JP2004036337A - 落橋防止装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】橋梁(2)と橋梁支承部(5)にそれぞれ固定部(4)を形成し、両固定部(4)間に繊維製長尺体(7)を張設する。繊維製長尺体(7)の中間部を、一方の固定部(4a)に連結した挟持手段(8)で挟持する。繊維製長尺体(7)は、挟持手段(8)よりも一端側部分を自由端(13)とし、他端側部分を他方の固定部(4b)に連結する。挟持手段(8)の挟持力は、破断強度よりも弱い力で繊維製長尺体(7)が挟持手段(8)内を移動できる範囲に設定する。繊維製長尺体(7)の自由端(13)側で挟持手段(8)から所定寸法だけ離隔した位置に抜止部(14)を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄道や道路などに設けられた橋梁の落下を防止する落橋防止装置に関し、さらに詳しくは、地震発生時などに受ける突発的な衝撃エネルギーを吸収し発散することにより、衝撃的荷重を緩和・軽減して負担することができ、しかも軽量で安価に実施できる、落橋防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鉄道や高架道路などに設けられた橋梁には、地震等の大きな応力を受けた際に橋梁の落下を防止するため、この橋梁を橋脚などに連結し固定する落橋防止装置が付設される。
上記従来の落橋防止装置は、例えば図6に示すように、橋梁(51)にブラケット等の第1固定部(52)を設けるとともに、この橋梁(51)を支承する橋脚等の橋梁支承部(53)或いは隣接する橋梁に第2固定部(54)を設け、両固定部(52・54)間に長尺体(55)を配置し連結固定したものがある。上記の長尺体(55)には、地震発生時などに衝撃的荷重が加わる可能性があるので、チェーンやスチールワイヤー、あるいは高強度繊維製のロープ等が一般に用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、地震発生時に受ける衝撃エネルギーは極めて大きく、安全性を確保するには上記の長尺体を太くする必要があり、そのためこの長尺体の自重が増加して設計上の限界が生ずる。また、太く重い長尺体を用いて施工するには当然、材料費や施工費が高価になるうえ、技術的にも困難を伴うという問題があった。
【0004】
本発明は上記の問題点を解消し、地震発生時などに受ける突発的な衝撃エネルギーを吸収することにより、衝撃的荷重を緩和・軽減して負担することができ、しかも軽量で安価に実施できる、落橋防止装置を提供することを技術的課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図5に基づいて説明すると、落橋防止装置を次のように構成したものである。
即ち、橋梁(2)に形成した固定部(4)と、この橋梁(2)を支承する橋梁支承部(5)又は隣接する橋梁(2)に形成した固定部(4)との間に長尺体(6)を張設した落橋防止装置であって、上記長尺体(6)の少なくとも一部を、高強度繊維材料で形成した繊維製長尺体(7)で構成し、上記の両固定部(4・4)のうちの一方の固定部(4a)に連結した挟持手段(8)で上記の繊維製長尺体(7)の中間部を挟持して、この繊維製長尺体(7)の挟持手段(8)よりも一端側部分を自由端(13)とするとともに、他端側部分を上記の他方の固定部(4b)に連結し、上記の挟持手段(8)の挟持力は、上記の長尺体(6)の破断強度よりも弱い力で上記の繊維製長尺体(7)がこの挟持手段(8)内を、上記の挟持による摩擦力に抗して移動可能な範囲に設定し、上記の繊維製長尺体(7)の自由端(13)側で上記の挟持手段(8)から所定寸法だけ離隔した位置に、繊維製長尺体(7)の移動を停止する抜止部(14)を形成したことを特徴とする。
【0006】
【作用】
地震発生時等に衝撃エネルギーが加わって橋梁が橋梁支承部からずれ動こうとすると、上記の長尺体にその衝撃的荷重が加わる。上記の挟持手段による挟持力は上記の長尺体の破断強度よりも弱いので、この挟持手段に挟持された上記の繊維製長尺体は、上記の荷重が加わることにより摩擦力に抗して挟持手段内を移動する。このとき上記の衝撃エネルギーの一部が、上記の移動により発生する摩擦熱に変換されて吸収・発散される。
【0007】
上記の繊維製長尺体の移動とともに、上記の自由端側部分が挟持手段内に入り込む。このため、挟持手段が繊維製長尺体を挟持する面積は一定しており、従って、繊維製長尺体が移動する間は常に同程度の摩擦力が発生して略一定の衝撃エネルギーが吸収・発散され、上記の衝撃的荷重が緩和・軽減される。
【0008】
所定寸法の自由端側部分が挟持手段内へ入り込むと、上記の抜止部が挟持手段に達して繊維製長尺体の移動が停止する。そして、上記の橋梁に加わえられた衝撃的荷重のうち、上記の吸収・発散により緩和・軽減された荷重の残部が長尺体に受け止められ、これにより橋梁の落下が防止される。
【0009】
上記の長尺体は、その全体を繊維製長尺体で構成してもよく、或いはチェーンやワイヤーなど他の材質の長尺体と繊維製長尺体とを組み合わせてもよい。
上記の繊維製長尺体の形態としては、ベルト、ロープなどが好ましいが、他の形態であってもよく、厚さ、幅、太さなどは用途とスケール等により決定され、特定の形状、寸法に限定されない。また、この繊維製長尺体は他の材料で被覆、含浸、接着、表面処理などの加工処理が施されていてもよい。
【0010】
上記の繊維製長尺体は、長尺体の複数箇所に設けても良く、また同一個所に複数本を配置してもよい。例えば環状に形成したものを偏平状に折り畳んで繊維製長尺体を構成するなどにより、1つの挟持手段に繊維製長尺体の複数箇所や複数本の繊維製長尺体を挟持すると、挟持面積が複数倍に広がって上記の摩擦力が大きくなり、衝撃エネルギーを良好に吸収し発散できるのでより好ましい。
【0011】
上記の繊維製長尺体を構成する繊維材料としては、比強度200×103m以上、比弾性率3×106m以上のものが好ましく、さらに上記の移動により摩擦熱を生じるので、例えば融点が300℃以上のものなど、耐熱性に優れると一層好ましい。ここで比強度や比弾性率は、ASTM D−885に順じて測定した強度及び弾性率を繊維の比重で割った値である。比強度は高いほど好ましく、具体的にはアラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維などを挙げることができ、特に耐熱性、耐磨耗性の点でアラミド繊維が最も好ましい。アラミド繊維としては、パラ系全芳香族ポリアミド繊維が好ましいが、メタ系或いは非芳香族化合物が少量共重合されていてもよい。全芳香族ポリエステル繊維も液晶性全芳香族ポリエステル繊維が好ましいが、少量の脂肪族化合物が共重合された液晶性繊維も使用できる。
【0012】
上記の挟持手段による挟持力は、できるだけ大きな摩擦力を生じるように強いほうが好ましいが、長尺体の破断強度よりも弱い範囲内に制限される。上記の摩擦力は、繊維製長尺体が移動を開始するまでは静止摩擦力が作用し、移動開始後は動摩擦力が作用する。一般に動摩擦力は静止摩擦力よりも小さいが、上記の繊維製長尺体の表面に、例えばフッ素樹脂やシリコーン樹脂などの耐熱性合成樹脂層を形成すると、静止摩擦力と動摩擦力との落差を小さくでき、移動開始後も上記の衝撃エネルギーの一部を効率良く摩擦熱に変換して吸収できるので、より好ましい。なお、上記の樹脂としては、PTFE、PFVEなどのフッ素樹脂が特に好ましい。また、上記の耐熱性合成樹脂層は、被覆や含浸、接着、表面処理等により繊維製長尺体の表面に形成してもよく、或いは繊維製長尺体の表面にフィルムやシートを介在させることで形成しても良い。
【0013】
上記の繊維製長尺体の自由端側に設ける抜止部は、金属棒など任意の材料で繊維製長尺体に付設してもよいが、環状に形成したものを偏平状に折り畳んで上記の繊維製長尺体を構成した場合には、一方の折返し端部で上記の抜止部を構成することができ、好ましい。
【0014】
上記の挟持手段は、繊維製長尺体に1個または複数個設けることができる。この挟持手段には、剛性が高く耐腐食性など耐久性に優れた板体が好ましく、鉄、ステンレス、繊維強化複合材などが用いられる。これらの板体等は、例えばボルトとナット等の任意の締付手段で締め付けられる。
なお、上記の繊維製長尺体や挟持手段と前記の固定部とは、直接連結してもよく、他の長尺体や挟持手段等を介して連結してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の実施形態を示し、図1は落橋防止装置の概略構成図、図2は落橋防止装置の要部を拡大した斜視図、図3は長尺体の応力と伸びの関係を説明するグラフである。
【0016】
図1に示すように、この落橋防止装置(1)は橋梁(2)を構成する道路床板(3)の下面に固定された第1ブラケット(4a)と、この橋梁(2)を支承する橋脚(5)の上部側面に固定された第2ブラケット(4b)との2つの固定部(4)を備え、この両ブラケット(4a・4b)間に亘って長尺体(6)が張設してある。
【0017】
上記の長尺体(6)は、例えばアラミド繊維等の、比強度が200×103m以上、比弾性率が3×106m以上の高強度を有する繊維材料で形成した繊維製長尺体(7)からなる。この繊維製長尺体(7)は、上記の高強度繊維でベルト状に織成され、このベルトの両端を縫い合せることにより環状に形成して偏平状に折り畳んである。
【0018】
図1及び図2に示すように、上記の繊維製長尺体(7)の中間部は3枚のステンレス製板(9a・9b・9c)を重ねた挟持手段(8)で挟持してある。この挟持手段(8)は、1枚の金属板(9c)の一端部が前記の第1ブラケット(4a)側に延長してあり、この延長部(10)を係止ピン(11)で第1ブラケット(4a)に連結してある。
【0019】
上記の繊維製長尺体(7)は上下2枚に分けられており、それぞれ上記の挟持手段(8)に挟持され、ボルトなどの締付手段(12)で締め付けられる。この挟持手段(8)の挟持力は強いほど好ましいが、上記の繊維製長尺体(7)が破断強度よりも弱い力でこの挟持手段(8)内を移動できる範囲に設定される。
【0020】
上記の繊維製長尺体(7)の上記の第1ブラケット(4a)側部分は自由端(13)とされており、この自由端(13)側の折返し部分は抜止部(14)を構成している。即ち、上記の繊維製長尺体(7)が挟持手段(8)内を前記の第2ブラケット(4b)側へ移動して、上記の抜止部(14)が挟持手段(8)の端面に達すると、それ以降は繊維製長尺体(7)の移動が停止される。一方、図1に示すように、繊維製長尺体(7)の第2ブラケット(4b)側部分は、その折返し部分が係止ピン(15)に挿通されてこの第2ブラケット(4b)に連結されている。
【0021】
上記の繊維製長尺体(7)は、例えば、パラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製:商品名「ケブラー」29−1670dtx)を用いて、次のように製造される。最初に、上記の高強度繊維を織成して、例えば、幅30mm、厚さ1.3mmのベルト(保証耐力30KN)に加工する。次いで、上記の加工に用いた油剤等を精錬工程で洗浄・除去する。その後、この精錬したベルトをPTFE樹脂の水エマルジョン中に浸漬したのち、乾燥工程で乾燥する。これにより表面にPTFE樹脂層を備えた繊維製長尺体(7)が形成される。なお、ベルトの厚さや幅は、要求される性能に応じて適宜設定される。
【0022】
次に、図1〜3に基づいて上記の落橋防止装置の作動を説明する。
上記の橋梁(2)に地震などの衝撃エネルギーが加わると、道路床板(3)が橋脚(5)に対してずれ動こうとする。この結果、上記の長尺体(6)に荷重が加わり、図3に示すように、繊維製長尺体(7)が伸ばされる。そして、繊維製長尺体(7)に加わる荷重が挟持手段(8)の挟持により生ずる静止摩擦力よりも大きくなる時点(S1)で、この繊維製長尺体(7)が挟持手段(8)内を前記の第2ブラケット(4b)側への移動を開始し、両ブラケット(4a・4b)間に配置された長尺体(6)の全長が伸びる。
【0023】
繊維製長尺体(7)の移動中(S2)は、上記の静止摩擦力よりも弱い動摩擦力が発生し、この結果、繊維製長尺体(7)はこの動摩擦力に抗して挟持手段(8)内を移動し続ける。この移動とともに、上記の繊維製長尺体(7)の自由端(13)が挟持手段(8)内に入り込むので、この移動中に挟持手段(8)が繊維製長尺体(7)を挟持する面積は一定しており、ほぼ一定の動摩擦力が発生する。そして上記の自由端(13)の折返し部分で構成した前記の抜止部(14)が挟持手段(8)の端面に達する時点(S3)で、挟持手段(8)に対する繊維製長尺体(7)の移動が停止し、これ以降は荷重の残部が長尺体(6)に加わって、上記の繊維製長尺体(7)が伸ばされる。
【0024】
図3における応力−伸び曲線で囲まれた面積(A)が、上記の長尺体(6)のエネルギー吸収能に対応し、上記の挟持手段(8)内を繊維製長尺体(7)が摩擦力に抗して移動する分、このエネルギー吸収能が大きくなっている。このため、上記の長尺体(6)に加わる衝撃的荷重は大幅に緩衝され、上記の繊維製長尺体(7)の移動停止後、長尺体(6)は残部の荷重を破断時点(S5)よりも低い時点(S4)で充分に負担することができ、橋梁(2)の落下が防止される。
【0025】
上記の実施形態では、1個の挟持手段(8)に1本の環状の繊維製長尺体(7)を挟持したが、本発明の落橋防止装置は上記の実施形態のものに限定されるものではなく、例えば次のような変形例が考えられる。
【0026】
(1) 図4(a)に示す第1変形例では、2本の環状の繊維製長尺体(7a・7b)を、2重形状に配置したものである。
(2) 図4(b)に示す第2変形例では、2本のベルト状の繊維製長尺体(7a・7b)を用いており、一方の繊維製長尺体(7a)の中間部を挟持する挟持手段(8)は、他方の繊維製長尺体(7b)を介して一方の固定部(4a)に連結してある。そして、この繊維製長尺体(7a)の一端側部は自由端(13)に形成して、この自由端(13)に抜止部(14)を付設してあり、他端側部は他方の固定部(4b)に連結してある。
一方、他方の繊維製長尺体(7b)も、一端側部が一方の固定部(4a)に連結されており、中間部を挟持する挟持手段(8)が一方の繊維製長尺体(7a)を介して他方の固定部(4b)に連結してあり、他端側部分が自由端(13)に形成され、この自由端(13)に抜止部(14)を付設してある。
【0027】
(3) 図5(a)は第3変形例を示し、それぞれ固定部(4a・4b)に連結した2個の挟持手段(8a・8b)間に、繊維製長尺体(7)を張設してある。即ち、一方の固定部(4a)に連結した挟持手段(8a)で繊維製長尺体(7)の中間部を挟持し、この繊維製長尺体(7)の上記の挟持手段(8a)よりも一端側部分を自由端(13)としてある。そして繊維製長尺体(7)の他端側部分は、他方の挟持手段(8b)を介して他方の固定部(4b)に連結してある。さらに、繊維製長尺体(7)の上記の他方の挟持手段(8b)よりも他端側部分は自由端(13)としてある。従って、上記の他方の固定部(4b)側からみても同様の構成となっている。
【0028】
(4) 図5(b)は第4変形例を示し、2本の繊維製長尺体と2つの挟持手段を用いてある。一方の繊維製長尺体(7a)の中間部を挟持する挟持手段(8a)は、他方の挟持手段(8b)と他方の繊維製長尺体(7b)を介して一方の固定部(4a)に連結されており、繊維製長尺体(7a)の他端側部分が他方の固定部(4b)に連結されている。他方の繊維製長尺体(7b)も同様に構成されている。
【0029】
(5) 図5(c)は第5変形例を示し、第4変形例と同様に、2本の繊維製長尺体と2つの挟持手段を用いてある。この変形例では繊維製長尺体(7a・7b)と挟持手段(8a・8b)との各組を直列に配置してある。従って、一方の繊維製長尺体(7a)は他端側部分を、他方の挟持手段(8b)と繊維製長尺体(7a)とを介して他方の固定部(4b)に連結してある。また、他方の繊維製長尺体(7b)は、中間部分を挟持する挟持手段(8b)が一方の繊維製長尺体(7a)と一方の挟持手段(8a)とを介して一方の固定部(4a)に連結されている。
【0030】
上記の実施形態では、一方の固定部を道路床板に固定したが、橋梁が橋桁を備える場合は、この橋桁に上記の一方の固定部を固定しても良い。また、上記の他方の固定部を橋脚に固定したが、例えば河川の側壁など他の構造部で橋梁を支承している場合は、その構造部に上記の他方の固定部が固定される。或いは、橋梁間に落橋防止装置を設ける場合は、上記の他方の固定部は隣接する橋梁に付設される。なお、本発明に用いる上記の繊維製長尺体や挟持手段、固定部など各部材の形状・構造等は、上記の実施形態や変形例のものに限定されないことはいうまでもない。
【0031】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0032】
(1) 繊維製長尺体が挟持手段内を移動することで、橋梁に加えられた衝撃エネルギーの一部を摩擦熱に変換して吸収・発散することができる。しかも、繊維製長尺体の移動中は自由端側部分が挟持手段内に入り込むので、常に同程度の摩擦力が発生し、略一定の衝撃エネルギーを吸収・発散することができる。この結果、長尺体に加わる衝撃的荷重を効率良く緩和・軽減できるので、抜止部が挟持手段に達して繊維製長尺体の移動が停止したのち、この緩和・軽減された荷重の残部を長尺体で負担でき、橋梁の落下を効果的に防止することができる。
【0033】
(2) 長尺体は衝撃的荷重のうち、繊維製長尺体の移動により緩和・軽減されたのちの荷重を受け止めるだけでよいことから、前記の従来技術と異なって長尺体を過剰に太くする必要がなく、軽量に構成することができ、材料費や施工費などが安価であるうえ、施工作業なども容易に実施することができる。
【0034】
(3) 上記の繊維製長尺体を、環状に形成したものを偏平状に折り畳んで構成した場合には、挟持手段に繊維製長尺体の2箇所が挟持されることから、挟持面積が2倍になって大きな摩擦力を生じ、衝撃エネルギーを良好に吸収し発散することができる。
また、この場合には、上記の偏平化した環状の繊維製長尺体の、一方の折返し端部で上記の抜止部を構成することができ、抜止部として別部材を必要としないので、安価に実施することができる。
【0035】
(4) 上記の繊維製長尺体の表面に、例えばフッ素樹脂等の耐熱性合成樹脂層を形成した場合には、繊維製長尺体の移動開始までに作用する静止摩擦力と移動中に作用する動摩擦力とに落差が少なく、繊維製長尺体の移動開始後も上記の衝撃エネルギーの一部を効率良く摩擦熱に変換して吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す、落橋防止装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態の、落橋防止装置の要部を拡大した斜視図である。
【図3】本発明の、長尺体の応力と伸びの関係を説明するグラフである。
【図4】本発明の変形例を示し、図4(a)は第1変形例の概略構成図、図4(b)は第2変形例の概略構成図である。
【図5】本発明の他の変形例を示し、図5(a)は第3変形例の概略構成図、図5(b)は第4変形例の概略構成図、図5(c)は第5変形例の概略構成図である。
【図6】従来技術を示す、落橋防止装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1…落橋防止装置
2…橋梁
4…固定部
4a…一方の固定部(第1ブラケット)
4b…他方の固定部(第2ブラケット)
5…橋梁支承部(橋脚)
6…長尺体
7…繊維製長尺体
8…挟持手段
13…自由端
14…抜止部
Claims (7)
- 橋梁(2)に形成した固定部(4)と、この橋梁(2)を支承する橋梁支承部(5)又は隣接する橋梁(2)に形成した固定部(4)との間に長尺体(6)を張設した落橋防止装置であって、
上記長尺体(6)の少なくとも一部を、高強度繊維材料で形成した繊維製長尺体(7)で構成し、
上記の両固定部(4・4)のうちの一方の固定部(4a)に連結した挟持手段(8)で上記の繊維製長尺体(7)の中間部を挟持して、この繊維製長尺体(7)の挟持手段(8)よりも一端側部分を自由端(13)とするとともに、他端側部分を上記の他方の固定部(4b)に連結し、
上記の挟持手段(8)の挟持力は、上記の長尺体(6)の破断強度よりも弱い力で上記の繊維製長尺体(7)がこの挟持手段(8)内を、上記の挟持による摩擦力に抗して移動可能な範囲に設定し、
上記の繊維製長尺体(7)の自由端(13)側で上記の挟持手段(8)から所定寸法だけ離隔した位置に、繊維製長尺体(7)の移動を停止する抜止部(14)を形成したことを特徴とする、落橋防止装置。 - 上記の繊維製長尺体(7)を、環状に形成したものを偏平状に折り畳んで構成した、請求項1に記載の落橋防止装置。
- 上記の偏平化した環状の繊維製長尺体(7)の、一方の折返し端部で上記の抜止部(14)を構成した、請求項2に記載の落橋防止装置。
- 上記の繊維製長尺体(7)の表面に、耐熱性合成樹脂層を形成した、請求項1から3のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
- 上記の合成樹脂がフッ素樹脂である、請求項4に記載の落橋防止装置。
- 上記の繊維製長尺体(7)が、比強度200×103m以上、比弾性率3×106m以上の繊維材料で構成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
- 上記の繊維材料が、アラミド繊維である、請求項6に記載の落橋防止装置。
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