JP2006025690A - 水中油型乳化物及びこれを用いた食品の製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、高いHLBの乳化剤を配合したO/W型乳化物を、起泡性油脂組成物を含む水性組成物に添加することで、ホイップした状態あるいはケーキ等にデコレーションした状態で凍結解凍しても、凍結前と同等のクリーム外観と風味・食感を保持し、硬化、ひび割れといった凍結劣化を生じることのない、優れた凍結耐性を有する起泡性水中油型乳化組成物が得られる。
【選択図】 なし
Description
また、乳化剤を用いて凍結耐性を付与する方法としては、グリセリン・ジ・脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸ジ・トリ・ポリエステル、グリセリン・モノ・(ジ)リノレートのうちの2種以上を含有する(例えば、特許文献2)ことにより凍結耐性を付与しているものがある。
HLB1〜4の蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン不飽和脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、等を使用することで温度変化に対して抵抗性の優れた起泡性水中油型乳化脂(フィルドクリーム)に関する発明も存在する。(例えば、特許文献3)しかし、バターミルク固形分とそれ以外の無脂乳固形分配合比率に限定があり汎用性に欠けるものであった。
レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン不飽和脂肪酸エステルにキサンタンガム、グァーガムを併用する発明もある(例えば、特許文献4)が、特段、凍結耐性を明記しているわけではないうえに、また糖類、増粘安定剤等の多成分の添加を伴うため、平易な方法で成し遂げることはできなかった。
(1)油分が10〜50重量%、水分が10〜50重量%、無脂固形分が10〜70重量%であり、且つHLBが5〜16の乳化剤を含むことを特徴とするO/W型乳化物。
(2)水性組成物に添加して、起泡させることを特徴とする(1)記載のO/W型乳化物。
(3)水性組成物が起泡性油脂組成物であることを特徴とする(1)記載のO/W型乳化物。
(4)(1)記載のO/W型乳化物を添加して起泡させた、起泡済油脂組成物。
(5)起泡性油脂組成物に(1)記載のO/W型乳化物を添加して起泡させることを特徴とする、起泡済油脂組成物の製造法である。
ただしO/W型乳化物の油分が10%未満であるとO/W型乳化物を添加した起泡性クリームのホイップ性を低下させ、50%を超えるとO/W型乳化物の乳化が不安定になり、安定的生産に支障をきたす。
乳化剤の親水性は高いほどO/Wの乳化を安定に保つ方向に働く。冷凍・解凍後に組織がぼそぼそになるのは、乳化が壊れることが一因であるので、その乳化を安定に保つ力が強い、すなわち親水性の高い、高HLBの乳化剤が好ましい。好適な条件としては、HLBが5以上、望ましくは9〜16程度のものが好ましく、種類は特に限定されず、油脂、水分、無脂固形分を安定に保つものであれば好適に使用できる。
例えばソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、少なくとも1種は前述のHLBの条件を満たしている必要がある。
上記SUSで表されるトリグリセリドを多く含む油脂としては、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、パーム油及びこれらの分別油等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。また、グリセリドの1,3位を選択的なエステル交換を行い必要な場合には中融点画分を分取することによってSUSで表されるトリグリセリドを多く含む油脂を製造し用いることもできる。
O/W型乳化物に含有される水分の由来は特に規定はなく、乳固形分を含む乳製品由来の水分であってもよいし、乳固形分を水に溶解もしくは分散させた場合には溶媒もしくは分散媒の水分でも良い。このほか果汁、ジャム、各種フルーツ類、餡類、チーズ類、ナッツ類、天然蜂蜜、コーヒー、紅茶などの含水食品を一種または二種以上を併用して使用する事もできる。
上記無脂固形分としては、無脂乳固形分、無脂カカオ固形分、糖類が挙げられる。無脂乳固形分は起泡性クリームへの乳味感、コク味を付与し、無脂カカオ固形分はチョコレート風味やコク味を付与する。
上記無脂乳固形分としては、生クリーム、牛乳、濃縮乳、脱脂乳、加糖練乳、無糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー、ホエー、ホエーパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン等に含まれる乳由来の無脂固形分が例示でき、単独又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記無脂カカオ固形分とは、カカオ豆由来の固形分のうちココアバターを除いた部分であり、無脂カカオ分源としては、カカオマス、ココアパウダー及びこれらを原料とする各種チョコレート、並びにその加工品の全てが利用できる。
以上に示された、O/W型乳化物の油分、水分、無脂固形分の配合量の関係は、公知の起泡性クリームに比べて低水分であり、練乳に比べて高油分であるが、その調製法の主なものを次ぎに例示する。
あるいは別の調製方法として、上記無脂固形分と上記油脂それぞれを、水性成分とを混合した後、30〜70℃に加温する、あるいはどちらか一方または両方を30〜70℃に加温しておいてから混合し、手で攪拌するような緩やかな攪拌方式、あるいは強力な剪断力を加えることのできる高速攪拌方式、例えばホモミキサー等のいずれの方式でも製造することができる。乳化は場合によっては均質化(5〜150kg/cm2)処理を行ってもよい。
また、解乳化しやすくボテ現象の起こりやすいSUS型トリグリセリドを配合しても上記の工程に準じて製造するときは、調製が可能である。
次に、本発明のO/W型乳化物を含有する起泡済油脂組成物について説明する。
上記のようにして得られたO/W型乳化物は、水性組成物に好適に使用でき、起泡済油脂組成物を製造することができる。水性組成物はそれ自身に気泡力を有さないもの、一例として、水や果汁、牛乳などでもよいし、起泡性油脂組成物(起泡性クリーム)を用いても構わない。
起泡性油脂組成物の製造法は周知慣用の技術や、公知の技術を採用でき、生クリームや植物性クリームの各種市販製品も用いることができる。
起泡性クリームにO/W型乳化物を添加するタイミングはホイップの前、途中、のいずれでもよいがホイップ後であるよりは、ホイップ前や途中に加える方がよい。
なお、本発明のO/W型乳化物自体も凍結耐性を有し、凍結・解凍後に起泡性クリームに添加してホイップしても同様の凍結耐性機能を付与できる。
カカオマス、ココアパウダー、ココアバター、砂糖、レシチン、バニリンを表1に従い配合、定法に従いチョコレート様食品を製造する。次いで30℃に加温した生クリーム(製品名:ハイフレッシュNM、不二製油株式会社製)、水、果糖ブドウ糖液糖(製品名:ハイフラクトM−75、日本コーンスターチ株式会社)、乳化剤(製品名:リョートーシュガーエステルS−1670、三菱化学フーズ株式会社製、HLB=16)に、上記操作にて得られたチョコレートを粉砕したものと麦芽糖(製品名:サンマルトシロ、株式会社林原製)を表1の配合量に従って加え混合する。
上記O/W型と乳化物植物性油脂からなる起泡性クリーム(製品名:ラテール 不二製油株式会社製、高乳脂コンパウンドタイプ)を60:40の割合で混合し、縦型ミキサー(ホバートミキサーN−50 ホバートジャパン株式会社製)を使用して起泡させた起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。デコレーションした状態で評価は−20℃で14日間凍結し、5℃24時間で解凍凍結解凍を行って評価した。評価は表1に配合と共に示した。
表1の配合に示した乳化剤を用いる以外は実施例1と同じ配合と同様の製法にて上記混合物・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表1に配合と共に示した。
乳化剤は実施例2(製品名:リョートーシュガーエステルS−570、三菱化学フーズ株式会社製、ショ糖脂肪酸エステル(以降SEと称する)、HLB=5)
比較例1(製品名:リョートーシュガーエステルS−370、三菱化学フーズ株式会社製、SE、HLB=3)
実施例3(製品名:グリスターMSW−7S、坂本薬品工業株式会社製、ポリグリセリン脂肪酸エステル(以降PGと称す):デカグリセリンモノエステル、HLB=13.4)
実施例4リョートーシュガーエステルS−570(HLB=5)とリョートーシュガーエステルS−370(HLB=3)の併用
乳化剤を用いない以外は実施例1と同じ配合と同様の製法にて上記混合物・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表1に配合と共に示した。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルでHLB=13.4のものを用いた実施例3、
ショ糖脂肪酸エステルでHLB=16のものとHLB=5のものを併用した実施例4についても同様にすぐれた凍結耐性を有していた。
次に、ココアバターといった対称型トリアシルグリセリドを多く含むテンパリングタイプの油脂ではなく、部分硬化を施されたトランス体の多いノーテンパリングタイプの油脂を使用した系でも検証する。
全粉乳、植物性油脂(製品名:メラノH−1000S、部分硬化油脂・ノーテンパリングタイプ)、砂糖、レシチン、バニリンを表2に従い配合、表2の配合にて、定法に従いチョコレートを製造する。次いで30℃に加温した水、果糖ブドウ糖液糖(製品名:ハイフラクトM−75、日本コーンスターチ株式会社)、乳化剤(製品名:リョートーシュガーエステルS−570、三菱化学フーズ株式会社製、HLB=5)に、上記操作にて得られたチョコレートを粉砕したものを、表2の配合量に従って加え混合する。
上記混合物を、加温しながらホモミキサー(T.K.ホモディスパー 特殊機化工業株式会社製)3000rpmにて攪拌を行い、65℃30分保持後、冷却して油分重量27.3%、無脂固形分52.7重量%、水分20.0重量%のO/W型乳化物を得た。
上記O/W型と乳化物植物性油脂からなる起泡性クリーム(製品名:ラテール 不二製油株式会社製、高乳脂コンパウンドタイプ)を60:40の割合で混合し、縦型ミキサー(ホバートミキサーN−50 ホバートジャパン株式会社製)を使用して起泡させた起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表2に配合と共に示した。
表2の配合に示した乳化剤の量を変更する以外は実施例5と同じ配合と同様の製法にて上記混合物・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表2に配合と共に示した。
表2の配合に示した起泡性クリームを生クリームに変更する以外は実施例6と同じ配合と同様の製法にて上記混合物・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表2に配合と共に示した。
また、起泡性クリームと生クリームとを置き換えた実施例7も同様に凍結耐性に優れているものと判断することができた。
次に乳化剤添加量の上限について検証した。
表3の配合に従い、実施例1と同様の製法にて、チョコレート様食品・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表3に配合と共に示した。
乳化剤は実施例3と同じポリグリセリン脂肪酸エステル(製品名:グリスターMSW−7S、坂本薬品工業株式会社製、デカグリセリンモノエステル、HLB=13.4)を用いた。
表3の配合に示した乳化剤量を変動させる以外は実施例8と同じ配合と同様の製法にてチョコレート様食品・O/W型乳化物・起泡済み油脂組成物を得、評価を行った。評価は表3に配合と共に示した。
また、実施例7にしてもやや保形性が弱いものの十分に商品価値があるものと判断することができた。
しかし、乳化剤の種類やHLBが適切ではあるが3.0部添加されている比較例3は、起泡の際に、比重は下がったが保形性が弱く、長時間ホイップしても造花できるまで起泡させることはできなかった。O/W型乳化物中に配合した乳化剤の配合量が多すぎた為に、起泡性油脂組成物の起泡性に悪影響を与え、戻り傾向(起泡量と硬さの減少する事)が強くなったと判断できるものであった。
Claims (5)
- 油分が10〜50重量%、水分が10〜50重量%、無脂固形分が10〜70重量%であり、且つHLBが5〜16の乳化剤を含むことを特徴とするO/W型乳化物。
- 水性組成物に添加して、起泡させることを特徴とする請求項1記載のO/W型乳化物。
- 水性組成物が起泡性油脂組成物であることを特徴とする請求項1記載のO/W型乳化物。
- 請求項1記載のO/W型乳化物を添加して起泡させた、起泡済油脂組成物。
- 起泡性油脂組成物に請求項1記載のO/W型乳化物を添加して起泡させることを特徴とする、起泡済油脂組成物の製造法。
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