以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る露光装置を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに保持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。また、制御装置CONTには、露光処理に関する各種情報を記憶した記憶装置MRYが接続されているとともに、制御装置CONTに対して露光処理に関する各種情報を入力可能な入力装置INPが接続されている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLの像面側における露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすための液浸機構1を備えている。液浸機構1は、光路空間K1の近傍に設けられ、光路空間K1に液体LQを供給する供給口12及び液体LQを回収する回収口22を有するノズル部材70と、第1供給管13を介して供給口12に液体LQを供給する第1液体供給装置11と、回収口22及び回収管23を介して液体LQを回収する液体回収装置21とを備えている。後に詳述するように、ノズル部材70の内部には、供給口12と第1供給管13とを接続する流路(供給流路)14が設けられているとともに、回収口22と回収管23とを接続する流路(回収流路)24が設けられている。ノズル部材70は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1を囲むように環状に形成されている。
また、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する局所液浸方式を採用している。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板Pに転写している間、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1と、投影光学系PLの像面側に配置された基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たし、投影光学系PLと光路空間K1に満たされた液体LQとを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによって、マスクMのパターン像を基板Pに投影露光する。制御装置CONTは、液浸機構1の第1液体供給装置11を使って液体LQを所定量供給するとともに、液体回収装置21を使って液体LQを所定量回収することで、光路空間K1を液体LQで満たし、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
なお、以下の説明においては、投影光学系PLと基板Pとが対向している状態で光路空間K1が液体LQで満たされている場合を主に説明しているが、基板P以外の物体(例えば基板ステージPSTの上面94)が投影光学系PLと対向している状態で光路空間K1が液体LQで満たされている場合も同様である。
また、露光装置EXは、液体LQを噴射する液体噴射機構3を備えている。液体噴射機構3は、ノズル部材70に設けられ、液体LQを噴射する噴射口32と、第2供給管33を介して噴射口32に液体LQを供給する第2液体供給装置31とを備えている。後に詳述するように、ノズル部材70の内部には、噴射口32と第2供給管33とを接続する流路(供給流路)34が設けられている。回収口22は、光路空間K1に対して供給口12の外側に設けられており、噴射口32は、光路空間K1に対して回収口22の更に外側に設けられている。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ等の基材上に感光材(フォトレジスト)を塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
露光装置EXは、床面上に設けられたベースBPと、そのベースBP上に設けられたメインコラム9とを備えている。メインコラム9には、内側に向けて突出する上側段部7及び下側段部8が形成されている。照明光学系ILは、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明するものであって、メインコラム9の上部に固定された支持フレーム10により支持されている。
照明光学系ILは、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び露光光ELによるマスクM上の照明領域を設定する視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
本実施形態においては、第1液体供給装置11と第2液体供給装置31とは同じ液体LQを供給する。液体LQとしては純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能である。マスクステージMSTは、マスクMを真空吸着(又は静電吸着)により保持する。マスクステージMSTの下面には非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)85が複数設けられている。マスクステージMSTは、エアベアリング85によりマスクステージ定盤2の上面(ガイド面)に対して非接触支持されている。マスクステージMST及びマスクステージ定盤2の中央部にはマスクMのパターン像を通過させる開口部がそれぞれ形成されている。マスクステージ定盤2は、メインコラム9の上側段部7に防振装置86を介して支持されている。すなわち、マスクステージMSTは、防振装置86及びマスクステージ定盤2を介してメインコラム9の上側段部7に支持された構成となっている。防振装置86によって、メインコラム9の振動がマスクステージMSTを支持するマスクステージ定盤2に伝わらないように、マスクステージ定盤2とメインコラム9とが振動的に分離されている。
マスクステージMSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDの駆動により、マスクMを保持した状態で、マスクステージ定盤2上において、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。マスクステージMST上には移動鏡81が設けられている。また、移動鏡81に対向する位置にはレーザ干渉計82が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計82によりリアルタイムで計測される。レーザ干渉計82の計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計82の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動し、マスクステージMSTに保持されているマスクMの位置制御を行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、複数の光学素子で構成されており、それら光学素子は鏡筒PKで保持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4、1/5、あるいは1/8の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1は鏡筒PKより露出している。
投影光学系PLを保持する鏡筒PKの外周にはフランジPFが設けられており、投影光学系PLはフランジPFを介して鏡筒定盤5に支持されている。鏡筒定盤5は、メインコラム9の下側段部8に防振装置87を介して支持されている。すなわち、投影光学系PLは、防振装置87及び鏡筒定盤5を介してメインコラム9の下側段部8に支持された構成となっている。また、防振装置87によって、メインコラム9の振動が投影光学系PLを支持する鏡筒定盤5に伝わらないように、鏡筒定盤5とメインコラム9とが振動的に分離されている。
基板ステージPSTは、基板Pを保持する基板ホルダPHを有しており、基板ホルダPHを支持して移動可能である。基板ホルダPHは、例えば真空吸着等により基板Pを保持する。基板ステージPST上には凹部93が設けられており、基板Pを保持するための基板ホルダPHは凹部93に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部93以外の上面94は、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面となっている。なお、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面と基板ステージPSTの上面94との間に僅かな段差があってもよい。
基板ステージPSTの下面には非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)88が複数設けられている。基板ステージPSTは、エアベアリング88により基板ステージ定盤6の上面(ガイド面)に対して非接触支持されている。基板ステージ定盤6は、ベースBP上に防振装置89を介して支持されている。また、防振装置89によって、ベースBP(床面)やメインコラム9の振動が基板ステージPSTを支持する基板ステージ定盤6に伝わらないように、基板ステージ定盤6とメインコラム9及びベースBP(床面)とが振動的に分離されている。
基板ステージPSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDの駆動により、基板Pを基板ホルダPHを介して保持した状態で、基板ステージ定盤6上でXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に基板ステージPSTは、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能である。したがって、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ステージPSTの側面には移動鏡83が設けられている。また、移動鏡83に対向する位置にはレーザ干渉計84が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計84によりリアルタイムで計測される。また、露光装置EXは、基板ステージPSTに保持されている基板Pの表面の面位置情報を検出する斜入射方式のフォーカス・レベリング検出系を備えている。レーザ干渉計84の計測結果は制御装置CONTに出力される。フォーカス・レベリング検出系の検出結果も制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを駆動し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角(θX、θY)を制御して、基板Pの表面を投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面に合わせ込むとともに、レーザ干渉計84の計測結果に基づいて、基板PのX軸方向、Y軸方向、及びθZ方向における位置制御を行う。
なお、本実施形態においては、基板ステージPSTに保持されている基板Pの表面の面位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系は、光路空間K1に対して噴射口32よりも外側で基板Pの面位置情報を検出するようになっている。具体的には、フォーカス・レベリング検出系は、光路空間K1の液体LQを介さずに、光路空間K1に対して噴射口32よりも外側の基板Pの表面に基板Pの面位置情報を検出するための検出光を照射するようになっている。図1には、フォーカス・レベリング検出系による検出光Laの照射位置が示されており、走査方向(X軸方向)に関して光路空間K1の両側のそれぞれの基板Pの表面に検出光Laが照射されるようになっている。もちろん、特開2000−323404号公報に開示されているように、投影光学系PLから十分に離れた位置にフォーカス・レベリング検出系を設けて、基板Pの面位置情報を液体LQを介さずに検出してもよい。
液浸機構1の第1液体供給装置11は、液体LQを収容するタンク、加圧ポンプ、供給する液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット、供給する液体LQの温度を調整する温調装置、及び供給する液体LQを脱気する脱気装置等を備えている。図1には、一例として温調装置11A及び脱気装置11Bが図示されている。第1液体供給装置11には第1供給管13の一端部が接続されており、第1供給管13の他端部はノズル部材70に接続されている。第1液体供給装置11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。なお、第1液体供給装置11のタンク、加圧ポンプ、フィルタユニット、温調装置、脱気装置等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
また、第1供給管13の途中には、第1液体供給装置11から送出され、投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの単位時間当たりの量を制御するマスフローコントローラと呼ばれる流量制御器19が設けられている。流量制御器19による液体供給量の制御は制御装置CONTの指令信号のもとで行われる。
液浸機構1の液体回収装置21は、真空ポンプ等の真空系、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。液体回収装置21には回収管23の一端部が接続されており、回収管23の他端部はノズル部材70に接続されている。液体回収装置21の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。なお、液体回収装置21の真空系、気液分離器、タンク等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
液体噴射機構3の第2液体供給装置31は、液体LQを収容するタンク、加圧ポンプ、供給する液体LQ中の異物を取り除くフィルタユニット、供給する液体LQの温度を調整する温調装置、及び供給する液体LQを脱気する脱気装置等を備えている。図1には、一例として温調装置31A及び脱気装置31Bが図示されている。第2液体供給装置31には第2供給管33の一端部が接続されており、第2供給管33の他端部はノズル部材70に接続されている。第2液体供給装置31の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。なお、第2液体供給装置31のタンク、加圧ポンプ、フィルタユニット、温調装置、脱気装置等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場等の設備を代用してもよい。
また、液体噴射機構3は、第2供給管33の流路の途中に設けられ、第2液体供給装置31からノズル部材70の噴射口32に供給される液体LQの単位時間当たりの量を調整可能な調整装置38を備えている。調整装置38としては、例えば上述のマスフローコントローラを用いることができる。制御装置CONTは、調整装置38を使って、噴射口32に対する単位時間当たりの液体供給量を調整することによって、噴射口32より噴射される液体LQの単位時間当たりの量を調整可能である。ここで、以下の説明においては、噴射口32より噴射される液体LQの量を適宜、「噴射量」と称する。
また、制御装置CONTは、調整装置38を使って、噴射口32に対する単位時間当たりの液体供給量を調整することにより、噴射口32から噴射される液体LQの流速を調整することができる。本実施形態においては、噴射口32より噴射される液体LQの流速が、供給口12より供給される液体LQの流速よりも十分に大きくなるように調整される。
また上述したように、本実施形態においては、第1液体供給装置11と第2液体供給装置31とは同じ液体LQを送出しており、第1液体供給装置11から送出され、供給口12より供給される液体LQの温度と、第2液体供給装置31から送出され、噴射口32より噴射される液体LQの温度とはほぼ同じ値に設定されている。
また、供給口12より供給される液体の溶存気体濃度と、噴射口32より噴射される液体の溶存気体濃度ともほぼ同じ値(5ppm以下)に設定されており、露光光ELの光路中における気泡の発生や透過率の低下が抑制されている。
ノズル部材70は支持機構91に支持されており、支持機構91はメインコラム9の下側段部8に接続されている。ノズル部材70を支持機構91を介して支持しているメインコラム9と、投影光学系PLの鏡筒PKをフランジPFを介して支持している鏡筒定盤5とは、防振装置87を介して振動的に分離されている。したがって、ノズル部材70で発生した振動が投影光学系PLに伝達されることは防止されている。また、メインコラム9と、基板ステージPSTを支持している基板ステージ定盤6とは、防振装置89を介して振動的に分離されている。したがって、ノズル部材70で発生した振動がメインコラム9及びベースBPを介して基板ステージPSTに伝達されることが防止されている。また、メインコラム9と、マスクステージMSTを支持しているマスクステージ定盤2とは、防振装置86を介して振動的に分離されている。したがって、ノズル部材70で発生した振動がメインコラム9を介してマスクステージMSTに伝達されることが防止されている。
次に、図2〜図5を参照しながら、ノズル部材70について説明する。図2はノズル部材70近傍を示す概略斜視図の一部破断図、図3はノズル部材70を下側から見た斜視図、図4はYZ平面と平行な側断面図、図5はXZ平面と平行な側断面図である。
ノズル部材70は、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の近傍に設けられている。ノズル部材70は環状部材であって、基板P(基板ステージPST)の上方において第1光学素子LS1を囲むように配置されている。ノズル部材70は、その中央部に投影光学系PL(第1光学素子LS1)を配置可能な穴部70Hを有している。ノズル部材70は、複数の部材を組み合わせて構成されており、全体として平面視略円形状に形成されている。なお、ノズル部材70は一つの部材によって構成されていてもよい。
ノズル部材70の穴部70Hの内側面70Tは、投影光学系PLの第1光学素子LS1の側面LTと対向して、第1光学素子LS1の側面LTに沿うようにすり鉢状に形成されている。具体的には、第1光学素子LS1の側面LT及びノズル部材70の内側面70Tは、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜している。そして、ノズル部材70の内側面70Tと第1光学素子LS1の側面LTとの間には所定のギャップG1が設けられている。ギャップG1が設けられていることにより、ノズル部材70で発生した振動が、投影光学系PL(第1光学素子LS1)側に直接的に伝達することが防止されている。
ノズル部材70は、Z軸方向に関して、投影光学系PLの第1光学素子LS1の下面T1と基板P(基板ステージPST)との間に配置される底板部70Dを有している。底板部70Dの中央部には、露光光ELが通過する開口部74が形成されている。開口部74は、露光光ELが照射される投影領域ARよりも大きく形成されている。本実施形態においては、開口部74は平面視略十字状に形成されている。なお開口部74は、十字状に限られず、投影領域ARと合わせた矩形状であってもよい。底板部70Dは、第1光学素子LS1の下面T1及び基板P(基板ステージPST)とは接触しないように設けられている。そして、第1光学素子LS1の下面T1と底板部70Dの上面との間には、所定のギャップG2を有する空間が設けられている。以下の説明においては、第1光学素子LS1の下面T1と底板部70Dの上面との間の空間を含むノズル部材70の内側の空間を適宜、「内部空間G2」と称する。
ノズル部材70のうち、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と対向する下面75は、XY平面と平行な平坦面となっている。ノズル部材70の下面75には、底板部70Dの下面が含まれる。ここで、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面はXY平面とほぼ平行であるため、ノズル部材70の下面75は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面と対向するように、且つ基板Pの表面と略平行となるように設けられた構成となっている。
ノズル部材70は、液体LQを供給する供給口12、及び液体LQを回収する回収口22を備えている。また、ノズル部材70は、供給口12に接続する供給流路14、及び回収口22に接続する回収流路24を備えている。また、図2〜図5においてはその図示を省略若しくは簡略しているが、供給流路14は第1供給管13の他端部と接続され、回収流路24は回収管23の他端部と接続される。
供給流路14は、ノズル部材70の内部を傾斜方向に沿って貫通するスリット状の貫通孔によって形成されている。供給流路14は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜しており、本実施形態においては、内側面70Tとほぼ平行に設けられている。また、本実施形態においては、供給流路14は、光路空間K1(投影領域AR)に対してY軸方向両側のそれぞれに設けられている。そして、供給流路(貫通孔)14の上端部と第1供給管13の他端部とが接続され、これにより、供給流路14が第1供給管13を介して第1液体供給装置11に接続される。一方、供給流路14の下端部は、第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に接続されており、この供給流路14の下端部が供給口12となっている。供給口12は、露光光ELの光路空間K1の外側において、光路空間K1を挟んだY軸方向両側のそれぞれの所定位置に設けられている。供給口12は、内部空間G2に液体LQを供給可能である。
また、ノズル部材70は、内部空間G2の気体を外部空間(大気空間)K3に排出(排気)する排出口16と、排出口16に接続する排出流路15とを備えている。排出流路15は、ノズル部材70の内部を傾斜方向に沿って貫通するスリット状の貫通孔によって形成されている。排出流路15は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて基板Pとの間隔(距離)が小さくなるように傾斜しており、本実施形態においては、内側面70Tとほぼ平行に設けられている。また、本実施形態においては、排出流路15は、光路空間K1(投影領域AR)に対してX軸方向両側のそれぞれに設けられている。そして、排出流路(貫通孔)15の上端部は外部空間(大気空間)K3に接続されており、大気開放された状態となっている。一方、排出流路15の下端部は、第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に接続されており、この排出流路15の下端部が排出口16となっている。排出口16は、露光光ELの光路空間K1の外側において、光路空間K1を挟んだX軸方向両側のそれぞれの所定位置に設けられている。排出口16は、内部空間G2の気体、すなわち投影光学系PLの像面周囲の気体と接続されている。したがって、内部空間G2の気体は、排出口16を介して、排出流路15の上端部より、外部空間(大気空間)K3に排出(排気)可能となっている。なお、内部空間G2に接続された排気流路15の上端を吸引装置と接続して、内部空間G2の気体を強制的に排出するようにしてもよい。
底板部70Dは、供給口12から供給された液体LQの流れをガイドするガイド部材としての機能を有している。底板部70Dは、供給口12から供給された液体LQが、排出口16が設けられている位置又はその近傍に向かって流れるようにガイドする。
ノズル部材70は、下向きに開口する空間部24を有している。回収口22は、空間部24の開口部によって構成されている。また、回収流路は空間部24によって構成されている。空間部24は、光路空間K1に対して供給流路14及び排出流路15の外側に設けられている。そして、回収流路(空間部)24の一部と回収管23の他端部とがノズル部材70の側面において接続されている。
回収口22は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する位置に設けられている。基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とノズル部材70に設けられた回収口22とは所定距離だけ離れている。回収口22は、投影光学系PLの像面側の光路空間K1に対して供給口12の外側に設けられており、光路空間K1(投影領域AR)及び供給口12を囲むように環状に形成されている。すなわち、光路空間K1に対して供給口12の外側に回収口22が設けられた構成となっている。本実施形態においては、回収口22は平面視円環状に形成されている。なお、回収口22は平面視円環状に限らず、例えば平面視矩形環状であってもよい。
ノズル部材70は、回収口22を覆うように配置された、複数の孔を有する多孔部材25を備えている。本実施形態においては、多孔部材25は複数の孔を有したメッシュ部材により構成されている。多孔部材25としては、例えば略六角形状の複数の孔からなるハニカムパターンを形成されたメッシュ部材やチタンなどの板状部材に多数の孔を形成したメッシュ部材、あるいはセラミックス製の多孔部材によって構成可能である。
多孔部材25は、基板ステージPSTに保持された基板Pと対向する下面25Bを有している。多孔部材25の基板Pと対向する下面25Bはほぼ平坦である。多孔部材25は、その下面25Bが基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(すなわちXY平面)とほぼ平行になるように回収口22に設けられている。また、多孔部材25は、その下面25Bとノズル部材70の下面75とがZ軸方向においてほぼ同じ位置(高さ)になるように、且つ下面25Bとノズル部材70の下面75とが連続するように、回収口22に設けられている。液体LQは、回収口22に配置された多孔部材25を介して回収される。
次に、液体噴射機構3について説明する。ノズル部材70は、液体LQを噴射する噴射口32を備えている。ノズル部材70は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する下面75を有しており、噴射口32は下面75に設けられている。したがって、噴射口32は、基板ステージPSTに保持された基板Pの上方において、その基板Pの表面と対向する位置に設けられた構成となっている。基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とノズル部材70の下面75に設けられた噴射口32とは所定距離だけ離れている。
噴射口32は、投影光学系PLの像面側の光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられており、光路空間K1(投影領域AR)、及び回収口22を囲むように環状に設けられている。本実施形態においては、噴射口32は平面視円環状に形成され、所定のスリット幅D1(図4参照)を有するスリット状に形成されている。なお、噴射口32は平面視円環状に限らず、例えば平面視矩形環状であってもよい。
ノズル部材70は、噴射口32に液体LQを供給する供給流路34を有している。供給流路34はノズル部材70の内部に設けられており、その下端部は噴射口32に接続されている。また、供給流路34の一部には第2供給管33の他端部が接続されている。
供給流路34は、噴射口32に接続する第1流路部34Aと、第1流路部34Aよりも大きいバッファ空間37を含む第2流路部34Bとを有している。第2流路部34Bは、光路空間K1に対して第1流路部34Aの外側に設けられており、第2供給管33と接続されている。第1流路部34Aは、傾斜領域と、光路空間K1に対して傾斜領域よりも外側に設けられた水平領域とを有している。第1流路部34Aの傾斜領域は、光路空間K1の外側から内側に向かうにつれて、すなわち光路空間K1に近づくにつれて基板Pとの間隔(距離)が漸次小さくなるように傾斜している。そして、第1流路部34Aの傾斜領域の下端部が噴射口32となっている。本実施形態においては、第1流路部34Aの傾斜領域は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面(XY平面)に対して所定角度(例えば30°程度)傾斜している。第1流路部34Aの水平領域は、XY平面とほぼ平行に設けられており、第1流路部34Aの傾斜領域の上端部と第2流路部34Bのバッファ空間37とを接続している。
第1流路部34Aの傾斜領域は、環状のスリット状に形成された噴射口32に対応するように、XY平面に沿った断面視において環状に形成されたスリット状の流路である。傾斜領域の上端部近傍の流路の幅は広く、噴射口32に向かうにつれて漸次狭くなるように設けられている。そして、傾斜領域の下端部は、噴射口32のスリット幅D1とほぼ同じ幅を一様に有したスリット状の流路となっている。バッファ空間37は、光路空間K1に対して第1流路部34Aの水平領域の外側に設けられ、第1流路部34Aの水平領域を囲むように環状に形成された空間であり、第1流路部34Aの幅よりも十分に大きい幅D2(図4参照)を一様に有している。
すなわち、供給流路34は、Z軸方向において幅D2を有するバッファ空間37を含む第2流路部34Bと、第2流路部34Bよりも流路下流側に設けられ、幅D2よりも小さい幅を有する第1流路部34Aとを有した構成となっている。第1流路部34Aは、流路上流側に設けられたバッファ空間37よりも狭められた構成となっている。
バッファ空間37を含む第2流路部34Bには第2供給管33の他端部が接続される。本実施形態においては、供給流路34の第2流路部34Bと第2供給管33との接続位置は、ノズル部材70の側面において周方向(θZ方向)にほぼ等間隔で複数設定されており、それら複数の接続位置のそれぞれに第2供給管33の他端部が接続されている。なお図では、供給流路34の第2供給管33との接続位置は4箇所のように示されているが、例えば8箇所など任意の複数の位置に設定されてよい。噴射口32と第2液体供給装置31とは、供給流路34及び第2供給管33を介して接続されている。
第2液体供給装置31から送出された液体LQは、第2供給管33を介して供給流路34のうちバッファ空間37を含む第2流路部34Bに流入した後、第2流路部34B及び第1流路部34Aを介して噴射口32に供給される。第2流路部34B及び第1流路部34Aを含む供給流路34より噴射口32に供給された液体LQは、噴射口32よりノズル部材70の外部に噴射される。
このとき、第1流路部34Aの傾斜領域の幅は、噴射口32に向かうにつれて漸次狭くなっているため、第2流路部34Bのバッファ空間37を介して第1流路部34Aの傾斜領域の上端部に流入した液体LQは、ノズル効果によりその流速を高めつつ噴射口32に向かって流れ、噴射口32より所定の流速で噴射される。
また、第1流路部34Aの傾斜領域は、光路空間K1に近づくにつれて基板Pとの間隔(距離)が漸次小さくなるように所定角度(30°程度)傾斜しており、第1流路部34Aの傾斜領域の下端部に設けられた噴射口32は、光路空間K1に向けて傾斜方向に液体LQを噴射する。
また、バッファ空間37は、第2液体供給装置31から第2供給管33を介して供給された液体LQのエネルギー(圧力、流速)を分散して均一化し、バッファ空間37から第1流路部34Aに流入する液体LQの単位時間当たりの量(流速)を、スリット状の流路である第1流路部34Aの各位置において均一化する。バッファ空間37を設けたことにより、液体噴射機構3は、バッファ空間37を含む第2流路部34B及び第1流路部34Aを介して噴射口32に供給された液体LQを、スリット状の噴射口32からほぼ均一に噴射することができる。つまり、バッファ空間37が設けられていない場合、第1流路部34Aを流れる単位時間当たりの液体LQの量は、第2供給管33の他端部が接続された位置近傍のほうがその他の位置より多くなるため、所定長さに形成されたスリット状の噴射口32の各位置において噴射される液体LQの単位時間当たりの噴射量(流速)が不均一となる場合がある。しかしながら、バッファ空間37を設けて第2供給管33から供給された液体LQのエネルギーを分散して均一化することによって、第1流路部34Aを介してスリット状の噴射口32の各位置に供給される液体LQの流量(流速)を均一化することができ、液体LQは、円環状のスリット状の噴射口32の各位置においてほぼ均一な噴射量で噴射される。
また、第2液体供給装置31は脱気装置31Bを有しているので、液体噴射機構3は、脱気装置31Bを使って、噴射口32から噴射される液体LQ中の気体成分を低減することができる。
図6は、第2液体供給装置31に設けられている脱気装置31Bの一例を示す概略構成図である。なお、第1液体供給装置11に設けられている脱気装置11Bも、第2液体供給装置31の脱気装置31Bと同等の構成を有する。図6において、脱気装置31Bは、ハウジング171と、ハウジング171の内部に空間173を介して収容された中空糸束172とを備えている。中空糸束172は、複数のストロー状の中空糸膜174を互いに平行に束ねたものである。各中空糸膜174は、疎水性が高く気体透過性に優れた素材(例えば、ポリ4メチルペンテン1)で形成されている。ハウジング171の両端には真空キャップ部材175a、175bが固定されており、ハウジング171の両端外側に密閉空間176a、176bを形成している。真空キャップ部材175a、175bには不図示の真空ポンプに接続された脱気口177a、177bが設けられている。また、ハウジング171の両端には、中空糸束172の両端のみが密閉空間176a、176bに連結されるように封止部178a、178bが形成されている。脱気口177a、177bには真空ポンプが接続されており、制御装置CONTは真空ポンプを駆動することで各中空糸膜174の内側を減圧状態にすることができる。また、中空糸束172の内部には、未だ脱気処理されていない液体LQを流入させるための管179が設けられている。管179には複数の液体供給穴180が設けられており、封止部178a、178b及び中空糸束172で囲まれた空間181に、液体供給穴180から液体LQが供給される。液体供給穴180から空間181への液体LQの供給を続けると、液体LQは平行に束ねた中空糸膜174の層を横切るように外側へ向かって流れ、中空糸膜174の外表面と接触する。上述したように、中空糸膜174のそれぞれは、疎水性が高く気体透過性に優れた素材で形成されているので、液体LQは中空糸膜174の内側に入ることなく、各中空糸膜174の間を通って中空糸束172の外側の空間173に移動する。一方、液体LQ中に溶解している気体(分子)は、中空糸膜174の内側が減圧状態(20Torr程度)になっているので、各中空糸膜174の内側へ移動する(吸収される)。このように、中空糸膜174の層を横切る間に液体LQから除去(脱気)された気体成分は、矢印183で示すように、中空糸束172の両端から密閉空間176a、176b介して脱気口177a、177bから排出される。また、脱気処理された液体LQは、ハウジング151に設けられた液体出口182を介して第2供給管33(噴射口32)に供給される。本実施形態においては、脱気装置31Bは、液体LQの溶存気体濃度が5ppm以下となるように脱気を行う。
次に、上述した構成を有する露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について説明する。
露光光ELの光路空間K1を液体LQで満たすために、制御装置CONTは、第1液体供給装置11及び液体回収装置21のそれぞれを駆動する。制御装置CONTの制御のもとで第1液体供給装置11から送出された液体LQは、第1供給管13を流れた後、ノズル部材70の供給流路14を介して、供給口12より投影光学系PLの第1光学素子LS1と底板部70Dとの間の内部空間G2に供給される。内部空間G2に液体LQが供給されることにより、内部空間G2に存在していた気体部分は排出口16や開口部74を介して外部に排出される。したがって、内部空間G2に対する液体LQの供給開始時に、内部空間G2に気体が留まってしまうといった不都合を防止することができ、光路空間K1の液体LQ中に気体部分(気泡)が生成される不都合を防止することができる。
内部空間G2に供給された液体LQは、ノズル部材70の開口部74を介して下面75と基板P(基板ステージPST)との間の空間に流入し、光路空間K1を満たす。このとき、制御装置CONTの制御のもとで駆動されている液体回収装置21は、単位時間当たり所定量の液体LQを回収している。ノズル部材70の下面75と基板Pとの間の空間の液体LQは、ノズル部材70の回収口22を介して回収流路24に流入し、回収管23を流れた後、液体回収装置21に回収される。
ここで、供給口12から内部空間G2に対して供給された液体LQは、底板部70Dに形成された開口部74の内側面にガイドされつつ露光光ELの光路空間K1(投影領域AR)に向かって流れた後、露光光ELの光路空間K1の外側に向かって流れるので、仮に液体LQ中に気体部分(気泡)が生成されても、液体LQの流れによって、その気泡を露光光ELの光路空間K1の外側に排出することができる。そして、本実施形態においては、底板部70Dは、液体LQを排出口16に向けて流すので、液体LQ中に存在している気体部分(気泡)は、排出口16を介して外部空間K3に円滑に排出される。また、液浸機構1は、液体LQを開口部74の内側面でガイドしつつ流すことにより、露光光ELの光路空間K1内において、渦流が生成されることを抑制している。
以上のように、制御装置CONTは、液浸機構1を使って、光路空間K1に液体LQを所定量供給するとともに基板P上の液体LQを所定量回収することで、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間K1を液体LQで満たし、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。制御装置CONTは、光路空間K1を液体LQで満たした状態で、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しながらマスクMのパターン像を投影光学系PL及び光路空間K1の液体LQを介して基板P上に投影露光する。
制御装置CONTは、供給口12から液体LQを供給するときに、液体噴射機構3の第2液体供給装置31を駆動する。制御装置CONTは、基板Pの走査露光中に噴射口32の液体噴射動作を継続する。すなわち、制御装置CONTは、液浸機構1を使って光路空間K1に対する液体LQの供給動作及び回収動作を行っている最中、あるいは、供給動作及び回収動作が停止していても、液浸領域LRが形成されている最中には、液体噴射機構3の第2液体供給装置31の駆動を継続する。
上述のように、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光を行う走査型露光装置である。具体的には、露光装置EXは、マスクMと基板Pとを投影光学系PLに対してX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光する。このような走査型露光装置において、例えば走査速度(スキャン速度)の高速化に伴って、回収口22を介して液体LQを十分に回収することができず、光路空間K1に満たされた液体LQが光路空間K1に対して回収口22よりも外側へ漏出する可能性がある。例えば、図7(A)の模式図に示す初期状態から、液浸領域LRに対して基板Pを+X方向に所定速度で所定距離だけスキャン移動し、図7(B)に示すように、液浸領域LRの液体LQとその外側の空間との界面LGが移動したとする。スキャン速度を高速化した場合、液界面LGの移動速度が大きくなったり、あるいは界面LGの形状が大きく変化して、液体LQが回収口22の外側に漏出する可能性がある。特に、液体LQは基板Pの移動方向前方側(図7においては+X側)に漏出する可能性が高くなる。
本実施形態においては、制御装置CONTは、噴射口32を介した液体LQの噴射動作を行うことで、噴射した液体LQの力によって投影光学系PLと基板Pとの間の露光光ELの光路空間K1に満たされた液体LQの漏出や、液浸領域LRの巨大化を防止する。
図8は液体噴射機構3の動作を説明するための要部を拡大した模式図である。図8に示すように、制御装置CONTは、第2液体供給装置31を駆動して、光路空間K1を囲むように形成された回収口22の内側に液体LQ(液浸領域LR)を閉じこめるように、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた噴射口32より液体LQを噴射する。
具体的には、制御装置CONTは、第2液体供給装置31を駆動して、単位時間当たり所定量の液体LQの送出する。第2液体供給装置31から送出された液体LQは、第2供給管33を介して、ノズル部材70の供給流路34の第2流路部34Bに流入する。第2流路部34Bに流入した液体LQは、第2流路部34Bのバッファ空間37を介して第1流路部34Aに流入し、第1流路部34Aの下端部に設けられた噴射口32に供給される。上述のように、供給流路34の途中にバッファ空間37が設けられていることにより、バッファ空間37を含む供給流路34を介してスリット状の噴射口32に供給された液体LQは、噴射口32の各位置からほぼ均一に噴射される。また、第1流路部34Aの傾斜領域の流路の幅は、噴射口32に向かうにつれて漸次狭くなっているので、液体LQは高い流速で噴射口32より噴射される。
噴射口32は、光路空間K1に向けて傾斜方向に基板Pに対して液体LQを噴射するようになっており、本実施形態においては、基板Pのうち回収口22と対向する領域、すなわち基板Pのうち回収口22の直下の領域に向けて液体LQを噴射する。ここで、液浸領域LRの液体LQとその外側の空間との界面LGは、回収口22と基板Pとの間に形成されるため、噴射口32より噴射された液体LQは、液浸領域LRの液体LQの界面LG(界面LGの下端部)に当たる。これにより、光路空間K1に満たされた液体LQ(液体LQの界面LG)が、光路空間K1の外側に移動しようとしても、噴射口32から噴射された液体LQの力によって、光路空間K1を含む所定空間の外側への液体LQの漏出を防止することができる。ここで、所定空間とは、投影光学系PLの像面側の空間であって、光路空間K1に対して回収口22よりも内側の空間を含む。
すなわち、基板Pが所定方向(例えば+X方向)に移動する場合、液体LQは基板Pの移動方向前方側(+X側)に漏出する可能性が高いが、光路空間K1に対して基板Pの移動方向前方側(+X側)にある噴射口32から噴射された液体LQによって、漏出しようとする液体LQに逆方向の運動量を与えることができる。換言すれば、漏出しようとする液体LQに対して、漏出方向前方側から液体LQを噴射することにより、その液体LQに逆方向の運動量を与えることができる。これにより、光路空間K1に満たされた液体LQの漏出を防止することができる。
また、基板PはY軸方向にステッピング移動するため、ステッピング移動時においては、液体LQはY軸方向に漏出する可能性があるが、噴射口32は光路空間K1を囲むように環状に形成されているため、光路空間K1に対して基板Pの移動方向前方側(例えば+Y側)にある噴射口32から噴射された液体LQによって、漏出しようとする液体LQに逆方向の運動量を与えることができる。
そして、噴射口32より光路空間K1に向けて勢い良く噴射された液体LQは、回収口22の外側に漏出することなく、光路空間LQに満たされている液体LQと一緒に回収口22より回収される。
また、制御装置CONTは、露光条件に応じて、噴射口32の噴射条件を調整する。本実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光が行われるが、制御装置CONTは、投影光学系PLと基板P(基板ステージPST)との相対的な移動速度に応じて、噴射口32から噴射する液体LQの流速(圧力、エネルギー)を調整する。制御装置CONTは、調整装置38を使って、供給流路34を介した噴射口32に対する単位時間当たりの液体供給量を調整することにより、噴射口32から光路空間K1に向けて噴射する液体LQの流速を調整する。
具体的には、制御装置CONTは、噴射口32から噴射する液体LQの流速を、投影光学系PLに対する基板Pの移動速度よりも大きくする。例えば、図9(A)の模式図に示すように、投影光学系PL(光路空間K1)に対して基板Pが+X方向に速度V1で移動している場合には、噴射口32から噴射される液体LQの流速VL1が、基板Pの速度V1よりも大きくなるように制御される。好ましくは、噴射口32から噴射される液体LQの基板Pの移動方向(すなわちX軸方向)に関する速度成分VL1xが、基板Pの速度V1よりも大きくなるように制御されることが望ましい。これにより、基板Pが移動した場合でも、光路空間K1からの液体LQの漏出を良好に防止することができる。
また、図9(B)の模式図に示すように、投影光学系PLに対して基板Pが+X方向に速度V1よりも遅い速度V2で移動している場合には、噴射口32から噴射される液体LQの流速は、上記流速VL1よりも低い流速VL2に制御される。この場合においても、噴射口32から噴射される液体LQの流速VL2は、基板Pの移動速度V2よりも大きくなるように制御される。
このように、噴射口32から噴射する液体LQの流速を、投影光学系PLに対する基板Pの移動速度よりも高くすることで、液体LQの漏出を良好に防止することができる。また、基板Pの移動速度に応じて、噴射口32から噴射する液体LQの流速を適宜調整することで、噴射した液体LQによって光路空間K1に満たされた液体LQの流れが乱れたり、光路空間K1の液体LQ中に気泡が形成されたり、液体LQが漏出する等の不都合を防止することができる。すなわち、例えば基板Pを比較的低い速度V2で所定方向(例えば+X方向)移動している状態で、光路空間K1に対して流速の高い(運動量の大きい)液体LQを噴射した場合、その噴射した液体LQによって光路空間K1の液体LQの流れが乱れたり、光路空間K1の液体LQ中に気泡が形成される可能性が高くなる。本実施形態においては、光路空間K1を囲むように環状に形成された噴射口32からほぼ一様の流速で液体LQが噴射されるため、過剰な流速の液体LQを噴射すると、その噴射された液体LQの力に起因して、光路空間K1の液体LQの流れが乱れたり、光路空間K1の液体LQ中に気泡が形成されたり、基板Pが変形・変位したり、振動が発生したり、液体LQが漏出する可能性がある。また、基板Pを比較的低い速度V2で所定方向(例えば+X方向)に移動している状態で、光路空間K1に対して基板Pの移動方向前方側(+X側)から流速の高い(運動量の大きい)液体LQを噴射した場合、その噴射した液体LQの力によって、光路空間K1に満たされている液体LQが基板Pの移動方向後方側(−X側)から漏出する可能性もある。そこで、投影光学系PLと基板Pとの相対的な移動速度に応じて、噴射口32から噴射する液体LQの流速を調整することで、上述の不都合を防止することができる。
また、基板Pを走査露光するとき、基板P(基板ステージPST)は、例えば加速区間、定常区間(定速区間)、及び減速区間の順に移動するが、制御装置CONTは、基板P(基板ステージPST)の加速区間、定常区間、及び減速区間に応じて、噴射口32から噴射する液体LQの流速を調整することができる。
以上説明したように、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた噴射口32から液体LQを噴射することで、光路空間K1を液体LQで満たした状態で投影光学系PLと基板Pとを相対移動させた場合においても、光路空間K1に満たされた液体LQの漏出を防止することができる。すなわち、本実施形態においては、十分な運動量を有した液体LQを液浸領域LRの液体LQの界面LGに当てているので、液体LQの漏出を良好にに防止することができる。また、光路空間K1に向けて液体LQを噴射することで、液浸領域LRの大きさや形状を所望状態に維持することができ、露光装置EX全体のコンパクト化を図ることもできる。
また、噴射口32はスリット状に形成されているので、噴射する液体LQを断面視においてスリット状にすることができる。したがって、噴射する液体LQの位置制御を容易に行うことができるとともに、噴射する液体LQの運動量を十分に高めることができる。
また本実施形態は、噴射口32より噴射した液体LQを使って光路空間K1に満たされた液体LQの漏出を防止する構成であるため、気体を噴射して液体LQの漏出を防止する構成と異なり、液体LQの気化を抑制することができる。したがって、液体LQの気化に起因する気化熱によって基板Pの温度が変動したり、露光装置EXの置かれている環境が変動する等の不都合を防止することができる。
また、噴射口32は光路空間K1に向けて傾斜方向に液体LQを噴射するので、光路空間K1を囲むように形成された回収口22の内側に液体LQを閉じこめることができる。また、噴射口32は基板Pに対向する位置に設けられているので、噴射口32より噴射された液体LQを液浸領域LRの界面LGあるいは基板Pの表面に円滑に当てることができる。また、噴射口32は、基板Pのうち回収口22と対向する領域に向けて液体LQを噴射するので、回収口22の直下に形成される液浸領域LRの界面LGに液体LQを噴射し、回収口22の直下の領域から外側への液体LQの漏出を良好に防止することができる。また、基板Pのうち回収口22と対向する領域に向けて液体LQを噴射することにより、噴射した液体LQにより、光路空間K1に満たされた液体LQの流れが乱れる等の不都合を防止することができる。また上述のように、基板Pの移動速度に応じて噴射口32から噴射される液体LQの流速を調整することによっても、光路空間K1に満たされた液体LQの流れが乱れたり、液体LQが漏出する等の不都合を防止することができる。
また、噴射口32は光路空間K1を囲むように環状に形成されているので、光路空間K1を囲む外側の全ての方向から光路空間K1に向けて液体LQを噴射することができ、液体LQの漏出をより確実に防止することができる。また、噴射口32に液体LQを供給する供給流路34はバッファ空間37を有しているので、スリット状の噴射口32から均一に液体LQを噴射することができる。
また、液体噴射機構3は、噴射口32から噴射される液体LQ中の気体成分を低減する脱気装置31Bを有しているので、十分に脱気された液体LQを光路空間K1に満たされた液体LQに噴射することができる。したがって、噴射口32から噴射された液体LQと光路空間K1に満たされた液体LQとが混合されても、光路空間K1上の液体LQ中に気泡(気体成分)が形成されるといった不都合を防止することができる。
また、上述のように、フォーカス・レベリング検出系が光路空間K1に対して噴射口32よりも外側で、光路空間K1の液体LQを介さずに基板Pの面位置情報を検出する構成の場合、噴射口32より噴射された液体LQによって噴射口32よりも外側への液体LQの漏出を防止することで、フォーカス・レベリング検出系の検出精度を維持することができる。
なお本実施形態においては、噴射口32は、基板Pのうち回収口22と対向する領域(回収口22の直下の領域)に向けて液体LQを噴射しているが、回収口22と基板Pとの間の空間に向けて液体LQを噴射するようにしてもよい。例えば、噴射口32は、基板Pのうち、光路空間K1に対して回収口22よりも内側のノズル部材70の下面75と対向する領域に向けて液体LQを噴射するようにしてもよい。この場合においても、光路空間K1に満たされた液体LQの漏出を防止することができる。なお、噴射口32から噴射される液体LQの噴射角度(方向)は、光路空間K1に満たされた液体LQの流れを乱すことなく、且つ光路空間K1から液体LQを漏出させないように最適に設定される。
なお本実施形態において、制御装置CONTは、基板ステージPSTが移動していないときには、噴射口32からの液体LQの噴射を停止するようにしてもよい。換言すれば、制御装置CONTは、基板ステージPSTが駆動しているときだけ、噴射口32から液体LQを噴射するようにしてもよい。もちろん、基板ステージPSTの駆動にかかわらず、液浸機構1を使って光路空間K1に対する液体LQの供給動作及び回収動作を行っている最中には、制御装置CONTは、噴射口32から液体LQを噴射するようにしてもよい。
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態の特徴的な部分は、基板P上の液体接触面に形成される膜部材と液体LQとの接触角条件に応じて、噴射口32の噴射条件が調整される点にある。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図10(A)は基板Pの断面図の一例である。図10(A)において、基板Pは、基材100と、その基材100の上面100Aに設けられた膜部材101とを有している。基材100は半導体ウエハを含むものである。膜部材101は感光材(フォトレジスト)によって形成されており、基材100の上面100Aの中央部の殆どを占める領域に所定の厚みで被覆されている。なお、図10(A)において、基材100の上面100Aの周縁部の感光材(膜部材)101は除去されている。図10(A)においては、膜部材(感光材)101が基板Pの最上層に設けられており、この膜部材101が液浸露光時において液体LQと接触する液体接触面となる。
図10(B)は基板Pの別の例を示す図である。図10(B)において、基板Pは、膜部材101の表面を覆う第2膜部材102を有している。第2膜部材102はトップコート膜と呼ばれる保護膜によって形成されている。図10(B)においては、第2膜部材(保護膜)102が基板Pの最上層に設けられており、この第2膜部材102が液浸露光時において液体LQを接触する液体接触面となる。
本実施形態の露光装置EXは、液体接触面を形成する膜部材の種類(物性)が互いに異なる複数種類の基板Pを順次露光する。記憶装置MRYには、複数種類の基板Pの液浸露光を行うための噴射口32の噴射条件に関する情報が予め記憶されている。具体的には、記憶装置MRYには、液浸露光時において基板P上の液体LQに接触する液体接触面に形成される膜部材と液体LQとの親和性と、その親和性に対応する噴射口32の噴射条件との関係がマップデータとして複数記憶されている。ここで、膜部材と液体LQとの親和性に関する情報は、膜部材と液体LQとの接触角(動的接触角及び静的接触角を含む)に関する情報を含む。
液浸露光処理を行うに際し、露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報が入力装置INPを介して制御装置CONTに入力される。入力される膜部材に関する情報には、膜部材と液体LQとの接触角に関する情報(接触角条件)が含まれている。制御装置CONTは、入力された膜部材に関する情報(接触角条件)に応じて、記憶装置MRYに予め記憶されている、膜部材と液体LQとの接触角と、その接触角に対応する噴射口32の噴射条件との関係(マップデータ)を参照し、露光処理されるべき基板Pに対する最適な噴射条件を選択し、決定する。
ここで、噴射口32の噴射条件とは、噴射口32から光路空間K1に向けて噴射する液体LQの流速(単位時間当たりの液体LQの噴射量)を含む。制御装置CONTは、膜部材と液体LQとの接触角条件に応じて、調整装置38を使って、噴射口32から噴射する液体LQの流速を調整する。具体的には、膜部材と液体LQの接触角が小さい場合、膜部材は液体LQに対して親液性(親水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは濡れ拡がりやすいため、光路空間K1(回収口22)の外側へ漏出する可能性が高くなる。したがって、この膜部材上で液浸領域LRを形成する場合、調整装置38は、噴射口32より噴射する液体LQの流速を高くする。こうすることにより、その噴射された液体LQの力によって、液体LQの漏出を防止することができる。
一方、膜部材と液体LQとの接触角が大きい場合、膜部材は液体LQに対して撥液性(撥水性)を有していることになるので、液浸機構1を使って基板P(膜部材)上に液体LQを供給した際、この液体LQは過剰に濡れ拡がらない。したがって、この膜部材に対して液体LQを供給する場合、調整装置38は、噴射口32より噴射する液体LQの流速を低くする。こうすることにより、噴射される液体LQによって、光路空間K1に満たされた液体LQが乱れたり、液体LQが漏出しやすくなったり、あるいは噴射される液体LQの力に起因して基板Pが変形・変位したり、振動が発生する等の不都合を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態においては、基板P上の液体接触面に形成される膜部材と液体LQとの接触角に対応する最適な液体噴射条件(噴射口32から噴射される液体LQの流速)が予め求められており、この最適な液体噴射条件に関する情報が記憶装置MRYに記憶されている。制御装置CONTは、入力装置INPを介して入力された露光処理されるべき基板Pの膜部材に関する情報(膜部材と液体LQとの接触角に関する情報)に基づいて、複数記憶されている液体噴射条件のなかから最適な液体噴射条件を選択して決定し、この決定された液体噴射条件に基づいて、基板Pの液浸露光を行うことにより、液体LQの漏出を防止しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
なおここでは、基板P上の膜部材の種類が変更される場合について説明したが、液体LQの種類(物性)が変更される場合もある。その場合においても、制御装置CONTは、調整装置38を使って、基板P上の膜部材と液体LQとの親和性に応じて、噴射口32から噴射する液体の流速を調整することができる。
なお、液浸領域LRは、基板ステージPSTの上面94など基板Pとは異なる物体上に形成される場合もあるので、基板Pだけでなく、液浸領域LRが形成される物体表面の条件(接触角など)に応じて、調整装置38を使って噴射口32から噴射される液体LQの流速を調整するようにしてもよい。
上述のように、液体LQと膜部材との接触角は、静的接触角及び動的接触角を含むものであり、制御装置CONTは、静的接触角及び動的接触角の双方を考慮して、噴射口32の噴射条件を調整することができる。一方、図7などを参照して説明したように、光路空間K1の液体LQの漏出の主な原因が、投影光学系PLと基板Pとの相対的な移動である場合、制御装置CONTは、主に液体LQと膜部材との動的接触角(後退角)を考慮して噴射口32の噴射条件を調整することができる。
<第3実施形態>
次に第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴的な部分は、噴射口32が光路空間K1に対して複数方向から液体LQを噴射可能に設けられており、投影光学系PLに対する基板Pの移動方向に応じて、噴射口32から液体LQを噴射する方向が調整される点にある。
図11は、第3実施形態に係るノズル部材70を下方(−Z側)から見た図である。図11に示すように、本実施形態においては、噴射口32(32A〜32D)は、光路空間K1及び回収口22を囲むように複数設けられている。本実施形態においては、4つの噴射口32A〜32Dが設けられている。噴射口32A〜32Dのそれぞれは平面視略円弧状であって、所定の長さを有するスリット状に形成されている。4つの噴射口32A〜32Dのうち、第1噴射口32Aは光路空間K1に対して+X側に配置され、第2噴射口32Bは光路空間K1に対して+Y側に配置され、第3噴射口32Cは光路空間K1に対して−X側に配置され、第4噴射口32Dは光路空間K1に対して−Y側に配置されている。したがって、第1噴射口32Aは光路空間K1に対して+X側から−X方向に向けて液体LQを噴射可能であり、第2噴射口32Bは光路空間K1に対して+Y側から−Y方向に向けて液体LQを噴射可能であり、第3噴射口32Cは光路空間K1に対して−X側から+X方向に向けて液体LQを噴射可能であり、第4噴射口32Dは光路空間K1に対して−Y側から+Y方向に向けて液体LQを噴射可能である。また、液体噴射機構3は、第1〜第4噴射口32A〜32Dによる液体噴射動作をそれぞれ独立して行うことができる。そして、制御装置CONTは、投影光学系PLに対する基板Pの移動方向に応じて、4つの噴射口32A〜32Dのうち液体LQを噴射する噴射口を選択し、選択された噴射口のみから液体LQを噴射する。
図12は、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光するときの投影光学系PL及び噴射口32と基板Pとの位置関係を模式的に示した図である。図12において、基板P上には、マスクMのパターンが露光される複数のショット領域S1〜S21がマトリクス状に設定されている。制御装置CONTは、図12中、矢印y1で示すように、投影光学系PLの光軸AXと基板Pとを相対的に移動しつつ、各ショット領域S1〜S21のそれぞれを順次露光する。このように、制御装置CONTは、投影光学系PLに対して基板Pを、X軸方向、Y軸方向、及びX軸(Y軸)に対して傾斜方向のそれぞれの方向に移動しつつ露光する。
図13は、本実施形態に係る露光装置EXの動作を説明するための模式図である。本実施形態において、記憶装置MRYには、投影光学系PLと基板Pとを相対的に移動しつつ露光するときの移動条件に関する情報が予め記憶されている。具体的には、記憶装置MRYには、各ショット領域S1〜S21を液浸露光するときの投影光学系PLと基板Pとの相対的な移動方向と、その移動方向に対応する噴射口32の噴射条件との関係が記憶されている。
ここで、本実施形態における噴射口32の噴射条件とは、光路空間K1に対して噴射口32(32A〜32D)から液体LQを噴射する方向を含む。制御装置CONTは、投影光学系PLに対する基板Pの移動方向に応じて、複数の噴射口32A〜32Dのうち液体LQを噴射させる噴射口を選択することによって、光路空間K1に対して液体LQを噴射する方向を調整する。具体的には、制御装置CONTは、複数の噴射口32A〜32Dのうち、基板Pの移動方向前方側に設けられている噴射口から液体LQを噴射させる。
例えば、図13(A)に示すように、投影光学系PLに対して基板Pが+X方向に移動している場合には、制御装置CONTは、光路空間K1の+X側に設けられている第1噴射口32Aから液体LQを噴射させ、他の噴射口32B、32C、32Dからの液体LQの噴射を停止する。こうすることにより、基板Pの+X側への移動に伴って、光路空間K1の液体LQが+X側に漏出しようとしても、第1噴射口32Aから噴射された液体LQの力によって、逆方向(−X方向)の運動量を与えることができ、液体LQの漏出を防止することができる。
一方、図13(B)に示すように、投影光学系PLに対して基板Pが−X方向に移動している場合には、制御装置CONTは、光路空間K1の−X側に設けられている第3噴射口32Cから液体LQを噴射させ、他の噴射口32A、32B、32Dからの液体LQの噴射を停止する。こうすることにより、基板Pの−X側への移動に伴って、光路空間K1の液体LQが−X側に漏出しようとしても、第3噴射口32Cから噴射された液体LQの力によって、逆方向(+X方向)の運動量を与えることができ、液体LQの漏出を防止することができる。
図14は、基板Pの移動方向と、その移動方向に応じて選択された噴射口との関係を説明するための模式図である。図14(A)の矢印yPで示すように、基板Pが+X方向に移動する場合には、図13(A)を参照して説明したように、制御装置CONTは、第1噴射口32Aから液体LQを噴射する。また、図14(B)に示すように、基板Pが+Y方向に移動する場合には、制御装置CONTは、基板Pの移動方向前方側に設けられた第2噴射口32Bから液体LQを噴射する。また、図14(C)に示すように、基板Pが+X方向に対して+Y側の傾斜方向に移動する場合には、制御装置CONTは、基板Pの移動方向前方側に設けられた第1噴射口32A及び第2噴射口32Bのそれぞれから液体LQを噴射する。また、図14(D)に示すように、基板Pが+X方向に対して−Y側の傾斜方向に移動する場合には、制御装置CONTは、基板Pの移動方向前方側に設けられた第1噴射口32A及び第4噴射口32Dのそれぞれから液体LQを噴射する。また、図14(E)に示すように、基板Pが−X方向に対して−Y側の傾斜方向に移動する場合には、制御装置CONTは、基板Pの移動方向前方側に設けられた第3噴射口32C及び第4噴射口32Dのそれぞれから液体LQを噴射する。また、図14(F)に示すように、基板Pが−X方向に対して+Y側の傾斜方向に移動する場合には、制御装置CONTは、基板Pの移動方向前方側に設けられた第2噴射口32B及び第3噴射口32Cのそれぞれから液体LQを噴射する。
以上説明したように、光路空間K1(投影光学系PL)に対する基板Pの移動方向に応じて、噴射口32から液体LQを噴射する方向を調整することで、液体LQの漏出を良好に抑制することができる。そして、基板Pの移動方向前方側から光路空間K1に対して液体LQを噴射することで、光路空間K1に満たされた液体LQに対して基板Pの移動方向後方側への運動量を与えて、液体LQの漏出を良好に防止することができる。また、基板Pの移動方向後方側からは液体LQを噴射しないようにすることで、光路空間K1に満たされた液体LQの流れが乱れたり、液体LQが漏出する等の不都合を防止することができる。また、過剰に液体LQを噴射しないことにより、噴射される液体LQの力に起因して基板Pが変形・変位したり、振動が発生する等の不都合を防止することができる。
なお、本実施形態においても、基板Pの移動速度に応じて、各噴射口32A〜32Dのそれぞれから噴射する液体LQの流速を調整することができる。例えば、記憶装置MRYに、基板Pの移動方向に加えて、基板Pの移動速度(X軸方向へのスキャン速度、Y軸方向へのステッピング速度を含む)に関する情報を予め記憶させておくことにより、制御装置CONTは、その記憶情報に基づいて、複数の噴射口32A〜32Dのうち液体LQを噴射する噴射口を選択することによって液体LQを噴射する方向を調整するとともに、その選択した噴射口から噴射する液体LQの流速を調整することができる。なお、基板P(基板ステージPST)の移動方向及び移動速度を検出可能なセンサを設けておくことにより、制御装置CONTは、そのセンサの検出結果に基づいて、複数の噴射口32A〜32Dのうち液体LQを噴射する噴射口を選択することによって液体LQを噴射する方向を調整するとともに、その選択した噴射口から噴射する液体LQの流速を調整することができる。また、基板Pを走査露光するとき、基板P(基板ステージPST)は、例えば加速区間、定常区間(定速区間)、及び減速区間の順に移動するが、制御装置CONTは、基板P(基板ステージPST)の加速区間、定常区間、及び減速区間に応じて、噴射口32から噴射する液体LQの流速を調整することができる。
なお、本実施形態においては、噴射口32は、第1〜第4噴射口32A〜32Dの4つであるが、もちろん任意の複数(例えば8つ)設けることができる。
なお、本実施形態においては、複数の噴射口のうち、基板Pの移動方向に応じて選択された特定の噴射口(例えば32A)から液体LQを噴射しているときには、他の噴射口(32B、32C、32D)からの液体LQの噴射を停止しているが、液体LQの漏出や、光路空間K1の液体LQの流れの乱れを引き起こさない程度であれば、他の噴射口から所定の流速(流量)で液体LQを噴射するようにしてもよい。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図15を参照しながら説明する。図15において、ノズル部材70の下面75には、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた内側噴射口32Eと、光路空間K1に対して内側噴射口32Eよりも更に外側に設けられた外側噴射口32Fとが設けられている。内側噴射口32Eは、回収口22と基板Pとの間の空間、又は基板Pのうち回収口22と対向する所定の領域に向けて液体LQを噴射し、外側回収口32Fは、基板Pのうち内側噴射口32Eからの液体LQが噴射される領域よりも外側であって、回収口22と対向する領域に向けて液体LQを噴射するように設けられている。このように、液体噴射機構3は、液浸領域LRの液体LQの界面LGに、Z軸方向に関して互いに異なる位置に液体LQを噴射するようにしてもよい。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図16を参照しながら説明する。図16において、ノズル部材70の上面には、投影光学系PLを囲むように形成された内側周壁部71と、投影光学系PLに対して内側周壁部71よりも外側に設けられ、投影光学系PL及び内側周壁部71を囲むように設けられた外側周壁部72とが設けられている。そして、ノズル部材70は、その上面と内側周壁部71と外側周壁部72とで囲まれた空間70Gに液体LQを保持可能となっている。また、液浸機構1は、空間70Gに保持されている液体LQを回収可能な液体回収機構190を有している。液体回収機構190は、液体LQを吸引回収可能な真空系を含む液体回収部191と、その一端部を液体回収部191に接続し、他端部を空間70Gに配置した回収管192とを備えている。制御装置CONTは、液体回収部191を駆動することにより、空間70Gに保持された液体LQを回収管192を介して回収可能である。
本実施形態の液浸機構1は、光路空間K1に液体LQを満たすとともに、投影光学系PLの側面LTとノズル部材70の内側面70Tとの間のギャップG1を形成する空間にも液体LQを満たす程度に、液体LQの供給及び回収を行う。更に、液浸機構1は、ギャップG1を形成する空間に満たされた液体LQが内側周壁部71の上面を通過して空間70Gに流出する程度に、液体LQの供給及び回収を行う。すなわち、液浸機構1は、少なくとも基板Pの露光中においては、光路空間K1及びギャップG1を形成する空間を液体LQで満たすとともに、光路空間K1及びギャップG1を形成する空間に満たされた液体LQを内側周壁部71より空間70Gにオーバーフローさせている。そして、液体回収機構190は、ギャップG1を形成する空間から内側周壁部71をオーバーフローし、空間70Gに満たされた液体LQを回収するように設けられている。
制御装置CONTは、液浸機構1を使って、ギャップG1を形成する空間の液体LQを空間70Gに常にオーバーフローさせるように、光路空間K1に対して液体LQを供給し続けることで、液体LQの液面の高さをほぼ一定に維持することができる。したがって、ギャップG1を形成する空間及びその空間に接続する光路空間K1に満たされた液体LQの圧力をほぼ一定に維持することができる。そのため、光路空間K1を満たす液体LQに噴射口32より噴射された液体LQが追加されても、液体LQは内側周壁部71を介して空間70Gに流出するため、光路空間K1の液体LQの圧力をほぼ一定に維持することができる。したがって、光路空間K1の液体LQの圧力変動に伴う基板Pや第1光学素子LS1の変位又は変形といった不都合の発生を防止することができる。
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について図17を参照しながら説明する。図17に示すように、噴射口32から噴射された液体LQの噴射方向を途中で曲げるようにしてもよい。噴射口32より噴射された液体LQの噴射方向を曲げるためには、例えば、噴射口32よりも光路空間K1側のノズル部材70の下面75に、流れの抵抗となる突起部を設けることで、液体LQの噴射方向を曲げることができる。あるいは、電力又は磁力によって、液体LQの噴射方向を曲げることもできる。あるいは、噴射された液体LQに気体を吹き付けることで、液体LQの噴射方向を曲げることもできる。
あるいは、図18の模式図に示すように、ノズル部材70の下面75に、光路空間K1に対して回収口22の外側に設けられた内側噴射口32Gと、光路空間K1に対して内側噴射口32Gよりも更に外側に設けられた外側噴射口32Hとを設け、内側噴射口32Gから第1の流速で液体LQを噴射するとともに、外側噴射口32Hから第1の流速よりも速い第2の流速で液体LQを噴射し、第1の流速で噴射された液体LQと第2の流速で噴射された液体LQとを合流させることによって、外側噴射口32Hから噴射された液体LQの噴射方向を曲げることもできる。速い流速(第2の流速)で噴射された液体LQ上に遅い流速(第1の流速)で噴射された液体LQを合流させると、速い流速(第2の流速)で噴射された液体LQと遅い流速(第1の流速)で噴射された液体LQとの合流部において、速い流速(第2の流速)で噴射された液体LQにモーメントが発生し、速い流速で噴射された液体LQの流れにブレーキがかかった状態となり、速い流速で噴射された液体LQは、遅い流速で噴射された液体LQ側に曲げられる。そのため、外側噴射口32Hから噴射された液体LQの噴射方向を曲げることができる。
噴射口32から噴射される液体LQの噴射方向と基板P表面との角度θをできるだけ小さくしたほうが液体LQの漏出をより良好に抑えることができるが、噴射口32から噴射された液体LQの噴射方向を途中で曲げるようにすることで、噴射口32を光路空間K1に近い位置に設けた場合でも、液体LQの界面LG近傍における液体LQの噴射方向と基板P表面との角度θを小さくすることができる。したがって、ノズル部材70のコンパクト化、ひいては露光装置EX全体のコンパクト化を図りつつ、液体LQの漏出を良好に防止することができる。
また、噴射口32から噴射される液体LQの噴射方向と基板P表面との角度θを適宜調整することで、基板Pに対して液体LQを吹き付ける位置を適宜調整することができる。例えば、上述の図18において、内側噴射口32Gから噴射する液体LQの流速、及び外側噴射口32Hから噴射する液体LQの流速の少なくとも一方を調整することにより、基板Pに対して液体LQを吹き付ける位置を調整することができる。基板Pに対して液体LQを吹き付ける位置を調整することにより、基板Pの液体LQとの接触角条件が変わっても、その基板P上に形成された液体LQの液浸領域LRの所望位置(例えば液浸領域LRの液体LQの界面LGの下端部)に、噴射口32から噴射した液体LQを当てることができる。すなわち、図10等を参照して説明したように、基板Pの基材100上に被覆された膜(レジスト、トップコート膜)に応じて基板Pの液体LQとの接触角が変化するが、その基板Pの液体LQとの接触角に応じて、基板P上に形成された液浸領域LRの界面LGの下端部の光路空間K1に対する位置が変動する。具体的には、図19(A)に示すように、基板Pの液体LQとの接触角が大きい場合には、界面LGの下端部は、光路空間K1に近い位置に設けられる可能性がある。そのような場合には、内側噴射口32Gから噴射する液体LQの流速、及び外側噴射口32Hから噴射する液体LQの流速の少なくとも一方を適宜調整して、噴射口から噴射した液体LQの噴射方向を調整することにより、噴射口から噴射した液体LQを液浸領域LRの界面LGの下端部に当てることができる。一方、図19(B)に示すように、基板Pの液体LQとの接触角が小さい場合には、界面LGの下端部は、光路空間K1から遠い位置に設けられる可能性がある。そのような場合には、内側噴射口32Gから噴射する液体LQの流速、及び外側噴射口32Hから噴射する液体LQの流速の少なくとも一方を適宜調整して、噴射口から噴射した液体LQの噴射方向を調整することにより、噴射口から噴射した液体LQを液浸領域LRの界面LGの下端部に当てることができる。
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について図20を参照しながら説明する。本実施形態の特徴的な部分は、液体LQを噴射する噴射口32が、ノズル部材70とは別の第2ノズル部材30に設けられている点にある。図20において、第2ノズル部材30は、ノズル部材70とは別の部材であって、ノズル部材70の近傍に設けられ、光路空間K1に対してノズル部材70よりも外側に設けられている。第2ノズル部材30は環状部材であって、基板P(基板ステージPST)の上方において、光路空間K1及びノズル部材70を囲むように配置されている。そして、第2ノズル部材30のうち、基板P(基板ステージPST)と対向する下面35に、噴射口32が設けられている。
第2ノズル部材30は第2支持機構92に支持されており、第2支持機構92はメインコラム9の下側段部8に接続されている。第1支持機構91に支持されたノズル部材70と第2支持機構92に支持された第2ノズル部材30とは離れている。また、第2支持機構92は、第2ノズル部材30を駆動する駆動装置95を備えている。駆動装置95は、第2支持機構92に支持されている第2ノズル部材30をX軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。
駆動装置95の動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、駆動装置95を駆動することにより、第2支持機構92に支持されている第2ノズル部材30の位置及び姿勢(傾き)を調整可能である。また、第2ノズル部材30が駆動装置95によって駆動されるので、第2ノズル部材30に設けられた噴射口32は、ノズル部材70に設けられた回収口22や、光路空間K1に満たされた液体LQの界面LGに対して可動となっている。
また、露光装置EXは、メインコラム9と第2ノズル部材30との位置関係を検出するノズル位置検出装置96を備えている。本実施形態においては、ノズル位置検出装置96は複数のレーザ干渉計を含んで構成されており、それら複数のレーザ干渉計はメインコラム9の所定位置に固定されている。また、第2ノズル部材30の複数の所定位置のそれぞれには、ノズル位置検出装置96を構成するレーザ干渉計用の反射面97が設けられている。制御装置CONTは、複数の干渉計を有するノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて、6自由度の方向(X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向)に関するメインコラム9に対する第2ノズル部材30の位置を求めることができるようになっている。
また、制御装置CONTは、ノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて、メインコラム9に対する第2ノズル部材30の位置をモニタすることができ、そのノズル位置検出装置96の検出結果に基づいて駆動装置95を駆動することにより、第2ノズル部材30をメインコラム9に対して所望位置に位置決めすることができる。また、基板Pの表面の面位置情報をフォーカス・レベリング検出系によって検出している場合には、制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、メインコラム9に対する基板Pの表面の位置情報を求めることができる。したがって、制御装置CONTは、メインコラム9を基準として、第2ノズル部材30と基板Pの表面との位置関係、ひいては噴射口32と基板Pの表面との位置関係を制御することができる。
このように、ノズル部材70とは別の第2ノズル部材30を設け、その第2ノズル部材30に液体LQを噴射する噴射口32を設けてもよい。
なお、本実施形態においては、第2ノズル部材30の位置を調整するための駆動装置95を搭載しているが、駆動装置95を省いて、第2ノズル部材30をメインコラム9に対して固定支持するようにしてもよい。
なお、上述の第1〜第7実施形態において、噴射口32より噴射される液体LQの単位時間当たりの噴射量は、供給口12より供給される単位時間当たりの液体供給量より多くてもよいし、少なくてもよいし、ほぼ同量でもよい。噴射口32より噴射される液体LQの単位時間当たりの噴射量は、基板Pの移動条件や接触角条件等を含む露光条件に応じて適宜調整可能である。
なお、上述の第1〜第7実施形態において、光路空間K1に対して噴射口32の外側に、回収口22とは別の、液体LQを回収する第2回収口を設けてもよい。
なお、上述の第1〜第7実施形態においては、第1液体供給装置11と第2液体供給装置31とは別々に設けられているが、液浸機構1及び液体噴射機構3が1つの液体供給装置を兼用してもよい。
以上のように、第1〜第7実施形態においては、噴射口32を有するノズル部材70(又は第2ノズル部材30)が、回収口22よりも内側に液体LQを封じ込めるシール機構として機能し、回収口22の外側への液体LQの漏出を防止又は抑制することができる。
なお、上述した各実施形態において、液浸機構1は、回収口22を介して液体LQのみを回収するように設けられている。以下、図21を参照しながら、液浸機構1による液体回収動作の原理について説明する。図21は多孔部材25の一部を拡大した断面図であって、多孔部材25を介して行われる液体回収動作を説明するための模式図である。
図21において、回収口22には多孔部材25が設けられている。また、多孔部材25の下側には基板Pが設けられている。そして、多孔部材25と基板Pとの間には、気体空間及び液体空間が形成されている。より具体的には、多孔部材25の第1孔25Haと基板Pとの間には気体空間が形成され、多孔部材25の第2孔25Hbと基板Pとの間には液体空間が形成されている。また、多孔部材25の上側には、回収流路(流路空間)24が形成されている。
多孔部材25の第1孔25Haと基板Pとの間の空間K3の圧力(多孔部材25Hの下面での圧力)をPa、多孔部材25の上側の流路空間24の圧力(多孔部材25の上面での圧力)をPc、孔25Ha、25Hbの孔径(直径)をd、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角をθ、液体LQの表面張力をγとした場合、本実施形態の液浸機構1は、
(4×γ×cosθ)/d ≧ (Pa−Pc) …(1)
の条件を満足するように設定されている。なお、上記(1)式においては、説明を簡単にするために多孔部材25の上側の液体LQの静水圧は考慮してない。
この場合において、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角θは、
θ ≦ 90° …(2)
の条件を満足する必要がある。
上記条件が成立する場合、多孔部材25の第1孔25Haの下側(基板P側)に気体空間が形成された場合でも、多孔部材25の下側の空間K3の気体が孔25Haを介して多孔部材25の上側の流路空間24に移動(侵入)することが防止される。すなわち、上記条件を満足するように、多孔部材25の孔径d、多孔部材25の液体LQとの接触角(親和性)θ、液体LQの表面張力γ、及び圧力Pa、Pcを最適化することにより、液体LQと気体との界面を多孔部材25の第1孔25Haの内側に維持することができ、第1孔25Haを介して空間K3から流路空間24へ気体が侵入することを抑えることができる。一方、多孔部材25の第2孔25Hbの下側(基板P側)には液体空間が形成されているので、第2孔25Hbを介して液体LQのみを回収することができる。
本実施形態においては、多孔部材25の下側の空間K3の圧力Pa、孔径d、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角θ、液体(純水)LQの表面張力γはほぼ一定であり、液浸機構1は、液体回収装置21の吸引力を制御して、上記条件を満足するように、多孔部材25の上側の流路空間24の圧力Pcを調整する。
なお、上記(1)式において、(Pa−Pc)の絶対値が大きいほど、すなわち、((4×γ×cosθ)/d)の絶対値が大きいほど、上記条件を満足するような圧力Pcの制御が容易になるので、孔径dは可能な限り小さく、多孔部材25の液体LQとの接触角θは可能な限り小さいことが望ましい。本実施形態においては、多孔部材25は液体LQに対して親液性を有しており、十分に小さい接触角θを有している。
このように、本実施形態では、多孔部材25が濡れた状態で、多孔部材25の上側の空間24と下側の空間K3との圧力差(多孔部材25の上面と下面との圧力差)を、上記条件を満足するように制御することで、多孔部材25の孔25Hから液体LQのみを回収する。これにより、液体LQと気体とを一緒に吸引することに起因する振動の発生を抑制することができる。
上述したように、本実施形態における液体LQは純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44程度と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に第1光学素子LS1が取り付けられており、この光学素子により投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の第1光学素子LS1と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
また、上述の実施形態の投影光学系は、先端の光学素子の像面側の光路空間を液体で満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、先端の光学素子のマスク側の光路空間も液体で満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、本実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
更に、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクにかえて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いてもよい。
また、国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図22に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
1…液浸機構、3…液体噴射機構、12…供給口、22…回収口、31B…脱気装置、32…噴射口、34…供給流路、34A…第1流路部、34B…第2流路部、37…バッファ空間、70…ノズル部材、100…基材、101…膜部材、102…第2膜部材、CONT…制御装置、EL…露光光、EX…露光装置、K1…光路空間、LQ…液体、P…基板、PL…投影光学系