JP2004244544A - ケイ酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体の製造方法およびプラズマディスプレイパネル - Google Patents
ケイ酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体の製造方法およびプラズマディスプレイパネル Download PDFInfo
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Abstract
【課題】形状が均一で発光強度が高く、発光ムラのない微粒子の蛍光体を提供する。
【解決手段】ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、前駆体をケイ素系化合物粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成する。
【選択図】 なし
【解決手段】ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、前駆体をケイ素系化合物粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル等の表示装置や細管型蛍光ランプ等の照明装置等のデバイス、電子機器および各種ケイ酸塩蛍光体使用物品に幅広く使用できるケイ酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体の製造方法およびプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、X線および放射線等)を照射することにより、前記励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光および赤外線等)に変換する材料である。蛍光体は、蛍光塗料、灰皿、文房具、アウトドア用品、案内板、誘導物、安全標識等の標示物等、種々の物品に使用されている。この他に、蛍光ランプ、電子管、蛍光表示管、エレクトロルミネッセンスパネル、シンチレーション検出器、X線イメージインテンシファイア、熱蛍光線量計およびイメージングプレート等の各種のデバイス、冷陰極ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の表示装置にも適用されている(例えば、「蛍光体ハンドブック」、蛍光体同学会編、オーム社参照)。
【0003】
上記で挙げた表示装置のうち、特に、PDPは画面の大型化および薄型化が可能なことから、陰極線管(CRT)に代わり得るフラットパネルディスプレイとして注目されている。PDPは、2枚の電極を備えたガラス基板と、基板間に設けられた隔壁によって形成される多数の微少放電空間(以下、セルという)とを有している。各セルを囲む隔壁の側面と底面(一方のガラス基板)とには、赤、緑、青等に発光する蛍光体層が設けられている。
【0004】
セルは、隔壁により所定形状に形成され、基板上に規則正しく配置され、Xe、Ne等を主成分とする放電ガスが封入されている。セルは、放電の拡がりを一定領域に抑えるものであり、電極間に電圧を印加して放電させると、放電ガスに起因する紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて可視光を発光する。セルあるいはセルの一部を選択的に放電させることにより所望の情報をフルカラーで表示することができる。
【0005】
現在、PDP用の蛍光体として主に使用されているものに、(Y、Gd)BO3:Eu(赤)、Zn2SiO4:Mn(緑)、BaMgAl10O17:Eu(青)等がある。これらの蛍光体は、一般に、固相法により製造されている。固相法とは、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と付活剤元素を含む化合物を所定量混合し、所定の温度で焼成して固相間反応により蛍光体を得る方法(「蛍光体ハンドブック」参照)である。この様にして得られた蛍光体は、個々の粒子形状が扁平形状、あるいは不規則な多面形状のものが一般的である。
【0006】
近年、PDP等のディスプレイの高精細化に伴い、セルが微細化している。所定の輝度を得るためには、各セルに設けられる蛍光体層毎に一定量以上の蛍光体を充填しなければならない。しかしながら、上述の如く粒子形状が扁平状、あるいは不規則な多面状であると、それだけ蛍光体層が厚くなってしまう。蛍光体層の厚さが厚い場合、蛍光体から発する光の散乱が大きくなるばかりでなく、放電空間も狭められ、蛍光体を励起するために十分な紫外線を発生することができなくなる。特に、緑色蛍光体は視感度が高く、緑色セルの輝度向上が求められている。
【0007】
そこで、蛍光体層に緑色蛍光体を密に充填するために、例えば、粒子形状が球状またはほぼ球状のポリメチルシルセスオキ酸を基体として球状の蛍光体(Zn2SiO4:Mn)を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−278446号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PDPのセル構造の微細化に伴い、より微粒な蛍光体粒子が求められているが、特許文献1には固相法により粒径の比較的大きな(4.5μm〜2μm)球形の蛍光体を得る方法しか開示されていない。特許文献1記載の方法は固相法であるので、より微粒の蛍光体を製造する際には粉砕等の工程を行う必要があり、このときに蛍光体粒子の形状が均一でなくなる恐れがある。また、粉砕工程時に結晶歪みなどを引き起こし、発光強度が低下する場合もある。さらに、原料となる粉体を乾式で混合するため、構成元素の組成を均一に制御するのは困難であり、付活剤を蛍光体の母核粒子内に均一に拡散混入させることは困難であり、十分な発光強度が得られない恐れがあった。
【0010】
本発明の課題は、形状が均一で発光強度が高く発光ムラのない微粒子のケイ酸塩蛍光体およびその製造方法並びにそのケイ酸塩蛍光体を用いたPDPを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、平均粒径が0.01〜1μmであり、粒子同士が互いに融着されていないことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に金属元素が拡散混入されており、粒子同士が互いに融着した不定形状ではないので、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができ、各種用途に好適に用いることができる。
【0013】
さらに、平均粒径が0.01〜1μmの極めて微粒子であり、かつ、粒子間で形状も揃っているので、セル構造の微細化が進むPDPの蛍光体層においても密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、平均粒径が0.01〜1μmであり、粒径分布の変動係数の値が40%以下であり、個々の粒子形状が略同一であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、平均粒径が0.01〜1μmの極めて微粒子の蛍光体であり、粒径分布の変動係数が40%以下であり、大きさ、形状が粒子間で略同一であるので、どのような用途に用いても輝度の高いムラのない発光を行うことができる。また、PDPのセルに設けられる蛍光体層に密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のケイ酸塩蛍光体において、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上を占めているので、粒子の発光特性が均一になる。したがって、PDPのセルの蛍光体層をこの蛍光体で構成することにより、発光ムラのない秀麗なものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体において、粒子内における構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、粒子内における各構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であるので、各粒子が含有する構成元素量のばらつきがなく、ムラのない発光を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成する前駆体形成工程と、前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させたケイ酸塩蛍光体を得る焼成工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前駆体形成工程においてケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、焼成工程において金属元素をケイ素系材料粒子内に拡散混入させるので、組成の均一な蛍光体を得ることができる。
【0022】
また、前駆体を焼成する際に、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態とするので、得られる蛍光体粒子が互いに融着して不定形状となることを防止することができる。このため、粒径分布の変動係数の少ない、粒子間で形状の揃ったケイ酸塩蛍光体を得ることができる。
また、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、前記焼成工程は、前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で前駆体の焼成を行い、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させる金属元素拡散混入工程と、前記金属元素拡散混入工程で得られた焼成物に焼結防止剤を混合する焼結防止剤混合工程と、前記焼結防止剤混合工程で得られた混合物を再焼成することにより結晶化されたケイ酸塩蛍光体を得る結晶化工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体を製造する際の効率を向上することができる。すなわち、ケイ素系材料の融着が実質的に起こらない状態でケイ素系材料に金属元素を拡散混入させるには、ケイ素系材料の融点以下の温度で焼成しなければならない。一方、蛍光体を所望の状態まで結晶化するには所定のエネルギー量を必要とするので、低い温度で焼成すると長時間焼成を行わなければならない。しかし、本発明では、金属元素拡散混入工程後、得られた焼成物に焼結防止剤を混合するので、結晶化工程は粒子の融着を防止した状態で金属元素拡散混入工程よりも高い焼成温度で焼成することができる。よって、蛍光体の製造に係る効率を向上することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、前記前駆体形成工程は液相法により行うことを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、液相法により前駆体を形成するので、ケイ素系材料と、ケイ酸塩蛍光体を構成するケイ素以外の金属元素とが液体内で均一に混合することができ、反応条件を整えることによって粒子内で構成元素が均一に拡散、分布し、構成元素の含有率が均一な蛍光体を得ることができる。
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法により得られたことを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体は請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果が得られる。
【0029】
請求項9に記載の発明のプラズマディスプレイパネルは、請求項1〜4、8のいずれかに一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光層を有することを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の発明によれば、PDPは、請求項1〜5、9のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光体層を有するので、蛍光体層にケイ酸塩蛍光体を密に充填することができ、これによりセルの発光強度を向上することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るケイ酸塩蛍光体は、蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子内に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素(以下、「金属元素」という。)が拡散混入されてなる。
【0032】
ここで、ケイ素系材料とは、ケイ素(単体)またはケイ素化合物をいう。また、ケイ酸塩蛍光体の母核とは、実質的にはケイ素系材料を指し、焼成前後で粒径・形状変化がほとんどない粒子のことをいう。
【0033】
上記金属元素として、例えば、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、EuおよびTbからなる群から選ばれる一種以上の金属元素を挙げることができる。これらの金属元素は、製造するケイ酸塩蛍光体の組成に応じて、適宜、選定することができる。例えば、Zn2SiO4:Mnの組成式で示されるケイ酸塩蛍光体を製造する場合には、ZnおよびMnを選べばよい。これらの金属元素を適宜選定して用いることにより、目的の発光を有するケイ酸塩蛍光体を得ることができる。
【0034】
そのようなケイ酸塩蛍光体として、具体的には、Zn2SiO4:Mn/(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu/(Ba,Mg)2SiO4:Eu/Y2SiO5:Ce,Tb/Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu/Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce,Tb/Ba2SiO4:Eu/Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu等を挙げることができる。
【0035】
本発明に係るケイ酸塩蛍光体の個々の粒子は互いに融着されておらず、その形状(粒形)は略同一である。粒形は球状、棒状、平板状等、どのような形状であってもよい。
【0036】
本発明におけるケイ酸塩蛍光体の平均粒径は0.01〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.01〜0.5μmの範囲であり、更に好ましくは0.01〜0.3μmの範囲である。
【0037】
平均粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる、正常晶の場合には、粒子の綾の長さをいう。また、正常晶ではない場合、例えば、球状、棒状あるいは平板状の場合には、粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0038】
粒子は単分散であることが好ましい。単分散であるとは、具体的には、下記式(1)で求められる粒径分布の変動係数の値が小さいことを指す。具体的には、粒径分布の変動係数の値は40%以下であることが好ましく、30%以下であるとより好ましく、0.1〜20%であると更に好ましい。
〔式1〕
粒径分布の変動係数=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100 (1)
【0039】
本発明において、ケイ素系材料粒子内に金属元素が均一に拡散混入していることが好ましく、具体的には、ケイ酸塩蛍光体の粒子内において、ケイ酸塩蛍光体を構成する構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上であることが好ましく、60%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0040】
ここで、粒子内における構成元素の組成の分布が均一であるとは、1つの蛍光体粒子内のどの領域においてもその組成が微視的に一定であることを示す。より具体的には後述する微視的な分布の測定方法において、ある組成の各切片における含有率の差が、その組成の含有率の理論値の20%以下であることをいう。
【0041】
粒子内における組成の微視的な分布の測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、電子線を照射した際に試料から発生する特性X線を解析することにより一個一個の粒子の内部組成分布を測定することができる。試料となるケイ酸塩蛍光体粒子を例えば厚さ50nm程度の切片として連続的に切り出し、その切片を電子顕微鏡観察用のメッシュに載せてカーボン蒸着を施し、透過法で観察を行うことが可能である。
【0042】
組成分布が微視的に均一である粒子の比率を算出する方法としては、少なくとも100個のケイ酸塩蛍光体粒子について透過型電子顕微鏡写真によって上記と同様に内部組成分布を測定し、ある組成の各切片における含有率の差が、その組成の含有率の理論値の20%以下である粒子が占める比率を算出すればよい。
【0043】
さらに、粒子内における構成元素の含有率の粒子間分布の変動率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることが更に好ましく、15%以下であることが最も好ましい。
【0044】
粒子内に含有される構成元素の含有率を測定する方法としては、サブミクロン〜ナノメートルオーダーの高い分解能を有する二次イオン質量分析(SIMS)装置を用いて一個一個の粒子の組成を測定することができる。このとき、本発明に係るケイ酸塩蛍光体粒子を試料台に乗せ、カーボンなどを蒸着させて測定することが好ましい。また、特に粒径1μm以下のケイ酸塩蛍光体粒子を測定する場合には、粒子を一定の厚さに押しつぶして測定することも可能である。
【0045】
粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数は、二次イオン質量分析装置により少なくとも100個のケイ酸塩蛍光体粒子の各粒子内に含有する構成元素の含有率を測定した際の組成含有率の標準偏差を平均含有率で除した値に100を乗じて求めることができる。
【0046】
次に、上記ケイ酸塩蛍光体を製造する方法について説明する。
本発明に係るケイ酸塩蛍光体の製造方法は、ケイ酸塩蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子の周囲に、金属元素(焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得るもの)を均一な組成で含む前駆体を形成する前駆体形成工程と、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、ケイ素系材料粒子内部に金属元素を拡散混入させたケイ酸塩蛍光体を得る焼成工程とを含む。
【0047】
まず、前駆体形成工程について説明する。
前駆体形成工程では、ケイ酸塩蛍光体の原料となる元素を分散または溶解した分散液または溶液を混合することにより、前駆体を形成するいわゆる液相法で行うことが好ましい。前駆体形成工程は構成元素を均一に混合することができれば固相法により行ってもよいが、固相法は製造時に機械的な分散・粉砕工程を行うため微粒子の蛍光体を製造しようとすると結晶欠陥等が生じ、輝度特性等の劣化を招く恐れがある。これに対して、液相法は、機械的な分散・粉砕工程がない他、蛍光体の構成元素を液相中で均一に混合することができるので、反応時のケイ酸塩蛍光体を構成する各イオンの分散が極めて良好になる。その結果、化学量論的に高純度で、ケイ素系材料粒子の周囲に析出する金属元素の組成も均一になりやすい。また、液相間反応であるため反応効率も高い。
【0048】
ケイ酸塩蛍光体の原料となる元素とは、ケイ素と、上述の焼成することによりケイ素系材料と共にケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を指す。ケイ素およびこれらの金属元素は、単体であってもよいし、酸化物あるいは塩化物や硝酸塩等の各種金属化合物であってもよい。
【0049】
液相法としては、共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法等の一般的な液相法を用いる事が出来るが、特に、シリカ等のケイ素化合物(ケイ素系材料)を前駆体の母核とし、共沈法により前駆体を形成すると好ましい。このように前駆体を形成することにより、より発光強度に優れるケイ酸塩蛍光体を得ることができる。また、反応晶析法又はゾルゲル法により前駆体を形成する際には、より微粒で粒径分布の狭い蛍光体を得るという観点から、後述する保護コロイド添加の下で行うことが好ましい。
【0050】
まず、共沈法について説明する。共沈法とは、共沈現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合し、さらに沈殿剤を添加することによって、蛍光体前駆体の母核の周囲に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素等を析出させた状態で、蛍光体前駆体を合成する方法を言う。ここで、共沈現象とは、溶液から沈殿を生じさせたとき、その状況では十分な溶解度があり、沈殿しないはずのイオンが沈殿に伴われる現象をいう。蛍光体の製造においては、蛍光体前駆体の母核の周囲に、付活剤を構成する金属元素などが析出する現象を指す。
【0051】
以下において、この共沈法を利用して、ケイ素系材料粒子を前駆体の母核としてケイ酸塩蛍光体を製造する方法をシリカ母核法という。
【0052】
シリカ母核法により前駆体を形成するには、ケイ素系材料を液体に分散させたケイ素系液状物と、金属元素を液体に陽イオンの状態で溶解させたもの、あるいは液体に金属元素を固体のまま分散させた金属系液状物とを混合する。
【0053】
シリカ母核法においては、ケイ素系材料として二酸化ケイ素(シリカ)を特に好ましく使用できる。二酸化ケイ素としては、例えば、気相法シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等を用いることができる。コロイダルシリカの場合は、特にアニオン性のものが好ましい。
【0054】
本発明におけるケイ素系材料粒子の1次粒径または2次凝集粒径は、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下、最も好ましくは0.01μm以下である。ケイ素系材料粒子の1次粒径または2次凝集粒径を制御することにより、焼成後のケイ酸塩蛍光体の平均粒径を所望の大きさとすることができる。
【0055】
なお、1次粒径とは、ひとつの結晶子を1次粒子としたときのその粒径を指す。また、2次凝集粒径とは、液体中でケイ素系材料の1次粒子同士が凝集することにより形成された2次凝集粒子の粒径をいう。
【0056】
ケイ素系材料を分散させる液体としては、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、水またはアルコール類またはそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであっても良く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素系材料が分散しやすいエタノールが好ましい。
【0057】
ここで、「ケイ素系材料を実質的に溶解しない」とは、液体に対するケイ素系材料の溶解度が0.1%以下の範囲を指す。
【0058】
ケイ素系材料の液体中での分散状態や前記二次凝集粒径等をあらかじめ調整し、所望の状態とすることが望ましい。
また、上記したコロイダルシリカを用いる場合には、液体中での粒径および分散状態があらかじめ調製されているので、適宜、適切なものを使用すればよい。
【0059】
このようにケイ素系液状物をあらかじめ調整するか、コロイダルシリカを用いることにより、液体中のケイ素系材料の分散状態を良好にし、二次凝集粒径等も一定になる。
【0060】
次に、金属系液状物について説明する。
金属元素を溶解又は分散させる液体は、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、上記と同様に、水若しくはアルコール類又はそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。特に、エタノールが好ましい。
【0061】
上記シリカ母核法において、ケイ素系液状物と、金属系液状物とを混合する際に、金属元素と反応して沈殿物を形成する沈殿剤を含む溶液を混合してもよい。
【0062】
ここで、沈殿剤を含む溶液とは、以下に示す沈殿剤を水若しくはアルコール類又はそれらの混合物に溶解させたものを指す。アルコール類として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられ、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであってもよい。
【0063】
沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリを好ましく使用できる。有機酸または水酸化アルカリは金属元素と反応し、沈殿物として有機酸塩または水酸化物を形成する。このとき、これらの沈殿物が母核となるケイ素系材料の周囲に析出していることが好ましい。
【0064】
また、使用する沈殿剤の量としては、金属元素が有機酸塩または水酸化物等の沈殿物として析出するのに必要な化学量論量の1倍以上が好ましい。
【0065】
有機酸としては、カルボン酸基(−COOH)を有するものが好ましく、具体的には、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。また、加水分解等により、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等を生じるものであってもよい。
【0066】
水酸化アルカリとしては、水酸基(−OH)を有するもの、あるいは水と反応して水酸基を生じたり、加水分解により水酸基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられる。この中で、アンモニアが好ましく使用され、特に好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアである。
【0067】
次に、反応晶析法およびゾルゲル法について説明する。
反応晶析法とは、晶析現象を利用して、ケイ酸塩蛍光体の前駆体の原料となるケイ素系材料およびケイ素以外の金属元素を含む溶液を混合することによって前駆体を合成する方法をいう。これらは、例えば、塩化物や硝酸塩、硫酸塩等であると好ましく、陽イオンの状態で溶媒に溶解させると好ましい。例えば、ケイ素系材料としては、メタケイ酸ナトリウムを好ましく使用することができる。
【0068】
なお、晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的又は化学的な環境の変化、あるいは化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等に液相中から固相が析出してくる現象を指す。
本発明における反応晶析法による前駆体の製造方法は、上記の様な晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
【0069】
ゾルゲル法とは、一般に、前駆体の原料となるケイ素系材料およびケイ素以外の金属元素を金属アルコキシド若しくは金属錯体又はそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩、金属単体等として必要量混合し、熱的又は化学的に重縮合することによる製造方法をいう。例えば、ケイ素系材料としては、ケイ素を金属アルコキシドとして用いたSi(OCH3)4等を使用することができる。
【0070】
上記の反応晶析法やゾルゲル法を適用する際の溶媒は反応原料が溶解すれば何を用いてもよいが、過飽和度制御のしやすさの観点から水が好ましい。また、ゾルゲル法の場合、水とエタノール等のアルコール類との混合溶液も好ましい形態である。反応原料の溶媒への添加順序は同時でも異なってもよく、活性によって適切な順序を適宜組み立てることができる。
【0071】
また、上記の反応晶析法やゾルゲル法等を用いて前駆体を形成する際には、反応温度、添加速度や添加位置、攪拌条件、pH等、諸物性値を調整すると好ましい。平均粒径制御のために保護コロイドや界面活性剤などを添加することも好ましい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮、または熟成することも好ましい態様の1つである。
【0072】
特に、保護コロイドを添加することにより、前駆体粒子の粒径や凝集状態を制御することができ、焼成後の蛍光体粒子の平均粒径を0.01〜1.0μmの範囲の所望の大きさにすることができるので好ましい。
【0073】
そのような保護コロイドとしては、天然、人工を問わず各種高分子化合物を使用することができるが、特にタンパク質が好ましい。その際、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。
【0074】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が上げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等がある。中でも、ゼラチンを特に好ましく使用できる。
【0075】
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。更に、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0076】
また、前記保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
【0077】
保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができる。原料溶液の全てに添加してもよい。保護コロイドの存在下で、前駆体を形成することにより、前駆体同士が凝集するのを防ぎ、前駆体を十分小さくすることができる。それにより、焼成後の蛍光体をより微粒子で、粒径分布が狭く、発光特性を良好にするなど、蛍光体の種々の特性を向上することができる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0078】
上記の共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法いずれの液相合成法を利用する場合であっても、前駆体形成工程において、各液を均一に混合することが望ましい。各液の混合方法は特に限定されるものではないが、例えば、攪拌による混合方法は、混合状態等を制御しやすく、低コストであるので好ましい。また、混合方法としてはバッチ式、連続式、外部循環混合等どのような方法でもよい。
【0079】
具体的には、ケイ素系液状物を母液(グランド)とし、母液を撹拌しながらその中に金属系液状物を添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器に金属系液状物を添加する方法、または、ケイ素系材料を含まない溶液を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にケイ素系液状物と金属系液状物とをダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にケイ素系液状物と金属系液状物とをダブルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0080】
また、沈殿剤を含む溶液を添加する場合においても、いかなる方法、順序に従ってケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とを混合してもよい。具体的には、ケイ素系液状物を母液とし、母液を撹拌しながらその中に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中にもうけた混合器に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、またはケイ素系材料を含まない液体を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0081】
沈殿剤を含む溶液の有無に関わらず、これらの液の添加位置は母液表面でも母液中でもどちらでもよく、より均一な混合という観点から母液中が好ましい。更に撹拌レイノルズ数は、1,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上が好ましい。攪拌レイノルズ数を1,000以上にすることにより、各液をより均一に混合することができる。
【0082】
上記の前駆体形成工程終了後、焼成工程に先だって乾燥工程を行うと好ましい。乾燥温度としては、20〜300℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは30〜200℃である。直接乾燥させる方法としては、エバポレーションや、顆粒化しながら乾燥させるスプレードライを挙げることができる。
【0083】
また、乾燥工程において、前駆体を乾燥する前に、必要に応じて不溶な塩類を濾過水洗、膜分離等の既存の方法により除去することが好ましい。更にその後、濾過や遠心分離等の方法により前駆体を液体から分離することが好ましい。
【0084】
次に、焼成工程について説明する。
【0085】
本発明における焼成工程とは、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらないように制御した状態で前駆体を焼成し、ケイ素系材料粒子の周囲に析出した金属元素を粒子内部に拡散混入させた蛍光体を得る工程をいう。
【0086】
前駆体形成工程において、ケイ素系材料粒子の周囲に均一な組成で金属元素を析出させることができるので、焼成条件をコントロールすることにより粒子内部にも均一に金属元素を拡散混入させることができる。また、前駆体形成工程においては機械的な混合・粉砕工程等を行わないことから、粒子形状も使用したケイ素系材料粒子の形状に依存した略一定形状のものとすることができる。
【0087】
ここで、「ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態」とは、焼成後に得られた粒子(焼成物)のうち少なくとも90%以上の粒子に関して、粒子同士の融着が起こっていない状態を言う。
【0088】
ケイ素系材料粒子の融着は、その粒径と焼成温度に大きく関係している。例えば、ケイ素系材料粒子の粒径が0.01〜0.1μmの場合、焼成温度は400〜800℃であることが好ましく、ケイ素系材料粒子の粒径が0.1〜0.5μmの場合、焼成温度は600〜1000℃であることが好ましく、ケイ素系材料粒子の粒径が0.5〜1μmである場合、焼成温度は800〜1200℃であることが好ましい。
【0089】
上記温度条件で、0.5〜100時間の範囲で1回以上焼成することが好ましい。これにより、ケイ素系材料粒子同士が互いに融着せず、金属元素をケイ素系材料粒子内部に拡散混入させることができる。
【0090】
以上の温度条件で所定の結晶化度となるまで焼成を行うことにより、上述した本発明に係る形状が均一で発光強度が高く、発光ムラのない微粒子のケイ酸塩蛍光体を得ることができるが、生産効率の向上の観点から、焼成工程を(1)金属元素拡散混入工程と、(2)焼結防止剤混合工程と、(3)結晶化工程とに分けると好ましい。
【0091】
(1)金属元素拡散混入工程は、上記のように、ケイ素系材料粒子の粒径に応じた焼成温度で、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、その内部に金属元素を十分に拡散させる工程である。
【0092】
(2)焼結防止剤混合工程は、(1)の金属元素拡散工程終了後、得られた粉体(焼成物)に焼結防止剤を混合する工程である。
【0093】
焼結防止剤は、粒子同士の融着を防止するために加えられるものであり、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物、炭化珪素、炭化タングステン、炭化タンタル等の炭化物など高温度下で化学的に安定な金属化合物の一種以上からなることが好ましい。
【0094】
(3)結晶化工程では、(2)の焼結防止剤混合工程により得られた混合物を再焼成することにより、蛍光体を結晶化させ、その結晶化度を高める工程である。
【0095】
焼結防止剤が混合されているので、(1)の金属元素拡散工程における焼成温度よりも高い温度で焼成しても、粒子同士の融着を防ぐことができ、短時間で所望の結晶化度のケイ酸塩蛍光体を得ることができる。なお、再焼成温度は、1000〜1400℃の温度範囲、0.5〜5時間の範囲で1回以上焼成することが好ましい。
【0096】
なお、上記(1)の金属拡散混入工程において焼結防止剤を添加すると、焼結防止剤が作用してケイ素系材料粒子内に金属元素が拡散混入するのが阻まれる恐れがあり、好ましくない。
一方、(3)の結晶化工程において焼結防止剤を添加しないで行うと、焼成温度が高いため、粒子同士が融着する恐れがあり、好ましくない。
【0097】
上記焼成工程において、Zn2SiO4:Mn等の前駆体を焼成する場合は、不活性雰囲気中で焼成を行うことが好ましい。更に必要に応じて、大気雰囲気(もしくは酸素雰囲気)、還元雰囲気を組み合わせてもよい。還元雰囲気を組み合わせる場合には、結晶中からの亜鉛等の金属元素の蒸発を防止するために800℃以下の温度で焼成することが好ましい。還元性雰囲気を得る方法として、前駆体の充填されたボート内に黒鉛の塊を入れる方法、窒素−水素の雰囲気中、あるいは希ガス・水素の雰囲気中で焼成する方法等が挙げられる。これらの雰囲気に水蒸気が含まれていてもよい。
【0098】
焼成工程終了後、得られたケイ酸塩蛍光体に、分散、水洗、乾燥、篩い分け等の処理を行ってもよい。
【0099】
上記の方法で製造したケイ酸塩蛍光体は蛍光ランプ、蛍光表示管等の各種デバイス、PDP、FED等の各種表示装置、あるいは、蛍光塗料、灰皿、文房具、アウトドア用品、案内板、誘導物、安全標識等のケイ酸塩蛍光体使用物品に好適に使用することができる。
【0100】
以下、図1を参照して、本発明に係るケイ酸塩蛍光体を用いた表示装置の一例としてプラズマディスプレイパネルを説明する。なお、PDPには、電極の構造および動作モードから大別すると、直流電圧を印加するAC型と、交流電圧を印加するDC型のものとがあるが、図1には、AC型PDPの構成概略の一例を示した。
【0101】
図1に示す2枚の基板10、20のうち、一方は表示側に配置される前面板10であり、他方は背面側に配置される背面板20である。前面板10と背面板20は、この基板10、20間に設けられる隔壁30によって所定間隔をあけて対向配置されている。
【0102】
まず、前面板10側の構成について説明する。
前面板10は、例えばソーダライムガラス等の可視光を透過する材料から形成することができる。前面板10の、背面板20に対向する対向面には、図1に示すように、電極11、誘電体層12、保護層等が備えられている。
【0103】
前面板10に設けられた電極11は、1組の走査電極11aと維持電極11bとからなり、それぞれの電極11a、11bは帯状に形成されている。走査電極11aと維持電極11bは所定の放電ギャップをあけて設けられている。蛍光体を発光させるためのプラズマ放電は、これらの走査電極11aと維持電極11bとの間の面放電により行われる。
【0104】
電極11は、図2に示すように、前面板10の端10cから端10dまで連続して横切るように設けられ、互いに所定間隔をあけて規則正しく配置されている。各電極11はそれぞれパネル駆動回路15に接続されており、所望の電極11に電圧を印加することができる。
【0105】
図1に示すように、これらの電極11が配された前面板10の表面全体を覆うように、誘電体層12が設けられている。誘電体層12は誘電物質からなり、一般に、鉛系低融点ガラスから形成されることが多い。この他に、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等で誘電体層12を形成しても良い。
【0106】
誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層が好ましい。
【0107】
次に、背面板20側の構成について説明する。
背面板20は前面板10と略同一のサイズに形成されており、前面板10と同様にソーダライムガラス等から形成することができる。背面板20の前面板10と対向する面には、複数のデータ電極21、誘電体層22、隔壁30等が備えられている。
【0108】
データ電極21は、前記電極11と同様に帯状に形成されており、所定間隔毎に設けられている。データ電極21の両側には前記隔壁30が設けられている。データ電極21は、図2に示すように、背面板20の中央部24で、分割されており、それぞれがパネル駆動回路25a、25bに接続されている。このパネル駆動回路25により、所望の電極21に電圧を印加することができる。
【0109】
図1に示すように、背面板20のデータ電極21が配された表面全体は誘電体層22により覆われている。誘電体層22は、誘電体層12と同様に、鉛系低融点ガラスや、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等から構成することができる。さらに、これらの誘電物質にTiO2粒子を混合し、可視光反射層としての働きも兼ねるようにすると好ましい。誘電体層22をこのように可視光反射層としても機能させると、蛍光体層35からの背面板20側に発光しても、これを前面板10側に反射して、前面板10を透過する光を増やし、輝度を向上させることができる。
【0110】
上記の誘電体層22の上面には隔壁30が背面板20側から前面板10側に突出するように設けられている。隔壁30は基板10、20間の空間を所定形状に複数区画して、前述したように放電セル31を形成している。隔壁30は、ガラス材料等の誘電物質から形成される。
【0111】
放電セル31は、上記のように隔壁30と基板10、20とによって囲まれた放電空間であり、放電セル31の内側に面する隔壁30の側面30aと放電セルの底面31aには、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体層35がR、G、Bの順に規則正しく設けられる。放電セル31内部には、希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、特にNeを主放電ガスとし、これに放電により紫外線を発生するXeを混合した混合ガスを用いると好ましい。なお、混合ガスを封入するときの封入圧力は特に限定されるものではないが、例えば、66.7mPa程度が好ましい。
【0112】
図1に示した放電セル31は、いわゆるストライプ型のものであり、隔壁30が前記したデータ電極21の両側に設けられ、この隔壁30により平行な溝状に形成されたものである。
【0113】
ここで、放電セル31と、電極11、21の配置について説明する。
図2に示すように、電極11とデータ電極21は、平面視において互いに直交し、マトリックス状になっている。一つの放電セル31内には、電極11とデータ電極21との交点が多数設けられている。この電極11とデータ電極21の交点で選択的に放電させることができ、これにより所望の情報が表示可能となっている。以下、一つのセルの体積をセル内の電極の交点の数で分割したセルの空間を最小発光単位という。PDP1では、近接するR、G、Bの3つの最小発光単位で1画素となる。
【0114】
本発明において、R、G、Bの少なくともいずれか一色の蛍光体層は、本発明に係るケイ酸塩蛍光体を含有する。蛍光体層の形成に際しては、従来から公知の種々の方法を用いることができる。例えば、隔壁30により区画された放電セル31の底面(アドレス電極21上)と側面とにペースト状に調整した蛍光体を塗布又は充填し、蛍光体ペーストを乾燥又は焼成して、ペースト中の有機成分を除去することにより蛍光体層を形成することができる。
【0115】
なお、蛍光体をペースト状に調整する際には、蛍光体に溶剤、バインダー樹脂、分散剤等を適宜混合すればよい。
【0116】
また、蛍光体ペーストを隔壁間に塗布又は充填する方法としては、スクリーン印刷法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法など種々の方法を使用することができる。中でも、高精細なリブ構造では隔壁のピッチも細かくなり、その隔壁間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光層を形成する塗布方法として、特にインクジェット法を適用するのが好ましい。
【0117】
本発明に係るPDP1等のディスプレイは、本発明の製造方法により得たケイ酸塩蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、パネル輝度を向上させることができる。特に、ケイ酸塩蛍光体のうち緑色発光のものを用いると、視感度の高い緑色セルの発光強度を向上させることができるので、白色輝度が向上する。
【0118】
さらに、本発明に係るケイ酸塩蛍光体は粒径が小さく、略均一形状を有するため、例えば、PDP1の放電セル31G等の微小放電空間内に効率良く、ケイ酸塩蛍光体を塗布することが可能となる。したがって、よりディスプレイ等の輝度を向上させることができる。
【0119】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに何等限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
1.蛍光体の製造
(1)ケイ酸塩蛍光体1−1の製造
まず、二酸化ケイ素(日産化学工業株式会社製スノーテックスMP−4540M、40wt%、粒径0.5μm)11.27gを純水516.29gに混合してA液を調整した。同時に、硝酸亜鉛6水和物42.39gと硝酸マンガン6水和物2.15gを純水51.84gに溶解してB液を調整した。さらに、アンモニア水(28%)21.90gを純水50.67gに混合してC液を調整した。
【0121】
なお、使用した二酸化ケイ素の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。図4から明らかなように、二酸化ケイ素粒子は球状を呈し、その粒径や粒子形状が揃っていることが分かる。
【0122】
次に、図3に示す反応装置100を用いて、A液を撹拌しながら、ローラーポンプ110を使ってB液とC液を10cc/minの添加速度でA液表面にダブルジェットで同時添加した。B液、C液の添加終了後、吸引濾過により固液分離を行いながら、純水を用いて十分に洗浄を行った。次いで、40℃、50時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体を得た。
【0123】
次に、得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で900℃、50時間焼成し、ケイ酸塩蛍光体1−1を得た。
【0124】
(2)ケイ酸塩蛍光体1−2の製造
二酸化ケイ素を日産化学工業株式会社製スノーテックスMP−2040(40wt%、粒径0.2μm)に変更し、前駆体の焼成を850℃、70時間行う以外は上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にしてケイ酸塩蛍光体1−2を得た。
【0125】
(3)ケイ酸塩蛍光体1−3の製造
二酸化ケイ素を日産化学工業株式会社製スノーテックスO−40(40wt%、粒径0.03μm)に変更し、前駆体の焼成を750℃、90時間行う以外は上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にしてケイ酸塩蛍光体1−4を得た。
【0126】
(4)比較例1の製造
前駆体の焼成を1200℃、3時間行う以外は、上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にして蛍光体(比較例1)を得た。
【0127】
2.評価
上記で得られたケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3と比較例1とについて、(1)発光強度、(2)粒子形状について評価した。
【0128】
(1)発光強度の評価
ケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3および比較例1にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、ケイ酸塩蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、比較例1を100とした相対値で求めた。得た結果を表1に示す。
【表1】
【0129】
表1より、本発明に係る焼成工程のように、ケイ素系材料粒子の周囲に金属元素を均一な組成で含む前駆体を、ケイ素系材料粒子同士が互いに融着しない温度で焼成することにより、金属元素を粒子内に均一に拡散混入させて結晶化することによりケイ酸塩蛍光体の発光強度が高くなるという結果が得られた。
【0130】
(2)粒子形状の評価
次に、上記ケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3と、比較例1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図5〜8に示す。
また、走査型電子顕微鏡写真に写された蛍光体粒子を無作為に100個選択して求めた平均粒径を表2に示す。
【表2】
【0131】
比較例1の製造方法により得られた蛍光体は図8に示すように、粒子同士が互いに融着した不定形状を示し、粒子間における粒子形状は不均一であった。また、使用した二酸化ケイ素(図4)とも形状が大きく異なっており、その平均粒径は0.5μmから1.58μmに増大し、粒度分布にもばらつきが生じた。
【0132】
これに対して、図5〜7に示す様に、蛍光体1−1〜1−3は、粒子形状が均一であり、使用した二酸化ケイ素の形状と略同一なものを得ることができた。
また、その平均粒径も原料として用いた二酸化ケイ素の平均粒径と略同一で、粒度分布のばらつきも少なかった。蛍光体1−3の様に、0.03μmの二酸化ケイ素を用いた場合にも、図7に示す様に、粒形が均一で、粒子同士が互いに融着していないものを得ることができた。
【0133】
(実施例2)
1.蛍光体の製造
(1)ケイ酸塩蛍光体2−1
ケイ酸塩蛍光体1−1と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で950℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。次に、得られた粉体に対して0.1wt%の割合でアルミニウムオキサイドC(焼結防止剤、アエロジル製)を混合した。更に、その混合物を、窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間再焼成してケイ酸塩蛍光体2−1を得た。
【0134】
(2)ケイ酸塩蛍光体2−2の製造
ケイ酸塩蛍光体1−2と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で900℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。その後は、ケイ酸塩蛍光体2−1と同様に再焼成してケイ酸塩蛍光体2−2を得た。
【0135】
(3)ケイ酸塩蛍光体2−3の製造
ケイ酸塩蛍光体1−3と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で800℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。その後は、ケイ酸塩蛍光体2−1と同様に再焼成してケイ酸塩蛍光体2−3を得た。
【0136】
(4)比較例2の製造
ケイ酸塩蛍光体1−1と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で950℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。次に、得られた粉体を、窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間再焼成して比較例2を得た。
【0137】
2.評価
上記で得られたケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2について、(1)発光強度、(2)粒子形状について評価した。
【0138】
(1)発光強度の評価
ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、ケイ酸塩蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、比較例2を100とした相対値で求めた。得た結果を表3に示す。
【表3】
【0139】
表3に示すように、比較例2の様に焼結防止剤混合工程を行わずに、再焼成を行った場合と比較すると、蛍光体2−1〜2−3に示すように焼結防止剤混合工程を行った後に再焼成(結晶化工程)を行うことによりケイ酸塩蛍光体の発光強度が高くなるという結果が得られた。
【0140】
(2)粒子形状の評価
次に、上記ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2で得たケイ酸塩蛍光体の走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子形状を確認したところ、上記実施例1と同様に比較例2は、粒子同士が互いに融着した不均一な形状を示すのに対し、ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3は、粒子形状が均一で、使用した二酸化ケイ素(ケイ素系材料)粒子と略同一の形状のケイ酸塩蛍光体が得られている事がわかった。また、その粒径もケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3は、原料として使用した二酸化ケイ素と略同一の粒径であったが、比較例2の平均粒径は増大し、その粒度分布も広いものとなった。
【0141】
(実施例3)
実施例1で製造したケイ酸塩蛍光体1−1と比較例1の蛍光体について、粒子内における構成元素の組成の分布における均一性について評価した。
評価は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、電子線を照射した際に試料から発生する特性X線を解析することで粒子内部組成の定量により行った。
【0142】
まず、各ケイ酸塩蛍光体の試料を50nmの切片として連続的に切り出した。次に、その切片を電子顕微鏡観察用メッシュに載せてカーボン蒸着を施し、透過型電子顕微鏡を用いて特性X線の測定を行った。得られた特性Xの解析からZn、Mn、Siの各切片における含有率の差が、各元素の含有率の理論値の20%以下である粒子を組成分布が微視的に均一な粒子とした。
100個のケイ酸塩蛍光体について同様な測定を行い、組成分布が微視的に均一である粒子の比率を算出した。測定結果を表4に示す。
【表4】
【0143】
表4に示すように、本発明に係る蛍光体1−1の粒子内における構成元素の組成の分布が極めて均一であることが分かる。
【0144】
(実施例4)
実施例1で製造したケイ酸塩蛍光体1−1と比較例1の蛍光体について、粒子内に含有される構成元素の含有率について評価を行った。
まず、二次イオン質量分析(SIMS)装置を用いて、相対感度係数を用いて一個一個の粒子の組成を定量した。次に、粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間における変動係数を100個の粒子を測定して求めた。
なお、変動係数は、各粒子内に含有される構成元素の含有率を測定した際の組成含有率の標準偏差を平均含有率で除した値に100を乗じて求めた。測定結果を表5に示す。
【表5】
【0145】
表5に示すように、本発明に係る蛍光体1−1の粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間における変動が少ないことが分かる。
【0146】
(実施例5)
実施例1で製造した蛍光体1−1〜1−3および比較例1と、下記に示す方法で青色蛍光体Bと、赤色蛍光体Rを製造し、これらの蛍光体を含む蛍光体層を備えたPDPを製造し、白色輝度について評価した。
なお、蛍光体1−1〜1−3および比較例1はそれぞれ組成式Zn2SiO4:Mnで表される緑色蛍光体である。
【0147】
1.蛍光体の製造
(1)青色蛍光体Bの製造
原料として炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化アルミニウム(α−Al2O3)をモル比で1対1対5に配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。そして、適量のフラックス(AlF2,BaCl2)と共にボールミルで混合し、1,600℃で3時間、窒素95%、水素5%の還元雰囲気中で焼成して蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを青色蛍光体Bとした。
【0148】
(2)赤色蛍光体Rの製造
原料として酸化イットリウム(Y2O3)と酸化ガドリニウム(Gd2O3)と硼酸(H3BO3)とを、Y,Gd,Bの原子比で0.60:0.35:1.0となるように配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。適量のフラックスと共にボールミルで混合し、1400℃で3時間、大気雰囲気中で焼成してケイ酸塩蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを赤色蛍光体Rとした。
【0149】
2.蛍光体塗布液の作製
上記方法で得られた青色蛍光体B、赤色蛍光体Rと、蛍光体1−1〜1−3および比較例1のそれぞれを用いて、エチルセルロース、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ターピネオールおよびペンタンジオールの1:1混合液から蛍光体塗布液B、R、G−1〜G−3および比較例Gを作製した。
【0150】
3.PDPの製造
(1)PDP1の製造
上記で調整した青色蛍光体塗布液B、赤色蛍光体塗布液R、緑色蛍光体塗布液G−1を用いて、図1に示す42インチのPDPを以下のように製造した。
まず、前面板10となるガラス基板上に、走査電極11aと維持電極11bとを径が50μmのノズルを用いてインクジェット法により形成した。このとき、ノズル先端と前面板との距離を1mmに保った状態で、ノズル先端を前面板10上の所定の位置を走査しながら電極材インキを吐出して、電極幅60μmの走査電極11aと維持電極11bをそれぞれ形成した。
【0151】
次に、前面板10上に、前記電極11を介して低融点ガラスを印刷し、これを500〜600℃で焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの上に、MgOを電子ビーム蒸着して保護膜13を形成した。
【0152】
一方、背面板20となるガラス基板上に、データ電極21を形成した。データ電極21も、上記と同様に、径が50μmのノズルを用いて、背面板20との距離を1mmに保った上で、所定の位置を走査させながら、60μm幅のものを形成した。次に、このデータ電極の両側方に位置するように、低融点ガラスを用いてストライプ状の隔壁30を形成した。隔壁30同士の間隔(ピッチ)は0.36mmに、隔壁30の高さは0.15mmとした。
【0153】
さらに、前記隔壁30により仕切られたセル31の内側に面する底面31aと前記隔壁30の側面30aとに、上記2.で作製した蛍光体塗布液B、R、G−1を隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序で塗布した。
【0154】
そして、前記電極11、21等が配置された前面板10と上記背面板20とを、それぞれの電極配置面が向き合うように位置合わせし、隔壁30により約1mmのギャップを保った状態で、その周辺をシールガラスにより封止した。そして、前記基板10、20間に、放電により紫外線を発生するキセノン(Xe)と主放電ガスのネオン(Ne)とを混合したガスを封入して気密密閉した。なお、キセノンとネオンの混合体積比は、1:9とし、封入圧力は66.7mPaとした。その後、エージングを行い、PDP1とした。
【0155】
(2)PDP2の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−2を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP2とした。
【0156】
(3)PDP3の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−3を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP3とした。
【0157】
(4)比較例3の製造
緑色蛍光体塗布液として、比較例Gを用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、比較例とした。
【0158】
4.評価
上記において得られたPDP1〜3および比較例のそれぞれについて、パネル全面が点灯している時の放電維持電圧で、周波数30KHzで駆動させた時の輝度を測定し、P−1のパネル輝度を100とした相対値で表した。評価結果を表6に示す。
【表6】
【0159】
表6より、比較例1により製造した蛍光体を用いて緑色蛍光体層を形成する場合と比較すると、本願に係る蛍光体1−1〜1−3を用いて緑色蛍光体層を形成した方が、PDPのパネル輝度も向上することが分かった。
【0160】
また、目視にて確認したところ、比較例3のパネルと比べるとPDP1〜3は発光ムラ等もなく画像を美しく表示することができた。
【0161】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体の粒子同士が互いに融着した不定形状ではないので、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができる。さらに、極めて微粒子であり、かつ、粒子間で形状も揃っているので、PDPの蛍光体層に用いた場合、そのセルの発光強度を向上することができる。
【0162】
請求項2に記載の発明によれば、極めて微粒子の蛍光体で、粒径分布の変動係数の値が小さく、大きさ、形状が粒子間で略同一であるので、どのような用途に用いても輝度の高いムラのない発光を行うことができる。また、PDPのセルに設けられる蛍光体層に密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0163】
請求項3に記載の発明によれば、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上を占めているので、粒子の発光特性が均一になる。したがって、PDPのセルの蛍光体層をこの蛍光体で構成することにより、発光ムラのない秀麗なものとすることができる。
【0164】
請求項4に記載の発明によれば、粒子内における各構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であるので、各粒子が含有する構成元素量のばらつきがなく、ムラのない発光を行うことができる。
【0165】
請求項5に記載の発明によれば、前駆体形成工程においてケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、焼成工程において金属元素をケイ素系材料粒子内に拡散混入させるので、組成の均一な蛍光体を得ることができる。また、前駆体を焼成する際に、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態とするので、得られる蛍光体粒子が互いに融着して不定形状となることを防止することができる。
【0166】
請求項6に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体を製造する際の効率を向上することができる
【0167】
請求項7に記載の発明によれば、液相法により前駆体を形成するので、ケイ素系材料と、ケイ酸塩蛍光体を構成するケイ素以外の金属元素とが液体内で均一に混合することができ、反応条件を整えることによって粒子内で構成元素が均一に拡散、分布し、構成元素の含有率が均一な蛍光体を得ることができる。
【0168】
請求項8記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体は請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果が得られる。
【0169】
請求項9記載の発明によれば、PDPは、請求項1〜5、9のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光体層を有するので、蛍光体層にケイ酸塩蛍光体を密に充填することができ、これによりセルの発光強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例のプラズマディスプレイパネルを示した概略構成図である。
【図2】図1に示したプラズマディスプレイパネルに設けられた電極の配置を示した概略平面図である。
【図3】本発明に係る蛍光体の製造方法において使用する反応装置の一例を示した概略図である。
【図4】実施例1において、原料として使用した二酸化ケイ素を示した走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で製造した蛍光体1−1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例1で製造した蛍光体1−2の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1で製造した蛍光体1−3の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例1の蛍光体を示した走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 プラズマディスプレイパネル
35 蛍光体層
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル等の表示装置や細管型蛍光ランプ等の照明装置等のデバイス、電子機器および各種ケイ酸塩蛍光体使用物品に幅広く使用できるケイ酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体の製造方法およびプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、X線および放射線等)を照射することにより、前記励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光および赤外線等)に変換する材料である。蛍光体は、蛍光塗料、灰皿、文房具、アウトドア用品、案内板、誘導物、安全標識等の標示物等、種々の物品に使用されている。この他に、蛍光ランプ、電子管、蛍光表示管、エレクトロルミネッセンスパネル、シンチレーション検出器、X線イメージインテンシファイア、熱蛍光線量計およびイメージングプレート等の各種のデバイス、冷陰極ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の表示装置にも適用されている(例えば、「蛍光体ハンドブック」、蛍光体同学会編、オーム社参照)。
【0003】
上記で挙げた表示装置のうち、特に、PDPは画面の大型化および薄型化が可能なことから、陰極線管(CRT)に代わり得るフラットパネルディスプレイとして注目されている。PDPは、2枚の電極を備えたガラス基板と、基板間に設けられた隔壁によって形成される多数の微少放電空間(以下、セルという)とを有している。各セルを囲む隔壁の側面と底面(一方のガラス基板)とには、赤、緑、青等に発光する蛍光体層が設けられている。
【0004】
セルは、隔壁により所定形状に形成され、基板上に規則正しく配置され、Xe、Ne等を主成分とする放電ガスが封入されている。セルは、放電の拡がりを一定領域に抑えるものであり、電極間に電圧を印加して放電させると、放電ガスに起因する紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて可視光を発光する。セルあるいはセルの一部を選択的に放電させることにより所望の情報をフルカラーで表示することができる。
【0005】
現在、PDP用の蛍光体として主に使用されているものに、(Y、Gd)BO3:Eu(赤)、Zn2SiO4:Mn(緑)、BaMgAl10O17:Eu(青)等がある。これらの蛍光体は、一般に、固相法により製造されている。固相法とは、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と付活剤元素を含む化合物を所定量混合し、所定の温度で焼成して固相間反応により蛍光体を得る方法(「蛍光体ハンドブック」参照)である。この様にして得られた蛍光体は、個々の粒子形状が扁平形状、あるいは不規則な多面形状のものが一般的である。
【0006】
近年、PDP等のディスプレイの高精細化に伴い、セルが微細化している。所定の輝度を得るためには、各セルに設けられる蛍光体層毎に一定量以上の蛍光体を充填しなければならない。しかしながら、上述の如く粒子形状が扁平状、あるいは不規則な多面状であると、それだけ蛍光体層が厚くなってしまう。蛍光体層の厚さが厚い場合、蛍光体から発する光の散乱が大きくなるばかりでなく、放電空間も狭められ、蛍光体を励起するために十分な紫外線を発生することができなくなる。特に、緑色蛍光体は視感度が高く、緑色セルの輝度向上が求められている。
【0007】
そこで、蛍光体層に緑色蛍光体を密に充填するために、例えば、粒子形状が球状またはほぼ球状のポリメチルシルセスオキ酸を基体として球状の蛍光体(Zn2SiO4:Mn)を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−278446号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PDPのセル構造の微細化に伴い、より微粒な蛍光体粒子が求められているが、特許文献1には固相法により粒径の比較的大きな(4.5μm〜2μm)球形の蛍光体を得る方法しか開示されていない。特許文献1記載の方法は固相法であるので、より微粒の蛍光体を製造する際には粉砕等の工程を行う必要があり、このときに蛍光体粒子の形状が均一でなくなる恐れがある。また、粉砕工程時に結晶歪みなどを引き起こし、発光強度が低下する場合もある。さらに、原料となる粉体を乾式で混合するため、構成元素の組成を均一に制御するのは困難であり、付活剤を蛍光体の母核粒子内に均一に拡散混入させることは困難であり、十分な発光強度が得られない恐れがあった。
【0010】
本発明の課題は、形状が均一で発光強度が高く発光ムラのない微粒子のケイ酸塩蛍光体およびその製造方法並びにそのケイ酸塩蛍光体を用いたPDPを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、平均粒径が0.01〜1μmであり、粒子同士が互いに融着されていないことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に金属元素が拡散混入されており、粒子同士が互いに融着した不定形状ではないので、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができ、各種用途に好適に用いることができる。
【0013】
さらに、平均粒径が0.01〜1μmの極めて微粒子であり、かつ、粒子間で形状も揃っているので、セル構造の微細化が進むPDPの蛍光体層においても密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、平均粒径が0.01〜1μmであり、粒径分布の変動係数の値が40%以下であり、個々の粒子形状が略同一であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、平均粒径が0.01〜1μmの極めて微粒子の蛍光体であり、粒径分布の変動係数が40%以下であり、大きさ、形状が粒子間で略同一であるので、どのような用途に用いても輝度の高いムラのない発光を行うことができる。また、PDPのセルに設けられる蛍光体層に密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のケイ酸塩蛍光体において、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上を占めているので、粒子の発光特性が均一になる。したがって、PDPのセルの蛍光体層をこの蛍光体で構成することにより、発光ムラのない秀麗なものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体において、粒子内における構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、粒子内における各構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であるので、各粒子が含有する構成元素量のばらつきがなく、ムラのない発光を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、ケイ酸塩蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成する前駆体形成工程と、前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させたケイ酸塩蛍光体を得る焼成工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前駆体形成工程においてケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、焼成工程において金属元素をケイ素系材料粒子内に拡散混入させるので、組成の均一な蛍光体を得ることができる。
【0022】
また、前駆体を焼成する際に、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態とするので、得られる蛍光体粒子が互いに融着して不定形状となることを防止することができる。このため、粒径分布の変動係数の少ない、粒子間で形状の揃ったケイ酸塩蛍光体を得ることができる。
また、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、前記焼成工程は、前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で前駆体の焼成を行い、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させる金属元素拡散混入工程と、前記金属元素拡散混入工程で得られた焼成物に焼結防止剤を混合する焼結防止剤混合工程と、前記焼結防止剤混合工程で得られた混合物を再焼成することにより結晶化されたケイ酸塩蛍光体を得る結晶化工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体を製造する際の効率を向上することができる。すなわち、ケイ素系材料の融着が実質的に起こらない状態でケイ素系材料に金属元素を拡散混入させるには、ケイ素系材料の融点以下の温度で焼成しなければならない。一方、蛍光体を所望の状態まで結晶化するには所定のエネルギー量を必要とするので、低い温度で焼成すると長時間焼成を行わなければならない。しかし、本発明では、金属元素拡散混入工程後、得られた焼成物に焼結防止剤を混合するので、結晶化工程は粒子の融着を防止した状態で金属元素拡散混入工程よりも高い焼成温度で焼成することができる。よって、蛍光体の製造に係る効率を向上することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、前記前駆体形成工程は液相法により行うことを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、液相法により前駆体を形成するので、ケイ素系材料と、ケイ酸塩蛍光体を構成するケイ素以外の金属元素とが液体内で均一に混合することができ、反応条件を整えることによって粒子内で構成元素が均一に拡散、分布し、構成元素の含有率が均一な蛍光体を得ることができる。
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法により得られたことを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体は請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果が得られる。
【0029】
請求項9に記載の発明のプラズマディスプレイパネルは、請求項1〜4、8のいずれかに一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光層を有することを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の発明によれば、PDPは、請求項1〜5、9のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光体層を有するので、蛍光体層にケイ酸塩蛍光体を密に充填することができ、これによりセルの発光強度を向上することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るケイ酸塩蛍光体は、蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子内に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素(以下、「金属元素」という。)が拡散混入されてなる。
【0032】
ここで、ケイ素系材料とは、ケイ素(単体)またはケイ素化合物をいう。また、ケイ酸塩蛍光体の母核とは、実質的にはケイ素系材料を指し、焼成前後で粒径・形状変化がほとんどない粒子のことをいう。
【0033】
上記金属元素として、例えば、Zn、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Zr、Al、Ga、La、Ce、EuおよびTbからなる群から選ばれる一種以上の金属元素を挙げることができる。これらの金属元素は、製造するケイ酸塩蛍光体の組成に応じて、適宜、選定することができる。例えば、Zn2SiO4:Mnの組成式で示されるケイ酸塩蛍光体を製造する場合には、ZnおよびMnを選べばよい。これらの金属元素を適宜選定して用いることにより、目的の発光を有するケイ酸塩蛍光体を得ることができる。
【0034】
そのようなケイ酸塩蛍光体として、具体的には、Zn2SiO4:Mn/(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu/(Ba,Mg)2SiO4:Eu/Y2SiO5:Ce,Tb/Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu/Zr2SiO4,MgAl11O19:Ce,Tb/Ba2SiO4:Eu/Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu等を挙げることができる。
【0035】
本発明に係るケイ酸塩蛍光体の個々の粒子は互いに融着されておらず、その形状(粒形)は略同一である。粒形は球状、棒状、平板状等、どのような形状であってもよい。
【0036】
本発明におけるケイ酸塩蛍光体の平均粒径は0.01〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.01〜0.5μmの範囲であり、更に好ましくは0.01〜0.3μmの範囲である。
【0037】
平均粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる、正常晶の場合には、粒子の綾の長さをいう。また、正常晶ではない場合、例えば、球状、棒状あるいは平板状の場合には、粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0038】
粒子は単分散であることが好ましい。単分散であるとは、具体的には、下記式(1)で求められる粒径分布の変動係数の値が小さいことを指す。具体的には、粒径分布の変動係数の値は40%以下であることが好ましく、30%以下であるとより好ましく、0.1〜20%であると更に好ましい。
〔式1〕
粒径分布の変動係数=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100 (1)
【0039】
本発明において、ケイ素系材料粒子内に金属元素が均一に拡散混入していることが好ましく、具体的には、ケイ酸塩蛍光体の粒子内において、ケイ酸塩蛍光体を構成する構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上であることが好ましく、60%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0040】
ここで、粒子内における構成元素の組成の分布が均一であるとは、1つの蛍光体粒子内のどの領域においてもその組成が微視的に一定であることを示す。より具体的には後述する微視的な分布の測定方法において、ある組成の各切片における含有率の差が、その組成の含有率の理論値の20%以下であることをいう。
【0041】
粒子内における組成の微視的な分布の測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、電子線を照射した際に試料から発生する特性X線を解析することにより一個一個の粒子の内部組成分布を測定することができる。試料となるケイ酸塩蛍光体粒子を例えば厚さ50nm程度の切片として連続的に切り出し、その切片を電子顕微鏡観察用のメッシュに載せてカーボン蒸着を施し、透過法で観察を行うことが可能である。
【0042】
組成分布が微視的に均一である粒子の比率を算出する方法としては、少なくとも100個のケイ酸塩蛍光体粒子について透過型電子顕微鏡写真によって上記と同様に内部組成分布を測定し、ある組成の各切片における含有率の差が、その組成の含有率の理論値の20%以下である粒子が占める比率を算出すればよい。
【0043】
さらに、粒子内における構成元素の含有率の粒子間分布の変動率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることが更に好ましく、15%以下であることが最も好ましい。
【0044】
粒子内に含有される構成元素の含有率を測定する方法としては、サブミクロン〜ナノメートルオーダーの高い分解能を有する二次イオン質量分析(SIMS)装置を用いて一個一個の粒子の組成を測定することができる。このとき、本発明に係るケイ酸塩蛍光体粒子を試料台に乗せ、カーボンなどを蒸着させて測定することが好ましい。また、特に粒径1μm以下のケイ酸塩蛍光体粒子を測定する場合には、粒子を一定の厚さに押しつぶして測定することも可能である。
【0045】
粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数は、二次イオン質量分析装置により少なくとも100個のケイ酸塩蛍光体粒子の各粒子内に含有する構成元素の含有率を測定した際の組成含有率の標準偏差を平均含有率で除した値に100を乗じて求めることができる。
【0046】
次に、上記ケイ酸塩蛍光体を製造する方法について説明する。
本発明に係るケイ酸塩蛍光体の製造方法は、ケイ酸塩蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子の周囲に、金属元素(焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得るもの)を均一な組成で含む前駆体を形成する前駆体形成工程と、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、ケイ素系材料粒子内部に金属元素を拡散混入させたケイ酸塩蛍光体を得る焼成工程とを含む。
【0047】
まず、前駆体形成工程について説明する。
前駆体形成工程では、ケイ酸塩蛍光体の原料となる元素を分散または溶解した分散液または溶液を混合することにより、前駆体を形成するいわゆる液相法で行うことが好ましい。前駆体形成工程は構成元素を均一に混合することができれば固相法により行ってもよいが、固相法は製造時に機械的な分散・粉砕工程を行うため微粒子の蛍光体を製造しようとすると結晶欠陥等が生じ、輝度特性等の劣化を招く恐れがある。これに対して、液相法は、機械的な分散・粉砕工程がない他、蛍光体の構成元素を液相中で均一に混合することができるので、反応時のケイ酸塩蛍光体を構成する各イオンの分散が極めて良好になる。その結果、化学量論的に高純度で、ケイ素系材料粒子の周囲に析出する金属元素の組成も均一になりやすい。また、液相間反応であるため反応効率も高い。
【0048】
ケイ酸塩蛍光体の原料となる元素とは、ケイ素と、上述の焼成することによりケイ素系材料と共にケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を指す。ケイ素およびこれらの金属元素は、単体であってもよいし、酸化物あるいは塩化物や硝酸塩等の各種金属化合物であってもよい。
【0049】
液相法としては、共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法等の一般的な液相法を用いる事が出来るが、特に、シリカ等のケイ素化合物(ケイ素系材料)を前駆体の母核とし、共沈法により前駆体を形成すると好ましい。このように前駆体を形成することにより、より発光強度に優れるケイ酸塩蛍光体を得ることができる。また、反応晶析法又はゾルゲル法により前駆体を形成する際には、より微粒で粒径分布の狭い蛍光体を得るという観点から、後述する保護コロイド添加の下で行うことが好ましい。
【0050】
まず、共沈法について説明する。共沈法とは、共沈現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液を混合し、さらに沈殿剤を添加することによって、蛍光体前駆体の母核の周囲に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素等を析出させた状態で、蛍光体前駆体を合成する方法を言う。ここで、共沈現象とは、溶液から沈殿を生じさせたとき、その状況では十分な溶解度があり、沈殿しないはずのイオンが沈殿に伴われる現象をいう。蛍光体の製造においては、蛍光体前駆体の母核の周囲に、付活剤を構成する金属元素などが析出する現象を指す。
【0051】
以下において、この共沈法を利用して、ケイ素系材料粒子を前駆体の母核としてケイ酸塩蛍光体を製造する方法をシリカ母核法という。
【0052】
シリカ母核法により前駆体を形成するには、ケイ素系材料を液体に分散させたケイ素系液状物と、金属元素を液体に陽イオンの状態で溶解させたもの、あるいは液体に金属元素を固体のまま分散させた金属系液状物とを混合する。
【0053】
シリカ母核法においては、ケイ素系材料として二酸化ケイ素(シリカ)を特に好ましく使用できる。二酸化ケイ素としては、例えば、気相法シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等を用いることができる。コロイダルシリカの場合は、特にアニオン性のものが好ましい。
【0054】
本発明におけるケイ素系材料粒子の1次粒径または2次凝集粒径は、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下、最も好ましくは0.01μm以下である。ケイ素系材料粒子の1次粒径または2次凝集粒径を制御することにより、焼成後のケイ酸塩蛍光体の平均粒径を所望の大きさとすることができる。
【0055】
なお、1次粒径とは、ひとつの結晶子を1次粒子としたときのその粒径を指す。また、2次凝集粒径とは、液体中でケイ素系材料の1次粒子同士が凝集することにより形成された2次凝集粒子の粒径をいう。
【0056】
ケイ素系材料を分散させる液体としては、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、水またはアルコール類またはそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであっても良く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、比較的ケイ素系材料が分散しやすいエタノールが好ましい。
【0057】
ここで、「ケイ素系材料を実質的に溶解しない」とは、液体に対するケイ素系材料の溶解度が0.1%以下の範囲を指す。
【0058】
ケイ素系材料の液体中での分散状態や前記二次凝集粒径等をあらかじめ調整し、所望の状態とすることが望ましい。
また、上記したコロイダルシリカを用いる場合には、液体中での粒径および分散状態があらかじめ調製されているので、適宜、適切なものを使用すればよい。
【0059】
このようにケイ素系液状物をあらかじめ調整するか、コロイダルシリカを用いることにより、液体中のケイ素系材料の分散状態を良好にし、二次凝集粒径等も一定になる。
【0060】
次に、金属系液状物について説明する。
金属元素を溶解又は分散させる液体は、ケイ素系材料を実質的に溶解しなければどのようなものでもよく、上記と同様に、水若しくはアルコール類又はそれらの混合物であることが好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。特に、エタノールが好ましい。
【0061】
上記シリカ母核法において、ケイ素系液状物と、金属系液状物とを混合する際に、金属元素と反応して沈殿物を形成する沈殿剤を含む溶液を混合してもよい。
【0062】
ここで、沈殿剤を含む溶液とは、以下に示す沈殿剤を水若しくはアルコール類又はそれらの混合物に溶解させたものを指す。アルコール類として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられ、ケイ素系材料を分散させるものならばいかなるものであってもよい。
【0063】
沈殿剤としては、有機酸または水酸化アルカリを好ましく使用できる。有機酸または水酸化アルカリは金属元素と反応し、沈殿物として有機酸塩または水酸化物を形成する。このとき、これらの沈殿物が母核となるケイ素系材料の周囲に析出していることが好ましい。
【0064】
また、使用する沈殿剤の量としては、金属元素が有機酸塩または水酸化物等の沈殿物として析出するのに必要な化学量論量の1倍以上が好ましい。
【0065】
有機酸としては、カルボン酸基(−COOH)を有するものが好ましく、具体的には、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等が挙げられる。また、加水分解等により、シュウ酸、蟻酸、酢酸、酒石酸等を生じるものであってもよい。
【0066】
水酸化アルカリとしては、水酸基(−OH)を有するもの、あるいは水と反応して水酸基を生じたり、加水分解により水酸基を生じたりするものであればいかなるものでもよく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、尿素等が挙げられる。この中で、アンモニアが好ましく使用され、特に好ましくはアルカリ金属を含まないアンモニアである。
【0067】
次に、反応晶析法およびゾルゲル法について説明する。
反応晶析法とは、晶析現象を利用して、ケイ酸塩蛍光体の前駆体の原料となるケイ素系材料およびケイ素以外の金属元素を含む溶液を混合することによって前駆体を合成する方法をいう。これらは、例えば、塩化物や硝酸塩、硫酸塩等であると好ましく、陽イオンの状態で溶媒に溶解させると好ましい。例えば、ケイ素系材料としては、メタケイ酸ナトリウムを好ましく使用することができる。
【0068】
なお、晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的又は化学的な環境の変化、あるいは化学反応によって混合系の状態に変化を生じる場合等に液相中から固相が析出してくる現象を指す。
本発明における反応晶析法による前駆体の製造方法は、上記の様な晶析現象発生の誘因となりえる物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
【0069】
ゾルゲル法とは、一般に、前駆体の原料となるケイ素系材料およびケイ素以外の金属元素を金属アルコキシド若しくは金属錯体又はそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩、金属単体等として必要量混合し、熱的又は化学的に重縮合することによる製造方法をいう。例えば、ケイ素系材料としては、ケイ素を金属アルコキシドとして用いたSi(OCH3)4等を使用することができる。
【0070】
上記の反応晶析法やゾルゲル法を適用する際の溶媒は反応原料が溶解すれば何を用いてもよいが、過飽和度制御のしやすさの観点から水が好ましい。また、ゾルゲル法の場合、水とエタノール等のアルコール類との混合溶液も好ましい形態である。反応原料の溶媒への添加順序は同時でも異なってもよく、活性によって適切な順序を適宜組み立てることができる。
【0071】
また、上記の反応晶析法やゾルゲル法等を用いて前駆体を形成する際には、反応温度、添加速度や添加位置、攪拌条件、pH等、諸物性値を調整すると好ましい。平均粒径制御のために保護コロイドや界面活性剤などを添加することも好ましい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮、または熟成することも好ましい態様の1つである。
【0072】
特に、保護コロイドを添加することにより、前駆体粒子の粒径や凝集状態を制御することができ、焼成後の蛍光体粒子の平均粒径を0.01〜1.0μmの範囲の所望の大きさにすることができるので好ましい。
【0073】
そのような保護コロイドとしては、天然、人工を問わず各種高分子化合物を使用することができるが、特にタンパク質が好ましい。その際、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。
【0074】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が上げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等がある。中でも、ゼラチンを特に好ましく使用できる。
【0075】
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。更に、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0076】
また、前記保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
【0077】
保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができる。原料溶液の全てに添加してもよい。保護コロイドの存在下で、前駆体を形成することにより、前駆体同士が凝集するのを防ぎ、前駆体を十分小さくすることができる。それにより、焼成後の蛍光体をより微粒子で、粒径分布が狭く、発光特性を良好にするなど、蛍光体の種々の特性を向上することができる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0078】
上記の共沈法、反応晶析法、ゾルゲル法いずれの液相合成法を利用する場合であっても、前駆体形成工程において、各液を均一に混合することが望ましい。各液の混合方法は特に限定されるものではないが、例えば、攪拌による混合方法は、混合状態等を制御しやすく、低コストであるので好ましい。また、混合方法としてはバッチ式、連続式、外部循環混合等どのような方法でもよい。
【0079】
具体的には、ケイ素系液状物を母液(グランド)とし、母液を撹拌しながらその中に金属系液状物を添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器に金属系液状物を添加する方法、または、ケイ素系材料を含まない溶液を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にケイ素系液状物と金属系液状物とをダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にケイ素系液状物と金属系液状物とをダブルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0080】
また、沈殿剤を含む溶液を添加する場合においても、いかなる方法、順序に従ってケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とを混合してもよい。具体的には、ケイ素系液状物を母液とし、母液を撹拌しながらその中に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中にもうけた混合器に他の液をダブルジェットで同時に添加する方法、またはケイ素系材料を含まない液体を母液とし、母液を攪拌しながらこの中にケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にケイ素系液状物と、金属系液状物と、沈殿剤を含む溶液とをトリプルジェットで同時に添加する方法などが挙げられる。このような方法で混合すると、ケイ素系材料を液体中に良好に分散させた状態で反応を行うことができ好ましい。
【0081】
沈殿剤を含む溶液の有無に関わらず、これらの液の添加位置は母液表面でも母液中でもどちらでもよく、より均一な混合という観点から母液中が好ましい。更に撹拌レイノルズ数は、1,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上が好ましい。攪拌レイノルズ数を1,000以上にすることにより、各液をより均一に混合することができる。
【0082】
上記の前駆体形成工程終了後、焼成工程に先だって乾燥工程を行うと好ましい。乾燥温度としては、20〜300℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは30〜200℃である。直接乾燥させる方法としては、エバポレーションや、顆粒化しながら乾燥させるスプレードライを挙げることができる。
【0083】
また、乾燥工程において、前駆体を乾燥する前に、必要に応じて不溶な塩類を濾過水洗、膜分離等の既存の方法により除去することが好ましい。更にその後、濾過や遠心分離等の方法により前駆体を液体から分離することが好ましい。
【0084】
次に、焼成工程について説明する。
【0085】
本発明における焼成工程とは、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらないように制御した状態で前駆体を焼成し、ケイ素系材料粒子の周囲に析出した金属元素を粒子内部に拡散混入させた蛍光体を得る工程をいう。
【0086】
前駆体形成工程において、ケイ素系材料粒子の周囲に均一な組成で金属元素を析出させることができるので、焼成条件をコントロールすることにより粒子内部にも均一に金属元素を拡散混入させることができる。また、前駆体形成工程においては機械的な混合・粉砕工程等を行わないことから、粒子形状も使用したケイ素系材料粒子の形状に依存した略一定形状のものとすることができる。
【0087】
ここで、「ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態」とは、焼成後に得られた粒子(焼成物)のうち少なくとも90%以上の粒子に関して、粒子同士の融着が起こっていない状態を言う。
【0088】
ケイ素系材料粒子の融着は、その粒径と焼成温度に大きく関係している。例えば、ケイ素系材料粒子の粒径が0.01〜0.1μmの場合、焼成温度は400〜800℃であることが好ましく、ケイ素系材料粒子の粒径が0.1〜0.5μmの場合、焼成温度は600〜1000℃であることが好ましく、ケイ素系材料粒子の粒径が0.5〜1μmである場合、焼成温度は800〜1200℃であることが好ましい。
【0089】
上記温度条件で、0.5〜100時間の範囲で1回以上焼成することが好ましい。これにより、ケイ素系材料粒子同士が互いに融着せず、金属元素をケイ素系材料粒子内部に拡散混入させることができる。
【0090】
以上の温度条件で所定の結晶化度となるまで焼成を行うことにより、上述した本発明に係る形状が均一で発光強度が高く、発光ムラのない微粒子のケイ酸塩蛍光体を得ることができるが、生産効率の向上の観点から、焼成工程を(1)金属元素拡散混入工程と、(2)焼結防止剤混合工程と、(3)結晶化工程とに分けると好ましい。
【0091】
(1)金属元素拡散混入工程は、上記のように、ケイ素系材料粒子の粒径に応じた焼成温度で、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、その内部に金属元素を十分に拡散させる工程である。
【0092】
(2)焼結防止剤混合工程は、(1)の金属元素拡散工程終了後、得られた粉体(焼成物)に焼結防止剤を混合する工程である。
【0093】
焼結防止剤は、粒子同士の融着を防止するために加えられるものであり、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物、炭化珪素、炭化タングステン、炭化タンタル等の炭化物など高温度下で化学的に安定な金属化合物の一種以上からなることが好ましい。
【0094】
(3)結晶化工程では、(2)の焼結防止剤混合工程により得られた混合物を再焼成することにより、蛍光体を結晶化させ、その結晶化度を高める工程である。
【0095】
焼結防止剤が混合されているので、(1)の金属元素拡散工程における焼成温度よりも高い温度で焼成しても、粒子同士の融着を防ぐことができ、短時間で所望の結晶化度のケイ酸塩蛍光体を得ることができる。なお、再焼成温度は、1000〜1400℃の温度範囲、0.5〜5時間の範囲で1回以上焼成することが好ましい。
【0096】
なお、上記(1)の金属拡散混入工程において焼結防止剤を添加すると、焼結防止剤が作用してケイ素系材料粒子内に金属元素が拡散混入するのが阻まれる恐れがあり、好ましくない。
一方、(3)の結晶化工程において焼結防止剤を添加しないで行うと、焼成温度が高いため、粒子同士が融着する恐れがあり、好ましくない。
【0097】
上記焼成工程において、Zn2SiO4:Mn等の前駆体を焼成する場合は、不活性雰囲気中で焼成を行うことが好ましい。更に必要に応じて、大気雰囲気(もしくは酸素雰囲気)、還元雰囲気を組み合わせてもよい。還元雰囲気を組み合わせる場合には、結晶中からの亜鉛等の金属元素の蒸発を防止するために800℃以下の温度で焼成することが好ましい。還元性雰囲気を得る方法として、前駆体の充填されたボート内に黒鉛の塊を入れる方法、窒素−水素の雰囲気中、あるいは希ガス・水素の雰囲気中で焼成する方法等が挙げられる。これらの雰囲気に水蒸気が含まれていてもよい。
【0098】
焼成工程終了後、得られたケイ酸塩蛍光体に、分散、水洗、乾燥、篩い分け等の処理を行ってもよい。
【0099】
上記の方法で製造したケイ酸塩蛍光体は蛍光ランプ、蛍光表示管等の各種デバイス、PDP、FED等の各種表示装置、あるいは、蛍光塗料、灰皿、文房具、アウトドア用品、案内板、誘導物、安全標識等のケイ酸塩蛍光体使用物品に好適に使用することができる。
【0100】
以下、図1を参照して、本発明に係るケイ酸塩蛍光体を用いた表示装置の一例としてプラズマディスプレイパネルを説明する。なお、PDPには、電極の構造および動作モードから大別すると、直流電圧を印加するAC型と、交流電圧を印加するDC型のものとがあるが、図1には、AC型PDPの構成概略の一例を示した。
【0101】
図1に示す2枚の基板10、20のうち、一方は表示側に配置される前面板10であり、他方は背面側に配置される背面板20である。前面板10と背面板20は、この基板10、20間に設けられる隔壁30によって所定間隔をあけて対向配置されている。
【0102】
まず、前面板10側の構成について説明する。
前面板10は、例えばソーダライムガラス等の可視光を透過する材料から形成することができる。前面板10の、背面板20に対向する対向面には、図1に示すように、電極11、誘電体層12、保護層等が備えられている。
【0103】
前面板10に設けられた電極11は、1組の走査電極11aと維持電極11bとからなり、それぞれの電極11a、11bは帯状に形成されている。走査電極11aと維持電極11bは所定の放電ギャップをあけて設けられている。蛍光体を発光させるためのプラズマ放電は、これらの走査電極11aと維持電極11bとの間の面放電により行われる。
【0104】
電極11は、図2に示すように、前面板10の端10cから端10dまで連続して横切るように設けられ、互いに所定間隔をあけて規則正しく配置されている。各電極11はそれぞれパネル駆動回路15に接続されており、所望の電極11に電圧を印加することができる。
【0105】
図1に示すように、これらの電極11が配された前面板10の表面全体を覆うように、誘電体層12が設けられている。誘電体層12は誘電物質からなり、一般に、鉛系低融点ガラスから形成されることが多い。この他に、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等で誘電体層12を形成しても良い。
【0106】
誘電体層12の表面は保護層13により全体的に覆われている。保護層13は、酸化マグネシウム(MgO)からなる薄層が好ましい。
【0107】
次に、背面板20側の構成について説明する。
背面板20は前面板10と略同一のサイズに形成されており、前面板10と同様にソーダライムガラス等から形成することができる。背面板20の前面板10と対向する面には、複数のデータ電極21、誘電体層22、隔壁30等が備えられている。
【0108】
データ電極21は、前記電極11と同様に帯状に形成されており、所定間隔毎に設けられている。データ電極21の両側には前記隔壁30が設けられている。データ電極21は、図2に示すように、背面板20の中央部24で、分割されており、それぞれがパネル駆動回路25a、25bに接続されている。このパネル駆動回路25により、所望の電極21に電圧を印加することができる。
【0109】
図1に示すように、背面板20のデータ電極21が配された表面全体は誘電体層22により覆われている。誘電体層22は、誘電体層12と同様に、鉛系低融点ガラスや、ビスマス系低融点ガラス、あるいは鉛系低融点ガラスとビスマス系低融点ガラスの積層物等から構成することができる。さらに、これらの誘電物質にTiO2粒子を混合し、可視光反射層としての働きも兼ねるようにすると好ましい。誘電体層22をこのように可視光反射層としても機能させると、蛍光体層35からの背面板20側に発光しても、これを前面板10側に反射して、前面板10を透過する光を増やし、輝度を向上させることができる。
【0110】
上記の誘電体層22の上面には隔壁30が背面板20側から前面板10側に突出するように設けられている。隔壁30は基板10、20間の空間を所定形状に複数区画して、前述したように放電セル31を形成している。隔壁30は、ガラス材料等の誘電物質から形成される。
【0111】
放電セル31は、上記のように隔壁30と基板10、20とによって囲まれた放電空間であり、放電セル31の内側に面する隔壁30の側面30aと放電セルの底面31aには、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに発光する蛍光体層35がR、G、Bの順に規則正しく設けられる。放電セル31内部には、希ガスを主体とする放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、特にNeを主放電ガスとし、これに放電により紫外線を発生するXeを混合した混合ガスを用いると好ましい。なお、混合ガスを封入するときの封入圧力は特に限定されるものではないが、例えば、66.7mPa程度が好ましい。
【0112】
図1に示した放電セル31は、いわゆるストライプ型のものであり、隔壁30が前記したデータ電極21の両側に設けられ、この隔壁30により平行な溝状に形成されたものである。
【0113】
ここで、放電セル31と、電極11、21の配置について説明する。
図2に示すように、電極11とデータ電極21は、平面視において互いに直交し、マトリックス状になっている。一つの放電セル31内には、電極11とデータ電極21との交点が多数設けられている。この電極11とデータ電極21の交点で選択的に放電させることができ、これにより所望の情報が表示可能となっている。以下、一つのセルの体積をセル内の電極の交点の数で分割したセルの空間を最小発光単位という。PDP1では、近接するR、G、Bの3つの最小発光単位で1画素となる。
【0114】
本発明において、R、G、Bの少なくともいずれか一色の蛍光体層は、本発明に係るケイ酸塩蛍光体を含有する。蛍光体層の形成に際しては、従来から公知の種々の方法を用いることができる。例えば、隔壁30により区画された放電セル31の底面(アドレス電極21上)と側面とにペースト状に調整した蛍光体を塗布又は充填し、蛍光体ペーストを乾燥又は焼成して、ペースト中の有機成分を除去することにより蛍光体層を形成することができる。
【0115】
なお、蛍光体をペースト状に調整する際には、蛍光体に溶剤、バインダー樹脂、分散剤等を適宜混合すればよい。
【0116】
また、蛍光体ペーストを隔壁間に塗布又は充填する方法としては、スクリーン印刷法、フォトレジストフィルム法、インクジェット法など種々の方法を使用することができる。中でも、高精細なリブ構造では隔壁のピッチも細かくなり、その隔壁間に低コストで容易に精度良く均一に蛍光層を形成する塗布方法として、特にインクジェット法を適用するのが好ましい。
【0117】
本発明に係るPDP1等のディスプレイは、本発明の製造方法により得たケイ酸塩蛍光体を用いて蛍光体層を構成することにより、パネル輝度を向上させることができる。特に、ケイ酸塩蛍光体のうち緑色発光のものを用いると、視感度の高い緑色セルの発光強度を向上させることができるので、白色輝度が向上する。
【0118】
さらに、本発明に係るケイ酸塩蛍光体は粒径が小さく、略均一形状を有するため、例えば、PDP1の放電セル31G等の微小放電空間内に効率良く、ケイ酸塩蛍光体を塗布することが可能となる。したがって、よりディスプレイ等の輝度を向上させることができる。
【0119】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに何等限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
1.蛍光体の製造
(1)ケイ酸塩蛍光体1−1の製造
まず、二酸化ケイ素(日産化学工業株式会社製スノーテックスMP−4540M、40wt%、粒径0.5μm)11.27gを純水516.29gに混合してA液を調整した。同時に、硝酸亜鉛6水和物42.39gと硝酸マンガン6水和物2.15gを純水51.84gに溶解してB液を調整した。さらに、アンモニア水(28%)21.90gを純水50.67gに混合してC液を調整した。
【0121】
なお、使用した二酸化ケイ素の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。図4から明らかなように、二酸化ケイ素粒子は球状を呈し、その粒径や粒子形状が揃っていることが分かる。
【0122】
次に、図3に示す反応装置100を用いて、A液を撹拌しながら、ローラーポンプ110を使ってB液とC液を10cc/minの添加速度でA液表面にダブルジェットで同時添加した。B液、C液の添加終了後、吸引濾過により固液分離を行いながら、純水を用いて十分に洗浄を行った。次いで、40℃、50時間乾燥を行い、乾燥済み前駆体を得た。
【0123】
次に、得られた前駆体を窒素100%の雰囲気中で900℃、50時間焼成し、ケイ酸塩蛍光体1−1を得た。
【0124】
(2)ケイ酸塩蛍光体1−2の製造
二酸化ケイ素を日産化学工業株式会社製スノーテックスMP−2040(40wt%、粒径0.2μm)に変更し、前駆体の焼成を850℃、70時間行う以外は上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にしてケイ酸塩蛍光体1−2を得た。
【0125】
(3)ケイ酸塩蛍光体1−3の製造
二酸化ケイ素を日産化学工業株式会社製スノーテックスO−40(40wt%、粒径0.03μm)に変更し、前駆体の焼成を750℃、90時間行う以外は上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にしてケイ酸塩蛍光体1−4を得た。
【0126】
(4)比較例1の製造
前駆体の焼成を1200℃、3時間行う以外は、上記(1)のケイ酸塩蛍光体1−1と同様にして蛍光体(比較例1)を得た。
【0127】
2.評価
上記で得られたケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3と比較例1とについて、(1)発光強度、(2)粒子形状について評価した。
【0128】
(1)発光強度の評価
ケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3および比較例1にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、ケイ酸塩蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、比較例1を100とした相対値で求めた。得た結果を表1に示す。
【表1】
【0129】
表1より、本発明に係る焼成工程のように、ケイ素系材料粒子の周囲に金属元素を均一な組成で含む前駆体を、ケイ素系材料粒子同士が互いに融着しない温度で焼成することにより、金属元素を粒子内に均一に拡散混入させて結晶化することによりケイ酸塩蛍光体の発光強度が高くなるという結果が得られた。
【0130】
(2)粒子形状の評価
次に、上記ケイ酸塩蛍光体1−1〜1−3と、比較例1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図5〜8に示す。
また、走査型電子顕微鏡写真に写された蛍光体粒子を無作為に100個選択して求めた平均粒径を表2に示す。
【表2】
【0131】
比較例1の製造方法により得られた蛍光体は図8に示すように、粒子同士が互いに融着した不定形状を示し、粒子間における粒子形状は不均一であった。また、使用した二酸化ケイ素(図4)とも形状が大きく異なっており、その平均粒径は0.5μmから1.58μmに増大し、粒度分布にもばらつきが生じた。
【0132】
これに対して、図5〜7に示す様に、蛍光体1−1〜1−3は、粒子形状が均一であり、使用した二酸化ケイ素の形状と略同一なものを得ることができた。
また、その平均粒径も原料として用いた二酸化ケイ素の平均粒径と略同一で、粒度分布のばらつきも少なかった。蛍光体1−3の様に、0.03μmの二酸化ケイ素を用いた場合にも、図7に示す様に、粒形が均一で、粒子同士が互いに融着していないものを得ることができた。
【0133】
(実施例2)
1.蛍光体の製造
(1)ケイ酸塩蛍光体2−1
ケイ酸塩蛍光体1−1と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で950℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。次に、得られた粉体に対して0.1wt%の割合でアルミニウムオキサイドC(焼結防止剤、アエロジル製)を混合した。更に、その混合物を、窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間再焼成してケイ酸塩蛍光体2−1を得た。
【0134】
(2)ケイ酸塩蛍光体2−2の製造
ケイ酸塩蛍光体1−2と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で900℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。その後は、ケイ酸塩蛍光体2−1と同様に再焼成してケイ酸塩蛍光体2−2を得た。
【0135】
(3)ケイ酸塩蛍光体2−3の製造
ケイ酸塩蛍光体1−3と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で800℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。その後は、ケイ酸塩蛍光体2−1と同様に再焼成してケイ酸塩蛍光体2−3を得た。
【0136】
(4)比較例2の製造
ケイ酸塩蛍光体1−1と同様の方法で得られた乾燥済み前駆体を、先ず、窒素100%の雰囲気中で950℃、3時間焼成して二酸化ケイ素中に他の金属元素を拡散混入させた。次に、得られた粉体を、窒素100%の雰囲気中で1200℃、3時間再焼成して比較例2を得た。
【0137】
2.評価
上記で得られたケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2について、(1)発光強度、(2)粒子形状について評価した。
【0138】
(1)発光強度の評価
ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2にそれぞれ0.1〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射して、ケイ酸塩蛍光体から緑色光を発光させた。次に、得られた緑色光を検出器(MCPD−3000(大塚電子株式会社製))を用いてその強度を測定した。そして、発光のピーク強度を、比較例2を100とした相対値で求めた。得た結果を表3に示す。
【表3】
【0139】
表3に示すように、比較例2の様に焼結防止剤混合工程を行わずに、再焼成を行った場合と比較すると、蛍光体2−1〜2−3に示すように焼結防止剤混合工程を行った後に再焼成(結晶化工程)を行うことによりケイ酸塩蛍光体の発光強度が高くなるという結果が得られた。
【0140】
(2)粒子形状の評価
次に、上記ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3および比較例2で得たケイ酸塩蛍光体の走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子形状を確認したところ、上記実施例1と同様に比較例2は、粒子同士が互いに融着した不均一な形状を示すのに対し、ケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3は、粒子形状が均一で、使用した二酸化ケイ素(ケイ素系材料)粒子と略同一の形状のケイ酸塩蛍光体が得られている事がわかった。また、その粒径もケイ酸塩蛍光体2−1〜2−3は、原料として使用した二酸化ケイ素と略同一の粒径であったが、比較例2の平均粒径は増大し、その粒度分布も広いものとなった。
【0141】
(実施例3)
実施例1で製造したケイ酸塩蛍光体1−1と比較例1の蛍光体について、粒子内における構成元素の組成の分布における均一性について評価した。
評価は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、電子線を照射した際に試料から発生する特性X線を解析することで粒子内部組成の定量により行った。
【0142】
まず、各ケイ酸塩蛍光体の試料を50nmの切片として連続的に切り出した。次に、その切片を電子顕微鏡観察用メッシュに載せてカーボン蒸着を施し、透過型電子顕微鏡を用いて特性X線の測定を行った。得られた特性Xの解析からZn、Mn、Siの各切片における含有率の差が、各元素の含有率の理論値の20%以下である粒子を組成分布が微視的に均一な粒子とした。
100個のケイ酸塩蛍光体について同様な測定を行い、組成分布が微視的に均一である粒子の比率を算出した。測定結果を表4に示す。
【表4】
【0143】
表4に示すように、本発明に係る蛍光体1−1の粒子内における構成元素の組成の分布が極めて均一であることが分かる。
【0144】
(実施例4)
実施例1で製造したケイ酸塩蛍光体1−1と比較例1の蛍光体について、粒子内に含有される構成元素の含有率について評価を行った。
まず、二次イオン質量分析(SIMS)装置を用いて、相対感度係数を用いて一個一個の粒子の組成を定量した。次に、粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間における変動係数を100個の粒子を測定して求めた。
なお、変動係数は、各粒子内に含有される構成元素の含有率を測定した際の組成含有率の標準偏差を平均含有率で除した値に100を乗じて求めた。測定結果を表5に示す。
【表5】
【0145】
表5に示すように、本発明に係る蛍光体1−1の粒子内に含有される構成元素の含有率の粒子間における変動が少ないことが分かる。
【0146】
(実施例5)
実施例1で製造した蛍光体1−1〜1−3および比較例1と、下記に示す方法で青色蛍光体Bと、赤色蛍光体Rを製造し、これらの蛍光体を含む蛍光体層を備えたPDPを製造し、白色輝度について評価した。
なお、蛍光体1−1〜1−3および比較例1はそれぞれ組成式Zn2SiO4:Mnで表される緑色蛍光体である。
【0147】
1.蛍光体の製造
(1)青色蛍光体Bの製造
原料として炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化アルミニウム(α−Al2O3)をモル比で1対1対5に配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。そして、適量のフラックス(AlF2,BaCl2)と共にボールミルで混合し、1,600℃で3時間、窒素95%、水素5%の還元雰囲気中で焼成して蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを青色蛍光体Bとした。
【0148】
(2)赤色蛍光体Rの製造
原料として酸化イットリウム(Y2O3)と酸化ガドリニウム(Gd2O3)と硼酸(H3BO3)とを、Y,Gd,Bの原子比で0.60:0.35:1.0となるように配合する。次に、この混合物に対して、所定量の酸化ユーロピウム(Eu2O3)を添加する。適量のフラックスと共にボールミルで混合し、1400℃で3時間、大気雰囲気中で焼成してケイ酸塩蛍光体を得た。得られた蛍光体を分級し、平均粒径1.5μmのものを赤色蛍光体Rとした。
【0149】
2.蛍光体塗布液の作製
上記方法で得られた青色蛍光体B、赤色蛍光体Rと、蛍光体1−1〜1−3および比較例1のそれぞれを用いて、エチルセルロース、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ターピネオールおよびペンタンジオールの1:1混合液から蛍光体塗布液B、R、G−1〜G−3および比較例Gを作製した。
【0150】
3.PDPの製造
(1)PDP1の製造
上記で調整した青色蛍光体塗布液B、赤色蛍光体塗布液R、緑色蛍光体塗布液G−1を用いて、図1に示す42インチのPDPを以下のように製造した。
まず、前面板10となるガラス基板上に、走査電極11aと維持電極11bとを径が50μmのノズルを用いてインクジェット法により形成した。このとき、ノズル先端と前面板との距離を1mmに保った状態で、ノズル先端を前面板10上の所定の位置を走査しながら電極材インキを吐出して、電極幅60μmの走査電極11aと維持電極11bをそれぞれ形成した。
【0151】
次に、前面板10上に、前記電極11を介して低融点ガラスを印刷し、これを500〜600℃で焼成することにより誘電体層12を形成し、さらにこの上に、MgOを電子ビーム蒸着して保護膜13を形成した。
【0152】
一方、背面板20となるガラス基板上に、データ電極21を形成した。データ電極21も、上記と同様に、径が50μmのノズルを用いて、背面板20との距離を1mmに保った上で、所定の位置を走査させながら、60μm幅のものを形成した。次に、このデータ電極の両側方に位置するように、低融点ガラスを用いてストライプ状の隔壁30を形成した。隔壁30同士の間隔(ピッチ)は0.36mmに、隔壁30の高さは0.15mmとした。
【0153】
さらに、前記隔壁30により仕切られたセル31の内側に面する底面31aと前記隔壁30の側面30aとに、上記2.で作製した蛍光体塗布液B、R、G−1を隣り合うセルに一色ずつ規則正しい順序で塗布した。
【0154】
そして、前記電極11、21等が配置された前面板10と上記背面板20とを、それぞれの電極配置面が向き合うように位置合わせし、隔壁30により約1mmのギャップを保った状態で、その周辺をシールガラスにより封止した。そして、前記基板10、20間に、放電により紫外線を発生するキセノン(Xe)と主放電ガスのネオン(Ne)とを混合したガスを封入して気密密閉した。なお、キセノンとネオンの混合体積比は、1:9とし、封入圧力は66.7mPaとした。その後、エージングを行い、PDP1とした。
【0155】
(2)PDP2の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−2を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP2とした。
【0156】
(3)PDP3の製造
緑色蛍光体塗布液として、G−3を用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、PDP3とした。
【0157】
(4)比較例3の製造
緑色蛍光体塗布液として、比較例Gを用いた以外は、PDP1と同様にしてPDPを製造し、比較例とした。
【0158】
4.評価
上記において得られたPDP1〜3および比較例のそれぞれについて、パネル全面が点灯している時の放電維持電圧で、周波数30KHzで駆動させた時の輝度を測定し、P−1のパネル輝度を100とした相対値で表した。評価結果を表6に示す。
【表6】
【0159】
表6より、比較例1により製造した蛍光体を用いて緑色蛍光体層を形成する場合と比較すると、本願に係る蛍光体1−1〜1−3を用いて緑色蛍光体層を形成した方が、PDPのパネル輝度も向上することが分かった。
【0160】
また、目視にて確認したところ、比較例3のパネルと比べるとPDP1〜3は発光ムラ等もなく画像を美しく表示することができた。
【0161】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体の粒子同士が互いに融着した不定形状ではないので、蛍光体粒子を一定の大きさ、一定の形状にするための機械的な粉砕処理等を行う必要がなく、結晶欠陥による発光強度の低下を防止することができる。さらに、極めて微粒子であり、かつ、粒子間で形状も揃っているので、PDPの蛍光体層に用いた場合、そのセルの発光強度を向上することができる。
【0162】
請求項2に記載の発明によれば、極めて微粒子の蛍光体で、粒径分布の変動係数の値が小さく、大きさ、形状が粒子間で略同一であるので、どのような用途に用いても輝度の高いムラのない発光を行うことができる。また、PDPのセルに設けられる蛍光体層に密に蛍光体を充填することができ、セルの発光強度を向上することができる。
【0163】
請求項3に記載の発明によれば、粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上を占めているので、粒子の発光特性が均一になる。したがって、PDPのセルの蛍光体層をこの蛍光体で構成することにより、発光ムラのない秀麗なものとすることができる。
【0164】
請求項4に記載の発明によれば、粒子内における各構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であるので、各粒子が含有する構成元素量のばらつきがなく、ムラのない発光を行うことができる。
【0165】
請求項5に記載の発明によれば、前駆体形成工程においてケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成し、焼成工程において金属元素をケイ素系材料粒子内に拡散混入させるので、組成の均一な蛍光体を得ることができる。また、前駆体を焼成する際に、ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態とするので、得られる蛍光体粒子が互いに融着して不定形状となることを防止することができる。
【0166】
請求項6に記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体を製造する際の効率を向上することができる
【0167】
請求項7に記載の発明によれば、液相法により前駆体を形成するので、ケイ素系材料と、ケイ酸塩蛍光体を構成するケイ素以外の金属元素とが液体内で均一に混合することができ、反応条件を整えることによって粒子内で構成元素が均一に拡散、分布し、構成元素の含有率が均一な蛍光体を得ることができる。
【0168】
請求項8記載の発明によれば、ケイ酸塩蛍光体は請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果が得られる。
【0169】
請求項9記載の発明によれば、PDPは、請求項1〜5、9のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光体層を有するので、蛍光体層にケイ酸塩蛍光体を密に充填することができ、これによりセルの発光強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例のプラズマディスプレイパネルを示した概略構成図である。
【図2】図1に示したプラズマディスプレイパネルに設けられた電極の配置を示した概略平面図である。
【図3】本発明に係る蛍光体の製造方法において使用する反応装置の一例を示した概略図である。
【図4】実施例1において、原料として使用した二酸化ケイ素を示した走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で製造した蛍光体1−1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例1で製造した蛍光体1−2の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1で製造した蛍光体1−3の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例1の蛍光体を示した走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 プラズマディスプレイパネル
35 蛍光体層
Claims (9)
- ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、
平均粒径が0.01〜1μmであり、粒子同士が互いに融着されていないことを特徴とするケイ酸塩蛍光体。 - ケイ酸塩蛍光体の母核を構成するケイ素系材料に焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素が拡散混入されたケイ酸塩蛍光体であって、
平均粒径が0.01〜1μmであり、粒径分布の変動係数の値が40%以下であり、個々の粒子形状が略同一であることを特徴とするケイ酸塩蛍光体。 - 請求項1または2に記載のケイ酸塩蛍光体において、
粒子内における構成元素の組成の分布が均一である粒子が粒子数で50%以上であることを特徴とするケイ酸塩蛍光体。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体において、
粒子内における構成元素の含有率の粒子間分布の変動係数が50%以下であることを特徴とするケイ酸塩蛍光体。 - ケイ酸塩蛍光体の母核となるケイ素系材料粒子の周囲に、焼成することによりケイ酸塩蛍光体を構成し得る金属元素を均一な組成で含む前駆体を形成する前駆体形成工程と、
前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で焼成し、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させたケイ酸塩蛍光体を得る焼成工程と、
を含むことを特徴とするケイ酸塩蛍光体の製造方法。 - 請求項5に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、
前記焼成工程は、
前記ケイ素系材料粒子の融着が実質的に起こらない状態で前駆体の焼成を行い、前記ケイ素系材料粒子内部に前記金属元素を拡散混入させる金属元素拡散混入工程と、
前記金属元素拡散混入工程で得られた焼成物に焼結防止剤を混合する焼結防止剤混合工程と、
前記焼結防止剤混合工程で得られた混合物を再焼成することにより結晶化されたケイ酸塩蛍光体を得る結晶化工程と、
を含むことを特徴とするケイ酸塩蛍光体の製造方法。 - 請求項5または6に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法において、
前記前駆体形成工程は液相法により行うことを特徴とするケイ酸塩蛍光体の製造方法。 - 請求項5〜7のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体の製造方法により得られたことを特徴とするケイ酸塩蛍光体。
- 請求項1〜4、8のいずれか一項に記載のケイ酸塩蛍光体を含有する蛍光層を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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