JP2004003097A - 炭素繊維、その製造方法及び電池用電極 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来得られなかった高い結晶性を持つ、あるいは導電性のよい微細な炭素繊維を開発すること及びその繊維をフィラーとして、より性能の高い電池用電極を提供する。
【解決手段】繊維径1μm 以下で、X線回折法で求めた層面間隔d002 が0.335 〜0.34nm・の範囲内でありかつd002 <0.3448−0.0028(logφ) (式中、φは炭素繊維の直径である。)を満たし、Lcが 40nm 以下の高結晶性の微細な炭素繊維、及び繊維の結晶内にホウ素を含有する微細な炭素繊維。この微細な炭素繊維は気相法、アーク放電法、レーザー法等で製造される微細な炭素繊維を原料とし、これにホウ素またはホウ素化合物を添加し、圧縮して好ましくは嵩密度を0.05g/cm3 以上とし、これを2000℃以上の温度で熱処理することにより製造することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】繊維径1μm 以下で、X線回折法で求めた層面間隔d002 が0.335 〜0.34nm・の範囲内でありかつd002 <0.3448−0.0028(logφ) (式中、φは炭素繊維の直径である。)を満たし、Lcが 40nm 以下の高結晶性の微細な炭素繊維、及び繊維の結晶内にホウ素を含有する微細な炭素繊維。この微細な炭素繊維は気相法、アーク放電法、レーザー法等で製造される微細な炭素繊維を原料とし、これにホウ素またはホウ素化合物を添加し、圧縮して好ましくは嵩密度を0.05g/cm3 以上とし、これを2000℃以上の温度で熱処理することにより製造することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、樹脂、セラミック他の各種の材料に添加して、導電性や熱伝導性を改善するために使用するフィラー材として、またFED (フィルドエミッションディスプレー)用の電子放出素材として、更には各種電池の特性改善材料等のフィラー材として用いられる微細な炭素繊維(コイル状炭素繊維、気相法炭素繊維、ウィスカ状炭素繊維、延伸炭素繊維などの繊維状炭素を含む)及びその製造法に関する。また乾電池、Pb蓄電池、キャパシタや最近のLiイオン2次電池をはじめとする各種電池の正極または負極にこの微細な炭素繊維を添加して充放電容量の改善、極板の強度を改善した電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明で言うところの「微細な炭素繊維」は、一般に炭化水素の熱分解による気相法で製造されている(特開平7−150419号公報、特開平5−321039号公報、特開昭60−215816号公報、特開昭61−70014号公報、特公平5−36521 号公報、特公平3−61768 号公報等) 。その繊維は、直径が通常0.01〜5μm程度である。しかし、径が0.01μm以上であれば、気相法の炭素繊維と同様の同心円状、年輪状の構造を持つカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーも含まれる。
【0003】
微細な炭素繊維は金属、樹脂、セラミック等への充填材 (フィラー) としての用途が提案されている。特に近年小型の携帯電話、ビデオカメラ、ノート型パソコン等のポータブル機器の発展が著しく、それに使用する電源としてLiイオン2次電池(Li電池) をはじめとする小型の2次電池の需要が急激に伸びており、その電池のフィラーとしての用途が検討されている。
【0004】
Li電池の電極に使用される負極用の炭素材料は、通常各種のハードカーボン、メソフェーズカーボンマイクロビーズ (MCMB) 、メソフェーズピッチカーボンファイバー (MPCF) 、人造黒鉛、各種コークス、それに天然黒鉛等である。またこれらの負極材にピッチ系等の炭素繊維や気相法炭素繊維を添加することも提案されている。また正極には導電性付与剤として、黒鉛微粉やカーボンブラック等も用いられている。
【0005】
Li電池の負極は充放電の際リチウムイオンのインターカレーション (挿入) 及びデインターカレーション (放出) が行われる。黒鉛は層状構造をしており、反応物質(例えばLi) が層間を押し拡げ挿入する反応(インターカレーション)を生じやすい。その反応物質が層間に入った生成物を層間化合物(Graphite Intercalation Compounds) という。また、この層間化合物は反応物質を放出(デインターカレーション)して容易に元の黒鉛に戻る。微細な炭素繊維は導電性や、熱伝導性の優れた材料であり、かつインターカレーション能力を有するので、添加しても電池の容量を下げることはなく、負極材の添加剤として注目されている。
【0006】
Li電池の高容量化にはこのインターカレーション能力を上げることが第一である。インターカレーション能力を上げるには一般に炭素材料の黒鉛化度、即ち結晶性を高めることが必要となり、微細な炭素繊維についても同様である。
【0007】
鉛蓄電池の負極は元来導電性の悪い物質で構成されており、その負極の導電性を向上させるためカーボンブラック、黒鉛微粒子、炭素繊維等の炭素材料を添加することができ、この場合も導電性の高い結晶性のよいものが望まれている。このような炭素材料の結晶性を向上させるためには、通常、高温で処理する黒鉛化方法が用いられている。
【0008】
一方、平均繊維径が小さい、特に1μm以下のような微細な炭素繊維は、嵩密度が小さく充填性が上らないので、電極中にこの炭素繊維を大量に添加すると、電極密度が低下する。従って通常は20質量%以下、好ましくは10質量%以下しか添加されていない。そのためにこの繊維については結晶性を上げても大きな添加効果は期待できないと考えられ、このような微細な炭素繊維の結晶性を向上させようとする試みは、高温で熱処理する以外には検討されていない。そのために、従来使用されている微細な炭素繊維はX線回折法で求めた結晶層面間隔d002 は3.385Åより大きく、結晶性もあまり発達していない。
【0009】
また、高容量化の要求に伴い、大量の電流を充放電するため電極の電気抵抗の低い材料が要求されている。
【0010】
電極の抵抗値を下げるために、各種の導電付与材の添加が検討されているが、気相法炭素繊維を主とする繊維状物質のフィラーが有効であることが知られている。その理由は、
1)微細な繊維物質は 100以上のアスペクト比を持ち、導電パスが長いこと、
2)気相法炭素繊維は結晶性が良く、導電性に優れていること、
3)気相法炭素繊維自身も充放電能力を持ち、添加してもLi電池の容量の低下を起こさない、
等である。
【0011】
しかしながら、従来市販されている1μm以下の径を持つ微細繊維物質の導電性は 0.8g/cm3 の密度状態で評価した場合、粉体抵抗として0.01Ω・cmが限界であり、これより低い抵抗値を持つ材料は無かった。
【0012】
最近の電池の充放電容量の向上のため、負極材の結晶性を上げて容量を高めてくると、負極材だけでなく、更に添加材についても放電容量の高い材料が要求されるようになる。従って、その添加材のカーボン材料についても結晶性を上げることがどうしても必要になる。
【0013】
そこで、この微細な炭素繊維の結晶性を上げる必要に迫られ、3200℃の高温まで熱処理温度を上げて結晶性を向上させることを検討した。
【0014】
しかしながら、径が約0.15μm程度の微細な炭素繊維 (気相法炭素繊維) は3000℃以上の温度に加熱しても層面間隔d002 の格子定数は 0.3385nm よりも小さくすることは不可能であった。
【0015】
同時に、導電性についても、密度が 0.8g/cm3 の時の粉体抵抗として0.01Ω・cmが限界点であった。従ってより結晶が発達し低抵抗のものが求められている。
【0016】
その原因は気相法炭素繊維は繊維径が非常に細かいことに加えて同心円状の結晶で、中心部に中空状またはアモルファスな部分を有する特殊な構造であるためと考えられる。しかも繊維径が1ミクロン以下のように細くなると中心部に近くなればなるほど構造的に炭素の六角網目平面を小さい径で円筒状に捲き込むことは難しくなり、結晶化し難くなると考えられる。従って、d002 の値は繊維径に依存している。例えば、径が約0.15μmの繊維では 0.3385nm 、0.05μmでは 0.3400nm 、約0.02μmでは 0.3415nm 、約0.01μm以下では0.3420nmが限界であった。これより、約 0.15 μmの繊維ではd002 の層間距離は0.3385nm程度が限界で、3000℃以上に加熱処理してもd002 をこれより小さくすることは出来なかった。
【0017】
従って、結晶性を上げ、d002 を0.3385nmより小さくするためには熱処理だけでは不充分であり、別の方法も加えて結晶性を向上させる方法を開発する必要がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来得られなかった高い結晶性を持つ、あるいは導電性のよい微細な炭素繊維を開発すること及びその繊維をフィラーとして、より性能の高い電池用電極を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するために先ず黒鉛化触媒(黒鉛化のための助剤あるいは添加物といわれる場合もある。以下、単に「黒鉛化触媒」あるいは「触媒」と言う。)に着目した。
【0020】
今まで、黒鉛化触媒を用いて、径が1μm以下の微細な炭素繊維の物性を制御する試みは、なされていない。また、このような特殊な結晶構造を持つ微細な炭素繊維が、黒鉛化触媒を用いる方法で、何処まで結晶性が向上できるか、またどのような特性を持った材料にできるか不明であった。
【0021】
次に触媒を用いて繊維を処理する方法について検討した。
【0022】
本発明はこれらの検討の結果到達したもので、基本的には以下の各項の発明からなる。
【0023】
(1)繊維径が1μm 以下であり、且つ、X線回折法で求めた炭素の層面間隔d002 が0.335 〜0.342nm ( さらには0.3354〜0.3420nm) の範囲内でありかつd002 <0.3448−0.0028(logφ) 、好ましくはd002 <0.3444−0.0028(logφ) 、より好ましくはd002 <0.3441−0.0028(logφ) (これらの式中、φは炭素繊維の直径である。)を満たし、結晶のC軸方向の厚さLcが 40nm 以下の微細な炭素繊維。
【0024】
(2)ラマンスペクトルのR値が 0.5以上、1580cm−1のスペクトルのピーク半値巾が20〜40cm−1であることを特徴とする(1)記載の微細な炭素繊維。
【0025】
(3)繊維径が1μm 以下であり、かつ、ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する微細な炭素繊維。
【0026】
(4)ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する(1)又は(2)記載の微細な炭素繊維。
【0027】
(5)ホウ素の含有量が 0.1〜3質量%である(3)又は(4)記載の微細な炭素繊維。
【0028】
(6)炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比が10以上である(1)〜(5)記載の微細な炭素繊維。
【0029】
(7)密度 0.8g/cm3 に加圧したときの加圧方向に対して垂直方向の粉体抵抗が0.01Ω・cm以下である(6)記載の微細な炭素繊維。
【0030】
(8)炭素繊維が気相法により製造された炭素繊維である(1)〜(7)記載の微細な炭素繊維。
【0031】
(9)繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、そして、その微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。
【0032】
(10)繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、
その微細な炭素繊維の嵩密度を0.05g/cm3 以上にし、そして
前記嵩密度を維持しながら前記微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。
【0033】
(11)ホウ素またはホウ素化合物の添加量がホウ素原子として炭素繊維に対し、 0.1〜10質量%である(9)又は(10)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0034】
(12)ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比10以上の炭素繊維である(9)〜(11)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0035】
(13)ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が気相法による炭素繊維である(9)〜(12)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0036】
(14)ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施された焼成品である(13)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0037】
(15)ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施されていない未焼成品である(13)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0038】
(16)上記(1)〜(8)記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の微細な炭素繊維は結晶性が良く、X線回折で求めた炭素結晶の層面間隔d002 が0.335 〜0.342nm であり、結晶面のC軸方向の厚さLcは 400nm以下、より好ましくは32nm以下である。
【0040】
図1は、本発明者らが微細な炭素繊維について、ホウ素処理をしないものとホウ素処理をしたものについて、層間距離d002 を測定し、繊維径の関数として表したグラフである。ホウ素処理をしないものは、d002 =0.3448−0.0028(logφ) (式中、φは炭素繊維の直径である。)で表される層間距離d002 より大きいが、ホウ素処理したものはこの式で表される層間距離d002 より実質的に小さくなっている。従って、本発明の微細な炭素繊維は、d002 <0.3448−0.0028(logφ) 、好ましくはd002 <0.3444−0.0028(logφ) 、より好ましくはd002 <0.3441−0.0028(logφ) (これらの式中、φは炭素繊維の直径である。)で表される層間距離d002 を有すると規定することができる。
【0041】
なお、本発明者らの検討では、ホウ素処理なしでは図1に示した炭素結晶の層面間隔d002 =0.3448−0.0028(logφ) より小さくすることはできなかったが、仮にホウ素処理なしでそのような小さいd002 を実現できたとしても、それは特殊な処理によるかあるいは厳しい条件の実現または制御によってのみ可能にされるものであろうから、本発明に従いホウ素処理することにより本発明の範囲内の小さい層面間隔d002 を有する微細な炭素繊維を容易に得ることができることの発明としての意義が失われるものではない。
【0042】
また本発明の微細な炭素繊維として、ホウ素を含有する炭素繊維を挙げることができる。炭素繊維中のホウ素は炭素(グラファイト)の結晶中、結晶層間に存在し、また結晶粒界に、あるいは不純物として存在する。
【0043】
本発明の結晶内にホウ素を含有する炭素繊維は、新規なものであり、d002 及びLcの値が上記の範囲に限定されないものであるが、望ましくはホウ素を含有し、かつd002 及びLcの値が上記の範囲のものである。
【0044】
ホウ素を含有し、かつd002 及びLcの値が上記の範囲の繊維は、ラマン吸収スペクトルのR値(1580cm−1の吸収強度IGと1360cm−1の吸収強度IDの比R=ID/IG) を 0.5以上、かつまた、1580cm−1のスペクトルのピーク半値巾が20〜40cm−1と小さくすることができる。
【0045】
これらの繊維は径(直径)が好ましくは0.01〜1μm、アスペクト比は繊維としての機能をもたせるために10以上が好ましく、さらに好ましくは50以上である。
【0046】
繊維径が0.01μm未満だと繊維の強度が弱く、電池用の電極や樹脂等のフィラーとして使用した場合に繊維の切断等が多くなり、繊維としての機能が損なわれ易い。一方繊維は、フィラーとしての添加率(質量%)を一定とした場合、太くなるとそれだけ繊維の本数が減ることになり、フィラーとしての繊維の機能が十分発揮されない。また例えば電池用の負極材としての炭素電極には黒鉛の粒が含まれているが、繊維が太いと、この粒子間に繊維が入りにくい。また繊維径が1μmより太くなると繊維自体の生産性が著しく低下するので、工業的にコストが高くなる。これらのことから繊維径は1μm以下が好ましい。
【0047】
繊維の長さは特に制限なく、その下限はアスペクト比(繊維長さ/繊維の直径)の下限から定まる長さが好ましい。繊維の長さは、長すぎると繊維の絡み合い等によりフィラーとしての分散性に問題が生じるので、上限は 400μmが好ましく、さらに好ましくは 100μmである。従って例えばアスペクト比が50以上の場合、繊維径が0.01μmでは繊維長さは 0.5μm以上、径が 0.1μmでは長さは5μm以上が好ましい。その上限はいずれも好ましくは 400μm、さらに好ましくは 100μmである。
【0048】
本発明の上記した高結晶性の微細な炭素繊維は、微細な炭素繊維をホウ素化合物の存在下で熱処理することにより製造することができる。理論に拘束されることを意図しないが、このような熱処理によれば、ホウ素は炭素繊維中に取り込まれ、その触媒的な作用により、本発明の高結晶性の微細な炭素繊維が製造されるものと考えられる。
【0049】
高結晶化に効果的な微細な炭素繊維中のホウ素の含有量は、一般的には 0.1〜3質量%、好ましくは 0.2〜3質量%である。しかし、ホウ素は熱処理における繊維の結晶化の際に繊維中に存在すればよく、高結晶化した後、得られた高結晶性の繊維をさらに高温で処理する等により、ホウ素が揮散し、添加量よりも濃度が低くなってもかまわない。
【0050】
次に本発明の微細な炭素繊維の製造法について説明する。
(出発原料としての炭素繊維)
本発明の製造法において出発原料とする炭素繊維は、ベンゼン等の有機化合物の熱分解により気相で成長させた微細な炭素繊維を用いることができる。例えば前記した特開平7−150419号公報、特開平5−321039号公報、特開昭60−215816号公報、特開昭61−70014号公報、特公平5−36521 号公報、特公平3−61768 号公報等の方法で製造することができる。また、繊維径が0.01μm以上であれば、同じ年輪構造をもつカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーと呼ばれる微細な繊維状物質も使用できる。従って、アーク放電法やレーザー法等によって製造される多重構造のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等についても使用できる。
【0051】
気相成長法による微細な炭素繊維の製法について簡単に述べると、シードとなる遷移金属又はその化合物、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属超微粉、又はフェロセンなどに基づく超微粒子を用い、基板上にこれらのシードの超微粉又は超微粒子を形成し、これに炭素原料と任意に水素などのキャリアガスを気相で供給し、高温下で分解させるもので、超微粉又は超微粒子をシードとして繊維径0.01μm〜1μm 程度あるいはそれ以上の微細な炭素繊維が成長するものである。シードの形成方法としては、基板(加熱炉の内壁を基板としてもよい)上にシード粒子分散液あるいはシード源溶液を塗布し乾燥して形成する方法、フェロセンなどを吹きつけて形成する方法、またフェロセン等を用いて鉄やその化合物の微粒子を流動状態において生成させる方法などがあり、このようにシードは基板表面上に形成するほか、流動床としてもよい。
【0052】
また、上記のように気相成長法で生成した微細な炭素繊維は、そのままでは、反応して取出されたアズグローンの表面に反応と同時に生成したタール分や低沸点成分が多量に吸着しており、また活性の高い鉄の微粒子が存在するので、これらに対処するために熱処理に供したものでもよい。
【0053】
しかし、本発明者の検討によれば、この微細な炭素繊維は、熱処理だけでは充分な結晶性の向上が望めないことがわかった。そこで高結晶化の触媒(助剤、添加物)について検討した。触媒としてはB,Al,Be,Si等が考えられるが、ホウ素(B)が特に有効であった。通常の炭素材についてはホウ素を添加して熱処理し、結晶性を高めることは種々検討されている。(「炭素」 1996, No. 172, 89〜94頁、特開平3−245458号公報、特開平5−251080号公報、特開平5−266880号公報、特開平7−73898 号公報、特開平8−31422 号公報、特開平8−306359号公報、特開平9−63584 号公報、特開平9−63585 号公報) 。
【0054】
しかし、径が1μm以下の微細な気相法炭素繊維に対して、ホウ素を導入して、特性を改善した例は今までにない。その理由は以下に示すように繊維が特殊な構造を持ち、通常の炭素材料と同様の触媒効果が期待できないと考えられたからである。
【0055】
すなわち、気相法炭素繊維は、繊維の切断面の結晶構造が同心円状に発達した長葱状の繊維である。繊維の長さは、製造条件によって異なるが、例えば0.01〜1μm程度の径の繊維では単繊維だけでなく枝別れした繊維も多く存在するので明確には規定し難いが、直線部分を走査型電子顕微鏡で測定した限りでは、平均が少なくとも5μm以上あるものがほとんどである。また、この繊維は長繊維に加えて枝分れした微細な繊維を含むために、長い繊維はもちろんのこと、5μm程度の短い繊維であっても、少なくとも大きさが10μm以上、場合によっては 100μm以上の大きなフロック状になり易い。従って、集合体としての嵩密度は小さく0.05g/cm3 以下、通常は0.01g/cm3 以下である。しかもフロック状の立体構造を持っている。
【0056】
気相法炭素繊維は、このように通常の炭素繊維と異なる特異な組織を有するので、黒鉛化触媒との接触が難しく、均一にホウ素化し難いと考えられる。
【0057】
また、微細な炭素繊維では、繊維径が微細になればなる程、特にその中心付近で、炭素結晶層が湾曲してしまい、炭素結晶の層間距離を小さくして結晶性を高めた場合に、微細な炭素繊維を維持することができるかどうか、逆に言うと、微細な炭素繊維の結晶性をホウ素でさらに高めることが可能であるかどうかという疑問もあった。
【0058】
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討した結果、気相法で製造した微細な炭素繊維においても、ホウ素を触媒(助剤)として用いて炭素繊維の高結晶化を実現することができた。
【0059】
本発明によれば、ホウ素をドーピングするためには、原料の微細な炭素繊維としてドーピングしやすい、あまり結晶の発達していない、低温熱処理品例えば1500℃以下で熱処理された繊維を用いるか、より好ましくは熱処理していない(アズグロウン)状態の炭素繊維を用いることが好適である。熱処理していない繊維であってもホウ素の触媒を用いた処理(ホウ素化処理)の時に、最終的には黒鉛化温度まで加熱処理されるので、結晶の未発達のものでも十分使用できる。2000℃以上、好ましくは2300℃以上の温度で黒鉛化処理された繊維を用いることもできなくはないが、エネルギーの削減の面から考えれば何ら前もって黒鉛化しておく必要はなく、むしろ熱処理していないものを用いて黒鉛化と同時に触媒作用を働かせる方が好ましい。
【0060】
原料の微細な繊維としては取扱いやすくするため、予め解砕、粉砕したものを用いることはできるが、解砕、粉砕はホウ素またはホウ素化合物との混合ができる程度で十分である。すなわち、ホウ素化処理した後でも最終的には解砕、粉砕、分級等のフィラー化処理をするので、ホウ素化処理の前にフィラー等としての適正な長さにしなくても良い。気相成長法で一般的に得られる太さ(径)0.01〜1μm程度、長さ 0.5〜400 μm程度の炭素繊維をそのまま用いることができる。これらはフロック状になっていてもよい。また、原料繊維は熱処理したものでもよいが、熱処理温度は1500℃以下とすることが好ましい。
(ホウ素またはホウ素化合物)
ホウ素化処理に使用するホウ素またはホウ素化合物は、特に限定されないが、次のような物性のものが適する。ホウ素化処理は2000℃以上の温度で行われるので、少なくとも2000℃に達する前に分解等によっても蒸発しない物質、例えば、元素状ホウ素、B2O3,H3BO4, B4C,BNその他のホウ素化合物を使用するのがよい。
【0061】
炭素にホウ素をドーピングできる量は、一般的には3質量%以下である。従って配合時のホウ素またはホウ素化合物の添加量は、反応率を考慮して炭素量に対してホウ素原子換算で10質量%以下で十分である。ホウ素の使用量が多いと処理コストが高くなるだけでなく、熱処理の段階で、溶融燒結し易く、固まったり、繊維表面を被覆し、電気抵抗を上昇させるなどフィラー特性が失われることがある。
【0062】
微細な炭素繊維(繊維径1μm 以下)は3次元の立体構造を持ち、フロック状を形成し易いだけでなく、嵩密度が極めて小さく空隙率が非常に大きい。しかも添加するホウ素量は10質量%以下、好ましくは5質量%以下と少ないので、単に両者を混合しただけでは両者を均一に接触させることは難しい。
【0063】
ホウ素の導入反応を効率よく行うには繊維とホウ素またはホウ素化合物をよく混合し、できるだけ均一に接触させる。そのためには、ホウ素またはホウ素化合物の粒子はできるだけ粒径の小さいものを使用する。また、粒子が大きいと部分的に高濃度領域が発生することになり、固結化の原因になりかねない。具体的には粒度は平均粒径で 100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0064】
また、硼酸等を用いる場合は水溶液として添加し、予め水分を蒸発させる方法や加熱過程で水分を蒸発する方法も用いることができる。水溶液を均一に混合すれば水分蒸発後はホウ素化合物を繊維表面に均一に付着させることができる。
【0065】
気相法による微細な炭素繊維は先に述べたように、嵩密度が小さく、製造されたままの集合体では約0.01g/cm3 以下、またこれを熱処理し、解砕、粉砕し、分級した通常品でも0.02〜0.08g/cm3 程度である。従って本微細な炭素繊維は多くの空隙率を持つので、これを熱処理するには非常に容量の大きな熱処理炉が必要で設備コストが高くなるだけでなく、生産性も悪い。従って、通常の炭素材料の場合と異なり、効率的な方法でホウ素を導入する方法を開発する必要がある。
【0066】
また、ホウ素の導入反応を効率よく反応させるには、炭素とホウ素の接触を十分に保持する必要がある。そのためには、両者を均質に混合し、十分接触させるようにする。また熱処理の過程で両者が分離し、濃度の偏りが起きないようにする。
【0067】
そのため、繊維とホウ素またはホウ素化合物を均一に混合し、そのまま熱処理することもできるが、好ましくは、高密度化し、且つその状態をできるだけ維持(固定化)して熱処理する。その好ましい方法として、本発明では熱処理前に、両原料を混合した後、混合物に圧力を加えて圧縮し、高密度化して固定化する。
【0068】
まず、繊維とホウ素またはホウ素化合物の混合は、均一性が保持できればいずれの方法でも良い。混合機としては、市販の混合機の何れでもよいが、微細な炭素繊維はフロック状になり易いので、これを解砕するためにチョッパー付きのヘンシェルミキサータイプのものであればより好ましい。使用する原料繊維は先に述べたように製造されたままのものでも、その繊維の1500℃以下の温度での処理品でもよい。ただ、経済的にも、性能的にも製造されたままのものを混合する方法が好ましい。
【0069】
炭素繊維とホウ素またはホウ素化合物の混合物を高密度化し、両者が分離しないように固定化する方法としては、成形法、造粒法、あるいは、混合物を坩堝にいれて一定の形状に圧縮して、詰め込む方法等何れの方法でも良い。また成形法の場合、成形体の形状は円柱状、板状や直方体等何れの形状でもよい。
【0070】
高密度化し、固定された混合物の嵩密度は0.05g/cm3 以上、好ましくは0.06g/cm3 以上である。
【0071】
混合物を圧縮して成形体とした後、圧力を開放すると多少容積が膨らみ、嵩密度が下がることもあるが、その場合は圧縮時の嵩密度を圧力開放後の固定化の嵩密度が0.05g/cm3 以上になるようにする。また繊維を容器に入れる場合も、処理効率を上げるために、加圧板等を用いて嵩密度が0.05g/cm3 以上になるように圧縮したり、また圧縮したまま熱処理することもできる。
【0072】
このようにしてホウ素またはホウ素化合物を添加し、かつ嵩密度を高めた繊維は次に熱処理する。
【0073】
ホウ素を炭素の結晶内に導入するために必要な処理温度は2000℃以上、好ましくは2300℃以上である。処理温度が2000℃に満たないとホウ素と炭素との反応性が悪く、ホウ素の導入が難しい。また、ホウ素の導入を一層促進し、かつ炭素の結晶性を向上させ、特に径が約 0.15 μm程度の繊維でd002 を 0.3385nm 以下にするには2300℃以上に保つことが好ましい。熱処理温度の上限は特に制限はないが、装置等の制限から3200℃程度である。
【0074】
使用する熱処理炉は2000℃以上、好ましくは2300℃以上の目的とする温度が保持できる炉であればよく、通常の、アチソン炉、抵抗炉、高周波炉他の何れの装置でもよい。また、場合によっては、粉体または成形体に直接通電して加熱する方法も使用できる。
【0075】
熱処理の雰囲気は非酸化性の雰囲気、好ましくはアルゴン等の希ガス雰囲気が必要である。熱処理の時間は、生産性の面からは出来るだけ、短い方が好ましい。特に長時間加熱していると、燒結しかたまってくるので、製品収率も悪化する。従って、成形体等の中心部の温度が目標温度に達した後、1時間以下の保持時間で十分である。
【0076】
この処理によって本発明の炭素繊維のd002 をはじめて0.3420nm以下にでき、結晶性を向上させることができた。ところがLc(X線解析法による炭素の結晶性のC軸方向の層の厚さ)は 40nm 以下、さらに好ましくは32nm以下にとどまり、Bを添加しない熱処理品とあまり変らないことが明らかとなった。通常の易黒鉛化性炭素材料は、黒鉛化したd002 が小さくなると、Lcは大きくなるのが通例であるが、本発明の 0.2μm程度の繊維の場合にはLcは大きくならず、 40nm 以下であり、Bを添加しない場合と同等であった。すなわち、d002 は小さくなるが、Lcは大きく変化しないところが特徴である。
【0077】
また、通常の気相法炭素繊維は加熱に従ってラマンスペクトルの1580cm−1のピークが高くなり、1360cm−1のピークが減少し、すなわちR値は小さくなり、黒鉛化とともに最終的に 0.1〜0.2 程度まで下がるが、本発明のホウ素処理品では、R値が 0.5以上、 0.7〜0.8 程度であった。
【0078】
更に、1580cm−1のピークが高くなると共に、その半値巾は20〜40cm−1までに狭くなった。
【0079】
これら、d002 の減少、1580cm−1のピークの高まりに従い、導電性も向上が見られ、0.01Ω・cm以下、具体的には 0.003Ω・cmの値が得られた。
【0080】
さて圧縮成形等をして高密度化した繊維は熱処理すると、一部分が焼結し、通常品と同様にブロック状になっている。従って、そのままでは電極等に添加したり、電子放出能材に使用することは出来ないので成形体を解砕し、フィラー材として適する形態にしなければならない。
【0081】
そのため、このブロックを、解砕、粉砕、分級してフィラー材として適するように処理をすると同時に、非繊維物を分離する。その際に粉砕し過ぎるとフィラー性能が低下し、また粉砕が不十分だと電極材との混合がうまくいかず、添加効果が出ない。
【0082】
フィラーとして望ましい形態にするためには、熱処理後のブロック状のものを先ず、2mm以下の大きさに解砕し、更に粉砕機で粉砕する。解砕機としては通常使用されるアイスクラッシャーやロートプレックス等の解砕機が使用できる。粉砕機としては、衝撃型の粉砕機のパルペライザーや自由粉砕機、また、ミクロジェット等の粉砕機が使用出来る。非繊維物を分離する分級は気流分級等で行うことが出来る。粉砕分級条件は、粉砕機の種類や、操作条件によって異なるが、フィラー特性を発揮させるためには、繊維の長さが5〜400 μmの範囲にするのが好ましい。アスペクト比は好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上である。
【0083】
この繊維を粉砕分級後の嵩密度で表すと 0.001g/cm3 以上で 0.2g/cm3 以下、好ましくは、 0.005g/cm3 以上で0.15g/cm3 以下、更に好ましくは0.01g/cm3 以上で 0.1g/cm3 以下である。嵩密度が 0.2g/cm3 以上になると、太さによっては繊維の長さが5μm以下のように短くなりフィラー効果が低下する。また 0.001g/cm3 より小さいと繊維が径によっては 400μmを超えるような長いものとなり、フィラーとしての詰まりが悪くなる。嵩密度は容器に繊維を充填し、振動させ、体積がほぼ一定に達したときの体積と質量から求めたタッピング嵩密度である。
【0084】
本発明の微細な炭素繊維は、電池用電極に添加し、電池の性能を向上することが出来る。電池としては、リチウム電池、鉛蓄電池、ポリマー電池、乾電池等の電極板の導電性を向上したり、インターカレーション能力を必要とする電池を上げることが出来る。本発明の微細な炭素繊維は、結晶性が優れ、導電性が良いので、これらの電池の導電性を高めることが出来るばかりでなく、リチウム電池では負極用炭素材料としてのインターカレーション能力が大きいので充放電容量を増加することが出来る。特にd002 が3.3420nm以下、Lcが 40nm 以下の微細な炭素繊維は上記の効果が大きいが、ホウ素含有の炭素繊維はd002 及びLcの値が上記の範囲外であっても、ホウ素を含有しない微細な炭素繊維に比べて結晶性がよく導電性が高いので、上記の用途に使用することができる。
【0085】
電極中への微細な炭素繊維の添加量は、 0.1質量%以上で20質量%以下の範囲が好ましい。添加量が20質量%より大きくなると電極中の炭素の充填密度が小さくなり、電池にしたときの充放電容量が低下する。また、 0.1質量%より少なくなると添加効果が少ない。
【0086】
微細な炭素繊維を添加して電極とするには、例えばリチウム電池の負極は、黒鉛粉末やメソフューズカーボンマイクロビーズ (MCMB) 等が用いられるが、これに微細な炭素繊維及びバインダーを添加し、充分に混練して繊維が出来るだけ均一に分散するようにする。
【0087】
【実施例】
以下実施例により具体的に説明し、また電極のフィラーとしての効果を明らかにする。
【0088】
微細な炭素繊維の高結晶化
(実施例1)
出発原料である微細な炭素繊維は、遷移金属を含有する有機化合物の存在のもとにベンゼンを熱分解する公知の方法(例えば特開平7−150419号公報) で得た気相法炭素繊維をさらに1200℃で熱処理した。このフロック状に集合した繊維を解砕し、嵩密度を0.02g/cm3 、繊維の長さを10〜100 μmとした。繊維の太さ(径)は大部分が 0.5μm以下 (SEM 写真で観察した平均的な径は 0.1〜0.2 μm) であった。この繊維のX線回折による層面間隔d002 は3.3407nm、Lcは5.6nm であった。
【0089】
この繊維2.88kgに平均粒径15μmのB4C 粉末を 120g添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物を容量50リットルの円筒状の黒鉛ルツボに詰め込み、圧縮して嵩密度を 0.075g/cm3 とした。黒鉛製の加圧板で圧縮したまま蓋をし、アチソン炉に入れて加熱処理をした。このときの温度は2900℃であり、2900℃になってからの加熱時間は、60分間である。
【0090】
加熱処理後冷却し、坩堝より繊維を取り出し、約2mm程度に粗解砕した後バンタムミルで粉砕し、その後非繊維状物を気流分級で分離した。
【0091】
得られた繊維の太さは変わらないが、長さは5〜30μmで、嵩密度は0.04g/cm3 であった。この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2900℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例1に示す。
【0092】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た炭素繊維を解砕し、次いで粉砕して嵩密度を0.05g/cm3 とした。この時の繊維の長さは大部分10〜50μm、太さはSEM 写真で観察した平均的な径で0.06μmであった。この繊維 150gに平均粒径10μmのB4C 6gを添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物をシリンダー状の成形機に装入し、加圧して直径 150mmの円柱体に成形した。成形後の嵩密度は0.087g/cm3 であった。
【0093】
この成形体を黒鉛を発熱体とした黒鉛化炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分間加熱処理した。
【0094】
加熱処理後、成形体を取出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたBドープ品の嵩密度は 0.046g/cm3 であった。この時の繊維の長さは大部分5〜20μmであった。
【0095】
この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2800℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例2に示す。
【0096】
(実施例3)
出発原料である微細な炭素繊維は、実施例1同様遷移金属を含有する有機化合物の存在のもとにベンゼンを熱分解する公知の方法で得た、この炭素繊維を熱処理せずそのまま解砕し、嵩密度を0.01g/cm3 とした。繊維の太さは、大部分が0.13μm以下であった。この繊維 200gに平均粒径19μmのB4C 8gを添加し、ヘンシェルミキサーで十分に混合した。この混合物をシリンダー状の成形機に装入し、加圧して直径 150mmの円柱体に成形した。成形後の嵩密度は、0.07g/cm3 であった。
【0097】
この成形体を黒鉛を発熱体とした黒鉛炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分加熱処理した。
【0098】
加熱処理後、成形体を取り出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたホウ素ドープ品の嵩密度は0.03g/cm3 であった。
【0099】
この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2800℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例3に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例4)
実施例1と同様にして得た炭素繊維を解砕し、次いで粉砕して嵩密度を0.02g/cm3 とした。この時の繊維の長さは大部分10〜50μm、太さは平均で約0.04μmであった。この繊維3000gに平均粒径15μmの B4C 120gを添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物を内径 100mm、内長さ 150mmの黒鉛るつぼに88g詰め込んだ。その時の嵩密度は0.08g/cm3 であった。
【0102】
このるつぼに蓋をしてカーボン抵抗炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分間加熱処理した。
【0103】
加熱処理後、成形体を取出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたホウ素(B)ドープ品の嵩密度は0.04g/cm3 であった。また、ホウ素の分析結果から、繊維の結晶中に1.02%のホウ素が導入されたことがわかった。同様に表1にd002 、Lcの測定値を示す( d002=0.3395nm、Lc=25.4nm)。なお、同様の工程にてB4C を添加しないものについてのd002 、Lcの値を表1の比較例4に示す( d002=0.3405nm、Lc=21.6nm)。
【0104】
次ぎに、得られたファイバーの粉体抵抗を測定した。測定方法は、本発明者の開発した次に示す方法である。
【0105】
本測定セルは、図2に示すように10mm×50mm角で深さが 100mmのセル4と押し込みのための圧縮ロッド2及び受け器3からなる。セルに一定量の粉体を入れ、上部から圧縮ロッド2に圧力をかけ粉体を圧縮していく。
【0106】
そして、圧力と体積を測定しながら、順次加圧方向と垂直の方向に設置された電極1から電流 100mAを流し、受け器から出た2つの測定端子6の10mm間の電圧(E)Vを読み、以下の式から抵抗値(R)Ω・cmを計算する。
【0107】
R=E/100 (Ω・cm)
粉体抵抗は密度によって異なるので、その評価は一定密度の値で比較する。本測定では、粉体密度が 0.8g/cm3 の時の値で比較する。
【0108】
この結果を表2に示す。
【0109】
このときの生成物のd002 を測定した結果、0.3395nmで、Lcは 25.4nm であった。
【0110】
なお、参考のため同様の工程にてB4C を添加しないものについての抵抗値を表2の比較例9に示す。
【0111】
(実施例5)
実施例1と同様の製造による気相法炭素繊維で実施例4より径の大きい 0.2μmのものを1300℃で熱処理し解砕して嵩密度を0.05g/ccとした。この繊維 150gに平均粒径10μmのB4C 6gをヘンシェルミキサーへ投入し、混合した。この粉体を内径が 150φ×400mm のシリンダーと加圧装置を用いて 150φ×100mm の円柱体に成型した。この時の嵩密度は 0.030g/cm3 であったが、これをシリンダー内に詰めこむことによって、0.08g/cm3 まで圧縮した。
【0112】
この成型体を黒鉛ヒーターを発熱体とした黒鉛化炉に入れてアルゴン雰囲気中で昇温速度15℃/min で加熱処理した。この時の加熱温度は2800℃であった。
【0113】
熱処理後、繊維を取り出し、乳鉢にて軽く4mm以下に解砕した。更にバンタムミルで粉砕、分級後の嵩密度は0.03g/cm3 であった。また、ホウ素の分析結果から繊維の結晶中に0.93%のホウ素が導入できたことがわかった。
【0114】
得られた粉体の抵抗を表2に示す。
【0115】
同時に実施例5のd002 を合わせて示すが、実施例4と同様の低下が見られた。また、Lcは、29.9nmであった。なお、参考のため同様の工程にてB4C を添加しないものについてのd002 、Lcを表1の比較例5に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
フィラー効果の確認
(実施例6)
本繊維を負極用炭素材に添加したときの粉体抵抗が、本当に低下できるかを検討するため、市販の黒鉛粒子(平均10μm)に実施例4の本発明品を添加し、添加量と粉体抵抗の関係を測定し求めた。また比較例3のBの添加されていない繊維を添加したときの添加量と粉体抵抗の関係を測定し求めた。
【0118】
繊維を添加しないとき、3%添加、5%添加、10%添加のときの各々の抵抗値を表3に示す。なお、粉体抵抗の測定方法は、実施例4と同様であるが、測定にあたっての嵩密度は、電極と同等の密度で比較したほうが好ましいので、 1.5g/cm3 の密度のときの抵抗値である。
【0119】
次に上記の繊維のリチウム電池の電極としての実施例を示す。
【0120】
(実施例7)
まず、繊維自体(100%) で電極を構成し、本発明の繊維による効果を調べた。
【0121】
上記実施例1,2及び3、比較例1,2及び3の繊維にPVDF (ポリビニリデンフルオライト) を3質量%添加し、ニッケルメッシュ上に圧着して作用極(負極)とし、Li金属を対象極として電池の性能を測定した。電解液は1モルのLiPF6 を溶解したエチレンカーボネイト (EC) 及びジエチルカーボネイト (DEC)の両者の配合比が体積比で1:1の溶媒を用いた。電池の評価時の電流密度は 0.2mA/gとした。
【0122】
これらの電池の放電容量を測定した結果を表4に示す。
【0123】
次ぎにこの繊維を添加した電極の実施例を示す。
【0124】
(実施例8)
電極の負極材となる炭素材料には、ピッチコークスを3000℃で熱処理した平均粒径16μmの黒鉛化粒子を用いた。この黒鉛化粒子は熱処理の際にホウ素を添加したもの(GB) と、ホウ素を添加しないもの (G1) を使用した。GBのホウ素含有量は0.98質量%である。
【0125】
極板は、これらのGB又はG1の単独、及びGB又はG1に実施例1又は比較例1の繊維をそれぞれ5質量%添加したものに、3質量%のPVDFを添加してスラリー化し、ニッケルメッシュ上に圧着して作製した。電解液、対象極及び電流密度は前記例と同様とした。放電容量の測定結果を表4に示す。参考例1及び2は上記のGB,G1を単独で電極を構成したものである。表中の放電容量の計算値はG1またはGB95質量%の放電容量と炭素繊維5質量%の放電容量をその比率に従って加成的に合算したものである。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
表4からわかるように負極材となる炭素材料に微細な炭素繊維を添加し、リチウム電池の電極(負極)とすると放電容量が負極材及び微細な炭素繊維自体のもつ放電容量から計算した値より高いことが判明した。特に微細な炭素繊維としてホウ素を添加し、高温で処理し、結晶性を高めた繊維の場合特にこの効果が高い。すなわち、負極材の炭素材料にホウ素含有の微細な炭素繊維を添加すると、理由は定かでないが、明らかに相乗効果があり、特に高結晶性の微細な炭素繊維の場合顕著な相乗効果があることが判明した。
【0129】
【発明の効果】
本発明は微細な炭素繊維であって、従来得られなかった高結晶性の炭素繊維及びホウ素を含有する炭素繊維である。高結晶性であるために導電性や熱伝導性に優れ、樹脂、セラミックス、金属等のフィラーとして優れたものである。
【0130】
特に電池やキャパシタの電極のフィラーとして添加すると微細であるために添加量が少なくても分散効率が高く、大きな効果が得られる。また、本発明の微細な炭素繊維はリチウムイオンのインターカレーション能力が大きく、少ない添加量でも放電容量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】微細炭素繊維の繊維径とグラファイト結晶の層間距離との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の粉体抵抗を測定する装置の断面図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、樹脂、セラミック他の各種の材料に添加して、導電性や熱伝導性を改善するために使用するフィラー材として、またFED (フィルドエミッションディスプレー)用の電子放出素材として、更には各種電池の特性改善材料等のフィラー材として用いられる微細な炭素繊維(コイル状炭素繊維、気相法炭素繊維、ウィスカ状炭素繊維、延伸炭素繊維などの繊維状炭素を含む)及びその製造法に関する。また乾電池、Pb蓄電池、キャパシタや最近のLiイオン2次電池をはじめとする各種電池の正極または負極にこの微細な炭素繊維を添加して充放電容量の改善、極板の強度を改善した電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明で言うところの「微細な炭素繊維」は、一般に炭化水素の熱分解による気相法で製造されている(特開平7−150419号公報、特開平5−321039号公報、特開昭60−215816号公報、特開昭61−70014号公報、特公平5−36521 号公報、特公平3−61768 号公報等) 。その繊維は、直径が通常0.01〜5μm程度である。しかし、径が0.01μm以上であれば、気相法の炭素繊維と同様の同心円状、年輪状の構造を持つカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーも含まれる。
【0003】
微細な炭素繊維は金属、樹脂、セラミック等への充填材 (フィラー) としての用途が提案されている。特に近年小型の携帯電話、ビデオカメラ、ノート型パソコン等のポータブル機器の発展が著しく、それに使用する電源としてLiイオン2次電池(Li電池) をはじめとする小型の2次電池の需要が急激に伸びており、その電池のフィラーとしての用途が検討されている。
【0004】
Li電池の電極に使用される負極用の炭素材料は、通常各種のハードカーボン、メソフェーズカーボンマイクロビーズ (MCMB) 、メソフェーズピッチカーボンファイバー (MPCF) 、人造黒鉛、各種コークス、それに天然黒鉛等である。またこれらの負極材にピッチ系等の炭素繊維や気相法炭素繊維を添加することも提案されている。また正極には導電性付与剤として、黒鉛微粉やカーボンブラック等も用いられている。
【0005】
Li電池の負極は充放電の際リチウムイオンのインターカレーション (挿入) 及びデインターカレーション (放出) が行われる。黒鉛は層状構造をしており、反応物質(例えばLi) が層間を押し拡げ挿入する反応(インターカレーション)を生じやすい。その反応物質が層間に入った生成物を層間化合物(Graphite Intercalation Compounds) という。また、この層間化合物は反応物質を放出(デインターカレーション)して容易に元の黒鉛に戻る。微細な炭素繊維は導電性や、熱伝導性の優れた材料であり、かつインターカレーション能力を有するので、添加しても電池の容量を下げることはなく、負極材の添加剤として注目されている。
【0006】
Li電池の高容量化にはこのインターカレーション能力を上げることが第一である。インターカレーション能力を上げるには一般に炭素材料の黒鉛化度、即ち結晶性を高めることが必要となり、微細な炭素繊維についても同様である。
【0007】
鉛蓄電池の負極は元来導電性の悪い物質で構成されており、その負極の導電性を向上させるためカーボンブラック、黒鉛微粒子、炭素繊維等の炭素材料を添加することができ、この場合も導電性の高い結晶性のよいものが望まれている。このような炭素材料の結晶性を向上させるためには、通常、高温で処理する黒鉛化方法が用いられている。
【0008】
一方、平均繊維径が小さい、特に1μm以下のような微細な炭素繊維は、嵩密度が小さく充填性が上らないので、電極中にこの炭素繊維を大量に添加すると、電極密度が低下する。従って通常は20質量%以下、好ましくは10質量%以下しか添加されていない。そのためにこの繊維については結晶性を上げても大きな添加効果は期待できないと考えられ、このような微細な炭素繊維の結晶性を向上させようとする試みは、高温で熱処理する以外には検討されていない。そのために、従来使用されている微細な炭素繊維はX線回折法で求めた結晶層面間隔d002 は3.385Åより大きく、結晶性もあまり発達していない。
【0009】
また、高容量化の要求に伴い、大量の電流を充放電するため電極の電気抵抗の低い材料が要求されている。
【0010】
電極の抵抗値を下げるために、各種の導電付与材の添加が検討されているが、気相法炭素繊維を主とする繊維状物質のフィラーが有効であることが知られている。その理由は、
1)微細な繊維物質は 100以上のアスペクト比を持ち、導電パスが長いこと、
2)気相法炭素繊維は結晶性が良く、導電性に優れていること、
3)気相法炭素繊維自身も充放電能力を持ち、添加してもLi電池の容量の低下を起こさない、
等である。
【0011】
しかしながら、従来市販されている1μm以下の径を持つ微細繊維物質の導電性は 0.8g/cm3 の密度状態で評価した場合、粉体抵抗として0.01Ω・cmが限界であり、これより低い抵抗値を持つ材料は無かった。
【0012】
最近の電池の充放電容量の向上のため、負極材の結晶性を上げて容量を高めてくると、負極材だけでなく、更に添加材についても放電容量の高い材料が要求されるようになる。従って、その添加材のカーボン材料についても結晶性を上げることがどうしても必要になる。
【0013】
そこで、この微細な炭素繊維の結晶性を上げる必要に迫られ、3200℃の高温まで熱処理温度を上げて結晶性を向上させることを検討した。
【0014】
しかしながら、径が約0.15μm程度の微細な炭素繊維 (気相法炭素繊維) は3000℃以上の温度に加熱しても層面間隔d002 の格子定数は 0.3385nm よりも小さくすることは不可能であった。
【0015】
同時に、導電性についても、密度が 0.8g/cm3 の時の粉体抵抗として0.01Ω・cmが限界点であった。従ってより結晶が発達し低抵抗のものが求められている。
【0016】
その原因は気相法炭素繊維は繊維径が非常に細かいことに加えて同心円状の結晶で、中心部に中空状またはアモルファスな部分を有する特殊な構造であるためと考えられる。しかも繊維径が1ミクロン以下のように細くなると中心部に近くなればなるほど構造的に炭素の六角網目平面を小さい径で円筒状に捲き込むことは難しくなり、結晶化し難くなると考えられる。従って、d002 の値は繊維径に依存している。例えば、径が約0.15μmの繊維では 0.3385nm 、0.05μmでは 0.3400nm 、約0.02μmでは 0.3415nm 、約0.01μm以下では0.3420nmが限界であった。これより、約 0.15 μmの繊維ではd002 の層間距離は0.3385nm程度が限界で、3000℃以上に加熱処理してもd002 をこれより小さくすることは出来なかった。
【0017】
従って、結晶性を上げ、d002 を0.3385nmより小さくするためには熱処理だけでは不充分であり、別の方法も加えて結晶性を向上させる方法を開発する必要がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来得られなかった高い結晶性を持つ、あるいは導電性のよい微細な炭素繊維を開発すること及びその繊維をフィラーとして、より性能の高い電池用電極を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するために先ず黒鉛化触媒(黒鉛化のための助剤あるいは添加物といわれる場合もある。以下、単に「黒鉛化触媒」あるいは「触媒」と言う。)に着目した。
【0020】
今まで、黒鉛化触媒を用いて、径が1μm以下の微細な炭素繊維の物性を制御する試みは、なされていない。また、このような特殊な結晶構造を持つ微細な炭素繊維が、黒鉛化触媒を用いる方法で、何処まで結晶性が向上できるか、またどのような特性を持った材料にできるか不明であった。
【0021】
次に触媒を用いて繊維を処理する方法について検討した。
【0022】
本発明はこれらの検討の結果到達したもので、基本的には以下の各項の発明からなる。
【0023】
(1)繊維径が1μm 以下であり、且つ、X線回折法で求めた炭素の層面間隔d002 が0.335 〜0.342nm ( さらには0.3354〜0.3420nm) の範囲内でありかつd002 <0.3448−0.0028(logφ) 、好ましくはd002 <0.3444−0.0028(logφ) 、より好ましくはd002 <0.3441−0.0028(logφ) (これらの式中、φは炭素繊維の直径である。)を満たし、結晶のC軸方向の厚さLcが 40nm 以下の微細な炭素繊維。
【0024】
(2)ラマンスペクトルのR値が 0.5以上、1580cm−1のスペクトルのピーク半値巾が20〜40cm−1であることを特徴とする(1)記載の微細な炭素繊維。
【0025】
(3)繊維径が1μm 以下であり、かつ、ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する微細な炭素繊維。
【0026】
(4)ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する(1)又は(2)記載の微細な炭素繊維。
【0027】
(5)ホウ素の含有量が 0.1〜3質量%である(3)又は(4)記載の微細な炭素繊維。
【0028】
(6)炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比が10以上である(1)〜(5)記載の微細な炭素繊維。
【0029】
(7)密度 0.8g/cm3 に加圧したときの加圧方向に対して垂直方向の粉体抵抗が0.01Ω・cm以下である(6)記載の微細な炭素繊維。
【0030】
(8)炭素繊維が気相法により製造された炭素繊維である(1)〜(7)記載の微細な炭素繊維。
【0031】
(9)繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、そして、その微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。
【0032】
(10)繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、
その微細な炭素繊維の嵩密度を0.05g/cm3 以上にし、そして
前記嵩密度を維持しながら前記微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。
【0033】
(11)ホウ素またはホウ素化合物の添加量がホウ素原子として炭素繊維に対し、 0.1〜10質量%である(9)又は(10)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0034】
(12)ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比10以上の炭素繊維である(9)〜(11)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0035】
(13)ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が気相法による炭素繊維である(9)〜(12)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0036】
(14)ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施された焼成品である(13)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0037】
(15)ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施されていない未焼成品である(13)記載の微細な炭素繊維の製造法。
【0038】
(16)上記(1)〜(8)記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の微細な炭素繊維は結晶性が良く、X線回折で求めた炭素結晶の層面間隔d002 が0.335 〜0.342nm であり、結晶面のC軸方向の厚さLcは 400nm以下、より好ましくは32nm以下である。
【0040】
図1は、本発明者らが微細な炭素繊維について、ホウ素処理をしないものとホウ素処理をしたものについて、層間距離d002 を測定し、繊維径の関数として表したグラフである。ホウ素処理をしないものは、d002 =0.3448−0.0028(logφ) (式中、φは炭素繊維の直径である。)で表される層間距離d002 より大きいが、ホウ素処理したものはこの式で表される層間距離d002 より実質的に小さくなっている。従って、本発明の微細な炭素繊維は、d002 <0.3448−0.0028(logφ) 、好ましくはd002 <0.3444−0.0028(logφ) 、より好ましくはd002 <0.3441−0.0028(logφ) (これらの式中、φは炭素繊維の直径である。)で表される層間距離d002 を有すると規定することができる。
【0041】
なお、本発明者らの検討では、ホウ素処理なしでは図1に示した炭素結晶の層面間隔d002 =0.3448−0.0028(logφ) より小さくすることはできなかったが、仮にホウ素処理なしでそのような小さいd002 を実現できたとしても、それは特殊な処理によるかあるいは厳しい条件の実現または制御によってのみ可能にされるものであろうから、本発明に従いホウ素処理することにより本発明の範囲内の小さい層面間隔d002 を有する微細な炭素繊維を容易に得ることができることの発明としての意義が失われるものではない。
【0042】
また本発明の微細な炭素繊維として、ホウ素を含有する炭素繊維を挙げることができる。炭素繊維中のホウ素は炭素(グラファイト)の結晶中、結晶層間に存在し、また結晶粒界に、あるいは不純物として存在する。
【0043】
本発明の結晶内にホウ素を含有する炭素繊維は、新規なものであり、d002 及びLcの値が上記の範囲に限定されないものであるが、望ましくはホウ素を含有し、かつd002 及びLcの値が上記の範囲のものである。
【0044】
ホウ素を含有し、かつd002 及びLcの値が上記の範囲の繊維は、ラマン吸収スペクトルのR値(1580cm−1の吸収強度IGと1360cm−1の吸収強度IDの比R=ID/IG) を 0.5以上、かつまた、1580cm−1のスペクトルのピーク半値巾が20〜40cm−1と小さくすることができる。
【0045】
これらの繊維は径(直径)が好ましくは0.01〜1μm、アスペクト比は繊維としての機能をもたせるために10以上が好ましく、さらに好ましくは50以上である。
【0046】
繊維径が0.01μm未満だと繊維の強度が弱く、電池用の電極や樹脂等のフィラーとして使用した場合に繊維の切断等が多くなり、繊維としての機能が損なわれ易い。一方繊維は、フィラーとしての添加率(質量%)を一定とした場合、太くなるとそれだけ繊維の本数が減ることになり、フィラーとしての繊維の機能が十分発揮されない。また例えば電池用の負極材としての炭素電極には黒鉛の粒が含まれているが、繊維が太いと、この粒子間に繊維が入りにくい。また繊維径が1μmより太くなると繊維自体の生産性が著しく低下するので、工業的にコストが高くなる。これらのことから繊維径は1μm以下が好ましい。
【0047】
繊維の長さは特に制限なく、その下限はアスペクト比(繊維長さ/繊維の直径)の下限から定まる長さが好ましい。繊維の長さは、長すぎると繊維の絡み合い等によりフィラーとしての分散性に問題が生じるので、上限は 400μmが好ましく、さらに好ましくは 100μmである。従って例えばアスペクト比が50以上の場合、繊維径が0.01μmでは繊維長さは 0.5μm以上、径が 0.1μmでは長さは5μm以上が好ましい。その上限はいずれも好ましくは 400μm、さらに好ましくは 100μmである。
【0048】
本発明の上記した高結晶性の微細な炭素繊維は、微細な炭素繊維をホウ素化合物の存在下で熱処理することにより製造することができる。理論に拘束されることを意図しないが、このような熱処理によれば、ホウ素は炭素繊維中に取り込まれ、その触媒的な作用により、本発明の高結晶性の微細な炭素繊維が製造されるものと考えられる。
【0049】
高結晶化に効果的な微細な炭素繊維中のホウ素の含有量は、一般的には 0.1〜3質量%、好ましくは 0.2〜3質量%である。しかし、ホウ素は熱処理における繊維の結晶化の際に繊維中に存在すればよく、高結晶化した後、得られた高結晶性の繊維をさらに高温で処理する等により、ホウ素が揮散し、添加量よりも濃度が低くなってもかまわない。
【0050】
次に本発明の微細な炭素繊維の製造法について説明する。
(出発原料としての炭素繊維)
本発明の製造法において出発原料とする炭素繊維は、ベンゼン等の有機化合物の熱分解により気相で成長させた微細な炭素繊維を用いることができる。例えば前記した特開平7−150419号公報、特開平5−321039号公報、特開昭60−215816号公報、特開昭61−70014号公報、特公平5−36521 号公報、特公平3−61768 号公報等の方法で製造することができる。また、繊維径が0.01μm以上であれば、同じ年輪構造をもつカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーと呼ばれる微細な繊維状物質も使用できる。従って、アーク放電法やレーザー法等によって製造される多重構造のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等についても使用できる。
【0051】
気相成長法による微細な炭素繊維の製法について簡単に述べると、シードとなる遷移金属又はその化合物、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの金属超微粉、又はフェロセンなどに基づく超微粒子を用い、基板上にこれらのシードの超微粉又は超微粒子を形成し、これに炭素原料と任意に水素などのキャリアガスを気相で供給し、高温下で分解させるもので、超微粉又は超微粒子をシードとして繊維径0.01μm〜1μm 程度あるいはそれ以上の微細な炭素繊維が成長するものである。シードの形成方法としては、基板(加熱炉の内壁を基板としてもよい)上にシード粒子分散液あるいはシード源溶液を塗布し乾燥して形成する方法、フェロセンなどを吹きつけて形成する方法、またフェロセン等を用いて鉄やその化合物の微粒子を流動状態において生成させる方法などがあり、このようにシードは基板表面上に形成するほか、流動床としてもよい。
【0052】
また、上記のように気相成長法で生成した微細な炭素繊維は、そのままでは、反応して取出されたアズグローンの表面に反応と同時に生成したタール分や低沸点成分が多量に吸着しており、また活性の高い鉄の微粒子が存在するので、これらに対処するために熱処理に供したものでもよい。
【0053】
しかし、本発明者の検討によれば、この微細な炭素繊維は、熱処理だけでは充分な結晶性の向上が望めないことがわかった。そこで高結晶化の触媒(助剤、添加物)について検討した。触媒としてはB,Al,Be,Si等が考えられるが、ホウ素(B)が特に有効であった。通常の炭素材についてはホウ素を添加して熱処理し、結晶性を高めることは種々検討されている。(「炭素」 1996, No. 172, 89〜94頁、特開平3−245458号公報、特開平5−251080号公報、特開平5−266880号公報、特開平7−73898 号公報、特開平8−31422 号公報、特開平8−306359号公報、特開平9−63584 号公報、特開平9−63585 号公報) 。
【0054】
しかし、径が1μm以下の微細な気相法炭素繊維に対して、ホウ素を導入して、特性を改善した例は今までにない。その理由は以下に示すように繊維が特殊な構造を持ち、通常の炭素材料と同様の触媒効果が期待できないと考えられたからである。
【0055】
すなわち、気相法炭素繊維は、繊維の切断面の結晶構造が同心円状に発達した長葱状の繊維である。繊維の長さは、製造条件によって異なるが、例えば0.01〜1μm程度の径の繊維では単繊維だけでなく枝別れした繊維も多く存在するので明確には規定し難いが、直線部分を走査型電子顕微鏡で測定した限りでは、平均が少なくとも5μm以上あるものがほとんどである。また、この繊維は長繊維に加えて枝分れした微細な繊維を含むために、長い繊維はもちろんのこと、5μm程度の短い繊維であっても、少なくとも大きさが10μm以上、場合によっては 100μm以上の大きなフロック状になり易い。従って、集合体としての嵩密度は小さく0.05g/cm3 以下、通常は0.01g/cm3 以下である。しかもフロック状の立体構造を持っている。
【0056】
気相法炭素繊維は、このように通常の炭素繊維と異なる特異な組織を有するので、黒鉛化触媒との接触が難しく、均一にホウ素化し難いと考えられる。
【0057】
また、微細な炭素繊維では、繊維径が微細になればなる程、特にその中心付近で、炭素結晶層が湾曲してしまい、炭素結晶の層間距離を小さくして結晶性を高めた場合に、微細な炭素繊維を維持することができるかどうか、逆に言うと、微細な炭素繊維の結晶性をホウ素でさらに高めることが可能であるかどうかという疑問もあった。
【0058】
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討した結果、気相法で製造した微細な炭素繊維においても、ホウ素を触媒(助剤)として用いて炭素繊維の高結晶化を実現することができた。
【0059】
本発明によれば、ホウ素をドーピングするためには、原料の微細な炭素繊維としてドーピングしやすい、あまり結晶の発達していない、低温熱処理品例えば1500℃以下で熱処理された繊維を用いるか、より好ましくは熱処理していない(アズグロウン)状態の炭素繊維を用いることが好適である。熱処理していない繊維であってもホウ素の触媒を用いた処理(ホウ素化処理)の時に、最終的には黒鉛化温度まで加熱処理されるので、結晶の未発達のものでも十分使用できる。2000℃以上、好ましくは2300℃以上の温度で黒鉛化処理された繊維を用いることもできなくはないが、エネルギーの削減の面から考えれば何ら前もって黒鉛化しておく必要はなく、むしろ熱処理していないものを用いて黒鉛化と同時に触媒作用を働かせる方が好ましい。
【0060】
原料の微細な繊維としては取扱いやすくするため、予め解砕、粉砕したものを用いることはできるが、解砕、粉砕はホウ素またはホウ素化合物との混合ができる程度で十分である。すなわち、ホウ素化処理した後でも最終的には解砕、粉砕、分級等のフィラー化処理をするので、ホウ素化処理の前にフィラー等としての適正な長さにしなくても良い。気相成長法で一般的に得られる太さ(径)0.01〜1μm程度、長さ 0.5〜400 μm程度の炭素繊維をそのまま用いることができる。これらはフロック状になっていてもよい。また、原料繊維は熱処理したものでもよいが、熱処理温度は1500℃以下とすることが好ましい。
(ホウ素またはホウ素化合物)
ホウ素化処理に使用するホウ素またはホウ素化合物は、特に限定されないが、次のような物性のものが適する。ホウ素化処理は2000℃以上の温度で行われるので、少なくとも2000℃に達する前に分解等によっても蒸発しない物質、例えば、元素状ホウ素、B2O3,H3BO4, B4C,BNその他のホウ素化合物を使用するのがよい。
【0061】
炭素にホウ素をドーピングできる量は、一般的には3質量%以下である。従って配合時のホウ素またはホウ素化合物の添加量は、反応率を考慮して炭素量に対してホウ素原子換算で10質量%以下で十分である。ホウ素の使用量が多いと処理コストが高くなるだけでなく、熱処理の段階で、溶融燒結し易く、固まったり、繊維表面を被覆し、電気抵抗を上昇させるなどフィラー特性が失われることがある。
【0062】
微細な炭素繊維(繊維径1μm 以下)は3次元の立体構造を持ち、フロック状を形成し易いだけでなく、嵩密度が極めて小さく空隙率が非常に大きい。しかも添加するホウ素量は10質量%以下、好ましくは5質量%以下と少ないので、単に両者を混合しただけでは両者を均一に接触させることは難しい。
【0063】
ホウ素の導入反応を効率よく行うには繊維とホウ素またはホウ素化合物をよく混合し、できるだけ均一に接触させる。そのためには、ホウ素またはホウ素化合物の粒子はできるだけ粒径の小さいものを使用する。また、粒子が大きいと部分的に高濃度領域が発生することになり、固結化の原因になりかねない。具体的には粒度は平均粒径で 100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0064】
また、硼酸等を用いる場合は水溶液として添加し、予め水分を蒸発させる方法や加熱過程で水分を蒸発する方法も用いることができる。水溶液を均一に混合すれば水分蒸発後はホウ素化合物を繊維表面に均一に付着させることができる。
【0065】
気相法による微細な炭素繊維は先に述べたように、嵩密度が小さく、製造されたままの集合体では約0.01g/cm3 以下、またこれを熱処理し、解砕、粉砕し、分級した通常品でも0.02〜0.08g/cm3 程度である。従って本微細な炭素繊維は多くの空隙率を持つので、これを熱処理するには非常に容量の大きな熱処理炉が必要で設備コストが高くなるだけでなく、生産性も悪い。従って、通常の炭素材料の場合と異なり、効率的な方法でホウ素を導入する方法を開発する必要がある。
【0066】
また、ホウ素の導入反応を効率よく反応させるには、炭素とホウ素の接触を十分に保持する必要がある。そのためには、両者を均質に混合し、十分接触させるようにする。また熱処理の過程で両者が分離し、濃度の偏りが起きないようにする。
【0067】
そのため、繊維とホウ素またはホウ素化合物を均一に混合し、そのまま熱処理することもできるが、好ましくは、高密度化し、且つその状態をできるだけ維持(固定化)して熱処理する。その好ましい方法として、本発明では熱処理前に、両原料を混合した後、混合物に圧力を加えて圧縮し、高密度化して固定化する。
【0068】
まず、繊維とホウ素またはホウ素化合物の混合は、均一性が保持できればいずれの方法でも良い。混合機としては、市販の混合機の何れでもよいが、微細な炭素繊維はフロック状になり易いので、これを解砕するためにチョッパー付きのヘンシェルミキサータイプのものであればより好ましい。使用する原料繊維は先に述べたように製造されたままのものでも、その繊維の1500℃以下の温度での処理品でもよい。ただ、経済的にも、性能的にも製造されたままのものを混合する方法が好ましい。
【0069】
炭素繊維とホウ素またはホウ素化合物の混合物を高密度化し、両者が分離しないように固定化する方法としては、成形法、造粒法、あるいは、混合物を坩堝にいれて一定の形状に圧縮して、詰め込む方法等何れの方法でも良い。また成形法の場合、成形体の形状は円柱状、板状や直方体等何れの形状でもよい。
【0070】
高密度化し、固定された混合物の嵩密度は0.05g/cm3 以上、好ましくは0.06g/cm3 以上である。
【0071】
混合物を圧縮して成形体とした後、圧力を開放すると多少容積が膨らみ、嵩密度が下がることもあるが、その場合は圧縮時の嵩密度を圧力開放後の固定化の嵩密度が0.05g/cm3 以上になるようにする。また繊維を容器に入れる場合も、処理効率を上げるために、加圧板等を用いて嵩密度が0.05g/cm3 以上になるように圧縮したり、また圧縮したまま熱処理することもできる。
【0072】
このようにしてホウ素またはホウ素化合物を添加し、かつ嵩密度を高めた繊維は次に熱処理する。
【0073】
ホウ素を炭素の結晶内に導入するために必要な処理温度は2000℃以上、好ましくは2300℃以上である。処理温度が2000℃に満たないとホウ素と炭素との反応性が悪く、ホウ素の導入が難しい。また、ホウ素の導入を一層促進し、かつ炭素の結晶性を向上させ、特に径が約 0.15 μm程度の繊維でd002 を 0.3385nm 以下にするには2300℃以上に保つことが好ましい。熱処理温度の上限は特に制限はないが、装置等の制限から3200℃程度である。
【0074】
使用する熱処理炉は2000℃以上、好ましくは2300℃以上の目的とする温度が保持できる炉であればよく、通常の、アチソン炉、抵抗炉、高周波炉他の何れの装置でもよい。また、場合によっては、粉体または成形体に直接通電して加熱する方法も使用できる。
【0075】
熱処理の雰囲気は非酸化性の雰囲気、好ましくはアルゴン等の希ガス雰囲気が必要である。熱処理の時間は、生産性の面からは出来るだけ、短い方が好ましい。特に長時間加熱していると、燒結しかたまってくるので、製品収率も悪化する。従って、成形体等の中心部の温度が目標温度に達した後、1時間以下の保持時間で十分である。
【0076】
この処理によって本発明の炭素繊維のd002 をはじめて0.3420nm以下にでき、結晶性を向上させることができた。ところがLc(X線解析法による炭素の結晶性のC軸方向の層の厚さ)は 40nm 以下、さらに好ましくは32nm以下にとどまり、Bを添加しない熱処理品とあまり変らないことが明らかとなった。通常の易黒鉛化性炭素材料は、黒鉛化したd002 が小さくなると、Lcは大きくなるのが通例であるが、本発明の 0.2μm程度の繊維の場合にはLcは大きくならず、 40nm 以下であり、Bを添加しない場合と同等であった。すなわち、d002 は小さくなるが、Lcは大きく変化しないところが特徴である。
【0077】
また、通常の気相法炭素繊維は加熱に従ってラマンスペクトルの1580cm−1のピークが高くなり、1360cm−1のピークが減少し、すなわちR値は小さくなり、黒鉛化とともに最終的に 0.1〜0.2 程度まで下がるが、本発明のホウ素処理品では、R値が 0.5以上、 0.7〜0.8 程度であった。
【0078】
更に、1580cm−1のピークが高くなると共に、その半値巾は20〜40cm−1までに狭くなった。
【0079】
これら、d002 の減少、1580cm−1のピークの高まりに従い、導電性も向上が見られ、0.01Ω・cm以下、具体的には 0.003Ω・cmの値が得られた。
【0080】
さて圧縮成形等をして高密度化した繊維は熱処理すると、一部分が焼結し、通常品と同様にブロック状になっている。従って、そのままでは電極等に添加したり、電子放出能材に使用することは出来ないので成形体を解砕し、フィラー材として適する形態にしなければならない。
【0081】
そのため、このブロックを、解砕、粉砕、分級してフィラー材として適するように処理をすると同時に、非繊維物を分離する。その際に粉砕し過ぎるとフィラー性能が低下し、また粉砕が不十分だと電極材との混合がうまくいかず、添加効果が出ない。
【0082】
フィラーとして望ましい形態にするためには、熱処理後のブロック状のものを先ず、2mm以下の大きさに解砕し、更に粉砕機で粉砕する。解砕機としては通常使用されるアイスクラッシャーやロートプレックス等の解砕機が使用できる。粉砕機としては、衝撃型の粉砕機のパルペライザーや自由粉砕機、また、ミクロジェット等の粉砕機が使用出来る。非繊維物を分離する分級は気流分級等で行うことが出来る。粉砕分級条件は、粉砕機の種類や、操作条件によって異なるが、フィラー特性を発揮させるためには、繊維の長さが5〜400 μmの範囲にするのが好ましい。アスペクト比は好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上である。
【0083】
この繊維を粉砕分級後の嵩密度で表すと 0.001g/cm3 以上で 0.2g/cm3 以下、好ましくは、 0.005g/cm3 以上で0.15g/cm3 以下、更に好ましくは0.01g/cm3 以上で 0.1g/cm3 以下である。嵩密度が 0.2g/cm3 以上になると、太さによっては繊維の長さが5μm以下のように短くなりフィラー効果が低下する。また 0.001g/cm3 より小さいと繊維が径によっては 400μmを超えるような長いものとなり、フィラーとしての詰まりが悪くなる。嵩密度は容器に繊維を充填し、振動させ、体積がほぼ一定に達したときの体積と質量から求めたタッピング嵩密度である。
【0084】
本発明の微細な炭素繊維は、電池用電極に添加し、電池の性能を向上することが出来る。電池としては、リチウム電池、鉛蓄電池、ポリマー電池、乾電池等の電極板の導電性を向上したり、インターカレーション能力を必要とする電池を上げることが出来る。本発明の微細な炭素繊維は、結晶性が優れ、導電性が良いので、これらの電池の導電性を高めることが出来るばかりでなく、リチウム電池では負極用炭素材料としてのインターカレーション能力が大きいので充放電容量を増加することが出来る。特にd002 が3.3420nm以下、Lcが 40nm 以下の微細な炭素繊維は上記の効果が大きいが、ホウ素含有の炭素繊維はd002 及びLcの値が上記の範囲外であっても、ホウ素を含有しない微細な炭素繊維に比べて結晶性がよく導電性が高いので、上記の用途に使用することができる。
【0085】
電極中への微細な炭素繊維の添加量は、 0.1質量%以上で20質量%以下の範囲が好ましい。添加量が20質量%より大きくなると電極中の炭素の充填密度が小さくなり、電池にしたときの充放電容量が低下する。また、 0.1質量%より少なくなると添加効果が少ない。
【0086】
微細な炭素繊維を添加して電極とするには、例えばリチウム電池の負極は、黒鉛粉末やメソフューズカーボンマイクロビーズ (MCMB) 等が用いられるが、これに微細な炭素繊維及びバインダーを添加し、充分に混練して繊維が出来るだけ均一に分散するようにする。
【0087】
【実施例】
以下実施例により具体的に説明し、また電極のフィラーとしての効果を明らかにする。
【0088】
微細な炭素繊維の高結晶化
(実施例1)
出発原料である微細な炭素繊維は、遷移金属を含有する有機化合物の存在のもとにベンゼンを熱分解する公知の方法(例えば特開平7−150419号公報) で得た気相法炭素繊維をさらに1200℃で熱処理した。このフロック状に集合した繊維を解砕し、嵩密度を0.02g/cm3 、繊維の長さを10〜100 μmとした。繊維の太さ(径)は大部分が 0.5μm以下 (SEM 写真で観察した平均的な径は 0.1〜0.2 μm) であった。この繊維のX線回折による層面間隔d002 は3.3407nm、Lcは5.6nm であった。
【0089】
この繊維2.88kgに平均粒径15μmのB4C 粉末を 120g添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物を容量50リットルの円筒状の黒鉛ルツボに詰め込み、圧縮して嵩密度を 0.075g/cm3 とした。黒鉛製の加圧板で圧縮したまま蓋をし、アチソン炉に入れて加熱処理をした。このときの温度は2900℃であり、2900℃になってからの加熱時間は、60分間である。
【0090】
加熱処理後冷却し、坩堝より繊維を取り出し、約2mm程度に粗解砕した後バンタムミルで粉砕し、その後非繊維状物を気流分級で分離した。
【0091】
得られた繊維の太さは変わらないが、長さは5〜30μmで、嵩密度は0.04g/cm3 であった。この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2900℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例1に示す。
【0092】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た炭素繊維を解砕し、次いで粉砕して嵩密度を0.05g/cm3 とした。この時の繊維の長さは大部分10〜50μm、太さはSEM 写真で観察した平均的な径で0.06μmであった。この繊維 150gに平均粒径10μmのB4C 6gを添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物をシリンダー状の成形機に装入し、加圧して直径 150mmの円柱体に成形した。成形後の嵩密度は0.087g/cm3 であった。
【0093】
この成形体を黒鉛を発熱体とした黒鉛化炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分間加熱処理した。
【0094】
加熱処理後、成形体を取出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたBドープ品の嵩密度は 0.046g/cm3 であった。この時の繊維の長さは大部分5〜20μmであった。
【0095】
この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2800℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例2に示す。
【0096】
(実施例3)
出発原料である微細な炭素繊維は、実施例1同様遷移金属を含有する有機化合物の存在のもとにベンゼンを熱分解する公知の方法で得た、この炭素繊維を熱処理せずそのまま解砕し、嵩密度を0.01g/cm3 とした。繊維の太さは、大部分が0.13μm以下であった。この繊維 200gに平均粒径19μmのB4C 8gを添加し、ヘンシェルミキサーで十分に混合した。この混合物をシリンダー状の成形機に装入し、加圧して直径 150mmの円柱体に成形した。成形後の嵩密度は、0.07g/cm3 であった。
【0097】
この成形体を黒鉛を発熱体とした黒鉛炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分加熱処理した。
【0098】
加熱処理後、成形体を取り出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたホウ素ドープ品の嵩密度は0.03g/cm3 であった。
【0099】
この繊維のホウ素含有量、X線回折によるd002 、Lcの値を表1に示す。B4C を添加しないで上記と同様2800℃で加熱処理した炭素繊維を表1の比較例3に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例4)
実施例1と同様にして得た炭素繊維を解砕し、次いで粉砕して嵩密度を0.02g/cm3 とした。この時の繊維の長さは大部分10〜50μm、太さは平均で約0.04μmであった。この繊維3000gに平均粒径15μmの B4C 120gを添加し、ヘンシェルミキサーで充分に混合した。この混合物を内径 100mm、内長さ 150mmの黒鉛るつぼに88g詰め込んだ。その時の嵩密度は0.08g/cm3 であった。
【0102】
このるつぼに蓋をしてカーボン抵抗炉に入れてアルゴン気流中、2800℃で60分間加熱処理した。
【0103】
加熱処理後、成形体を取出し、乳鉢で簡単に2mm以下に解砕した。さらにバンタムミルで粉砕し、気流分級して、得られたホウ素(B)ドープ品の嵩密度は0.04g/cm3 であった。また、ホウ素の分析結果から、繊維の結晶中に1.02%のホウ素が導入されたことがわかった。同様に表1にd002 、Lcの測定値を示す( d002=0.3395nm、Lc=25.4nm)。なお、同様の工程にてB4C を添加しないものについてのd002 、Lcの値を表1の比較例4に示す( d002=0.3405nm、Lc=21.6nm)。
【0104】
次ぎに、得られたファイバーの粉体抵抗を測定した。測定方法は、本発明者の開発した次に示す方法である。
【0105】
本測定セルは、図2に示すように10mm×50mm角で深さが 100mmのセル4と押し込みのための圧縮ロッド2及び受け器3からなる。セルに一定量の粉体を入れ、上部から圧縮ロッド2に圧力をかけ粉体を圧縮していく。
【0106】
そして、圧力と体積を測定しながら、順次加圧方向と垂直の方向に設置された電極1から電流 100mAを流し、受け器から出た2つの測定端子6の10mm間の電圧(E)Vを読み、以下の式から抵抗値(R)Ω・cmを計算する。
【0107】
R=E/100 (Ω・cm)
粉体抵抗は密度によって異なるので、その評価は一定密度の値で比較する。本測定では、粉体密度が 0.8g/cm3 の時の値で比較する。
【0108】
この結果を表2に示す。
【0109】
このときの生成物のd002 を測定した結果、0.3395nmで、Lcは 25.4nm であった。
【0110】
なお、参考のため同様の工程にてB4C を添加しないものについての抵抗値を表2の比較例9に示す。
【0111】
(実施例5)
実施例1と同様の製造による気相法炭素繊維で実施例4より径の大きい 0.2μmのものを1300℃で熱処理し解砕して嵩密度を0.05g/ccとした。この繊維 150gに平均粒径10μmのB4C 6gをヘンシェルミキサーへ投入し、混合した。この粉体を内径が 150φ×400mm のシリンダーと加圧装置を用いて 150φ×100mm の円柱体に成型した。この時の嵩密度は 0.030g/cm3 であったが、これをシリンダー内に詰めこむことによって、0.08g/cm3 まで圧縮した。
【0112】
この成型体を黒鉛ヒーターを発熱体とした黒鉛化炉に入れてアルゴン雰囲気中で昇温速度15℃/min で加熱処理した。この時の加熱温度は2800℃であった。
【0113】
熱処理後、繊維を取り出し、乳鉢にて軽く4mm以下に解砕した。更にバンタムミルで粉砕、分級後の嵩密度は0.03g/cm3 であった。また、ホウ素の分析結果から繊維の結晶中に0.93%のホウ素が導入できたことがわかった。
【0114】
得られた粉体の抵抗を表2に示す。
【0115】
同時に実施例5のd002 を合わせて示すが、実施例4と同様の低下が見られた。また、Lcは、29.9nmであった。なお、参考のため同様の工程にてB4C を添加しないものについてのd002 、Lcを表1の比較例5に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
フィラー効果の確認
(実施例6)
本繊維を負極用炭素材に添加したときの粉体抵抗が、本当に低下できるかを検討するため、市販の黒鉛粒子(平均10μm)に実施例4の本発明品を添加し、添加量と粉体抵抗の関係を測定し求めた。また比較例3のBの添加されていない繊維を添加したときの添加量と粉体抵抗の関係を測定し求めた。
【0118】
繊維を添加しないとき、3%添加、5%添加、10%添加のときの各々の抵抗値を表3に示す。なお、粉体抵抗の測定方法は、実施例4と同様であるが、測定にあたっての嵩密度は、電極と同等の密度で比較したほうが好ましいので、 1.5g/cm3 の密度のときの抵抗値である。
【0119】
次に上記の繊維のリチウム電池の電極としての実施例を示す。
【0120】
(実施例7)
まず、繊維自体(100%) で電極を構成し、本発明の繊維による効果を調べた。
【0121】
上記実施例1,2及び3、比較例1,2及び3の繊維にPVDF (ポリビニリデンフルオライト) を3質量%添加し、ニッケルメッシュ上に圧着して作用極(負極)とし、Li金属を対象極として電池の性能を測定した。電解液は1モルのLiPF6 を溶解したエチレンカーボネイト (EC) 及びジエチルカーボネイト (DEC)の両者の配合比が体積比で1:1の溶媒を用いた。電池の評価時の電流密度は 0.2mA/gとした。
【0122】
これらの電池の放電容量を測定した結果を表4に示す。
【0123】
次ぎにこの繊維を添加した電極の実施例を示す。
【0124】
(実施例8)
電極の負極材となる炭素材料には、ピッチコークスを3000℃で熱処理した平均粒径16μmの黒鉛化粒子を用いた。この黒鉛化粒子は熱処理の際にホウ素を添加したもの(GB) と、ホウ素を添加しないもの (G1) を使用した。GBのホウ素含有量は0.98質量%である。
【0125】
極板は、これらのGB又はG1の単独、及びGB又はG1に実施例1又は比較例1の繊維をそれぞれ5質量%添加したものに、3質量%のPVDFを添加してスラリー化し、ニッケルメッシュ上に圧着して作製した。電解液、対象極及び電流密度は前記例と同様とした。放電容量の測定結果を表4に示す。参考例1及び2は上記のGB,G1を単独で電極を構成したものである。表中の放電容量の計算値はG1またはGB95質量%の放電容量と炭素繊維5質量%の放電容量をその比率に従って加成的に合算したものである。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
表4からわかるように負極材となる炭素材料に微細な炭素繊維を添加し、リチウム電池の電極(負極)とすると放電容量が負極材及び微細な炭素繊維自体のもつ放電容量から計算した値より高いことが判明した。特に微細な炭素繊維としてホウ素を添加し、高温で処理し、結晶性を高めた繊維の場合特にこの効果が高い。すなわち、負極材の炭素材料にホウ素含有の微細な炭素繊維を添加すると、理由は定かでないが、明らかに相乗効果があり、特に高結晶性の微細な炭素繊維の場合顕著な相乗効果があることが判明した。
【0129】
【発明の効果】
本発明は微細な炭素繊維であって、従来得られなかった高結晶性の炭素繊維及びホウ素を含有する炭素繊維である。高結晶性であるために導電性や熱伝導性に優れ、樹脂、セラミックス、金属等のフィラーとして優れたものである。
【0130】
特に電池やキャパシタの電極のフィラーとして添加すると微細であるために添加量が少なくても分散効率が高く、大きな効果が得られる。また、本発明の微細な炭素繊維はリチウムイオンのインターカレーション能力が大きく、少ない添加量でも放電容量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】微細炭素繊維の繊維径とグラファイト結晶の層間距離との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の粉体抵抗を測定する装置の断面図である。
Claims (24)
- 繊維径が1μm 以下であり、且つ、X線回折法で求めた炭素の層面間隔d002 が 0.335〜0.342nm の範囲内でありかつd002 <0.3448−0.0028(logφ) (式中、φは炭素繊維の直径である。)を満たし、結晶のC軸方向の厚さLcが 40nm 以下の微細な炭素繊維。
- 炭素の層面間隔d002 がd002 <0.3444−0.0028(logφ) を満たす請求項1記載の微細な炭素繊維。
- ラマンスペクトルのR値が 0.5以上、1580cm−1のスペクトルのピーク半値巾が20〜40cm−1であることを特徴とする請求項1の微細な炭素繊維。
- 繊維径が1μm 以下であり、かつ、ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する微細な炭素繊維。
- ホウ素を炭素繊維の結晶内に含有する請求項1〜3のいずれかに記載の微細な炭素繊維。
- ホウ素の含有量が 0.1〜3質量%である請求項5記載の微細な炭素繊維。
- 炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比が10以上である請求項5記載の微細な炭素繊維。
- 密度 0.8g/cm3 に加圧したときの加圧方向に対して垂直方向の粉体抵抗が0.01Ω・cm以下である請求項7記載の微細な炭素繊維。
- 炭素繊維が気相法により製造された炭素繊維である請求項5記載の微細な炭素繊維。
- 繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、そして、その微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。
- 繊維径1μm 以下の微細な炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を添加し、
その微細な炭素繊維の嵩密度を0.05g/cm3 以上にし、そして
前記嵩密度を維持しながら前記微細な炭素繊維を2000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする微細な炭素繊維の製造法。 - ホウ素またはホウ素化合物の添加量がホウ素原子として炭素繊維に対し、 0.1〜10質量%である請求項10または11記載の微細な炭素繊維の製造法。
- ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が直径0.01〜1μm、アスペクト比10以上の炭素繊維である請求項12記載の微細な炭素繊維の製造法。
- ホウ素またはホウ素化合物を添加する微細な炭素繊維が気相法による炭素繊維である請求項13記載の微細な炭素繊維の製造法。
- ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施された焼成品である請求項14記載の微細な炭素繊維の製造法。
- ホウ素またはホウ素化合物を添加する前記熱処理前の前記微細な炭素繊維が、気相法で成長後に熱処理を施されていない未焼成品である請求項14記載の微細な炭素繊維の製造法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
- 請求項5記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
- 請求項6または7記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
- 請求項8または9記載の微細な炭素繊維を含む電池用電極。
- 微細な炭素繊維の含有量が 0.1〜20質量%である請求項17記載の電池用電極。
- 微細な炭素繊維の含有量が 0.1〜20質量%である請求項18記載の電池用電極。
- 微細な炭素繊維の含有量が 0.1〜20質量%である請求項19記載の電池用電極。
- 微細な炭素繊維の含有量が 0.1〜20質量%である請求項20記載の電池用電極。
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