JP2005200695A - ガス浸炭方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来型のガス変成炉を使用するガス浸炭処理において、大規模な設備の導入又は改造を行うことなく、被処理品に対する浸炭処理効率を向上させるガス浸炭方法及びガス浸炭システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 変成ガスと、エンリッチガスと、を浸炭炉に供給し、所定温度下で被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭方法において、前記浸炭炉内に、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスをさらに供給するガス浸炭法により解決する。また、浸炭用の原料ガスを変成して変成ガスにするガス変成炉と、前記ガス変成炉から供給された変成ガス、及び前記ガス変成炉とは別の箇所から供給され、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガス、並びに、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスにより、被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭炉と、を含むガス浸炭システムにより解決する。
【選択図】 図1
【解決手段】 変成ガスと、エンリッチガスと、を浸炭炉に供給し、所定温度下で被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭方法において、前記浸炭炉内に、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスをさらに供給するガス浸炭法により解決する。また、浸炭用の原料ガスを変成して変成ガスにするガス変成炉と、前記ガス変成炉から供給された変成ガス、及び前記ガス変成炉とは別の箇所から供給され、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガス、並びに、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスにより、被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭炉と、を含むガス浸炭システムにより解決する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鉄鋼材料等の被処理品に浸炭性ガスを供給するガス浸炭方法に関し、大規模な設備の導入又は改造を行うことなく被処理品に対する浸炭処理効率の向上を図ったガス浸炭方法に関する。
従来、ガス浸炭方法として、ガス変成炉を用いた方法が現在に至るまで広く用いられている。これは、炭化水素系ガスおよび空気を原料として、ガス変成炉で変成ガスを作り、カーボンポテンシャルの低いキャリアガスとして浸炭炉に供給し、さらに高い所要のカーボンポテンシャルに調整するために、炭化水素系ガスをエンリッチガスとして浸炭炉に供給し、800℃以上の温度下で被処理品の浸炭処理を行なう方法である。この方式では、浸炭原料の炭化水素系ガスの種類により、変成ガス中の一酸化炭素、水素及び窒素の比率は一定である。
しかしながら、このような従来のガス浸炭方法は、複雑な形状を有する被処理品を浸炭処理する際にスーティングや浸炭むらを発生することが多く、また、浸炭処理の時間も長時間を要するという問題があった。
このような問題を解決するために、例えば、変成ガスの原料として炭化水素系ガス、空気及び二酸化炭素ガスを用い、これらのガスの供給量により変成ガス中の一酸化炭素濃度を可変制御し、一酸化炭素を制御した可変ガスを浸炭炉に供給する、ガス組成調整式変成炉によるガス浸炭方法が開発されている(特許文献1)。
また、ガス変成炉を必要としないガス浸炭の例として、有機剤を直接浸炭炉に注入する滴注式浸炭方法(特許文献2)、又は炭化水素系ガス、空気又は二酸化炭素ガスを直接浸炭炉に供給し、浸炭炉内で変成させる直接浸炭方法が開発されている(特許文献3)。
さらには、減圧下の浸炭炉に炭化水素系ガスを供給して浸炭を行なう、いわゆる真空浸炭方法が開発されている(特許文献4)。
特開2002−356763号公報
特開平9−235664号公報
特開平8−199331号公報
特開昭52−47531号公報
しかしながら、ガス浸炭方法は、その原理上の特徴から、処理時間が長い、炉内にススが発生するスーティングと、それに起因した浸炭むらが発生しやすくなる、複雑形状部品の均一な浸炭が困難である、被処理品表面に粒界酸化が生じ、処理品の疲労強度に悪影響を与える、等の課題を未だ有している。
これらの課題を解決するために、従来の変成ガスによるガス浸炭処理に替えて、前記のガス組成調整式変成炉による浸炭方法、滴注式浸炭方法、直接浸炭方法又は真空浸炭方法を採用することがあるが、それらは専用の設備が必要となり、経済的な観点から必ずしも得策とはいえない。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、従来型のガス変成炉を利用したガス浸炭処理であって、大規模な設備の導入又は改造を行うことなく、被処理品に対する浸炭処理効率を向上させるガス浸炭方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するにあたり、大規模な設備の導入又は改造を行なうことなく、単に浸炭雰囲気のガス組成を変えることにより、前記課題を解決するとの知見を得た。本発明はその知見に基づきなされたものであり、浸炭用の原料ガスが変成された変成ガスと、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガスとをガス浸炭炉に供給し、900℃以上の温度下で該ガス浸炭炉内の被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭方法において、前記ガス浸炭炉に、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガス(以下、「添加ガス」と称する)をさらに供給することを特徴とするガス浸炭方法を提供するものである。
一般に、浸炭の反応速度は浸炭温度と浸炭雰囲気のガス組成により律速される。浸炭温度は高いほど浸炭時間が短くなるという相関関係にあり、この相関関係は本発明においても同様である。すなわち、本発明は900℃以上の浸炭温度において、添加ガスを供給することで浸炭炉内のガス組成を変化させ、大規模な設備の導入又は改造を行うことなく浸炭処理に有利な条件を設定するものである。
前記添加ガスは、前記浸炭炉内の一酸化炭素濃度を上昇させるガスであることが好ましい。浸炭炉内の一酸化炭素濃度が上昇することで、浸炭の反応速度が向上し、浸炭時間が短縮するとともに、複雑な形状を有する被処理品であっても均一な浸炭処理が可能となる。
前記ガス浸炭炉内の一酸化炭素濃度を上昇させるガスが、一酸化炭素ガスであるか、又は炭化水素系ガス及び二酸化炭素ガスであることが好ましい。一酸化炭素ガスを供給する場合は、浸炭時間を短縮することができる。炭化水素系ガスと二酸化炭素ガスを供給する場合は、浸炭炉内で、炭化水素系ガスと二酸化炭素ガスが反応して、COとH2が生成し、浸炭雰囲気ガス中のCOの濃度を高めることができる。CO濃度の上昇により、浸炭時間を短縮することができる。
前記添加ガスは、前記浸炭炉内の水素濃度を上昇させるガスであることが好ましい。その原理は明らかではないが、浸炭炉内に一酸化炭素が存在しない場合でも、原子状のいわゆる活性化した水素が、酸化皮膜や油等で汚染されている被処理品の表面を活性還元し、炭素を被処理品の表面に吸着易くすると考えられる。また、炉内雰囲気中の酸素が減少するため、粒界酸化の発生を抑制することもできる。
前記ガス浸炭炉内の水素濃度を上昇させるガスが、水素ガス又はアンモニアガスであることが好ましい。水素ガスを供給する場合、CO%は減少するが、H2%は増加する。H2は被処理品の表面を活性化させ、COが減少するにもかかわらず浸炭時間を短縮することができる。さらに、COが減少することにより、スーティングを防止することができ、複雑形状の均一な浸炭および粒界酸化の低減を促進することもできる。アンモニアガスを供給する場合は、浸炭炉内で水素ガスと窒素ガスに分解し酸化皮膜や油等で汚染されている被処理品の表面を活性還元し、炭素を被処理品の表面に吸着易くすると考えられ、水素ガスを供給する場合と同様な効果が得られる。
また、本発明は、浸炭用の原料ガスを変成して変成ガスにするガス変成炉と、前記ガス変成炉から供給された変成ガス、及び前記ガス変成炉とは別の箇所から供給され、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガス、並びに、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスにより、被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭炉とを含むガス浸炭システムを提供するものである。本発明のガス浸炭システムによれば、被処理品に対する浸炭処理効率が向上するほか、ガス組成調整式変成炉による浸炭方法、滴注式浸炭方法、直接浸炭方法又は真空浸炭方法を採用する場合に比べて、設備コストも抑えることができる。
前記ガス浸炭システムは、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスの種類及び供給量に応じて前記ガス浸炭炉内のカーボンポテンシャルを制御することができる。そのため、ガス浸炭炉内のカーボンポテンシャルを常に最適な状態に維持することが可能となる。
本発明のガス浸炭方法は、従来のガス浸炭方法と比較して、浸炭時間が減少し、粒界酸化及びスーティングの低減を図ることができる。また、複雑な形状の被処理品であっても均一な浸炭を行うことが可能である。
次に、本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係るガス浸炭方法に使用されるガス浸炭システム1の概略図である。図1に示すように、ガス浸炭システム1は、原料ガスを変成・分解することにより得られた変成ガスを供給するガス変成炉10と、エンリッチガスを供給するエンリッチガス供給装置14と、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとを導入し、被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭炉12と、添加ガスをガス浸炭炉12に供給する添加ガス供給装置16と、からなる。
ガス変成炉10は、炭化水素系ガスと空気との混合ガスを原料ガスとして、その原料ガスを高温で変成・分解する。次いで、これにより得られた変成ガスをガス浸炭炉12に供給する。当該変成ガスはカーボンポテンシャルが低く、本実施形態においては、エンリッチガスを希釈するため又はガス浸炭炉12内に炉外からの空気の侵入を防止し、ある程度の炉内圧を維持するためにガス浸炭炉12に供給される。
エンリッチガス供給装置14は、カーボンポテンシャルが高い炭化水素系ガス等のガスをエンリッチガスとしてガス浸炭炉12に供給する。また、エンリッチガス供給装置14は、後述する添加ガスの種類及び供給量に応じて、ガス浸炭炉12内のカーボンポテンシャルが所定の範囲内になるように、酸素センサー(図示せず)等で計測しながら、自動可変調整弁又はON−OFF弁等で調整するための自動演算機能を備えている。
ガス浸炭炉12は、変成ガスとエンリッチガスとを導入し、所定温度・所定時間で被処理品の浸炭処理を行う。エンリッチガスは高いカーボンポテンシャルを示すため、供給量が多過ぎるとスーティングを起こし、浸炭ムラの原因となる。そこで、酸素センサーの測定値に応じてエンリッチガスの供給量を適宜調整しながら浸炭反応が行われる。この調整は、予め種々のガス組成の雰囲気における酸素センサーの測定値とカーボンポテンシャルとの相関関係を、鋼箔テストで把握し、それにより得られたデータに基づき行うことができる。
添加ガス供給装置16は、添加ガスをガス浸炭炉12に供給する。添加ガスは目的に応じて組成を変えることができるようにするため、添加ガスの種類ごとに異なるタンクとガス流量計を設けることができる。また、添加ガスは、変成ガスと混合した後にガス浸炭炉12に供給しても、変成ガスとは別に、直接ガス浸炭炉12に供給してもよい。
図2に、ガス浸炭炉12における浸炭処理のヒートパターンの一例を示す。図2に示すように、ガス浸炭炉12内の温度を運転開始から徐々に上昇させ、浸炭温度に達した時点から一定時間保持される。浸炭温度は900℃以上、好ましくは930℃以上とする。保持時間は、被処理品の浸炭深さ規格に応じて適宜設定される。変成ガスは、昇温途中から供給を開始し、浸炭処理終了まで供給が継続される。エンリッチガスは、ガス浸炭炉12内の温度が浸炭温度に達した後、カーボンポテンシャル制御が行なわれる間、供給される。
変成ガスの供給は、ガス変成炉10が行う。ガス変成炉10は、ブタンやプロパン等の炭化水素系ガスと空気との混合ガスを原料として、高温で変成・分解することにより変成ガスを得た後、この変成ガスをガス浸炭炉12に供給する。
エンリッチガスの供給は、エンリッチガス供給装置14が行う。エンリッチガス供給装置14は、ブタンやプロパン等の炭化水素系ガスを、ガス浸炭炉12内に設置された酸素センサー(図示せず)の測定値に基づき、ガス浸炭炉12内のカーボンポテンシャルが一定に保持されるように供給する。なお、酸素センサーは雰囲気中のガス組成に応じて設定値を変更し、いずれのガス組成においても一定のカーボンポテンシャルの下で浸炭が行われるように管理することができる。
ガス浸炭炉12内の温度が浸炭温度に達した後、所定時間、添加ガス供給装置16から添加ガスが供給される。添加ガスは、ガス浸炭炉12内の一酸化炭素濃度を上昇させることを目的として供給される場合と、ガス浸炭炉12内の水素濃度を上昇させることを目的として供給される場合とがある。
添加ガスの供給は、ガス浸炭炉12内の温度が浸炭温度に達した後、所定の時間に亘って若しくは浸炭全時間に亘ってもよいが、好ましくは1時間〜浸炭全時間とする。一酸化炭素濃度を上昇させることを目的としたガス添加の場合は、過大な粒界酸化を抑制するために、10時間以下とすることが好ましい。
ガス浸炭炉12内の一酸化炭素濃度を上昇させることを目的として添加ガスが供給される場合は、添加ガスとして、一酸化炭素ガス又は炭化水素系ガスと二酸化炭素ガスが用いられる。一酸化炭素ガスの添加は、変成ガスに対して好ましくは10〜40%の混合比、更に好ましくは15〜35%の混合比である。炭化水素系ガスと二酸化炭素ガスとが供給される場合の炭化水素系ガスの添加は、変成ガスに対して好ましくは1〜10%の混合比、更に好ましくは1〜5%の混合比とし、二酸化炭素ガスの添加は、変成ガスに対して好ましくは15〜45%の混合比、更に好ましくは20〜35%の混合比とする。
ガス浸炭炉12内の水素濃度を上昇させることを目的として添加ガスが供給される場合は、添加ガスとして、水素ガス又はアンモニアガスが用いられる。水素ガスの添加は、変成ガスに対して好ましくは10〜50%の混合比、更に好ましくは20〜40%の混合比とする。アンモニアガスの添加は、変成ガスに対して好ましくは5〜40%の混合比、更に好ましくは10〜30%の混合比とする。
図2に示すように、ガス浸炭炉12内の温度が浸炭温度に達した時点から所定経過後にガス浸炭炉12内の温度を例えば約830℃に下げ、そこで約0.5時間保持された後、被処理品はガス浸炭炉12から取り出され、常法により70℃の焼入油等で焼き入れされる。
変成ガス原料の炭化水素系ガスとしてブタンガスを使用し、空気との混合比を1:10(ブタン:空気)にして、1050℃に設定されたガス変成炉により変成ガスを得た。この変成ガスを、ガス浸炭炉としての内容積0.15m3のピット炉に15L/mimの流量で供給し、更にエンリッチガス供給装置により、エンリッチガスとしてブタンガスをピット炉に供給した。なお、エンリッチガスの供給は、ピット炉に設けられた酸素センサーの測定値に基づき自動供給されるようにした。
浸炭処理は、後述するテストピースを設置したピット炉に変成ガスを上記の流量で供給しつつ、浸炭温度930℃で浸炭温度到達時点から6時間保持するとともに、浸炭温度到達時点から、エンリッチガス(ブタンガス)を上記の流量で供給した。更に、浸炭温度到達時点から、添加ガスとしてのCOを、変成ガスに対し27%の混合比、4L/mimの流量で3.5時間に亘り供給した。
浸炭時間経過後、ピット炉の温度を830℃に設定して0.5時間保持し、次いでテストピースを70℃の焼入油にて焼入れした。
浸炭に用いたテストピースを図3及び図4に示す。テストピースは、図3に示すように、直径18mm、長さが32mmの円柱形のもの(テストピースA)と、さらに、図4に示すように、テストピースAの径断面の中心部に直径2mmの貫通孔が形成されたもの(テストピースB)の2種類を用意し、テストピースAを、後述する有効硬化層深さ及び粒界酸化深さの測定用に用い、テストピースBを、後述する内径部の有効硬化層深さの測定用に用いた。テストピースの材質は、いずれもクロームモリブデン鋼(JIS SCM415)を用いた。
浸炭中のカーボンポテンシャルはピット炉に設置された酸素センサーにて制御し、添加ガス(CO)供給中は1.2%に保持し、添加ガス(CO)供給終了後は0.8%に保持した。
添加ガスを、C4H10(変成ガスに対する混合比2%、流量0.3L/mim)及びCO2(変成ガスに対する混合比27%、流量4L/min)とした以外は、実施例1と同様の要領でガス浸炭処理を行った。
添加ガスを、H2(変成ガスに対する混合比27%、流量4L/min)とした以外は、実施例1と同様の要領でガス浸炭処理を行った。
添加ガスをNH3(変成ガスに対する混合比20%、流量3L/min)とした以外は、実施例1と同様の要領でガス浸炭処理を行った。
[比較例1]
[比較例1]
比較例として、添加ガスを用いなかった以外は、実施例1と同様の要領でガス浸炭処理を行った。
実施例1〜4の条件で処理したテストピースA(図3参照)について、有効硬化層深さを測定した。有効硬化層深さは、JIS 0557(鋼の浸炭硬化層深さ測定)に準じて行った。即ち、テストピースAを切断し、研磨仕上げをして被検面とした。次いで、ビッカース硬さ試験機を用い、試験荷重を2.9Nとし、表面から内部方向の硬さを測定し、ビッカース硬さ550の位置までの距離を有効硬化層深さとした。
結果を表2に示す。有効硬化層深さは、従来法である比較例1の結果と比較して、実施例1は104%、実施例2は108%、実施例3は104%、実施例4は112%と、いずれも増加した値を示すことが判明した。
ガス浸炭における硬化深さは、浸炭時間の√に比例する。従って、比較例1で得られた有効効果深さに達するまでの浸炭時間は、従来の浸炭時間(比較例1)を基準とした場合に、実施例1は8%、実施例2は17%、実施例3は8%、実施例4は25%もの時間短縮が可能であることが確認された。
[試験例2]粒界酸化深さの測定
[試験例2]粒界酸化深さの測定
実施例1〜4の条件で処理したテストピースA(図3参照)について、粒界酸化深さを測定した。即ち、テストピースAを切断し、切断面を研磨仕上げして被検面とした。その被検面を金属顕微鏡にて観察し、表面層に発生した粒界酸化層の深さを測定した。結果を表2に示す。
粒界酸化深さの測定結果に基づき、粒界酸化深さの減少率を求めた。比較例1の結果を基準にした場合、実施例1及び実施例2は変わらなかったが、実施例3は40%、実施例4は50%の低減率であり、粒界酸化深さが低減されたことが判明した。
実施例1〜4の条件で処理したテストピースB(図4参照)について、テストピースBの長手方向中央部における内径部の有効硬化層深さを測定した。測定方法は、試験例1と同様、JIS 0557(鋼の浸炭硬化層深さ測定)に準じて行った。結果を表3に示す。
確認した結果、テストピースBの長手方向中央部における内径部の有効硬化層深さは、外径部の有効硬化層深さに対し、比較例1が35%、実施例1が65%、実施例2が50%、実施例3が60%、実施例4が65%と、いずれの実施例も、比較例1と比較して複雑形状部位の浸炭性が向上していることが確認された。
実施例1〜4の条件で処理したテストピースA及びB(図3及び図4参照)、ピット炉内の冶具及び内壁について、目視にてスーティング(すす)の発生状況を観察し、比較例1の条件で処理した場合と比較した。その結果、実施例1及び実施例2でのすすの発生量は同等であること、実施例3及び4はすすの発生量が減少しており、特に実施例4は顕著に減少していることが確認された。
[参考試験例]
[参考試験例]
実施例4は添加ガスとしてアンモニアガスを用いている点において、従来のガス浸炭窒化と類似しているが、被処理品への窒素の侵入量が明らかに相違があることを次の試験で確認した。
実施例4の条件において、低炭素の鋼箔を用いてガス浸炭処理を行い、ガス浸炭処理後、その鋼箔の窒素濃度を分析した。その結果、鋼箔の窒素濃度が0.01〜0.03%であることが確認された。従来のガス浸炭窒化処理において、同様な試験を行なった結果、鋼箔の窒素濃度は0.30〜0.50%であることが確認された。この結果により、実施例4の条件により浸炭処理されたテストピースAの有効硬化層深さの増加の効果は、窒素侵入による材料の焼入性向上によるものとは異なることが明らかになった。
これをさらに裏付ける事実として、浸炭層の残留オーステナイト量がある。従来のガス浸炭窒化処理品の残留オーステナイトは、窒素が侵入するため約30〜40%程度と高いが、実施例4の条件により浸炭処理されたテストピースAの残留オーステナイト量は、従来のガス浸炭処理品と同レベルの約15%程度であった。
1:ガス浸炭システム
10:ガス変成炉
12:ガス浸炭炉
14:エンリッチガス供給装置
16:添加ガス供給装置
10:ガス変成炉
12:ガス浸炭炉
14:エンリッチガス供給装置
16:添加ガス供給装置
Claims (7)
- 浸炭用の原料ガスが変成された変成ガスと、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガスとをガス浸炭炉に供給し、900℃以上の温度下で該ガス浸炭炉内の被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭方法において、
前記ガス浸炭炉に、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスをさらに供給することを特徴とするガス浸炭方法。 - 前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスが、前記ガス浸炭炉内の一酸化炭素濃度を上昇させるガスである請求項1記載のガス浸炭方法。
- 前記ガス浸炭炉内の一酸化炭素濃度を上昇させるガスが、一酸化炭素ガスであるか、又は炭化水素系ガス及び二酸化炭素ガスである請求項2記載のガス浸炭方法。
- 前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスが、前記ガス浸炭炉内の水素濃度を上昇させるガスである請求項1記載のガス浸炭方法。
- 前記ガス浸炭炉内の水素濃度を上昇させるガスが、水素ガス又はアンモニアガスである請求項4記載のガス浸炭方法。
- 浸炭用の原料ガスを変成して変成ガスにするガス変成炉と、
前記ガス変成炉から供給された変成ガス、及び前記ガス変成炉とは別の箇所から供給され、該変成ガスよりもカーボンポテンシャルの高いエンリッチガス、並びに、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスにより、被処理品の浸炭処理を行うガス浸炭炉と
を含むガス浸炭システム。 - 前記ガス浸炭システムは、前記変成ガス及び前記エンリッチガスとは異なるガスの種類及び供給量に応じて前記ガス浸炭炉内のカーボンポテンシャルを制御する請求項6記載のガス浸炭システム。
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