JP2004196631A - ナノカーボンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本製造方法は、炭化珪素を、珪素原子が失われる温度(800〜2000℃)で加熱してナノカーボンを製造する方法であって、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを炭化珪素の周辺より除去しながら加熱する。上記分解ガスは、新たなガス、例えば、炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガス(アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等)、及び/又は炭化珪素の分解を促進するガス(一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン、水蒸気等)を導入することによって除去する。また、炭化珪素の分解ガスは、上記ガスの導入と、(真空)排気とを同時にあるいは交互に行うことにより除去してもよい。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノカーボンの製造方法に関し、更に詳しくは、ナノカーボンを大量に且つ効率よく製造する方法に関する。本発明の製造方法により得られるナノカーボンは、電子放出素子、電界放出エミッタ、ガス貯蔵、ガス分離膜、磁性材料、超伝導材料、二次電池(リチウム電池、キャパシター)の電極材料等に利用される。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブに代表されるナノカーボンは、各種素材を用いて製造されている。例えば、基板上にFe、Co及びNi等の触媒をコーティングして、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により垂直方向に伸びたカーボンナノチューブを得る方法であり、もう1つは炭化珪素単結晶を表面分解することにより、カーボンナノチューブを得る方法である(例えば、特許文献1参照)。炭化珪素を原料とするカーボンナノチューブの製造方法としては、微量酸素を含む真空中あるいは酸素を含む不活性ガス中において炭化珪素を高温加熱する方法(例えば、特許文献2参照)もある。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−265208号公報
【特許文献2】
特開2000−109308号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、従来から行われている、炭化珪素の表面分解法において、ナノカーボンを大量に且つ効率よく生成させるべく検討を重ねていたところ、炭化珪素の解放空間が小さくなると、炭化珪素の分解ガス(Siガス、SiOガス等)が炭化珪素の極表面上に滞留あるいは残存し、炭化珪素の分解が進みにくくなること、及び、得られた生成物中のナノカーボンの収率が極端に低くなることが分かった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、ナノカーボンを大量に且つ効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下に示される。
[1] 炭化珪素を、珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する方法であって、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、新たなガスを導入することにより、該炭化珪素の周辺から除去しながら加熱することを特徴とするナノカーボンの製造方法。
[2] 上記分解ガスの除去は、上記炭化珪素及び該分解ガスと反応しないガス、及び/又は該炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガスの導入と、(真空)排気とを同時にあるいは交互にすることにより行う上記[1]に記載のナノカーボンの製造方法。
[3] 導入される上記ガスは、炭化珪素に対し下方から上方に向かって流す上記[1]又は[2]に記載のナノカーボンの製造方法。
[4] 導入される上記ガスはアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン及び水蒸気から選ばれる少なくとも1種である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
[5] 製造時の圧力は10−7〜103Torrの範囲である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
[6] 上記加熱温度は800〜2000℃の範囲である上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
[7] 少なくともその表面に炭化珪素が載置されている板状基体を、縦置きに配置し、炭化珪素を構成する珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する方法において、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、新たなガスを該炭化珪素に対し下方から上方に向かって導入することにより、該炭化珪素の周辺から除去しながら加熱することを特徴とするナノカーボンの製造方法。
【0006】
【発明の効果】
本発明のナノカーボンの製造方法によれば、炭化珪素の加熱によって珪素原子が失われる際に発生する分解ガスによってナノカーボンの生成を妨げることなく、大量に且つ効率よくナノカーボンを製造することができる。
炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガス、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等を導入する場合には、分解ガスと置換するような形で分解ガスを除去することができる。また、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン、水蒸気等のガスを導入する場合には、これらが炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するため、分解ガスの除去及び効率よいナノカーボンの製造を進めることができる。
また、上記ガスの導入と、(真空)排気とを同時にあるいは交互にする場合には、分解ガスをより速やかに除去することができ、大量に且つ効率よくナノカーボンを製造することができる。
また、上記ガスを、炭化珪素に対し下方から上方に向かって導入する場合には、高温のガスは上昇しやすいという対流現象を利用し、分解ガスを速やかに除去することができ、ナノカーボンを変質させることなく大量に且つ効率よくナノカーボンを製造することができる。
更に、常に分解ガスの存在しない環境下で炭化珪素を加熱することができるため、従来、真空下で行われていたナノカーボンの製造を、大気を含む広い範囲の圧力下において行うことができ、より容易に、大量のナノカーボンを製造することができる。
【0007】
本製造方法によると、原料である炭化珪素の載置方法によらずに効率よくナノカーボンを製造することができるが、製造装置内に大量の炭化珪素を、例えば、炭化珪素が載置された基体を所定間隔に積み上げた場合、所定間隔に縦置きに並べた場合等どのような配置であっても、分解ガスが炭化珪素周辺に滞留することなく炭化珪素の表面分解が円滑に進行し、容易に且つ効率的にナノカーボンを製造することができる。特に、炭化珪素が載置されている板状基体を、縦置きに配置し、炭化珪素を構成する珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する際に、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、上記炭化珪素及び該分解ガスと反応しないガス、及び/又は上記炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガスを炭化珪素に対し下方から上方に向かって導入して該炭化珪素の周辺より除去しながら加熱する場合には、分解ガスの除去並びに炭化珪素の分解が効率よく進み、ナノカーボンの大量製造に非常に有効である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明を更に詳しく説明する。
本発明のナノカーボンの製造方法は、炭化珪素を、珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する方法であって、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、新たなガスを導入することにより、該炭化珪素の周辺から除去しながら加熱するものである。
【0009】
原料である炭化珪素としては、特に限定されない。結晶形はα型でもβ型でもいずれでもよい。また、単結晶でも多結晶でもよい。更に、多孔質であってもよい。多孔質の場合、気孔率等も特に限定されない。また、気孔の形状も球状であっても不規則なものであってもよく、閉じた気孔でも外部と通じた気孔であってもよい。更に、焼結体であってもよい。炭化珪素の形状も粒状あるいは塊状(立方体、直方体、球形、略球形等)、線状(直線、曲線等)、板状あるいは膜状(円形、多角形、L形等)等特に限定されない。
また、炭化珪素の大きさも特に限定されないが、最大径あるいは最大厚さは、いずれも、通常、0.1〜100μm、好ましくは0.3〜10μmである。
【0010】
炭化珪素は、通常、炭化珪素と反応せず、加熱によって変形あるいは変質しない材料からなる基体(平板状、屏風形状等の基板、円筒状基体、網状基体等)の表面に載置、あるいは容器の内表面に付着しているような形で載置される。上記材料の例としては、カーボン、B4C、BN等が挙げられる。このように炭化珪素が載置された基体は、ナノカーボンの大量製造のため、製造装置内に設置される。例えば、板状基体の場合、図1のように上下に積層する形態等とすることができる。また、図2及び図3のように縦置きの形態等とすることができる。特に好ましい形態としては、板状基体の複数を縦置きに設置することである。尚、基体の数や、各基体の間隔等は、製造装置の形、内容積等を考慮して選択すればよい。
【0011】
上記炭化珪素は、加熱されると、炭化珪素の表面からSiが蒸発、あるいはSiが酸化されてSiOとして蒸発し、残ったCが筒状のチューブ構造をとって配列することでナノカーボンが製造される。ナノカーボンを大量に製造する目的等で、原料である炭化珪素を多量に加熱する場合には、上記のように蒸発した分解ガスが炭化珪素の周辺に滞留あるいは残存することがあるため、上記分解ガスを炭化珪素の周辺より速やかに除去することが必要となる。
【0012】
上記分解ガスの除去は、「新たなガス」を導入することによって、原料である炭化珪素の周辺の分解ガスを追い出すような形でなされる。この「新たなガス」としては、特に限定されないが、炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガス、炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガス等が挙げられる。
炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガスとしては、炭化珪素の分解を妨げないようなガスであることが好ましく、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガスとしては、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン、水蒸気等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
「新たなガス」として、炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガス、及び、炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガスを任意の割合で混合した混合ガスを用いてもよい。この場合の混合割合は特に限定されない。
【0013】
上記新たなガスの導入方法も特に限定されず、導入量を一定あるいは可変とした連続導入であってもよいし、間欠導入であってもよい。また、任意の時期に導入ガスの種類を変えてもよい。尚、導入量、導入時間等は、原料である炭化珪素の処理量、加熱炉等製造装置の内容積等を考慮して選択すればよい。また、新たなガスの導入口は1箇所でもよいし、2箇所以上でもよい。更に、新たなガスは、炭化珪素の表面近傍が通り道となるように導入することが好ましい。
上記分解ガスの除去について、分解ガスを炭化珪素の周辺に滞留させない限りにおいて、上記新たなガスと、除去された分解ガスとからなる混合ガス(X)、あるいはこの混合ガス(X)及び新たに導入される新たなガスからなる混合ガス(Y)を循環させる方法であってもよい。
【0014】
本発明においては、ナノカーボンの製造時の圧力は特に限定されないが、炭化珪素が飛散あるいは吸引されない程度に、(真空)排気ポンプ等を用いた排気を行うことが好ましい。この場合、排気量を一定あるいは可変とした連続排気であってもよいし、間欠排気であってもよい。尚、(真空)排気の時間等は、原料である炭化珪素の処理量、加熱炉等製造装置の内容積等を考慮して選択すればよい。また、分解ガスの吸気口は1箇所でもよいし、2箇所以上でもよい。
【0015】
分解ガスをいっそう速やかに除去するために、上記新たなガスの導入と、(真空)排気とを同時にあるいは交互に行うことが好ましい。
新たなガスの導入と、(真空)排気とを同時に行う場合、分解ガスが、導入される新たなガスとともに混合状態で排気されるように、新たなガスの導入口及び真空ポンプの吸気口は原料である炭化珪素から見て隣接した場所に位置させないことが好ましい。
また、新たなガスの導入と、(真空)排気とを交互に行う場合、新たなガスの導入口及び真空ポンプの吸気口は原料である炭化珪素から見て隣接した場所に位置してもよいが、隣接させないことが好ましい。真空排気を行っている場合、製造装置内の到達真空度は特に限定されない。
【0016】
上記方法のいずれにおいても、新たなガスの導入によって発生する混合ガスの流れ、及び、新たなガスの導入及び(真空)排気によって発生する一定方向の流れを形成することによって、炭化珪素の周辺に分解ガスを滞留させることなく、除去するとともにナノカーボンを大量に且つ効率よく製造することができる(図1参照)。
導入する新たなガスは、温度の高いガスは上昇しやすいという対流現象を利用し、原料である炭化珪素1を挟んで下方から上方へ流すことが好ましい(図2及び図3参照)。また、平板状基板2に設けられた貫通孔21を通して新たなガスを下方から上方へ流してもよい(図4及び図5参照)。新たなガスの導入と、(真空)排気とを併用する場合には、新たなガスを下方から導入し、(真空)排気は上方で行うといった構成によって、より効率よく分解ガスを除去することができる。
【0017】
ナノカーボンは、原料である炭化珪素を加熱することによって製造される。加熱する手段としては特に限定されず、電気炉、レーザービーム照射、直接通電加熱、赤外線照射加熱、マイクロ波加熱及び高周波加熱等の手段によることができる。
加熱条件として、加熱温度は、好ましくは800〜2000℃であり、より好ましくは1200〜1900℃、更に好ましくは1400〜1800℃である。加熱温度が高すぎると、炭化珪素から珪素原子が失われる速度が大きくなり、カーボンナノチューブの配向が乱れやすくなるとともにチューブ径が不均一となる傾向がある。また、カーボン自身もCOとなり蒸発し、カーボンナノチューブ長も短くなり、更に消失してしまい、乱れたグラファイト層が形成されるので好ましくない。
尚、上記加熱温度に達するまでの昇温速度は特に限定されないが、通常、平均速度は0.5〜40℃/分、好ましくは1〜30℃/分である。多段階で加熱してもよい。
また、上記加熱温度における保持時間も特に限定されず、通常、30〜300分、好ましくは60〜240分である。上記加熱が終了した後、室温まで降温されるが、その速度も特に限定されない。多段階で降温してもよい。
【0018】
ナノカーボンの製造は、通常、真空下で行われるが、上記「新たなガス」として例示したガスの存在下(減圧状態であっても、常圧であっても、あるいは加圧状態であってもよい。)で行われてもよい。好ましくは、真空中あるいは不活性ガス雰囲気である。
上記のように、炭化珪素の加熱によって珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを除去する場合、新たなガスの導入等によって製造装置内の圧力は加熱中に様々に変化することとなるが、その圧力は、好ましくは10−7〜103Torr、より好ましくは10−5〜102Torr、更に好ましくは10−4〜10Torrの各範囲にあればよい。尚、大気圧に近い圧力、例えば、10〜103Torrで加熱する場合には、分解ガス及び導入されるガスからなる混合ガスを容易に循環することができる。循環する場合には、分解ガス中に含まれるSiガス、SiOガス等をトラップする手段を設けてもよい。
【0019】
本製造方法によって得られるナノカーボンの長さは、好ましくは1nm〜2μm、より好ましくは3nm〜1μmである。この範囲の長さであれば、ナノカーボンの特性を十分に発揮する製品を提供することができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
平均粒子径が0.69μmの炭化珪素粉末をアセトン中で1分以上超音波分散させ、これをカーボン製基板2(縦200mm、横200mm、厚さ0.5mm)上に塗布した(塗布量2.5g/m2)。アセトンを蒸発させた後、その基板2を、製造装置3として、内容積が0.1m3である真空加熱炉の中の試料台の上に静置した(図6参照)。その後、炉内を真空排気し、真空度を1×10−4Torrに維持して加熱した。800℃となったところで、アルゴンガスの導入(5秒間)及びメカニカルブースターポンプによる真空排気(排気速度12m3/分、60秒間)をくり返し、炉内の真空度が0.03〜5Torrである雰囲気のもと、ヒーター4を用いて、昇温速度5.5℃/分で1700℃まで加熱した。そして、1700℃で4時間保持した。尚、図6に示されるヒーター4及び断熱材5は、断面方向にガス透過が可能であり、導入されるアルゴンガスは炭化珪素表面からの分解ガスを容易に除去可能である。
終了後、基板上の残渣を回収し、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、図7のように、微細な筋状コントラストによって示されるナノカーボンが得られたことが分かった。
【0021】
実施例2
直径3mm、厚さ0.1mmのカーボン製円板6の中央部分をすり鉢状に機械研摩して約0.5mmの穴を開け(図9参照)、実施例1で用いた炭化珪素を、超音波を用いて穴の周辺部分に分散状態となるように静置した。アセトンを蒸発させた後、その円板6を、図8に示した製造装置3内の、内容積が2×10−6m3である真空加熱炉の中の小型容器7の中に静置した。その後、炉内を真空排気し、真空度を1×10−4Torrに維持して加熱した。800℃となったところで、アルゴンガスを導入し、炉内を760Torrとした。次いで、アルゴンガスの導入(4秒間)及び油回転ポンプによる真空排気(排気速度0.64m3/分、3.5秒間)をくり返し、炉内の真空度が530〜760Torrである雰囲気のもと、昇温速度20℃/分で1700℃まで加熱した。そして、1700℃で30分間保持した。尚、図8に示されるヒーター4は、断面方向にガス透過が可能である。
終了後、円板6をそのまま、透過型電子顕微鏡(TEM)の試料台にセットし、円板6の穴の周縁部の残渣を観察したところ、図10のように、微細な筋状コントラストによって示されるナノカーボンが得られたことが分かった。
【0022】
比較例
実施例1で用いた炭化珪素載置基板を2枚準備し、この2枚の基板を、カーボン製支持治具を用いた固定によって10cmの間隔をおいて水平方向に配置した。アルゴンガスの導入及び真空排気の交互操作を行わなかった以外は、実施例1と同様に熱処理を行ったところ、上側の基板表面で生成したものは良好なナノカーボンであったが、下側の基板表面で生成したものは2枚の基板の間に分解ガスが滞留したため、効率よく炭化珪素が表面分解せず、グラファイトが形成されていた(図11参照)。
【0023】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、炭化珪素の載置方法をはじめ、基体の形状、熱処理条件、装置の構成等を多様化させることによって、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
また、本発明には含まれないが、新たなガスの導入及び真空排気をすることなく、製造装置内の加熱源の位置の変更、あるいは製造装置内への送風機の設置等によって、対流を発生させる方法がある。例えば、図12に示すように、ヒーターとして、原料である炭化珪素を加熱するためのヒーター41と、このヒーター41よりも上方に位置し、分解ガスの上昇を促進させるためのヒーター42と、を備える製造装置を用いることができる。この製造装置においては、ヒーター41及び42の設定温度を異なるものとし、例えば、ヒーター41は、珪素原子が失われる温度T1で加熱する設定、ヒーター42は、温度T1よりも高温の設定とし、炭化珪素の分解に影響しないぐらい離れた位置あるいはヒーター42の真下に遮蔽物を配置する等とすることによって、装置上部をより高温領域とし、分解ガスをより対流させやすくすることもできる。また、製造装置内へ送風機を設置する場合、上記新たなガスの導入方法と同様に、炭化珪素を挟んで下方から上方へ送風することが好ましい。
【0024】
参考例
2枚の炭化珪素載置基板を、10cmの間隔をおいて垂直方向に縦置きに配置した以外は、比較例と同様に熱処理を行った。基板上の残渣を回収し、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、図13のように、微細な筋状コントラストによって示されるナノカーボンが得られたことが分かった。これにより、加熱によって発生する分解ガスは、基板の間に滞留することなく、自然対流によって、炭化珪素周辺から追い出されたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板の一面に載置された炭化珪素と、分解ガスを新たなガスで除去するための該新たなガスの導入方向とを示す一説明断面図である。
【図2】基板の一面に載置された炭化珪素と、分解ガスを新たなガスで除去するための該新たなガスの導入方向とを示す他の説明断面図である。
【図3】基板の両面に載置された炭化珪素と、分解ガスを新たなガスで除去するための該新たなガスの導入方向とを示す一説明断面図である。
【図4】基板の一面に載置された炭化珪素と、分解ガスを、貫通孔を通して新たなガスで除去するための該新たなガスの導入方向とを示す一説明断面図である。
【図5】基板の一面に載置された炭化珪素と、分解ガスを、貫通孔を通して新たなガスで除去するための該新たなガスの導入方向とを示す他の説明断面図である。
【図6】実施例1で用いた製造装置を示す概略説明図である。
【図7】実施例1で得られたナノカーボンのTEM像を示す説明図である。
【図8】実施例2で用いた製造装置を示す概略説明図である。
【図9】実施例2で用いた炭化珪素載置用円板を示す概略説明図であり、(a)は断面図、(b)は上から見た平面図である。
【図10】実施例2で得られたナノカーボンのTEM像を示す説明図である。
【図11】比較例で得られた生成物のTEM像を示す説明図である。
【図12】他の製造装置の一例を示す説明図である。
【図13】参考例で得られた生成物のTEM像を示す説明図である。
【符号の説明】
1;炭化珪素、2;基板、21;貫通孔、3;製造装置、4,41,42;ヒーター、5;断熱材、6;炭化珪素載置用円板、7;小型容器。
Claims (7)
- 炭化珪素を、珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する方法であって、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、新たなガスを導入することにより、該炭化珪素の周辺から除去しながら加熱することを特徴とするナノカーボンの製造方法。
- 上記分解ガスの除去は、上記炭化珪素及び該分解ガスと反応しないガス、及び/又は該炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガスの導入と、(真空)排気とを同時にあるいは交互にすることにより行う請求項1に記載のナノカーボンの製造方法。
- 導入される上記ガスは、炭化珪素に対し下方から上方に向かって流す請求項1又は2に記載のナノカーボンの製造方法。
- 導入される上記ガスはアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン及び水蒸気から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
- 製造時の圧力は10−7〜103Torrの範囲である請求項1乃至4のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
- 上記加熱温度は800〜2000℃の範囲である請求項1乃至5のいずれかに記載のナノカーボンの製造方法。
- 少なくともその表面に炭化珪素が載置されている板状基体を、縦置きに配置し、炭化珪素を構成する珪素原子が失われる温度で加熱してナノカーボンを製造する方法において、上記珪素原子が失われる際に発生する分解ガスを、新たなガスを該炭化珪素に対し下方から上方に向かって導入することにより、該炭化珪素の周辺から除去しながら加熱することを特徴とするナノカーボンの製造方法。
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