JP2007198507A - クラッチカバー組立体 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩耗補償機構が正常に作動するクラッチカバー組立体を提供する。
【解決手段】クラッチカバー組立体1は、エンジンのフライホイール51にクラッチディス組立体52の摩擦部材53を押し付け及び押し付け解除するためのものであって、クラッチカバー2と、プレッシャープレート3と、環状弾性部4aを有するダイヤフラムスプリング4と、第1摩耗補償機構9と、リベット85とを備えている。リベット85はクラッチカバー2に設けられており、摩擦部材53の押し付けを解除する動作中に環状弾性部4aを軸方向に係止する。
【選択図】図3

Description

本発明は、クラッチカバー組立体、特に、エンジンのフライホイールにクラッチディス組立体の摩擦部材を押し付けおよび押し付け解除するためのものに関する。
クラッチカバー組立体は、一般に、エンジンのフライホイールに装着され、エンジンの駆動力をトランスミッション側に伝達するために用いられている。このようなクラッチカバー組立体は、主に、フライホイールに固定されるクラッチカバーと、フライホイールとの間でクラッチディスク組立体の摩擦部材を挟持するためのプレッシャープレートと、プレッシャープレートをフライホイール側に押圧するためのダイヤフラムスプリングとから構成されている。ダイヤフラムスプリングは、環状弾性部と、環状弾性部の内周縁から径方向内側に延びる複数のレバー部とからなる。ダイヤフラムスプリングは、プレッシャープレートを押圧する機能とともに、プレッシャープレートへの押圧を解除するためのレバー機能も有している。
クラッチカバー組立体の押付荷重特性を説明する。押付荷重特性とは、ダイヤフラムスプリングの荷重特性において押付荷重としての使用領域を表すものである。例えば図11に示すように、押付荷重特性20において、クラッチカバー組立体の有効使用領域(摩耗代)は、一定の押付荷重が得られる領域(新品のセットライン25から、摩擦部材が摩耗限界まで達したウェアーライン26まで)である。
次に、クラッチカバー組立体のレリーズ荷重特性について説明する。レリーズ荷重特性とは、レリーズレバーの作動量(レバーストローク量)と、レリーズレバー先端に作用する荷重(レリーズ荷重)の関係を表すものである。例えば、図14に示すように、レリーズ荷重特性60は、レバー作動量ゼロから直線的に増大していく第1部分61と、なだらかに小さくなっていく第2部分62とを有しており、両者の接点がピークである荷重バランス点63となっている。第1部分61はダイヤフラムスプリングのレバー剛性を表しており、第2部分62は押付荷重特性におけるセットラインから図右側への変化に対応している。
押付荷重特性20は、図11に示すように、ダイヤフラムスプリングの変位量がゼロから大きくなるにつれて、一定の割合で増大していくが、たわみ量がある点(ピーク点)を越えると以後はなだらかに減少していき、さらにあるたわみ量を超えるとなだらかに増大していく。このため、有効使用領域内では、山部分21(上側に凸となる部分)となっており、摩擦部材の摩耗が大きくなるにつれて(セットラインが図の左側に移動するにつれて)押付荷重が大きくなる。すなわち、摩擦部材が摩耗すると、レリーズ荷重が大きくなり、さらにはクラッチペダル踏力が大きくなってしまう。
そこで従来より、摩擦部材が摩耗した場合にダイヤフラムスプリングの姿勢を初期状態に戻すことで、押付荷重特性においてセットラインを一定に維持するための摩耗補償機構が用いられている(例えば、特許文献1を参照。)。摩耗補償機構は、主に、クラッチカバーとダイヤフラムスプリングとの間に配置されたファルクラムリングと、ファルクラムリングをプレッシャープレートから離れる方向に付勢する付勢機構と、ファルクラムリングがプレッシャープレートから離れるのを防ぐとともに摩擦フェーシングに摩耗が生じた場合に摩耗量だけファルクラムリングがプレッシャープレートから軸方向に移動するのを許容する規制機構とを有している。
特開平10−227317号公報
以上に述べた摩耗補償機構では、クラッチ連結時におけるプレッシャープレートの位置を基準としてプレッシャープレートの移動量を一定に制限している。これは、摩擦部材の摩耗量を、クラッチレリーズ時にプレッシャープレートに設けられたファルクラムリングとダイヤフラムスプリングとの軸方向間に形成される隙間として検出するためである。したがって、摩擦部材の摩耗量を正確に検出し摩耗補償機構を正常に作動させるためには、クラッチレリーズ時におけるダイヤフラムスプリングの位置が一定であることが必要とされる。このため、AMT(Automatic Manual Transmission)に搭載されるクラッチカバー組立体では、摩耗補償機構を正常に作動させるために、例えばレリーズ装置に位置検出センサを設置し、クラッチレリーズ時においてレリーズ装置を所定の停止位置まで移動させている。
しかし、センサが設置されていないMT(Manual Transmission)の場合、クラッチ連結時においては、摩擦部材の摩耗に伴いプレッシャープレートの停止位置が変化すると、それに伴いダイヤフラムスプリングの停止位置も変化する。このため、例えばレリーズストロークが一定の場合は、摩擦部材の摩耗に伴いクラッチレリーズ時におけるダイヤフラムスプリングの停止位置が変化する。これにより、摩擦部材の摩耗量を正確に検出することができず、摩耗補償機構が正常に作動しなくなる。
以上に述べたように、摩耗補償機構を備えたクラッチカバー組立体において、摩耗補償機構を正常に作動させることは困難である。
本発明の課題は、レリーズ装置の位置検出センサが設置されていない車両においても摩耗補償機構が正常に作動するクラッチカバー組立体を提供することにある。
第1の発明としてのクラッチカバー組立体は、エンジンのフライホイールにクラッチディスク組立体の摩擦部材を押し付け及び押し付け解除するためのクラッチカバー組立体であって、フライホイールに固定されたクラッチカバーと、クラッチカバーに対して相対回転不能に連結され、フライホイールとの間で摩擦部材を挟むためのプレッシャープレートと、クラッチカバーに支持され、プレッシャープレートをフライホイール側に付勢する環状弾性部を有するダイヤフラムスプリングと、プレッシャープレートの押圧面と反対側に環状弾性部と当接可能に装着され、摩擦部材の摩耗に対してダイヤフラムスプリングの姿勢を維持するための摩耗補償機構と、クラッチカバーに設けられ、摩擦部材の押し付けを解除する動作中に環状弾性部を軸方向に係止する制限部材とを備えている。
このクラッチカバー組立体は、摩擦部材の押し付けを解除する動作中、すなわちクラッチレリーズ動作中において、制限部材により環状弾性部が軸方向に係止される。このため、クラッチレリーズ時の環状弾性部の位置が一定となり、摩耗補償機構と環状弾性部との間に形成される隙間により摩耗量を正確に検出することができる。これにより、このクラッチカバー組立体では摩耗補償機構を正常に作動させることができる。
第2の発明としてのクラッチカバー組立体は、第1の発明において、ダイヤフラムスプリングの内周部を軸方向へ移動させ、プレッシャープレートへの付勢力を解除するためのレリーズ装置をさらに備えている。摩擦部材の摩耗量が摩耗補償機構が確実に作動する最小値に達したときのクラッチ連結時のレリーズ装置の軸方向位置から、クラッチレリーズ時において制限部材により環状弾性部が係止されたときのレリーズ装置の軸方向位置までの距離よりもレリーズ装置のレリーズストロークは長い。
この場合、クラッチレリーズ時において、環状弾性部が制限部材に係止され、環状弾性部の位置が一定となる。これにより、摩耗補償機構を正常に作動させることができる。
ここで、「摩擦部材の摩耗量が摩耗補償機構が確実に作動する最小値に達したとき」とは、ダイヤフラムスプリングとの接触部分やその他の可動部分に作用する摩擦力に打ち勝って摩耗補償機構が作動し得る最小の摩耗量に達したときを意味している。
これにより、摩耗補償機構を確実に作動させることができる。
第3の発明としてのクラッチカバー組立体は、第1の発明において、制限部材が環状弾性部のプレッシャープレートと当接する部分に対向する位置に配置されている。
第4の発明としてのクラッチカバー組立体は、第1の発明において、制限部材がクラッチカバーに固定されクラッチカバーから軸方向エンジン側へ突出している。
第5の発明としてのクラッチカバー組立体は、第1の発明において、制限部材がクラッチカバーと一体成形されクラッチカバーから軸方向エンジン側へ突出している。
本発明では、クラッチカバー組立体が制限部材を備えているため、摩耗量を正確に検出することができ、レリーズ装置の位置検出センサが設置されていない車両においても摩耗補償機構が正常に作動するクラッチカバー組立体を提供することができる。
(1)クラッチカバー組立体の全体構造
図1〜図4に示すプッシュタイプのダイヤフラムスプリング式クラッチカバー組立体1は、エンジンのフライホイール51に対してクラッチディスク組立体52の摩擦部材53を押し付けてクラッチを連結し、あるいは押し付けを解除してクラッチを切断するための装置である。なお、摩擦部材53は、摩擦フェーシング53aとクッショニングプレート53bとを有し、軸方向に所定範囲内でたわみ可能なクッショニング機能を有している。
図1に示すO−O線が、フライホイール51およびクラッチカバー組立体1の回転軸線である。以下、図の左側を軸方向エンジン側といい、図の右側を軸方向トランスミッション側という。図2に示す矢印R1方向がクラッチ装置の回転方向であり、矢印R2方向がその反対方向である。なお、図1、3および4における各部材の位置および姿勢はクラッチディスク組立体52の摩擦部材53に摩耗が生じていない初期段階でクラッチが連結された状態である。
クラッチカバー組立体1は、フライホイール51のトルクをクラッチディスク組立体52に伝達又は遮断するための装置であり、主に、クラッチカバー2と、プレッシャープレート3と、ダイヤフラムスプリング4とから構成されている。
クラッチカバー2は、概ね皿形状のプレート部材であり、外周部が例えばボルトによりフライホイール51に固定されている。クラッチカバー2は、環状のクラッチカバー本体2aと、クラッチカバー本体2aの外周側に形成されフライホイール51の外周部に対して軸方向に隙間をあけて対向する円板状部2dと、クラッチカバー本体2aの内周側に形成された4つの平坦部2bとを有している。平坦部2bはクラッチカバー本体2aの内周部から半径方向内側へ延びる平坦な部分であり、平坦部2bには後述する低レリーズ荷重特性実現機構10が装着されている。また、クラッチカバー本体2aには、複数のリベット85が取り付けられている(後述)。
プレッシャープレート3は、クラッチカバー2の内周側において、クラッチディスク組立体52の摩擦フェーシング53aとクラッチカバー2との軸方向間に配置された環状の部材である。プレッシャープレート3には、フライホイール51に対向する側に環状でかつ平坦な押圧面3aが形成されている。プレッシャープレート3の第2軸方向側にはクラッチカバー2と対向する第2軸方向面3bが形成されている。押圧面3aとフライホイール51との間には、クラッチディスク組立体52の摩擦部材53が配置される。プレッシャープレート3は、複数のストラッププレート7によって、クラッチカバー2に対して、軸方向には移動可能であるが相対回転不能に連結されている。具体的には、各ストラッププレート7のR2側端はボルト56によりプレッシャープレート3の外周部に固定され、R1側端は図示しないリベットによりクラッチカバー2に固定されている。この連結によって、プレッシャープレート3は、クラッチカバー2とともにR1側に回転するようになっている。また、クラッチ連結状態においてストラッププレート7は軸方向にたわんでおり、プレッシャープレート3に対して軸方向トランスミッション側に付勢力を与えている。
ダイヤフラムスプリング4は、プレッシャープレート3とクラッチカバー2との間に配置された円板状部材であり、環状弾性部4aと、環状弾性部4aの内周部から径方向内側に延びる複数のレバー部4bとから構成されている。環状弾性部4aの内周部は、第1摩耗補償機構9の第2アジャストリング92(後述)に当接している。環状弾性部4aの外周部はワイヤリング5を介してクラッチカバー2に支持されている。この状態で環状弾性部4aは、第1摩耗補償機構9(後述)を介して、プレッシャープレート3をフライホイール51側に付勢している。ダイヤフラムスプリング4のレバー部4b間はスリットになっており、そのスリットの外周部には小判状の孔4cが形成されている。ダイヤフラムスプリング4のレバー部4bの先端にはプッシュタイプのレリーズ装置8が係合している。このレリーズ装置8は、ダイヤフラムスプリング4のレバー部4bの先端を軸方向へ移動させ、プレッシャープレート3への付勢力を解除するための装置であり、レリーズベアリング等から構成されている。
(2)第1摩耗補償機構
次に、図1〜図10を用いて第1摩耗補償機構9について説明する。図5に第1摩耗補償機構9の平面概略図、図6に第1摩耗補償機構9の側面概略図、図7に第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の平面概略図、図8に第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の側面概略図(内周側および外周側から見た側面概略図)、図9に第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の断面概略図(図7のA−A断面およびB−B断面)、図10に第1摩耗補償機構9の動作説明図を示す。
第1摩耗補償機構9は、クラッチディスク組立体52の摩擦フェーシング53aが摩耗した後にダイヤフラムスプリング4の姿勢を初期の状態に復帰させる、すなわちダイヤフラムスプリング4からプレッシャープレート3への押付荷重を一定に保つための機構である。
図3〜図5に示すように、第1摩耗補償機構9は、プレッシャープレート3とダイヤフラムスプリング4との間に配置されており、主に、摩擦部材53側に配置された第1部材としての第1アジャストリング91と、第1アジャストリング91のクラッチカバー2側に配置された第2部材としての第2アジャストリング92と、第1アジャストリング91と第2アジャストリング92とを回転方向に弾性的に連結する調整用弾性部材としての複数のリターンスプリング90とから構成されている。
第1アジャストリング91および第2アジャストリング92は、ダイヤフラムスプリング4の付勢力をプレッシャープレート3に伝達するとともに、クラッチ連結時におけるダイヤフラムスプリング4の姿勢を一定に保つための部材である。具体的には図3〜8に示すように、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92は、プレッシャープレート3の突出部3cの外周側に相対回転可能に挿嵌された環状の部材であり、クラッチ連結時にはプレッシャープレート3とダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aとの間に狭持される。
図7〜図9に示すように、第1アジャストリング91は、1枚のプレートから一体成形された板金製の部材であり、回転軸O−Oを含む平面における断面がクラッチカバー2側(摩擦部材53と反対側)に開いた略U字形状を有している。第1アジャストリング91は、プレッシャープレート3に軸方向に当接する環状の第1当接部93と、第1当接部93の内周部および外周部から軸方向へ延びるように形成された1対の第1摺動部94a、94bと、第1当接部93から内周側に突出しプレッシャープレート3の突出部3cと摺動可能な複数の第1突起部95とから主に構成されている。
図6および図8に示すように、第1摺動部94a、94bのクラッチカバー2側には、R2方向(図8の右方向)に向かって下るように傾斜する複数の第1摺動面94c、94dと、第1摺動面94c、94d同士の間にR1方向(図8の左方向)に向かって下るように傾斜する複数の第1当接面94e、94fとが形成されている。第1摺動部94a、94bは、第1当接面94e、94fに比べて傾斜が緩やかである。また図4および図9に示すように、第1当接部93の摩擦部材53側には摩擦部材53側に突出しプレッシャープレート3に当接可能な環状の第1環状突出部93aが形成されている。
第2アジャストリング92は、本実施形態においては第1アジャストリング91と同形状を有している。図7〜図9に示すように、第2アジャストリング92は、1枚のプレートから一体成形された板金製の部材であり、回転軸O−Oを含む平面における断面が摩擦部材53側に開いた略U字形状を有している。図7に示すように、第2アジャストリング92は、第2当接部96と、第2摺動部97a、97bと、第2突起部98とから主に構成されており、第2摺動部97a、97bには第2摺動面97c、97dと、第2当接面97e、97fとが形成されている。第2当接部96にはダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aと当接可能な第2環状突出部96aが形成されている。
図7〜図9に示すように、第1突起部95は、第1当接部93の内周部から延びる爪状の部分であり、第1摺動部94a、94bよりも半径方向内側へ突出している。また図4に示すように、第1突起部95は軸方向クラッチカバー2側(摩擦部材53と反対側)へ延びている。図7〜図9に示すように、第2突起部98は、第2当接部96の内周部から延びる爪状の部分であり、第2摺動部97a、97bよりも半径方向内側へ突出している。また図4に示すように、第2突起部98は軸方向摩擦部材53側へ延びている。第1突起部95および第2突起部98は、半径方向位置がほぼ一致しており、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92を組み合わせた状態において回転方向に当接可能となっている。
以上に説明した第1アジャストリング91および第2アジャストリング92は、第1摺動面94c、94dと第2摺動面97c、97dとが当接するように組み合わされている。組み合わされた状態で第1アジャストリング91と第2アジャストリング92とが相対回転すると、テーパ状の第1摺動面94c、94dおよび第2摺動面97c、97dが摺動し、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92が軸方向に相対移動する。第1当接面94e、94fおよび第2当接面97e、97fが回転方向に当接する、あるいは第1突起部95および第2突起部98が回転方向に当接すると、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の相対回転は停止する。
また、組み合わされた第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の断面はほぼ環状であり、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92により形成された空間に2つのリターンスプリング90が弾性変形可能に配置されている。リターンスプリング90は、例えば引っ張りばねであり、その端部93a、93bが第1アジャストリング91および第2アジャストリング92に引っかけられている。すなわち、リターンスプリング90の引っ張り力により、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92が相対回転する。ここでは、第2アジャストリング92が第1アジャストリング91に対してR1方向(図6の左方向)に相対回転するように、リターンスプリング90は配置されている。
ここで、図10を用いて第1摩耗補償機構9の動作について説明する。図10(a)〜(c)に各状態における第1摩耗補償機構9の側面図を示す。図10(a)に示すように、クラッチカバー組立体1に組み込まれた初期状態においては、第1当接面94e、94fと第2当接面97e、97fとが当接する程度にリターンスプリング90が引っ張られている。このとき、第1摩耗補償機構9の軸方向の寸法が最小となる。
リターンスプリング90の引っ張り力により第1アジャストリング91および第2アジャストリング92が相対回転すると、第1摺動面94c、94および第2摺動面97c、97dが摺動し、第1摺動面94c、94および第2摺動面97c、97dに沿って軸方向(図10の上下方向)に相対移動する(図10(b))。相対回転が進行すると第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の軸方向の合計寸法が徐々に大きくなる。
第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の相対回転が進行し、第1突起部95および第2突起部98が回転方向に当接すると、相対回転は停止する(図10(c))。このとき、第1摩耗補償機構9の軸方向の寸法が最大となる。
以上の動作により、摩擦部材53の摩擦フェーシング53aが摩耗し、クラッチ連結時におけるプレッシャープレート3の軸方向の位置が変化しても、ダイヤフラムスプリング4の姿勢を一定に保つことができる。
(3)低レリーズ荷重特性実現機構
図2および図3を用いて、低レリーズ荷重特性実現機構10について説明する。低レリーズ荷重特性実現機構10は、摩擦部材53におけるクッショニング機能による低レリーズ荷重化を、摩擦部材53が摩耗した状態でも実現するためのレリーズ補助用機構である。最初に、図14を用いて、摩擦部材におけるクッショニング機能による低レリーズ荷重化を説明する。クッショニング機能がない場合は、レリーズ荷重特性60は、ピークすなわち荷重バランス点63までは線形に変化し、そこからなだらかに小さくなっていき、またなだらかに大きくなっていく。また、荷重バランス点63まではプレッシャープレートの切れ量65はゼロである。摩擦部材がクッション機能を有している場合は、レリーズ時のプレッシャープレートの動きが早くなり、プレッシャープレートの切れ量65はクッショニングプレートがない場合に比べて早く大きくなる。また、図14において荷重バランス点63におけるピークが大幅に小さくなり、低レリーズ荷重特性が実現される。以上の結果が得られるのは、プレッシャープレートの位置がレリーズ動作中において、図6の押付荷重特性において負の勾配方向(右方向)に移動するからである。したがって、摩擦部材の摩耗によってセットラインの位置が変わればプレッシャープレートはレリーズ動作中において平坦部分や正勾配部分を移動することも考えられる。しかし、本発明の実施形態では、第1摩耗補償機構9によって、セットラインは変化しない。また設計目的により、セットラインの初期設定を平坦部分や正勾配の部分に設定する場合においても本発明の実施形態では低レリーズ荷重特性実現機構10の働きにより、レリーズ時に強制的に負の荷重勾配を創出するのでクラッチディスクのクッショニング機能の効果も相まって低レリーズ荷重を実現することができる。
クラッチカバー組立体1は2つの低レリーズ荷重特性実現機構10を備えており、図2に示すように、低レリーズ荷重特性実現機構10はクラッチカバー2に形成された4つの平坦部2bのうち2カ所に装着されている。図4に示すように、低レリーズ荷重特性実現機構10は、プレッシャープレート3の第2軸方向面3bから軸方向トランスミッション側に延びる支持部材としての支持ボルト31と、支持ボルト31の端部に螺合する略キャップ状のホルダー32と、ホルダー32の外周側に挿嵌された第1支持部材33と、ホルダー32に嵌め込まれたスナップリング38aと、第1支持部材33とスナップリング38aとの間に配置された中間部材38bと、第1支持部材33に嵌め込まれた環状の第2支持部材35と、支持ボルト31の外周側に挿入された第2アジャストスプリング39と、ホルダー32の摩擦部材53側に配置されたガイドプレート34と、内周縁が第1支持部材33および第2支持部材35に支持された弾性部材としての第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37と、平坦部2bに固定され第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37を平坦部2bとの間に収容するスペーサ46、ホルダーリング48およびストッパ41とから主に構成されている。
図4に示すように、支持ボルト31は、ダイヤフラムスプリング4の小判状の孔4cを軸方向に貫通している胴部31aと、表面にネジが螺旋状に形成されたネジ部31bとを有している。胴部31aの外周側には、第2アジャストスプリング39が巻かれている(後述)。ネジ部31bは、ダイヤフラムスプリング4に形成された孔4c内に配置されている。
ホルダー32は、第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37から摩擦部材53側と軸方向反対側に荷重を受けるための部材であり、軸方向に延びる筒状のホルダー本体32aと、ホルダー本体32aの軸方向エンジン側の端部から外周側に延びる環状のフランジ部32bと、ホルダー本体32aの軸方向トランスミッション側の端部を閉じるように形成された頭部32cとから構成されている。
ホルダー本体32aは、内周面にネジ部31bに螺合するネジ32dが形成されており、支持ボルト31のネジ部31bと螺合している。フランジ部32bは、第2アジャストスプリング39からのトルクを受ける部分であり、ホルダー本体32aと一体成形されている。フランジ部32bには軸方向に貫通する複数の孔32eが形成されており、第2アジャストスプリング39の第1係合端39aは孔32eを貫通している。
第1支持部材33は、ホルダー32の外周側に配置された筒状の部材である。ホルダー32の軸方向トランスミッション側の端部の外周面にはスナップリング38aが嵌め込まれており、第1支持部材33の端部とスナップリング38aとの間には中間部材38bが挟み込まれている。また、第1支持部材33の内周面とホルダー32の外周面との間には半径方向隙間が確保されている。すなわち、第1支持部材33はホルダー32により、わずかな隙間を保った状態で、軸方向に移動不能に、かつ、相対回転可能に保持されている。第2支持部材35は、第1支持部材33の軸方向トランスミッション側部分の外周面に溶接又はかしめ等により固定された環状の部材である。
以上のように、ホルダー32と第1支持部材33と第2支持部材35とは、軸方向に一体に動く1つの組立体を構成している。
第2アジャストスプリング39は、捩りコイルスプリングであって、クラッチカバー2とプレッシャープレート3との軸方向間、より詳細にはホルダー32の軸方向エンジン側(摩擦部材53側)に配置されている。第2アジャストスプリング39とホルダー32との軸方向間には、円形のプレート部材であるガイドプレート34が配置されている。第2アジャストスプリング39は、支持ボルト31の胴部31aの外周側に巻かれており、第2アジャストスプリング39の第1係合端39aはガイドプレート34の孔34aを貫通してホルダー32の孔32eに挿入されている。また第2アジャストスプリング39の第2係合端39bは支持ボルト31の孔31cに嵌め込まれ、第2アジャストスプリング39が支持ボルト31に装着されている。すなわち、第2アジャストスプリング39が巻き上げられた状態では、第2アジャストスプリング39がホルダー32に対して回転方向片側にほぼ一定の荷重を与えている。この場合、第2アジャストスプリング39からの荷重付与方向は、ホルダー32がネジ部31bに沿って軸方向トランスミッション側に移動していく方向である。
以上のように、第2アジャストスプリング39から付与されるトルクにより、ホルダー32、第1支持部材33および第2支持部材35は、支持ボルト31に対して相対回転および軸方向に相対移動可能となる。
また、以上に説明した構成により、第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37は軸方向に弾性変形可能に保持されている。図4に示すように、第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37は、ダイヤフラムスプリング4の付勢力に対抗する荷重を発生するための部材である。具体的には、第1コーンスプリング36の内周縁は第2支持部材35に軸方向エンジン側へ支持されており、外周縁は後述するスペーサ46に軸方向トランスミッション側へ支持されている。すなわち、第1コーンスプリング36は第2支持部材35とスペーサ46との軸方向間において弾性変形可能に保持されている。また、第2コーンスプリング37は、第1コーンスプリング36と平坦部2bとの間に配置されており、内周縁が第1支持部材33の環状突起33aに軸方向トランスミッション側へ支持されており、外周縁が第1コーンスプリング36に軸方向エンジン側へ支持されている。すなわち、第2コーンスプリング37は第1支持部材33と第1コーンスプリング36との軸方向間において弾性変形可能に保持されている。
ここで、図15〜図16を用いてスペーサ46、ホルダーリング48およびストッパ41について詳細に説明する。図15(a)にスペーサ46の平面図、図15(b)にホルダーリング48の平面図、図16(a)、(b)にストッパ41の断面図および平面図を示す。
スペーサ46は、第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37が軸方向へ弾性変形するための空間S1(図4参照)を確保する環状のプレート部材であり、図15(a)に示すように孔46aを有している。スペーサ46の内径は第1コーンスプリング36の外径よりも小さく、第1コーンスプリング36の外周縁はスペーサ46により軸方向トランスミッション側へ支持されている。スペーサ46の内周側(孔46aの内部)には第1コーンスプリング36の内周部および第2コーンスプリング37が配置されている。
ホルダーリング48は、第1コーンスプリング36の半径方向の位置決めをするための環状の部材であり、図15(b)に示すようにスペーサ46の軸方向トランスミッション側に配置されている。図15(b)に示すようにスペーサ46とほぼ同じ形状を有している。ホルダーリング48はスペーサ46の孔46aよりも内径が大きい孔48aを有している。ホルダーリング48の内径は第2コーンスプリング37の外径よりも大きく、ホルダーリング48の内周側(孔48aの内部)には半径方向の隙間を介して第1コーンスプリング36が配置されている。
ストッパ41は、プレッシャープレート3の軸方向トランスミッション側への移動量を規制するための環状の部材であり、図4および図16に示すように環状の係止部41aを有している。図4に示すように、係止部41aの内径は前述の中間部材38bの外径よりも小さく設定されており、係止部41aと中間部材38bとは軸方向に当接可能である。またクラッチ連結時(図4に示す状態)において、係止部41aと中間部材38bとの軸方向間には隙間42が形成されている。これにより、クラッチの連結が解除されプレッシャープレート3が軸方向トランスミッション側に移動すると、係止部41aと中間部材38bとが当接し、プレッシャープレート3の移動量が制限される。なお、スペーサ46はホルダーリング48およびストッパ41とともにボルト49によりクラッチカバー2の平坦部2bに固定されている。
以上のように、第1コーンスプリング36および第2コーンスプリング37はスペーサ46、ホルダーリング48およびストッパ41により形成された空間(特にスペーサ46の内周側の空間S1)において軸方向へ弾性変形可能となる。
また、以上に述べた構成により、第1コーンスプリング36は、ホルダー32等からなる構造体に対して軸方向トランスミッション側への荷重を与えることが可能であり、第2コーンスプリング37はホルダー32等からなる構造体に対して軸方向エンジン側への荷重を与えることが可能である。第1および第2コーンスプリング36,37は、クラッチ連結時にはホルダー32等にほとんど荷重を付与していないが、クラッチレリーズ動作中にはホルダー32等に軸方向トランスミッション側に荷重を与えて、レリーズ荷重を低下させる。つまり、第1コーンスプリング36の荷重が第2コーンスプリング37の荷重より大きいことになる。
ここで、低レリーズ荷重特性実現機構10の動作について説明する。図12に示すように、第1コーンスプリング36の特性43は正側(軸方向トランスミッション側)に向けて荷重を発生するようになっており、第2コーンスプリング37の特性44は負側(軸方向エンジン側)に向けて荷重を発生するようになっている。第1コーンスプリング36の特性43は谷部と山部の差が大きくて勾配が大きく、第2コーンスプリング37の特性44は谷部と山部の差が小さくて勾配が小さい。合成特性45は、谷部がクラッチエンゲージ位置に配置され、そこでの荷重がゼロになっている。なお、合成特性45の谷荷重はゼロ以下になるように設計されることが好ましい。荷重ゼロから最大レリーズ位置側に移動すると、荷重は正側に徐々に大きくなっていく。これを図13のセット荷重特性でみると、セットラインを荷重特性のピーク位置に設定した場合でもレリーズ動作を行うと、摩擦部材53におけるクッション機能によってセットラインが変位量大側にライン47のようにシフトする。つまり、押付特性において負勾配が必ず確保されており、したがってクッション機能による低レリーズ荷重化が確実に実現される。
クラッチ連結状態では、第2アジャストスプリング39によりホルダー32を回転させる力(トルク)と第1および第2コーンスプリング36,37の合成荷重(軸方向荷重)によるねじ面の摩擦力とが釣り合っており、そのためこの状態で支持ボルト31にかかる軸方向荷重はゼロよりわずかに大きい値になっている。摩擦部材53が摩耗すると、支持ボルト31、ホルダー32等は軸方向エンジン側に移動する。すると、コーンスプリング36,37の変形が進み、それら部材の荷重が低下し荷重のバランスが崩れる。そのとき、第2アジャストスプリング39がホルダー32を回転させて軸方向エンジン側に移動させる。すると、コーンスプリング36,37による軸方向の合成荷重が増加し、それに正比例してねじ面の摩擦力が増加するため、第2アジャストスプリング39のトルクによりホルダー32を回転させることが不可能になり、そこでホルダー32の軸方向移動が停止する。このように、摩擦部材53が摩耗しても、低レリーズ荷重特性実現機構10におけるコーンスプリング36,37の姿勢は、元の状態に復帰する。つまり、低レリーズ荷重特性実現機構10において第2摩耗補償機構が実現されており、その結果、コーンスプリング36,37の姿勢は摩擦部材53が摩耗しても維持され、低レリーズ荷重特性実現機構10の荷重は一定に維持される。
なお、図4に示すように、クラッチ連結状態において、中間部材38bとストッパ41との間には隙間42が確保されている。より具体的には、ストッパ41の係止部41aと中間部材38bとの間にはプレッシャープレート3の切れ代に相当する隙間が確保されている。レリーズ動作では、プレッシャープレート3、支持ボルト31およびホルダー32等が軸方向トランスミッション側に移動するため、第1コーンスプリング36の内周部が軸方向トランスミッション側に引き上げられる。やがて、ホルダー32に固定された中間部材38bがストッパ41の係止部41aに当接すると、プレッシャープレート3やホルダー32等の軸方向移動が停止する。このように、ストッパ41とホルダー32とによって、プレッシャープレートの移動量を制限するストッパー機構55が形成されている。このように、低レリーズ荷重特性実現機構10が第1摩耗補償機構9のストッパー機構55の機能を有しているため、構成が簡単になり、部品点数が少なくなる。さらに、レリーズ状態では、低レリーズ荷重特性実現機構10において支持ボルト31からホルダー32に対して軸方向の荷重が作用しているが、ネジ螺合によって軸方向に大きな荷重が発生するため、第1摩耗補償機構9におけるオーバーアジャストが生じにくい。
さらに、摩擦部材53が摩耗した場合であっても、前述したように、低レリーズ荷重特性実現機構10における第1および第2コーンスプリング36,37の姿勢は、元の状態に復帰する。つまり、摩擦部材53が摩耗してもストッパー機構55における隙間42の大きさは一定に保たれる。
(4)リベット85について
前述の第1摩耗補償機構9が正常に作動するためには摩耗補償動作は、クラッチレリーズ時におけるダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aの位置が一定であることが必要とされる。すなわち、以上に述べた内容は、クラッチカバー組立体1において絶対ストローク管理が行われていることが前提となっている。ここで、絶対ストローク管理とは、摩擦部材の摩耗量に関係なくクラッチレリーズ時におけるレリーズ装置8の停止位置を一定としていることをいう。この絶対ストローク管理は、例えばAMTなどに搭載されたクラッチカバー組立体において位置検出センサを設けることにより行われている。
しかし、MT(Manual Transmission)では、通常、位置検出センサは設けられていないため相対ストローク管理が行われている。ここで、相対ストローク管理とは、クラッチレリーズ時におけるレリーズストローク量の基準点が摩擦部材の摩耗により変化し、その変化した基準点から常に一定のストロークだけレリーズ装置8を軸方向へ移動させることをいう。この場合は、摩擦部材の摩耗に伴いクラッチレリーズ時のレリーズ装置8の停止位置が変化し、ダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aの位置も変化する。このため、環状弾性部4aの位置が一定とならず、摩耗量を正確に検出することができず、この結果、第1摩耗補償機構9が正常に作動しないおそれがある。
そこで、このクラッチカバー組立体1では、第1摩耗補償機構9を正常に作動させるために、制限部材としての複数のリベット85をさらに備えている。ここでは、このリベット85について詳細に説明する。図17に図2の部分拡大図を示す。
図17に示すように、リベット85は、クラッチカバー2のクラッチカバー本体2aに固定されており、係止部86がクラッチカバー本体2aの軸方向エンジン側に突出している。リベット85は、ダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aの外周部であって第1摩耗補償機構9の第1アジャストリング91と当接する部分に対向するように配置されている。図2に示すように、本実施形態においては8個のリベット85が円周方向に均等に配置されている。
また、このクラッチカバー組立体1では、レリーズ装置8のレリーズストロークの設定にも特徴を有している。図18に第1摩耗補償機構の作動概念図を示す。
図18において、特性70は摩擦部材が摩耗していない初期状態におけるレリーズ荷重特性、特性71は摩擦部材53の摩耗状態におけるレリーズ荷重特性を示しており、縦軸はレリーズ荷重、横軸はレリーズ装置8の軸方向位置を示している。また、直線74、76は、レリーズ荷重特性70、71に対応するダイヤフラムスプリングの動作を示しており、この場合、縦軸はダイヤフラムスプリングの軸方向移動量〔mm〕を示している。さらに、直線75、77は、レリーズ荷重特性70、71に対応するプレッシャープレートの動作を示しており、この場合、縦軸はプレッシャープレートの軸方向移動量〔mm〕を示している。なお、ダイヤフラムスプリングの軸方向移動量とは、ダイヤフラムスプリングがプレッシャープレートを付勢している部分(環状弾性部4aと第2アジャストリング92との当接点)の軸方向移動量を意味している。
図18に示すように、初期状態においてクラッチ連結時のレリーズ装置8の位置は連結位置72であり、クラッチレリーズ時のレリーズ装置8の位置はレリーズ位置78である。従来の相対ストローク管理の場合、連結位置72からレリーズ位置78までの距離S2にストロークは設定されている。一方、摩耗状態においては、クラッチ連結時のレリーズ装置8の位置は連結位置73となり、この場合、クラッチレリーズ時のレリーズ装置8の位置は、連結位置73からストロークS2だけ移動したレリーズ位置79となる。これは、摩擦部材53の摩耗に伴い、プレッシャープレート3およびダイヤフラムスプリング4の位置(より詳細には第1摩耗補償機構9と環状弾性部4aとの接触点の位置)も連結位置72aから連結位置73aへ移動するためである。
以上より、従来の相対ストローク管理では、レリーズ装置8、プレッシャープレート3およびダイヤフラムスプリング4の軸方向位置が初期状態と摩耗状態とで変化する。
この場合、ダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aの位置が摩耗に変化し、環状弾性部4aと第1摩耗補償機構9との間に隙間が形成されない。以上より、摩擦部材が摩耗しているにもかかわらず、摩耗量を検出することができず、従来の相対ストローク管理では第1摩耗補償機構9が正常に作動しないことが分かる。
そこで、本発明に係るクラッチカバー組立体1では、リベット85を備えていることに加えて、従来よりもレリーズストロークが長く設定されている。具体的には図18に示すように、ストロークS3は、従来のストロークS2とレバー高さ変化量αとの合計長さS4よりも大きく設定されている。すなわち、従来のストロークに比べてストロークS’分だけオーバーストロークさせることとなり、このクラッチカバー組立体1においては以下の関係式(1)が成立している。
S3=S2+S’>S2+α=S4・・・(1)
ここで、レバー高さ変化量とは、ダイヤフラムスプリング4のレバー部4bの先端の軸方向位置の変位量(レリーズ装置8の軸方向位置の変位量)を意味しており、レバー高さ変化量αとは、第2アジャストリング92と環状弾性部4aとの接触部分やその他の可動部分(例えば、第1アジャストリング91と第2アジャストリング92との摺動面など)に作用する摩擦力に打ち勝って第1摩耗補償機構9が作動し得る最小のレバー高さ変化量、を意味している。この関係式(1)を満たすことで、摩擦部材53が摩耗してレリーズストロークの基準位置が連結位置73まで移動しても、クラッチレリーズ時において従来の初期状態のレリーズ位置78に相当する係止位置81まで達すると環状弾性部4aがリベット85の係止部86に係止される。このとき、レリーズ装置8がストロークS’分だけオーバーストローク状態にあるため、ダイヤフラムスプリング4のレバー部4bはワイヤリング5とレリーズ装置8との間で軸方向へ弾性変形する。言い換えると、クラッチレリーズ時においては環状弾性部4aがリベット85の係止部86に軸方向トランスミッション側へ押し付けられている。
以上の構成により、クラッチレリーズ時における環状弾性部4aの停止位置を図18に示す係止位置81で一定に保つことができる。
また、クラッチレリーズ時にはリベット85により環状弾性部4aの移動量がL2で制限される。一方、プレッシャープレート3は、ストッパ41により隙間42に相当する移動量L1だけ軸方向へ移動する。したがって、環状弾性部4aと第1摩耗補償機構9との軸方向間には隙間L3が形成される。この隙間L3は摩擦部材53の摩耗量に対応した値であり、このため、隙間L3として摩耗量を検出することができる。そして、この隙間L3を詰めるように、第1摩耗補償機構9が作動し、クラッチレリーズ状態で環状弾性部4aと第2アジャストリング92とが当接し摩耗補償動作が完了する。
以上のように、レリーズストロークを従来よりも長く設定し、リベット85によりクラッチレリーズ時における環状弾性部4aの位置を一定にすることで、摩耗量を隙間L3として正確に検出することができる。これにより、このクラッチカバー組立体1では、第1摩耗補償機構9を正常に作動させることができる。
なお、上記のように第1摩耗補償機構9が作動すると、図18においてはクラッチ連結時の第1摩耗補償機構9および環状弾性部4aの接触点の位置は初期状態と同じ連結位置72aに戻る。そして、摩擦部材53の摩耗に伴うレバー部4bの軸方向位置の変位量がレバー高さ変化量αに達するたびに上記の摩耗補償動作が繰り返される。
(5)クラッチ連結・レリーズ動作
このクラッチカバー組立体1では、図示しないレリーズ装置8がダイヤフラムスプリング4のレバー部4bの先端をトランスミッション側に引き出すと、ワイヤリング5を支点としてダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aの内周部が軸方向トランスミッション側に引き上げられる。これにより、環状弾性部4aがプレッシャープレート3を押圧しなくなり、プレッシャープレート3はストラッププレート7により摩擦部材53から引き離され、最後に摩擦部材53がフライホイール51から離れる(クラッチ解除状態)。
図示しないレリーズ装置8がダイヤフラムスプリング4のレバー部4bの先端に荷重を与えていない状態で、環状弾性部4aはプレッシャープレート3に押圧荷重を与えている。その結果、クラッチディスク組立体52の摩擦部材53がフライホイール51に押し付けられ、クラッチディスク組立体52にトルクが伝達される(クラッチ連結状態)。
この状態で摩擦フェーシング53aが摩耗すると、エンゲージ状態においてプレッシャープレート3がフライホイール51側に移動する。そのため、低レリーズ荷重特性実現機構10において、支持ボルト31、ホルダー32等も軸方向エンジン側に移動する。その結果、コーンスプリング36,37が弾性変形し、それらとストッパ41の係止部41aとの間の隙間42が大きくなる。しかしコーンスプリング荷重とアジャストスプリングのトルクにより発生するホルダー32の軸力とのバランスが崩れるので第2アジャストスプリング39のトルクでホルダー32が回転する。この結果、ホルダー32が軸方向トランスミッション側へ移動し、コーンスプリング36,37の姿勢は元に戻り、隙間42も元に戻り一定値が保たれる。同時にこの状態ではプレッシャープレート3は摩擦部材53の摩耗分だけフライホイール51側に変位しており、その結果ダイヤフラムスプリング4の先端高さも変化している。本発明においてはレリーズ量は最大レリーズ時のダイヤフラムスプリング4の内径端(レバー部4bの先端)の位置で規定されており、具体的にはフライホイール51からの距離、もしくは図示しないクラッチハウジングの特定部分よりの距離で定めている。そのためダイヤフラムスプリング4をレリーズすると結果的に摩擦部材53の摩耗前よりレリーズ量が増えることになり第1摩耗補償機構9の第2アジャストリング92と接触しているダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aも余分に移動する。しかし、図19に示すように、プレッシャープレート3の移動量L1は隙間42で一定に保たれるので、結果として第1摩耗補償機構9の第2アジャストリング92とダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aとの軸方向間に隙間L3を生じる。そして、その隙間L3を埋めるように、第1摩耗補償機構9の第1アジャストリング91と第2アジャストリング92とが、第1当接部93の引っ張り力により相対回転し軸方向に相対移動する。この結果、第2アジャストリング92がダイヤフラムスプリング4の環状弾性部4aに当接しリターンスプリング90の引っ張り力と当接部の摩擦力とが釣り合った状態で、第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の相対回転が停止し、第1摩耗補償機構9の作動が完了する。
(6)別の実施形態
リベット85の別の実施形態として、以下に説明する制限部材も考えられる。図19に本発明の別の実施形態に係るクラッチカバー組立体101の縦断面概略図を示す。図19に示すように、この場合、クラッチカバー102は、環状弾性部4aと対向して配置された突起部185を有している。突起部185はクラッチカバー102にプレス加工などにより一体成形されている。
これにより、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(7)その他の実施形態
前記実施形態は本発明の一実施例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、前記実施形態はプッシュタイプのクラッチカバー組立体であるがプルタイプのクラッチカバー組立体にも本発明を適用できる。この場合、ワイヤリング5が環状弾性部4aの外周部を支持するため、リベット85や突起部185は環状弾性部4aの内周部と対向するように配置される。
また、リベット85はクラッチカバー2に螺合するボルトやクラッチカバー2に溶接により固定された部材などであってもよい。
本発明の第1実施形態に係るクラッチカバー組立体の縦断面概略図。 本発明の第1実施形態に係るクラッチカバー組立体の平面図。 本発明の第1実施形態に係るクラッチカバー組立体の縦断面概略図(図2のA−A断面)。 本発明の第1実施形態に係るクラッチカバー組立体の縦断面概略図。 第1摩耗補償機構9の平面概略図。 第1摩耗補償機構9の側面概略図。 第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の平面概略図。 第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の側面概略図(内周側および外周側から見た側面概略図)。 第1アジャストリング91および第2アジャストリング92の断面概略図(図7のA−A断面およびB−B断面)。 第1摩耗補償機構9の動作説明図。 押付荷重特性を説明するための図。 低レリーズ荷重特性実現機構の合成特性を説明するための図。 セット荷重特性において、クッショニング機能が発揮されるときに得られる負勾配特性を説明するための図。 レリーズ荷重特性を説明するための図。 スペーサ46およびホルダーリング48の平面図。 ストッパ41の断面図および平面図。 図2の部分拡大図。 第1摩耗補償機構の動作を説明するためのレリーズ荷重特性およびプレッシャープレートの切れ量の特性図。 本発明の別の実施形態としてのクラッチカバー組立体101の縦断面概略図。
符号の説明
1 クラッチカバー組立体
2 クラッチカバー
2b 平坦部
3 プレッシャープレート
4 ダイヤフラムスプリング
9 第1摩耗補償機構
90 リターンスプリング
91 第1アジャストリング
92 第2アジャストリング
10 低レリーズ荷重特性実現機構
13 支持ボルト
36 第1コーンスプリング
37 第2コーンスプリング
41 ストッパ
46 スペーサ
48 ホルダーリング
51 フライホイール
52 クラッチディスク組立体
53 摩擦部材
85 リベット(制限部材)
185 突起部(制限部材)

Claims (5)

  1. エンジンのフライホイールにクラッチディスク組立体の摩擦部材を押し付け及び押し付け解除するためのクラッチカバー組立体であって、
    前記フライホイールに固定されたクラッチカバーと、
    前記クラッチカバーに対して相対回転不能に連結され、前記フライホイールとの間で前記摩擦部材を挟むためのプレッシャープレートと、
    前記クラッチカバーに支持され、前記プレッシャープレートを前記フライホイール側に付勢する環状弾性部を有するダイヤフラムスプリングと、
    前記プレッシャープレートの押圧面と反対側に前記環状弾性部と当接可能に装着され、前記摩擦部材の摩耗に対して前記ダイヤフラムスプリングの姿勢を維持するための摩耗補償機構と、
    前記クラッチカバーに設けられ、前記摩擦部材の押し付けを解除する動作中に前記環状弾性部を軸方向に係止する制限部材と、
    を備えたクラッチカバー組立体。
  2. 前記ダイヤフラムスプリングの内周部を軸方向へ移動させ、前記プレッシャープレートへの付勢力を解除するためのレリーズ装置をさらに備え、
    前記摩擦部材の摩耗量が前記摩耗補償機構が確実に作動する最小値に達したときのクラッチ連結時の前記レリーズ装置の軸方向位置からクラッチレリーズ時において前記制限部材により前記環状弾性部が係止されたときの前記レリーズ装置の軸方向位置までの距離よりも、前記レリーズ装置のレリーズストロークは長い、
    請求項1に記載のクラッチカバー組立体。
  3. 前記制限部材は、前記環状弾性部の前記プレッシャープレートと当接する部分に対向する位置に配置されている、
    請求項1に記載のクラッチカバー組立体。
  4. 前記制限部材は、前記クラッチカバーに固定され、前記クラッチカバーから軸方向エンジン側へ突出している、
    請求項1に記載のクラッチカバー組立体。
  5. 前記制限部材は、前記クラッチカバーと一体成形され、前記クラッチカバーから軸方向エンジン側へ突出している、
    請求項1に記載のクラッチカバー組立体。
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