JP2002060889A - 高張力鋼板 - Google Patents

高張力鋼板

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JP2002060889A
JP2002060889A JP2000251091A JP2000251091A JP2002060889A JP 2002060889 A JP2002060889 A JP 2002060889A JP 2000251091 A JP2000251091 A JP 2000251091A JP 2000251091 A JP2000251091 A JP 2000251091A JP 2002060889 A JP2002060889 A JP 2002060889A
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toughness
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Tomoya Kawabata
友弥 川畑
Akihiko Nagayoshi
明彦 永吉
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造材としての安全性を高めるために、Z方
向と直交する平面内における異方性を軽減し、あらゆる
方向からの亀裂伝播に対して十分な抵抗性を有する高張
力厚鋼板を、コストの高騰を伴うことなく安価に提供す
る。 【解決手段】 マルテンサイト単相組織あるいはマルテ
ンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、Z方向と
直交するZ断面2内に存在する旧オーステナイト粒界3
の形状アスペクト比が7.0以下であり、かつこの断面
2と直交するとともにL方向と平行である断面4内にお
けるA系介在物の占有面積率が0.05%以下である高
張力鋼板1である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高張力鋼板に関す
る。より具体的には、本発明は、例えば、780N/m
2 以上の引張強さを有する高張力厚鋼板、あるいは、
950N/mm2以上の引張強さを有する高張力厚鋼板
等といった高張力鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】ペンストックや圧力容器等の大型化に伴
って、省資材や運搬・施工コスト削減を図るため、鋼材
にはより一層の高強度化が要求されている。例えば、7
80N/mm2 以上の引張強さを有する高張力厚鋼板の
みならず、950N/mm2 以上の引張強さを有する高
張力厚鋼板がペンストックに実際に適用された例もあ
る。この種の高張力鋼板は、一般的に、熱間圧延後に再
加熱を行った後に焼入れ・焼戻し処理を行うこと、ある
いは例えば特開平9−263828号公報等により開示
されているように制御圧延後に直接焼入れを行うことに
よって、製造されてきた。
【0003】しかし、これらの従来の方法、特に制御圧
延後に直接焼入れを行う方法によると、得られる高張力
厚鋼板のオーステナイト粒が、通常、圧延方向(以下、
「L方向」という)、およびこのL方向に直交する方向
(以下、「C方向」という)の2方向にいずれも展伸
し、板厚方向(以下、「Z方向」という)に極めて扁平
な形態となるため、最終製品である高張力厚鋼板の機械
特性、例えば強度や靱性等の異方性が著しく高まってし
まう。そこで、例えば特開平5−222454号公報に
は、Z方向への異方性を加熱温度制御等の手段により改
善することによって、特に靱性の異方性を軽減する発明
が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らが、この高
張力厚鋼板の機械特性を詳細に調査・検討した結果、引
張特性やシャルピー衝撃試験特性等に代表される機械特
性は、Z方向と直交する断面における異方性の影響を、
顕著に受けることがわかった。
【0005】従来、Z方向と直交する平面内における異
方性に着目した実験例は、その殆どが600N/mm2
級のフェライト−パーライト鋼を対象としており、マル
テンサイトを主組織として有する800N/mm2 級以
上の高張力鋼板に対しては、殆ど行われていない。数少
ない例ながらも特開平10−265893号公報には、
調質型とすることにより等軸粒化を図り、Z方向と直交
する平面内における靱性の異方性を抑制する発明が開示
されている。しかしながら、この発明では、直接焼入れ
−再加熱焼入れ工程を採用するために靱性の異方性を軽
減することは可能であるものの、熱処理の処理ピッチを
大きく低下させてしまうために著しく経済性を損ない、
実際に実施することはコスト面で難しい。
【0006】本発明は、例えば、780N/mm2 以上
の引張強さを有する高張力厚鋼板、あるいは、950N
/mm2 以上の引張強さを有する高張力厚鋼板等といっ
た、構造物の強度部材として好適に用いられる高張力鋼
板を、コストの高騰を伴うことなく安価に、機械特性の
異方性を低減して提供することを目的とする。
【0007】別の観点からは、本発明は、構造材として
の安全性を高めるために、Z方向と直交する平面内にお
ける異方性を軽減し、あらゆる方向からの亀裂伝播に対
して十分な抵抗性を有する高張力厚鋼板を、コストの高
騰を伴うことなく安価に提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、経済性を
維持するために、直接焼入れ後の熱処理は焼戻し処理だ
けを行うことを前提として、機械特性の異方性を軽減す
るための手段を検討した。具体的には、まず、多量の直
接焼入れ型高張力鋼板に対して、Z方向と直交する平面
内における異方性について調査した。そして、この異方
性が大きいものと軽微なものとを比較調査することによ
って、本発明者らは以下に説明する新規な知見を得た。
【0009】すなわち、異方性は、特に靱性について顕
著な差異を示す。方向別の異方性は、L方向への異方性
が最も良好であってC方向あるいは45度方向への異方
性が最も低位である。このような方向別の異方性の差異
は顕著であり、L方向では特性が良好であってもC方向
や45度方向の亀裂伝播に対しては抵抗性が著しく損な
われる。L方向の応力負荷を前提にした亀裂伝播試験を
行うと、亀裂がC方向および45°方向に屈曲して伝播
し、その抵抗性が低位に留まることが散見された。構造
物の安全性に対する信頼性を高めるためには、当然のこ
とながら、全ての方向について問題のない靱性を得る必
要がある。
【0010】そこで、本発明者らは、さらに検討を重ね
た結果、Z方向と直交する断面内に存在する旧オーステ
ナイト粒界の形状アスペクト比と、この断面と直交する
とともにL方向と平行である断面内におけるA系介在物
の占有面積率とを、ともに特定の範囲に限定することに
より、上記課題を解決することが可能となることを知見
して、本発明を完成した。
【0011】本発明は、マルテンサイト単相組織あるい
はマルテンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、
Z方向と直交する断面内に存在する旧オーステナイト粒
界の形状アスペクト比が7.0以下であり、かつこの断
面と直交するとともにL方向と平行である断面内におけ
るA系介在物の占有面積率が0.05%以下であること
を特徴とする高張力鋼板である。この本発明にかかる高
張力鋼板は、Z方向と直交する平面内におけるL方向お
よびC方向を含む靱性の異方性が小さい。
【0012】この本発明にかかる高張力鋼板における
「形状アスペクト比」とは、Z方向と直交する断面内に
存在する旧オーステナイト粒界のL方向への粒径の、L
方向と直交するC方向への粒径に対する比を意味する。
また、この本発明にかかる高張力鋼板における「A系介
在物」とは、加工によって粘性変形した介在物を意味し
ており、具体的にはJIS G 0555により規定さ
れる介在物である。
【0013】この本発明にかかる高張力鋼板は、質量%
で、C:0.06〜0.19%、Si:0.15〜0.
60%、Mn:0.60〜1.80%、Cr:0.05
〜1.20%、Mo:0.05〜1.00%およびB:
0.0005〜0.0025%を含有することが、例示
される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる高張力鋼板
の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明す
る。
【0015】まず、本実施の形態における高張力鋼板の
組成を説明する。 [C:0.06〜0.19%]Cは、強度向上に最も有
効であり、かつ安価な元素である。C含有量が0.06
%未満であると、強度に寄与する他の元素の含有量を増
加させて必要な強度を維持する必要が生じ、結果的に経
済性が著しく損なわれる。一方、C含有量が0.19%
を超えると、溶接性が著しく阻害され、かつ靱性を著し
く劣化させ実用上問題が多くなる。そこで、本実施の形
態では、C含有量は0.06%以上0.19%以下と限
定する。
【0016】[Si:0.15〜0.60%]Siは、
強度向上に寄与する元素であるが、Si含有量が0.1
5%未満であるとかかる効果が認められず、一方、0.
60%を超えると母材靱性を著しく損なうことになる。
そこで、本実施の形態では、Si含有量は0.15%以
上0.60%以下と限定する。
【0017】[Mn:0.60〜1.80%]Mnは、
強度確保のために0.60%以上添加するが、Mn含有
量が1.80%を超えると、靱性を著しく劣化させる。
そこで、本実施の形態では、Mn含有量は0.60%以
上1.80%以下と限定する。
【0018】[Cr:0.05〜1.20%]Crは、
0.05%以上含有されることにより、焼入れ性を高め
る働きを発揮し、強度および靱性それぞれの向上に有効
であるが、Cr含有量が1.20%を超えると著しく靱
性を損なう。そこで、本実施の形態では、Cr含有量は
0.05%以上1.20%以下と限定する。
【0019】[Mo:0.05〜1.00%]Moは、
0.05%以上の添加により強度の向上に有効である
が、1.00%を超えて添加すると靱性を損なう。そこ
で、本実施の形態では、Mo含有量は、0.05%以上
1.00%以下と限定する。
【0020】[B:0.0005〜0.0025%]B
は、0.0005%以上という微量の添加により焼入れ
性を著しく向上させるため、実用高張力鋼には不可欠な
元素である。しかし、B含有量が0.0025%を超え
ると著しく靱性を損なう。そこで、本実施の形態では、
B含有量は、0.0005%以上0.0025%以下と
限定する。
【0021】また、本実施の形態の高張力鋼板は、C
u、Ni、V、Nb、sol.Al、Ti、Zr、Ca
等の通常の合金元素を、必要に応じて任意添加元素とし
て適量含有してもよい。以下、これらの任意添加元素に
ついて順次説明する。
【0022】[Cu:1.0%以下]Cu含有量が1.
0%を超えるとスケールが発生して鋼材の表面性状を著
しく劣化させ、さらには靱性の劣化を招く。そこで、C
uを添加する場合には、その含有量は1.0%以下と限
定することが望ましい。
【0023】[Ni:5.0%以下]Niは、強度およ
び靱性をいずれも向上させるために有効な元素である
が、含有量が5.0%を超えると、コストの上昇を招
き、さらには靱性を劣化させる。そこで、Niを添加す
る場合には、その含有量は5.0%以下と限定すること
が望ましい。
【0024】[V:0.10%以下]Vは,焼戻し時に
VCとして析出し、強度を向上させる働きを有するが、
0.10%を超えて添加しても効果が飽和するととも
に、靱性を著しく劣化させる。そこで、Vを添加する場
合には、その含有量は0.10%以下と限定することが
望ましい。
【0025】[Nb:0.10%以下]Nbは、スラブ
加熱時に結晶粒粗大化を抑制する他、焼入れ時にも同様
の効果を発揮し、破面単位の微細な鋼材の製造に有効で
ある。しかし、0.10%を超えて添加すると靱性を著
しく阻害する。そこで、Nbを添加する場合には、その
含有量は0.10%以下と限定することが望ましい。
【0026】[sol.Al:0.1%以下]sol.
Alは、オーステナイト粒の微細化に寄与する元素とし
て有効であるが、0.1%を超えて添加すると靱性の劣
化を招く。そこで、sol.Alの含有量は0.1%以
下と限定することが望ましい。
【0027】[Ti:0.1%以下]Tiは、Nを固定
しBによる焼入れ性向上効果を高める役割を果たすが、
0.1%を超える過剰な添加は靱性の劣化を生じる。そ
こで、Tiを添加する場合には、その含有量は0.1%
以下と限定することが望ましい。
【0028】[Zr:0.15%以下]Zrは、析出に
よって鋼の強度向上に寄与するが、多量に添加するとコ
ストの上昇や靱性の劣化を招く。そこで、Zrを添加す
る場合には、その含有量は0.15%以下と限定するこ
とが望ましい。
【0029】[Ca:0.008%以下]Caは、硫化
物系非金属介在物の形態を制御することにより、亀裂進
展抵抗を高めることができ、結果的に靱性向上に寄与す
る。しかし、Ca含有量が0.008%を超えると非金
属介在物の量が増加し、逆に靱性に悪影響を及ぼす。そ
こで、Caを添加する場合には、その含有量は0.00
8%以下と限定することが望ましい。
【0030】上記以外は、Feおよび不純物である。な
お、この本実施の形態にかかる高張力鋼板の組成は、本
発明にかかる高張力鋼板の組成の一実施例を示すもので
ある。すなわち、本実施の形態にかかる高張力鋼板の組
成は、後述するように本実施の形態の高張力鋼板の前提
となる、マルテンサイト単相組織あるいはマルテンサイ
トとベイナイトとの混合組織を確実に得ることができ、
これにより、所望の強度、靱性および溶接性を工業的規
模で得ることができる一組成を示すものである。このた
め、本発明にかかる高張力鋼板の組成は、本実施の形態
にかかる高張力鋼板の上記の組成に限定されるものでは
ない。
【0031】かかる鋼組成を有する本実施の形態の高張
力鋼板は、以下に列記する組織的な特徴(i) 〜(iii) を
有する。以下、これらの特徴について説明する。図1
は、本実施の形態の高張力鋼板1の構成例を示す説明図
である。図2は、図1におけるZ断面2の金属組織の一
例を示す説明図である。さらに、図3は、本実施の形態
の高張力鋼板1により改善・向上される、Z断面2にお
ける異方性の方向を概念的に示す説明図である。
【0032】(i) マルテンサイト単相組織またはマルテ
ンサイトとベイナイトとの混合組織からなること これは、本実施の形態の高張力鋼板が、所望の強度およ
び靱性を確実に得るためである。
【0033】なお、マルテンサイトとベイナイトとは、
いずれも、旧オーステナイト粒界3を残存させ、ラス状
の変態組織を構成するが、これらを判別する方法として
以下の方法が例示される。つまり、電子顕微鏡による薄
膜透過観察または抽出レプリカ観察を行い、組織中のセ
メンタイトの析出形態を観察する。焼入れままのマルテ
ンサイトの場合は過飽和に炭素を固溶した状態のままで
あるため、ラス状の変態組織の内部にセメンタイトの析
出は見られない。冷却過程でオートテンパーと呼ばれる
テンパー相当効果が発揮されることがあるが、この場合
は焼戻しマルテンサイトと同様にラス状の変態組織の内
部の4つのバリアントに配列する形で析出が観察され
る。
【0034】一方、ベイナイト組織は、焼戻しマルテン
サイトと同様にベイニティックフェライト内部にセメン
タイト析出が見られるが、ラス状の変態組織の間にセメ
ンタイト析出が見られる上部ベイナイトあるいは、ラス
状の変態組織内のベイニティックフェライト端面 (オー
ステナイト中に一定角を保って成長するラス状ベイニテ
ィックフェライトの先端部の面) と60°の角度をなし
てセメンタイトが析出する下部ベイナイトに分類され
る。
【0035】また、上部ベイナイトのラス間に僅かに残
留オーステナイトが残存する場合があるが、上部ベイナ
イトの一部として捉え、ラス間に残留オーステナイトが
残存する場合もマルテンサイト−ベイナイト混合組織に
包含されるものとする。
【0036】そこで、本実施の形態にかかる高張力鋼板
はマルテンサイト単相組織あるいはマルテンサイトとベ
イナイトとの混合組織からなることと限定する。 (ii)Z方向と直交するZ断面2内に存在する旧オーステ
ナイト粒界3の形状アスペクト比(DZL/DZC)が7.
0以下であることここで、「形状アスペクト比」とは、
Z方向(図1における板厚方向)と直交するZ断面2
(図2参照)内に存在する旧オーステナイト粒界3のL
方向と平行な方向への粒径DZLの、L方向と直交するC
方向と平行な方向への粒径DZCに対する比(DZL
ZC)を意味する。すなわち、例えばマルテンサイトと
ベイナイトとの混合組織では、ピクリン酸等を用いたエ
ッチングを行うことによって、旧オーステナイト粒界3
を現出させることが可能であるが、この「アスペクト
比」とは、エッチングによって現出させた旧オーステナ
イト粒界3のL方向と平行な方向への粒径DZLと、C方
向と平行な方向への粒径DZCとの比(DZL/DZC)を意
味する。
【0037】前述したように、特に末再結晶域での制御
圧延を行った場合のオーステナイト粒の形状は、Z方向
に極めて薄い、いわゆる“パンケーキ”状となる。ピク
リン酸と界面活性剤等によりオーステナイト粒界3を現
出させた後にZ断面2の組織観察を光学顕微鏡を用いて
行うと、圧延機の制約からL方向と平行な方向へ多く進
展した大きな楕円形の形状を有するオーステナイト粒界
3が観察されることが多い。もちろん再結晶域から直接
焼入れを行ったものや、再加熱焼入れによって最終組織
を形成させたものには、このような楕円形の形状は認め
られない。
【0038】600N/mm2 級までの低グレード鋼で
は、例えば“鉄と鋼 61,7号,991〜1011頁
「非調質高張力鋼の強度靱性と集合組織」”にも開示さ
れているように、集合組織が異方性増加の決定的な原因
であるとされる。しかしながら、マルテンサイト主体の
鋼に未再結晶域で強加工を行って得た試料について集合
組織化を調査した結果、変態集合組織は予想外に発達し
ておらず、集合組織化を抑制しても、Z方向と交差する
Z断面2における機械特性の異方性の増加を軽減できな
いことが判明した。そこで、本発明者らはさらに検討を
行い、この異方性増加の原因の1つはこのオーステナイ
ト粒の形状によることを、知見した。
【0039】つまり、マルテンサイト組織やベイナイト
組織は大角粒界であるオーステナイト粒界を明瞭に最終
組織中に残存させるため、オーステナイト粒界にはマル
テンサイト中に過飽和に固溶した炭素が変態後の冷却過
程や焼戻し工程において顕著に析出したセメンタイトF
3 Cが認められる。オーステナイト粒界は直線状 (3
次元では平面状) に分布するため、セメンタイトFe3
Cも同じく直線状に分布することになる。
【0040】ここで、亀裂の伝播抵抗形態を考えると、
このセメンタイトとマトリックスと界面は先行亀裂を発
生させ易い状況であると考えられ、このオーステナイト
粒の形状が機械特性に対して大きな影響を及ぼす。Z断
面2で観察されるオーステナイト粒がL方向に極めて長
く伸びた形状である場合、C方向にシャルピー試験片を
採取した場合、亀裂はオーステナイト粒界に沿って伝播
する距離が長くなり引いては亀裂の伝播抵抗性を著しく
損ねる。
【0041】ここで、オーステナイト粒径のZ断面にお
けるアスペクト比を、7.0以下と限定することによ
り、機械特性の異方性を軽減できる。そこで、本実施の
形態にかかる高張力鋼板は、Z方向と直交するZ断面2
内に存在する旧オーステナイト粒界3の形状アスペクト
比(DZL/DZC)が7.0以下であることと限定する。
【0042】なお、本実施の形態で、管理パラメータと
して最重要であるものの一つである旧オーステナイト粒
径の「アスペクト比」について言及している先行技術も
存在する。すなわち、特開平10−298707号公報
や同11−172365号公報には、旧オーステナイト
粒径のアスペクト比を規定量以上確保することによっ
て、オーステナイト粒内の変形帯を確保し、変態後の下
部ベイナイト/マルテンサイトのパケットサイズを小さ
く制御することに着眼したものである。しかしながら、
これらの先行技術における「アスペクト比」を計算する
際の短径は、明らかに板厚方向の旧オーステナイト粒径
の厚さであり、このアスペクト比が扁平度であることが
明記されている。すなわち、これらの先行技術における
「アスペクト比」は、本実施の形態における「アスペク
ト比」とは、異なるものである。
【0043】(iii) Z方向と直交するZ断面2と直交す
るとともにL方向と平行であるL方向断面4内における
A系介在物の占有面積率が0.05%以下であることこ
こで、「A系介在物」とは、加工によって粘性変形した
介在物を意味しており、具体的にはJIS G 055
5により規定される介在物である。
【0044】すなわち、上述したように旧オーステナイ
ト粒界3の形状アスペクト比(DZL/DZC)を7.0以
下に限定するとともに、介在物の形態を特定の形態に制
御することにより、本実施の形態にかかる高張力鋼板1
の異方性を、所望の程度に軽減することが可能である。
【0045】従来は、オーステナイト粒が完全に球形に
近い再結晶域からの直接焼入れ材や再加熱焼入れ材であ
る場合においてもZ断面2における機械特性の異方性が
存在する原因は、特に展伸した介在物に起因すると考え
られてきた。
【0046】つまり、鋼中のMnS等の圧延時にマトリ
ックスよりも柔らかいために圧延によって展伸する介在
物は、最終組織中に圧延によって展伸されたままの形状
で残存する。特に、実際の生産工程では、介在物がL方
向へ多く展伸することは不可避であり、亀裂の進展に対
して沿うC方向の試験片において、特に靱性を低下させ
る原因となる。
【0047】この展伸した介在物は、JIS G 05
55により「A系介在物」として規定されているが、こ
のA系介在物が圧延工程を経る鋼材においては機械特性
の異方性発生の原因となることは不可避であり、この異
方性を有効に軽減するためには、A系介在物の量そのも
のを低下させるしかない。A系介在物を占有面積率で
0.05%以下に抑制することにより、異方性を有効に
軽減できる。
【0048】そこで、本実施の形態にかかる高張力鋼板
は、Z方向と直交するZ断面2と直交するとともにL方
向と平行であるL方向断面4内におけるA系介在物の占
有面積率が0.05%以下であることと限定する。
【0049】本実施の形態の高張力鋼板1は、以上説明
した鋼組成および組織を有する。次に、この本実施の形
態の高張力鋼板1の製造方法の一例を説明する。まず、
前述した鋼組成を有する圧延素材を加熱炉に装入して、
例えば1150℃以下程度の加熱温度に加熱する。次
に、例えば900℃以下の温度での圧下率が50%以上
の熱間圧延を行うことによって所望の板厚まで減厚し、
その後に適当な加速冷却装置を用いて加速冷却(たとえ
ば水冷)する。
【0050】この制御圧延方法は、製造される高張力鋼
板の靱性向上を図るためには、重要なプロセスである。
高張力鋼板の靱性を所望の程度に向上するには、鋼材の
有効結晶粒径を微細化し、破面単位を微細化することが
有効である。そこで、本実施の形態では、オンライン焼
入れ前に未再結晶域圧延を行い、変形帯を導入しておく
ことにより、焼入れ後の組織の著しい微細化を図る。具
体的には、900℃以下での圧下率を50%以上と規定
するとともに、マルテンサイト主体の組織に変態させる
ために熱間圧延後に水冷を行うこととした。
【0051】そして、必要であれば、焼戻し処理を行
い、所望の靱性を与える。このようにして、本実施の形
態にかかる高張力鋼板1が製造される。この本実施の形
態にかかる高張力鋼板1は、Z断面2におけるL方向お
よびC方向を含む靱性の異方性が小さい。前述したよう
に、構造物としての安全性に対する保証を高めるために
は、Z断面2におけるL方向およびC方向を含む靱性の
異方性を軽減し、あらゆる方向からの亀裂伝播に対して
十分な抵抗性を有する鋼板を、特別高コストの処理を行
うことなく、提供できることが、重要である。本実施の
形態にかかる高張力鋼板1は、かかる要求に十分に応え
得るものである。
【0052】なお、この亀裂伝播に関しては、最終的に
はESSO試験や二重引張試験等といった、実体に即し
た大型破壊靱性試験により評価されるべきものである。
しかし、一般にWES3003等の試験によっても、大
型試験との良好な相関関係が示されることから、シャル
ピー衝撃試験の特性により評価してもよい。
【0053】このように、本実施の形態により、確実に
Z断面2におけるL方向およびC方向を含む靱性の異方
性が、実用上問題ない程度に軽減されるとともに低温靱
性に優れた高張力鋼板を確実に提供することができた。
【0054】さらに、本発明を実施例を用いて詳述する
が、これは本発明の例示であってこれにより本発明が限
定されるものではない。
【0055】
【実施例】表1に示す鋼組成を有する鋳片を、表2に示
す鋳片加熱温度に加熱してから、表2に示す未再結晶域
圧下率となるようにするとともに表2に示す熱間圧延終
了温度で熱間圧延を行うことによって表2に示す製品板
厚まで減厚し、その後に表2に示す加速冷却開始温度、
加速冷却終了温度および1/2t部冷却速度で水冷を行
い、さらに表2に示す焼戻し温度で焼戻しを行った。
【0056】得られた試料から、ノッチシャルピー衝撃
試験片(1/4tから採取した2mmVノッチ試験片
(JIS Z2202 4号) )と,JIS4号試験片
(1/4tから採取した引張試験片(JIS Z220
1 4号))とを切り出した。そして、これらの試験片
を用いてシャルピー衝撃試験(JIS Z2242) お
よび引張試験(JIS Z2241) を、15°ピッチ
にて0°(L方向)から180°まで行うとともに、そ
の生成組織と、図1におけるZ方向と直交するZ断面2
内に存在する旧オーステナイト粒界3の形状アスペクト
比と、Z断面2と直交するとともにL方向と平行である
断面4内におけるA系介在物の占有面積率とを測定し
た。
【0057】結果を表1にまとめて示す。表1における
試料No.1〜4、7〜8、11〜12、15〜16、
19〜20、23〜24、27〜28は、いずれも、本
発明の範囲を全て満足する本発明例である。これらの試
料は、いずれも、機械特性の異方性が低く抑えられてい
る。
【0058】これに対し、試料No.5、9、13、1
7、21、25、29は、いずれも、Z断面2上での旧
オーステナイト粒径の形状アスペクト比が本発明の範囲
を逸脱した比較例である。これらの試料は、いずれも、
機械特性の異方性が大きくなっており、均一性が損なわ
れている。
【0059】さらに、試料No.6、10、14、1
8、22、26、30は、L方向断面4におけるA系介
在物の占有面積率が本発明の範囲を逸脱した比較例であ
る。これらの試料も、いずれも、機械特性の異方性が大
きくなっており、均一性が損なわれている。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、例えば、780N/mm2 以上の引張強さを有する
高張力厚鋼板、あるいは、950N/mm2 以上の引張
強さを有する高張力厚鋼板等といった、構造物の強度部
材として好適に用いられる高張力鋼板を、コストの高騰
を伴うことなく安価に、機械特性の異方性を低減して提
供することができた。
【0063】また、本発明により、構造材としての安全
性を高めるために、Z方向と直交する平面内における異
方性を軽減し、あらゆる方向からの亀裂伝播に対して十
分な抵抗性を有する高張力厚鋼板を、コストの高騰を伴
うことなく安価に提供することができた。
【0064】かかる効果を有する本発明の意義は、極め
て著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の高張力鋼板の構成例を示す説明図
である。
【図2】図1におけるZ断面の金属組織の一例を示す説
明図である。
【図3】実施の形態の高張力鋼板により改善・向上され
る、Z断面における異方性の方向を概念的に示す説明図
である。
【符号の説明】
1 高張力鋼板 2 Z断面 3 旧オーステナイト粒界 4 断面

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マルテンサイト単相組織あるいはマルテ
    ンサイトとベイナイトとの混合組織からなり、 板厚方向と直交する断面内に存在する旧オーステナイト
    粒界の形状アスペクト比が7.0以下であり、かつ前記
    断面と直交するとともに圧延方向と平行である断面内に
    おけるA系介在物の占有面積率が0.05%以下である
    ことを特徴とする高張力鋼板。
  2. 【請求項2】 質量%で、C:0.06〜0.19%、
    Si:0.15〜0.60%、Mn:0.60〜1.8
    0%、Cr:0.05〜1.20%、Mo:0.05〜
    1.00%およびB:0.0005〜0.0025%を
    含有する請求項1に記載された高張力鋼板。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100139820A1 (en) * 2008-01-07 2010-06-10 Tatsuya Kumagai Wear-resistant steel plate having excellent wear resistance at high temperatures and excellent bending workability and method for manufacturing the same
JP2011052321A (ja) * 2009-08-06 2011-03-17 Jfe Steel Corp 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法

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US20100139820A1 (en) * 2008-01-07 2010-06-10 Tatsuya Kumagai Wear-resistant steel plate having excellent wear resistance at high temperatures and excellent bending workability and method for manufacturing the same
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