JP2006045050A - 不定形耐火物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 粒径が0.75mm未満の微粉と0.75〜10mmの骨材とから構成される、Al2O3およびMgOを主成分とする不定形耐火物であって、上記微粉は、粒径が0.75mm未満のMgO:40〜80mass%、残部Al2O3の化学組成を持つペリクレース−スピネル粒子を含有し、微粉として、MgO:10〜35mass%、残部Al2O3を主成分とする化学組成を持つことを特徴とする不定形耐火物。
【選択図】 図3
Description
<微粉について>
粒径:0.75mm未満
本発明の不定形耐火物に用いる微粉、中でも、MgO源となるMgO原料は、後述するように、不定形耐火物の使用温度域である1600℃前後において、拡散によるマトリックスの均質化を促進させるために、粒径が0.75mm未満のものであることが好ましい。というのは、上記均質化は、原料の粒径が小さいほど速く起こり、特に不定形耐火物の上記使用温度では、0.75mm未満の粒子が優先的に拡散して均質化するからである。一方、粒径が0.75mm以上の大きさの粒子は、拡散による均質化が遅くなり、成分元素が偏析する、即ち、粒径が0.75mm以上では、微粉中に含まれるMgO成分のマトリックス中への拡散が不十分となり、マトリックス中のMgO濃度が部分的に低くなる。
ここで、上記粒径とは、篩分けによるものである。なお、微粉が有する粒度分布は、充填性を高めるために、従来の耐火物設計法に従い、粒度範囲が広く、なだらかな分布を示すことがより好ましい。
本発明が用いる上記微粉は、MgOの含有量が微粉全体に対して10〜35mass%であることが必要である。MgOの量を、微粉全体に対して10〜35mass%に制限する理由は、本発明の不定形耐火物を使用環境温度に加熱すると、微粉部は、耐火物を構成する原料の拡散によって均質化し、マトリックス組織を構成する。このマトリックス組織は、後述するように、ペリクレース−スピネル粒子に起因したスピネル相(28.3mass%MgO−Al2O3)を主としたものとなり、これによって優れた耐食性と耐スラグ浸透性が得られる。しかし、微粉中に含まれるMgOの量が10mass%を下回ると、マトリックスがアルミナリッチになり、十分な耐食性、耐スラグ浸透性が得られなくなる。一方、MgOの量が35mass%を上回ると、この場合も、スピネル組成から外れるためにスラグ浸透抑制効果が低下する上、容積安定性も劣るようになる。
また、本発明が用いる微粉は、ペリクレース−スピネル粒子からなるMgO原料を、耐火物全体に対して5〜40mass%含むことが必要である。ペリクレース−スピネル粒子は、MgO源となるものであり、その量が5mass%を下回ると、微粉中におけるMgOの量が少なすぎて、耐火物としての耐食性が低下する。一方、ペリクレース−スピネル粒子の量が40mass%を超えると、微粉中に占めるその量が多くなり過ぎて、不定形耐火物施工時の流動性を確保するためのAl2O3超微粉や、冷間強度を確保するためのアルミナセメント等を十分に添加すると、不定形耐火物中に占める微粉の量が多くなり過ぎるからである。
本発明の不定形耐火物において、微粉を構成するMgO原料としてペリクレース−スピネル粒子を用いる理由は、従来のようにMgO単体(ペリクレース)のみでは、高温で、MgO成分が周辺のAl2O3を主成分とする粒子相に一方向拡散する結果、MgO粒子が存在した元の部位が空洞(気孔)となり、その分、体積が膨張する。しかも、Al2O3粒子は、拡散してきたMgOと反応してスピネルを生成するため体積が膨張する。その結果、マトリックス組織全体としては、スピネル生成に起因する体積膨張と、気孔形成に起因する見掛け上の体積膨張とが合計された体積膨張が起こることになる。上記体積膨張を線膨張に換算すると、気孔に起因する膨張量は、スピネル生成に起因する体積膨張の約4.5倍の量になる。すなわち、アルミナ−マグネシア系不定形耐火物における容積安定性低下の原因は、主として、MgO成分がAl2O3を主成分とする粒子相に一方向拡散して気孔が発生するためである。
また、本発明の不定形耐火物に用いる微粉は、上記したペリクレース−スピネル粒子からなるMgO原料以外の残部は、主としてAl2O3であり、上記MgOとAl2O3の合計含有量は、微粉全体に対して90mass%以上であることが必要である。MgOとAl2O3の合計量が90mass%未満では、マトリックス組織中の不純物の量が多くなり過ぎるため、耐食性や耐スラグ浸透性が劣化し、期待されるほどの耐用性向上効果が得られなくなるからである。なお、上記微粉の残部を構成するAl2O3は、最小粒径が0.1μm程度のAl2O3であることが好ましく、天然鉱物、電融品、焼成品、仮焼品などを単独または混合して使用することができる。
非晶質シリカ微粉
非晶質シリカは、高温で、低融点物質を生成し、不定形耐火物にクリープ性を付与するため、耐火物に発生する応力を緩和することができる。ただし、非晶質シリカ微粉の量が、耐火物全体に対して0.2mass%を下回ると、上記応力緩和の効果が不十分となる。一方、非晶質シリカ微粉の量が、2mass%を超えると、高温でのクリープ変形が過剰となり、耐火物全体が収縮して、冷却時に亀裂が発生し易くなる。よって、非晶質シリカ微粉は、耐火物全体に対して0.2〜2mass%の範囲で含有してもよい。
さらに、本発明が用いる微粉には、常温強度を確保するために、結合材として、アルミナセメントを、耐火物全体に対して0.5〜10mass%含有させることができる。アルミナセメントが0.5mass%を下回ると、常温強度の確保が不十分となり、施工後、焼成されるまでの間に強い外力を受けるような用途に使用することが難しくなる。一方、10mass%を超えると、強度の上昇が飽和すると共に、アルミナセメントに不純物として含まれるCaOがAl2O3と低融点物質を生成し、高温強度を低下させるので好ましくない。なお、このアルミナセメントは、数μm〜数十μm程度の平均粒径のものを用いることが好適である。
本発明の不定形耐火物のもう1つの主要構成材料である骨材は、耐食性の付与、耐割れ性の改善やコスト低減などのために添加するものであり、本発明においては、上記骨材として、アルミナおよび/またはスピネルの粒子を用いる。その理由は、骨材の熱膨張率がマトリックスの熱膨張率から大きくかけ離れると、骨材とマトリックスとの界面に亀裂が発生して強度低下を招くため、マトリックスと近い熱膨張率とする必要があるからである。なお、骨材に用いるアルミナやスピネルとしては、天然鉱物、電融品、焼成品のいずれを用いてもよい。
なお、上記用途例は、本発明の不定形耐火物の用途の一部であり、これに限定されるものではないことは勿論である。
この不定形耐火物の配合物に、外枠量で4.0mass%の水を添加して混練し、タップフロー値が150〜200mmの流動性をもつ混練物とし、これを型枠へ流し込んで、40×40×160mmの角柱状試験片と、上底45mm、下底70mm、高さ40mmの台形断面をもつ長さ110mmの台形柱状試験片を作製した。その後、この試験片を常温で24時間養生してから型枠より取り出し、110℃で24時間乾燥し、大気雰囲気で1500℃×3時間の焼成を行った。
<容積安定性の評価>
上記角柱状試験片について、養生後と焼成後の長さを測定し、下記式により、残存膨張率を求め、容積安定性を評価した。
残存膨張率={(焼成後の長さ−養生後の長さ)/養生後の長さ}×100(%)
<耐食性および耐スラグ浸透性の評価>
耐食性および耐スラグ浸透性は、回転ドラム法によるスラグ侵食試験を行い評価した。侵食試験は、ドラム内に、8枚の台形柱状試験片を上底側が内面となるように組み合わせて貼り合せてから、ドラム内面をプロパンバーナーで1700℃まで昇温し、次いで、塩基度4.0の取鍋スラグを投入して、加熱しながら5時間回転し、冷却した。この際、ドラム内に投入したスラグは、1時間毎に交換した。その後、冷却した台形状試験片を回収し、溶損により消失した試験片の厚さから耐食性を、スラグ浸透による変色部の厚さから耐スラグ浸透性を評価した。なお、それぞれの特性は、表1に示した発明例1の値を100として相対評価する溶損指数およびスラグ浸透指数で表した。
<MgO原料中のMgO含有量の影響>
図3および図4は、表1の発明例1〜4と表2の比較例1〜3の結果をもとに、溶損指数、スラグ浸透指数および残存膨張率に及ぼすMgO原料中のMgO含有量の影響を示したものである。これらの図から、MgO原料中のMgOの量が40mass%を下回る、すなわち、従来のアルミナ−スピネル系不定形耐火物のような場合には、焼成によって生成するスピネルの量が少ないため、残存膨張率は低いものの、スラグ浸透性が大きく劣化する。逆に、MgO原料中のMgOの量が80mass%を超える、すなわち、従来のアルミナ−マグネシア系不定形耐火物のような場合には、MgOの一方向拡散に起因する気孔生成による体積膨張のため、残存膨張率が著しく高くなる。また、上記気孔生成に伴い、耐食性、スラグ浸透性も劣化する傾向が認められる。これに対して、本発明例のように、MgO原料中のMgOの含有量が40〜80mass%の範囲にある場合は、焼成によって生成するスピネルが十分確保されているため、耐食性、耐スラグ浸透性が優れるだけでなく、焼成時にMgOの一方向拡散が起こらないので、残存膨張率も低い。また、MgOの一方向拡散が起こらないので、過度の多孔質化による耐食性、耐スラグ浸透性が損なわれるようなこともない。
以上の結果から、本発明に適合する不定形耐火物は、焼成によって膨張することなく微細なスピネルを生成するため、従来のアルミナ−スピネル系不定形耐火物とアルミナ−マグネシア系不定形耐火物が有する長所を兼備するものであることが確認された。
図6および図7は、表1の発明例6,8,9と表2の比較例5,6の結果をもとに、溶損指数、スラグ浸透指数および残存膨張率に及ぼす微粉中のMgO含有量の影響を示したものである。これらの図から、残存膨張率は、微粉中のMgOの量にはほとんど影響されないことがわかる。これは、MgO原料中のMgOの量が40〜80mass%の範囲内であれば、マグネシアの一方向拡散が起こらないためである。また、溶損指数は、微粉中のMgOの量が高いほど低い傾向を示すが、スラグ浸透指数は、微粉中のMgO含有量が10mass%を下回るか、35mass%を上回る場合には劣化している。これに対して、本発明例のように微粉中のMgOの量が10〜35mass%の範囲内にあるものは、溶損指数、スラグ浸透指数および残存膨張率の何れも良好な結果が得られている。
表1の発明例5〜7および表2の比較例4を比較することにより、MgO原料の粒径が0.75mm未満の場合には、溶損指数、スラグ浸透指数および残存膨張率の何れにおいても良好な結果が得られることがわかる。これは、粒径が0.75mm未満である場合には、焼成時にスピネルの生成が容易に起こるためである。一方、MgO原料の粒径が0.75mmを超える場合(比較例4)には、焼成時にスピネルが十分に生成しないため、耐食性の劣化は小さいものの、耐スラグ浸透性の劣化が大きい。
また、表1の発明例11は、不純物である非晶質シリカの量が比較的多い場合であるが、微粉中のMgO+Al2O3の合計量が90mass%以上であるため、耐食性や耐スラグ浸透性、容積安定性が許容できる範囲内となっており、大きな劣化は認められない。
52:アルミナ(Al2O3)を主とする周辺物質
53:アルミナ(Al2O3)を主とする周辺物質へマグネシアが拡散した領域
54:気孔
5a:MgOの拡散方向
61:ペリクレース−スピネル粒子
62:アルミナ(Al2O3) を主とする周辺物質
63:ペリクレース−スピネル粒子からアルミナを主とする周辺物質へのMgOの拡散方向
64:アルミナを主とした周辺物質からペリクレース−スピネル粒子へのAl2O3の拡散方向
65、68:気孔
66、67:ペリクレース−スピネル粒子のマグネシアが拡散した、マグネシアリッチの領域
69:スピネル組織
Claims (7)
- 粒径が0.75mm未満の微粉と0.75〜10mmの骨材とから構成される、Al2O3およびMgOを主成分とする不定形耐火物であって、上記微粉は、粒径が0.75mm未満のMgO:40〜80mass%、残部Al2O3の化学組成を持つペリクレース−スピネル粒子を含有し、微粉として、MgO:10〜35mass%、残部Al2O3を主成分とする化学組成を持つことを特徴とする不定形耐火物。
- 骨材が、アルミナおよびスピネル粒子のうちのいずれか1種または2種としたことを特徴とする請求項1に記載の不定形耐火物。
- ペリクレース−スピネル粒子を、不定形耐火物全体に対して5〜40mass%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の不定形耐火物。
- 微粉が45〜75mass%、残部が骨材から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の不定形耐火物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の不定形耐火物を内張り耐火物として使用したことを特徴とする傾注樋。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の不定形耐火物を内張り耐火物として使用したことを特徴とする製鋼用取鍋。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の不定形耐火物を内張り耐火物として使用したことを特徴とするRH装置。
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