JP2007210528A - タイヤの温度分布予測方法、熱解析モデル、及び、タイヤの温度分布予測計算プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイヤモデルとリムモデルと路面モデルとから成る応力解析モデルを作成するとともに、上記各モデルの各要素にそれぞれ密度、弾性率などの材料物性を与えて応力解析を行ない、タイヤ各部に作用する応力σと歪量εとを算出して、タイヤの発熱分布を求めるとともに、この発熱分布に基づいて熱解析計算を行う際に、タイヤモデル40とリムモデル50とから構成される数値解析モデルに、更に、タイヤ内部の気体を有限個の要素に分割した内部空気モデル60を付加して成る3次元熱解析モデル、もしくは、カットサンプルモデルまたは軸対称の熱解析モデルM2を作成し、この熱解析モデルM2について、熱解析計算を行って、タイヤの表面及び内部の温度分布を求めるようにした。
【選択図】図2
Description
一方、タイヤの耐久性を評価する方法の一つとして、粘弾性体であるゴム材料の転動時の発熱による温度上昇を考慮した評価方法が提案されている。
図6はそのフローチャートを示す図で、図7はこの評価方法に用いられるタイヤの有限要素モデル(タイヤモデル)70の概要を示す図である。このタイヤモデル70は、タイヤを有限個の要素70Sに分割するとともに、トレッド部71とサイド部72等のゴム部材をソリッド要素でモデル化し、ベルト73等の補強部材を膜要素などでモデル化したもので、耐久性の評価を行う際には、まず、上記タイヤモデル70を用いて静的応力解析、あるいは、転動解析等の動的解析を行って、上記タイヤモデル70の各要素の応力解析を行った(ステップS51)後、上記応力解析で得られた各要素の、タイヤを一回転させた場合の応力σと歪εを求めるとともに、上記歪εにゴム材料の損失係数に応じた位相遅れδを与えて得られる応力σと歪εとのヒステリシスループの面積から各要素の発熱エネルギーを演算し(ステップS52)、この発熱エネルギーを温度に換算して、タイヤが所定時間θだけ走行して発熱した場合の温度分布を求める(ステップS53)。
次に、上記モデル化したタイヤを所定時間θだけ走行させて放熱させる伝熱解析を実行してタイヤの温度分布を予測し(ステップS54)、上記予測された放熱後の各要素の温度における破断強度と破断伸びとから当該タイヤの安全率を演算して(ステップS55)、タイヤの耐久性を評価する(ステップS56)。なお、発熱時の解析においては、タイヤは発熱するのみで放熱しないものとし、放熱時の解析においては、タイヤは放熱するのみで発熱はしないものとして計算する。
このように、発熱の解析と放熱の解析とを別個に行った後、発熱時間と放熱時間とを一致させることにより、温度分布の予測計算時間を大幅に短縮することができる(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、上記従来の方法では、熱伝導解析にタイヤのみのモデルを使用しているだけでなく、リムや内部の空気については、単にタイヤの伝熱面を増やしただけであって、タイヤからリムを介して外気に放出される熱の流れや、タイヤにより昇温させられた内部空気の熱がリムを介して外気に放出される熱の流れを考慮しているわけではないので、タイヤの温度分布を精度よく求めることが困難であった。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤの温度分布予測方法において、上記熱解析計算を、カットサンプルモデルまたは軸対称の2次元解析モデルを用いて行うようにしたものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のタイヤの温度分布予測方法の熱解析計算に用いられる熱解析モデルであって、タイヤモデルに、タイヤ内部の空気を有限個の要素に分割したモデル、及び、少なくともリム部を含むホイールの一部または全部を有限個の要素に分割したモデルのいずれか一方または両方を付加して成ることを特徴とする。
3次元のタイヤモデルまたは3次元のタイヤモデルと路面モデルとから成る応力解析モデルを作成する第1のステップと、
上記タイヤモデルの各ゴム部材の要素に弾性率を与える第2のステップと、
上記応力解析モデルを用いて負荷または転動解析を行ってタイヤ各部の応力と歪量とを算出する第3のステップと、
上記算出されたタイヤ各部の応力と歪量とから歪エネルギーの密度分布を求め、この密度分布に損失正接を乗算してタイヤの発熱分布を求める第4のステップと、
タイヤモデルに、タイヤ内部の空気を有限個の要素に分割したモデル、及び、少なくともリム部を含むホイールの一部または全部を有限個の要素に分割したモデルを付加した3次元の熱解析モデルを作成するとともに、この3次元の熱解析モデル、もしくは、カットサンプルモデルまたは軸対称の2次元解析モデルについて、上記発熱分布に基づいて熱解析計算を行って、タイヤの表面及び内部の温度分布を求める第5のステップ、とを備えたことを特徴とするものである。
なお、上記請求項3及び請求項4に記載のタイヤモデルは、請求項1に記載の応力解析モデルで使用したタイヤモデルであってもよいし、熱解析用に新たに作成された分割方法や要素数の異なる新たなタイヤモデルであってもよい。
図1(a),(b)は、タイヤの負荷または転動解析を行うための応力解析モデルM1の概要を示す図で、図2は本発明によるタイヤの温度分布予測を行うための熱解析モデルM2の概要を示す図である。
上記応力解析モデルM1は、タイヤモデル10とリムモデル20と路面モデル30とから構成され、タイヤモデル10については、トレッド部11やサイド部12などのゴム部材とビードワイヤ13とをソリッド要素でモデル化し、ベルト14,カーカスプライ15等の補強部材はシェル要素、膜要素、リバー要素でモデル化し、リムモデル20についてはソリッド要素でモデル化している。一方、路面30は、平坦な剛体シェル要素でモデル化しているが、実際の路面凹凸をモデル化することも可能である(なお、図1(a)ではリムモデル20については省略した)。
一方、熱解析モデルM2は、上記タイヤモデル10及びリムモデル20と同様に分割したタイヤモデル40及びリムモデル50とから構成される数値解析モデルに、更に、タイヤ内部の気体(ここでは、空気)を有限個の要素に分割した内部空気モデル60を付加して成る3次元熱解析モデルのカットサンプルモデルまたは軸対称の2次元解析モデルで、本例では、この熱解析モデルM2について、熱解析計算を行って、タイヤの表面及び内部の温度分布を求める。
まず、図1に示すような応力解析モデルを作成する(ステップS11)とともに、上記各モデル10〜30の各要素に、それぞれ初期設定温度における弾性率などの材料物性を初期特性として与える(ステップS12)。
そして、上記応力解析モデルを用いて負荷または転動解析を行ない、タイヤ各部に作用する応力σと歪量εとを算出する(ステップS13)。
ここで、タイヤを転動させる方法としては、車軸周りにタイヤ、ホイールが自由に回転するように境界条件を設定したり、ジョイント要素を使う等のモデル作成を行い、路面または車軸のどちらか一方を固定し、もう一方をタイヤ前後方向に並行移動させることで解析できる。更には、タイヤにスリップ角やキャンバー角を付与したり、タイヤにスリップ角やキャンバー角がついたように路面を移動させることも可能である。なお、上記転動解析に代えて、タイヤモデル10の平押し計算(負荷解析)をおこなってもよい。
タイヤ各部の応力σと歪量εとの算出が完了した後には、各要素のタイヤ1回転分の歪エネルギーを計算し、これに各要素の上記初期設定温度におけるtanδを乗算して各要素の歪エネルギーロスを算出して、タイヤの発熱分布を求める(ステップS14)。
本例のように、熱解析モデルM2として、タイヤモデル40とリムモデル50とに内部空気モデル60とを付加したモデルを採用することにより、図4に示すように、タイヤモデル40のトレッド部41やサイド部42から放出される熱の流れだけでなく、ビード部46からリムモデル50のフランジ部51を介して外気に放出される熱の流れや、タイヤモデル40の内表面からリムモデル50のベース部52に伝導されて外気に放出される熱の流れについても考慮することができるので、タイヤの温度分布を精度よく求めることができる。
なお、上記トレッド部41の熱解析計算は、路面に接している状態と路面とは接していない状態との平均的な熱の流れを用いて行う。
なお、タイヤの発熱はトレッド部が主となるので、上記ステップS13で行う応力解析をタイヤモデル10のみで行ってもよい。
また、上記例では、熱解析モデルM2で、リム部のみをモデル化したリムモデル50を用いたが、ホイールのリム部及びディスク部を構成する材料は熱伝導性が良好なので、熱解析においては、ホイール全体をモデル化すれば、タイヤ温度の予測精度を更に向上させることができる。
また、熱解析計算は3次元モデルを用いれば精度は向上するが境界条件が複雑になるだけでなく、計算時間が膨大となるといった問題点がある。タイヤは回転体であるので、本例のように、カットサンプル型または軸対称の2次元解析モデルを用いて行うようにすれば、計算を効率よく行うことができる。
実施例1はタイヤモデルにリムモデルのみを付加したもの、実施例2は内部空気モデルのみを付加したもので、実施例3は、図5(a)に示すような、タイヤとリムと内部空気とをモデル化した熱解析モデルを用いて熱解析を行ったものである。
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜3は、従来例の予測温度より低く、かつ、実測温度にかなり近いことから、本発明の方法を用いることにより、リムからの放熱及び内部空気からリムを介しての放熱を正確に把握することができ、タイヤ温度の予測精度を大幅に向上させることができることが確認された。
また、実施例1,2より、リムからの放熱と内部空気からの放熱とはほぼ同等であり、実施例3のように、リムと内部空気とをモデル化してタイヤモデルに付加することにより、タイヤ温度の予測精度を更に向上させることができることが確認された。
また、上記Tタイプのタイヤの予測箇所及び測定箇所は、3ベルト端、プライ端、ナイロンチェーファー端(プライ端がワイヤーチェーファー端よりも高い構造のタイヤの場合)またはワイヤーチェーファー端(ワイヤーチェーファー端がプライ端よりも高い構造のタイヤの場合;表2の*印〜TBR-2)の3箇所である。
表2から明らかなように、本発明の実施例4〜6は、従来例の予測温度より低く、かつ、実測温度にかなり近いことから、本発明の方法を用いることにより、Tタイプのタイヤにおいても、温度の予測精度を大幅に向上させることができることが確認された。
また、実施例4,5より、空気圧が高く、内部空気量が相対的多いTタイプのタイヤでは、内部空気からの放熱の方がリムからの放熱よりも若干影響が大きいこともわかった。また、実施例6のように、リムと内部空気とをモデル化してタイヤモデルに付加することにより、Tタイプのタイヤにおいても、タイヤ温度の予測精度を更に向上させることができることが確認された。
なお、構造の違いはそれほど大きくはなかった。
13 ビードワイヤ、14 ベルト、15 カーカスプライ、20 リムモデル、
30 路面モデル、
M2 熱解析モデル、40 タイヤモデル、41 トレッド部、42 サイド部、
46 ビード部、50 リムモデル、51 フランジ部、52 ベース部、
60 内部空気モデル。
Claims (4)
- 3次元タイヤモデルまたは3次元タイヤモデルと路面モデルとから成る応力解析モデルを作成するとともに、上記タイヤモデルの各ゴム部材の要素に弾性率を与えて、負荷または転動解析を行ってタイヤ各部の応力と歪量とを算出した後、上記算出されたタイヤ各部の応力と歪量とゴム部材の損失正接とを用いて求められたタイヤの発熱分布に基づいて熱解析モデルを作成し、この熱解析モデルを用いて熱解析計算を行って、タイヤの表面及び内部の温度分布を予測するタイヤの温度分布予測方法において、上記熱解析モデルとして、タイヤモデルに、タイヤ内部の空気を有限個の要素に分割したモデル、及び、少なくともリム部を含むホイールの一部または全部を有限個の要素に分割したモデルのいずれか一方または両方を付加した熱解析モデルを作成し、この熱解析モデルを用いて上記熱解析計算を行うようにしたことを特徴とするタイヤの温度分布予測方法。
- 上記熱解析計算をカットサンプルモデルまたは軸対称の2次元解析モデルを用いて行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの温度分布予測方法。
- 請求項1または請求項2に記載のタイヤの温度分布予測方法の熱解析計算に用いられる熱解析モデルであって、タイヤモデルに、タイヤ内部の空気を有限個の要素に分割したモデル、及び、少なくともリム部を含むホイールの一部または全部を有限個の要素に分割したモデルのいずれか一方または両方を付加して成ることを特徴とするタイヤの熱解析モデル。
- タイヤの表面及び内部の温度分布を、タイヤを有限個の要素に分割した解析モデルを用いて予測計算するための計算プログラムであって、
3次元のタイヤモデルまたは3次元タイヤモデルと路面モデルとから成る応力解析モデルを作成する第1のステップと、
上記タイヤモデルの各ゴム部材の要素に弾性率を与える第2のステップと、
上記応力解析モデルを用いて負荷または転動解析を行ってタイヤ各部の応力と歪量とを算出する第3のステップと、
上記算出されたタイヤ各部の応力と歪量とから歪エネルギーの密度分布を求め、この密度分布に損失正接を乗算してタイヤの発熱分布を求める第4のステップと、
タイヤモデルに、タイヤ内部の空気を有限個の要素に分割したモデル、及び、少なくともリム部を含むホイールの一部または全部を有限個の要素に分割したモデルを付加した3次元の熱解析モデルを作成するとともに、この3次元の熱解析モデル、もしくは、カットサンプルモデルまたは軸対称の2次元解析モデルについて、上記発熱分布に基づいて熱解析計算を行って、タイヤの表面及び内部の温度分布を求める第5のステップ、とを備えたことを特徴とするタイヤの温度分布予測計算プログラム。
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