JP2004232012A - 高濃度金属微粒子分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高濃度の金属微粒子分散液及びそれを大量かつ安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】有機金属塩を、炭素数10以下の有機酸を前記有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%の有機金属塩溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物で還元する金属微粒子分散液の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】有機金属塩を、炭素数10以下の有機酸を前記有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%の有機金属塩溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物で還元する金属微粒子分散液の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線、高密度記録材料、金属触媒、造影剤等に使用することができる高濃度の金属微粒子分散液又は金属微粒子、もしくはこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属微粒子を得る方法としては、原料固体をルツボに入れ、高周波誘導加熱方式や抵抗加熱方式等により加熱して金属蒸気を発生させ、He、Ar等のガス分子又は溶剤の蒸気との衝突により急冷させて微粒子化するガス中蒸発法(気相法)が挙げられる(例えば、特許第2561537号公報等)。このようにして得られた金属微粒子を適当な溶媒に分散することにより、コロイド分散液を調製することができる。また有機金属塩の溶液に、NaBH4等の無機還元剤、ヒドラジン系、アミン系又はジオール系化合物等の有機還元剤、又は水素ガスを作用させたり、酸化還元電位がより卑な金属(例えばマグネシウム等)を前記有機金属塩に作用させたりすることにより、金属コロイド粒子を得る方法(溶液還元法)等により、前記コロイド分散液を調製することもできる。
【0003】
一般に溶液還元法(液相法)は、良好なコロイド分散液が簡易に製造できるので望ましい。しかしながら、報告されている合成法(例えば、J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 3887、J. Phys. Chem. 1995, 99, 5077、Colloids and Surfaces A:Physicochem. Eng. Aspects 2000, 168, 87等)はいずれも1質量%未満の低濃度の金属含有率であり、さらに不要な塩を含有しているので脱塩処理しなければ工業用には使用できない等の問題点を有していた。
【0004】
【特許文献1】
特許第2561537号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」, 1993年, 第115巻, p.3887
【非特許文献2】
「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)」, 1995年, 第99巻, p.5077
【非特許文献3】
「コロイズ・アンド・サーファス・フィジコケミカル・アンド・エンジニアリング・アスペクツ(Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects)」, 2000年, 第168巻, p.87
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、金属微粒子や高濃度の金属微粒子分散液を簡易に製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、大量かつ安価な金属微粒子及び高濃度の金属微粒子分散液を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、有機金属塩を還元する際に有機酸を存在させておくことにより、高濃度の金属微粒子分散液が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の金属微粒子分散液の製造方法は、有機金属塩を、炭素数10以下の有機酸を前記有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%の有機金属塩溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物で還元することを特徴とする。
【0009】
本発明の金属微粒子分散液の製造方法において、以下の条件を満たすのが好ましい。
(1) 前記有機金属塩が炭素数10以下の有機酸の有機金属塩である。
(2) 前記有機金属塩が酢酸塩である。
(3) 前記有機金属塩の金属が少なくともCuを含有する。
(4) 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、ジオール類及び一般式:X−(A=B)n−Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYはそれぞれ非共有電子対を有する原子がA及びBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物である。
(5) 上記いずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄した後、金属含有量に対して質量比で0.01〜2倍の量の吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で他の溶媒に再分散させる。
【0010】
本発明の金属微粒子の製造方法は、上記いずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄及び乾燥することを特徴とする。
【0011】
本発明の金属微粒子は、1〜100 nm、望ましくは2〜50 nmの平均結晶子サイズを有する。結晶子サイズはX線回折(XRD)の測定や透過型電子顕微鏡の観察から求めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[1] 原料
(A) 有機金属塩
本発明に用いる金属塩としては、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni、Co、Mn、Tl、Cr、V、Ru、Rh、Ir、Al等の金属の有機酸塩、有機錯塩等が挙げられる。これらの中で、比較的還元されやすい炭素数10以下の有機酸塩が好ましい。特に安価で溶解性に優れた酢酸塩が好ましい。かかる有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、乳酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アセト酢酸等が挙げられる。これらの有機酸の中でも沸点又は分解点が220℃以下のものが望ましい。特に安価で溶解性に優れた酢酸塩が最も好ましい。
【0013】
金属イオンとしては、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoが還元されやすく、生成した金属が比較的安定であるので好ましい。上記有機金属塩は単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。本発明は、特に金属イオンとしてCuを含む場合、溶解性及び還元性の観点から効果が大きく好ましい。
【0014】
(B) 有機酸
有機酸としては炭素数10以下のものを使用する。有機酸の好ましい具体例と
しては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、乳酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、エチルメチル酢酸、アリル酢酸、アセト酢酸等が挙げられる。
【0015】
(C) 還元剤
本発明に用いる還元剤は、有機金属塩に対して還元作用を発揮する化合物であり、還元反応後に電気伝導度が小さい還元剤が望ましく、具体的には金属イオンが残留しない有機還元剤、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンが好ましい。
【0016】
有機還元剤としては、▲1▼ ヒドラジン基を含有するヒドラジン系化合物類(例えばフェニルヒドラジン等)、▲2▼ p−フェニレンジアミン、エチレンジアミン、アルキルアミノアルコール、p−アミノフェノール等のアミン類、▲3▼ ヒドロキノン、カテコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール等のジオール類、又は▲4▼ 一般式:X−(A=B)n−Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYはそれぞれ非共有電子対を有する原子がA及びBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される有機還元剤又はその互変異性体、又は熱的にこれらを生成する化合物類等が挙げられる。これらの還元剤の還元作用は金属塩に対して選択性があるので、有機金属塩との組合せにより適宜選択する必要がある。またこれらの還元剤は単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。
【0017】
一般式:X−(A=B)n−Yにより表される▲4▼の化合物における非共有電子対を有する原子としては、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子等が好ましく、酸素原子、窒素原子がより好ましい。これらの原子を含む原子団X及びYとしては、OR1、NR1R2、SR1、及びPR1R2(ただし、R1及びR2はそれぞれ水素原子又は置換基を表す。)が好ましい。前記置換基としては、置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基が好ましい。
【0018】
nは0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が最も好ましい。nが2以上のときA及びBは繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。またAとB、XとA、又はYとBは互いに結合して環構造を形成してもよい。環構造を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、さらにこれらの環は縮環していてもよい。縮環する場合、5〜6員環が好ましい。
【0019】
還元剤は、還元後に残渣が多く残ると金属微粒子の物性に悪影響を及ぼすため、残渣が少ないものが好ましく、還元後に揮発性(昇華性)又は分解して揮発性になる性質を有するものが好ましい。
【0020】
同様の観点、また溶解性の面から、少量で有機金属塩を還元可能なこと、すなわち低分子量であることが好ましい。従って、還元剤の分子量は500以下が好ましく、300以下がより好ましく、200以下が最も好ましい。
【0021】
以下、本発明に用いることができる還元剤の具体例を例示するが、本発明はこれらの例に限定されない。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
(D) 溶媒
有機金属塩及び還元剤の溶媒、洗浄溶媒、又は金属微粒子の分散溶媒としては以下のものが挙げられる。
(1) 水
(2) 酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類
(3) メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類
(4) ジクロルメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類
(5) ジメチルホルムアミド等のアミド類
(6) シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類
(7) トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類。
(8) テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類
(9) エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキセノール等のアルコール類
(10) 2,2,3,3−テトラフロロプロパノール等のフッ素系溶剤類
(11) エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類
(12) 2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノイソプロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−メチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノール等のアルキルアミノアルコール類
(13) ジエチレントリアミン、エチレンジアミン等のアミン類等。
【0027】
(E) 吸着性化合物及び界面活性剤
得られた金属微粒子の分散液(コロイド分散液)の安定性を向上させるために、金属微粒子の表面に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を吸着させて、金属微粒子を表面修飾するのが好ましい。なおコロイドは親水性であっても疎水性であっても良い。吸着性化合物及び界面活性剤は、有機金属塩を還元する際にも存在するのが好ましい。
【0028】
(1) 吸着性化合物
吸着性化合物としては、−SH、−CN、−NH2、−SO2OH、−SOOH、−OPO(OH)2、−COOH等の官能基を有する化合物が有効であり、特に−SH基を有する化合物(ドデカンチオール、L−システイン等)、又は−NH2基を有する化合物(オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等)が好ましい。親水性コロイドの場合、親水性基[例えば、−SO3Mや−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム分子等を表わす)]を有する吸着性化合物を使用するのが好ましい。
【0029】
(2) 界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(例えば、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、ノニオン界面活性剤(例えばポリアルキルグリコールのアルキルエステルやアルキルフェニルエーテル等)、フッ素系界面活性剤等を使用することができる。
【0030】
(3) 親水性高分子
また親水性高分子として、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等をコロイド分散液中に含有させても良い。
【0031】
[2] 金属微粒子分散液の調製
(A) 有機金属塩溶液の調製
まず炭素数10以下の有機酸を上記有機金属塩と等モル以上、好ましくは1.5倍モル以上含有する有機溶媒を用いる。有機溶媒は100%有機酸でも良いが、粘度調製のため有機酸以外の有機溶媒を適量含有するのが好ましい。ここで有機酸を含有する有機溶媒とは、有機酸と有機酸以外の有機溶媒との混合物に限らず、有機酸のみからなる有機溶媒をも含むものとする。従って、有機酸を有機金属塩と等モル以上含有するとは、有機酸100%の場合(有機酸のみからなる場合)をも含む。有機酸を含有する有機溶媒を用いることにより、有機金属塩を高濃度に溶解することができる。炭素数10以下とすることにより、金属微粒子分散液を塗布した際の乾燥負荷を軽減することができる。
【0032】
有機金属塩溶液の濃度は、金属換算で少なくとも1質量%、好ましくは5質量%以上とする。金属換算濃度を高めるために、複数種の有機酸を適量組合せるのが好ましい。有機酸を添加する有機溶媒は、有機金属塩及び還元剤の溶解性、還元剤の還元性、揮発性、溶液の粘度等を考慮して、単独又は二種以上を組合せて用いることができる。
【0033】
(B) 有機金属塩の還元
上記の通り調製した有機金属塩溶液に上記還元剤を添加する。還元作用の強い還元剤を添加する場合、加熱なしに有機金属塩を還元することができるが、還元作用がそれほど強くない還元剤を添加する場合や、還元反応を促進させる場合には、有機金属塩溶液に還元剤を添加した後に加熱するのが好ましい。加熱する場合、加熱温度は約100℃〜300℃が好ましい。反応後も高温に保持した状態では、生成した金属ナノ粒子が融着してそのサイズが増大することがあるので、速やかに冷却するのが望ましい。有機金属塩と還元剤との反応溶液そのものを金属微粒子分散液として用いることができる。
【0034】
(C) 金属微粒子の表面修飾
分散液中の金属微粒子を表面修飾して安定化するために、反応液及び/又は得られた分散液に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を添加するのが好ましい。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子の添加量は、分散液中の金属含有量に対して質量比で0.01〜2倍であるのが好ましく、0.1〜1倍がさらに好ましい。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子の添加量が質量比で0.01倍未満であると、分散液中の金属微粒子の安定性が不十分になる傾向があり、また2倍を超えると導電性等金属微粒子の物性に影響を及ぼす傾向がある。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子は金属微粒子の表面を1〜10 nmの厚さに被覆するのが好ましい。なお被覆は一様である必要がなく、金属微粒子の表面の少なくとも一部が被覆されていれば良い。
【0035】
金属微粒子が吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子で表面修飾されていることは、FE−TEM等の高分解能TEMの観察において金属微粒子間隔が一定であること、及び化学分析により確認することができる。
【0036】
(D) 再分散
一般に有機酸は臭いが強いので、無臭の分散液とする場合には異なる分散溶媒に再分散するのが好ましい。この場合、還元反応後の金属微粒子分散液を吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で遠心分離等によって沈降させ、得られた金属微粒子を洗浄した後、別の分散溶媒で再分散する。
【0037】
(E) 金属微粒子分散液
本発明の目的とする金属微粒子分散液は、有機金属塩と還元剤とを反応させた溶液そのものでも、その中に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を含有させたものでも、あるいは再分散したものでも良い。いずれにしても、分散液中の金属微粒子の濃度は金属換算値で1〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましい。なお分散液中の金属微粒子の粒径は通常コロイドを形成する程度であるが、限定的ではない。好ましい粒径は1〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。
【0038】
なお有機金属塩の還元反応やその後の沈降、洗浄、他の溶媒への再分散等、全ての処理工程は不活性ガス中で行うのが望ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。
【0039】
以下に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
91gの酢酸銅(II)に100 mlの2−エチル酪酸及び140 mlの2−エトキシエタノールを加え、窒素ガスを通しながら130℃で加熱溶解した。室温まで冷却した後、4mlのドデシルアミン及び30 mlのヒドラジン一水和物を添加し、酢酸銅を還元して、平均結晶子サイズが12 nmの銅コロイドの分散液(濃度:9.6質量%)を得た。
【0041】
比較例1
2−エチル酪酸の代わりに100 mlのエタノールを加えた以外実施例1と同様にして酢酸銅(II)の加熱溶解を試みたが、酢酸銅(II)はほとんど溶解しなかった。
【0042】
実施例2
2−エチル酪酸の代わりに、(a) 100 mlのイソ酪酸、(b) 100 mlの吉草酸、及び(c) 50 mlのプロピオン酸及び50 mlの2−エチル酪酸の混合物をそれぞれ添加した以外実施例1と同様にして、いずれも実施例1と同等の銅コロイド分散液を得た。
【0043】
実施例3
実施例1で調製した銅コロイド分散液に窒素雰囲気中で5倍容量のメタノールを添加し、銅ナノ粒子を沈降させた。デカンテーションにより上澄み液を除去し、再度メタノールを添加して銅ナノ粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した後、銅ナノ粒子を、2mlのドデシルアミンを含む50 mlの2−エトキシエタノールと50 mlの水との混合溶媒に再分散し、22質量%の銅コロイド分散液を得た。
【0044】
【発明の効果】
以上から明らかなように、有機金属塩、特に酢酸銅(II)を、炭素数10以下の有機酸を有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解させることにより、高濃度の有機金属塩溶液を得ることができ、さらに反応後無機塩が残留しない還元剤を有機金属塩溶液に添加して有機金属塩を還元することにより、高濃度で脱塩処理が不要な金属微粒子分散液を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線、高密度記録材料、金属触媒、造影剤等に使用することができる高濃度の金属微粒子分散液又は金属微粒子、もしくはこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属微粒子を得る方法としては、原料固体をルツボに入れ、高周波誘導加熱方式や抵抗加熱方式等により加熱して金属蒸気を発生させ、He、Ar等のガス分子又は溶剤の蒸気との衝突により急冷させて微粒子化するガス中蒸発法(気相法)が挙げられる(例えば、特許第2561537号公報等)。このようにして得られた金属微粒子を適当な溶媒に分散することにより、コロイド分散液を調製することができる。また有機金属塩の溶液に、NaBH4等の無機還元剤、ヒドラジン系、アミン系又はジオール系化合物等の有機還元剤、又は水素ガスを作用させたり、酸化還元電位がより卑な金属(例えばマグネシウム等)を前記有機金属塩に作用させたりすることにより、金属コロイド粒子を得る方法(溶液還元法)等により、前記コロイド分散液を調製することもできる。
【0003】
一般に溶液還元法(液相法)は、良好なコロイド分散液が簡易に製造できるので望ましい。しかしながら、報告されている合成法(例えば、J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 3887、J. Phys. Chem. 1995, 99, 5077、Colloids and Surfaces A:Physicochem. Eng. Aspects 2000, 168, 87等)はいずれも1質量%未満の低濃度の金属含有率であり、さらに不要な塩を含有しているので脱塩処理しなければ工業用には使用できない等の問題点を有していた。
【0004】
【特許文献1】
特許第2561537号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」, 1993年, 第115巻, p.3887
【非特許文献2】
「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)」, 1995年, 第99巻, p.5077
【非特許文献3】
「コロイズ・アンド・サーファス・フィジコケミカル・アンド・エンジニアリング・アスペクツ(Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects)」, 2000年, 第168巻, p.87
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、金属微粒子や高濃度の金属微粒子分散液を簡易に製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、大量かつ安価な金属微粒子及び高濃度の金属微粒子分散液を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、有機金属塩を還元する際に有機酸を存在させておくことにより、高濃度の金属微粒子分散液が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の金属微粒子分散液の製造方法は、有機金属塩を、炭素数10以下の有機酸を前記有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%の有機金属塩溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物で還元することを特徴とする。
【0009】
本発明の金属微粒子分散液の製造方法において、以下の条件を満たすのが好ましい。
(1) 前記有機金属塩が炭素数10以下の有機酸の有機金属塩である。
(2) 前記有機金属塩が酢酸塩である。
(3) 前記有機金属塩の金属が少なくともCuを含有する。
(4) 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、ジオール類及び一般式:X−(A=B)n−Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYはそれぞれ非共有電子対を有する原子がA及びBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物である。
(5) 上記いずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄した後、金属含有量に対して質量比で0.01〜2倍の量の吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で他の溶媒に再分散させる。
【0010】
本発明の金属微粒子の製造方法は、上記いずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄及び乾燥することを特徴とする。
【0011】
本発明の金属微粒子は、1〜100 nm、望ましくは2〜50 nmの平均結晶子サイズを有する。結晶子サイズはX線回折(XRD)の測定や透過型電子顕微鏡の観察から求めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[1] 原料
(A) 有機金属塩
本発明に用いる金属塩としては、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni、Co、Mn、Tl、Cr、V、Ru、Rh、Ir、Al等の金属の有機酸塩、有機錯塩等が挙げられる。これらの中で、比較的還元されやすい炭素数10以下の有機酸塩が好ましい。特に安価で溶解性に優れた酢酸塩が好ましい。かかる有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、乳酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アセト酢酸等が挙げられる。これらの有機酸の中でも沸点又は分解点が220℃以下のものが望ましい。特に安価で溶解性に優れた酢酸塩が最も好ましい。
【0013】
金属イオンとしては、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoが還元されやすく、生成した金属が比較的安定であるので好ましい。上記有機金属塩は単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。本発明は、特に金属イオンとしてCuを含む場合、溶解性及び還元性の観点から効果が大きく好ましい。
【0014】
(B) 有機酸
有機酸としては炭素数10以下のものを使用する。有機酸の好ましい具体例と
しては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、乳酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、エチルメチル酢酸、アリル酢酸、アセト酢酸等が挙げられる。
【0015】
(C) 還元剤
本発明に用いる還元剤は、有機金属塩に対して還元作用を発揮する化合物であり、還元反応後に電気伝導度が小さい還元剤が望ましく、具体的には金属イオンが残留しない有機還元剤、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンが好ましい。
【0016】
有機還元剤としては、▲1▼ ヒドラジン基を含有するヒドラジン系化合物類(例えばフェニルヒドラジン等)、▲2▼ p−フェニレンジアミン、エチレンジアミン、アルキルアミノアルコール、p−アミノフェノール等のアミン類、▲3▼ ヒドロキノン、カテコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール等のジオール類、又は▲4▼ 一般式:X−(A=B)n−Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYはそれぞれ非共有電子対を有する原子がA及びBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される有機還元剤又はその互変異性体、又は熱的にこれらを生成する化合物類等が挙げられる。これらの還元剤の還元作用は金属塩に対して選択性があるので、有機金属塩との組合せにより適宜選択する必要がある。またこれらの還元剤は単独で用いても、複数を組合せて用いても良い。
【0017】
一般式:X−(A=B)n−Yにより表される▲4▼の化合物における非共有電子対を有する原子としては、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子等が好ましく、酸素原子、窒素原子がより好ましい。これらの原子を含む原子団X及びYとしては、OR1、NR1R2、SR1、及びPR1R2(ただし、R1及びR2はそれぞれ水素原子又は置換基を表す。)が好ましい。前記置換基としては、置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基が好ましい。
【0018】
nは0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が最も好ましい。nが2以上のときA及びBは繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。またAとB、XとA、又はYとBは互いに結合して環構造を形成してもよい。環構造を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、さらにこれらの環は縮環していてもよい。縮環する場合、5〜6員環が好ましい。
【0019】
還元剤は、還元後に残渣が多く残ると金属微粒子の物性に悪影響を及ぼすため、残渣が少ないものが好ましく、還元後に揮発性(昇華性)又は分解して揮発性になる性質を有するものが好ましい。
【0020】
同様の観点、また溶解性の面から、少量で有機金属塩を還元可能なこと、すなわち低分子量であることが好ましい。従って、還元剤の分子量は500以下が好ましく、300以下がより好ましく、200以下が最も好ましい。
【0021】
以下、本発明に用いることができる還元剤の具体例を例示するが、本発明はこれらの例に限定されない。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
(D) 溶媒
有機金属塩及び還元剤の溶媒、洗浄溶媒、又は金属微粒子の分散溶媒としては以下のものが挙げられる。
(1) 水
(2) 酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類
(3) メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類
(4) ジクロルメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類
(5) ジメチルホルムアミド等のアミド類
(6) シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類
(7) トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類。
(8) テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類
(9) エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキセノール等のアルコール類
(10) 2,2,3,3−テトラフロロプロパノール等のフッ素系溶剤類
(11) エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類
(12) 2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノイソプロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−メチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノール等のアルキルアミノアルコール類
(13) ジエチレントリアミン、エチレンジアミン等のアミン類等。
【0027】
(E) 吸着性化合物及び界面活性剤
得られた金属微粒子の分散液(コロイド分散液)の安定性を向上させるために、金属微粒子の表面に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を吸着させて、金属微粒子を表面修飾するのが好ましい。なおコロイドは親水性であっても疎水性であっても良い。吸着性化合物及び界面活性剤は、有機金属塩を還元する際にも存在するのが好ましい。
【0028】
(1) 吸着性化合物
吸着性化合物としては、−SH、−CN、−NH2、−SO2OH、−SOOH、−OPO(OH)2、−COOH等の官能基を有する化合物が有効であり、特に−SH基を有する化合物(ドデカンチオール、L−システイン等)、又は−NH2基を有する化合物(オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等)が好ましい。親水性コロイドの場合、親水性基[例えば、−SO3Mや−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム分子等を表わす)]を有する吸着性化合物を使用するのが好ましい。
【0029】
(2) 界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(例えば、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、ノニオン界面活性剤(例えばポリアルキルグリコールのアルキルエステルやアルキルフェニルエーテル等)、フッ素系界面活性剤等を使用することができる。
【0030】
(3) 親水性高分子
また親水性高分子として、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等をコロイド分散液中に含有させても良い。
【0031】
[2] 金属微粒子分散液の調製
(A) 有機金属塩溶液の調製
まず炭素数10以下の有機酸を上記有機金属塩と等モル以上、好ましくは1.5倍モル以上含有する有機溶媒を用いる。有機溶媒は100%有機酸でも良いが、粘度調製のため有機酸以外の有機溶媒を適量含有するのが好ましい。ここで有機酸を含有する有機溶媒とは、有機酸と有機酸以外の有機溶媒との混合物に限らず、有機酸のみからなる有機溶媒をも含むものとする。従って、有機酸を有機金属塩と等モル以上含有するとは、有機酸100%の場合(有機酸のみからなる場合)をも含む。有機酸を含有する有機溶媒を用いることにより、有機金属塩を高濃度に溶解することができる。炭素数10以下とすることにより、金属微粒子分散液を塗布した際の乾燥負荷を軽減することができる。
【0032】
有機金属塩溶液の濃度は、金属換算で少なくとも1質量%、好ましくは5質量%以上とする。金属換算濃度を高めるために、複数種の有機酸を適量組合せるのが好ましい。有機酸を添加する有機溶媒は、有機金属塩及び還元剤の溶解性、還元剤の還元性、揮発性、溶液の粘度等を考慮して、単独又は二種以上を組合せて用いることができる。
【0033】
(B) 有機金属塩の還元
上記の通り調製した有機金属塩溶液に上記還元剤を添加する。還元作用の強い還元剤を添加する場合、加熱なしに有機金属塩を還元することができるが、還元作用がそれほど強くない還元剤を添加する場合や、還元反応を促進させる場合には、有機金属塩溶液に還元剤を添加した後に加熱するのが好ましい。加熱する場合、加熱温度は約100℃〜300℃が好ましい。反応後も高温に保持した状態では、生成した金属ナノ粒子が融着してそのサイズが増大することがあるので、速やかに冷却するのが望ましい。有機金属塩と還元剤との反応溶液そのものを金属微粒子分散液として用いることができる。
【0034】
(C) 金属微粒子の表面修飾
分散液中の金属微粒子を表面修飾して安定化するために、反応液及び/又は得られた分散液に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を添加するのが好ましい。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子の添加量は、分散液中の金属含有量に対して質量比で0.01〜2倍であるのが好ましく、0.1〜1倍がさらに好ましい。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子の添加量が質量比で0.01倍未満であると、分散液中の金属微粒子の安定性が不十分になる傾向があり、また2倍を超えると導電性等金属微粒子の物性に影響を及ぼす傾向がある。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子は金属微粒子の表面を1〜10 nmの厚さに被覆するのが好ましい。なお被覆は一様である必要がなく、金属微粒子の表面の少なくとも一部が被覆されていれば良い。
【0035】
金属微粒子が吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子で表面修飾されていることは、FE−TEM等の高分解能TEMの観察において金属微粒子間隔が一定であること、及び化学分析により確認することができる。
【0036】
(D) 再分散
一般に有機酸は臭いが強いので、無臭の分散液とする場合には異なる分散溶媒に再分散するのが好ましい。この場合、還元反応後の金属微粒子分散液を吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で遠心分離等によって沈降させ、得られた金属微粒子を洗浄した後、別の分散溶媒で再分散する。
【0037】
(E) 金属微粒子分散液
本発明の目的とする金属微粒子分散液は、有機金属塩と還元剤とを反応させた溶液そのものでも、その中に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を含有させたものでも、あるいは再分散したものでも良い。いずれにしても、分散液中の金属微粒子の濃度は金属換算値で1〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましい。なお分散液中の金属微粒子の粒径は通常コロイドを形成する程度であるが、限定的ではない。好ましい粒径は1〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。
【0038】
なお有機金属塩の還元反応やその後の沈降、洗浄、他の溶媒への再分散等、全ての処理工程は不活性ガス中で行うのが望ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。
【0039】
以下に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
91gの酢酸銅(II)に100 mlの2−エチル酪酸及び140 mlの2−エトキシエタノールを加え、窒素ガスを通しながら130℃で加熱溶解した。室温まで冷却した後、4mlのドデシルアミン及び30 mlのヒドラジン一水和物を添加し、酢酸銅を還元して、平均結晶子サイズが12 nmの銅コロイドの分散液(濃度:9.6質量%)を得た。
【0041】
比較例1
2−エチル酪酸の代わりに100 mlのエタノールを加えた以外実施例1と同様にして酢酸銅(II)の加熱溶解を試みたが、酢酸銅(II)はほとんど溶解しなかった。
【0042】
実施例2
2−エチル酪酸の代わりに、(a) 100 mlのイソ酪酸、(b) 100 mlの吉草酸、及び(c) 50 mlのプロピオン酸及び50 mlの2−エチル酪酸の混合物をそれぞれ添加した以外実施例1と同様にして、いずれも実施例1と同等の銅コロイド分散液を得た。
【0043】
実施例3
実施例1で調製した銅コロイド分散液に窒素雰囲気中で5倍容量のメタノールを添加し、銅ナノ粒子を沈降させた。デカンテーションにより上澄み液を除去し、再度メタノールを添加して銅ナノ粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した後、銅ナノ粒子を、2mlのドデシルアミンを含む50 mlの2−エトキシエタノールと50 mlの水との混合溶媒に再分散し、22質量%の銅コロイド分散液を得た。
【0044】
【発明の効果】
以上から明らかなように、有機金属塩、特に酢酸銅(II)を、炭素数10以下の有機酸を有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解させることにより、高濃度の有機金属塩溶液を得ることができ、さらに反応後無機塩が残留しない還元剤を有機金属塩溶液に添加して有機金属塩を還元することにより、高濃度で脱塩処理が不要な金属微粒子分散液を得ることができる。
Claims (9)
- 有機金属塩を、炭素数10以下の有機酸を前記有機金属塩と等モル以上含有する溶媒に溶解することにより、金属換算濃度が少なくとも1質量%の有機金属塩溶液を調製し、有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物で還元することを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法。
- 前記有機金属塩が炭素数10以下の有機酸の有機金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子分散液の製造方法。
- 前記有機金属塩が酢酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の金属微粒子分散液の製造方法。
- 前記有機金属塩の金属が少なくともCuを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子分散液の製造方法。
- 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、ジオール類及び一般式:X−(A=B)n−Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYはそれぞれ非共有電子対を有する原子がA及びBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄した後、金属含有量に対して質量比で0.01〜2倍の量の吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で他の溶媒に再分散させることを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの方法により製造した分散液中の金属微粒子を沈降、洗浄及び乾燥することを特徴とする金属微粒子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかの方法により製造した1〜80質量%の濃度を有する金属微粒子分散液。
- 請求項7の方法により製造した1〜100 nmの平均結晶子サイズを有する金属微粒子。
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