JP2013072091A - 金属微粒子およびその製造方法、金属微粒子を含む金属ペースト、並びに金属ペーストから形成される金属被膜 - Google Patents

金属微粒子およびその製造方法、金属微粒子を含む金属ペースト、並びに金属ペーストから形成される金属被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】不純物として、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの含有量が少ない金属微粒子を提供する。
【解決手段】保護剤で表面が被覆された金属微粒子であって、前記保護剤がアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類から選択され、前記金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が前記金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満の金属微粒子である。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属微粒子およびその製造方法、金属微粒子を含む金属ペースト、並びに金属ペーストから形成される金属被膜に関する。
金属ペーストは、例えば、めっき代替材料や微細配線形成材料として使用される。金属ペーストには金属微粒子や溶剤組成物などが含有されており、金属ペーストは、焼成されることによって金属被膜となる材料である。
金属微粒子の製造方法としては、大別して、固相法、気相法、液相法の3種類がある。
固相法は、メカニカルミリング処理やメカニカルアロイング処理を行うことで金属粉末を粉砕し、金属微粒子または合金微粒子を製造する方法である(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。固相法によれば、金属粉末を高硬度のボール状セラミックス粉末などと混合し、それらを入れた容器を高速で回転することで、粒子同士を衝突させ、機械的なエネルギーにより粉砕して金属微粒子を得ることができる。
気相法は、真空チャンバー内で金属塊を気化させ、その気体に金属微粒子同士の凝集を防ぐ保護剤の蒸気を接触させ、冷却することによって金属微粒子を製造する方法である(例えば、特許文献2参照)。気相法によれば、不純物が少なく、高純度な金属微粒子を得ることができる。
液相法は、液相中で金属イオンを還元し、金属核を少しずつ成長させていくことで、金属微粒子を製造する方法である(例えば、特許文献3参照)。液相法は、還元剤および保護剤を含む液相に金属化合物を予め溶解させて、金属イオンが均一に存在する液相を調整する。液相に含まれる還元剤により、金属イオンに対して電子を供与して、金属核を生成する。生成した金属核同士が凝集し、金属核が成長することによって、金属微粒子が生成される。具体的には、金属化合物(ハロゲン、S、またはPを含む金属塩など)を液相中に溶解させ、還元剤(ハロゲン、S、P、またはアルカリ金属を含む)により還元することで、金属微粒子を析出させる。この液相法によれば、簡易な装置構成で、気相法と比較して安価に金属微粒子を製造することができる。
ただし、上記3種類の方法にはそれぞれ問題点がある。
固相法においては、微細な金属微粒子を得にくく、また、製造される金属微粒子の純度が低いといった問題点がある。固相法で製造される金属微粒子の粒子径は、粉砕に用いるボール状セラミックス粉のサイズに影響される。通常、工業的に使用されるボール状セラミックス粉のサイズでは、微細な金属微粒子を高収率で製造することは困難である。さらに、金属粉末とセラミックス粉との衝突の際に、目的とする金属粉末以外にセラミックス粉末も粉砕されるため、セラミックスの金属微粒子への混入を原理的に防げず、金属微粒子の純度は低い。
気相法においては、高純度な金属微粒子を得られるが、装置構成が複雑で製造コストが高価であるといった問題がある。気相法においては、真空系やチャンバー、さらに金属塊を気化させるエネルギー源としてプラズマや電子ビーム、レーザー、誘導加熱といった装置が必要となる。これらは一般的に装置価格が高価である。また、気相法では、反応装置
容積および反応時間あたりの金属微粒子の製造量が低い。しかも、1台の製造装置で複数種類の金属微粒子を製造すると、ある金属微粒子が他の金属微粒子の不純物となってしまうため、1台の装置に対し1種類の金属微粒子を製造することが要求される。以上から、気相法は、装置価格が高く、製造量が低いため、他の製造方法と比較して製造コストが非常に高い。
液相法においては、気相法ほどではないものの金属微粒子の製造コストが高く、また、製造される金属微粒子の純度が低いといった問題がある。液相法は、気相法と比べて装置が汎用的であり、初期設備費やランニングコストは安価である。しかし、工業的な観点からすると、製造速度および製造量が不十分であるため、製造コストが結果的に高価となる。それは、以下に示す理由による。液相法は、液相中に生成した金属核に、周囲の金属イオンを取り込ませながら、金属核を成長させる。そして、金属核の成長を抑制することで、微細なサイズの金属微粒子を得ることができる。成長の抑制には、液相を希釈することで金属核の周囲に存在する金属イオン濃度を低くして、金属イオンの取り込みを抑制すればよい。このことは、反応系内における金属濃度を低くする一方で、反応に寄与しない溶液(廃液)を相対的に増加させている。その結果、液相法では、製造効率を低下させるばかりか、廃液量を増加させてしまう。つまり、液相法では設備費は安価であるが、反応容積あたりの金属微粒子の製造量が少ない。そのため、液相法は、気相法ほどではないにせよ、結果的に金属微粒子の製造コストが高価となってしまう。
さらに液相法では、金属微粒子の析出後の液相中に、還元剤などの液相の組成物に由来するカチオン(例えば、アルカリ金属のイオン)や、原料の金属化合物に由来するアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等)が残存する。これらの残存物は除去が困難であるため、製造される金属微粒子に不純物として含まれこととなり、金属微粒子の純度が低下する。金属微粒子は、不純物の混入にともない、特性が悪化する。
一方、上記液相法において、溶液中の金属イオン濃度の低さを解決する方法として、原料の金属化合物に金属錯体を用いる方法(錯体分解法)がある(例えば、特許文献4参照)。錯体分解法は、保護剤を含む溶媒中で金属錯体を熱分解し、金属微粒子を析出させる方法である。錯体分解法によれば、合成時の金属イオン濃度が高いため、製造速度が大きく、安価に金属微粒子を製造することができる。
特開2005−314806号公報 特開2002−121606号公報 特開平5−117726号公報 特開2007−63579号公報
S. Sheibani et al.,Mater. Lett., (2006).
しかしながら、上記特許文献4においては、目的とする金属以外の不要元素(アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、リンなど)が含まれる金属錯体を用いるため、不要元素が不純物として、製造される金属微粒子に残存してしまう。これらの不純物は、除去が難しく、製造される金属微粒子の純度を低下させることになる。そして、不純物は、金属微粒子の特性を悪化させ、金属ペーストに用いる際に、形成される金属被膜の導電性(体積抵抗率)などを低下させる。さらに、金属錯体を調整する工程が入るため、その分の収率低下やコ
スト上昇は避けられない。このように、特許文献4では、金属微粒子の製造コストをある程度低減できるものの、得られる金属微粒子の特性は不十分となる。
本発明は、このような問題を鑑みて成されたもので、その目的は、不純物の含有量が少ない金属微粒子を提供することにある。また、金属微粒子を含み、焼結性に優れる金属ペースト、および金属ペーストから形成され、導電性に優れる金属被膜を提供することにある。
本発明の第1の態様は、保護剤で表面が被覆された金属微粒子であって、前記保護剤がアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類から選択され、前記金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が前記金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満の金属微粒子である。
本発明の第2の態様は、第1の態様の金属微粒子において、前記保護剤がアミン化合物およびカルボン酸化合物からなる金属微粒子である。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様の金属微粒子おいて、前記アミン化合物が、一般式NH、NHR、またはNRで表される脂肪族アミン化合物の金属微粒子である。ただし、式中R、R、及びRは、炭素数2〜16のアルキル基を示す。
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかの金属微粒子において、金、銀、銅、白金、またはパラジウムのうち少なくともいずれか1種類の金属からなる金属微粒子である。
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかの金属微粒子と、溶剤組成物と、を含む金属ペーストである。
本発明の第6の態様は、第5の態様の金属ペーストにおいて、前記溶剤組成物が、水、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、アミン類、単糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類のうちいずれか1種類、またはこれらの組み合わせから選択される金属ペーストである。
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様の金属ペーストを焼結させて形成される金属被膜である。
本発明の第8の態様は、還元剤および保護剤を含む液相中に固体状態で分散する金属化合物から金属核を還元析出させ、該金属核を凝集させるとともに前記保護剤で被覆して、金属微粒子を生成する生成工程と、前記金属微粒子に含まれる不純物であるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを除去する精製工程と、を含む金属微粒子の製造方法であって、前記金属微粒子の質量に対する前記不純物の合計含有量が0.1mass%未満となるように、前記生成工程では、前記還元剤および前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類を用い、前記精製工程では、水および有機溶媒を用いた金属微粒子の製造方法である。
本発明の第9の態様は、第8の態様の金属微粒子の製造方法において、前記生成工程では、前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物およびカルボン酸化合物を用いる金属微粒子の製造方法である。
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様のいずれかの金属微粒子の製造方法において、前記金属化合物が金属酸化物である金属微粒子の製造方法である。
本発明によれば、不純物の含有量が少ない金属微粒子を提供することができる。また、焼結性に優れる金属ペースト、および導電性に優れる金属被膜を得ることができる。
本発明の実施例1におけるAu金属微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の実施例1におけるAu金属微粒子のGC−MS測定結果を示す図である。 本発明の実施例1におけるAu金属微粒子のNMR測定結果を示す図である。 本発明の実施例1におけるAu金属微粒子のFE−SEM写真である。 本発明の実施例2におけるAg金属微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の実施例2におけるAg金属微粒子のFE−SEM写真である。 本発明の実施例5におけるCu金属微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の実施例5におけるCu金属微粒子のFE−SEM写真である。
上述したように、従来の液相法(錯体分解法を含む)は、金属化合物を液相に予め溶解させて均一な金属イオン溶液とした液相中で、金属イオンを還元する。還元によって生成された金属核は凝集して成長することで、金属微粒子となる。液相中で生成された金属核が金属微粒子になるに際しては、2つの相反する反応が生じている。1つは、生成した金属核同士の凝集による核成長反応であり、この反応により金属核から金属微粒子が形成される。もう1つは、液相中の保護剤の金属核への吸着による核成長抑制反応であり、この反応により核成長が抑制され、金属微粒子の大きさが制御される。液相法においては、上記2つの反応が生じており、どちらの反応が優先するかによって、最終的に形成される金属微粒子の粒子サイズが変化する。金属核の核成長反応が相対的に速ければ、形成される金属微粒子は粗大化し、反対に、金属核の核成長反応が相対的に遅ければ、形成される金属微粒子は微細なサイズとなる。
上記2つの反応において、従来の液相法は核成長が相対的に速いため、形成される金属微粒子は粗大な粒子となる。この理由は以下のようになる。従来の液相法においては、金属化合物が予め液相に溶解されており、金属イオンが液相全体中に均一に存在する。この金属イオンが還元されると金属核が液相全体で生成する。このため、ある金属核の周囲に他の金属核が存在する確率が高くなる。近い金属核同士は互いに凝集しあい、より大きな金属核へと成長していく。すなわち、核成長を抑制する保護剤の働きよりも、核が凝集して核成長する働きが大きい。その結果、粗大な金属微粒子が形成されることになる。
しかも、形成される金属微粒子には、原料物(金属化合物や還元剤など)に由来する不純物(アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを含む)が含まれる。これは、金属化合物を溶解して均一な金属イオン溶液を調整する上で、ハロゲンを含む金属塩、またはハロゲン、硫黄、リンなどを含む金属錯体を用いるためである。また、Naなどのアルカリ金属を含む還元剤などを用いたためである。そして、この不純物の含有により、金属微粒子の特性は低下し、金属微粒子から形成される金属被膜の導電性が低下していた。
そこで、本発明者らは、金属化合物を液相に溶解させず、金属化合物(固体)と液相とが共存した不均一固液系において、還元反応により金属微粒子を析出させる方法(以下、不均一固液法とする)に着目した。
不均一固液法は、液相中で金属イオンを還元して金属微粒子を析出させる点において、液相法の一つと考えられる。ただし、従来の液相法が金属化合物を予め溶解させて、均一な金属イオン溶液とした液相中で金属微粒子を析出させるのに対して、不均一固液法は、金属化合物を液相に溶解させず、液相中に固体状態で分散する金属化合物を還元して、金属微粒子を析出させる点が異なっている。また、金属化合物を溶解させないため、金属塩や金属錯体などの特定の金属化合物、またはアルカリ金属などを含む特定の還元剤を用いる必要性がない点が異なっている。
具体的には、還元剤や保護剤を含む液相と、液相に対して不溶である金属化合物とが共存した不均一固液系を調整する。この系を加熱して金属化合物中の金属原子の化学結合(イオン結合や配位結合)を切断することによって、金属化合物表面から金属イオンを生じさせる。この金属イオンは、液相全体に分散する前に、金属化合物の表面において液相中の還元剤により還元されて、金属核となる。金属化合物の表面から析出した金属核は核同士が凝集することによって、金属核が成長し金属微粒子となる。つまり、金属化合物と液相との界面において、金属イオンの還元反応および金属核の生成が生じ、金属微粒子が析出する。
不均一固液法において、金属化合物から金属核を生成させるためには、金属化合物中の金属原子の化学結合を還元剤の作用によって切断し金属イオンを発生させて金属イオンを還元する必要がある。このため、不均一固液法における金属核の生成速度は、液相中に予め分散している金属イオンが金属核になる従来の液相法の反応と比較して遅くなる。さらに、金属核の生成は金属化合物(固体)と液相との界面に限定される。すなわち、不均一固液系における金属核の生成は、金属核の生成自体が遅く、かつ、空間的に限定されることになる。そのため、ある金属核の周囲に他の金属核が存在する確率が低くなる。この結果、金属核の凝集による核成長反応が抑制されるとともに保護剤による金属核の核成長抑制反応が働くことによって、最終的に形成される金属微粒子の粒子サイズが微細なものとなる。
また、不均一固液法によれば、金属化合物を液相に溶解させないため、ハロゲンを含有する特定の金属塩やアルカリ金属を含有する特定の還元剤などを用いる必要性がない。このため、原料物に由来する不純物の混入量を低減することができる。
本発明者らは、上述した不均一固液法により、不純物の含有量が少ない原料物を用いて金属微粒子を形成して、その金属微粒子の特性を評価した。しかし、その特性は未だ不十分であった。この結果を検討したところ、組成として上記不純物を含まない原料物(例えば金属酸化物など)であっても、極微量の不純物を含有し、形成される金属微粒子に不純物を混入させることがわかった。具体的には、組成として不純物(Cl)を含まない酸化金(Au)は、塩化金(AuCl)から合成される場合、極微量のClを含む。そして、極微量の不純物が金属微粒子に混入し、特性を低下させることがわかった。このように、原料物に由来する不純物の混入を完全に防ぐことは困難であることがわかった。そこで、本発明者らは、金属微粒子の精製工程に着目し、含有する不純物の除去方法について鋭意検討を行った。そして、不均一固液法で得られた不純物量の少ない金属微粒子を、水および有機溶媒の混合溶媒で精製することによって、金属微粒子中に含まれる不純物量をさらに低減できることを見出し、本発明を創作するに到った。
(金属微粒子の製造方法)
以下に、本発明の一実施形態にかかる金属微粒子の製造方法について説明する。本実施形態にかかる金属微粒子の製造方法は、上述した不均一固液法を用いる。
本実施形態の金属微粒子の製造方法は、還元剤および保護剤を含む液相中に固体状態で分散する金属化合物から金属核を還元析出させ、金属核を凝集させるとともに保護剤で被覆して、金属微粒子を生成する生成工程と、金属微粒子に含まれる不純物であるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを除去する精製工程と、を有している。
まず、還元剤および保護剤を含む液相を調整する。
保護剤は、生成した金属核の凝集を抑制して金属微粒子の成長を抑制するとともに、形成された金属微粒子の表面を被覆して安定化させることで金属微粒子の凝集および融着を抑制する。すなわち、保護剤は、金属微粒子を微細な状態で被覆して安定化させる。本実施形態においては、保護剤としてアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類を用いる。
アミン化合物は、共有電子対を有する窒素を含む官能基として塩基性を示すアミン基(−NH)を有する化合物である。アミン化合物は、金属微粒子の表面に対する配位的な吸着性を示すとともに、窒素原子上の非共有電子対の作用によって金属化合物を還元する作用を有する化合物である。すなわち、アミン化合物は保護剤および還元剤の両方の役割を兼ねる。アミン化合物としては、金属化合物を還元するのに必要な還元力を有する化合物を用いることができる。アミン化合物は、炭素、窒素、水素、酸素などから構成されており、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンを含まないため、これらを含む不純物を形成しない。
アミン化合物としては、一般式NH、NHR、またはNR(式中R、R、及びRは、炭素数2〜16のアルキル基を示す)で表される脂肪族アミン化合物を用いることが好ましい。脂肪族アミン化合物は、金属微粒子への配位的な吸着性を示すとともに、電子供与性のアルキル基を有することで窒素原子上の非共有電子対の電子密度が高くなり、高い還元性を有する。脂肪族アミン化合物の還元性は、窒素原子上の非共有電子対の電子密度の強弱に依存しており、一般的には、電子供与性のアルキル基が多いほど窒素原子上の非共有電子対の電子密度は高くなり、還元性も高くなる。このため、2級アミン化合物や3級アミン化合物の方が、1級アミン化合物よりも還元性が強いことになる。2級アミン化合物および3級アミン化合物の還元性については、アルキル基数に由来する電子密度に加えて、アルキル基の立体的な因子も関係するため、還元性の強弱は明瞭でなく、実験上、金属化合物を還元する能力の高いアミン化合物を選択すればよい。
アミン化合物としては、例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリルモノエタノールアミン、デシルモノエタノールアミン、ヘキシルモノプロパノールアミン、ベンジルモノエタノールアミン、フェニルモノエタノールアミン、トリルモノプロパノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイルモノエタノールアミン、ジラウリルモノプロパノールアミン、ジオクチルモノエタノールアミン、ジヘキシルモノプロパノールアミン、ジブチルモノプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジ
プロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、オクチルジプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、フェニルジエタノールアミン、トリルジプロパノールアミン、キシリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等があり、異なるアミン化合物を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
カルボン酸化合物は、非共有電子対を有する酸素を含む官能基として酸性を示すカルボキシル基(−COOH)を有する化合物である。カルボン酸化合物は、酸素原子上の非共有電子対の作用によって、金属微粒子の表面に対して配位的な吸着性を示す。カルボン酸化合物はアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンを含まないため、これらを含む不純物が、形成される金属微粒子に含まれることはない。
保護剤に使用できるカルボン酸化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フマール酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4、4’−ジカルボン酸、ブタン−1、2、4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1、2、3−トリカルボン酸、ベンゼン−1、2、4−トリカルボン酸、ナフタレン−1、2、4−トリカルボン酸、ブタン−1、2、3、4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1、2、3、4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1、2、4、5−テトラカルボン酸、3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸等があり、異なるカルボン酸化合物を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
保護剤の添加量は、金属濃度の値が1〜90mass%の範囲となるように設定される。ここで、金属濃度は、以下の式で定義される。
金属濃度(mass%)=金属質量(g)×100(mass%)/反応溶液の質量(g)
上記式において、反応溶液は、金属化合物を含む液相を示しており、液相には金属化合物以外に、還元剤、保護剤、または溶媒などが含まれる場合がある。金属濃度が低いと、反応溶液に対して、形成される金属微粒子の量が低く、製造量が少ないことを示す。
保護剤の添加量は、形成される金属微粒子の表面を被覆するのに必要な量が算出されて決定される。すなわち、所定の粒子径の金属粒子が所定量生成すると仮定した場合、金属微粒子の表面積を覆うのに必要な保護剤の吸着面積を考慮することで決定することができる。保護剤を還元剤としても使用する場合(例えばアミン化合物を還元剤としても使用する場合)は、金属化合物の還元に必要な量も考慮し、添加量を決定する。この時、上記式の金属濃度が1〜90mass%の範囲となるように適宜調整される。より好ましくは、金属濃度の値が1〜65mass%の範囲となるように設定される。金属濃度が90mass%を超えるような条件では、金属化合物に対して保護剤が少なく、化学量論上、金属化合物を還元し、吸着するのに必要な量が確保できなくなり、粗大な金属粒子が生成する虞がある。他方、1mass%未満では、金属化合物に対して保護剤が過剰であり、単位時間の金属微粒子製造量が従来の均一な金属イオン溶液による製造量と変わらないため、製造コストが高くなる。
また、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物を用いることが好ましい。アミン化合物およびカルボン酸化合物を液相中に添加することによって、アミン化合物およびカルボン酸化合物で表面が被覆された金属微粒子を得ることができる。
還元剤は、金属化合物から生成された金属イオンを還元し、金属核を生成させる。本実
施形態においては、液相中に金属化合物を固体状態で分散させ還元するため、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、リンを含まず、金属化合物に対する還元性を示す化合物を好適に用いることができる。なお、保護剤としてアミン化合物を用いる場合は、アミン化合物が還元剤としても作用するため、還元剤を用いる必要性がない。
還元剤としては、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、カルボン酸類、単糖類、多糖類、などの群から選択可能であり、これらの溶媒を2種類以上組み合わせて使用することも可能である。過酸化水素、ボラン、ジボラン、ヒドラジン、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸などの還元剤を適宜他の溶媒に溶かすことで還元性溶媒とすることもできる。本発明に好適に使用できる還元剤としては、脂肪族アミン化合物または1級アルコール化合物が好ましい。
上述したように、脂肪族アミン化合物は保護剤としても作用するため、上記保護剤としての脂肪族アミン化合物を還元剤として用いることができる。
1級アルコール化合物としては、エタノールがより好適に用いることができる。その理由は、毒性が低く、ハンドリングが容易なためである。さらに、エタノールは、金属化合物を還元する過程で、自身は酢酸に変化する。酢酸は、カルボキシル基(−COOH)を有しており、酸素原子の非共有電子対の作用によって、金属微粒子に吸着し保護剤として機能する。つまり、エタノールは、上述したアミン化合物と同様に、還元剤及び保護剤の両方の役割を兼ねることができる。金属微粒子の製造においては、還元剤と保護剤を別々に加える必要があるが、還元剤および保護剤を兼ねるエタノールは少ない添加量で済む。このため、液相(反応溶液)の量の増加を抑制して、高い金属濃度において金属微粒子を製造することができる。その結果、より安価に金属微粒子を製造できる。
還元剤の添加量は、金属化合物を還元するのに必要な化学量論量よりも多く、過剰すぎない量を加えることが好ましい。添加量が化学量論量以下となると、還元反応時間が長くなる虞や、金属化合物の還元以外の副反応が起こるような反応系では、還元剤が不足し金属化合物が還元しない虞がある。他方、過剰な量では、相対的に金属化合物や保護剤の濃度が低下する。金属化合物の濃度(金属濃度)が、従来の均一イオン溶液法と変わらないほど低下すると、金属微粒子の製造コストが高くなる。また、保護剤の濃度がある量よりも低下すると、金属微粒子を十分に被覆できなくなり、微細な金属微粒子が得られない虞がある。
なお、液相の調整においては、金属化合物の還元反応速度や、還元剤と保護剤との親和性を調整する目的で、直鎖炭化水素や、環状炭化水素としてのトルエン、キシレンなどの還元性を示さない溶媒を混合してもよい。
次に、調整された液相中に、金属化合物を添加し、金属化合物(固体)と液相とが共存する不均一固液系の状態とする。不均一固液系では、金属化合物が液相中に固体状態で分散している。
本実施形態においては、金属化合物を液相に溶解させず固体状態で分散させるため、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの不純物を含む金属化合物を用いる必要性がない。不純物を含まない金属化合物としては、金属酸化物や貴金属酸化物を用いることが好ましい。これらの金属化合物は、構成元素に金属と酸素のみを含んでいるため、毒性が低く、かつ反応後も酸素もしくは酸素を含む誘導体を発生させるだけであり、好適に用いることができる。
金属化合物としては、例えば、酢酸銀、酸化銀、炭酸銀、オレイン酸銀、ネオデカン酸銀、ビス(アセチルアセトナト)銅、安息香酸銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酢酸銅、
水酸化銅、炭酸銅、酸化金、酸化白金、ビス(アセチルアセトナト)白金、酸化パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、酸化ロジウム、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、オクタン酸ロジウム(II)、酢酸ロジウム(II)、アセチ
ルアセトナト(η4−1、5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、酸化イリジウム、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、酸化ルテニウム、酸化鉄、酢酸鉄、
シュウ酸鉄、水酸化鉄、酸化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、水酸化ニッケルの群から選択可能であり、2種類以上組み合わせて使用することも可能である。2種類以上の金属化合物を用いた場合、金属種の組み合わせによっては合金微粒子を得ることができる。これらの金属化合物は、組成として不純物を含むものではないが、不純物を含む原料から合成されたものである場合、極微量の不純物を含有するものと考えられる。しかし、含有する不純物量が極微量であるため、後述する精製工程により0.1mass%未満まで除去されることが可能である。
金属化合物の添加量は、上述した金属濃度の式において、金属濃度の値が1〜90mass%の範囲となるように、設定することが好ましい。その理由は、金属化合物中に含まれる金属化合物の質量を計算すると、金属濃度が90mass%未満であるものが多く、そのような金属化合物を用いた場合、90mass%を超える金属濃度で合成することは理論上不可能であるためである。さらに、金属微粒子を合成するためには、還元剤と保護剤が必要であり、化学量論上、金属化合物の還元に必要な還元剤量と、金属微粒子表面を保護する保護剤量を計算していくと、金属濃度の上限は90mass%であり、実験上も90mass%を超えるような条件では金属化合物が還元せず残存する結果や、あるいは粗大な金属粒子が生成する結果となる。他方、1mass%未満では、単位時間の金属微粒子製造量が従来の液相法と変わらないため、金属微粒子が高価となる虞がある。使用する金属化合物や還元剤、保護剤の組み合わせにもよるが、微細な金属微粒子を高収率で得るためには、金属濃度を1〜65mass%の範囲にすることがより好ましい。
次に、不均一固液系を加熱して、液相中に分散する金属化合物から金属核を還元析出させ、金属核を凝集させるとともに保護剤で被覆して、金属微粒子を形成する。具体的には、加熱することによって、不均一固液系では、アミン化合物などの還元剤が作用して、還元反応が生じる。還元反応により、金属化合物中の金属原子の化学結合が切断され、金属イオンが生成する。生成された金属イオンは還元されて金属核となる。本実施形態においては、従来のように、金属化合物を液相に溶解して均一な金属イオン溶液とはせずに、液相中で固体の金属化合物を還元して、金属化合物から直接、金属核を生成している。生成された金属核は凝集して金属微粒子に成長する。その一方で、液相中の保護剤は、成長した金属微粒子の表面に吸着し、その成長を抑制して、微粒子の粒子径を制御する。そして、生成される金属微粒子は、アミン化合物などの保護剤で表面が被覆されており、凝集や融着をせず、安定した状態となっている。
上述した生成工程においては、金属微粒子に含まれることになる不純物が発生する。不純物としては、(1)原料物に由来する不純物、(2)余った原料物(金属化合物、還元剤、保護剤など)、(3)酸と塩基の保護剤による反応物、などが考えられる。(1)の不純物は、金属化合物などに含まれる極微量のハロゲン、硫黄、リンなどを含む。(2)の不純物は、未反応の原料物であって、炭素、水素、酸素、窒素などの元素からなる有機物である。(3)の不純物は、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物を併用した場合に生じる塩またはアミド化合物である。生成工程において生じる不純物の大部分は(2)および(3)の不純物である。
これら(1)〜(3)の不純物は、液相で生成される金属微粒子に含まれることになり、金属微粒子の表面に付着する、または金属微粒子を被覆する保護剤により金属微粒子に取り込まれるものと考えられる。不純物は、1種類とは限らず、2種類以上の物質を含む
場合がほとんどであり、親水性と親油性との不純物が混合して生成される場合もある。
金属微粒子の生成に際して用いる熱源は、特に限定されないが、ヒーターによる外部加熱以外にも、超音波や電磁波(紫外線ランプ、レーザー、マイクロ波など)を好適に用いることができる。
ヒーターなどの熱伝導を利用した加熱法の場合、金属化合物(固体)と液相(還元剤や保護剤)とはある一定の温度に均一に加熱され、ある瞬間、金属化合物が還元し、金属核が生成する。生成した金属核は、液相の温度によって決定される移動度で動き回り、周囲の金属核と衝突することで成長していく。同時に金属核の表面に保護剤の吸着反応が起こるため、金属核はある大きさで金属微粒子として安定化する。
電磁波の場合、金属化合物と液相とが共存している不均一固液系に電磁波を印加すると、固体と液相では応答性が異なる。具体的には、金属化合物と液相とのエネルギー吸収の違いから、両者の間では瞬間的な温度勾配が生まれる。液相温度よりも金属化合物の表面温度が大きくなると、金属化合物の表面からの金属核生成が起こっても、液相温度が低いために金属核が移動しにくく、金属核どうしの衝突頻度が減少する。その結果、金属核の成長が進まず、微細な金属微粒子を得ることができる。
超音波の場合、不均一固液系に超音波を照射すると、キャビテーションと呼ばれる微小な気泡が発生し、そのキャビテーションは準断熱的な膨張と圧縮を繰り返し、最終的に圧壊する。その過程でキャビテーションそれ自体は非常に高温・高圧となっており、さらに圧壊の際は衝撃波やジェット流も生じる。溶液中に金属化合物が存在した場合、還元剤の成分を含んだキャビテーションと金属化合物の接触界面を反応場として、次のような機構で金属化合物の還元反応が起こる。まず、キャビテーションと金属化合物が接触すると、還元剤のガスを含んだキャビテーションの高温により金属化合物が還元し、金属核が生成する。キャビテーションの生成から消滅までの時間はおよそ10−6秒オーダーと非常に短時間であるため、金属核は生成直後にキャビテーションの高温から溶液温度まで急冷されることになる。すなわち、金属化合物の表面温度>液相温度の状態がごく短時間に実現する。そのため、金属核の移動度は低く、金属核どうしの衝突頻度が減少する。その結果、金属核の成長が進まず、微細な金属微粒子を得ることができる。
金属微粒子の生成工程における加熱温度は、金属化合物、還元剤、および保護剤の添加量や種類によって適宜選択することができる。実験上の目安としては、金属化合物の分解温度を超えない温度であり、かつ、液相成分(還元剤や保護剤)の沸点を超えない温度であることが好ましい。金属化合物の分解温度を超える温度では、金属化合物の分解・還元が急進的に起こり、金属微粒子が粗大化する虞がある。液相成分の沸点を超える温度では、液相成分の蒸発により還元反応が起こりにくくなる虞や、保護剤の金属微粒子表面に対する保護剤が不足する虞がある。
また、金属微粒子の生成工程における合成時間は、金属化合物の還元が完了する時間とすればよい。合成時間を過剰に長くすることは、金属微粒子が粗大化する虞があるため、好ましくない。また、金属微粒子製造時の雰囲気としては、製造する金属微粒子の種類に応じて適宜選択することができる。貴金属(Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、Irなど)の微粒子を製造する場合、貴金属自体は酸化しないため、大気中雰囲気で製造可能である。しかし、貴金属以外の金属微粒子を製造する場合、金属微粒子の酸化を防ぐ目的で、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気にすることが好ましい。
次に、金属微粒子の精製工程を行う。精製工程では、水および有機溶媒の混合溶媒を用いて、表面が保護剤で被覆された金属微粒子を精製して、金属微粒子に含まれる不純物を除去する。上述したように、不純物としては、(1)原料物に由来する不純物、(2)余った原料物、(3)酸と塩基の保護剤による反応物の3つが考えられる。この3つの不純物は親水性または親油性であって、水または有機溶媒に溶解する。また、3つの不純物が
混ざった混合物であっても、水および有機溶媒の混合溶媒に溶解する。つまり、水および有機溶媒の混合溶媒で金属微粒子を精製することにより、それぞれに溶解性を示す不純物が除去されることになる。
具体的に説明すると、(1)の不純物は、金属化合物に由来するアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを含有する場合があるが、混合溶媒で除去されて、その含有量が低減される。(2)および(3)の不純物は、炭素、水素、酸素、窒素などの元素からなる有機物であるため、混合溶媒で十分に除去される。特に、(3)の不純物は、アミン化合物およびカルボン酸化合物を選択した場合に生じる塩またはアミド化合物であるため、水への溶解性が高く、好適に除去される。したがって、混合溶媒による精製で、ハロゲンなどを含む不純物、親水性の不純物、および親油性の不純物はそれぞれ除去されることになる。なお、混合溶媒に溶解しない不純物としては、未反応の金属化合物が考えられるが、金属化合物と金属微粒子との粒子サイズの違いを利用して、容易に分離することができる。
精製工程は、水および炭素数6以下の有機溶媒の混合溶媒中で精製することが好ましい。炭素数6以下の有機溶媒を用いることにより、水と有機溶媒とを好適に混合することができる。
本実施形態の金属微粒子の製造方法は、金属化合物を液相に溶解させず、固体状態で分散する金属化合物から金属核を生成し、金属微粒子を製造している。また、生成した金属微粒子を、水および有機溶媒の混合溶媒で精製して、製造の際に金属微粒子に含まれることになるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンの不純物を除去している。
本実施形態の製造方法によれば、金属化合物を溶解させないため、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンの不純物を多量に含む特定の金属化合物や還元剤を用いる必要性がない。つまり、原料物に由来するハロゲンなどの不純物の混入量を低減することができる。
しかも、水および有機溶媒の混合溶媒で精製することによって、金属微粒子中に含まれる不純物を低減し、その不純物量を金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満とすることができる。さらに、塩またはアミド化合物を生成する保護剤の組み合わせであっても、塩などを好適に除去できるので、保護剤の組み合わせの選択において過度に制限されない。しかも、液相中で金属化合物から金属核を生成するため、製造時の金属濃度を非常に高くすることが可能であり、単位時間あたりの製造量を増加させ、安価に金属微粒子を生成できる。
(金属微粒子)
続いて、本発明の一実施形態にかかる金属微粒子について説明する。
本実施形態の金属微粒子は、上記金属微粒子の製造方法などにより製造される金属微粒子であって、保護剤としてアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類で表面が被覆されており、金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満となっている。この構成によれば、金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの不純物の合計含有量が少なく、焼成に際して、金属微粒子が焼結しやすい。
上記金属微粒子において、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物で表面が被覆されていることが好ましい。この理由は以下に示すようになる。カルボン酸化合物やアミン化合物などの保護剤は、金属微粒子を微細な状態で被覆して安定化させることが要求されている。それとともに、金属微粒子の焼成時には、低い焼成温度で金属微粒子の表面から速やかに脱離することが要求されている。高い温度で安定な保護剤では、焼成時に金属微粒子表面に残存しやすく、形成される金属被膜に残存してしまう。その結果、形成
される金属被膜の導電性などの特性を悪化させる。この点、保護剤として、アミン化合物およびカルボン酸化合物で被覆される金属微粒子は、焼成時に、カルボン酸化合物とアミン化合物とのアミド形成反応が起こり、2つの保護剤の脱離が促進される。また、保護剤の脱離が促進されるため、焼成温度を低減することができる。
金属微粒子は、平均粒子径が1nm以上1000nm以下、特に1nm以上100nm以下であることが好ましい、この大きさの金属微粒子であれば、融点降下現象により低温で焼結することができる。金属微粒子としては、金、銀、銅、白金、またはパラジウムであることが好ましい。
(金属ペースト)
上記金属微粒子を含む金属ペーストの一実施形態について説明する。本実施形態の金属ペーストは、上記金属微粒子と溶剤組成物とを含有しており、低温焼結性の金属ペーストとして利用することができる。
金属微粒子の含有量は、金属ペースト全質量に対して5mass%以上90mass%以下の範囲とすることが好ましい。金属微粒子の含有量が5mass%未満となると、金属ペーストを焼成した際に、割れや空孔の少ない平滑な金属被膜を得るのが困難となる。他方、金属微粒子の含有量が90mass%よりも多くなると、金属ペーストの粘度が非常に高くなり、塗布性に支障をきたすおそれがある。また、金属ペーストは焼成時に溶剤組成物や保護剤の除去に伴う体積収縮が起こるため、それを考慮し、金属微粒子の含有量は、30mass%以上80mass%以下の範囲とすることがさらに好ましい。この数値範囲とすることによって、平滑な金属被膜を得ることができる。なお、金属ペーストの含有量は、目的の金属被膜厚さやペースト粘度に応じて適宜調整することが可能である。
溶剤組成物は、金属ペーストをコーティングに適した粘度に調整するのに用いられる。溶剤組成物としては、金属微粒子を被覆する保護剤との親和性を有するものであって、室温で容易に蒸発しない、比較的高沸点な低極性溶剤あるいは非極性溶剤であることが好ましい。例えば、水、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、アミン類、単糖類、多糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類の群から選択することが可能であり、複数の溶剤を組み合わせて使用することも可能である。より具体的には、炭素数8〜16個のノルマルの炭化水素やトルエン、キシレン、1−デカノール、テルピネオールなどが好適に用いることが可能である。なお、金属ペーストの成型性、粘度などを調節する目的で、溶剤組成物中にワックスや樹脂を添加剤として微量に加えることも可能である。また、焼成時に保護剤をできるだけ速やかに脱離させるため、保護剤の脱離剤を加えても良い。
本実施形態の金属ペーストによれば、金属微粒子に含まれる不純物が少なく、焼結性に優れている。
(金属被膜)
上述した金属ペーストを焼成し、保護剤を脱離させるとともに、金属微粒子を融着させることによって、金属被膜が得られる。金属微粒子は不純物量が少なく、焼結性に優れるため、上記金属ペーストから形成される金属被膜は、残存する不純物が少なく、体積抵抗率が小さく、導電性に優れている。
以下の方法および条件で、本発明にかかる実施例の金属微粒子を製造した。これらの実施例は,本発明にかかる金属微粒子の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(実施例1)
実施例1では、保護剤としてのアミン化合物およびカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu・1.5HO(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤および保護剤としてトリエチルアミン(分子量:101.1g/mol)を10.8g(物質量:0.11mol)、保護剤としてビス
(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を4.95g(物質
量:0.021mol)、保護剤として酢酸(分子量:60.05g/mol)を0.645g(物質量:0.011mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約19.8mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au・1.5HOを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで未反応のAu・1.5HO粒子や粗大なAu金属微粒子を取り除いた。回収した濾液に、水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子表面の過剰なトリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、および酢酸などを除去することでAu金属微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収し、40℃で1時間乾燥することで、実施例1の金属微粒子を得た。実施例1の金属微粒子の製造条件を表1に示す。
実施例1で得られた金属微粒子の物性を、以下の測定方法によって評価した。
XRD測定により金属微粒子の定性分析を行った。粉末X線回折装置「RINT2000」(株式会社リガク製)を用いて、Au金属微粒子粉末のXRD測定を行って、金属微粒子の相を同定した。その結果、Au金属微粒子は、面心立法格子構造(fcc)を有するAu金属であることが確認された。図1において、2θ=38.2°のピークは(111)面、44.4°のピークは(200)面、64.6°のピークは(220)面、77.5°のピークは(311)面、81.7°のピークは(222)面に対応している。
保護剤成分の同定として、Au金属微粒子の表面の分析を行った。保護剤成分の同定には、IR測定(JASCO製、FTIR−615)、GC−MS測定(島津製作所製GC−17A/PQ5050A)、NMR測定(日本電子製、ECA−500)を行った。IR測定を行ったところ、アミン基に帰属するピークが3400cm−1、1650cm−1付近に確認された。また、GC−MS測定したところ、図2に示すように、保護剤の成分として、ジメチルアミン、エチルアミン、および酢酸が検出された。なお、ジメチルアミンおよびエチルアミンは、保護剤のトリエチルアミンからの誘導体である。また、NMR測定の結果、図3に示すように、保護剤のビス(2−エチルヘキシル)アミンに由来するピークが検出された。以上より、実施例1のAu金属微粒子は、その表面がトリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、および酢酸で被覆されていることが確認された。
FE−SEM(日立製、S−5000)を用いて、金属微粒子の観察を行った。実施例1のAu金属微粒子をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、赤色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、図4に示すように、粒子径8〜12nmのAu金属微粒子が確認された。
金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について、イオンクロマトグラフィー(ダイオネクス製、DX−100)、またはICP発光分光分析(パーキンエルマー製、OPTIMA−3300XL)により定量的に評価した。実施例1で得られたAu金属微粒子を、その含有量が40mass%となるように、n−ヘキサンに分散し、溶液成分を分析した。この結果から、Au金属微粒子粉末中には、Clが0.025mass%、Naが0.02mass%と含有されていた。また、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。本実施例においては、組成としてアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンを含まない原料物を用いているにも関わらず、微量の不純物が検出された。これは、金属化合物として用いた酸化金が塩化金から合成されたものであり、極微量のハロゲンが検出されたためである。同様に、検出されたNaも原料物に由来するものと考えられる。しかし、混合溶媒による精製によって、金属微粒子に含まれることになる不純物の含有量を0.1mass%未満としている。
続いて、実施例1で作製したAu金属微粒子粉末(平均粒子径:約9nm)を2.0g、溶剤としてペンタデカン3.2g、展開溶媒としてn−ヘキサン3.4g、ドデシルアミン0.6g、ノネニル無水こはく酸0.41gを混合し、減圧蒸留(20℃、4mmHg)によって、n−ヘキサン溶媒を除去することでAuペーストを調整した。調整されたAuペーストの粘度は約10mPa・sであり、Au含有量は32mass%であった。
調整されたAuペーストを用いて、Au金属被膜を製造した。Auペーストをガラス基板上にスピンコート塗布し、温度250℃で60分間焼成することによって、Au金属被膜を製造した。製造されたAu金属被膜は、4探針電気抵抗測定装置を用いて、その体積
抵抗率が測定された。得られたAu金属被膜の体積抵抗率は約5.2μΩcmであった。Au金属微粒子は不純物の含有量が少なく焼結性に優れている。この金属微粒子から形成された金属被膜は残存する不純物が少なく、また体積抵抗率が小さく導電性に優れていた。また、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物で被覆されているため、焼成に際してアミド形成反応が起こり、低温で焼成できた。
なお、実施例1では保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物を併用するため、金属微粒子の生成に際して塩またはアミド化合物が生成し、金属微粒子に含まれるものと考えられる。しかし、形成された金属被膜の体積抵抗率が低いことを考慮すれば、混合溶媒の精製によって、金属微粒子の生成の際に生じる塩またはアミド化合物が除去されて、その含有量が少ないことがわかる。以上で測定された結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例2では、保護剤としてのアミン化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAgO(式量:231.72g/mol)を5.0g(含有Ag重量:4.65g)、還元剤及び保護剤としてジプロピルアミン(分子量:101.1g/mol)を6.55g(物質量:0.0648mol)、保護剤としてドデシルアミン(
分子量:185.35g/mol)を3.98g(物質量:0.0215mol)混合し
、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAg金属の濃度は、約29.9mass%である。この混合溶液を攪拌しながら、90℃で1時間加熱し、AgOを還元させ、Ag金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで未反応のAgO粒子や粗大なAg微粒子を取り除いた。回収した濾液に、水100gとメタノール500gを添加し、Ag金属微粒子表面の過剰なドデシルアミンとジプロピルアミンを除去することでAg金属微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Ag金属微粒子粉末を回収し、40℃で1時間乾燥させることで、実施例2のAg金属微粒子粉末を得た。
実施例2で得られたAg金属微粒子を、実施例1と同様にして測定し評価した。
Ag金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAg金属であることが確認された。図5において、2θ=37.9°のピークは(111)面、43.7°のピークは(200)面、64.2°のピークは(220)面、77.2°のピークは(311)面、81.4°のピークは(222)面に対応している。
Ag金属微粒子の表面を被覆する保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、アミン基に帰属するピークが3400cm−1、1650cm−1付近に確認された。また、GC−MS測定したところ、ジプロピルアミンおよびドデシルアミンが検出された。この結果から、製造したAg金属微粒子は、ジプロピルアミンおよびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このAg金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黄色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、図6に示すように、粒子径10〜15nmのAg金属微粒子が確認された。
Ag金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Ag金属微粒子粉末中に、Na成分は0.025mass%含有され、ハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例2で作製したAg金属微粒子を用いて、Agペーストを調整した。調整されたAgペーストの粘度は約10mPa・sであり、Au含有量は32mass%であった。このAgペーストを用いて、Ag金属被膜を製造したところ、製造されたAg金属被膜は、体積抵抗率が約2.9μΩcmであった。なお、実施例2では、保護剤としてアミン化合物のみを用いているため、塩などの生成がなく、金属微粒子に含まれることはない。
(実施例3〜5、比較例1〜5)
実施例3〜5では、表1に示すように、実施例1または実施例2の金属化合物、還元剤、または保護剤の種類を変更して、金属微粒子を製造した。また、比較例1〜5では、金属化合物、還元剤、保護剤、または精製条件を変更して、金属微粒子を製造した。
(実施例3)
金属酸化物としてPtO(式量:227.08g/mol)を5.0g(含有Pt重量:4.28g)、還元剤としてエタノール(分子量:46.07g/mol)を5.08g(物質量:0.11mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35
g/mol)を4.08g(物質量:0.022mol)混合し、100mlのナス型フ
ラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるPt金属の濃度は、約30.2mass%である。この溶液を攪拌しながら、60℃で2時間加熱し、PtOを還元させ、Pt金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例3のPt金属微粒子を得た。
実施例3で得られたPt金属微粒子を、実施例1と同様に測定し評価した。
Pt金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するPt金属であることが確認された。Pt金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピーク、アミン基に帰属する3400cm−1、1650cm−1付近のピークが確認された。また、GC−MS測定したところ、エタノール、酢酸(エタノールの酸化物)、およびドデシルアミンが検出された。以上より、製造されたPt金属微粒子は、エタノール、酢酸、およびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このPt金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径2〜10nmのPt金属微粒子が確認された。
Pt金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Pt金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.005mass%含有され、Cl以外のハロゲン、アルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例3で作製したPt金属微粒子を用いて、Ptペーストを調整した。調整されたPtペーストの粘度は約10mPa・sであり、Pt含有量は32mass%であった。このPtペーストを用いて、Pt金属被膜を製造したところ、製造されたPt金属被膜は、体積抵抗率が約10.5μΩcmであった。
(実施例4)
ビス(アセチルアセトナト)パラジウムとしてPd(C(式量:304.4g/mol)を5.0g(含有Pd重量:1.75g)、還元剤及び保護剤としてビス(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を19.8g(物
質量:0.082mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35g/mol)を3.03g(物質量:0.0163mol)混合し、100mlのナス型フラス
コ中に加えた。この溶液中に含まれるPd金属の濃度は、約6.28mass%である。この溶液を攪拌しながら、200℃で3時間加熱し、Pd(Cを還元させ、Pd金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例4のPd金属微粒子を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例4のPd金属微粒子を得た。
実施例4で得られたPd金属微粒子を、実施例1と同様に測定し評価した。
Pd金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するPd金属であることが確認された。Pd金属微粒子表面の保護剤成分の分析として、IR測定を行ったところ、アミン基に帰属するピークが3400cm−1、1650cm−1付近に確認された。また、GC−MS測定したところ、ドデシルアミンが検出された。また、NMR測定の結果、保護剤のビス(2−エチルヘキシル)アミンに由来するピークが検出された。以上より、製造したPd金属微粒子は、ビス(2−エチルヘキシル)アミンおよびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このPd金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜30nmのPd金属微粒子が確認された。
Pd金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Pd金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.0275mass%、Na成分は0.025mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例4で作製したPd金属微粒子を用いて、Pdペーストを調整した。調整されたPdペーストの粘度は約10mPa・sであり、Pd含有量は32mass%であった。このPdペーストを用いて、Pd金属被膜を製造したところ、製造されたPd金属被膜は、体積抵抗率が約11.5μΩcmであった。
(実施例5)
ビス(アセチルアセトナト)銅としてCu(C(式量:261.5g/mol)を5.0g(含有Cu重量:1.21g)、保護剤及び還元剤としてビス(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を23.1g(物質量:0
.095mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35g/mol)を1.41g(物質量:0.019mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加え
た。この溶液中に含まれる金属銅の濃度は、約3.84mass%である。この溶液を窒素雰囲気中、攪拌しながら、220℃で3時間加熱し、Cu(Cを還元させ、ドデシルアミンおよびビス(2−エチルヘキシル)アミンで被覆されたCu金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例5のCu金属微粒子を得た。
実施例5で得られたCu金属微粒子を、実施例1と同様に測定し評価した。
Cu金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、図7に示すように、面心立方格子構造(fcc)を有するCu金属であることが確認された。Cu金属微粒子表面の保護剤成分の分析として、IR測定、GC−MS測定、およびNMR測定を行ったところ、実施例4と同様に、製造されたCu金属微粒子は、ビス(2−エチルヘキシル)アミンおよびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このCu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、緑色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、図8に示すように、粒子径50〜150nmのCu金属微粒子が確認された。
Cu金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Cu金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.005mass%含有され、Cl以外のハロゲン、アルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例5で作製したCu金属微粒子を用いて、Cuペーストを調整した。調整されたCuペーストの粘度は約10mPa・sであり、Cu含有量は32mass%であった。このCuペーストを用いて、Cu金属被膜を製造したところ、製造されたCu金属被膜は、体積抵抗率が約8.0μΩcmであった。
(実施例6)
実施例6では、保護剤としてカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu・1.5HO(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤としてエタノール(分子量:46.07g/mol)を5.08g(物質量:0.11mol)、保護剤として酢酸(分子量:60.0
5g/mol)を6.45g(物質量:0.107mol)混合し、100mlのナス型
フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約25.6mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au・1.5HOを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例6のAu金属微粒子を得た。
実施例6で得られたAu金属微粒子を、実施例1と同様に測定し評価した。
Au金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAu金属であることが確認された。Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピークが確認された。GC−MS測定したところ、エタノール、酢酸(エタノールの酸化物)が検出された。以上より、製造されたAu金属微粒子は、エタノールおよび酢酸で被覆されていることが確認された。
このAu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜15nmのAu金属微粒子が確認された。
Au金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Au金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.025mass%、Na成分は0.02mass%含有されたが、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例6で作製したAu金属微粒子を用いて、Auペーストを調整した。このAuペーストを用いて、Au金属被膜を製造したところ、製造されたAu金属被膜は、体積抵抗率が約6.0μΩcmであった。なお、実施例6では、保護剤として、カルボン酸化合物のみを用いているため、塩などの生成がなく、金属微粒子に含まれることはない。
(実施例7)
実施例7では、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu・1.5HO(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤および保護剤としてトリエチルアミン(分子量:101.1g/mol)を10.8g(物質量:0.11mol)、保護剤としてビス
(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を4.95g(物質
量:0.021mol)、保護剤として酪酸(分子量:88.11g/mol)を0.645g(物質量:0.007mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約19.8mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au・1.5HOを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例7のAu金属微粒子を得た。
実施例7で得られたAu金属微粒子を、実施例1と同様に測定し評価した。
Au金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAu金属であることが確認された。Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピーク、アミン基に帰属する3400cm−1、1650cm−1付近のピークが確認された。また、GC−MS測定したところ、トリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、酪酸が検出された。以上より、製造されたAu金属微粒子は、トリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、および酪酸で被覆されていることが確認された。
このAu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得
られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜12nmのAu金属微粒子が確認された。
Au金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Au金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.025mass%、Na成分は0.02mass%含有されたが、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
続いて、実施例1と同様にして、実施例7で作製したAu金属微粒子を用いて、Auペーストを調整した。このAuペーストを用いて、Au金属被膜を製造したところ、製造されたAu金属被膜は、体積抵抗率が約5.3μΩcmであった。
(比較例1)
比較例1は、金属微粒子の除去工程において、メタノールのみで精製した点が実施例1と異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
実施例1と同様にして、比較例1のAu金属微粒子を測定し評価した。その結果、比較例1のAu金属微粒子は、実施例1のAu金属微粒子と比較して、不純物量が増加していた。その他の測定においては、差異が確認されなかった。表2に示すように、比較例1のAu金属微粒子は、Clが0.075mass%、Naが0.06mass%含有されており、実施例1(Cl:0.025mass%、Na:0.02mass%)よりも増加していた。なお、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、およびリンは実施例1と同様に検出されなかった。
この結果は、比較例1が、除去工程において、メタノールだけを用いており、水とメタノールとを用いなかったためである。すなわち、ClやNaを含む不純物のうち、非水溶性の不純物は、エタノールで精製され除去されたが、水溶性の不純物が除去されず、金属微粒子に含まれたため、不純物量が増加した。また、結晶性の有機物が残存した。
比較例1のAu金属微粒子を金属ペーストに用いて、金属被膜を製造したところ、表2に示すように、得られたAu金属被膜は、体積抵抗率が約20.8μΩcmであった。比較例1では、水溶性の不純物が残存し、不純物量が増加したため、形成された金属被膜の体積抵抗率が低下した。しかも、比較例1では、実施例1と同様に、保護剤による、塩またはアミド化合物の発生が考えられるが、水による精製を行っていないため、塩またはアミド化合物の除去がなされず、金属微粒子中に残存したものと推測される。そして、金属微粒子に含まれる不純物が増加したため、金属被膜の体積抵抗率が低下したものと考えられる。
(比較例2)
比較例2は、実施例1での金属微粒子の精製工程において、水のみで精製した点が実施例1と異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
製造されたAu金属微粒子を、実施例1と同様に測定し、評価した。その結果、XRD測定によれば、面心立法格子構造(fcc)を有する金属金のピークと、Au金属以外のピーク(おそらく水で除去できなかった過剰のビス(2−エチルヘキシル)アミン)と、が確認された。
また、表2に示すように、比較例2のAu金属微粒子は、Cu金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.115mass%、Na成分は0.095mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。比較例2は、水のみで精製工程を行っており、ヘキサンやメタノールなどの有機溶媒による精製工程を行っていない。このため、水に溶解しないビス(2−エチルヘキシル)アミンが残存しており、さらにClやNaの残量も多くなっている。
(比較例3)
比較例3は、実施例1の還元剤または保護剤を過酸化水素に変更した点だけが異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu・1.5HO(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、水(式量:18g/mol)を5.0g(物質量:0.
278mol)、還元剤として過酸化水素(式量:34g/mol)を1.46g(物質量:0.043mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約36.9mass%である。この溶液を攪拌しながら、40℃で10分間加熱し、Au・1.5HOを還元させた。Au金属微粒子の塊(数mm)が析出した。この溶液に、水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子を精製した。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収した。このAu金属微粒子粉末を40℃で1時間乾燥した。
実施例1と同様に測定したところ、Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定では、特徴的なピークは確認できなかった。GC−MS測定したところ、水やメタノールが検出された。この結果から、製造したAu金属微粒子表面は、保護剤(アミン化合物やカルボン酸化合物)で被覆されておらず、水やメタノールが微量に吸着していることが確認された。
また、表2に示すように、比較例3のAu金属微粒子は、Au金属微粒子粉末中に、Clが0.025mass%、Naが0.02mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
このAu金属微粒子粉末のペースト化を試みたが、Au金属微粒子が粗大すぎるために溶剤組成物中に均一に分散しなかった。また、このペーストのスピンコート塗布も試みたが、連続したペースト膜を形成することができなかった。
(比較例4)
比較例4は、実施例1の還元剤または保護剤を酢酸に変更した点だけが異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu・1.5HO(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、保護剤として酢酸(分子量:60.05g/mol)を6.45g(物質量:0.107mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約36.9mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱したが、Au・1.5HOが沈殿したままであり、変化が観察されなかった。沈殿している粉末のXRD測定を行ったところ、Au・1.5HOであることが確認され、Au金属微粒子は生成していなかった。これは、液相に還元剤が添加されず、金属核の生成および金属微粒子への核成長が起きなかったためである。
(比較例5)
比較例5では、上述した錯体分解法により金属微粒子を製造した(特許文献4、特開2007−63579の実施例1を参照)。
金属錯体として、AuCl(S(CH)を0.295g(含有Au重量は0.197g、物質量:0.001mol)、ヘキサデシルアミンn−C1633NHを2.41g(物質量:0.01mol)混合し、パイレックス(登録商標)製三つ口フラスコに入れた。混合溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約2.55mass%である。この混合溶液を攪拌しながら、120℃で1時間加熱し、AuCl(S(CH)を還元させ、ヘキサデシルアミンで被覆されたAu金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで、未反応のAuCl(S(CH)粒子や粗大な金微粒子を取り除いた。回収した濾液に水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子表面の過剰なヘキサデシルアミンを除去することで金微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収した。
Au金属微粒子粉末を40℃で1時間乾燥させた。
このAu金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、(fcc)構造を有するAu金属であることが確認された。
このAu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、赤色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し、室温で乾燥した後に、FE−SEMにより観察したところ、粒子径5〜20nmのAu金属微粒子が確認された。
また、Au金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、表2に示すように、比較例5のAu金属微粒子は、Au金属微粒子粉末中に、Cl成分が1.25mass%、S成分が3mass%含有されていた。また、Cl以外のハロゲン、アルカリ金属、リンは検出されなかった。比較例5では、混合溶媒の精製による除去工程を行っているが、S(硫黄)を含む金属錯体を用いているため、形成される金属微粒子に含まれる不純物量が0.1mass%以上となっている。このことから、原料物に不純物を含む場合では、精製工程による除去では、金属微粒子に含まれる不純物(硫黄など)を十分に除去することは困難であることがわかった。
比較例5のAu金属微粒子を実施例1と同様に、Auペーストに調整し、調整されたAuペーストによりAu金属被膜を製造したところ、得られたAu金属被膜の体積抵抗率は約29μΩcmであった。
以上の結果から、比較例5で製造したAu金属微粒子の表面には、原料であるAuCl(S(CH)由来のClやSなどが付着していたが、その除去は困難であった。そして、Au金属微粒子に含まれる不純物量が多くなったため、Au金属微粒子の焼結性が悪化し、製造されるAu金属被膜の体積抵抗率が高くなったものと考えられる。比較例5と実施例1とを比較すると、実施例1の金属微粒子の方が、不純物量が少なく、焼結性に優れており、製造される金属被膜の体積抵抗率が優れていることがわかった。

Claims (10)

  1. 保護剤で表面が被覆された金属微粒子であって、
    前記保護剤がアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類から選択され、
    前記金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が前記金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満であることを特徴とする金属微粒子。
  2. 請求項1に記載の金属微粒子において、前記保護剤が、アミン化合物およびカルボン酸化合物からなることを特徴とする金属微粒子。
  3. 請求項1または2に記載の金属微粒子において、前記アミン化合物が、一般式NH、NHR、またはNRで表される脂肪族アミン化合物であることを特徴とする金属微粒子。
    ただし、式中R、R、及びRは、炭素数2〜16のアルキル基を示す。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子が、金、銀、銅、白金、またはパラジウムのうち少なくともいずれか1種類の金属からなることを特徴とする金属微粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の金属微粒子と、溶剤組成物と、を含むことを特徴とする金属ペースト。
  6. 請求項5に記載の金属ペーストにおいて、前記溶剤組成物が、水、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、アミン類、単糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類のうちいずれか1種類、またはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする金属ペースト。
  7. 請求項5または6に記載の金属ペーストを焼結させて形成されることを特徴とする金属被膜。
  8. 還元剤および保護剤を含む液相中に固体状態で分散する金属化合物から金属核を還元析出させ、該金属核を凝集させるとともに前記保護剤で被覆して、金属微粒子を生成する生成工程と、
    前記金属微粒子に含まれる不純物であるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを除去する精製工程と、
    を含む金属微粒子の製造方法であって、
    前記金属微粒子の質量に対する前記不純物の合計含有量が0.1mass%未満となるように、
    前記生成工程では、前記還元剤および前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類を用い、
    前記精製工程では、水および有機溶媒の混合溶媒を用いた
    ことを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  9. 請求項8に記載の金属微粒子の製造方法において、前記生成工程では、前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物およびカルボン酸化合物を用いることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の金属微粒子の製造方法において、前記金属化合物が金属酸化物であることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
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