JP2004119386A - 炭素繊維材料及びその複合材 - Google Patents
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Abstract
【構成】 太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維が凝集し、その繊維同士の接点がタール、ピッチ等の炭化物によって固着されており、大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下のフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料をマトリックスのフィラーに用いた導電材料等の複合材である。
【選択図】 図2
Description
本発明の炭素繊維材料は、各種有機高分子材料や無機高分子材料、各種セラミック、金属等のマトリックスに配合して導電材料、摺動性、熱伝導性、強度その他の機能を向上または付与させるために添加するフィラー材料として好適なものである。
これら気相法炭素繊維の製造方法としては(1)熱分解炉内の基板上に遷移金属の超微粉を散布してシードとして用い製造する方法(特許文献1参照)、(2)フェロセン等の遷移金属化合物を気化させ熱分解炉に導入し、遷移金属の微粉末を生成させシードとして用い製造する方法(特許文献2参照)、(3)鉄等の遷移金属を直接熱分解炉中で気化させてシードを作り製造する方法(特許文献3参照)、(4)フェロセン等の遷移金属化合物を液体有機化合物に分散あるいは溶解させて熱分解炉中にスプレーしてシードとして製造する方法(特許文献4参照)等がある。
炭素繊維の集合物を高分子材料のフィラーとして利用する場合は集合物を粉砕することが必要である。粉砕方法としてはジェットミル等で炭素繊維を微細に粉砕する方法(特許文献8、特許文献9参照)、10mm以下のジルコニア、アルミナ等のセラミックスや高硬度の金属製の小球と一緒に高速で撹拌して粉砕する方法(特許文献10参照)などがある。また単繊維自体を破砕して繊維に破断面を付与したものがある(特許文献11参照)。
気相法炭素繊維自体は素材としては導電性や熱伝導性が良好な材料であるが、これを複合材料のフィラーとして各種の高分子材料等に添加しても、現状ではまだ十分な性能が発揮されていない。
導電性の向上を例にとって考えると、通常、複合材の導電性を向上させるために添加されるフィラーとしては導電距離を長くするという考えから繊維状物質が選択されている。
しかし、繊維長が長くなればなるほど繊維が配向し易くなり、樹脂に配合したときに複合材の流動性やそれに伴う成形性が悪くなる。
そのため結果的には微細な繊維形状をもつウイスカー状の物質、例えば生成したままの気相法炭素繊維やそれらを粉砕した単繊維が用いられ、アスペクト比が10以上、好ましくは100以上の繊維で、なおかつ長さが数10μm程度が好ましいと考えられている。しかし、このように繊維が小さくなればなるほど繊維と繊維の接点が多くなり接触抵抗が増加するばかりではなく、成形したときに繊維同士の接点にはマトリックスの樹脂が入り易く結果的に導電性を阻害する原因ともなる。
従って複合材の強度や成形性を保持しながら導電性を高めるためには3次元的な繊維状の構造体で接点を多く作り易く、なおかつ導電距離を保持する構造のフィラーが好ましいと考えられる。
しかしながら未だこのような構造を持つ気相法炭素繊維からなる炭素材料のフィラーは開発されていない。
本発明は各種の複合材におけるフィラーとして熱伝導性や導電性を高めることができる炭素繊維材料を提供することを目的とする。
また、製造方法の発明は太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維を圧縮成形し、嵩密度を0.02g/cm3 以上とした成形体を600℃以上、好ましくは800℃以上に加熱するかまたは前記気相法炭素繊維を0.1kg/cm2 以上で圧縮成形しながら600℃以上、好ましくは800℃以上に加熱し、得られた成形体を剪断力または圧縮力を利用した解砕機で解砕し、大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下のフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料とする方法である。
気相法炭素繊維から立体構造を有するフロック状等の構造体にするには、まず繊維集合体を圧縮して密度を上げて成形することによって繊維同士をつなぎ合せる。その際使用する気相法炭素繊維は分岐していない単繊維であっても、また分岐状の繊維であっても、またそれらを混合したものであっても良い。原料の気相法炭素繊維は先に示した何れの方法で製造したものでも良いがその繊維の径(太さ)が0.05μm以上5μm以下、好ましくは0.1μm以上1μm以下の繊維が良く、繊維径が0.05μmより小さくなると圧縮成形する際に折れ易く、また5μmより大きくなると成形し難いだけでなく十分なフィラー特性が得られにくい。繊維の長さは1〜1000μm程度である。
粗製の気相法炭素繊維はその表面の結晶が十分発達していない部分があると共に、更にタール分を始めとする未反応の有機化合物が吸着され繊維表面が覆われている。
この未反応の有機化合物量は製造条件によっても異なるが一般的には5〜20質量%程度である。粗製の気相法炭素繊維を成形するときにこの未反応の有機物質がバインダーの役割を果すと共にこれを熱処理すると容易に炭化して繊維同士を接着する炭化物となる。
成形体の大きさは小さ過ぎると圧力によって繊維の折れる割合が大きくなるので、例えば円柱状であれば直径が少なくとも3mm以上、好ましくは5mm以上である。
成形体密度は製品となるフロック状炭素繊維材料の密度にも関係する。もとの気相法炭素繊維の嵩密度は非常に小さく0.001〜0.005g/cm3 程度であり、これを成形して密度を上げる。性能を上げ、取り扱い易い成形体としての嵩密度は0.02g/cm3 以上が適し、それより小さくなると熱処理もやりにくく効率も悪く、更にフィラーとしての十分な性能が得られない。
熱処理炉の材質は処理温度によって選択されるが2000℃以上の高温になると黒鉛等の炭素材料が最適である。
以上は成形と熱処理を別の工程で行なう場合であるが、これを同時に行うこともできる。例えば圧縮成形において、成形装置に加熱手段を装備し、前記した圧力で加圧しながら加熱する方法である。
本発明の特徴は気相法炭素繊維の集合体を成形し、その成形体を熱処理した後一定の大きさに解砕して立体構造を維持するところにある。解砕したものはフロック状または糸鞠状をなし、大きさ(最大径部分)は5μm以上、500μm以下、好ましくは10μm以上、200μm以下で、各繊維が絡み合った立体構造である。絡み合った繊維の接点はその少なくとも一部がタール、ピッチ等の炭素質物の炭化物で固着されている。そして圧縮成形、熱処理したものを解砕しているので無加圧で成形、熱処理したものの粉砕品に較べ接点が多く、また強く固着されている。従って、複合材にした際にもフロック状等の形態がかなり維持されて分散する。
解砕方法は、フロックの大きさが維持できるような方法であれば何れでも良い。解砕は成形体を1段で解砕しても良いが、2段以上の解砕機を組み合わせて解砕する方法でも有効である。例えば予め圧縮型解砕機、剪断粗砕機、衝撃解砕機等によって数10mm以下の形状に粗砕し、その後にロールミル、スクリューミル、スタンプミルや高速回転式のピンミル、スクリーンミル、ハンマーミル等の中砕機にかけて5μm以上、500μm以下の範囲の形状に解砕する。解砕された炭素繊維材料の形状は図2の光学顕微鏡写真に見られるようにフロック状等の立体構造を有している。更にその詳細構造を観察すると図3に示すようなSEM写真によりその接点が確認できる。この接点はSEM写真の撮影角度を種々変えることにより確認できる。その接点の数はフロックの中に少なくとも5点以上好ましくは10点以上の固着点を有する。
破砕したものは前記構造体が主体をなしているが、その他に一部(30質量%以下程度、好ましくは10質量%以下)単繊維まで破砕されたものが含まれている。単繊維は分級して除くことも可能であるが、それを含んだまま炭素繊維材料としてもよい。むしろ単繊維を含んでいることが樹脂等との成形体にした際にフロック状等の構造体をつなぎ合せる効果により導電性を高めることに寄与する。
(実施例1)
気相法炭素繊維の成形には図1に示すような底板1、円筒2、プランジャー3からなる成形装置を用いた。円筒2内に炭素繊維4を充填し、プランジャーにより5kg/cm2 で加圧した。成形体の大きさは150mm径×200mm長さである。成形体の嵩密度は0.06g/cm3 であった。気相炭素繊維は大部分が直径0.1〜0.5μm、長さが5〜50μmの範囲に入るもので単繊維と分岐を有する繊維が混在したものを用いた。
成形装置から取り出された成形体を1300℃で保持された焼成炉内に入れ、アルゴン気流中で30分/個かけて熱処理した。焼成炉内から成形体を取り出し冷却後スパリルタンリューザーで5分かけて荒解砕した後、更にバンタムミルで解砕した。その結果、フロック状ないし糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料が得られた。この炭素繊維材料は大きさが6〜300μmの構造体約82質量%で残りは単繊維等であった。構造体の光学顕微鏡写真を図2に、SEM写真を図3に示す。図3から繊維同士の接点の一部が固着しているのがわかる。
この炭素繊維材料の導電性を評価するため図4に示すような測定装置により電気抵抗を測定した。電気絶縁性のセル(内面が図で横方向長さ40mm、幅10mm)5内に上記で得られた炭素繊維材料7を1.0g充填し、加圧板6により加圧し、炭素繊維材料の横方向に黒鉛板8を設けて電気回路を接続し、圧縮密度と電気比抵抗の関係を調べた。その結果を図5に示す。
実施例1で得られた成形体を更に高周波炉に導入し、アルゴン気流中で2800℃の温度で黒鉛化した。中心部の温度が確実に2800℃になるまで加熱した後冷却して取り出した。得られた成形体をスパルタンリュウザーで解砕後パルペライザーで更に解砕した。
このフロック状物を粉末X線回折で分析したところ面間隔C値の2倍値は6.785Åであった。また実施例1と同じ方法による電気比抵抗は密度が0.8g/cm3 のとき0.015Ωcmであった。
前記比較例における熱処理品を更に2800℃で熱処理し、前記比較例と同様に粉砕して粉末状の炭素繊維を得た。このものの電気比抵抗は密度が0.8g/cm3 のとき0.027Ωcmであった。
エポキシ系樹脂(エピコート8/9/エチレングリコールグリシジルエーテル/エピキュアYH300系)に実施例1で得た炭素繊維材料を2質量%添加し、バンバリーミキサーにより混練し、圧縮成形した。成形体の比抵抗は30Ωcmであった。実施例1のところで比較例として挙げた単繊維を用い、上記と同様にして成形体を得、比抵抗を測定した結果は90Ωcmであった。この結果から本発明の炭素繊維材料は導電性が良好であることがわかる。
2 円筒
3 プランジャー
4 気相法炭素繊維
5 セル
6 圧縮板
7 炭素繊維試料
8 黒鉛板
9 電源
Claims (4)
- 太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維が凝集し、その繊維同士の接点の少なくとも一部が炭素質物の炭化物によって固着された大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下であるフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料をマトリックスに配合して得られた導電材料。
- 太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維が凝集し、その繊維同士の接点の少なくとも一部が炭素質物の炭化物によって固着された大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下であるフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料をマトリックスに配合して得られた摺動性材料。
- 太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維が凝集し、その繊維同士の接点の少なくとも一部が炭素質物の炭化物によって固着された大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下であるフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料をマトリックスに配合して得られた熱伝導性材料。
- 太さが0.05ミクロン以上、5ミクロン以下の気相法炭素繊維が凝集し、その繊維同士の接点の少なくとも一部が炭素質物の炭化物によって固着された大きさが5ミクロン以上、500ミクロン以下であるフロック状または糸鞠状の構造体を主体とする炭素繊維材料をマトリックスに配合して得られた複合材。
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