JP2013072091A - 金属微粒子およびその製造方法、金属微粒子を含む金属ペースト、並びに金属ペーストから形成される金属被膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】保護剤で表面が被覆された金属微粒子であって、前記保護剤がアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類から選択され、前記金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が前記金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満の金属微粒子である。
【選択図】図1
Description
容積および反応時間あたりの金属微粒子の製造量が低い。しかも、1台の製造装置で複数種類の金属微粒子を製造すると、ある金属微粒子が他の金属微粒子の不純物となってしまうため、1台の装置に対し1種類の金属微粒子を製造することが要求される。以上から、気相法は、装置価格が高く、製造量が低いため、他の製造方法と比較して製造コストが非常に高い。
さらに液相法では、金属微粒子の析出後の液相中に、還元剤などの液相の組成物に由来するカチオン(例えば、アルカリ金属のイオン)や、原料の金属化合物に由来するアニオン(例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等)が残存する。これらの残存物は除去が困難であるため、製造される金属微粒子に不純物として含まれこととなり、金属微粒子の純度が低下する。金属微粒子は、不純物の混入にともない、特性が悪化する。
スト上昇は避けられない。このように、特許文献4では、金属微粒子の製造コストをある程度低減できるものの、得られる金属微粒子の特性は不十分となる。
以下に、本発明の一実施形態にかかる金属微粒子の製造方法について説明する。本実施形態にかかる金属微粒子の製造方法は、上述した不均一固液法を用いる。
プロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、オクチルジプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、フェニルジエタノールアミン、トリルジプロパノールアミン、キシリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等があり、異なるアミン化合物を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
金属濃度(mass%)=金属質量(g)×100(mass%)/反応溶液の質量(g)
上記式において、反応溶液は、金属化合物を含む液相を示しており、液相には金属化合物以外に、還元剤、保護剤、または溶媒などが含まれる場合がある。金属濃度が低いと、反応溶液に対して、形成される金属微粒子の量が低く、製造量が少ないことを示す。
保護剤の添加量は、形成される金属微粒子の表面を被覆するのに必要な量が算出されて決定される。すなわち、所定の粒子径の金属粒子が所定量生成すると仮定した場合、金属微粒子の表面積を覆うのに必要な保護剤の吸着面積を考慮することで決定することができる。保護剤を還元剤としても使用する場合(例えばアミン化合物を還元剤としても使用する場合)は、金属化合物の還元に必要な量も考慮し、添加量を決定する。この時、上記式の金属濃度が1〜90mass%の範囲となるように適宜調整される。より好ましくは、金属濃度の値が1〜65mass%の範囲となるように設定される。金属濃度が90mass%を超えるような条件では、金属化合物に対して保護剤が少なく、化学量論上、金属化合物を還元し、吸着するのに必要な量が確保できなくなり、粗大な金属粒子が生成する虞がある。他方、1mass%未満では、金属化合物に対して保護剤が過剰であり、単位時間の金属微粒子製造量が従来の均一な金属イオン溶液による製造量と変わらないため、製造コストが高くなる。
施形態においては、液相中に金属化合物を固体状態で分散させ還元するため、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、リンを含まず、金属化合物に対する還元性を示す化合物を好適に用いることができる。なお、保護剤としてアミン化合物を用いる場合は、アミン化合物が還元剤としても作用するため、還元剤を用いる必要性がない。
金属化合物としては、例えば、酢酸銀、酸化銀、炭酸銀、オレイン酸銀、ネオデカン酸銀、ビス(アセチルアセトナト)銅、安息香酸銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酢酸銅、
水酸化銅、炭酸銅、酸化金、酸化白金、ビス(アセチルアセトナト)白金、酸化パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、酸化ロジウム、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、オクタン酸ロジウム(II)、酢酸ロジウム(II)、アセチ
ルアセトナト(η4−1、5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、酸化イリジウム、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、酸化ルテニウム、酸化鉄、酢酸鉄、
シュウ酸鉄、水酸化鉄、酸化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、水酸化ニッケルの群から選択可能であり、2種類以上組み合わせて使用することも可能である。2種類以上の金属化合物を用いた場合、金属種の組み合わせによっては合金微粒子を得ることができる。これらの金属化合物は、組成として不純物を含むものではないが、不純物を含む原料から合成されたものである場合、極微量の不純物を含有するものと考えられる。しかし、含有する不純物量が極微量であるため、後述する精製工程により0.1mass%未満まで除去されることが可能である。
これら(1)〜(3)の不純物は、液相で生成される金属微粒子に含まれることになり、金属微粒子の表面に付着する、または金属微粒子を被覆する保護剤により金属微粒子に取り込まれるものと考えられる。不純物は、1種類とは限らず、2種類以上の物質を含む
場合がほとんどであり、親水性と親油性との不純物が混合して生成される場合もある。
ヒーターなどの熱伝導を利用した加熱法の場合、金属化合物(固体)と液相(還元剤や保護剤)とはある一定の温度に均一に加熱され、ある瞬間、金属化合物が還元し、金属核が生成する。生成した金属核は、液相の温度によって決定される移動度で動き回り、周囲の金属核と衝突することで成長していく。同時に金属核の表面に保護剤の吸着反応が起こるため、金属核はある大きさで金属微粒子として安定化する。
電磁波の場合、金属化合物と液相とが共存している不均一固液系に電磁波を印加すると、固体と液相では応答性が異なる。具体的には、金属化合物と液相とのエネルギー吸収の違いから、両者の間では瞬間的な温度勾配が生まれる。液相温度よりも金属化合物の表面温度が大きくなると、金属化合物の表面からの金属核生成が起こっても、液相温度が低いために金属核が移動しにくく、金属核どうしの衝突頻度が減少する。その結果、金属核の成長が進まず、微細な金属微粒子を得ることができる。
超音波の場合、不均一固液系に超音波を照射すると、キャビテーションと呼ばれる微小な気泡が発生し、そのキャビテーションは準断熱的な膨張と圧縮を繰り返し、最終的に圧壊する。その過程でキャビテーションそれ自体は非常に高温・高圧となっており、さらに圧壊の際は衝撃波やジェット流も生じる。溶液中に金属化合物が存在した場合、還元剤の成分を含んだキャビテーションと金属化合物の接触界面を反応場として、次のような機構で金属化合物の還元反応が起こる。まず、キャビテーションと金属化合物が接触すると、還元剤のガスを含んだキャビテーションの高温により金属化合物が還元し、金属核が生成する。キャビテーションの生成から消滅までの時間はおよそ10−6秒オーダーと非常に短時間であるため、金属核は生成直後にキャビテーションの高温から溶液温度まで急冷されることになる。すなわち、金属化合物の表面温度>液相温度の状態がごく短時間に実現する。そのため、金属核の移動度は低く、金属核どうしの衝突頻度が減少する。その結果、金属核の成長が進まず、微細な金属微粒子を得ることができる。
混ざった混合物であっても、水および有機溶媒の混合溶媒に溶解する。つまり、水および有機溶媒の混合溶媒で金属微粒子を精製することにより、それぞれに溶解性を示す不純物が除去されることになる。
具体的に説明すると、(1)の不純物は、金属化合物に由来するアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを含有する場合があるが、混合溶媒で除去されて、その含有量が低減される。(2)および(3)の不純物は、炭素、水素、酸素、窒素などの元素からなる有機物であるため、混合溶媒で十分に除去される。特に、(3)の不純物は、アミン化合物およびカルボン酸化合物を選択した場合に生じる塩またはアミド化合物であるため、水への溶解性が高く、好適に除去される。したがって、混合溶媒による精製で、ハロゲンなどを含む不純物、親水性の不純物、および親油性の不純物はそれぞれ除去されることになる。なお、混合溶媒に溶解しない不純物としては、未反応の金属化合物が考えられるが、金属化合物と金属微粒子との粒子サイズの違いを利用して、容易に分離することができる。
本実施形態の製造方法によれば、金属化合物を溶解させないため、アルカリ金属、ハロゲン、硫黄、またはリンの不純物を多量に含む特定の金属化合物や還元剤を用いる必要性がない。つまり、原料物に由来するハロゲンなどの不純物の混入量を低減することができる。
しかも、水および有機溶媒の混合溶媒で精製することによって、金属微粒子中に含まれる不純物を低減し、その不純物量を金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満とすることができる。さらに、塩またはアミド化合物を生成する保護剤の組み合わせであっても、塩などを好適に除去できるので、保護剤の組み合わせの選択において過度に制限されない。しかも、液相中で金属化合物から金属核を生成するため、製造時の金属濃度を非常に高くすることが可能であり、単位時間あたりの製造量を増加させ、安価に金属微粒子を生成できる。
続いて、本発明の一実施形態にかかる金属微粒子について説明する。
される金属被膜の導電性などの特性を悪化させる。この点、保護剤として、アミン化合物およびカルボン酸化合物で被覆される金属微粒子は、焼成時に、カルボン酸化合物とアミン化合物とのアミド形成反応が起こり、2つの保護剤の脱離が促進される。また、保護剤の脱離が促進されるため、焼成温度を低減することができる。
上記金属微粒子を含む金属ペーストの一実施形態について説明する。本実施形態の金属ペーストは、上記金属微粒子と溶剤組成物とを含有しており、低温焼結性の金属ペーストとして利用することができる。
上述した金属ペーストを焼成し、保護剤を脱離させるとともに、金属微粒子を融着させることによって、金属被膜が得られる。金属微粒子は不純物量が少なく、焼結性に優れるため、上記金属ペーストから形成される金属被膜は、残存する不純物が少なく、体積抵抗率が小さく、導電性に優れている。
実施例1では、保護剤としてのアミン化合物およびカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu2O3・1.5H2O(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤および保護剤としてトリエチルアミン(分子量:101.1g/mol)を10.8g(物質量:0.11mol)、保護剤としてビス
(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を4.95g(物質
量:0.021mol)、保護剤として酢酸(分子量:60.05g/mol)を0.645g(物質量:0.011mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約19.8mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au2O3・1.5H2Oを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで未反応のAu2O3・1.5H2O粒子や粗大なAu金属微粒子を取り除いた。回収した濾液に、水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子表面の過剰なトリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、および酢酸などを除去することでAu金属微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収し、40℃で1時間乾燥することで、実施例1の金属微粒子を得た。実施例1の金属微粒子の製造条件を表1に示す。
抵抗率が測定された。得られたAu金属被膜の体積抵抗率は約5.2μΩcmであった。Au金属微粒子は不純物の含有量が少なく焼結性に優れている。この金属微粒子から形成された金属被膜は残存する不純物が少なく、また体積抵抗率が小さく導電性に優れていた。また、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物で被覆されているため、焼成に際してアミド形成反応が起こり、低温で焼成できた。
なお、実施例1では保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物を併用するため、金属微粒子の生成に際して塩またはアミド化合物が生成し、金属微粒子に含まれるものと考えられる。しかし、形成された金属被膜の体積抵抗率が低いことを考慮すれば、混合溶媒の精製によって、金属微粒子の生成の際に生じる塩またはアミド化合物が除去されて、その含有量が少ないことがわかる。以上で測定された結果を表2に示す。
実施例2では、保護剤としてのアミン化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAg2O(式量:231.72g/mol)を5.0g(含有Ag重量:4.65g)、還元剤及び保護剤としてジプロピルアミン(分子量:101.1g/mol)を6.55g(物質量:0.0648mol)、保護剤としてドデシルアミン(
分子量:185.35g/mol)を3.98g(物質量:0.0215mol)混合し
、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAg金属の濃度は、約29.9mass%である。この混合溶液を攪拌しながら、90℃で1時間加熱し、Ag2Oを還元させ、Ag金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで未反応のAg2O粒子や粗大なAg微粒子を取り除いた。回収した濾液に、水100gとメタノール500gを添加し、Ag金属微粒子表面の過剰なドデシルアミンとジプロピルアミンを除去することでAg金属微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Ag金属微粒子粉末を回収し、40℃で1時間乾燥させることで、実施例2のAg金属微粒子粉末を得た。
Ag金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAg金属であることが確認された。図5において、2θ=37.9°のピークは(111)面、43.7°のピークは(200)面、64.2°のピークは(220)面、77.2°のピークは(311)面、81.4°のピークは(222)面に対応している。
実施例3〜5では、表1に示すように、実施例1または実施例2の金属化合物、還元剤、または保護剤の種類を変更して、金属微粒子を製造した。また、比較例1〜5では、金属化合物、還元剤、保護剤、または精製条件を変更して、金属微粒子を製造した。
金属酸化物としてPtO2(式量:227.08g/mol)を5.0g(含有Pt重量:4.28g)、還元剤としてエタノール(分子量:46.07g/mol)を5.08g(物質量:0.11mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35
g/mol)を4.08g(物質量:0.022mol)混合し、100mlのナス型フ
ラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるPt金属の濃度は、約30.2mass%である。この溶液を攪拌しながら、60℃で2時間加熱し、PtO2を還元させ、Pt金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例3のPt金属微粒子を得た。
Pt金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するPt金属であることが確認された。Pt金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピーク、アミン基に帰属する3400cm−1、1650cm−1付近のピークが確認された。また、GC−MS測定したところ、エタノール、酢酸(エタノールの酸化物)、およびドデシルアミンが検出された。以上より、製造されたPt金属微粒子は、エタノール、酢酸、およびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このPt金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径2〜10nmのPt金属微粒子が確認された。
Pt金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Pt金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.005mass%含有され、Cl以外のハロゲン、アルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
ビス(アセチルアセトナト)パラジウムとしてPd(C5H7O2)2(式量:304.4g/mol)を5.0g(含有Pd重量:1.75g)、還元剤及び保護剤としてビス(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を19.8g(物
質量:0.082mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35g/mol)を3.03g(物質量:0.0163mol)混合し、100mlのナス型フラス
コ中に加えた。この溶液中に含まれるPd金属の濃度は、約6.28mass%である。この溶液を攪拌しながら、200℃で3時間加熱し、Pd(C5H7O2)2を還元させ、Pd金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例4のPd金属微粒子を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例4のPd金属微粒子を得た。
Pd金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するPd金属であることが確認された。Pd金属微粒子表面の保護剤成分の分析として、IR測定を行ったところ、アミン基に帰属するピークが3400cm−1、1650cm−1付近に確認された。また、GC−MS測定したところ、ドデシルアミンが検出された。また、NMR測定の結果、保護剤のビス(2−エチルヘキシル)アミンに由来するピークが検出された。以上より、製造したPd金属微粒子は、ビス(2−エチルヘキシル)アミンおよびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このPd金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜30nmのPd金属微粒子が確認された。
Pd金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Pd金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.0275mass%、Na成分は0.025mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
ビス(アセチルアセトナト)銅としてCu(C5H7O2)2(式量:261.5g/mol)を5.0g(含有Cu重量:1.21g)、保護剤及び還元剤としてビス(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を23.1g(物質量:0
.095mol)、保護剤としてドデシルアミン(分子量:185.35g/mol)を1.41g(物質量:0.019mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加え
た。この溶液中に含まれる金属銅の濃度は、約3.84mass%である。この溶液を窒素雰囲気中、攪拌しながら、220℃で3時間加熱し、Cu(C5H7O2)2を還元させ、ドデシルアミンおよびビス(2−エチルヘキシル)アミンで被覆されたCu金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例5のCu金属微粒子を得た。
Cu金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、図7に示すように、面心立方格子構造(fcc)を有するCu金属であることが確認された。Cu金属微粒子表面の保護剤成分の分析として、IR測定、GC−MS測定、およびNMR測定を行ったところ、実施例4と同様に、製造されたCu金属微粒子は、ビス(2−エチルヘキシル)アミンおよびドデシルアミンで被覆されていることが確認された。
このCu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、緑色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、図8に示すように、粒子径50〜150nmのCu金属微粒子が確認された。
Cu金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Cu金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.005mass%含有され、Cl以外のハロゲン、アルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
実施例6では、保護剤としてカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu2O3・1.5H2O(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤としてエタノール(分子量:46.07g/mol)を5.08g(物質量:0.11mol)、保護剤として酢酸(分子量:60.0
5g/mol)を6.45g(物質量:0.107mol)混合し、100mlのナス型
フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約25.6mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au2O3・1.5H2Oを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例6のAu金属微粒子を得た。
Au金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAu金属であることが確認された。Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピークが確認された。GC−MS測定したところ、エタノール、酢酸(エタノールの酸化物)が検出された。以上より、製造されたAu金属微粒子は、エタノールおよび酢酸で被覆されていることが確認された。
このAu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜15nmのAu金属微粒子が確認された。
Au金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Au金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.025mass%、Na成分は0.02mass%含有されたが、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
実施例7では、保護剤としてアミン化合物およびカルボン酸化合物により、表面が被覆された金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu2O3・1.5H2O(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、還元剤および保護剤としてトリエチルアミン(分子量:101.1g/mol)を10.8g(物質量:0.11mol)、保護剤としてビス
(2−エチルヘキシル)アミン(分子量:241.46g/mol)を4.95g(物質
量:0.021mol)、保護剤として酪酸(分子量:88.11g/mol)を0.645g(物質量:0.007mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約19.8mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱し、Au2O3・1.5H2Oを還元させ、Au金属微粒子の分散液を得た。この分散液を、上述した実施例1と同様に精製することによって、実施例7のAu金属微粒子を得た。
Au金属微粒子粉末のXRD測定を行ったところ、面心立方格子構造(fcc)を有するAu金属であることが確認された。Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属する1700cm−1付近のピーク、アミン基に帰属する3400cm−1、1650cm−1付近のピークが確認された。また、GC−MS測定したところ、トリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、酪酸が検出された。以上より、製造されたAu金属微粒子は、トリエチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、および酪酸で被覆されていることが確認された。
このAu金属微粒子粉末をn−ヘキサン溶媒中に再分散させたところ、黒色の溶液が得
られた。この溶液をマイクログリッドに滴下し室温で乾燥した後に、これをFE−SEMにより観察したところ、粒子径8〜12nmのAu金属微粒子が確認された。
Au金属微粒子に含まれる不純物元素およびその含有量について測定したところ、Au金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.025mass%、Na成分は0.02mass%含有されたが、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
比較例1は、金属微粒子の除去工程において、メタノールのみで精製した点が実施例1と異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
実施例1と同様にして、比較例1のAu金属微粒子を測定し評価した。その結果、比較例1のAu金属微粒子は、実施例1のAu金属微粒子と比較して、不純物量が増加していた。その他の測定においては、差異が確認されなかった。表2に示すように、比較例1のAu金属微粒子は、Clが0.075mass%、Naが0.06mass%含有されており、実施例1(Cl:0.025mass%、Na:0.02mass%)よりも増加していた。なお、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、およびリンは実施例1と同様に検出されなかった。
この結果は、比較例1が、除去工程において、メタノールだけを用いており、水とメタノールとを用いなかったためである。すなわち、ClやNaを含む不純物のうち、非水溶性の不純物は、エタノールで精製され除去されたが、水溶性の不純物が除去されず、金属微粒子に含まれたため、不純物量が増加した。また、結晶性の有機物が残存した。
比較例1のAu金属微粒子を金属ペーストに用いて、金属被膜を製造したところ、表2に示すように、得られたAu金属被膜は、体積抵抗率が約20.8μΩcmであった。比較例1では、水溶性の不純物が残存し、不純物量が増加したため、形成された金属被膜の体積抵抗率が低下した。しかも、比較例1では、実施例1と同様に、保護剤による、塩またはアミド化合物の発生が考えられるが、水による精製を行っていないため、塩またはアミド化合物の除去がなされず、金属微粒子中に残存したものと推測される。そして、金属微粒子に含まれる不純物が増加したため、金属被膜の体積抵抗率が低下したものと考えられる。
比較例2は、実施例1での金属微粒子の精製工程において、水のみで精製した点が実施例1と異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
製造されたAu金属微粒子を、実施例1と同様に測定し、評価した。その結果、XRD測定によれば、面心立法格子構造(fcc)を有する金属金のピークと、Au金属以外のピーク(おそらく水で除去できなかった過剰のビス(2−エチルヘキシル)アミン)と、が確認された。
また、表2に示すように、比較例2のAu金属微粒子は、Cu金属微粒子粉末中に、Cl成分は0.115mass%、Na成分は0.095mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。比較例2は、水のみで精製工程を行っており、ヘキサンやメタノールなどの有機溶媒による精製工程を行っていない。このため、水に溶解しないビス(2−エチルヘキシル)アミンが残存しており、さらにClやNaの残量も多くなっている。
比較例3は、実施例1の還元剤または保護剤を過酸化水素に変更した点だけが異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu2O3・1.5H2O(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、水(式量:18g/mol)を5.0g(物質量:0.
278mol)、還元剤として過酸化水素(式量:34g/mol)を1.46g(物質量:0.043mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約36.9mass%である。この溶液を攪拌しながら、40℃で10分間加熱し、Au2O3・1.5H2Oを還元させた。Au金属微粒子の塊(数mm)が析出した。この溶液に、水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子を精製した。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収した。このAu金属微粒子粉末を40℃で1時間乾燥した。
実施例1と同様に測定したところ、Au金属微粒子表面の保護剤成分の分析を行った。IR測定では、特徴的なピークは確認できなかった。GC−MS測定したところ、水やメタノールが検出された。この結果から、製造したAu金属微粒子表面は、保護剤(アミン化合物やカルボン酸化合物)で被覆されておらず、水やメタノールが微量に吸着していることが確認された。
また、表2に示すように、比較例3のAu金属微粒子は、Au金属微粒子粉末中に、Clが0.025mass%、Naが0.02mass%含有され、Cl以外のハロゲン、Na以外のアルカリ金属、硫黄、リンは検出されなかった。
このAu金属微粒子粉末のペースト化を試みたが、Au金属微粒子が粗大すぎるために溶剤組成物中に均一に分散しなかった。また、このペーストのスピンコート塗布も試みたが、連続したペースト膜を形成することができなかった。
比較例4は、実施例1の還元剤または保護剤を酢酸に変更した点だけが異なるだけで、その他の条件については、実施例1と同様に、Au金属微粒子を製造した。
金属化合物としてAu2O3・1.5H2O(式量:468.8g/mol)を5.0g(含有Au重量:4.23g)、保護剤として酢酸(分子量:60.05g/mol)を6.45g(物質量:0.107mol)混合し、100mlのナス型フラスコ中に加えた。この溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約36.9mass%である。この溶液を攪拌しながら、75℃で1.5時間加熱したが、Au2O3・1.5H2Oが沈殿したままであり、変化が観察されなかった。沈殿している粉末のXRD測定を行ったところ、Au2O3・1.5H2Oであることが確認され、Au金属微粒子は生成していなかった。これは、液相に還元剤が添加されず、金属核の生成および金属微粒子への核成長が起きなかったためである。
比較例5では、上述した錯体分解法により金属微粒子を製造した(特許文献4、特開2007−63579の実施例1を参照)。
金属錯体として、AuCl(S(CH3)2)を0.295g(含有Au重量は0.197g、物質量:0.001mol)、ヘキサデシルアミンn−C16H33NH2を2.41g(物質量:0.01mol)混合し、パイレックス(登録商標)製三つ口フラスコに入れた。混合溶液中に含まれるAu金属の濃度は、約2.55mass%である。この混合溶液を攪拌しながら、120℃で1時間加熱し、AuCl(S(CH3)2)を還元させ、ヘキサデシルアミンで被覆されたAu金属微粒子の分散液を得た。この分散液にn−ヘキサンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過することで、未反応のAuCl(S(CH3)2)粒子や粗大な金微粒子を取り除いた。回収した濾液に水100gとメタノール500gを添加し、Au金属微粒子表面の過剰なヘキサデシルアミンを除去することで金微粒子を沈殿させた。上澄み液を取り除き、Au金属微粒子粉末を回収した。
Au金属微粒子粉末を40℃で1時間乾燥させた。
以上の結果から、比較例5で製造したAu金属微粒子の表面には、原料であるAuCl(S(CH3)2)由来のClやSなどが付着していたが、その除去は困難であった。そして、Au金属微粒子に含まれる不純物量が多くなったため、Au金属微粒子の焼結性が悪化し、製造されるAu金属被膜の体積抵抗率が高くなったものと考えられる。比較例5と実施例1とを比較すると、実施例1の金属微粒子の方が、不純物量が少なく、焼結性に優れており、製造される金属被膜の体積抵抗率が優れていることがわかった。
Claims (10)
- 保護剤で表面が被覆された金属微粒子であって、
前記保護剤がアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類から選択され、
前記金属微粒子に含まれるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンの合計含有量が前記金属微粒子の質量に対して0.1mass%未満であることを特徴とする金属微粒子。 - 請求項1に記載の金属微粒子において、前記保護剤が、アミン化合物およびカルボン酸化合物からなることを特徴とする金属微粒子。
- 請求項1または2に記載の金属微粒子において、前記アミン化合物が、一般式NH2R1、NHR1R2、またはNR1R2R3で表される脂肪族アミン化合物であることを特徴とする金属微粒子。
ただし、式中R1、R2、及びR3は、炭素数2〜16のアルキル基を示す。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子が、金、銀、銅、白金、またはパラジウムのうち少なくともいずれか1種類の金属からなることを特徴とする金属微粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の金属微粒子と、溶剤組成物と、を含むことを特徴とする金属ペースト。
- 請求項5に記載の金属ペーストにおいて、前記溶剤組成物が、水、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、アミン類、単糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類のうちいずれか1種類、またはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする金属ペースト。
- 請求項5または6に記載の金属ペーストを焼結させて形成されることを特徴とする金属被膜。
- 還元剤および保護剤を含む液相中に固体状態で分散する金属化合物から金属核を還元析出させ、該金属核を凝集させるとともに前記保護剤で被覆して、金属微粒子を生成する生成工程と、
前記金属微粒子に含まれる不純物であるアルカリ金属、ハロゲン、硫黄、およびリンを除去する精製工程と、
を含む金属微粒子の製造方法であって、
前記金属微粒子の質量に対する前記不純物の合計含有量が0.1mass%未満となるように、
前記生成工程では、前記還元剤および前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物、カルボン酸化合物のうち少なくとも1種類を用い、
前記精製工程では、水および有機溶媒の混合溶媒を用いた
ことを特徴とする金属微粒子の製造方法。 - 請求項8に記載の金属微粒子の製造方法において、前記生成工程では、前記保護剤として、前記不純物を含まないアミン化合物およびカルボン酸化合物を用いることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
- 請求項8または9に記載の金属微粒子の製造方法において、前記金属化合物が金属酸化物であることを特徴とする金属微粒子の製造方法。
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