JP5408465B2 - 鋼の浸炭処理方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%に浸炭された被処理品を再加熱焼入れ処理し、表面炭素濃度を目標表面炭素濃度に設定する鋼の浸炭処理方法に関するものである。
従来この種の浸炭処理方法は、例えば、特許文献1に示すものがあった。
この技術は、鋼の結晶粒界或いは粒内に微細な炭窒化物を多数形成して、鋼の疲労強度や衝撃強度及び歯車を形成した際のピッチング強度を向上させるための技術である。
具体的には、鋼を熱処理する際に、炭化系ガスを含有する雰囲気、例えば、雰囲気中の炭素の割合であるカーボンポテンシャル(CP)を0.75%に設定した雰囲気中で、鋼をオーステナイト域である例えば900〜950℃に昇温させ、数時間保持して浸炭処理を行う。これに続き、鋼をマルテンサイト域の温度まで急冷する1次焼入れを行う。
次に、鋼を炭化系ガス及びアンモニアガスを含有する雰囲気、例えば、CP値が0.75%、雰囲気中の窒素の割合である窒素ポテンシャル(NP)が0.2%の雰囲気中で、鋼を800〜850℃に加熱し、20〜60分間保持して浸炭窒化処理を行ったのち2次焼入れを行う。
この手段によれば、1次焼入れによって生じるマルテンサイト中の高密度な転位や炭化物を核にして、2次焼入れでの再加熱の際にオーステナイト結晶粒が多数生成される。これにより、鋼の結晶粒度が微細化される。
また、2次焼入れでの炭化系ガスとアンモニアガスの作用により、鋼中に炭素及び窒素が浸入拡散し、結晶粒界或いは粒内に微細な炭窒化物を多数形成させて鋼の強度を向上させることができる。
特開平11-217626号公報
上記従来の方法で行う1次焼入れは、最初の浸炭処理によって粗大化した結晶粒を微細化するための熱処理である。つまり、浸炭処理は、鋼にとって高温の状態を長時間維持するものであるから、特に、浸炭される部材の心部のオーステナイト結晶粒が粗大化する。そこで、一旦、この鋼を前記心部の鋼組織に応じた温度から焼入れ、当該心部を粒径の小さな硬質のマルテンサイト組織に変態させる。
ただし、浸炭処理した鋼の場合、その表面領域では、心部に比べて炭素濃度が高い。炭素濃度の高い金属組織の強度を高めるには、一般に結晶粒は小さい方がよい。そのためには上記1次焼入れの温度は、炭素濃度の高い金属組織にとっては高過ぎることとなる。そこで、A1点よりは高い温度であって前記1次焼入れの温度よりも低い温度に鋼を再加熱し、2次焼入れを行う。これにより、当該2次焼入れの効果を最も顕著に受ける表面領域の組織は、増大した炭素濃度に適したより微細な組織となる。
これらの処理により、表面領域は硬く、心部領域は粘りを有する鋼を得ることができる。
尚、A1点は、鋼を加熱した場合に、組織がフェライトからオーステナイトに変態し始める温度である。
上記観点から、浸炭処理した鋼にとっては2次焼入れは非常に重要である。しかも、2次焼入れでは更なる浸炭処理も行われるから、2次焼入れの温度条件によっては、鋼表面の炭素濃度が所期の値にならず、或いは、部位によってバラつく可能性がある。仮に、製作する鋼製品が耐磨耗性を要する歯車等である場合には、特に、歯先の機械的特性が信頼性に欠けるものとなるため妥当ではない。
しかしながら、従来の浸炭処理方法においては、このような浸炭処理に際しての局所的な温度管理について触れた技術はなく、被処理品の全体に亘って均一な表面炭素濃度を得るためには未だ改善すべき点がある。
本願発明は、上記従来技術の欠点に鑑み、浸炭処理した鋼の機械的特性を安定化させる鋼の浸炭処理方法を得ることを目的とする。
本発明に係る鋼の浸炭処理方法の第1特徴構成は、表面炭素濃度が0. 7〜0. 9質量%に浸炭された被処理品を再加熱焼入れ処理して表面炭素濃度を目標表面炭素濃度に設定すべく、前記被処理品を加熱室の内部に配置し、当該加熱室に、N2,2,CO,CO2 を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,C410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスを充填すると共に、前記被処理品を加熱し、前記被処理品の温度が炭素鋼のA1 点以上であって前記被処理品の浸炭処理に最適な温度として予め設定した第2浸炭温度との差が20℃以内に設定された第1浸炭温度に至るまでは、前記加熱室の内部のカーボンポテンシャル(CP値)を、前記目標表面炭素濃度よりも低い第1CP値に設定しておき、前記被処理品の温度が前記第1浸炭温度に達したとき、前記CP値を前記目標表面炭素濃度に等しい第2CP値に高めて、前記被処理品への浸炭処理を行い、前記被処理品を焼入れ処理する点に特徴を有する。
ここで、カーボンポテンシャルとは、鋼を加熱した際の浸炭能力を示す値であり、浸炭脱炭反応が平衡に達し、鋼が含有する炭素濃度が一定となったときの、鋼が含有する炭素濃度を示す。CP値が高いほど鋼に対する浸炭能力が高い。雰囲気ガスのカーボンポテンシャルは、雰囲気ガスの温度と雰囲気ガスの組成とによって決定され、例えば、(CO/CO2)の値に基づいて算出することができる。
本構成のごとく、被処理品を加熱し、その温度が第1浸炭温度に至るまでは、加熱室のCP値を一段低い第1CP値に設定しておくことで、被処理品が昇温過程において各部位の温度に差がある状態での浸炭処理を極力抑制することができる。浸炭の程度を決定する主な要素は、被処理品の温度、および、CP値、浸炭時間である。よって、本構成のごとく、重要なこれらパラメータのうちの一つであるCP値を、当初、第1CP値に設定しておくことで、浸炭処理の進行を妨げることができる。この結果、被処理品の浸炭程度を少なくして、各部位における浸炭程度のバラつきを最小に留めることができる。
一方、被処理品の温度が第1浸炭温度に達したときには、加熱室のCP値を目標表面炭素濃度に等しい第2CP値に高める。つまり、被処理品の全ての部位が第1浸炭温度に達した段階で、CP値をある程度急激に変化させる。これにより、被処理品の全ての部位において同じ条件で浸炭処理が開始される。本構成であれば、例えば、複雑な形状を呈する機械部品等であっても表面各部の硬度にバラつきのない製品を得ることができる。
特に、本発明は、一旦、浸炭した被処理品を再加熱して焼入れする際の浸炭方法を規定するものである。当該焼入れによって被処理品の表面処理状態はほぼ確定する。このように実質的に最終の工程で緻密な浸炭処理を行うことで、表面全体に亘って均等な炭素濃度を有する被処理品を得ることができるようになった。
また、本発明に係る鋼の浸炭処理方法は、前記第1浸炭温度と、前記被処理品の浸炭処理に最適な温度として予め設定した第2浸炭温度との差を20℃以内に設定しある。
被処理品の鋼組成や、最終的な表面炭素濃度あるいは浸炭深さによって最適な浸炭温度は異なる。被処理品の浸炭処理を確実に行うには、最適な浸炭条件が得られる第2浸炭温度に達した時点でCP値を調節するのが好ましい。しかし、現実の作業においては、表面炭素濃度の各部間の許容誤差などを考慮すると、被処理品の温度が最適温度である第2浸炭温度に対して最大20℃程度異なる場合でも実用上の問題は生じない。また、この程度の温度誤差のある段階から、CP値を増大させることで、作業の効率化も図ることができる。
本発明に係る鋼の浸炭処理方法の第特徴構成は、前記第1CP値から前記第2CP値への変更ののち、両CP値間の濃度変更を少なくとも一回行う点にある。
例えば、一度、加熱室内のCP値を第1CP値から第2CP値に変更したのち、再び、第1CP値に戻し、さらに、第2CP値に変更する。最初の第2CP値への変更に際して、被処理品の各部の温度は概ね等しくなっている。ただし、何かの要因で設定どおりになっていない場合もあり得る。その場合には、被処理品の各部で浸炭程度の深い部位と浅い部位とが生じてしまう。
しかし、本構成のごとく、CP値の変更を繰り返すことで、再び第1CP値に戻った際に、被処理品のうち過剰浸炭されている箇所では雰囲気炭素濃度が相対的に低下する。この結果、当該過剰浸炭部分については脱炭作用が働く。よって、当初のCP値の変更で生じた浸炭程度の誤差が解消され、続くCP値の変更でより安定した浸炭処理を行うことができる。
(概要)
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%に浸炭された被処理品を再加熱焼入れ処理して表面炭素濃度を目標表面炭素濃度に設定する技術である。鋼中の炭素濃度が0.8%の鋼、即ち共析組成を有する鋼は、オーステナイト域であるA1点より高い温度から焼入れしたときに、浸炭層の表面部に炭化物が析出し難い。また、この焼入れ効果と、鋼組織中に炭素原子を混入させる浸炭処理、あるいは、窒素原子を混入させる窒化処理によって高強度を得ることができるため、歯車等の各種機械部品に広く用いられる。
本発明では、この鋼による被処理品を加熱室の内部に配置し、当該加熱室に、N2,H2,CO,CO2を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスを充填した状態で被処理品を再加熱する。この再加熱工程は、図1に示した2次焼入れに該当する。つまり、本発明の被処理品は、何れかの浸炭条件および加熱条件によって既に1次焼入れが終了しているものとして、本発明は、この鋼材を再び加熱して浸炭処理および2次焼入れ処理を行うものである。
加熱に際しては、加熱室の内部の炭素濃度を適宜変化させる。つまり、被処理品の温度が炭素鋼のA1点以上に設定した第1浸炭温度T1に至るまでは、加熱室の内部のカーボンポテンシャル(CP値)を、目標表面炭素濃度よりも低い第1CP値CP1に設定しておく。その後、被処理品の温度が前記第1浸炭温度T1に達したとき、CP値を目標表面炭素濃度に等しい第2CP値CP2に高める。所定時間の間この状態を維持し、被処理品を2次焼入れする。
(被処理品)
本発明で被処理品として用いる鋼材は、2次焼入れを開始する時点で鋼表面の炭素濃度がおよそ0.8%に調整されている。このような鋼は、例えば、当初、鋼の炭素濃度が0.2%であったものに、浸炭処理を施し、鋼表面の炭素濃度を0.7〜1.0%に調整したものである。その際には、例えば、950℃程度の高温で数時間保持しつつ浸炭処理が行われる。当該処理を施すことにより、被処理品の表面近傍の炭素濃度を高めて、焼入れによって非常に硬いマルテンサイト組織を形成し、硬度の高い耐摩耗性を有する被処理品を得ることができる。
一方、心部の炭素濃度は表面に比べて低いため、硬度はそれほど高くはない。しかし、粘りのある組織を得ることができる。この結果、機械的強度と耐摩耗性等を備えた被処理品を得ることができる。
(再加熱処理)
本発明における再加熱処理、即ち2次焼入れは、図1および図2に示す態様で行う。加熱目標温度は例えば、800〜850度である。図示は省略するが、この温度は即ち加熱室の温度である。本実施形態では、この温度を第2浸炭温度T2と称する。この温度は、0.8%程度の炭素濃度を有する鋼材に適した加熱温度である。つまり、0.8%の炭素濃度を有する鋼材、即ち共析組成を有する鋼材では、組織がオーステナイトになる温度はA1点(723℃)である。よって、この温度よりも約100℃高い温度を第2浸炭温度T2と設定する。この温度が過大であると、オーステナイト結晶粒度が粗大化して焼入れしたのちに得られるマルテンサイト組織も過大なものとなる。よって、2次焼入れの温度は、組織がオーステナイトに変態し、かつ、できるだけ低い温度が好ましい。
加熱に際しては、被処理品の昇温速度と加熱室の昇温速度とは異なる。浸炭処理および焼入れ処理の温度は当然に被処理品の温度に基づいて行う必要がある。そのため、被処理品の温度を、非接触の温度計等を用いて測定する。
温度の管理と共に、本発明では、加熱室内の雰囲気も制御する。加熱室の内部には、雰囲気ガスとして、N2,H2,CO,CO2を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスを充填する。これらのガスの濃度は、例えば、赤外線式ガス濃度測定器を用いて行う。
本実施形態では、最適な浸炭処理を行うべく、これらガスにより決定されるCP値を制御する。
本実施形態では、被処理品の加熱に際し、被処理品の温度に基づいてCP値を変化させる。具体的には、図2に示すごとく、最終的に被処理品を昇温させたい温度としての第2浸炭温度T2と、それよりもやや低く、CP値を変化させる第1浸炭温度T1とを設定しておく。本実施形態では、第1浸炭温度T1が例えば800℃であり、第2浸炭温度T2が820℃である。
第1浸炭温度T1を設定したのは、この温度に至るまでは、加熱室の内部の雰囲気ガスのCP値をある程度低く保持しておき、浸炭処理の進行を抑制するためである。浸炭の進行は、雰囲気ガスのCP値、被処理品の表面炭素濃度、温度、保持時間等によって変化する。被処理品の形状は様々であり、加熱に際しては、各部位の昇温速度は一定ではない。このため、仮に、昇温過程で雰囲気ガスのCP値を高く設定しておくと、先に昇温した部位によっては過浸炭となり、その後の2次焼入れに際して炭化物が多量に析出する部位が生じる。当該部位は硬く脆い組織になり易く、機械的強度を下げる要因となる。例えば、炭素濃度の高い領域が生じると、当該部分が過共析成分となる。そのため、その後の焼入れ処理に際してセメンタイトの析出割合が増大し、当該部位が脆い組織となる。被処理品を各種の歯車等に用いる場合には、例えば、歯先部などが高温になり易く、この部分の炭素濃度が上がり易い。その結果、焼入れ処理したのちのマルテンサイト組織の硬度が高まり過ぎ、じん性に乏しい素材となってしまう。これを防止するために、本実施形態では、被処理品の温度が一様に第2浸炭温度T2に達するまでは雰囲気ガスのCP値を低く保持しておく。
本実施形態では、雰囲気ガスのCP値を変化させる第1浸炭温度T1は、第2浸炭温度T2よりも20℃低い値に設定してある。ただし、20℃に限定されるものではなく、第1浸炭温度T1が第2浸炭温度T2よりも設定温度で20℃以下の低い値であればよい。以降においては、これら変化前のCP値を第1CP値CP1と称し、変化後の値を第2CP値CP2と称する。
第1浸炭温度T1と第2浸炭温度T2との温度差が20℃以下程度であれば、実際の浸炭程度には影響しない。尚、この温度差をいくらに設定するかは、被処理品の形状などによっても変更可能である。表面形状の出入りが少なく全体が簡単な形状の被処理品ほど、各部位での浸炭程度に差が生じ難い。よって、その場合には上記温度差を大きく設定することができる。
実際にCP値を変更するには、CO2濃度を低下させる。つまり、(CO/CO2)の分母を小さくする。例えば、図2に示すごとく、第1浸炭温度T1(800℃)に達するまでは、雰囲気ガス中のCO2濃度は0.54%に設定しておき、第1浸炭温度T1に達したのちは、0.47%に低下させる。これにより、CP値は、0.70(第1CP値CP1)から0.75(第2CP値CP2)に上昇する。ただし、現実の操作においては、各種の誤差が生じるため、経験的に作成したCO2濃度とCP値との相関関係を示す図表等を用いてCO2濃度を調整する。
尚、浸炭処理の過程で生じる反応は以下の通りである。
CO2+CH4→2CO+2H2
2CO→〈C〉+CO2
ここで〈C〉は、鋼中の炭素である。
このようなCP値の制御により、被処理品の表面温度が均一になった状態で実質的な浸炭処理が開始される。この結果、各部位の浸炭深さが極めて均等なものとなり、機械的特性からみた弱点の形成が防止される。
尚、上記CP値の変更は複数回行ってもよい。図3にはCP値を2サイクル変更させた例を示す。この繰返し変化によれば、被処理品の各部における炭素濃度の異なりを低減化することができる。例えば、1回目の第2CP値CP2への変更に際して、被処理品の特定箇所における炭素濃度が仮に過剰になったとする。しかし、続く第1CP値CP1への変化によって、当該過剰浸炭部分については脱炭作用が働き易い。つまり、一旦、被処理品に進入した炭素原子が雰囲気ガス中に放出されるのである。このように被処理品の表面炭素濃度がより平均化された状態で2サイクル目の第2CP値CP2への変更が行われるから、被処理品の表面炭素濃度がさらに均一なものとなる。
尚、上記実施形態では、加熱室の雰囲気ガスを、N2,H2,CO,CO2を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスとしたが、これに窒化ガスとしてのアンモニアガスNH3を混入させてもよい。アンモニアガスの混入により、被処理品の表面に窒素を浸透させることができる。この窒素は、鋼中において、Fe3Nを主体とした稠密六方格子である析出物や、Fe4Nを主体とした面心立方格子である析出物を形成し、あるいは、N原子を固溶した体心立方格子であるフェライト等を形成して鋼組織を硬化させる。このように、上記浸炭処理に併せて窒化処理を行うことで、被処理品を著しく強化することができる。
さらに、被処理品の表面に窒素を侵入させた状態でCP値を上げると、炭素が処理工程の初期よりも多く被処理品の表面に侵入しようとする。しかし、被処理品の表面に多く固溶した窒素によって、炭素が被処理品の内部に侵入し難くなる。この結果、被処理品の表面には微細な析出物が形成され、被処理品の表面改質が効果的に行われる。
被処理品の金属組織は、2次焼入れを行う前は、全般的にマルテンサイト組織であって、その内部に微量の残留オーステナイトが混じった組織となっている。この残留オーステナイトの内部には、浸炭処理したことで炭素原子が混入している。これを2次焼入れして被処理品の温度を下げると、オーステナイト組織はマルテンサイトに変態し、炭素原子が核となって微細な析出物が現れる。これにより、被処理品の金属組織が強化され、耐摩耗性等の金属特性が向上する。
尚、上記2次焼入れを行ったのちは、図1に示すごとく最終の焼戻しを行う。2次焼入れはある程度の冷却速度をもって行われるから、被処理品の組織には、マルテンサイトに変態せずに残った残留オーステナイトが存在する。この相は、マルテンサイトに比べて硬さが著しく低い。また、この相は室温では不安定であり、長時間の間にマルテンサイト化が進んで経年変形の原因となる。よって、残留オーステナイトを消滅させるべく、2次焼入れした被処理品は100〜300℃に再び加熱し冷却して焼き戻すのがよい。
(実施例)
本件発明に係る浸炭処理の例を以下に示す。
本実施例では、孔径25mmΦの貫通孔を備えた外径45mmΦ・高さ40mmの円筒形状の試験片を用いた。試験片は予め浸炭処理が施され、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%に設定されたものを用いた。
2次焼入れの目標温度である第2浸炭温度T2は820℃とした。CP値を変化させる第1浸炭温度T1は800℃とした。
これらの条件により行った実験結果を表1に示す。当該実験では、ロット総重量の異なる実施例1〜3および、比較例1〜4を準備した。ここでロット総重量とは、加熱炉に投入する被処理品の通常重量に対して、実際に投入した被処理品の重量の比をいう。例えば、通常の投入量を500kgとすると、指数2.0とは、1000kgの被処理品を投入して処理したことを示す。
実施例1〜3は、CP値制御に際して全てCO2濃度を0.54%から0.47%に下げることでCP値を同幅だけ上昇させた。比較例1〜4のCO2濃度は全て0.54%のまま一定とした。何れの実験でも加熱室の内部には、N2,H2,CO,CO2を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスの他に、アンモニアガスNH3を混入させた。制御総時間は実施例では1.0〜1.3、比較例では1.0〜1.6の間で変化させた。制御総時間とは、例えば、ロット総重量1.0の被処理品を処理するのに加熱炉の温度を2次焼入れの目標温度である第2浸炭温度T2に保持する時間と、現実に加熱炉を第2浸炭温度T2に保持した時間との比をいう。例えば、図2において温度T2に保持された水平部分の時間どうしを比べた値である。表1に示したごとく、ロット総重量の多い例については制御総時間を延長し、被処理品に対する加熱条件の整合を図った。
以上の条件で浸炭処理を行ったのち、油冷により2次焼入れを行った。
この結果、被処理品における表面炭素濃度の差は、比較例1〜4では0.11〜0.14であったのに対して、実施例1〜3では、僅かに0.04〜0.05に留まっており、浸炭処理の均一性が大幅に向上していることが明らかとなった。
Figure 0005408465
またこの結果を図5および図6に示した。
図5は、被処理品の重量と炭素濃度差との関係を示すものであるが、実施例と比較例とでは、炭素濃度差の大小が、実施例の方が明らかに少ない。つまり、実施例では浸炭程度にバラつきが少ないことが明瞭にわかる。
また、図6は、炭素濃度と析出物数との関係を示す図である。一般に鋼中に炭化物・窒化物・炭窒化物などを析出させると、硬さや軟化抵抗が向上する。これにより、部品使用時の磨耗などを抑制する効果が得られる。図6に示すごとく、本実施例の処理によれば、従来の比較例に比べて金属組織中の析出物数量が増加していることがわかる。このように、当該結果からも、本発明の浸炭処理方法によれば被処理品の強度を向上させ得ることが明らかとなった。
本発明の鋼の浸炭処理方法は、表面炭素濃度が0.8%程度の鋼材を用いた歯車等の各種機械部品の表面効果処理に適用可能である。また、表面炭素濃度の値に拘わらず、浸炭処理によって強化可能な鋼材であれば何れの鋼材にも適用可能である。
本実施形態の熱処理履歴を示す説明図 本実施形態の2次焼入れにおけるCP値の変更要領を示す説明図 別実施形態の2次焼入れにおけるCP値の変更要領を示す説明図 NH3を用いた2次焼入れにおけるCP値の変更要領を示す説明図 実施例に係る被処理品の重量と炭素濃度差との関係を示す説明図 実施例に係る炭素濃度と析出物数との関係を示す説明図
符号の説明
CP1 第1CP値
CP2 第2CP値
1 第1浸炭温度
2 第2浸炭温度

Claims (2)

  1. 表面炭素濃度が0. 7〜0. 9質量%に浸炭された被処理品を再加熱焼入れ処理して表面炭素濃度を目標表面炭素濃度に設定すべく、
    前記被処理品を加熱室の内部に配置し、
    当該加熱室に、N2,H2,CO,CO2を混合した浸炭ガス、および、CH4,C38,C410のうち少なくとも一つを含むエンリッチガスを充填すると共に、
    前記被処理品を加熱し、
    前記被処理品の温度が炭素鋼のA1点以上であって前記被処理品の浸炭処理に最適な温度として予め設定した第2浸炭温度との差が20℃以内に設定された第1浸炭温度に至るまでは、前記加熱室の内部のカーボンポテンシャル(CP値)を、前記目標表面炭素濃度よりも低い第1CP値に設定しておき、
    前記被処理品の温度が前記第1浸炭温度に達したとき、前記CP値を前記目標表面炭素濃度に等しい第2CP値に高めて、前記被処理品への浸炭処理を行い、
    前記被処理品を焼入れ処理する鋼の浸炭処理方法。
  2. 前記第1CP値から前記第2CP値への変更ののち、両CP値間の濃度変更を少なくとも一回行う請求項1に記載の鋼の浸炭処理方法。
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