JP2020059612A - アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法 - Google Patents

アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が使用中に剥離損耗するか否かの耐剥離性を評価する方法を提供する。【解決手段】アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法であって、前記キャスタブル耐火物は、1400℃以上の温度で3時間以上焼成後の残存線変化率が0%以上であって、1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、1500℃における前記線熱膨張率(%)が、1400℃における前記線熱膨張率(%)以上か否か判定する工程と、1400℃における前記線熱膨張率(%)から、1600℃における前記線熱膨張率(%)を差し引いた値に基づいて評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を判断する工程とを含むことを特徴とする、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法。【選択図】図5

Description

本発明は、溶融金属処理容器の内張り炉材に用いられるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の試験方法を用いたキャスタブル耐火物の評価方法に関する。
アルミナ、マグネシア等及び有機物等の成分を含むアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物用の原料粉末が市販されている。この原料粉末に水を加えて混錬して、混練物を型枠に流し込んで所定のブロック形状に成形した後、乾燥する。前記乾燥後の成形体を目視観察して、ひびや割れ等の不良が無ければ、前記乾燥後の成形体は、溶鋼取鍋の内張用の煉瓦等の耐火材として、溶鋼取鍋等の溶融金属処理容器(以下、単に「溶鋼取鍋」という。)内に内張される。
溶鋼取鍋内に配置されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、使用中に発生する亀裂が原因で剥離損耗を生じる課題があった。使用中に発生するアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の亀裂の主な原因は、耐火物の構成原料であるアルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張により引き起こされる座屈と考えられていた。
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の使用中の座屈を防止するためには、次の2点の方法が検討されてきた。1点目は、座屈の原因となるアルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張により発生する応力を緩和するために、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に荷重軟化性を付与する方法である。2点目は、アルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張を制御し、その体積膨張により発生する応力を低減する方法である。
特許文献1と特許文献2では、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の構成原料であるアルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張が大きくなる1400℃以上の高温下において適度な荷重軟化性を付与させたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が開示されている。
特許文献3では、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の使用中の体積膨張の試験方法として大気中1500℃で3時間焼成後のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の残存線変化率を採用することにより、使用中のアルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張を制御したアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が開示されている。
特開平5−185202号公報 特開2001−253781号公報 特開平9−30859号公報
しかし、耐火物を主成分とする乾燥後の前記成形体(以下、「耐火物を主成分とする乾燥後の成形体」を単に「耐火材」という。)は、溶鋼取鍋に内張されると、互いに固定しあう状態となる。そのため、特許文献1、2、3に記載のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を用いても、使用中にキャスタブル耐火物に発生する亀裂を起点とした剥離損耗が解消しない問題が生じていた。
しかしながら、従来技術には、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が互いに固定されるように溶鋼取鍋内に内張された使用環境下で、液相により引き起こされる軟化収縮が原因で生じる亀裂によって前記耐火物に剥離損耗が生じるか否かの耐剥離性を評価する方法がなかった。
本発明は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が溶鋼取鍋内に固定配置された場合に、使用中に生成した液相により引き起こされる軟化収縮が原因で生じる亀裂により剥離損耗が生じるか否かの耐剥離性を予め評価する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、溶鋼取鍋に用いられるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の損耗機構を調べた。その結果、剥離損耗の原因となる使用中に耐火物に生じる亀裂は、耐火物の構成原料であるアルミナとマグネシアとのスピネル生成反応に伴う体積膨張により引き起こされる座屈が原因で発生するものでは無く、使用中に耐火物に生成する液相により引き起こされる軟化収縮が原因で発生することを見出した。
また、耐火物内部の温度分布において1400℃以上の温度となる領域では、耐火物原料が反応し、マグネシアとアルミナの一部との反応から生成するスピネル以外に、アルミナセメントとアルミナの一部との反応から生成するCaO・6Al、及びシリカと他の酸化物との反応から液相が生成する。
スピネルとCaO・6Alの生成には、各々、約8%と約3%の体積膨張を伴う。耐火物が液相になると、当該液相の体積は固相に比べて大きくなる。しかし、毛細管現象により、耐火物の気孔内に前記液相が吸収されて緻密化し、固体部分による熱応力が液相によって緩和される。
このように、耐火物の収縮量は、耐火物内部に生成する液相の量と、耐火物の気孔率の二つの因子により支配される。
耐火物内部に生成する液相は、耐火物を構成する無機化合物の物性に主に依存する。しかし、気孔率は、現場で原料と水とを混練して得られた耐火物を製造又は施工した際に混練に使用された水の量と前記原料中に含有される有機物等の成分と、製造時又は施工時の温度等の環境に主に依存する。
目的とする耐火物を製造するために、耐火物の混錬物に一定の範囲内で流動性を持たせて施工し易くするために最適な水の量を設定して施工する。しかし、水の量が少ない方が、気孔率が少なくなるので耐用性が良い。最近は、添加される水の量が4.0〜6.0%である原料を用いて製造又は施工され、見掛気孔率が13.0〜16.0になる溶鋼取鍋用の耐火材原料が市販されている。
しかし、最適とされる水の量で耐火物原料を混錬したにも関わらず、実際に溶鋼取鍋に使用するには、耐剥離性が低すぎる場合がある。
これは、最適とされる製造条件又は施工条件の範囲内で製造又は施工された耐火物には、気孔率の高いものと低いものがあることに起因する。気孔率は材料に含有される添加される水分に影響されるが、添加される水の量が同じであっても、増粘材等に含有される有機物の成分と、材料の特性によって、気孔率が異なる場合がある。
見掛気孔率が13.0〜16.0%程度の場合、液相が気孔中に吸収されるために、生成する液相の量によっては収縮する傾向を示す。前記液相量が適正量以上の場合に剥離が発生するが、生成する液相量が適切なものは、耐剥離性が良いと言える。これは、加熱によって膨張する無機化合物が生成しても、前記液相によって、そのような膨張の影響が緩和又は吸収されるので、耐剥離性が向上する。
また、高温下で生成した液相が冷却されると、冷却時に体積膨張を伴う固相を析出する。つまり、冷却時に体積膨張する量は、生成する液相量に比例する。従って、液相からの固相の析出が完了する1200℃における冷却過程と昇温過程での熱膨張率差は、高温下で生成する液相量と相関がみられることになる。また、一般的に、膨張収縮を繰り返す時の寸法変動差が小さい程、剥離し難くなる。
そこで、本発明者等は、膨張収縮を繰り返す時の寸法変動差に着目して、1200℃における冷却過程と昇温過程での熱膨張率差と耐剥離性との関係を調べた。その結果、前記熱膨張率差(%)が0.1%以下の場合、耐剥離性の優劣の判断基準になると考えた。尚、「線熱膨張率」は、「線膨張係数」とも呼ばれる。
本発明者等が実機を用いて更に鋭意検討した結果、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の実際の使用時の耐剥離性は、1200℃における冷却過程と昇温過程での熱膨張率差から推定される耐剥離性と異なる場合があることを見出した。すなわち、本発明者等は、使用中のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1600℃の溶鋼と接する耐火物表面から、その背面にかけて温度分布は定常状態となっており、液相が生成する温度1400℃超の温度の状態にある耐火物の線膨張率の変化が、耐剥離性と相関し、耐剥離性を線熱膨張率の変化から把握できることを知見した。
本発明は上記知見に基づくものであり、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)1400℃以上の温度で3時間以上焼成後の残存線変化率が0%以上であるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法であって、
1400±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1400±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
1500±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1500±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
1600±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1600±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
1500±10℃における前記線熱膨張率(%)が、1400±10℃における前記線熱膨張率(%)以上か否か判定する工程と、
1400±10℃における前記線熱膨張率(%)から、1600±10℃における前記線熱膨張率(%)を差し引いた値に基づいて、評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を判断する工程とを含むことを特徴とする、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法。
(2)1500±10℃における前記線熱膨張率が、1400±10℃における前記線熱膨張率(%)以上であって、且つ前記差し引いた値が0.2%以下の場合に、評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性が高いと判断することを特徴とする、(1)に記載のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法。
製造した耐火物を何ら確認せずに溶鋼取鍋に用いることができない。何故なら、その耐火物は、耐剥離性が乏しい場合がある。本発明の判定方法は、溶鋼取鍋内への配置前に、製造した耐火物の一部を用いて当該製造された耐火物の耐剥離性を判定することができる。本発明により、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を評価することができ、実際に利用された場合に耐用性に極めて優れるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を得ることができる。
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物1の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。 アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物2の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。 アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物3の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。 アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物4の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。 アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物5の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。 アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物6の1400℃、1500℃及び1600℃における線熱膨張率を示すグラフである。
本発明の評価対象とするアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、主に溶鋼取鍋に使用されることから、以下溶鋼取鍋に使用した場合を例として述べる。他の容器に用いた場合も同様に適用できる。
[溶鋼取鍋に固定されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の化学反応]
溶鋼取鍋は、転炉から出鋼された溶鋼を連続鋳造機まで搬送する溶融金属処理容器である。そのため、溶鋼取鍋に用いられるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、溶鋼が滞留している期間は加熱され、鋳造完了後から転炉での受鋼開始直前までの溶鋼が溶鋼取鍋内に存在しない期間は冷却されることになる。すなわち、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、加熱と冷却が繰り返される環境下で使用されている。
そのような環境下で使用されているアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、亀裂が原因となる剥離損傷は、1600℃の溶鋼と接する耐火物表面から、その背面にかけての耐火物内部の温度分布が定常状態となった後に発生している。その際の、亀裂が発生している位置は、使用中の耐火物内部の定常伝熱計算によれば、約1400℃に到達している位置であることが分かった。
ところで、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、及びCaO・Alを主結晶相とするアルミナセメント等の耐火物原料から構成されている。そして耐火物内部の温度が1400℃以上となる領域においては、これらの耐火物原料は、次の化学反応(1)式の化学反応を起こすと考えられる。
アルミナ+マグネシア+シリカ+CaO・Al
→ アルミナ+スピネル+CaO・6Al+液相・・・(化学反応1)
つまり、1400℃以上の温度においては、使用中に耐火物原料が反応し、マグネシアとアルミナの一部との反応から生成するスピネル以外に、アルミナセメントとアルミナの一部との反応から生成するCaO・6Al、及びシリカと他の酸化物との反応から液相が生成する。化学反応(1)式の化学反応において生成するスピネル、CaO・6Al、および、液相の各々の量は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に含有される耐火物原料の含有量に依存する。
化学反応(1)式を基に、使用中の溶鋼取鍋のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の組織の変化を推察してみる。アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において1400℃以上の温度で、ある一定量以上の液相が生成すると、液相の毛細管力により、耐火物組織は軟化収縮を示すことになる。すなわち、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域から溶鋼と接する耐火物表面にかけて、生成する液相の量が増大することから、耐火物組織は、生成する液相の量に応じて収縮する結果、耐火物表面において耐火物組織の収縮量は最大となる。
次に、鋳造が完了した後の溶鋼が取鍋内に存在しない期間、つまり、前記耐火物が冷却されている期間では、次の化学反応(2)式の反応が進行する。
アルミナ+スピネル+CaO・6Al+液相
→アルミナ+スピネル+CaO・6Al+CaO−MgO−SiO−Al系化合物・・・(化学反応2)
冷却過程では、液相からCaO・6AlとCaO−MgO−SiO−Al系化合物等の固相が析出する。一般的には、加熱された耐火物は冷却過程中には体積収縮を示すが、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物においては、化学反応(2)式の反応により、冷却過程中に生成した液相から体積膨張を伴うCaO・6Al成分が析出するために、体積膨張を引き起こすことになる。そして、液相からのCaO・6Al成分の析出が完了する1200℃近辺で、耐火物の体積膨張は最大となる。
化学反応(2)式を基に、溶鋼が取鍋内に存在しない期間、つまり、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が冷却されている期間の耐火物表面の組織の変化を推察してみる。冷却中には耐火物表面の温度は、約1200℃にまで低下する。冷却過程では、耐火物に生成していた液相から体積膨張を伴うCaO・6Al成分が析出し、液相からのCaO・6Al成分の析出は、耐火物表面の温度が1200℃近辺に冷却されるまで生じるために、耐火物の表面組織は体積膨張することになる。
以上のことから、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の表面組織は、溶鋼取鍋に溶鋼が滞留する使用中には体積収縮を、溶鋼が溶鋼取鍋内に存在しない冷却中には体積膨張を繰り返すことになる。このような、耐火物表面における耐火物組織の体積収縮と体積膨張との繰り返しは、耐火物内部において歪を蓄積させる結果、剥離損耗の原因となる亀裂を発生させることになる。
これより、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の1600℃までの加熱過程における体積収縮量と1200℃までの冷却過程における体積膨張量との差分を小さくすることにより、耐火物内部に蓄積される歪を最小とすることができ、剥離損耗の原因となる亀裂の発生を事前に予想できるとも考えられる。
しかし、1400℃以上に加熱する際、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の線熱膨張率が温度上昇と共に増加する場合、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の加熱過程における体積膨張及び冷却過程における体積収縮との差分から耐剥離性を評価する前記方法は、実際に実機で使用されるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を判断できない場合があった。
本発明者は、使用中のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物につき、耐火物内部の定常状態にある温度分布において、液相生成の開始温度1400℃以上にある耐火物の線熱膨張率の変化と剥離損耗の有無の相関関係を詳細に調べた結果、1400℃以上である耐火物の線熱膨張率が、温度上昇と共に減少しない場合においても、剥離損耗が生じる現象が存在することを知見した。
[本発明の作用機序]
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1400℃以上の温度での線熱膨張率が、温度上昇と共に減少しないのは、前記化学反応(1)式において生成する液相の量が、温度上昇と共に増大しないからである。
すなわち、1400℃以上の温度で、前記化学反応(1)式にて液相の生成量が体積膨張を伴うスピネルやCaO・6Alの生成量よりも多い場合は、耐火物の線熱膨張率は図1に示すように変化する。これとは反対に、1400℃以上の温度で、前記化学反応(1)式にて体積膨張を伴うスピネルやCaO・6Alの生成量が液相の生成量よりも多い場合は、耐火物の線熱膨張率は図2に示すように変化する。また、1500℃超の温度で液相の生成量が、スピネルやCaO・6Alの生成量よりも多い場合は、耐火物の線熱膨張率は図3から図5に示すように変化し、1500℃においてのみ、液相の生成量が、スピネルやCaO・6Alの生成量よりも多くなる場合には図6に示すように変化する。
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1400℃以下の温度では、前記化学反応(1)式の反応において液相は生成しない。つまり、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、1400℃以下の温度では耐火物原料自体の熱膨張や、スピネル、及びCaO・6Alの生成に伴う体積膨張により熱膨張を示すことになる。
1400℃以上の温度での前記耐火物の線熱膨張率が、温度上昇と共に同一の値を取るか、増大する場合には、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域から溶鋼と接する耐火物表面にかけての耐火物組織は変化しないか、乃至は膨張することになる。すなわち、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域の耐火物組織は収縮することはないため、歪が生じないために、剥離の原因となる亀裂は発生しないことになり、耐剥離性に優れると判断される。
図3及び図4のような場合、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1500℃での線熱膨張率の値が、1400℃での線熱膨張率の値と同等か、それ以上の値を示し、かつ、1600℃での線熱膨張率が、1400℃での線熱膨張率よりも小さい場合には、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域から1600℃の溶鋼と接する耐火物表面にかけての耐火物組織を見ると、亀裂の発生をもたらす歪が生じる可能性がある。
但し、1400℃での線熱膨張率の値から、1600℃での線熱膨張率の値を差し引いた差分値(%)が小さい程、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域の耐火物組織に歪は生じ難い。特に、図5のように前記差分値(%)が0.2%以下となる場合には、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域の耐火物組織に歪は生じないために、剥離の原因となる亀裂は発生しないことになり、耐剥離性に優れると判断される。
図6のような場合、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1500℃での線熱膨張率の値が、1400℃での線熱膨張率の値よりも小さく、かつ、1600℃での線熱膨張率が、1500℃での線熱膨張率よりも大きい場合には、使用中に耐火物内部の1400℃以上となる領域から1600℃の溶鋼と接する耐火物表面にかけての耐火物組織全体において、亀裂の発生をもたらす歪が生じるため、耐剥離性に劣ると判断される。
このように、評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1500℃焼成後の1500℃での線熱膨張率の値が、1400℃焼成後の1400℃での線熱膨張率の値と同等か、それ以上の値を示すか否かの判定と、1400℃における前記線熱膨張率(%)と、1600℃における前記線熱膨張率(%)との差に基づいて、前記評価対象の耐火物を実機に適用した場合の耐剥離性を評価することができる。
また、1400℃での線熱膨張率の値から、1600℃での線熱膨張率の値を差し引いた差分値(%)が所定の以下の場合、特に、1400℃焼成後の1400℃での線熱膨張率の値から、1600℃焼成後の1600℃での線熱膨張率の値を差し引いた値が0.2%以下となる場合に、前記キャスタブル耐火物は耐剥離性に優れると判断することが好ましい。
一般にアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、熱履歴を受けた後に適度な残存膨張のあることが好ましい。残存収縮する耐火物、すなわち、残存線変化率が0%未満のものは、加熱され冷却された後の寸法が元の加熱前の寸法より小さくなる。このような残存線変化率が0%未満の耐火物は、使用中に亀裂が発生することが明白であり、そもそも耐剥離性に劣ることが多いので、実機の製造に利用することができない。
一方で、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、1400℃以上の温度では前記化学反応(1)式の反応において液相を生成する可能性がある。生成した液相は、冷却時に固化する際の体積収縮により耐火物を収縮させる可能性がある。また、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、使用中に溶鋼と接することで耐火物表面では最高1600℃まで加熱されうる。また、1400℃以上の温度での焼成時間は、3時間以上であれば、前記化学反応(1)式の反応が化学平衡状態に到達するのに十分な時間である。
そこで本発明は、1400℃以上の温度で3時間以上焼成した後の残存線変化率が0%以上であるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に適用するものである。
残存線変化率の試験方法としては、JIS−R2554「キャスタブル耐火物の線変化率試験方法」を用いるのが好ましい。
また、本発明において、線熱膨張率の試験方法として、JIS−R2207「耐火物の熱膨張の試験方法」に準拠した試験片と試験条件を用いるのが好ましい。より好ましくは、液相の膨張収縮に影響の少ないJIS−R2207-1「非接触法」を用いる。
尚、図1〜図6には、1400℃、1500℃及び1600℃の線熱膨張率のみが示されている。しかし、1400±10℃の温度範囲で測定された線熱膨張率であれば、線熱膨張率の差が絶対値で0.01%未満になるので、前記温度範囲内で測定された線熱膨張率を「1400℃の線熱膨張率」として本発明の評価方法に用いても良い。同様に、本発明の評価方法において、1500±10℃において測定された線熱膨張率(%)を「1500℃の線熱膨張率」とし、1600±10℃において測定された線熱膨張率(%)を「1600℃の線熱膨張率」として用いても良い。
[溶鋼取鍋に固定された耐火物の線熱膨張率の温度変化と耐剥離性]
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が互いに固定されるように溶鋼取鍋内に内張された使用環境下で、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の線熱膨張率が実際にどのような温度変化をするのか、また、実機適用時の耐剥離性について具体的に説明する。
尚、互いに固定されるように溶鋼取鍋内に内張された使用環境下における線熱膨張率の温度変化を観察するため、表1に示すNo.1〜No.6の組成のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が用いられた。
Figure 2020059612
また、線熱膨張率の試験方法として、JIS−R2207「耐火物の熱膨張の試験方法」に準拠した試験片と試験条件を用いた。
加熱過程における体積収縮量と冷却過程における体積膨張量との差分から耐剥離性を判断する評価方法(表1の「比較対象の評価方法」)との比較を行うため、1400℃で3時間焼成後の耐火物の線熱膨張曲線における1200℃の線熱膨張率の差分値を以下のように測定した。すなわち、1400℃で3時間焼成後、室温まで冷却した後、室温から1600℃までの昇温過程、及び、1600℃から室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定し、冷却過程と昇温過程における1200℃での線熱膨張率の差(%)を差分値(%)とした。前記比較対象の評価方法は、液相からの固相の析出が完了する1200℃における冷却過程と昇温過程での熱膨張率差に着目した前記評価方法であって、前記差分値が±0.1%以内であれば、耐剥離性が良好であると判断される。
図1にアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物1の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。1400℃以上の温度では、線熱膨張率は温度上昇と共に減少している。前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れる(表1:符号“○”)と判断された。
尚、図1〜図6において、1400℃の線熱膨張率は、1400±10℃で3時間焼成したアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物(以下、特に断りが無い限り、単に「1400℃で焼成した耐火物」という。)につき、室温から1400℃までの昇温過程で測定される線熱膨張率である(以下、特に断りが無い限り、このような線熱膨張率を単に「1400℃での線熱膨張率」という)。同様に、1500℃の線熱膨張率は、1500±10℃で3時間焼成したアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物(以下、特に断りが無い限り、単に「1500℃で焼成した耐火物」という。)の、室温から1500℃までの昇温過程で測定される線熱膨張率である(以下、特に断りが無い限り、このような線熱膨張率を単に「1500℃での線熱膨張率」という)。1600℃の線熱膨張率は、1600±10℃で3時間焼成したアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物(以下、特に断りが無い限り、このような線熱膨張率を単に「1600℃で焼成した耐火物」という。)の、室温から1600℃までの昇温過程で測定される線熱膨張率である(以下、特に断りが無い限り、単に「1600℃での線熱膨張率」という)。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、1200℃での冷却過程での線熱膨張率と昇温過程での線熱膨張率との差分値(%)が0.05%であった。そのため、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れると判断され、実際に溶鋼取鍋に使用しても軟化収縮が原因で生じる亀裂により剥離損耗がなく、耐剥離性に優れていた(表1:符号“○”)。
図2に前記比較対象の評価方法で耐剥離性に劣る(表1:符号“×”)と判断されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物2の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。図2の1400℃以上の温度での線熱膨張率を見ると、線熱膨張率は温度上昇と共に増大する。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、冷却過程での1200℃の線熱膨張率と昇温過程での1200℃の線熱膨張率との差分値(%)が0.5%であった。そのため、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に劣ると判断される。しかし、1400℃での線熱膨張率の値と1600℃での線熱膨張率の差分値(%)が−0.15%であり、この差分値は0.2%以下になるので、本発明の方法によれば耐剥離性に優れると判定される。実際に溶鋼取鍋に使用したところ、軟化収縮が原因で生じる亀裂により剥離損耗がなく、耐剥離性に優れていた。
図3に前記比較対象の評価方法で耐剥離性に優れると判断されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物3の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。尚、図3の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率は、図1のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と同様の条件にて測定された。図3の1400℃以上の温度での線熱膨張率を見ると、1500℃での線熱膨張率は1400℃でのそれよりも高く、1600℃での線熱膨張率は1500℃でのそれよりも低くなっており、1400℃以上にある耐火物の線膨張率が、温度上昇と共に減少しない。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、冷却過程での1200℃の線熱膨張率と昇温過程での1200℃の線熱膨張率との差分値が0.01%であった。そのため、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れると判断される。しかし、1400℃での線熱膨張率と1600℃での線熱膨張率の差分値(%)が0.2%超であるために、本発明の方法によれば耐剥離性に劣ると判定される。実際に溶鋼取鍋に使用した場合に軟化収縮が原因で亀裂による剥離損耗が発生し、耐剥離性に劣っていた。
図4に前記比較対象の評価方法で耐剥離性に優れると判断されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物4の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。尚、図4の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率は、図1のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と同様の条件にて測定された。図4の1400℃以上の温度での線熱膨張率を見ると、1500℃での線熱膨張率は1400℃でのそれと同等で、1600℃での線熱膨張率は1500℃でのそれよりも低くなっており、1400℃以上にある耐火物の線膨張率が、温度上昇と共に減少しない。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、冷却過程での1200℃の線熱膨張率と昇温過程での1200℃の線熱膨張率との差分値(%)が0.03%であった。そのため、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れると判断される。しかし、1400℃での線熱膨張率の値と1600℃での線熱膨張率の値の差分値(%)が0.21%であるために、本発明の方法によれば耐剥離性に劣ると判定される。実際に溶鋼取鍋に使用した場合に軟化収縮が原因で亀裂による剥離損耗が発生し、耐剥離性に劣っていた。
図5に前記比較対象の評価方法で耐剥離性に劣ると判断されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物5の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。尚、図5の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率は、図1のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と同様の条件にて測定された。図5の1400℃以上の温度での線熱膨張率を見ると、1500℃での線熱膨張率は1400℃でのそれよりも高く、1600℃での線熱膨張率は1500℃でのそれよりも低くなっており、1400℃以上にある耐火物の線膨張率が、温度上昇と共に減少しない。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、前記冷却過程での1200℃の線熱膨張率と昇温過程での1200℃の線熱膨張率との差分値(%)が0.2%であった。そのため、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に劣ると判断される。しかし、1400℃での線熱膨張率の値と1600℃での線熱膨張率の値の差分値(%)が0.2%であった。これは本発明の方法によれば耐剥離性に優れると判定される。実際に溶鋼取鍋に使用したところ、軟化収縮が原因で生じる亀裂により剥離損耗がなく、耐剥離性に優れていた。
図6に前記比較対象の評価方法で耐剥離性に優れると判断されたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物6の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率を示す。尚、図6の1400℃、1500℃、及び1600℃での線熱膨張率は、図1のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と同様の条件にて測定された。図6の1400℃以上の温度での線熱膨張率を見ると、1500℃での線熱膨張率は1400℃でのそれよりも低く、1600℃での線熱膨張率は1500℃でのそれよりも高くなっており、1400℃以上にある耐火物の線膨張率が、温度上昇と共に減少しない。
1400℃で焼成した前記耐火物を対象に、1200℃〜1600℃までの昇温過程の線熱膨張率と室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定したところ、1200℃での前記冷却過程における線熱膨張率と前記昇温過程における線熱膨張率との差分値(%)が0.03%であった。従って前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れると判断される。
図6に示されるように、測定対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物6は、1400℃での線熱膨張率の値と1600℃での線熱膨張率の値の差分値(%)が−0.55%であり、0.2%以下である。しかしながら、1500℃での線熱膨張率が1400℃での線熱膨張率よりも低いために、これは本発明の対象外とする。実際に溶鋼取鍋に使用したところ、軟化収縮が原因で亀裂による剥離損耗が発生し、耐剥離性に劣っていた。
以上のことから、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物において、1400℃以上の温度での線熱膨張率が、温度上昇と共に減少しないと、前記比較対象の評価方法では、前記耐火物の耐剥離性を判断できない場合が存在することが明らかとなった。
[本発明に係る評価方法の評価対象]
本発明に係る評価方法の評価対象は、例えば、以下の組成の材料を原料として用いることによって作製することができる。但し、本発明に係る評価方法の評価対象は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物であって、1400℃以上の温度で3時間以上焼成後の残存線変化率が0%以上であれば、その組成は以下の例に限定されない。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるアルミナ質原料としては、焼結アルミナ、電融アルミナ、重焼アルミナ、仮焼アルミナ、ボーキサイト、電融ボーキサイト、ばん土頁岩などが使用できる。アルミナの粒度としては最大粒径が10mm未満の一般的なものを使用することができる。アルミナの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物全量中、質量%で78%〜93.5%の範囲が望ましい。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるマグネシア質原料としては、焼結マグネシアまたは電融マグネシアが使用できる。マグネシアの粒度としては最大粒径が1mm未満の一般的なものを使用することができる。マグネシアの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物全量中、質量%で3%〜10%の範囲が望ましい。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるシリカ質原料としては、シリコンおよびシリコン合金の製造時に副生するシリカフラワーやシリカヒュームのようなシリカや、気相法で製造したエアロゾル状のシリカ、及び、湿式法で合成した非晶質含水シリカ、及び、それを乾燥させたものが使用できる。シリカの粒径は1μm以下のものが望ましい。シリカの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物全量中、質量%で0.5%〜2%の範囲が望ましい。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるアルミナセメントとしては、CaO・Alを含有するアルミナセメントが使用できる。CaO・Al以外にアルミナやスピネルを含むアルミナセメントを使用してもよい。アルミナセメントの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物全量中、質量%で3%〜10%の範囲が望ましい。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられる分散剤としては、一般に使用されものでよい。例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、ナフタレンスルホン酸ソーダ、リグニンスルホン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、炭酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、クエン酸ソーダなどが使用できる。分散剤の配合割合も一般的な処方でよい。例えばアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物100質量%に対して、前記分散剤を0.03%〜0.1%の範囲で添加することが望ましい。
本発明に係る評価方法の評価対象とされるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられる爆裂防止剤としては、一般に使用されものでよい。例えばビニロンファイバー、乳酸アルミニウム、発泡剤である金属アルミニウム、アゾジカルボンアミド等を挙げることができる。爆裂防止剤の配合割合も一般的な処方でよい。例えば、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物100質量%に対して、前記爆裂防止剤を0.01〜0.03%の範囲で添加することが望ましい。
本発明に係る評価方法を実施するために供するアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の試験片の作製は、実機で施工する条件とできる限り同等とすることが好ましい。しかし、作製された試験片が1400℃以上の温度で3時間以上焼成後の残存線変化率が0%以上であれば、試験片の作製方法は特に限定されない。
例えば、前記組成を満たす耐火物原料100質量%に対し、4〜6質量%の水を添加し、ミキサーで混練し型枠に流し込むことによって作製しても良い。作製の際には充填性を向上させるため、混練物を流し込んだ型枠に振動を付与しても良い。
そこで本発明を実施するために供するアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の試験片の作製は、実機で施工する条件とできる限り同等とすることが好ましい。しかし、従来用いられている方法を適用することでも十分である。
以下に本発明の実施例を示す。
表2に、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の原料配合と評価結果を示す。表2の配合で作製したキャスタブル耐火物に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ、又は、ポリカルボン酸ソーダを耐火物の質量に対して0.03質量%〜0.1質量%の範囲で添加し、爆裂防止剤としてビニロンファイバーを耐火物の質量に対して0.01質量%添加した。更に水道水を耐火物の質量に対して4〜6質量%の範囲で添加して、二軸ミキサーを用いて3分間混練し、混練物を所定寸法の金枠に振動を付与させながら流し込んだ。そして、大気中室温で前記混練物が前記金型に流し込まれた状態のまま24時間静置した後に、前記混練物を前記金型から取り出して110℃で24時間乾燥させることにより評価試料を作製した。
1400℃、1500℃、及び1600℃の各温度で3時間焼成した耐火物の残存線変化率の測定はJIS−R2554のキャスタブル耐火物の線変化率試験方法を用いた。1400℃、1500℃、及び1600℃の各温度で3時間焼成した耐火物の線熱膨張率の測定は、JIS−R2207の耐火物の熱膨張の試験方法を用いた。
1400℃で3時間焼成後の耐火物の線熱膨張曲線における1200℃の線熱膨張率の差分値(%)は、1400℃で3時間焼成後、室温まで冷却した後、室温から1600℃までの昇温過程、及び、1600℃から室温までの冷却過程の線熱膨張率を連続的に測定し、冷却過程と昇温過程における1200℃での線熱膨張率から算出した。前述した加熱過程における体積収縮量と冷却過程における体積膨張量との差分から耐剥離性を判断する評価方法(以下、単に「比較対象の評価方法」という。)によれば、前記冷却過程と昇温過程における1200℃での線熱膨張率の差分値が±0.1%以内であれば、耐剥離性は良好と判断される。
一方で実機使用時の損耗速度は、表2の各例の配合割合からなるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ、又は、ポリカルボン酸ソーダを耐火物の質量に対して0.06質量%〜0.1質量%の範囲で添加し、爆裂防止剤としてビニロンファイバー0.01質量%添加した。更に水を耐火物の質量に対して4〜6質量%の範囲で添加して、二軸ミキサーを用いて3分間混練し、混練物を容量300tの溶鋼取鍋の側壁部に施工し、この溶鋼取鍋を70回(ch)使用した後に当該耐火物の厚みを測定し、元の厚みから差し引いた値を使用回数で除することにより平均損耗速度(mm/ch)として算出した。同時に使用中の亀裂による剥離損耗の状況を目視観察した。この結果を表2に示す。
Figure 2020059612
試験例1〜4のキャスタブル耐火物は、1400℃で3時間焼成後の耐火物の線熱膨張曲線における1200℃の線熱膨張率の差分値は0.1%超であり、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に劣ると判断される。しかし、1500℃での線熱膨張率の値が、1400℃での線熱膨張率の値と同等か、それ以上の値を示し、かつ、1400℃での線熱膨張率の値から1600℃での線熱膨張率の値を差し引いた値が±0.2%以内であるために、本発明に係る評価方法により、試験例1〜4のキャスタブル耐火物は、耐剥離性に優れると判定した。
試験例1〜4のキャスタブル耐火物を実機で使用しても剥離損耗が発生しておらず、損耗速度も比較的小さかったことから、本発明は1400℃以上にある耐火物の線熱膨張率が、温度上昇と共に減少しない耐火物の耐剥離性を正確に評価することができている。
試験例5と6のキャスタブル耐火物は、1400℃で3時間焼成後の耐火物の線熱膨張曲線における1200℃の線熱膨張率の差分値が0.1%以下であるので、前記比較対象の評価方法では耐剥離性に優れると判断される。
試験例5と6のキャスタブル耐火物は、1500℃での線熱膨張率の値が、1400℃での線熱膨張率の値と同等か、それ以上の値を示す。しかし、1400℃での線熱膨張率の値と1600℃での線熱膨張率の値の差がいずれも0.2%超であるために、本発明に係る評価方法では、試験例5と6のキャスタブル耐火物は、耐剥離性に劣ると判定される。実際に、実機で使用すると剥離損耗が発生していることから、本発明は1400℃以上にある耐火物の線熱膨張率が、温度上昇と共に減少しない耐火物の耐剥離性を正確に評価できることが分かる。
本発明によれば、実機を施工する前に、使用する予定のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を用いて、当該アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を正確に評価することができる。そのため、本発明に係る評価方法を利用することによって、各種のキャスタブル耐火物の耐剥離性を比較検討することができ、耐用性に極めて優れたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物及び当該キャスタブル耐火物を用いた実機を製造することができる。

Claims (2)

  1. 1400℃以上の温度で3時間以上焼成後の残存線変化率が0%以上であるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法であって、
    1400±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1400±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
    1500±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1500±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
    1600±10℃で3時間以上焼成後の前記キャスタブル耐火物について、1600±10℃における線熱膨張率(%)を測定する工程と、
    1500±10℃における前記線熱膨張率(%)が、1400±10℃における前記線熱膨張率(%)以上か否か判定する工程と、
    1400±10℃における前記線熱膨張率(%)から、1600±10℃における前記線熱膨張率(%)を差し引いた値に基づいて、評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性を判断する工程とを含むことを特徴とする、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法。
  2. 1500±10℃における前記線熱膨張率が、1400±10℃における前記線熱膨張率(%)以上であって、且つ前記差し引いた値が0.2%以下の場合に、評価対象のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性が高いと判断することを特徴とする請求項1に記載のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐剥離性の評価方法。
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