JP2006166711A - 糞便由来遺伝子の簡便増幅方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のように糞便からの核酸を分離精製することなく、簡便に目的とする遺伝子を増幅する方法を確立、提供する。
【解決手段】(a)溶解液で糞便を溶解する工程、(b)該溶解液を濾紙に含ませる工程、(c)得られた濾紙を直接、遺伝子増幅反応溶液に接触させ、遺伝子増幅を行う工程、を含む方法による。糞便に含まれる核酸を濾紙を用いて分離、吸着させ、該濾紙を遺伝子増幅反応に直接用いることができるので、従来のように核酸分離精製を経ることなく、簡便に効率よく糞便中の目的遺伝子を増幅させることができる。
【選択図】なし
【解決手段】(a)溶解液で糞便を溶解する工程、(b)該溶解液を濾紙に含ませる工程、(c)得られた濾紙を直接、遺伝子増幅反応溶液に接触させ、遺伝子増幅を行う工程、を含む方法による。糞便に含まれる核酸を濾紙を用いて分離、吸着させ、該濾紙を遺伝子増幅反応に直接用いることができるので、従来のように核酸分離精製を経ることなく、簡便に効率よく糞便中の目的遺伝子を増幅させることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、ほ乳類の糞便から核酸精製を経ることなく、目的とする遺伝子を核酸増幅反応により簡便に増幅する方法である。
ほ乳類の糞便中に存在する、腸内細菌叢や病原性細菌、ウイルス、又はその他ほ乳類の消化管粘膜細胞、悪性新生物細胞、新生物細胞、及び分泌液に存在する遺伝子断片を用いて、各種類の疾患の原因探求や診断に用いることは、個体の健康状態の把握や悪性新生物の早期発見のために非常に有用である。しかしながら、糞便中の遺伝子を分離精製する技術は煩雑で手間がかかるのが現状である。
現状の解析手段として、例えば、病原性細菌を同定したい場合は、対象となる試料(個体の糞便)を希釈液で希釈し、これを種々の選択培地上に撒き、嫌気性培養を行う必要があった。しかし、培養の際には数日から数週間の時間を要することとなり、コロニー数のカウント等操作も煩雑であった。
これに対し、近年になって、分子生物学的手法を用いた系統分類・同定法が信頼できる手法として注目を集めている。各種遺伝子を標的とした、特異的なプローブ・プライマーによって、幅広い種の細菌の迅速かつ特異的な検出が可能となり、これらは微生物の検出において鍵となる技術になりつつある。特に特異的PCRプライマーを用いた方法は、簡便・迅速・正確に目的とする細菌の検出・同定を行うことができる。
また、糞便中に存在する悪性新生物細胞の遺伝子変異を同定することにより、例えば大腸癌などのスクリーニングを行う有用性が指摘されている(非特許文献1)。
糞便からのDNAの単離は、アルカリ性の溶解液に糞便を溶解し、遠心分離、及びアルコール沈澱により単離する方法が一般的である。
また、微生物からのDNAの単離は、これまでは、試料をリン酸緩衝液(PBS)等で洗浄し、塩化ベンジル法により菌体を破砕・蛋白質変性してアルコール沈殿することにより行われていた。しかしこの方法では、グラム陽性球菌などの一部の細菌からはほとんどDNAを回収できないことが指摘されている。
また、最近では、試料からのDNA単離の際、直径0.1mm程度のビーズを加えてフェノール存在下で激しく振とうすることにより菌体を破砕する方法が広く用いられるようになっており、この方法によれば、多岐にわたる種の細菌から効率よくDNAを単離することができる(非特許文献2)。
しかしながら、糞便には、PCR等の増幅反応において、反応を阻害する物質(腐敗酸等)が含まれていることがわかっており、これらの方法ではこの阻害物質の除去に問題があると考えられている。
DNA単離用キットの市販品として、MagExtractor(東洋紡製)やQIAamp Stool DNA Isolation Kit(QIAGEN製)が販売されている。前者はビーズで菌体を破砕した後、ビーズに吸着したDNAを磁気ビーズで回収するものであるが、DNAの収率が悪いという問題がある。一方、後者は加熱により菌体膜タンパクを変性させ、DNAを単離するものであるが、やはりこの方法によっても収率に問題がある。
また、ビーズとゲル濾過を用いることにより核酸を抽出する方法もある(特許文献1)が、作業工程の複雑さ、直接作業性の悪化を避けることはできない。
また、乾燥濾紙便を用いて糞便からの核酸抽出を行う方法(特許文献2)は、以下の(1)〜(4)の工程を必要とする。
(1)乾燥便を濾紙と共にマイクロチューブに取り、DNA分解酵素の阻害剤としてEDTAを、また陰イオン多塘体のイオン対除去のための陽イオン性界面活性剤;セチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下CTAB)を含む高塩濃度の抽出用溶液を加え煮沸(ボイル)処理を行う。
(2)次にクロロホルムを加え混合後、遠心分離を行うことにより、陰イオン多糖体-CTAB対、過剰のCTAB、便残渣成分と濾紙は下層のクロロホルム層に、目的のDNA溶液は上層の水層へと分離する。
(3)得られた水層を新たなチューブに分取し、再度、クロロホルムによる抽出操作を繰返して得られた水層に2-プロパノールを加えて遠心後、DNAの沈澱を得る。
(4)70%のエタノールで沈澱を洗浄後、トリス緩衝液-EDTA溶液を加えて最終的なDNA溶液を得る。
(2)次にクロロホルムを加え混合後、遠心分離を行うことにより、陰イオン多糖体-CTAB対、過剰のCTAB、便残渣成分と濾紙は下層のクロロホルム層に、目的のDNA溶液は上層の水層へと分離する。
(3)得られた水層を新たなチューブに分取し、再度、クロロホルムによる抽出操作を繰返して得られた水層に2-プロパノールを加えて遠心後、DNAの沈澱を得る。
(4)70%のエタノールで沈澱を洗浄後、トリス緩衝液-EDTA溶液を加えて最終的なDNA溶液を得る。
このように、糞便からDNAを分離精製すること自体が、煩雑で実用性には乏しいレベルに留まっている。
Sidransky D. et. al. 1992. Identification of ras oncogene mutations in the stool of patients with curable colorectal tumors. Science. Apr 3;256(5053):102-5 Wilson, K. H. and R. B. Blithington. 1996. Human colonic biota studied by ribosomal DNA sequence analysis. Appl.Environ.Microbiol. 62:2273-2278 特開2002−306175号公開公報
特開2001−221721号公開公報
Sidransky D. et. al. 1992. Identification of ras oncogene mutations in the stool of patients with curable colorectal tumors. Science. Apr 3;256(5053):102-5 Wilson, K. H. and R. B. Blithington. 1996. Human colonic biota studied by ribosomal DNA sequence analysis. Appl.Environ.Microbiol. 62:2273-2278
本発明が解決しようとする課題は糞便からDNAを従来のように分離精製することなく、簡便に目的とする遺伝子を増幅する方法を確立、提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、糞便を溶解液に溶解させ、該溶解液を濾紙に含ませ、反応を阻害する物質及びその糞便に含まれる核酸を濾紙に含ませて分離、吸着させ、該濾紙を直接PCR反応に用いることによって、糞便に含まれる核酸を従来の核酸分離精製工程を経ることなく、目的とする遺伝子を簡便に効率良く増幅させる本発明の方法を完成した。
すなわち、本発明は、以下からなる。
1.以下の工程を含む、糞便から得られる遺伝子の増幅方法:
(a)溶解液で糞便を溶解する工程;
(b)糞便を溶解した溶液を濾紙に含ませる工程;
(c)得られた濾紙を直接、遺伝子増幅反応溶液に接触させ、遺伝子増幅を行う工程。
2.工程(a)で得られた糞便を溶解した溶液を、微生物の膜タンパクを変性させるために処理する前項1の方法。
3.工程(b)によって、糞便を溶解した溶液中の増幅反応阻害物質と遺伝子を分離する前項1の方法。
4.前項1〜3の増幅方法の工程(c)において、目的の遺伝子の特異的プライマーを用いてPCRを行うことにより目的の遺伝子を同定する、糞便中に存在する遺伝子の解析方法。
5.前項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、疾患関連遺伝子を検出・同定する方法。
6.前項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、微生物を特異的に検出・同定する方法。
7.前項1〜3の増幅方法を行うための少なくとも以下の構成を含む試薬キット:
(1)糞便溶解用の溶液;
(2)遺伝子分離用濾紙。
1.以下の工程を含む、糞便から得られる遺伝子の増幅方法:
(a)溶解液で糞便を溶解する工程;
(b)糞便を溶解した溶液を濾紙に含ませる工程;
(c)得られた濾紙を直接、遺伝子増幅反応溶液に接触させ、遺伝子増幅を行う工程。
2.工程(a)で得られた糞便を溶解した溶液を、微生物の膜タンパクを変性させるために処理する前項1の方法。
3.工程(b)によって、糞便を溶解した溶液中の増幅反応阻害物質と遺伝子を分離する前項1の方法。
4.前項1〜3の増幅方法の工程(c)において、目的の遺伝子の特異的プライマーを用いてPCRを行うことにより目的の遺伝子を同定する、糞便中に存在する遺伝子の解析方法。
5.前項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、疾患関連遺伝子を検出・同定する方法。
6.前項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、微生物を特異的に検出・同定する方法。
7.前項1〜3の増幅方法を行うための少なくとも以下の構成を含む試薬キット:
(1)糞便溶解用の溶液;
(2)遺伝子分離用濾紙。
本発明の方法によれば、糞便から、核酸を従来のように分離精製することなく、簡便に目的とする遺伝子をPCR等の増幅反応により増幅することが可能となる。
本発明において、糞便とは、ほ乳類より得られる***物である。糞便には腸粘膜細胞、血液細胞、腸内細胞叢、病原微生物(例えば細菌やウィルス)、腸内新生組織(大腸癌やポリープを含む)などが存在する。本発明において遺伝子とは、糞便中に含まれる各種疾患関連遺伝子や微生物関連遺伝子を示しており、例えば遺伝病等の原因遺伝子、大腸癌組織由来遺伝子、又は細菌由来遺伝子等が挙げられる。
[工程(a)]
本発明においては、まず、糞便の溶解を行う。この工程は糞便に含まれる固形物を溶解するために行う。糞便の溶解液は公知のものを用いることができる。例えば、Tris-EDTAバッファーや8.4%(1M)炭酸水素ナトリウム溶液等を利用することができる。好ましくはTris-EDTAバッファーを含むpH値が9前後の溶液を用いることができる。溶解液の添加量は、溶解する糞便1mgに対し、0.1〜100μL、好ましくは1〜30μL、より好ましくは3〜7μL前後が望ましい。腸内細菌等の微生物の遺伝子を目的とする場合には、微生物の膜タンパクを変性させることもできる。膜タンパクを変性させるためには、例えば、溶解液に糞便を溶解したのちに、加熱処理(例えば60〜95℃、10分間〜10時間)を行えばよい。
本発明においては、まず、糞便の溶解を行う。この工程は糞便に含まれる固形物を溶解するために行う。糞便の溶解液は公知のものを用いることができる。例えば、Tris-EDTAバッファーや8.4%(1M)炭酸水素ナトリウム溶液等を利用することができる。好ましくはTris-EDTAバッファーを含むpH値が9前後の溶液を用いることができる。溶解液の添加量は、溶解する糞便1mgに対し、0.1〜100μL、好ましくは1〜30μL、より好ましくは3〜7μL前後が望ましい。腸内細菌等の微生物の遺伝子を目的とする場合には、微生物の膜タンパクを変性させることもできる。膜タンパクを変性させるためには、例えば、溶解液に糞便を溶解したのちに、加熱処理(例えば60〜95℃、10分間〜10時間)を行えばよい。
[工程(b)]
次いで、糞便を溶解した溶液を濾紙に含ませる。遠心分離を行わずにそのまま工程(a)で得られた溶解液に、直接濾紙を接触させてもよいが、適宜遠心分離を行った後、得られる上澄み液に濾紙を接触させる方がより好ましい。遠心分離は、3000〜8000rpm、好ましくは4000〜6000rpm、より好ましくは5,000rpm前後の回転数で1分から5分間の間で適宜行えばよい。
次いで、糞便を溶解した溶液を濾紙に含ませる。遠心分離を行わずにそのまま工程(a)で得られた溶解液に、直接濾紙を接触させてもよいが、適宜遠心分離を行った後、得られる上澄み液に濾紙を接触させる方がより好ましい。遠心分離は、3000〜8000rpm、好ましくは4000〜6000rpm、より好ましくは5,000rpm前後の回転数で1分から5分間の間で適宜行えばよい。
使用する濾紙は保留粒子径1〜7μmが望ましい。また、ここで言う保留粒子径とはJIS P 3801 [ろ紙(化学分析用)]で規定された硫酸バリウムなどを、自然濾過したときの漏洩粒子径により求めたものを指す。また陰イオン交換能をつけた濾紙を用いてもよい。市販品としては、ADVANTEC社の標準濾紙2号、26号、及び高純度濾紙No.5B等が例示される。
濾紙の大きさは、試料となる溶液の量に依存するが、一般的には、縦10〜200mm、横1〜10mmの短冊形が用いられる。濾紙の厚さは、一般的に、0.2〜0.8mmである。
濾紙の大きさは、試料となる溶液の量に依存するが、一般的には、縦10〜200mm、横1〜10mmの短冊形が用いられる。濾紙の厚さは、一般的に、0.2〜0.8mmである。
濾紙と溶解液との接触は、濾紙の先端部分の2〜10mmを溶液に0.5〜3秒間浸すことで行う。遠心分離を行った後、糞便を溶解した溶液に濾紙を浸す場合は、該溶液の上澄み液部分のみに接触させて、溶解液を含む濾紙を工程(c)の増幅反応に使用すればよい。また、遠心分離を行っていない糞便を溶解した溶液に濾紙を浸した場合は、糞便溶解液との接触で着色された濾紙の色が薄い上部分を、工程(c)の増幅反応に使用するのが好ましい。
濾紙に吸収された試料は、濾紙の表面張力によって自然展開され、遺伝子の分離が行われる。かくして、濾紙によって、溶液中に存在する増幅反応阻害物質、例えば腐敗酸等と遺伝子との分離を行うことができる。
所望により、濾紙の展開を高めるために、吸引条件下(例えば、真空ポンプ内)、ぶら下げ処理を行ってよい。展開は、室温で十分であるが、湿度40〜60%、温度15〜37℃で行うことがより好ましい。
濾紙に吸収された試料は、濾紙の表面張力によって自然展開され、遺伝子の分離が行われる。かくして、濾紙によって、溶液中に存在する増幅反応阻害物質、例えば腐敗酸等と遺伝子との分離を行うことができる。
所望により、濾紙の展開を高めるために、吸引条件下(例えば、真空ポンプ内)、ぶら下げ処理を行ってよい。展開は、室温で十分であるが、湿度40〜60%、温度15〜37℃で行うことがより好ましい。
[工程(c)]
次に遺伝子の増幅反応を行う。遺伝子増幅は、現在公知の方法を適用することができる。具体的には、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション法(PCR法、Science, 230:1350-1354,1985)やNASBA法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification 法、Nature, 350,91-92,1991)及びLAMP法(特開2001-242169号公報)等が挙げられ、好ましくはPCR法を適用することができる。以下では、PCR法を例示して説明をする。
工程(c)では、工程(b)により得られた濾紙を、増幅したい目的の遺伝子のプライマーを含んだPCR反応混合溶液に浸し、(i)数秒間、PCR反応混合溶液に濾紙を浸した後、濾紙を取り除きPCRを行う方法、及び(ii)工程(b)により得られた濾紙の必要な部分を切り出し、該切り出した濾紙をPCR反応混合溶液にいれたままPCRを行う方法の二通りが可能である。いずれの方法を用いるかは状況に応じて使い分けることが可能である。また、PCRバッファーとしてはAmpdirect粗精製DNA用バッファー(島津製作所)を用いることが好ましいが、広く公知のPCR用緩衝液を使用することができる。
次に遺伝子の増幅反応を行う。遺伝子増幅は、現在公知の方法を適用することができる。具体的には、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション法(PCR法、Science, 230:1350-1354,1985)やNASBA法(Nucleic Acid Sequence Based Amplification 法、Nature, 350,91-92,1991)及びLAMP法(特開2001-242169号公報)等が挙げられ、好ましくはPCR法を適用することができる。以下では、PCR法を例示して説明をする。
工程(c)では、工程(b)により得られた濾紙を、増幅したい目的の遺伝子のプライマーを含んだPCR反応混合溶液に浸し、(i)数秒間、PCR反応混合溶液に濾紙を浸した後、濾紙を取り除きPCRを行う方法、及び(ii)工程(b)により得られた濾紙の必要な部分を切り出し、該切り出した濾紙をPCR反応混合溶液にいれたままPCRを行う方法の二通りが可能である。いずれの方法を用いるかは状況に応じて使い分けることが可能である。また、PCRバッファーとしてはAmpdirect粗精製DNA用バッファー(島津製作所)を用いることが好ましいが、広く公知のPCR用緩衝液を使用することができる。
本発明は、上記の方法において、得られた濾紙を使用し、特異的プライマーを用いて遺伝子増幅反応を行うことより、目的とする遺伝子を増幅した後、該遺伝子を検出・同定することも可能である。従って糞便中に存在する遺伝子、例えば、糞便中の腫瘍マーカー等の各種疾患関連遺伝子マーカーや微生物関連遺伝子の解析方法を提供することができる。
更に、本発明の方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーションや、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、SSCP法を行うことにより、例えば、遺伝病や腫瘍等の各種疾患の検出、あるいは糞便中の微生物叢を構成する微生物を特異的に検出・同定することもできる。
なお本発明は、上記遺伝子増幅方法に用いることのできる糞便溶解用の溶液、遺伝子分離用濾紙を含む試薬キットにも及ぶものである。
以下に具体的な実施形態を示す。
以下に具体的な実施形態を示す。
(実施例1)糞便溶解液を含む濾紙の作製
糞便の溶解液として,500mmol/L Tris-HCl, 16mmol/L EDTA,10mmol/L NaCl, pH9.0の組成の溶液(Lysisバッファー)を調製した。1.5mlチューブに糞便を100mg取り、Lysisバッファーを500μL入れ、糞便を溶解した。溶解する糞便20mgに対し、Lysisバッファーは100μL前後が望ましい。糞便を溶解した溶液を95℃-10分間加熱処理を行なった。5,000rpm-5分間遠心分離後,濾紙をその上澄み液につけた。本実施例では濾紙はADVANTEC社の標準濾紙2号を用いた。次に、上澄み液を含ませた濾紙を乾燥させ、その上澄み液を含んだ濾紙部分を直接PCR反応混合溶液に2〜3秒間浸け、軽く濯ぐことにより糞便中に存在するDNAをPCR反応混合溶液内に抽出した(図1〜6)。
糞便の溶解液として,500mmol/L Tris-HCl, 16mmol/L EDTA,10mmol/L NaCl, pH9.0の組成の溶液(Lysisバッファー)を調製した。1.5mlチューブに糞便を100mg取り、Lysisバッファーを500μL入れ、糞便を溶解した。溶解する糞便20mgに対し、Lysisバッファーは100μL前後が望ましい。糞便を溶解した溶液を95℃-10分間加熱処理を行なった。5,000rpm-5分間遠心分離後,濾紙をその上澄み液につけた。本実施例では濾紙はADVANTEC社の標準濾紙2号を用いた。次に、上澄み液を含ませた濾紙を乾燥させ、その上澄み液を含んだ濾紙部分を直接PCR反応混合溶液に2〜3秒間浸け、軽く濯ぐことにより糞便中に存在するDNAをPCR反応混合溶液内に抽出した(図1〜6)。
(実施例2)糞便中の遺伝子の増幅
実施例1による方法で得た濾紙を用いて、糞便に存在するKRAS遺伝子とBRAF遺伝子、及び大腸菌のthrA遺伝子の増幅を行った。糞便溶解溶液上澄み液の付着した濾紙部分を,(A)KRAS遺伝子コドン12,13を挟んで増幅するプライマーペアー(FK-F: 5'- TGACTGAATATAAACTTGTGGTAG, FK-106R: 5'- ATTGTTGGATCATATTCGTC)、(B)BRAF遺伝子コドン599を挟んで増幅するプライマーペアー(FB-F: 5'-TAGGTGATTTTGGTCTAGCT, FB-115R: 5'-ATCAGTGGAAAAATAGCCTC)、(C)大腸菌に特異的なThrA遺伝子を増幅するプライマーペアー(thrA-F: 5'- CCCCGCCAAAATCACCAACCATCT, thrA-101R: 5'- CGGCAAAAATACGTTCGGCATCG)、(D)(A)に記載のKRAS遺伝子を増幅するプライマーペアーと(B)に記載のBRAF遺伝子を増幅するプライマーペアーとを含むPCR反応混合溶液50μLに、各々浸けて濯ぎ、DNAを抽出した。(A)、(B)、(C)、(D)の各遺伝子増幅反応はすべて、アニーリング温度53℃の条件で40サイクルのPCR反応を行った。その後、3%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的とする遺伝子が増幅されていることを確認した(図5〜10)。
実施例1による方法で得た濾紙を用いて、糞便に存在するKRAS遺伝子とBRAF遺伝子、及び大腸菌のthrA遺伝子の増幅を行った。糞便溶解溶液上澄み液の付着した濾紙部分を,(A)KRAS遺伝子コドン12,13を挟んで増幅するプライマーペアー(FK-F: 5'- TGACTGAATATAAACTTGTGGTAG, FK-106R: 5'- ATTGTTGGATCATATTCGTC)、(B)BRAF遺伝子コドン599を挟んで増幅するプライマーペアー(FB-F: 5'-TAGGTGATTTTGGTCTAGCT, FB-115R: 5'-ATCAGTGGAAAAATAGCCTC)、(C)大腸菌に特異的なThrA遺伝子を増幅するプライマーペアー(thrA-F: 5'- CCCCGCCAAAATCACCAACCATCT, thrA-101R: 5'- CGGCAAAAATACGTTCGGCATCG)、(D)(A)に記載のKRAS遺伝子を増幅するプライマーペアーと(B)に記載のBRAF遺伝子を増幅するプライマーペアーとを含むPCR反応混合溶液50μLに、各々浸けて濯ぎ、DNAを抽出した。(A)、(B)、(C)、(D)の各遺伝子増幅反応はすべて、アニーリング温度53℃の条件で40サイクルのPCR反応を行った。その後、3%アガロースゲルにて電気泳動を行い、目的とする遺伝子が増幅されていることを確認した(図5〜10)。
本発明の方法を用いることにより糞便試料から従来のように核酸を精製・抽出することなく、極めて簡便に目的とする遺伝子の糞便からの増幅・検出が可能となる。よって、本発明を用いることにより、遺伝子診断、早期ガン診断、感染症診断が、従来よりも迅速かつ鋭敏に行うことが可能となる。本発明の実施例によると、正常粘膜組織由来DNA、及び正常粘膜組織由来DNAが大量に存在する条件下での微量の大腸癌組織由来DNAを検出することが本発明の方法により可能であることを示しただけでなく、細菌DNAの直接検出も本発明により可能であることを示した。よって、本発明を用いれば、極めて容易かつ確実に各種の糞便からの遺伝子診断を行うことができる。他の生体試料にはない特有の情報を有する糞便試料が非侵襲DNA材料として、実用的に簡便に利用可能となったことは、各種疾患の診断上有用であるばかりではなく、操作的に多数検体の処理を可能にする。従って、正常集団を対象とした大腸癌等の各種検診への応用も可能であり、また集団発症的な感染症などの原因を迅速に検出することも可能となる。本発明の方法は、近年、益々重要性が高まっている予防医学への貢献、及び集団発症を引き起こす感染症等の迅速な診断への応用が期待できる。
Claims (7)
- 以下の工程を含む、糞便から得られる遺伝子の増幅方法:
(a)溶解液で糞便を溶解する工程;
(b)糞便を溶解した溶液を濾紙に含ませる工程;
(c)得られた濾紙を直接、遺伝子増幅反応溶液に接触させ、遺伝子増幅を行う工程。 - 工程(a)で得られた糞便を溶解した溶液を、微生物の膜タンパクを変性させるために処理する請求項1の方法。
- 工程(b)によって、糞便を溶解した溶液中の増幅反応阻害物質と遺伝子を分離する請求項1の方法。
- 請求項1〜3の増幅方法の工程(c)において、目的の遺伝子の特異的プライマーを用いてPCRを行うことにより目的の遺伝子を同定する、糞便中に存在する遺伝子の解析方法。
- 請求項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、疾患関連遺伝子を検出・同定する方法。
- 請求項1〜3の増幅方法により得られた遺伝子増幅産物を用いて、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェンドゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE)法、又はSSCP法により、微生物を特異的に検出・同定する方法。
- 請求項1〜3の増幅方法を行うための少なくとも以下の構成を含む試薬キット:
(1)糞便溶解用の溶液;
(2)遺伝子分離用濾紙。
Priority Applications (2)
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