JP2004182634A - ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法は、触媒の存在下(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとをバッチ反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するにあたり、反応液の吸光度を800〜300nmの範囲で選択された少なくとも1つの波長において測定し、その吸光度の変化に基づき反応の停止時機を決定するようにする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の存在下(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドを反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、触媒の存在下における(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応においては、不純物として、ジエステル体であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(以下、単に「ジエステル体」と称することもある。)や二付加体であるジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(以下、単に「二付加体」と称することもある。)が副生しやすいといった問題があった。これら副生物は、反応終点後、言い換えれば少なくともいずれか一方の原料が消失した後に、急激に増加することが知られている。実際には、該反応においては、通常、アルキレンオキシドを過剰に供給して反応させるので、(メタ)アクリル酸が消失した後にさらに反応を継続すると、前記副生物が急増することになる。したがって、前記副生物の生成を抑制するには、反応の終点で的確に反応を停止することが重要となる。
【0003】
従来、反応終点の見極めは、反応中適宜もしくは経験的に予測した一定時間の経過後に反応液をサンプリングして、ガスクロマトグラフィーや酸分滴定等の分析により未反応の(メタ)アクリル酸の量を測定することで行われていた。しかし、このように間欠的な分析方法で反応終点を見極め、反応を停止する場合、反応液をサンプリングしてその分析結果を得るまでにタイムラグがあるため、実際には反応終点で的確かつ迅速に反応を停止するのは困難であり、反応を停止するまでの間の前記副生物の生成を抑制することができなかった。しかも、反応速度が速い場合には、反応を停止するまでの間により一層副生物が生成することとなるので、生産性の向上を図るべく反応速度を上げることができないといった不都合もあった。さらに、反応を行う毎に、反応停止時機が異なるので、副生物の量にバラツキが生じて、得られる製品品質の安定化を図ることができないという問題もあった。
【0004】
他方、前述のように反応の終点の的確な見極めが困難であることを鑑みて、ジエステル体や二付加体の副生を抑制する手法として、残存する未反応の(メタ)アクリル酸が多い段階で早めに反応を停止することも考えられるが、残存した酸成分は蒸留で除去するのが困難であるため、ジエステル体や二付加体が低減できたとしても結果として製品品質を低下させることとなる。
ところで、クロム系触媒を用いた(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応によってヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法においては、反応終了時における反応液の可視吸収スペクトルで最大吸光度を示す波長が特定範囲より大きくなるように反応を実施することにより、蒸留精製する際の重合を防止する技術が報告されている(特許文献1参照)。すなわち、該技術は、反応中に採取した反応液について可視吸収スペクトルの吸光度を複数の波長で測定して最大吸光度を示す波長を検知し、この最大吸光度を示す波長が特定範囲より大きいことを確認して反応を終了すれば、蒸留精製する際の重合を防止しうるというものである。しかし、該技術は、最大吸光度を示す波長が特定範囲よりも大きくなってさえいれば、その目的(蒸留精製する際の重合を防止すること)を達成することができると言うものであり、最大吸光度を示す波長は、特定範囲よりも大きければ、どれだけ大きくなっていても構わないことになる。言い換えれば、最大吸光度を示す波長が特定範囲を超えた時点であれば反応の終了時点は何時であってもよいと言える。このため、前記技術によれば、反応が行き過ぎて副生物が生成することがある。したがって、前記技術は、副生物の生成を抑制するために反応の終点を的確に見極め、反応の停止時機を決定するものではなかった。
【0005】
なお、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応におけるジエステル体や二付加体の副生を抑制する目的で、該反応の終点を見極める方法について検討された例は、これまで報告されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−27945号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決しようとする課題は、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応において反応終点を的確に見極め、不純物の少ない製品品質を安定して確保しつつ、効率的にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造することができる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、反応液を常時連続的にモニターすることが可能である吸光度が、系内に存在する酸分量と相関することを見出し、反応終点の見極めに吸光度を利用し、その変化を目安にすることにより、最適な時機に直ちに反応を停止することが容易にできることを確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法は、触媒の存在下(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとをバッチ反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するにあたり、反応液の吸光度を800〜300nmの範囲で選択された少なくとも1つの波長において測定し、その吸光度の変化に基づき反応の停止時機を決定するようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
本発明の製造方法においては、触媒の存在下(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとをバッチ反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するにあたり、反応液の吸光度を少なくとも1つの波長において測定し、その吸光度の変化に基づき反応の停止時機を決定するようにすることが重要である。すなわち、反応液の吸光度は系内に存在する酸分量と相関を示し、反応の進行に伴い変化するので、該吸光度の変化を目安に反応の停止時機を決定すればよいのである。反応液の吸光度は、常時連続的に測定することが可能であるので、容易に最適な時機に直ちに反応を停止することができる。そして、これにより、製品中の不純物量にバラツキを生じることなく安定した製品品質を確保することができるのである。しかも、生産性を向上させるべく反応速度を上げることも可能となる。
【0010】
なお、本発明における吸光度は、リファレンス(通常は精製したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)の透過度に対しての透過率を示す下記式においてnで表される値である。
透過率(%)=10−n×100
本発明において、吸光度を測定する際の波長は、800〜300nmの範囲で選択された少なくとも1つの波長であればよく、用いる原料の種類に応じて、吸光度の変化が最も顕著に現れる最適な波長を適宜選択すればよい。具体的には、例えば、触媒として酢酸クロムを用い、アルキレンオキシドとしてエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを用いる場合には、450〜300nmの範囲で選択された波長における吸光度を測定することが好ましい。なお、吸光度の変化は1つの波長においてモニターすれば充分であるが、複数の波長における吸光度の変化を同時にモニターするようにしても差し支えない。
【0011】
本発明は、吸光度の変化を目安に反応の停止時機を決定するものであるが、具体的には、吸光度が特定の値に達した時点を停止時機とすればよい。反応の停止時機とする時の吸光度の値は、触媒量の種類や量など反応の諸条件によって異なるので、通常、実施しようとする諸条件における残存酸分量と吸光度との相関関係を予め調べておき、これに基づいて設定すればよい。具体的には、残存酸分量と吸光度との相関関係において目標とする残存酸分量に相当する吸光度になった時点を、反応の停止時機とすればよい。なお、目標とする残存酸分量は、用途に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常は、反応液中、1重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましい。
【0012】
本発明において、吸光度を測定する際の光路長は、特に限定されないが、反応停止時機とする時の吸光度(予め調べた残存酸分量と吸光度との相関関係において目標とする残存酸分量に相当する吸光度)の値が0.7〜1.5、好ましくは0.8〜1.3、より好ましくは1.1〜1.2となるように設定することが好ましい。
本発明において、反応液の吸光度の測定方法としては、反応中の系内を連続的にモニターできる方法であれば、特に制限はなく、例えば、反応器中に検出端を設けて直接測定してもよいし、反応器に循環ラインを設け、反応液を吸光度測定装置に導入して測定するようにしてもよい。
【0013】
反応器に循環ラインを設けて吸光度を測定する場合、反応液の循環速度については、特に制限はないが、例えば、吸光度測定装置およびその導入部の配管容積に対する液空間速度(流量[L/h]/吸光度測定装置およびその導入部の配管容量[L])が5[h−1]以上、好ましくは12[h−1]以上、より好ましくは60[h−1]以上となるようにすることが望ましい。
反応器に循環ラインを設けて吸光度を測定する場合、循環ライン中で液温が低下すると、反応器内の反応液の吸光度と測定で得られた吸光度との間に誤差が生じる可能性があるので、循環ライン中の液温は、反応温度−20℃の範囲に保つようにするのが好ましく、より好ましくは反応温度−5℃の範囲に保つようにするのがよい。循環ライン中の液温が前記範囲よりも低くなるような場合には、例えば、反応液の循環速度を速くするか、もしくは循環ラインの周囲に保温手段を設けるようにすればよい。
【0014】
本発明において、吸光度の測定に用いることのできる測定装置としては、特に制限はなく、例えば、通常のUV吸光度測定装置等を用いればよい。なお、測定部に異物が付着すると測定結果に振れを生じる恐れがあるので、測定装置には、ストレーナーを設置するなど、異物の混入を防止する措置を講じておくことが好ましい。
本発明において、吸光度の測定は、反応の終点前であればどの時点から開始してもよいが、両原料を供給し終えた時点から測定を開始するのが好ましい。
本発明において、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応を停止する方法としては、特に制限されず、例えば、該反応は発熱反応であるので、冷却することにより反応器内の温度を設定した反応温度から速やかに下げることで、反応を停止することができる。また、このほかにも、例えば、反応を加圧下で行う場合に解圧することにより反応器内のアルキレンオキシドを除去するようにするか、反応器内に酸(好ましくは、目的生成物の沸点よりも高い沸点の酸)を添加することにより残存アルキレンオキシドを消費させるようにするか、イオン交換樹脂等で触媒を除去(不活性化)するようにすることでも、反応を停止することができる。
【0015】
本発明においては、前述のようにして反応の停止時機を決定すること以外の操作は、特に制限されるものではなく、この種の反応に一般的に用いられている方法と同様の方法により行うことができる。
本発明の製造方法に用いることのできるアルキレンオキシドとしては、特に限定はされないが、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、具体的には、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも特に好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドがよい。また、本発明において用いる(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0016】
本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸の全供給量とアルキレンオキシドの全供給量との量関係は、(メタ)アクリル酸1モルに対して、アルキレンオキシドが1.0〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0モル、さらに好ましくは1.0〜3.0モル、さらにより好ましくは1.0〜2.0モルである。(メタ)アクリル酸1モルに対して、アルキレンオキシドが1.0モル未満であると、反応が進行しにくくなるおそれがあり、一方、アルキレンオキシドが10モルを超えると、アルキレンオキシドの回収工程等が必要となり経済的に不利益となるおそれがある。
【0017】
本発明の製造方法において、原料である(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドの仕込み方法(順序)については、通常は、反応器に(メタ)アクリル酸の一部もしくは全量を初期仕込みしておき、そこにアルキレンオキシドもしくはアルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸の残部とを供給するのが一般的であるが、これに限定されるものではく、例えば、アルキレンオキシドの一部もしくは全量を初期仕込みするようにしてもよい。
また、前記(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドの供給は、一括投入および逐次投入(連続的な投入および/または間欠的な投入)のいずれでもよいが、好ましくは、初期仕込み分については一括投入するのがよく、その後に供給する分については逐次投入するのがよい。なお、連続的な投入とは、少しずつ連続的に投入する形態を意味し、間欠的な投入とは、パルス的または断続的に、任意の回数に分けて投入する形態を意味する。また、連続的に投入をする場合は、投入速度を一定にしたまま投入終了まで進行させてもよいし、途中で少なくとも1回速度を変化させて進行させてもよいし、速度自体を連続的に任意に変化させながら進行させてもよい。但し、途中で速度を変化させる場合には、変更前から変更後へと速度を低下させることが好ましい。
【0018】
また、(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドを投入する際には、常温で投入してもよいし、その時点での系内の温度を変化させないように所望の温度にまで予め加温してから投入してもよい。
また、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドの両方を同時に投入する場合には、それぞれ別々の投入ラインから添加してもよいし、反応器に投入する前に、配管、ラインミキサー、ミキシングタンク等で予め混合してから添加してもよいが、それぞれ別々の投入ラインから添加した場合には、系内におけるアルキレンオキシドと(メタ)アクリル酸のモル比に偏りが生じるおそれがあるので、好ましくは、反応器へ投入する前に予め混合してから添加するのがよい。なお、それぞれ別々の投入ラインから添加する場合、投入の形態(一括投入、逐次投入)、投入する原料の温度、投入速度などについては、各原料で必ずしも同じである必要はない。
【0019】
なお、本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸およびアルキレンオキシドの全供給量を仕込み終えるまでに要する時間は、特に制限されるものではなく、反応の進行具合や生産性等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明の製造方法において用いることのできる触媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、クロム(Cr)化合物、鉄(Fe)化合物、イットリウム(Y)化合物、ランタン(La)化合物、セリウム(Ce)化合物、タングステン(W)化合物、ジルコニウム(Zr)化合物、チタン(Ti)化合物、バナジウム(V)化合物、リン(P)化合物、アルミニウム(Al)化合物、モリブデン(Mo)化合物およびアミン化合物の群から選ばれる少なくとも1種を含む触媒であることが好ましく、均一系触媒であるものがより好ましい。特に、触媒として、アミン化合物とこれ以外の触媒とを併用することにより、触媒活性に相乗効果が見られ、反応転化率が高くなるうえ、反応選択率も高くなる、などの効果が得られる。
【0020】
前記クロム(Cr)化合物は、クロム(Cr)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、塩化クロム、アセチルアセトンクロム、蟻酸クロム、酢酸クロム、アクリル酸クロム、メタクリル酸クロム、重クロム酸ソーダ、ジブチルジチオカルバミン酸クロム等が挙げられる。
前記鉄(Fe)化合物は、鉄(Fe)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、鉄粉、塩化鉄、蟻酸鉄、酢酸鉄、アクリル酸鉄、メタクリル酸鉄等が挙げられる。
【0021】
前記イットリウム(Y)化合物は、イットリウム(Y)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンイットリウム、塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、アクリル酸イットリウムおよびメタクリル酸イットリウム等が挙げられる。
前記ランタン(La)化合物は、ランタン(La)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、アクリル酸ランタンおよびメタクリル酸ランタン等が挙げられる。
【0022】
前記セリウム(Ce)化合物は、セリウム(Ce)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンセリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、アクリル酸セリウムおよびメタクリル酸セリウム等が挙げられる。
前記タングステン(W)化合物は、タングステン(W)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、塩化タングステン、アクリル酸タングステンおよびメタクリル酸タングステン等が挙げられる。
【0023】
前記ジルコニウム(Zr)化合物は、ジルコニウム(Zr)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンジルコニウム、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、アクリル酸ジルコニウム、メタクリル酸ジルコニウム、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムプロポキシド、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、アクリル酸ジルコニルおよびメタクリル酸ジルコニル等が挙げられる。
前記チタン(Ti)化合物は、チタン(Ti)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、塩化チタン、硝酸チタン、硫酸チタン、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、アクリル酸チタンおよびメタクリル酸チタン等が挙げられる。
【0024】
前記バナジウム(V)化合物は、バナジウム(V)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンバナジウム、塩化バナジウム、ナフテン酸バナジウム、アクリル酸バナジウムおよびメタクリル酸バナジウム等が挙げられる。
前記リン(P)化合物は、リン(P)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィンおよび1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタンなどの、アルキルホスフィン類およびその(メタ)アクリル酸塩等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0025】
前記アルミニウム(Al)化合物は、アルミニウム(Al)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アクリル酸アルミニウムおよびメタクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
前記モリブデン(Mo)化合物は、モリブデン(Mo)原子を分子内に有する化合物で、かつ反応液に可溶であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、塩化モリブデン、酢酸モリブデン、アクリル酸モリブデンおよびメタクリル酸モリブデン等が挙げられる。
【0026】
前記アミン化合物は、アミン官能基を分子内に有する化合物であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トリアルキルアミン類、ピリジン等の環状アミン類およびその4級塩などの均一系アミン化合物や、3級アミノ基、4級アンモニウム基およびピリジニウム基等の塩基性官能基を少なくとも1種含有する塩基性アニオン交換樹脂などの不均一系アミン化合物が挙げられ、好ましくは、3級アミノ基、4級アンモニウム基およびピリジニウム基等の塩基性官能基を少なくとも1種含有する塩基性アニオン交換樹脂であるのがよく、より好ましくは、3級アミノ基、4級アンモニウム基およびピリジニウム基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する塩基性アニオン交換樹脂であるのがよい。
【0027】
また、前記触媒として、金属塩および金属錯体等の金属イオンを含む均一系金属触媒(例えば、クロム化合物、鉄化合物等)を用いる場合には、使用した触媒を回収することが可能となり、該回収した触媒を再利用することもできる。触媒の回収は、具体的には、例えば、金属塩および金属錯体等の金属イオンを含む均一系金属触媒とともに、アニオン交換樹脂(4級ホスホニウム塩、3級アミノ基、4級アンモニウム基およびピリジニウム基等の塩基性官能基を少なくとも1種含有する塩基性アニオン交換樹脂)とを共存させて反応させると、反応の進行とともに均一系金属触媒をアニオン交換樹脂に吸着させることができるので(具体的には、反応系の(メタ)アクリル酸の濃度が0.10重量%付近にまでに低下した際に吸着され得る。)、この均一系金属触媒が吸着したアニオン交換樹脂に原料である(メタ)アクリル酸を接触させて、吸着した均一系金属触媒を遊離させるようにすればよい。
【0028】
本発明の製造方法において、前記触媒の使用量は、特に限定されないが、均一系触媒の場合は、原料(メタ)アクリル酸の全供給量に対して0.001〜10モル%の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは0.005〜5モル%、さらにより好ましくは0.01〜3モル%の範囲で用いるのがよい。0.001モル%未満であると、反応速度が小さくなるため反応時間が長くなり生産性が低下するおそれがあり、一方、10モル%を超えると、副生物の反応選択性が高くなる傾向があるので好ましくない。一方、不均一系触媒の場合、触媒の使用量は、特に限定はされないが、原料(メタ)アクリル酸の全供給量に対して5〜80重量%の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは10〜70重量%の範囲で用いるのがよい。また、触媒由来の不純物の副生を低減するという観点からは、触媒の使用量は前記範囲内で少なければ少ないほど良い。なお、触媒由来の不純物としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、触媒として酢酸クロムを用いた場合にはヒドロキシアルキルアセテート(例えば、ヒドロキシエチルアセテート、ヒドロキシプロピルアセテートなど)がある。
【0029】
本発明の製造方法において、前記触媒は、その全使用量を反応器に予め仕込んでおくことが一般的であるが、これに限定はされず、例えば、全使用量の一部を反応器に初期仕込みし、その後、反応の進行途中で残部を追加して供給するようにしてもよい。また、前記触媒が均一系触媒の場合は、両原料のいずれかに予め溶解させておいてから、反応器に仕込んだり、供給したりしてもよく、例えば、初期仕込みする場合には、反応器とは別の溶解槽で、初期仕込みする原料に予め溶解させておいて、反応器に仕込むようにしてもよい。
本発明の製造方法においては、必要に応じて、反応の際に系内に重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤としては、特に制限はなく、一般に工業的に用いられるものであれば使用可能であり、具体的には、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール化合物;N−イソプロピル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類;チオジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等のジアルキルジチオカルバミン酸銅塩類;2,2,4,4−テトラメチルアゼチジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−4,4−ジプロピルアゼチジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチル−3−オキソピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、6−アザ−7,7−ジメチル−スピロ(4,5)デカン−6−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−1−オキシル、4,4’,4’’−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)ホスファイト等のN−オキシル化合物;等が挙げられる。これら重合防止剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記重合防止剤を用いる場合、その添加量は、原料(メタ)アクリル酸の全供給量に対して、0.0001〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5重量%であるのがよい。また、重合防止剤の添加時機については、特に制限はないが、好ましくは初期仕込みする成分とともに初めに反応系に添加しておくのがよい。
本発明の製造方法においては、反応を温和に進行させることなどを目的として、本発明の効果を損なわない範囲で、反応系に溶媒を存在させて反応を行ってもよい。溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン等の一般的な溶媒の1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応温度は、通常は、40〜120℃の範囲が好ましく、50〜120℃の範囲がより好ましく、50〜110℃の範囲がさらにより好ましい。反応温度が40℃未満であると、反応速度の低下が著しく、反応時間が長くなり生産性が低下する傾向がある。一方、反応温度が120℃を超えると、ジエステル体や二付加体が副生しやすくなるおそれがある。
本発明の製造方法において、反応時の系内圧力は、使用する原料の種類やその使用割合にもよるが、一般には加圧下で行うことが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法においては、反応を停止させた後、この種の反応で通常行われる操作により未反応のアルキレンオキシドを除去し、続いて、蒸留等の通常の方法により精製を行って、目的のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを得るようにすればよい。具体的には、残存する未反応のアルキレンオキシドを減圧下で除去した後に、例えば、1〜50hPa、好ましくは1〜20hPaの圧力下、50〜120℃、好ましくは60〜100℃の温度で蒸留すればよい。
本発明の製造方法においては、反応停止後、ジエステル抑制剤を添加することが好ましい。これにより、反応停止後に進行するジエステル体の副生をも効果的に抑制し、さらにジエステル体を低減することができる。ジエステル抑制剤としては、具体的には、例えば、シュウ酸、無水シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、サリチル酸、オクタン酸、アジピン酸、セパシン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、1,6,7,12−ドデカンテトラカルボン酸、安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸およびその無水物;グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、クレゾール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2,3,4,5−テトラヒドロキシヘキサン、キシリトール、マンニトール、カテコール、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシトルエン、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリス(ヒドロキシメチル)フェノール、1,2,4,5−テトラヒドロキシベンゼン等の多価アルコール;エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、アセチルアセトン、クペロン、オキシン、ベンジジン、ジエチルジチオカルバミン酸等の金属キレート剤;等が挙げられる。これらジエステル抑制剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ジエステル抑制剤を用いる場合、その添加量は、前記触媒1モルあたり0.1〜10モルとすることが好ましく、より好ましくは0.5〜5モルとするのがよい。触媒1モルあたり0.1モル未満であると、ジエステルの副生を抑制する効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方、10モルを超えると、添加したジエステル抑制剤が製品純度を低下させるおそれがあり、特にカルボン酸類を用いた場合には得られる製品に含まれる酸成分の含有量が増加するおそれがある。また、ジエステル抑制剤の添加時機については、反応停止後であれば特に制限はなく、例えば、反応停止(冷却開始)直後、蒸留開始時、蒸留中などの際に、1回で、もしくは複数回に分割して添加するようにすればよいのであるが、好ましくは、反応停止直後に添加するのがよい。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(実施例1)
メタクリル酸448g、触媒として酢酸クロム0.90g、および重合防止剤としてフェノチアジン0.45gを、容量1リットルの攪拌機付きSUS−316製オートクレーブに仕込み、その内部を窒素ガスで置換した後、60℃に昇温し、内圧を1.0MPaとした。次いで、エチレンオキシド252gを4時間かけてほぼ等速で供給し、この間60℃を維持して反応させた。エチレンオキシドの供給終了時点で、反応液をサンプリングし、ガスクロマトグフィーによりメタクリル酸(MAA)の反応転化率を測定した。エチレンオキシドの供給終了後、80℃に昇温するとともに、反応液をUV吸光度測定装置に導入し(UV吸光度測定装置およびその導入部の配管体積に対する液空間速度100h−1、光路長1cm)、UV390nmにおける反応液の吸光度を連続的に測定しながら、反応を継続した。そして、反応液の吸光度が1.2になった時点で、冷却を開始して反応を停止した。反応停止後、得られた反応液をサンプリングし、ガスクロマトグフィーにより、未反応のメタクリル酸(MAA)濃度、ジエステル体であるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)濃度、二付加体であるジエチレングリコールモノメタクリレート(DEGMMA)濃度をそれぞれ測定した。
【0035】
以上の反応操作を5回繰り返した。各回における、エチレンオキシド供給終了時点でのMAAの反応転化率、80℃に昇温してから冷却開始までの時間(熟成時間)、および反応停止後の反応液のMAA濃度、EGDMA濃度、DEGMMA濃度、を表1に示す。なお、それぞれ、5回の平均値および振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
【0036】
【表1】
【0037】
また、1回目の反応においては、エチレンオキシドの供給終了後、反応液の吸光度を連続的に測定しながら反応を継続している間、吸光度が適当な間隔となるごとに反応液をサンプリングし、中和滴定により該サンプリング液の酸分量(酸分濃度)を測定した。なお、反応液の吸光度が1.2になった時点で冷却を開始して反応を停止したのであるが、反応液の一部については引き続き継続して反応させ、反応液の吸光度が1.4になった時点の酸分量(酸分濃度)も測定した。各サンプリング液の酸分量(酸分濃度)と、そのサンプリング液を採取したときの吸光度とを表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2から、吸光度と反応液中に存在する酸分量とは相関関係にあることが示唆された。
(比較例1)
実施例1と同様にして、メタクリル酸、酢酸クロムおよびフェノチアジンの仕込みからエチレンオキシドの供給を終了するまでの操作を行い、エチレンオキシドの供給終了時点で、反応液をサンプリングし、ガスクロマトグフィーによりメタクリル酸(MAA)の反応転化率を測定した。エチレンオキシドの供給終了後、80℃に昇温して反応を継続し、昇温から2.10時間後に冷却を開始して反応を停止した。反応停止後、得られた反応液をサンプリングし、ガスクロマトグフィーにより、未反応のメタクリル酸(MAA)、ジエステル体であるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、二付加体であるジエチレングリコールモノメタクリレート(DEGMMA)の各含有量をそれぞれ測定した。
【0040】
以上の反応操作を5回繰り返した。各回における、エチレンオキシド供給終了時点でのMAAの反応転化率、および得られた反応液のMAA含有量、EGDMA含有量、DEGMMA含有量、を表3に示す。なお、それぞれ、5回の平均値および振れ幅(5回のうちの最大値と最小値との差)についても併せて示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表1および表3から、表1に示す実施例1の製造方法によれば、得られたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに含まれるメタクリル酸、ジエステル体および二付加体の量は、1回目から5回目まで常に一定しており、安定した品質の製品を得ることができるのに対して、表3に示す比較例1の製造方法によれば、得られたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに含まれるメタクリル酸、ジエステル体および二付加体の量は、1回目から5回目まででバラツキがあり、得られる製品品質の安定化が図れないことが明らかである。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとの反応において反応終点を的確に見極め、不純物の少ない高品質のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを安定して効率よく製造することができる。
Claims (1)
- 触媒の存在下(メタ)アクリル酸とアルキレンオキシドとをバッチ反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを製造するにあたり、反応液の吸光度を800〜300nmの範囲で選択された少なくとも1つの波長において測定し、その吸光度の変化に基づき反応の停止時機を決定するようにする、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
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