu−Kα線を用いたX線回折パターンにおいて、2θ=44〜47°の範囲に見られる前記ペロブスカイト化合物に由来する主要な2つのピークのうち、高角側のピークから求めた面間隔に対する低角側のピークから求めた面間隔の比が1.003以上1.025以下であり、
    Mnが前記ペロブスカイト型酸化物の結晶格子に取り込まれず、
    前記ペロブスカイト型酸化物100モル部に対する前記Mn化合物の添加量がMn原子換算で0.001モル部以上0.1モル部以下である
    圧電/電歪磁器組成物。
  3. LiSbO の異相を含まない請求項1又は請求項2に記載の圧電/電歪磁器組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧電/電歪磁器組成物の焼結体である圧電/電歪体膜と、
    前記圧電/電歪体膜の両主面上の電極膜と、
    を備える圧電/電歪素子。
  5. 前記圧電/電歪体膜がLiSbO の異相を含まない請求項4に記載の圧電/電歪素子。
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