JP2004063191A - プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、インクジェットノズルが放電セルの内側に蛍光体を吐出して蛍光体層を形成する際に、基板と平行な軸に対して回転しつつ、放電セルを構成する隔壁及び基板の各々に対して蛍光体を断続的に複数回吐出する。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は情報表示端末や平面形テレビなどに用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法及びこの製造方法により製造したプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
図10に示すように、プラズマディスプレイパネル200(以下、「PDP」という。)は、電極201a、202aを備えた2枚のガラス基板201、202と、基板201、202間に設けられた隔壁203によって形成される多数の微少放電空間(以下、放電セル204という)とを有している。
放電セル204の底面、即ち、対向して配置された2枚のガラス基板201、202のうちの底面側のガラス基板202の表面と、放電セル204の側面、即ち、各隔壁203の側面には、赤(R)、緑(G)、青(B)等に発光する蛍光体層205が設けられており、放電セル204内部にはXe、Ne等を主成分とする放電ガスが封入されている。
【0003】
放電セル204は放電の拡がりを一定領域に抑えるものであり、電極201a、202a間に電圧を印加して放電させると、放電ガスに起因する紫外線が発生し、これにより蛍光体205が励起されて可視光を発光する。そして、放電セル204全体あるいは放電セル204の一部を選択的に放電させることにより所望の情報をフルカラーで表示するようになっている。
放電セルの種類としては、隔壁を平面視ストライプ状に形成したストライプ型の他、隔壁を平面視格子状に形成した格子型、隔壁を平面視ハニカム状に設けたハニカム型などが知られている。ストライプ型の放電セルは左右の隔壁の側面と底面との合計3面にしか蛍光体層を設けることができないが、例えば格子型の場合、セルを囲む4つの隔壁の側面と底面の合計5面に蛍光体層を設けることができ、格子型やハニカム型のセルでは発光に寄与する蛍光体層の面積が増えるのでPDPの輝度を向上させることができる。
【0004】
放電セルの内部に蛍光体層を形成する方法としては、例えば、特開2002−50288号公報に開示されているインクジェット方式が知られている。
この方式は、図11に示すように、ストライプ型の放電セル204の長手方向に沿ってヘッド300を移動(走査)させつつ、インクジェットノズル301から放電セル204の底面に向けて蛍光体ペーストPを連続的に吐出することで放電セル204内部に蛍光体ペーストPを徐々に充填していく。
そして、焼成により蛍光体ペーストPに含まれる有機物成分を除去することで、放電セル204の底面及び側面に蛍光体層205を形成するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、PDPの性能向上のために、視野角の拡大及び輝度の向上が求められており、視野角の拡大及び輝度の向上のために蛍光体層を厚くして発光に寄与する蛍光体量を増加させる必要がある。
しかし、上述のように、蛍光体を連続的に吐出して放電セル内部に蛍光体を充填する方法では、放電セルの側面に付着した蛍光体は自重により放電セルの底面側に移動し、放電セルの底面の蛍光体層の膜厚に対して側面の蛍光体層の膜厚が薄くなるという問題が生じ、結果的に放電セル全体の輝度の低下や視野角の減少を招くという問題があった。
【0006】
また、上述のように、インクジェットノズルを用いて放電セル内部に蛍光体を連続的に吐出する方法を例えば格子型のセルに適用した場合、インクジェットノズルの移動方向に直交して配置されている隔壁の上方をノズルが通過する際に、この隔壁の上部に蛍光体が付着してしまうという問題があった。
また、一般的に、蛍光体は原料となる固体同士を粉砕しながら機械的に攪拌する固相合成法により製造されているため、蛍光体の粒径は2μm〜10μmと大きく、かつ、バラツキがある。
【0007】
従って、固相合成法により製造した蛍光体を用いる場合は、蛍光体ペースト内部に不定形状の空隙が生じ、蛍光体ペーストと放電セル内面との接触面に空隙が生じる結果、蛍光体ペーストの放電セル内面への付着力が低下する。そして、放電セルの側面に付着した蛍光体が自重により放電セルの底面側に移動し、放電セルの底面の蛍光体層の膜厚に対して側面の蛍光体層の膜厚が薄くなるという、上述の場合と同様の問題があった。
また、放電セル底面の蛍光体層の膜厚に対して側面の蛍光体層の膜厚が薄くなるという問題は、例えば、特開平2001−357779号公報に開示されているような、ペースト状の蛍光体を、所定のパターンを形成したスクリーン印刷版から放電セル側面に押し出し、蛍光体ペーストの自重を利用して放電セルの側面と底面に蛍光体層を形成する方法においても同様に生じていた。
【0008】
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、放電セルの側面に形成する蛍光体層の層厚を任意に調節できるプラズマディスプレイパネルの製造方法及びこの製造方法により製造されたプラズマディスプレイパネルを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定間隔をあけて対向配置された2つの基板と、前記基板間に設けられて基板間の空間を複数に区画する隔壁と、前記隔壁及び前記基板に囲まれた放電セルと、インクジェットノズルからの蛍光体の吐出により、前記放電セルの内側に面する隔壁の側面及び基板の一方の対向面に形成される蛍光体層とを備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記インクジェットノズルが、前記隔壁及び基板の各々に対して蛍光体を断続的に複数回吐出することを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、インクジェットノズルが、隔壁及び基板の各々に対して蛍光体を断続的に複数回吐出する。従って、蛍光体をペースト状に調製した蛍光体ペーストの粘度及び表面張力を調節することにより、隔壁の側面、即ち放電セルの側面に吐出した蛍光体ペーストが自重により基板の表面、即ち放電セルの底面側に移動する前に蛍光体ペーストを固化させることができる。
従って、インクジェットノズルから一回に吐出する蛍光体の吐出量と蛍光体の吐出回数を調節することで、放電セルの側面に形成する蛍光体層の層厚を任意に調節することができる。
また、放電セルの側面の蛍光体層と底面の蛍光体層をそれぞれ独立して形成でき、放電セルの側面の蛍光体層と底面の蛍光体層の層厚を調節して、放電セルの輝度及び視野角を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記インクジェットノズルが、前記基板と平行な軸に対して回転することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られると共に、インクジェットノズルを基板と平行な軸に対して回転させることにより、隔壁及び基板の各々に対して蛍光体を吐出するので、例えば、隔壁用のインクジェットノズルと基板用のインクジェットノズルを設ける場合と比較してコストを抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記インクジェットノズルから一回に吐出される蛍光体の量が、前記放電セル内の体積の1/10000以上で1/5以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2と同様の効果を得られると共に、インクジェットノズルから一回に吐出する蛍光体の量を放電セル内の体積の1/10000以上とする。
従って、蛍光体の一回の吐出量が少ない場合には、蛍光体の粒径によってはインクジェットノズルに目詰まりが生じる場合があるが、一回の吐出量を放電セル内の体積の1/10000以上とすることにより、目詰まりを防止できる。
また、蛍光体の吐出回数を一定限度以下に抑えることができ、蛍光体層の形成作業に要する時間を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体の平均粒径が0.01μm以上で1μm以下であることを特徴とする。
【0016】
ここで、蛍光体の平均粒径は、電子顕微鏡(例えば、日立製作所(株)製、S−900等)を用いて、蛍光体層中の蛍光体粒子300個の平均粒径を測定した平均値をいう。また、ここでいう粒径とは、蛍光体粒子が立方体あるいは八面体の所謂正常晶の場合には、蛍光体粒子の稜の長さを言う。正常晶でない場合、例えば蛍光体粒子が球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、蛍光体粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項と同様の効果を得られると共に、平均粒径が0.01μm〜1μmの極めて微粒子の蛍光体から蛍光体層を構成している。
従って、従来より用いられている平均粒径が1.3μm〜7μmの蛍光体と比較して、蛍光体インキと放電セル内面との接触面に生じる空隙を小さくすることができ、蛍光体インキの放電セル内面への付着力の低下を防止することができる。従って、放電セルの側面に付着した蛍光体は自重により放電セルの底面側に移動し、放電セルの底面の蛍光体層の膜厚に対して側面の蛍光体層の膜厚が薄くなるという従来の問題点を解消でき、放電セルの輝度及び視野角を向上できる。
【0018】
また、蛍光体層を緻密で均一な構成にすることができ、放電セル毎の蛍光体品質のバラツキを防ぐことができる。従って、放電セル毎の発光量が等しくなり、プラズマディスプレイパネル全面で発光量を均一にできる。
また、蛍光体層の表面の凹凸が小さく、表面の平滑性が高くなるので、従来のように蛍光体層からの発光を表面の凹凸により乱反射させて光を損失させない。したがって、輝度の低下や発光ムラを防ぎ、発光を効率的に表示に用いることができる。
【0019】
また、例えば、従来より用いられている平均粒径が1.3μm〜7μmの蛍光体から蛍光体層を構成する場合と比較すると、同じ厚さの蛍光体層であっても層内に蛍光体を効率よく充填できる。したがって、発光に関与する蛍光体の量が増加し、PDPの輝度を確実に向上することができる。
また、従来の蛍光体層は、放電空間を確保した上で一定の輝度を達成するためには、20〜30μmの厚さにしなければならなかった。しかし、本発明では、上記微粒子の蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、5〜20μmの範囲で薄膜化が可能である。その結果、放電空間を拡大し、蛍光体を発光させる紫外線の発生量を増加することができる。また、上記のように従来と同じ厚さであっても蛍光体層に含まれる蛍光体の量が増加する。このため、蛍光体層を薄膜化しても、製造したPDPを高輝度にすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体は、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により製造されることを特徴とする。
【0021】
ここで、液相合成法とは、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法などの液相中での反応方法を称して表している。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果を得られると共に、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により蛍光体を製造するので、反応は蛍光体を構成する元素イオン間で行われる。このため、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。一方、従来の固相合成法では、固体間反応であるために、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留することが往々にして起こり、化学量論的に高純度な蛍光体を得にくい。したがって、液相合成法により化学量論的に高純度な蛍光体を得ることで、発光効率と収率を高めることができる。
【0023】
また、固相合成法では、反応時に固体同士を粉砕しながら機械的に攪拌するため、得られた蛍光体は多面体となる場合が多く、粒径分布も広くなる。特に、焼成時に多量の融剤を用いる場合には、蛍光体の粒径分布は正規分布に近いものとなる。このように粒径分布の広い蛍光体を用いて蛍光体層を形成すると、上記したように、層の厚さ方向において不均一であり、表面に凹凸が生じる可能性が高い。このため、形成された蛍光体層は不均質なものとなり易い。
【0024】
一方、液相合成法では、元素イオンを液体中で反応させるので、蛍光体の平均粒径や粒子形状、粒子径分布、発光特性等をより精密に制御することができ、本発明の平均粒径0.01〜1μmの粒子を狭い粒径分布で得ることができる。
このため、従来の固相合成法により製造された微粒子の蛍光体を用いる場合と比べて、液相合成法により製造された微粒子の蛍光体を用いることにより、蛍光体層が薄い場合であっても発光効率の高い、輝度の優れたプラズマディスプレイパネルを製造することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu2+であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体が、Zn2SiO4:Mn2+であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体が、(Y,Gd)BO3:Eu3+であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマディスプレイの実施の形態について詳細に説明する。
本発明のプラズマディスプレイパネルは、電極が設けられた2枚の基板と、基板間に設けられた隔壁によって区画される多数の微少放電空間(放電セル)とを有している。
放電セルには蛍光体層が設けられており、放電セル内でプラズマ放電を発生させることにより蛍光体から可視光を発光させる。そして、発生した可視光を表示側に配置される基板を透過させて、ディスプレイ画面上に種々の情報表示を行うようになっている。
本発明のPDPの製造方法は、後述する液相合成法により製造した平均粒径が0.01μm〜1μmの蛍光体を用い、この蛍光体をインクジェットノズルから放電セルの内面(放電セルの底面を構成する基板の表面及び放電セルの側面を構成する隔壁の表面)に向けて断続的に複数回吐出することにより、厚さが5〜20μmの蛍光体層を形成するものである。
【0027】
まず、図1〜図4を参照してPDP1の構成例を説明する。
なお、説明の便宜上、図1に示すように、表示電極11の長手方向に沿った方向を左右方向とし、アドレス電極21の長手方向に沿った方向を前後方向とし、2枚の基板10、20のうち、表示側に配置される基板10(前面板)が配設される方向を上方とする。
なお、PDPは電極の構造および動作モードから、直流電圧を印加するDC型と、交流電圧を印加するAC型とに大別できる。図1にはAC型のPDPを示したが、本発明のPDPはこれに限定されるものではない。
【0028】
図1に示す2枚の基板10、20のうち、一方は表示側(上方)に配置される前面板10であり、他方は背面側(下方)に配置される背面板20である。前面板10と背面板20は、これら前面板10と背面板20の間に設けられる隔壁30によって所定間隔をあけて対向配置されている。
前面板10及び背面板20は、例えば、ソーダライムガラス等から形成することができる。
前面板10には、複数の表示電極11(透明電極11a,バス電極11b)、誘電体層12、保護層13等が設けられている。
背面板20には、複数のアドレス電極21、誘電体層22、隔壁30等が設けられている。
【0029】
前面板10に設けられた表示電極11は帯状に形成されており、前後方向に所定間隔をあけて互いに平行に配置されている。
各表示電極11は、図2に示すように、前面板10の左端10aから右端10bまで連続して設けられている。また、各表示電極11はパネル駆動回路15に接続されており、任意の表示電極11に対して電圧を印加できるようになっている。
【0030】
背面板20に設けられたアドレス電極21も帯状に形成されており、左右方向に所定間隔をあけて互いに平行に配置されている。
図2に示すようにアドレス電極21は背面板20の中央部24で前後に分割されており、後方のアドレス電極がパネル駆動回路25aに接続され、前方のアドレス電極がパネル駆動回路25bに接続されている。そして、これらパネル駆動回路25a、25bにより、任意のアドレス電極21に対して電圧を印加できるようになっている。
【0031】
以上のように、表示電極11とアドレス電極21は、平面視において互いに直交する、いわゆるマトリックス状になっている。そして、表示電極11とアドレス電極21とが交差する点で選択的に放電を行わせることにより、所望の情報を表示できるようになっている。
【0032】
アドレス電極21は銀、アルミ等の金属から形成できる。
尚、表示電極11は前面板10に設けられ、蛍光体からの発光を透過する必要があることから、ITO、SnO2等の導電性金属酸化物からなる幅広の透明電極11aの下面に幅細のCr−Cu−Cr電極(バス電極11b)を積層させた組み合わせ電極を用いることが好ましい。また、表示電極11をこのような構成とすることは、放電セル31内の放電面積を広く確保する上でも好ましい。
【0033】
図1に示すように、前面板10に設けた誘電体層12は表示電極11の表面全体を覆っている。この誘電体層12は誘電物質からなり、一般に、鉛系低融点ガラスから形成されることが多い。この他に、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等で誘電体層12を形成しても良い。
【0034】
また、誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13は酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層が好ましい。
背面板20に設けた誘電体層22はアドレス電極21の表面全体を覆っている。誘電体層22も、上記と同様に鉛系低融点ガラスや、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等から構成することができる。さらに、これらの誘電物質にTiO2粒子を混合し、可視光反射層としての働きも兼ねるようにすると好ましい。可視光反射層としても機能させると、蛍光体層35からの背面板20側に発光しても、これを前面板10側に反射して、前面板10を透過する光を増やし、輝度を向上させることができる。
【0035】
誘電体層22の上面であって、各アドレス電極21の左右両側には隔壁30が設けられている。
隔壁30は基板10、20間の空間を所定の形状に区画することで前述した放電セル31を形成している。隔壁30は、ガラス材料等の誘電物質から形成される。
【0036】
放電セル31は、隔壁30と基板10、20とによって囲まれた放電空間であり、放電セル31の内面を構成する隔壁30の側面30aと放電セルの底面31aを構成する基板20の表面(誘電体層22の表面)には、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体層35がR、G、Bの順に規則正しく形成される。なお、蛍光体層の形成方法については後述する。
放電セル31内部には、希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、特にNeを主放電ガスとし、これに放電により紫外線を発生するXeを混合した混合ガスを用いると好ましい。
【0037】
図1に示した放電セル31は、アドレス電極21の左右に設けられた隔壁30により前後方向に平行な溝を備えたいわゆるストライプ型の放電セルである。
左右方向に延びる表示電極11は放電セルを横切るように配設されており、平面視した場合にアドレス電極21と表示電極11の交点が一つのセル内に多数存在することになる。そして、これら一つ一つの交点を最小の発光単位として、左右方向に連続するR、G、Bの3つの発光単位により1画素を構成している。
【0038】
なお、本発明に係るPDPのセル構造はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すように前後方向に延びる隔壁40と左右方向に延びる隔壁40とに囲まれた平面視略矩形状の放電セル41、いわゆる格子型の放電セルを用いてもよい。この場合、一つの放電セル41の内部に表示電極11とアドレス電極21との交点が少なくとも一つ配置されるようになっている。
【0039】
また、図4に示すように隔壁50をハニカム状に設けたハニカム型のセル構造であってもよい。この場合には、隔壁50により平面視略6角形状に区切られた繰り返し構造を一つの放電セル51とし、格子型と同様に一つの放電セル51の内部に表示電極11とアドレス電極21との交点を少なくとも一つ配置する。
【0040】
なお、放電セルの静電容量は、0.5〜30μF/m2であり、好ましくは、0.5〜10μF/m2であり、更に好ましくは1〜7μF/m2である。
静電容量が0.5μF/m2未満又は30μF/m2より大きくなると、良好な発光が得られず、好ましくない。
放電セルの静電容量はキャパシタメータ等により測定することができる。
【0041】
次に、蛍光体層35について説明する。
蛍光体層の厚さは、上記した通り、5〜20μmであるが、より好ましくは、5〜15μmであり、更に好ましくは5〜10μmである。
ここでいう層の厚さとは、任意の6点の平均値を指し、例えば、電子顕微鏡(日立製作所(株)製S−900)を用いて、放電セルの底面又は側面から蛍光体層の上面までの距離を測定した値により求めることができる。
【0042】
蛍光体層を構成する蛍光体の平均粒径は、上述したように、0.01μm〜1μmであるが、より好ましくは0.01μm〜0.8μmであり、更に好ましくは0.01μm〜0.4μmである。
ここで、蛍光体の平均粒径は、電子顕微鏡(例えば、日立製作所(株)製、S−900等)を用いて、蛍光体層中の蛍光体粒子300個の平均粒径を測定した平均値をいう。また、ここでいう粒径とは、蛍光体粒子が立方体あるいは八面体の所謂正常晶の場合には、蛍光体粒子の稜の長さを言う。正常晶でない場合、例えば蛍光体粒子が球状、棒状あるいは平板状粒子の場合には、蛍光体粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を言う。
【0043】
本発明では、平均粒径が0.01〜1μmの極めて微粒子の蛍光体から蛍光体層を構成しているので、従来の平均粒径が1.3μm〜7μmの蛍光体から蛍光体層を構成する場合と比較すると、同じ厚さの蛍光体層であっても層内に蛍光体を効率よく充填できる。したがって、発光に関与する蛍光体の量が増加し、PDPの輝度を確実に向上することができる。
また、従来の蛍光体層は、放電空間を確保した上で一定の輝度を達成するためには、20〜30μmの厚さにしなければならなかった。しかし、本発明では、上記微粒子の蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、5〜20μmの範囲で薄膜化が可能である。その結果、放電空間を拡大し、蛍光体を発光させる紫外線の発生量を増加することができる。また、上記のように従来と同じ厚さであっても蛍光体層に含まれる蛍光体の量が増加する。このため、蛍光体層を薄膜化しても、製造したPDPを高輝度にすることができる。
【0044】
さらに、本発明の蛍光体は平均粒径が0.01〜1μmであるので、従来より用いられている平均粒径が1.3〜7μmの蛍光体と比較して、蛍光体インキと放電セル内面との接触面に生じる空隙を小さくすることができ、蛍光体インキの放電セル内面への付着力の低下を防止することができる。従って、放電セルの側面に付着した蛍光体は自重により放電セルの底面側に移動し、放電セルの底面の蛍光体層の膜厚に対して側面の蛍光体層の膜厚が薄くなるという従来の問題点を解消でき、放電セルの輝度及び視野角を向上できる。
また、蛍光体層を緻密で均一な構成にすることができ、放電セル毎の蛍光体品質のバラツキを防ぐことができる。従って、放電セル毎の発光量が等しくなり、プラズマディスプレイパネル全面で発光量を均一にできる。
【0045】
また、蛍光体層の表面の凹凸が小さく、表面の平滑性が高くなるので、従来のように蛍光体層からの発光を表面の凹凸により乱反射させて光を損失させない。したがって、輝度の低下や発光ムラを防ぎ、発光を効率的に表示に用いることができる。
また、例えば、従来より用いられている平均粒径が1.3μm〜7μmの蛍光体から蛍光体層を構成する場合と比較すると、同じ厚さの蛍光体層であっても層内に蛍光体を効率よく充填できる。したがって、発光に関与する蛍光体の量が増加し、PDPの輝度を確実に向上することができる。
また、従来の蛍光体層は、放電空間を確保した上で一定の輝度を達成するためには、20〜30μmの厚さにしなければならなかった。しかし、本発明では、上記微粒子の蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、5〜20μmの範囲で薄膜化が可能である。その結果、放電空間を拡大し、蛍光体を発光させる紫外線の発生量を増加することができる。また、上記のように従来と同じ厚さであっても蛍光体層に含まれる蛍光体の量が増加する。このため、蛍光体層を薄膜化しても、製造したPDPを高輝度にすることができる。
【0046】
本発明に係る蛍光体はその組成に特に制限は無く、例えば特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されている公知の種々の組成を適用することが可能である。具体的には、Y2O3、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Ca5(PO4)3Cl等に代表されるリン酸塩、ZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、Si、SiO2等を含むケイ素化合物等を蛍光体結晶母体とし、これら母体にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属イオンやAg、Al、Mn、Sb、Zn等の金属イオン又は金属元素を賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0047】
結晶母体の好ましい例を以下に列挙する。
ZnS、SrS、GaS、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、YO3、Y2O2S、Y2O3、Y2SiO3、SnO2、Y3Al5O12、Zn2SiO4、Sr4Al14O25、CeMgAl10O19、BaAl12O19、BaMgAl10O17、BaMgAl14O23、Ba2Mg2Al12O22、Ba2Mg4Al8O18、Ba3Mg5Al18O35、(Ba,Sr,Mg)O・aAl2O3、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、Sr2P2O7、(La,Ce)PO4、Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2、GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等が挙げられる。
【0048】
結晶母体元素及び賦活剤または共賦活剤元素を含む化合物は、特に元素の組成に制限はなく、同族の元素と一部置き換えたものでもよく、紫外領域の励起光を吸収して可視光を発するものであればどのような組み合わせでもよい。特に、無機酸化物蛍光体、または無機ハロゲン化物蛍光体を使用することが好ましい。
以下に本発明に使用される蛍光体の具体的な化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0049】
[青色発光蛍光体化合物]
BL1 :Sr2P2O7:Sn4+
BL2 :Sr4Al14O25:Eu2+
BL3 :BaMgAl10O17:Eu2+
BL4 :SrGa2S4:Ce3+
BL5 :CaGa2S4:Ce3+
BL6 :(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17:Eu2+
BL7 :(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+
BL8 :ZnS:Ag
BL9 :CaWO4
BL10:Y2SiO5:Ce
BL11:ZnS:Ag,Ga,Cl
BL12:Ca2B5O9Cl:Eu2+
BL13:BaMgAl14O23:Eu2+
BL14:BaMgAl10O17:Eu2+,Tb3+,Sm2+
BL15:BaMgAl14O23:Sm2+
BL16:Ba2Mg2Al12O22:Eu2+
BL17:Ba2Mg4Al8O18:Eu2+
BL18:Ba3Mg5Al18O35:Eu2+
BL19:(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17:Eu2+
【0050】
[緑色発光蛍光体化合物]
GL1 :(Ba,Mg)Al16O27:Eu2+,Mn2+
GL2 :Sr4Al14O25:Eu2+
GL3 :(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu2+
GL4 :(Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
GL5 :Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
GL6 :Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu2+
GL7 :(Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu2+
GL8 :Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu2+
GL9 :Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce3+,Tb3+
GL10:Ba2SiO4:Eu2+
GL11:ZnS:Cu,Al
GL12:(Zn,Cd)S:Cu,Al
GL13:ZnS:Cu,Au,Al
GL14:Zn2SiO4:Mn
GL15:ZnS:Ag,Cu
GL16:(Zn,Cd)S:Cu
GL17:ZnS:Cu
GL18:Gd2O2S:Tb
GL19:La2O2S:Tb
GL20:Y2SiO5:Ce,Tb
GL21:Zn2GeO4:Mn
GL22:CeMgAl11O19:Tb
GL23:SrGa2S4:Eu2+
GL24:ZnS:Cu,Co
GL25:MgO・nB2O3:Ce,Tb
GL26:LaOBr:Tb,Tm
GL27:La2O2S:Tb
GL28:SrGa2S4:Eu2+,Tb3+,Sm2+
【0051】
[赤色発光蛍光体化合物]
RL1 :Y2O2S:Eu3+
RL2 :(Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
RL3 :Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu3+
RL4 :LiY9(SiO4)6O2:Eu3+
RL5 :(Ba,Mg)Al16O27:Eu3+
RL6 :(Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu3+
RL7 :YVO4:Eu3+
RL8 :YVO4:Eu3+,Bi3+
RL9 :CaS:Eu3+
RL10:Y2O3:Eu3+
RL11:3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn
RL12:YAlO3:Eu3+
RL13:YBO3:Eu3+
RL14:(Y,Gd)BO3:Eu3+
【0052】
本発明における液相合成法とは、蛍光体の原料となる元素を含む化合物を液相中で反応させる方法で、具体的には上記の蛍光体母体を構成する元素を含む溶液と賦活剤元素を含む溶液を共に混合して蛍光体前駆体を合成する方法であり、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法など液相中での反応方法を称して表している。本発明ではこれらの方法を適宜選択して蛍光体を製造することが可能である。
【0053】
液相合成法では、蛍光体原料を液相中で反応させるので、反応は蛍光体を構成する元素イオン間で行われ、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。一方、従来の固相合成法では、固相間反応であるために、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留することが往々にして起こり、化学量論的に高純度な蛍光体を得にくい。したがって、液相合成法により化学量論的に高純度な蛍光体を得ることで、発光効率と収率を高めることができる。
【0054】
また、固相合成法では、反応時に固体同士を粉砕しながら機械的に攪拌するため、得られた蛍光体は多面体となる場合が多く、粒径分布も広くなりやすい。一方、液相合成法では、元素イオンを液体中で反応させるので、蛍光体の平均粒径や粒子形状、粒径分布、発光特性等をより精密に制御することができ、本発明の粒径0.01〜1μmの粒子を狭い粒径分布で得ることができる。
【0055】
液相合成法を利用して蛍光体を製造する工程は、蛍光体原料を混合して蛍光体前駆体を形成する蛍光体前駆体形成工程と、蛍光体前駆体を乾燥する乾燥工程とを有している。乾燥工程後、必要に応じて焼成工程を行う。本発明に係る蛍光体を製造する際には、基本的には乾燥した蛍光体前駆体を焼成することにより、蛍光体粒子を得ている。しかし、蛍光体の組成や反応条件等によっては焼成を行わなくとも、乾燥工程において蛍光体前駆体から蛍光体が得られる場合がある。その場合には焼成工程を省いてもよい。焼成工程後、得られた焼成物を冷却する冷却工程や、蛍光体の表面処理を行う工程等を行ってもよい。
なお、蛍光体前駆体とは製造される蛍光体の中間体化合物であり、上記したように乾燥、焼成等の処理により蛍光体となる化合物である。
【0056】
まず、前駆体形成工程について説明する。前駆体形成工程では、上述したように、反応晶析法、共沈法、ゾルゲル法等どのような液相合成法を適用してもよい。
例えば、PDPで一般的に使用されている赤色発光蛍光体((Y,Gd)BO3:Eu3+)、青色発光蛍光体(BaMgAl10O17:Eu2+)については、後述する保護コロイドの存在下で反応晶析法により蛍光体前駆体を形成すると特に好ましい。このように製造することにより、微粒子でより粒径分布が狭く、発光強度のより高い蛍光体を得ることができる。
また、緑色発光蛍光体(Zn2SiO4:Mn2+)については、シリカを蛍光体母体とし、共沈法により形成すると好ましい。このように製造することにより、微粒子でかつ発光強度に優れ、残光時間の短いものを得ることができる。以下、反応晶析法及び共沈法について説明する。
【0057】
反応晶析法とは、晶析現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合することによって蛍光体前駆体を合成する方法をいう。晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的又は化学的な環境の変化、或は化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等に液相中から固相が析出してくる現象を指す。
本発明における反応晶析法による蛍光体前駆体の製造方法は、上記の様な晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
【0058】
反応晶析法を適用する際の溶媒は反応原料が溶解すれば何を用いてもよいが、過飽和度制御のしやすさの観点から水が好ましい。複数の反応原料を用いる場合は、原料の添加順序は同時でも異なってもよく、活性によって適切な順序を適宜組み立てることができる。
【0059】
共沈法とは、共沈現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合し、さらに沈殿剤を添加することによって、蛍光体前駆体の母核の周囲に賦活剤となる金属元素等が析出させた状態で、蛍光体前駆体を合成する方法を言う。共沈現象とは、溶液から沈殿を生じさせたとき、その状況では十分な溶解度があり、沈殿しないはずのイオンが沈殿に伴われる現象をいう。蛍光体の製造においては、蛍光体前駆体の母核の周囲に、賦活剤を構成する金属元素などが析出する現象を指す。
上記したように、ケイ酸塩蛍光体からなる緑色蛍光体を得る際には、この共沈法を利用すると好ましい。その場合には、蛍光体前駆体の母核としてシリカ等のケイ素化合物を用い、これに、Zn、Mn等の緑色蛍光体を構成し得る金属元素を含む溶液とを混合し、さらに沈殿剤を含む溶液を加えることにより、ケイ素化合物表面に金属、含む溶液を反応させると好ましい。
シリカとしては、気相法シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等を好ましく使用することができ、下記溶媒に実質的に不溶であることが好ましい。
【0060】
共沈法の際に適用する溶媒としては、水またはアルコール類またはそれらの混合物を用いることができる。シリカ等のケイ素化合物を用いる場合には、ケイ素化合物が分散可能な、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素化合物が分散しやすいエタノールが好ましい。
【0061】
沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリが好ましい。
有機酸としては、−COOH基を有する有機酸が好ましく、例えば、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。特に、シュウ酸を用いた場合、Zn、Mn等の陽イオンと反応しやすく、Zn、Mn等の陽イオンがシュウ酸塩として析出しやすいため、より好ましい。また、沈殿剤として、加水分解等によりシュウ酸を生ずるもの、例えばシュウ酸ジメチル等を使用してもよい。
水酸化アルカリとしては、−OH基を有するもの、あるいは水と反応して−OH基を生じたり、加水分解により−OH基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアがよい。
【0062】
上記の反応晶析法及び共沈法を含めて、液相合成法で前駆体を合成する場合には、蛍光体の種類により、反応温度、添加速度や添加位置、攪拌条件、pH等、諸物性値を調整すると好ましい。また、蛍光体前駆体の母核を溶液中に分散させるときや反応中に超音波を照射してもよい。平均粒径制御のために保護コロイドや界面活性剤などを添加することも好ましい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮、及び/または熟成することも好ましい態様の1つである。
添加する保護コロイドの量や超音波照射時間、攪拌条件等を制御し、溶液中の蛍光体前駆体の母核の分散状態を好ましい状態とすることにより、蛍光体前駆体粒子の粒径や凝集状態を制御し、焼成後の蛍光体粒子の平均粒径を所望の大きさにすることができる。
【0063】
粒径制御に用いる保護コロイドとしては、天然、人工を問わず各種高分子化合物を使用することができるが、特にタンパク質が好ましい。その際、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。
【0064】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が上げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等がある。中でも、ゼラチンを特に好ましく使用できる。
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。更に、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0065】
また、前記保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができる。原料溶液の全てに添加してもよい。保護コロイドの存在下で、蛍光体前駆体を形成することにより、蛍光体前駆体同士が凝集するのを防ぎ、蛍光体前駆体を十分小さくすることができる。それにより、焼成後の蛍光体をより微粒子で、粒径分布が狭く、発光特性を良好にするなど、蛍光体の種々の特性を向上することができる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、蛍光体前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0066】
蛍光体前駆体形成工程にて蛍光体前駆体を合成した後、乾燥工程や焼成工程に先立って脱塩工程を経ることにより、蛍光体前駆体から副塩などの不純物を取り除くことが好ましい。
脱塩工程としては、各種膜分離法、凝集沈降法、電気透析法、イオン交換樹脂を用いた方法、ヌーデル水洗法などを適用することができる。
【0067】
脱塩工程を行うことにより、前駆体脱塩後の電気伝導度が0.01〜20mS/cmの範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10mS/cmであり、特に好ましくは0.01〜5mS/cmである。
0.01mS/cm未満の電気伝導度にすると生産性が低くなる。また、20mS/cmを超えると副塩や不純物が充分に除去できていない為に粒子の粗大化や粒子径分布が広くなり、発光強度が劣化する。
上記の電気伝導度の測定方法はどのような方法を用いることも可能であるが、市販の電気伝導度測定器を使用すればよい。
その後、ろ過、蒸発乾固、遠心分離等の方法で前駆体を回収する。
【0068】
本発明においては、回収された前駆体について乾燥工程を行う。蛍光体前駆体の乾燥方法は特に限定されるものではなく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等、あらゆる方法を用いることができる。
乾燥温度は限定されないが、使用した溶媒が気化する温度付近以上の温度であることが好ましく、具体的には50〜300℃の範囲であることが好ましい。乾燥温度が高い場合は乾燥と同時に焼成が施されることがあり、後述の焼成工程を行わなくとも蛍光体が得られる場合がある。
【0069】
焼成工程では、いかなる方法を用いてもよく、焼成温度や時間は適宜調整すればよい。例えば、蛍光体前駆体をアルミナボートに充填し、所定のガス雰囲気中で所定の温度で焼成することで所望の蛍光体を得ることができる。ガス雰囲気として、還元雰囲気下、酸化雰囲気下、又は硫化物存在下、不活性ガス等のどの条件下でも良く、適宜選択することができる。
好ましい焼成条件の例としては、大気中で600℃〜1800℃の間で適当な時間焼成することがある。また、800℃程度で焼成を行い有機物を酸化した後に、1100℃で90分大気中で焼成するという方法も有効である。
【0070】
焼成装置(焼成容器)は現在知られているあらゆる装置を使用することができる。例えば箱型炉、坩堝炉、円柱管型、ボート型、ロータリーキルン等が好ましく用いられる。雰囲気も前駆体組成に合わせて酸化性、還元性、不活性ガス等を用いることができる。
【0071】
また、焼成時には必要に応じて焼結防止剤を添加してもよい。焼結防止剤を添加する場合には、蛍光体前駆体形成時にスラリーとして添加することができる。粉状のものを乾燥済前駆体と混合して焼成してもよい。
焼結防止剤は特に限定されるものではなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が使用され、1000℃以下での焼成にはSiO2が、1700℃以下での焼成にはAl2O3が、それぞれ好ましく使用される。
更に、焼成後、必要に応じて還元処理又は酸化処理等を施しても良い。
【0072】
焼成工程後、冷却工程、表面処理工程、分散工程等の諸工程を施してもよく、分級してもよい。
冷却工程では、焼成工程で得られた焼成物を冷却する処理を行う。このとき、該焼成物を前記焼成装置に充填したまま冷却することができる。
冷却処理は特に限定されないが、公知の冷却方法より適宜選択することができ、例えば、放置により温度を低下させる方法でも、冷却機を用いて温度制御しながら強制的に温度低下させる等の方法の何れであってもよい。
【0073】
本発明で製造される蛍光体は、種々の目的で吸着・被覆等の表面処理を施すことができる。どの時点で表面処理を施すかはその目的によって異なり、適宜適切に選択するとその効果がより顕著になる。例えば、後述するように蛍光体ペーストを調整する際に、蛍光体の分散性を良好にするために表面処理を行うと好ましい。
【0074】
次に、上記工程により得られた蛍光体を用いた蛍光体層の形成方法について説明する。
蛍光体層の形成に当たっては、蛍光体をバインダ、溶剤、分散剤などの混合物に分散し、適度な粘度に調整された蛍光体ペーストをインクジェット法によりインクジェットノズルから放電セルの内面(放電セルの側面及び底面)に向けて断続的に複数回吐出する。そして、後の工程において放電セル内の蛍光体ペーストを焼成することにより隔壁側面及び底面に蛍光体層を形成する。蛍光体ペースト中の蛍光体の含有量としては30質量%〜60質量%の範囲にするのが好ましい。
【0075】
蛍光体ペースト中の蛍光体粒子の分散性を向上させるために、蛍光体粒子の表面に酸化物やフッ化物等を付着あるいはコーティングする等の表面処理を施すと好ましい。このような酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、アルミニウム酸化物(Al2O3)、酸化珪素(SiO2)、酸化インジウム(InO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)が挙げられる。この中で、SiO2は負に帯電する酸化物として知られ、一方、ZnO、Al2O3、Y2O3は正に帯電する酸化物として知られており、特にこれらの酸化物を付着あるいはコーティングさせることは有効である。
【0076】
以下、蛍光体と混合するバインダ、溶剤、分散剤等について説明する。
蛍光体粒子を良好に分散させるのに適したバインダとしては、エチルセルロースあるいはポリエチレンオキサイド(エチレンオキサイドのポリマ)が挙げら、特に、エトキシ基(−OC2H5)の含有率が49〜54%のエチルセルロースを用いるのが好ましい。また、バインダとして感光性樹脂を用いることも可能である。バインダの含有量としては0.15質量%〜10質量%の範囲内が好ましい。なお、隔壁間に塗布される蛍光体ペーストの形状を整えるため、バインダの含有量は、ペースト粘度が高くなり過ぎない範囲内で多めに設定するのが好ましい。
【0077】
溶剤としては、水酸基(OH基)を有する有機溶剤を混合したものを用いるのが好ましく、その有機溶剤の具体例としては、ターピネオール(C10H18O)、ブチルカルビトールアセテート、ペンタンジオール(2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート)、ジペンテン(Dipentene、別名Limonen)、ブチルカルビトール等が挙げられる。これらの有機溶剤を混合した混合溶剤は、上記のバインダを溶解させる溶解性に優れており、蛍光体ペーストの分散性が良好になり好ましい。
【0078】
蛍光体ペースト中の蛍光体粒子の分散安定性を向上させるために、分散剤として、界面活性剤を添加すると好ましい。蛍光体ペースト中の界面活性剤の含有量としては、分散安定性の向上効果あるいは後述する除電効果等を効果的に得る観点から、0.05質量%〜0.3質量%が好ましい。
【0079】
界面活性剤の具体例としては、(a)アニオン性界面活性剤、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ノニオン性界面活性剤を用いることができ、それぞれ具体的には下記のようなものがある。
(a)アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸、エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸ポリカルボン酸高分子等が挙げられる。
(b)カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられる。
(c)ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0080】
更に、蛍光体ペーストに除電物質を添加すると好ましい。上記挙げた界面活性剤は、一般的に蛍光体ペーストの帯電を防止する除電作用も有しており、除電物質に該当するものが多い。但し、蛍光体、バインダ、溶剤の種類によって除電作用も異なるので、色々な種類の界面活性剤について試験を行って、結果の良好なものを選択するのが好ましい。
【0081】
除電物質としては、界面活性剤の他に、導電性の材料からなる微粒子も挙げることができる。導電性微粒子としては、カーボンブラックをはじめとするカーボン微粉末、グラファイトの微粉末、Al、Fe、Mg、Si、Cu、Sn、Agといった金属の微粉末、並びにこれらの金属酸化物からなる微粉末が挙げられる。このような導電性微粒子の添加量は、蛍光体ペーストに対して0.05〜1.0質量%の範囲とするのが好ましい。
【0082】
蛍光体ペーストに除電物質を添加することによって蛍光体ペーストの帯電により、例えば、パネル中央部のアドレス電極の切れ目における蛍光体層の盛り上がりや、セル内に塗布される蛍光体ペーストの量や溝への付着状態に若干のばらつきが生じる等の蛍光体層の形成不良を防ぎ、セル毎に均質な蛍光体層を形成することができる。
【0083】
なお、上記のように除電物質として界面活性剤やカーボン微粉末を用いた場合には、蛍光体ペーストに含まれている溶剤やバインダを除去する蛍光体焼成工程において除電物質も蒸発あるいは焼失されるので、焼成後の蛍光体層中には除電物質が残存しない。従って、蛍光体層中に除電物質が残存することによってPDPの駆動(発光動作)に支障が生じる可能性も無い。
【0084】
また、詳しい説明は後述するが、本発明においては、放電セルの側面に吐出された蛍光体ペーストが自重により下方に移動することなく、蛍光体ペーストの自重及び表面張力により均一化して、速やかに固着することが重要となる。
そこで、本発明においては、蛍光体ペーストの自重の観点から、ノズルから一度に吐出されるインクの吐出量、即ち1滴のインクの吐出量を10pl(ピコリットル)〜1000plとすることが好ましい。この吐出量はセル体積の1/10000〜1/5に相当する。なお、1滴のインクの吐出量をセル体積の1/1000〜1/100とすることがより好ましい。
【0085】
蛍光体を上記各種混合物に分散する際には、例えば高速攪拌型のインペラー型の分散機、コロイドミル、ローラーミル、又ボールミル、振動ボールミル、アトライタミル、遊星ボールミル、サンドミルなど媒体メディアを装置内で運動させてその衝突(crush)及び剪断力の両方により微粒化するもの、又はカッターミル、ハンマーミル、ジェットミル等の乾式型分散機、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0086】
これらの中でも、本発明では特に分散媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を使用することが好ましく、連続的に分散処理が可能な連続式湿式メディア型分散機を使用することが更に好ましい。複数の連続式湿式メディア型分散機を直列に接続する態様等も適用できる。
ここで言うメディアとは、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズ等の固体粒子の分散媒体を指す。また、「連続的に分散処理が可能」とは、少なくとも蛍光体及び分散媒体を、時間当たり一定の量比で途切れることなく分散機に供給しながら分散処理すると同時に、前記分散機内で製造された分散物を供給に押し出される形で途切れることなく分散機より吐出する形態を指す。蛍光体の製造方法で分散処理工程として媒体(メディア)を使用する湿式メディア型分散機を用いる場合、その分散室容器(ベッセル)は縦型でも横型でも適宜選択することが可能である。
【0087】
湿式メディア分散機のベッセル中のメディアの充填量としては、50容積%〜90容積%の範囲とするのが好ましく、60容積%〜80容積%の範囲とするのが更に好ましい。メディアの充填量が50容積%を下回ると蛍光体の分散が不十分となり、また、90容積%を上回るとベッセル内でのメディアの分布が不均一になって局部的に分散が進行するため好ましくない。湿式メディア分散機を用いる際の周速は特に制限は無いが、3m/s〜20m/sであることが、実用上好ましい。
【0088】
メディア分散機を用いて分散する場合、蛍光体の分散が非常に良好になり、平均粒径分布の再現性に優れたものを得る観点から、該メディア分散機に印加する単位質量当たりの積算動力を0.1kWh/kg〜10kWh/kgの範囲で適宜調整することが好ましい。
【0089】
また、蛍光体ペースト調整時には、蛍光体の輝度等の諸特性の劣化を防止する観点から、分散開始から終了までの該分散物温度が70℃を超えないように制御しながら分散処理を施すことが好ましく、50℃を超えないように制御しながら分散処理を施すことが更に好ましい。
【0090】
また、分散を良好に行うために、分散力の弱い(エネルギー付与の小さい)分散機を用いて粗分散を行う第1の分散工程と、分散力の強い(エネルギー付与が大きい)分散機を用いて固体微粒子分散物を作製する第2の分散工程等、分散時に分散質に付与されるエネルギーが異なる分散工程を少なくとも2回行うとよい。
【0091】
上記のように適度な粘度に調整した蛍光体ペーストを放電セル内に吐出する際には、インクジェット装置を用いたインクジェット法により行なう。
【0092】
インクジェット法は、隔壁のピッチが狭く、放電セルが微細に形成されている場合であっても、隔壁間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光体ペーストを塗布又は充填できる点で優れている。
また、本発明においては、用いられる蛍光体粒子の平均粒径は、0.01〜1μmであるので、インクジェット法を適用してもノズルの目づまりや吐出不良、蛍光体粒子の沈殿が抑制され、精度良く均一に薄い蛍光体層を形成することができる。
【0093】
図5はインクジェットインクジェット装置60の断面図である。
インクジェット装置60は蛍光体ペーストを吐出する装置であり、本実施の形態においては圧電体、即ちピエゾ素子を用いるピエゾ型を説明する。
なお、ピエゾ型以外にも、気泡によりインクを押出すバブルジェット(登録商標)方式やビームジェット方式などの装置を用いることも可能である。
インクジェット装置60は、内部にインクを収容するヘッド61、ヘッドの下端に設けられ滴状の蛍光体ペーストPを吐出するインクジェットノズル62、図示しないインクタンクからヘッド61に蛍光体ペーストPを供給する接続パイプ64、ヘッド61の側面に取付けられるピエゾ素子65、インクジェットノズル62を前後左右方向に移動させると共に、インクジェットノズル62を前後方向に延びる軸の軸回りに所定角度内で回転させるノズル駆動手段70(図6を参照)等から概略構成される。
【0094】
図6に示すように、ノズル駆動手段70は前後方向に設けられる二本の支持梁71、左右方向へ移動自在となるように二本の支持梁間に架け渡されるビーム72、ビームの長手方向に移動自在に取り付けられ、ヘッドを所定角度内で回転自在に支持する移動体73、ビーム及び移動体の移動やヘッド(ノズル)を回転させるための各種アクチュエータ(図示せず)等を備え、これらアクチュエータの制御を制御手段(図示せず)が行なう。なお、図6はノズル駆動手段70を模式的に示すものにすぎず、その寸法や形状について特に限定するものではない。
図5に示すように、ヘッド61はその上部61aにおいて、移動体73の下面に軸支されている。そして、図示しないアクチュエータを駆動させることにより基板と平行に前後方向に延びる軸Nの回りを中心として、左右方向に所定角度内で回転可能となっている。従って、ヘッド61を回転させることで、インクジェットノズル62による蛍光体ペーストPの吐出方向を調節することができる。
【0095】
なお、アクチュエータとしては、DCモータ、ACモータ、ステッピングモータ、リニアモータ、ソレノイド等が用いられる。また、ヘッド61の前後左右方向の位置及び回転角度等は図示しないエンコーダ等の位置検出装置により検出され、制御手段に出力されるようになっている。
そして、インクジェットノズル62からの蛍光体ペーストPの吐出方向が、放電セル31の側面上あるいは底面上の任意の位置になるようにヘッド61を回転/移動させつつ、ピエゾ素子65に接続したパターン信号源66に対して制御手段がパターン信号を出力することにより、ヘッド61内の蛍光体ペーストPが放電セル31内の所望の位置に吐出される。
【0096】
図7は、基板20に対して垂直な方向(上下方向)から左に角度Dだけ傾斜した状態のノズルから放電セル31の左側の隔壁30に対してインクを吐出している状態を示すものである。
上述のように、粘度を調節した蛍光体ペーストP1は隔壁30に着弾した後、自重により隔壁30側面をほとんど降下することなく、自重及び表面張力により均一化して隔壁30側面に固着した状態となる。
そして、このように蛍光体ペーストPを断続的に複数回吐出することにより、放電セル31の側面(隔壁30の側面)及び底面(基板20の表面)の全域に所望の厚さで蛍光体層を形成することができる。
【0097】
なお、蛍光体層の形成順序については任意に変更可能であり、例えば、まず放電セルの底面に蛍光体層を形成した後、放電セルの側面に蛍光体層を形成する場合には、インクジェットノズルを放電セルの底面側に向け、インクジェットノズルから吐出される蛍光体ペーストが放電セルの底面以外に付着しないようにヘッドの回転角度及び前後方向への移動量を調節しながら、放電セルの底面全域に蛍光体層を形成する。そして、放電セル底面への蛍光体層の形成が終了した後、インクジェットノズルを放電セルの側面のうちいずれかひとつの側面に向け、インクジェットノズルから吐出される蛍光体ペーストが放電セルの他の側面及び底面に付着しないようにヘッドの回転角度及び前後方向への移動量を調節しながらこの側面に蛍光体層を形成する。そして、他の側面に対しても同様の作業を行うことにより放電セル内に蛍光体層を形成することができる。
【0098】
また、例えば、放電セルの底面に蛍光体ペーストを一回あるいは複数回吐出する工程と、放電セルの側面に蛍光体ペーストを一回あるいは複数回吐出する工程とを組み合わせることにより、放電セルの底面と側面の蛍光体層をほぼ同時に形成するものとしてもよい。
なお、複数のヘッドを放電セルのピッチ(左右方向の配置間隔)に対応するように移動体に取付け、複数のインクジェットノズルから蛍光体ペーストを同時に噴射する構成としてもよい。この場合、蛍光体層の形成作業の作業性を向上できる。
【0099】
以上のように、本発明においては、ヘッドを基板に対して相対的に移動させ、放電セル内の所定の位置に対してインクを断続的に複数回吐出する、いわゆるオンデマンド型の吐出方法を採用するが、従来より、他の吐出方法としていわゆる連続型の吐出方法が知られている。
連続型はヘッドを基板に対して相対的に移動させつつ、放電セル内に蛍光体ペーストを連続的に吐出することで、蛍光体ペーストを放電セルの底面から徐々に充填していくものである。
連続型の吐出方法は直線状の隔壁から構成されるストライプ型の放電セルに対しては作業時間の短縮などの点から有効である。
しかし、ヘッドの進行方向(前後方向)に直交する方向に隔壁が存在する格子型の放電セルや、左右に入り組んだ複雑な隔壁構造となるハニカム型の放電セルの場合、インクジェットノズルが隔壁の上方を通過する際にも蛍光体ペーストが連続して吐出されるおそれがあり、隔壁の上部に蛍光体ペーストが付着するという不具合が生じるおそれがある。
【0100】
一方、本発明で用いるオンデマンド型の吐出方式は、蛍光体ペーストを所定のタイミングで断続的に吐出することから、ストライプ型の放電セルのみならず、格子型及びハニカム型の放電セルに対しても所定の部位に正確に蛍光体ペーストを吐出することができ、隔壁の上部に蛍光体ペーストが付着する不具合を未然に防止できる。
また、蛍光体層の厚みを自在に調節できるので、蛍光体層が必要以上の厚みを有することがなくなり、蛍光体ペーストの無駄を最小限度に抑えてコスト削減に寄与できる。
さらに、インクジェット方式ではインクジェットノズルと基板及び隔壁とを数mmから数十mmの距離で離すので、ミリメートル単位の反りやうねりが生ずる比較的大面積のカラーPDPの基板に対しても容易に蛍光体層を形成できる。
【0101】
また、一般的にインクジェット装置をプラズマディスプレイパネルの蛍光体層を形成する装置として用いる場合には、使用されるインクジェットノズルの径は20μm〜100μm程度であり、汎用性の観点から、本発明においてもインクジェットノズルの径は50μm〜100μm程度とするのが好ましい。
そして、この程度の径を有するインクジェットノズルからインクを吐出するには、ノズルの目詰まりを防止する観点から、蛍光体の平均粒径は2μmより小さいことが条件となる。
ところが、従来より一般的に用いられている固相合成法により蛍光体を製造した場合には、その粒径は1.3〜7μm程度であるためノズルに目詰まりが生じる可能性が高くなってしまう。
しかし、本実施の形態において説明した蛍光体の製造方法によれば、蛍光体の平均粒径は0.01μm〜1μmの範囲内となるので、一般的に用いられているインクジェットノズルを本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法に適用した場合でも、ノズルの目詰まりを防止することが可能となる。
【0102】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例では、平均粒径が0.15μmと1.3μmの蛍光体をRGBの各色毎に製造し、得られた蛍光体をペースト状に調整した。そして、このペーストをインクジェット法により断続的に放電セル内に吐出し、放電セルの底面及び側面に層厚10μmの蛍光体層を形成した。そして、この蛍光体層を用いてPDPを製造し、各種評価を行なった。
【0103】
1.赤色発光蛍光体〔(Y,Gd)BO3:Eu3+〕の製造
(1)赤色発光蛍光体A(平均粒径0.15μm)の製造
保護コロイドの存在下で反応晶析法により赤色発光蛍光体前駆体を形成した。まず、水1000mlにゼラチン(平均分子量約1万5千)をその濃度が10重量%となるように溶解しA液とした。
また、水500mlに硝酸イットリウムのイオン濃度が0.4659mol/L、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/L、ユーロピウムのイオン濃度が0.0388mol/Lとなるように、硝酸イットリウム6水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユーロピウム6水和物を溶解しB液とした。
さらに、水50mlにホウ素のイオン濃度0.7763mol/Lとなるようにホウ酸を溶解しC液とした。
【0104】
次に、反応容器にA液を入れ温度を60℃に保ち、攪拌翼を用いて攪拌を行った。その状態で同じく60℃に保ったB液、C液をA液の入った反応容器下部ノズルより60ml/minの速度で等速添加を行った。添加後10分間熟成を行い、赤色発光前駆体を得た。その後赤色発光前駆体を濾過、乾燥(105℃、16時間)し、乾燥赤色発光蛍光体前駆体を得た。
さらに乾燥赤色発光蛍光体前駆体2を1,200℃酸化条件下で2時間焼成して、平均粒径0.15μmの赤色発光蛍光体Aを得た。
【0105】
(2)赤色発光蛍光体B(平均粒径1.3μm)の製造
A液を純水1000mlとしたことを除いては、上記の1(1)と同様に製造し、平均粒径1.3μmの赤色発光蛍光体を得た。
【0106】
2.青色発光蛍光体(BaMgAl10O17:Eu2+)の製造〕
(1)青色発光蛍光体C(平均粒径0.15μm)の製造
上記の1(1)と同様に、水1000mlにゼラチン(平均分子量約1万5千)をその濃度が10重量%となるように溶解しA液とした。
水500mlにバリウムのイオン濃度が0.090mol/L、マグネシウムのイオン濃度が0.100mol/L、ユウロピウムのイオン濃度が0.010mol/Lとなるように塩化バリウム2水和物、塩化マグネシウム6水和物、塩化ユーロピウムを溶解しB液とした。
水500mlにアルミニウムのイオン濃度が1.000mol/L、となるように塩化アルミニウム6水和物、塩化ユーロピウム6水和物を溶解しC液とした。
上記の様に調整したA液、B液、C液を上記の1(1)で示した方法と同様に反応晶析法により青色発光蛍光体前駆体を形成し、1600℃2hr還元雰囲気下で焼成を行い、平均粒径0.15μmの青色発光蛍光体Cを得た。
【0107】
(2)青色発光蛍光体D(平均粒径2.1μm)の製造
高純度のBaCO3(17.76g)、EuO3(1.76g)、MgO(4.03g)、Al2O3(50.98g)の各粉末原料をエタノールを混合溶媒としてめのう乳鉢中で湿式混合した。この混合物を1600℃で2hr還元雰囲気下で焼成を行ない平均粒径2.1μmの青色蛍光体Dを得た。
【0108】
3.緑色発光蛍光体(Zn2SiO4:Mn2+)の製造〕
(1)緑色発光蛍光体E(平均粒径0.15μm)の製造
シリカ等のケイ素化合物を蛍光体前駆体の母核とし、共沈法により形成することが好ましい。
まず、二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製AEROSIL200、BET比表面積200m2/g)4.51gを純水297.95gに混合してA液を調整した。このとき、A液を20℃以下に保った超音波分散を15分間行った。次に、硝酸亜鉛6水和物42.39gと硝酸マンガン6水和物2.15gを純水126.84gに溶解してB液を調整した。
さらに、アンモニア水(28%)21.90gを純水125.67gに溶解してC液をそれぞれ調製した。
【0109】
次に、図8に示す反応装置100を用いて、A液を撹拌しながら、ローラーポンプ110を使ってB液とC液を10cc/minの添加速度でA液表面にダブルジェットで同時添加した。B液、C液の添加終了後、吸引濾過により固液分離を行いながら、エタノールを用いて十分に洗浄を行った。次いで、100℃、12時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体を得た。得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間焼成して、平均粒径0.15μmの緑色発光蛍光体Eを得た。
【0110】
(2)緑色発光蛍光体F(平均粒径1.8μm)の製造
高純度のZnO(146.68g)、MnCO3(11.493g)、SiO2(60g)の各粉末原料をエタノールを混合溶媒としてめのう乳鉢で湿式混合した。この混合物を窒素100%の雰囲気下1200℃で3hr焼成を行い、平均粒径1.8μmの緑色蛍光体Fを得た。
【0111】
4.蛍光体ペーストの調整
(1)赤色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼赤色発光蛍光体ペーストAの調整
上記の平均粒径0.15μmの赤色発光蛍光体Aを用いて、下記の組成で蛍光体懸濁液をそれぞれ調合して赤色発光蛍光体組成物とした。これをスターラーで撹拌した。
赤色発光蛍光体A 45重量%
ターピネオール,ペンタンジオールの1:1混合液 545.5重量%
エチルセルロース(エトキシ基の含有率50%) 0.3重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.2重量%
組成物をIKA JAPAN社製ホモジナイザを用いて予備分散を行った。予備分散の条件は以下の通り。
翼径 :20mm
回転数 :8000rpm
予備分散時間:2分
【0112】
続いて横型連続式メディア分散機(VMA−GETZMANN社製DISPERMATT SL−C5)を用いて下記の分散条件により本分散処理を行い、赤色発光蛍光体ペーストAを得た。
ディスク回転数:5,520rpm
ビーズ種 :ジルコニア
ビーズ径 :0.3mm
ビーズ充填率 :70%
流量 :120ml/min
分散時間 :3分間
【0113】
▲2▼赤色発光蛍光体ペーストBの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が1.3μmの赤色発光蛍光体Bを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0114】
(2)青色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼青色発光蛍光体ペーストCの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.15μmの青色発光蛍光体Cを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0115】
▲2▼青色発光蛍光体ペーストDの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が1.3μmの青色発光蛍光体Dを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0116】
(3)緑色発光蛍光体ペーストの調整
▲1▼緑色発光蛍光体ペーストEの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が0.15μmの緑色発光蛍光体Eを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0117】
▲2▼緑色発光蛍光体ペーストFの調整
上記の4(1)▲1▼において、平均粒径が0.15μmの赤色発光蛍光体Aの代わりに平均粒径が1.3μmの緑色発光蛍光体Fを用いたことを除いては、上記の4(1)▲1▼と同様に蛍光体ペーストを調整した。
【0118】
5.PDPの製造
図1に示した、ストライプ型のセル構造を持つ、交流面放電型のPDP1を製造した。
まず、前面板10となるガラス基板上に、所定の位置に透明電極11a及びバス電極11bを配置してから、この上に、Cr−Cu−Crをスパッタリングし、フォトエッチングを行うことにより表示電極11を形成する。そして、前面板10上に、前記表示電極11を介して低融点ガラスを印刷し、これを500〜600℃で焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの上に、MgOを電子ビーム蒸着して保護膜13を形成する。
【0119】
一方、背面板20となるガラス基板上に、Ag厚膜を印刷し、これを焼成することにより、アドレス電極21を形成する。そして、背面板20上に、ストライプ状の隔壁30を形成する。これは、低融点ガラスをピッチ0.2mmで印刷し、焼成することにより形成する。
【0120】
さらに、前記隔壁30により仕切られたセル31の内側に面する底面31aと前記隔壁30の側面30aとに、上記4で調整した各色に発光する蛍光体ペーストA〜Fをインクジェット法により吐出する。
このとき、次の6種類のPDP用の背面板を形成した。
最初の3種類は、蛍光体の平均粒径が0.15μmである蛍光体ペーストA、C、Eを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序でインクジェット法により吐出した。
この際に、形成する放電セルの底面及び隔壁側面の蛍光体層の厚さに関して共に20μmを目標値とし、ノズルからの一回の吐出による吐出量をセル体積の約1/100となる100plとしたものと、セル体積の約1/10000以下となる0.5plとしたものと、セル体積の約1/5以上となる2000plとした。
また、蛍光体の平均粒径が1.3μm、2.1μm、1.8μmである蛍光体ペーストB、D、Fを用いて、これらの蛍光体ペーストB、D、Fを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序でインクジェット法により吐出した。
この際に、形成する放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μmを目標値とし、ノズルからの一回の吐出による吐出量をセル体積の約1/100となる100plとした。
【0121】
そして、前記電極11、21等が配置された前面板10と上記のいずれかの背面板20とを、それぞれの電極配置面が向き合うように位置合わせし、隔壁30により約1mmのギャップを保った状態で、その周辺をシールガラスにより封止する。そして、前記基板10、20間に、放電により紫外線を発生するキセノン(Xe)と主放電ガスのネオン(Ne)とを混合したガスを封入して気密密閉した後、エージングを行った。
【0122】
以上により、表1に示すように、蛍光体の平均粒径が0.15μm、ノズルからの一回の吐出による吐出量が100pl、0.5pl、2000pl、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μm(目標値)としたPDPを製造し、それぞれ実施例1、2、3とした。
また、蛍光体の平均粒径が1.3μm以上、インクジェットノズルからの一回の吐出による吐出量が100pl、2000pl、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μm(目標値)としたPDPを製造し、実施例4、5とした。
【0123】
〔比較例I〕
上記実施例1〜4の比較例として、次の2種類のPDP用の背面板を形成した。
まず、蛍光体の平均粒径が0.15μmである上記蛍光体ペーストA、C、Eを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序でインクジェット法により連続的に放電セル内に塗布し、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μmを目標値としてPDPを製造した。
また、蛍光体の平均粒径が1.3μm、2.1μm、1.8μmである上記蛍光体ペーストB、D、Fを隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序でインクジェット法により連続的に放電セル内に塗布し、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μmを目標値としてPDPを製造した。
【0124】
そして、上述の工程と同じ工程で基板10、20間にガスを封入して気密密閉した後、エージングを行った。
【0125】
以上により、平均粒径が0.15μmの蛍光体ペーストをインクジェットノズルから連続的に吐出し、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μm(目標値)としたPDPを製造し、これを比較例1とした。
また、平均粒径が1.3μm以上の蛍光体ペーストをインクジェットノズルから連続的に吐出し、放電セルの底面及び側面の蛍光体層の厚さを20μm(目標値)としたPDPを製造し、これを比較例2とした。
【0126】
〔評価〕
製造した実施例1〜5及び比較例1及び2のPDPについて、電極に所定の電圧を印加したときの白色輝度と見易さ(視野角依存性)を測定した。
なお、比較例2を従来の一般的なPDPに相当するものと位置づけ、比較例2の白色輝度を基準値100とした。そして、実施例1〜5と比較例1の基準値に対する相対値を求め、この相対値により各PDPの輝度を評価した。
図9の表は評価結果を示すものである。
実施例4については、インクジェットノズルに目詰まりが生じたため、蛍光体層を形成できなかった。
実施例1、2、3、5についてみると、相対輝度はそれぞれ150、150、90、50となっている。ただし、実施例2については、インクジェットノズルからの一回の蛍光体ペーストの吐出量がセル体積の約1/10000と極微量であったため、蛍光体層の形成作業に長時間を要し、非現実的であることが分かった。
【0127】
実施例1では底面及び側面の層厚が共に目標値である約20μmとなった。ここで、同一粒径(0.15μm)で連続吐出により形成された比較例1においては底面の層厚が32μm、側面の層厚が16μmであり、粒径がより大きな(1.3μm以上)比較例2においては底面の層厚が38μm、側面の層厚が10μmであるのに対し、実施例1では目標値である20μmとなり、実施例1〜5の中で最も優れた輝度と見易さを得ることができた。
実施例3では底面の層厚が約30μmとなった。これは、一回の吐出量がセル体積の約1/5と大きいため、側面に吐出された蛍光体ペーストが固着する前に、自重により下方、即ち底面側に流れ出したことが一因であると考えられる。
側面の蛍光体層は18μmとなり、比較的良好な輝度と見易さを確保できた。しかし、一回の吐出量がセル体積の約1/5と大きいことに起因して、放電セル底面の蛍光体層の厚みが必要以上に大きくなった結果、放電空間が減少し、実施例1と比較して輝度が若干低下する結果となった。
また、比較例1と比較すると平均粒径は等しく、蛍光体ペーストの吐出方法が異なる(実施例3は断続的に吐出し、比較例1は連続的に吐出する)。そして、比較例1よりも底面への蛍光体ペーストの流出割合が小さくなっていることが分かった。
【0128】
実施例5では底面の層厚が約35μm、隔壁の層厚が約14μmとなった。これは、平均粒径が1.3μm以上と大きいため隔壁に吐出された蛍光体ペーストの内部に空隙が発生し、蛍光体ペーストの隔壁への付着力が低下した結果、蛍光体ペーストの一部が底面側に移動したことが一因であると考えられる。
また、粒径が1.3μ以上と大きいため、蛍光体層内の蛍光体の充填密度が減少した結果、相対輝度が50と低くなったものと考えられる。
比較例2と比較すると平均粒径はほぼ等しく、蛍光体ペーストの吐出方法が異なる(実施例3は断続的に吐出し、比較例1は連続的に吐出する)。そして、比較例2よりも底面への蛍光体ペーストの流出割合が小さくなっていることが分かった。
なお、比較例1及び2共に、従来の蛍光体ペーストの連続吐出による蛍光体層の製造方法において問題となっていた通り、側面の層厚が目標値より小さくなった。従って、放電セルの側面において十分な輝度が得られず、輝度及び見易さが低下した要因になったものと考えられる。
【0129】
以上より次のことが分かる。
上述の条件下において、従来の連続型の吐出方法による蛍光体層の製造方法では、蛍光体の粒径に関わらず広い視野角及び十分な輝度を得ることは容易ではない。
しかし、本発明によれば、液相合成法により製造した1μm以下の微粒子の蛍光体を用いることにより、一回の吐出量をセル体積の1/10000〜1/5の範囲内とする限り、所望の厚さの蛍光体層を製造でき、輝度及び見易さに優れたPDPを得ることができる。
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、インクジェットノズルから一回に吐出する蛍光体の吐出量と蛍光体の吐出回数を調節することで、放電セルの側面に形成する蛍光体層の層厚を任意に調節することができた。
また、放電セルの側面の蛍光体層と底面の蛍光体層をそれぞれ独立して形成でき、放電セルの側面の蛍光体層と底面の蛍光体層の層厚を調節して、放電セルの輝度及び視野角を向上させることができ、発光ムラのないPDPを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した斜視図である。
【図2】電極の配置を示した要部平面図である。
【図3】他の放電セルの構造を示した要部斜視図である。
【図4】他の放電セルの構造を示した要部斜視図である。
【図5】ヘッドの構造を示す要部断面図である。
【図6】ノズル駆動手段の構造を示す要部斜視図である。
【図7】インクジェットノズルからの蛍光体ペーストの吐出状態を示す要部正面図である。
【図8】本発明に係る蛍光体を共沈法により合成する際に用いる装置の一例を示した概略図である。
【図9】実施例における評価結果を示したものである。
【図10】一般的なPDPの構成を示す要部正面図である。
【図11】一般的なインクジェット装置を用いた連続吐出による蛍光体層の形成方法を示す要部正面図である。
【符号の説明】
N 軸
1 プラズマディスプレイパネル1
10 基板
20 基板
30 隔壁
31 放電セル
35 蛍光体層
Claims (9)
- 所定間隔をあけて対向配置された2つの基板と、前記基板間に設けられて基板間の空間を複数に区画する隔壁と、前記隔壁及び前記基板に囲まれた放電セルと、インクジェットノズルからの蛍光体の吐出により、前記放電セルの内側に面する隔壁の側面及び基板の一方の対向面に形成される蛍光体層とを備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記インクジェットノズルが、前記隔壁及び基板の各々に対して蛍光体を断続的に複数回吐出することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記インクジェットノズルが、前記基板と平行な軸に対して回転することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記インクジェットノズルから一回に吐出される蛍光体の量が、前記放電セル内の体積の1/10000以上で1/5以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記蛍光体の平均粒径が0.01μm以上で1μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記蛍光体は、蛍光体原料を液相中で反応させる液相合成法により製造されることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu2+であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記蛍光体が、Zn2SiO4:Mn2+であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記蛍光体が、(Y,Gd)BO3:Eu3+であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法により製造されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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JP2002218040A JP2004063191A (ja) | 2002-07-26 | 2002-07-26 | プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマディスプレイパネル |
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